特許第5693841号(P5693841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5693841プログラム、印刷制御方法、及び印刷システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693841
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】プログラム、印刷制御方法、及び印刷システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20150312BHJP
   H04N 1/21 20060101ALI20150312BHJP
   B41J 5/30 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   G06F3/12 C
   G06F3/12 P
   H04N1/21
   B41J5/30 Z
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2009-267313(P2009-267313)
(22)【出願日】2009年11月25日
(65)【公開番号】特開2011-113178(P2011-113178A)
(43)【公開日】2011年6月9日
【審査請求日】2012年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100103676
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 康夫
(72)【発明者】
【氏名】依田 清澄
【審査官】 内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−067822(JP,A)
【文献】 特開平10−154050(JP,A)
【文献】 特開平11−338655(JP,A)
【文献】 特開2007−203735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
B41J 5/30
H04N 1/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置と、前記印刷装置による印刷動作を制御する印刷制御部とを備える印刷システムにおいて、前記印刷制御部の動作を制御するプログラムであって、
複数のページを含む印刷データである複数ページデータを分割する処理であり、前記複数ページデータの一部である複数のページをそれぞれ含む複数の分割後データに前記複数ページデータを分割するページ分割処理と、
前記分割後データの各ページに対応して前記印刷装置が印刷するラスタ画像を形成する画像形成を行う処理であり、複数の前記分割後データにそれぞれ対応する複数の画像形成処理を並列して実行する並列画像形成処理と、
前記複数ページデータにおけるページの順番に合わせて、前記並列画像形成処理において形成されたそれぞれの前記ラスタ画像に対応する印刷を前記印刷装置に行わせる印刷タイミング制御処理と
を前記印刷制御部に実行させ、
前記ページ分割処理は、前記複数ページデータの各ページがいずれか一の前記分割後データに含まれるように、前記複数ページデータを前記複数の分割後データに分割し、
前記並列画像形成処理において並列に行う前記画像形成処理の並列数をn(nは、2以上の整数)とした場合、
それぞれの前記分割後データは、前記複数ページデータからnページ毎に1ページを抽出することで構成される複数のページであり、それぞれの前記分割後データが含むページが間に(n−1)ページを空けた離散的なページとなるように、前記複数ページデータにおけるページの順番が一定の間隔で離れた離散的な複数のページを含むことを特徴とするプログラム。
【請求項2】
前記印刷制御部は、
前記並列画像形成処理において前記画像形成処理を行う画像形成処理装置と、
前記ページ分割処理において前記複数ページデータを前記複数の分割後データに分割し、分割された前記分割後データを前記画像形成処理装置へ転送するデータ分割装置と
を備え、
前記画像形成処理装置は、前記データ分割装置から受け取る前記分割後データに対し、前記画像形成処理を行い、かつ、当該分割後データに対応する前記画像形成処理の完了に応じて、当該分割後データを前記画像形成処理装置内から削除することを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記印刷制御部は、複数の前記画像形成処理装置を備え、
前記データ分割装置は、前記分割後データを、前記複数の画像形成処理装置のそれぞれへ転送することを特徴とする請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
それぞれの前記分割後データは、予め設定された上限ページ数以下の複数のページをそれぞれ含み、
前記データ分割装置は、前記上限ページ数以下のページ数の前記分割後データに前記複数ページデータを分割することにより、前記画像形成処理装置の数よりも多くの数の前記分割後データに前記複数ページデータを分割し、少なくともいずれかの前記画像形成処理装置へ、2以上の前記分割後データを、順次転送することを特徴とする請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
印刷装置による印刷動作の制御を行う印刷制御方法であって、
複数のページを含む印刷データである複数ページデータを分割する段階であり、前記複数ページデータの一部である複数のページをそれぞれ含む複数の分割後データに前記複数ページデータを分割するページ分割段階と、
前記分割後データの各ページに対応して前記印刷装置が印刷するラスタ画像を形成する画像形成を行う段階であり、複数の前記分割後データにそれぞれ対応する複数の画像形成処理を並列して実行する並列画像形成段階と、
前記複数ページデータにおけるページの順番に合わせて、前記並列画像形成段階において形成されたそれぞれの前記ラスタ画像に対応する印刷を前記印刷装置に行わせる印刷タイミング制御段階と
を備え、
前記ページ分割段階は、前記複数ページデータの各ページがいずれか一の前記分割後データに含まれるように、前記複数ページデータを前記複数の分割後データに分割し、
前記並列画像形成段階において並列に行う前記画像形成処理の並列数をn(nは、2以上の整数)とした場合、
それぞれの前記分割後データは、前記複数ページデータからnページ毎に1ページを抽出することで構成される複数のページであり、それぞれの前記分割後データが含むページが間に(n−1)ページを空けた離散的なページとなるように、前記複数ページデータにおけるページの順番が一定の間隔で離れた離散的な複数のページを含むことを特徴とする印刷制御方法。
【請求項6】
印刷装置と、前記印刷装置による印刷動作を制御する印刷制御部とを備える印刷システムであって、
前記印刷制御部は、
複数のページを含む印刷データである複数ページデータを分割する処理部であり、前記複数ページデータの一部である複数のページをそれぞれ含む複数の分割後データに前記複数ページデータを分割するページ分割処理部と、
前記分割後データの各ページに対応して前記印刷装置が印刷するラスタ画像を形成する画像形成を行う処理部であり、複数の前記分割後データにそれぞれ対応する複数の画像形成処理を並列して実行する並列画像形成処理部と、
前記複数ページデータにおけるページの順番に合わせて、前記並列画像形成処理部により形成されたそれぞれの前記ラスタ画像に対応する印刷を前記印刷装置に行わせる印刷タイミング制御処理部と
を有し、
前記ページ分割処理部は、前記複数ページデータの各ページがいずれか一の前記分割後データに含まれるように、前記複数ページデータを前記複数の分割後データに分割し、
前記並列画像形成処理部において並列に行う前記画像形成処理の並列数をn(nは、2以上の整数)とした場合、
それぞれの前記分割後データは、前記複数ページデータからnページ毎に1ページを抽出することで構成される複数のページであり、それぞれの前記分割後データが含むページが間に(n−1)ページを空けた離散的なページとなるように、前記複数ページデータにおけるページの順番が一定の間隔で離れた離散的な複数のページを含むことを特徴とする印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、印刷制御方法、及び印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置に印刷を行わせるためには、通常、印刷動作の前に、印刷データに基づき、画像形成処理を行う。この画像形成処理としては、例えば、印刷データに基づき、印刷装置が印刷するラスタ画像を形成するラスタライズ処理等を行う。
【0003】
また、従来、複数の画像処理部により並列に処理を行うことにより、ラスタライズ処理等を高速化する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、特許文献1には、並列処理のより具体的な方法について、例えば、第1の実施形態として、印刷ジョブであるPDFデータの全体を複数の画像処理部に対して配信する構成が記載されている。また、第2の実施形態として、PDFジョブ格納部に格納された単一のPDFデータに対し、複数の画像処理部がアクセスする構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−146251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば、特許文献1の第1の実施形態の構成においては、PDFデータの全体を各画像処理部に対して転送することにより、各画像処理部では使用しない無駄な部分まで含んだデータを転送することとなる。また、第2の実施形態の構成においては、複数の画像処理部が単一のPDFデータにアクセスするため、アクセスの競合による待ち時間が発生する場合がある。そのため、これらの場合、画像形成処理を適切に高速化できない場合がある。
【0006】
また、近年、個人情報を保護することの重要性の高まりにより、例えば個人情報を含むデータを扱う場合には、装置内でデータを保持する時間であるデータの生存時間をできるだけ短くすることが望まれる場合がある。しかし、例えば特許文献1の構成を用いる場合、PDFデータの全ページに対する画像形成処理が完了するまで、PDFデータを削除できないこととなる。そのため、例えば個人情報を含むPDFデータを用いる場合等には、全ページの画像形成処理が完了するまでPDFデータを削除できないという、セキュリティ上のリスクも生じることとなる。
【0007】
これらの問題に対しては、例えば、PDFデータをページ単位に分割し、ページ単位で複数の画像形成処理を並列実行させることも考えられる。この場合、画像形成処理が完了したページのデータを順次削除することが可能となるため、個人情報を含むデータを用いる場合等でも、装置内におけるデータの生存期間を短縮できる。
【0008】
しかし、本願の発明者は、鋭意研究により、ページ毎の分割をした場合、処理を効率的に行うことが困難になり、効果的な高速化が困難になる場合があることを見出した。より具体的には、例えば、ページ毎の分割をした場合、画像形成処理における初期化の処理を1ページ毎に行うこととなるため、処理全体での所要時間が増大する場合があることを見出した。そのため、より適切な方法により、画像形成処理を高速化することが望まれる。そこで、本発明は、上記の課題を解決できるプログラム、印刷制御方法、及び印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)印刷装置と、印刷装置による印刷動作を制御する印刷制御部とを備える印刷システムにおいて、印刷制御部の動作を制御するプログラムであって、複数のページを含む印刷データである複数ページデータを分割する処理であり、複数ページデータの一部である複数のページをそれぞれ含む複数の分割後データに複数ページデータを分割するページ分割処理と、分割後データの各ページに対応して印刷装置が印刷するラスタ画像を形成する画像形成を行う処理であり、複数の分割後データにそれぞれ対応する複数の画像形成処理を並列して実行する並列画像形成処理と、複数ページデータにおけるページの順番に合わせて、並列画像形成処理において形成されたそれぞれのラスタ画像に対応する印刷を印刷装置に行わせる印刷タイミング制御処理とを印刷制御部に実行させ、ページ分割処理は、複数ページデータの各ページがいずれか一の分割後データに含まれるように、複数ページデータを複数の分割後データに分割し、並列画像形成処理において並列に行う画像形成処理の並列数をn(nは、2以上の整数)とした場合、それぞれの分割後データは、複数ページデータからnページ毎に1ページを抽出することで構成される複数のページであり、それぞれの分割後データが含むページが間に(n−1)ページを空けた離散的なページとなるように、複数ページデータにおけるページの順番が一定の間隔で離れた離散的な複数のページを含む。
【0010】
印刷制御部は、例えば、一又は複数のコンピュータを有する。このプログラムは、例えばCD−ROM等の記録媒体に記録された状態で提供され、印刷制御部を構成する少なくとも一のコンピュータにインストールされる。印刷制御部が複数のコンピュータを有する場合、このプログラムは、これらのコンピュータに、印刷制御部で行う各処理を行わせる。このプログラムは、印刷制御部の一又は一部のコンピュータにインストールされてもよい。この場合、このプログラムをインストールされたコンピュータは、例えば、プログラムに応じて他のコンピュータを制御することにより、他のコンピュータと共に、印刷制御部の各処理を行う。
【0011】
複数ページデータは、例えば、ページ独立な印刷ジョブのデータである。複数ページデータとしては、PDFファイルのデータ(PDFデータ)を好適に用いることができる。ページ分割処理は、例えば、複数ページデータを複数の分割後データに分割することにより、印刷データを再構築するページデータ再構築処理を行う。複数ページデータがPDFデータである場合、ページ分割処理は、各分割後データとして、それぞれの分割後データに対応するPDFデータを作成する。
【0012】
並列画像形成処理は、並列に行う各画像形成処理において、対応する分割後データに対し、先頭のページから順次画像形成を行う。印刷タイミング制御処理において、複数ページデータにおけるページの順番に合わせるとは、例えば、画像形成にかかる時間のばらつき等によって印刷後のページの順番がバラバラになることを防ぎ、予め設定した順番で印刷後のページが並ぶように制御することである。
【0013】
このように構成すれば、例えば、複数の画像形成処理を並列して実行することにより、並列画像形成処理における全体での処理を適切に高速化できる。これにより、印刷データ全体に対する画像形成処理を適切に高速化できる。尚、以下の説明において、画像処理の高速化とは、並列画像形成処理における全体での処理を高速化することである。
【0014】
また、印刷データの全体である複数ページデータを複数の分割後データに分割することにより、例えば画像形成処理を行う処理部へ複数ページデータの全体を転送する場合と異なり、各画像形成処理で必要となるページのみを含み、不要なページを含まない分割後データを転送すればよい。そのため、このように構成すれば、例えば、データの転送を適切に効率化できる。また、例えば、並列に画像形成処理を行う各処理部から単一の複数ページデータへアクセスする場合等と異なり、各処理部が処理対象の分割後データを占有できる。そのため、例えば、単一のデータに対するアクセスの競合による待ち時間が発生することもない。
【0015】
更には、このように構成した場合、画像形成処理の初期化は、複数のページを含む分割後データ毎に1回行うことにより、複数のページに対し、1回で済ませることができる。これにより、例えば、複数ページデータを1ページ毎のデータに分割する場合と比べ、初期化の処理による処理全体での所要時間の増大を適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、画像形成処理の高速化をより適切に行うことができる。
【0016】
また、このように構成した場合、複数ページデータを分割した分割後データを用いて画像形成処理を行うことにより、複数ページデータの全ページに対応する画像形成が完了する前であっても、それぞれの分割後データに対応する画像形成処理の完了に応じて、その分割後データを削除できる。そのため、このように構成すれば、例えば、装置内におけるデータの生存期間を適切に短縮できる。また、これにより、例えば個人情報を含むデータ等を扱う場合にも、セキュリティ上のリスクを適切に低減できる。
【0017】
(構成2)ページ分割処理は、複数ページデータの各ページがいずれか一の分割後データに含まれるように、複数ページデータを複数の分割後データに分割し、並列画像形成処理において並列に行う画像形成処理の並列数をn(nは、2以上の整数)とした場合、それぞれの分割後データは、複数ページデータからnページ毎に1ページを抽出することで構成される複数のページであり、複数ページデータにおけるページの順番が一定の間隔で離れた離散的な複数のページを含む。
【0018】
このように構成すれば、例えば、複数ページデータを適切に分割後データに分割できる。ページ分割処理は、例えば、並列に画像形成処理を行う構成に応じてページ順を最適化することにより、それぞれの画像形成処理用に、非連続ページの離散ページデータの分割後データを作成する。
【0019】
(構成3)印刷制御部は、並列画像形成処理において画像形成処理を行う画像形成処理装置と、ページ分割処理において複数ページデータを複数の分割後データに分割し、分割された分割後データを画像形成処理装置へ転送するデータ分割装置とを備え、画像形成処理装置は、データ分割装置から受け取る分割後データに対し、画像形成処理を行い、かつ、当該分割後データに対応する画像形成処理の完了に応じて、当該分割後データを画像形成処理装置内から削除する。このように構成すれば、例えば、装置内におけるデータの生存期間を適切に短縮できる。
【0020】
尚、データ分割装置及び画像形成処理装置は、それぞれ別のコンピュータにより構成されることにより、別の装置として設けられる。この場合、分割後データを用いることが、データ転送の効率化において、特に効果的となる。また、データ分割装置は、例えば、分割後データの作成を完了する度に、対応する画像形成処理を行う画像形成処理装置へ、分割後データを転送する。そして、転送後、転送した分割後データを削除する。
【0021】
(構成4)印刷制御部は、複数の画像形成処理装置を備え、データ分割装置は、分割後データを、複数の画像形成処理装置のそれぞれへ転送する。このように構成すれば、例えば、並列画像形成処理を適切に行うことができる。
【0022】
(構成5)それぞれの分割後データは、予め設定された上限ページ数以下の複数のページをそれぞれ含み、データ分割装置は、上限ページ数以下のページ数の分割後データに複数ページデータを分割することにより、画像形成処理装置の数よりも多くの数の分割後データに複数ページデータを分割し、少なくともいずれかの画像形成処理装置へ、2以上の分割後データを、順次転送する。
【0023】
例えば、元の複数ページデータのページ数が多い場合、画像形成処理装置の数で分割するのみだと、分割後データのページ数も多くなり、各画像形成処理に要する時間も長くなる場合がある。また、その結果、装置内における分割後データの生存期間も長くなる。
【0024】
これに対し、このように構成した場合、データ分割装置は、各画像形成処理装置用に単一の分割後データを作成するのではなく、例えば、各画像形成処理装置用に、一定ページ数の複数の分割後データを作成する。この場合、例えば、複数ページデータのページ数が多い場合にも、各分割後データの画像形成処理に要する時間を適切に短縮できる。また、これにより、例えば、画像形成処理の完了後の分割後データを、作成後、短い時間で順次削除できる。更には、この場合も、一定ページ数の複数のページを含む分割後データを用いることにより、画像形成処理の初期化に要する時間の影響を適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、初期化に要する時間等の性能上の課題を適切に改善しつつ、個人情報等を含むデータの装置内での生存時間を短く抑えることができる。また、これにより、画像形成処理の高速化と、セキュリティ上のリスクの低減とを、適切に両立できる。
【0025】
(構成6)印刷装置による印刷動作の制御を行う印刷制御方法であって、複数のページを含む印刷データである複数ページデータを分割する段階であり、複数ページデータの一部である複数のページをそれぞれ含む複数の分割後データに複数ページデータを分割するページ分割段階と、分割後データの各ページに対応して印刷装置が印刷するラスタ画像を形成する画像形成を行う段階であり、複数の分割後データにそれぞれ対応する複数の画像形成処理を並列して実行する並列画像形成段階と、複数ページデータにおけるページの順番に合わせて、並列画像形成段階において形成されたそれぞれのラスタ画像に対応する印刷を印刷装置に行わせる印刷タイミング制御段階とを備える。このようにすれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【0026】
(構成7)印刷装置と、印刷装置による印刷動作を制御する印刷制御部とを備える印刷システムであって、印刷制御部は、複数のページを含む印刷データである複数ページデータを分割する処理部であり、複数ページデータの一部である複数のページをそれぞれ含む複数の分割後データに複数ページデータを分割するページ分割処理部と、分割後データの各ページに対応して印刷装置が印刷するラスタ画像を形成する画像形成を行う処理部であり、複数の分割後データにそれぞれ対応する複数の画像形成処理を並列して実行する並列画像形成処理部と、複数ページデータにおけるページの順番に合わせて、並列画像形成処理部により形成されたそれぞれのラスタ画像に対応する印刷を印刷装置に行わせる印刷タイミング制御処理部とを有する。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、例えば、画像形成処理を適切に高速化できる。また、例えば、装置内でのデータの生存時間を短く抑えることにより、セキュリティ上のリスクの低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷システム10の構成の第1の例を示す図である。
図2】印刷システム10の構成の第2の例を示す図である。
図3】印刷システム10において行う各処理のタイミングを示すシーケンス図である。
図4】画像形成処理の初期化に要する時間の問題について更に詳しく説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷システム10の構成の第1の例を示す。印刷システム10は、複数のページを有するPDFファイルのデータであるPDFデータ202に基づき印刷を行う印刷システムであり、印刷制御部12及び印刷装置14を備える。本例において、PDFデータ202は、複数のページを含む印刷データである複数ページデータの一例である。複数ページデータとしては、例えば、ページ独立な印刷ジョブのデータであれば、PDFデータ以外のデータを用いることも考えられる。ページ独立な印刷ジョブのデータとは、例えば、印刷すべき内容を示すデータを含み、かつ、ページ単位で分割可能なデータである。
【0030】
印刷制御部12は、印刷装置14による印刷動作を制御する制御部であり、PDFデータ202に基づくRIP(Raster Image Processer)処理を行うことにより、印刷装置14が印刷するラスタ画像を形成する。そして、形成したラスタ画像を示す画像形成データ206を印刷装置14へ送ることにより、印刷装置14の動作を制御する。本例において、印刷制御部12は、PDF再構築処理部102、並列画像形成処理部104、及び印刷タイミング制御部106を有する。また、並列画像形成処理部104は、複数の画像形成処理部120a〜120dを有する。
【0031】
尚、PDF再構築処理部102、並列画像形成処理部104、及び印刷タイミング制御部106は、例えばネットワークを介して互いに接続された別のコンピュータ(例えばPC)で構成されることにより、別の装置として設けられる。PDF再構築処理部102、並列画像形成処理部104、及び印刷タイミング制御部106のそれぞれは、更に、例えば、複数のコンピュータにより構成されてもよい。これらのコンピュータは、所定のプログラムに従って動作することにより、以下で説明する各種の処理を実行する。また、これにより、これらのコンピュータは、印刷制御部12の各部として動作する。
【0032】
PDF再構築処理部102は、データ分割部の一例であり、PDFデータ202を複数の離散ページPDFデータ204に分割するページ分割処理を行う。離散ページPDFデータ204は、分割後データの一例である。これにより、PDF再構築処理部102は、処理前の印刷データであるPDFデータ202を複数の離散ページPDFデータ204に再構築するページデータ再構築処理を行う。
【0033】
ここで、後に説明する並列画像形成処理部104における画像形成処理の並列数をn(nは、2以上の整数)とした場合、本例において、PDF再構築処理部102は、PDFデータ202を、並列数と同じ数のn個の離散ページPDFデータ204に分割する。図示した場合において、並列数nは、4である。また、PDF再構築処理部102は、PDFデータ202の各ページを複数の離散ページPDFデータ204のそれぞれに順次割り振ることにより、PDFデータ202の各ページがいずれか一の離散ページPDFデータ204に含まれるように、分割処理を行う。
【0034】
このページ分割処理において、PDF再構築処理部102は、例えば、並列に画像形成処理を行う構成に応じてページ順を最適化することにより、それぞれの画像形成処理用に、離散ページPDFデータ204として、非連続ページの離散ページデータを作成する。例えば、PDF再構築処理部102は、それぞれの離散ページPDFデータ204として、PDFデータ202からnページ毎に1ページを抽出することで構成される複数のページを含むPDFデータを作成する。この場合、離散ページPDFデータ204は、複数のページとして、PDFデータ202におけるページの順番が一定の間隔で離れた離散的な複数のページを含む。
【0035】
より具体的には、例えば、図示した場合において、PDF再構築処理部102は、ページ数が12のPDFデータ202を、それぞれのページ数が3ページの4つの離散ページPDFデータ204に分割する。この場合、この4つのうち、第1の離散ページPDFデータ204は、PDFデータ202の第1、5、9ページを含む。第2の離散ページPDFデータ204は、PDFデータ202の第2、6、10ページを含む。第3の離散ページPDFデータ204は、PDFデータ202の第3、7、11ページを含む。第4のPDFデータ202は、PDFデータ202の第4、8、12ページを含む。
【0036】
尚、PDFデータ202は、例えば、印刷制御部12の外部のコンピュータ等において、アプリケーションソフト等を用いて作成される。この場合、PDF再構築処理部102は、PDFデータ202を、例えば、ネットワークを介して、他のコンピュータから受け取る。PDF再構築処理部102は、例えば、ユーザの操作等により、各種の記録メディアに格納されたPDFデータ202を受け取ってもよい。
【0037】
また、PDF再構築処理部102は、再構築した複数の離散ページPDFデータ204を、例えばネットワークを介して、並列画像形成処理部104へ送信する。本例において、PDF再構築処理部102は、上記の第1〜第4の離散ページPDFデータ204のうち、第1の離散ページPDFデータ204を、画像形成処理部120aへ送信する。第2の離散ページPDFデータ204を、画像形成処理部120bへ送信する。第3の離散ページPDFデータ204を、画像形成処理部120cへ送信する。第4の離散ページPDFデータ204を、画像形成処理部120dへ送信する。
【0038】
また、PDFデータ202は、より多くのページを含んでもよい。例えば、PDFデータ202が、12ページよりも多くのページを含むデータである場合、第1〜第4の離散ページPDFデータ204は、上記の各ページに加え、PDFデータ202の第13ページ以降についても、各離散ページPDFデータ204が含むページが間に3ページを空けた離散的なページとなるように、PDFデータ202のページを含む。また、より一般的に、画像形成処理の並列数nとし、PDFデータ202を、n個の離散ページPDFデータ204に分割する場合、第1〜第nの離散ページPDFデータ204は、例えば、PDFデータ202の第1〜第nページのそれぞれを先頭のページとし、PDFデータ202の第n+1ページ以降について、各離散ページPDFデータ204が含むページが間に(n−1)ページを空けた離散的なページとなるように、PDFデータ202のページを含む。
【0039】
このように構成すれば、例えば、PDFデータ202の複数のページに対し、複数の画像形成処理を、適切に並列実行できる。これにより、例えば、PDFデータ202の各ページに対し、ページ順に画像形成処理が完了するまでの時間を、最短時間とできる。そのため、本例によれば、例えば、並列に画像形成処理を行う構成に合わせ、離散ページPDFデータ204のページ構成を適切に最適化できる。
【0040】
また、本例において、PDF再構築処理部102は、複数の離散ページPDFデータ204への分割後、PDF再構築処理部102内から、PDFデータ202を削除する。また、複数の離散ページPDFデータ204についても、並列画像形成処理部104へ送信したファイルを、PDF再構築処理部102内から順次削除する。そのため、本例によれば、例えば、PDFデータ202及び離散ページPDFデータ204について、PDF再構築処理部102の装置内におけるデータの生存期間を適切に短縮できる。
【0041】
並列画像形成処理部104は、離散ページPDFデータ204の各ページに対応して印刷装置14が印刷するラスタ画像を形成する画像形成を行う処理部であり、複数の離散ページPDFデータ204のそれぞれにそれぞれ対応する複数の画像形成処理を並列して実行する並列画像形成処理を行う。
【0042】
本例において、並列画像形成処理部104は、画像形成処理の並列数nと等しい個数の画像形成処理部120a〜120dを備える。それぞれの画像形成処理部120a〜120dは、例えば別のコンピュータで構成される。また、画像形成処理部120a〜120dは、RIP(Raster Image Processer)処理を行うコンピュータ(RIP用PC)であり、離散ページPDFデータ204に基づく画像形成処理により、離散ページPDFデータ204の各ページに対応して印刷装置14が印刷するラスタ画像を形成する。
【0043】
また、それぞれの画像形成処理部120a〜120dは、PDF再構築処理部102からから受け取る離散ページPDFデータ204に対し、先頭のページから順次、画像形成処理を行う。そして、形成したラスタ画像を示すデータである画像形成データ206を、印刷タイミング制御部106へ順次送信する。これにより、画像形成処理部120a〜120dは、画像形成データ206を、印刷タイミング制御部106を介して、印刷装置14へ送信する。
【0044】
尚、画像形成処理において、画像形成処理部120a〜120dは、例えば、離散ページPDFデータ204の各ページとして入力される入力画像を印刷装置14の解像度に合わせてラスタライズし、印刷装置14の色再現特性に合わせてカラー変換することにより、印刷装置14が印刷するラスタ画像を示すラスタ出力データを形成する。そして、このラスタ出力データを変換することにより、画像形成データ206を形成する。画像形成データ206は、例えば、印刷装置14が解釈可能なプリンタ記述言語のデータである。これにより、それぞれの画像形成処理部120a〜120dは、複数のページを含む離散ページPDFデータ204に基づき、それぞれが離散ページPDFデータ204の1ページ分のラスタ画像を示す複数の画像形成データ206を出力する。
【0045】
更に、本例において、画像形成処理部120a〜120dは、各離散ページPDFデータ204に対する画像形成処理の完了に応じて、その離散ページPDFデータ204を、画像形成処理部120a〜120d内から削除する。画像形成処理の完了に応じて削除を行うとは、例えば、印刷の完了や、他の離散ページPDFデータ204に対する画像形成処理の完了を待つことなく、各離散ページPDFデータ204に対し、その離散ページPDFデータ204に対する画像形成処理の完了した場合に、その離散ページPDFデータ204を削除することである。本例によれば、例えば、画像形成処理部120a〜120d内での離散ページPDFデータ204の生存時間を短く抑えつつ、離散ページPDFデータ204に基づく画像形成処理を適切に行うことができる。
【0046】
印刷タイミング制御部106は、印刷タイミング制御処理を行うコンピュータであり、印刷装置14が印刷動作を行うタイミングを制御する。印刷タイミング制御処理において、印刷タイミング制御部106は、例えば、複数の画像形成処理部120a〜120dから受け取る画像形成データ206に基づき、PDFデータ202におけるページの順番に合わせて、各画像形成データ206が示すラスタ画像に対応する印刷を、印刷装置14に行わせる。PDFデータ202におけるページの順番に合わせるとは、例えば、印刷装置14による印刷後のページの順番がバラバラになることを防ぎ、予め設定した順番で印刷後のページが並ぶように制御することである。本例において、印刷タイミング制御部106は、複数の画像形成処理部120a〜120dから受け取る画像形成データ206に対し、PDFデータ202のページの順番に合わせて印刷装置14へ順次転送することにより、印刷されるページの順番の制御を行う。
【0047】
尚、印刷タイミング制御部106は、例えば、複数の画像形成処理部120a〜120dから受け取る印刷準備完了通知に基づき、ページの順番がバラバラになることを防ぐ制御を行う。この印刷準備完了通知は、例えば、画像形成データ206の作成完了により印刷の準備が完了したページの位置を知らせる通知であってよい。
【0048】
印刷装置14は、画像形成データ206に基づく印刷動作を行うプリンタであり、印刷タイミング制御部106を介して複数の画像形成処理部120a〜120dから順次受け取る画像形成データ206に基づき、その画像形成データ206が示すラスタ画像を順次印刷する。これにより、印刷装置14は、PDFデータ202の各ページを印刷する。
【0049】
本例によれば、例えば、複数の画像形成処理部120a〜120dにより複数の画像形成処理を並列して実行することにより、画像形成処理を適切に高速化できる。また、印刷データの全体であるPDFデータ202を複数の離散ページPDFデータ204に分割することにより、例えばそれぞれの画像形成処理部120a〜120dへPDFデータ202の全体を転送する場合と異なり、不要なページを含まない離散ページPDFデータ204を転送すればよいこととなる。そのため、本例によれば、例えば、画像形成処理の対象となるデータの転送を適切に効率化できる。また、例えば、それぞれの画像形成処理部120a〜120dから単一のPDFデータ202へアクセスする場合等と異なり、それぞれの画像形成処理部120a〜120dが処理対象の離散ページPDFデータ204を占有できる。そのため、単一のデータに対するアクセスの競合による待ち時間が発生することもない。
【0050】
更には、本例において、画像形成処理の初期化は、複数のページを含む離散ページPDFデータ204毎に1回行うことにより、複数のページに対し、1回で済ませることができる。これにより、例えば、PDFデータ202を1ページ毎のデータに分割する場合と比べ、初期化の処理による処理全体での所要時間の増大を適切に抑えることができる。そのため、このように構成すれば、例えば、画像形成処理の高速化をより適切に行うことができる。尚、画像形成処理の初期化に要する時間の問題については、後に更に詳しく説明する。
【0051】
また、本例においては、例えば、PDFデータ202を分割した離散ページPDFデータ204を用いて画像形成処理を行うことにより、PDFデータ202の全ページに対応する画像形成が完了する前であっても、それぞれの離散ページPDFデータ204に対応する画像形成処理完了に応じて、その離散ページPDFデータ204を削除できる。そのため、本例によれば、例えば、装置内におけるデータの生存期間を適切に短縮できる。また、これにより、例えば個人情報を含むデータ等を扱う場合にも、セキュリティ上のリスクを適切に低減できる。
【0052】
ここで、本例において、印刷システム10は、例えば産業用途において1回の運転で大量の印刷を行う印刷システムである。印刷システム10は、例えば、印刷の各処理を、バッチ処理により行う。このような印刷システムにおいては、例えば家庭用プリンタや複合機等と異なり、印刷のジョブの投入から印刷の開始までのレスポンスよりも、エラー等により印刷動作が止まることなく、安定して印刷動作を続けることが重要となる。また、そのために、画像形成処理の速度が間に合わなくなり、印刷動作の停止が生じること等がないことが望まれる。これに対し、本例によれば、画像形成処理の適切に高速化することにより、安定した印刷動作を適切に行うことが可能となる。
【0053】
また、本例において、印刷装置14は、例えば、個人情報を含むデータを扱う印刷として、例えばIDカード等の印刷を行う。この場合、印刷装置14としては、例えば、UVインクを用いるインクジェットプリンタを好適に用いることができる。また、印刷装置14は、例えばクレジットカードや、キャッシュカード等の印刷や、これらのカードに関連する情報の印刷等を行ってもよい。カードに関連する情報の印刷とは、例えば、カードの会員番号又は口座番号等のID情報や、カードの所有者に関する情報等である。これらの場合にも、本例によれば、個人情報の保護を適切に行いつつ、適切に印刷を行うことができる。
【0054】
また、印刷装置14は、例えば、広く用いられている紙やフィルム等の薄い媒体以外に対して印刷を行ってもよい。例えば、IDカード等を印刷する場合、厚物媒体の一例であるプラスチックの板等に対して印刷を行うことが考えられる。厚物媒体とは、例えば、紙やフィルム等と比べて厚みのある媒体である。厚物媒体は、紙やフィルム等と比べて重量のある非可とう性の媒体であってよい。
【0055】
厚物媒体に対して印刷を行う場合、印刷の対象物である厚物媒体は、例えば、印刷装置14と連結された搬送装置により、印刷装置14による印刷動作と同期して搬送される。この搬送装置は、例えば、厚物媒体に合わせて作成された専用の治具により、厚物媒体を搬送する。
【0056】
このような構成においては、例えば一定の時間内に一定の個数の厚物媒体に対して、安定して印刷を行うことが望まれる。これに対し、例えば画像形成処理と印刷動作とを並行して行う場合に、例えば画像形成処理の速度が間に合わなくなり、印刷動作の停止が生じると、例えば時間内に所定の個数の印刷を行えなくなり、工程のエラーとなる場合がある。また、その結果、搬送装置の動作も停止させることが必要になる場合がある。
【0057】
しかし、ローラ等の簡単な搬送機構で搬送できる紙やフィルム等の通常の媒体を用いる場合と比べ、厚物媒体に対して印刷を行う場合、複雑な構成の搬送装置を用いることが必要となる。そのため、一旦搬送を停止させてしまうと、例えば印刷装置と搬送装置との間の動作を同期させるタイミング制御等が必要となり、再開のための作業の負担が大きくなるおそれがある。また、その結果、トータルでの印刷所要時間の大幅な増大を招くおそれがある。
【0058】
更には、一旦搬送装置を停止させてしまうと、前後の工程にも大きな影響が生じ、多くの時間が無駄になるおそれもある。また、印刷動作が停止してしまうと、印刷不完全又は全く印刷がされない不良品等が発生しやすくなる。そのため、この場合、不良品検出用の検品装置や、人手による目視確認が必要となり、コストの増大を招くこととなる。また、特に、個人情報を含むデータを扱う印刷を行う場合等には、失敗した印刷物の管理や適正な処分が必要となるため、コストの増大の問題が大きくなるおそれがある。
【0059】
これに対し、本例によれば、例えば、複数の画像形成処理部120a〜120dで複数の画像形成処理を並列に行うことにより、画像形成処理を適切に高速化できる。また、画像形成処理を高速化することにより、画像形成処理の速度が間に合わず、印刷動作が停止することを適切に防止できる。更には、これにより、トータルでの印刷所要時間の大幅な増大を適切に防ぐことができる。また、印刷動作の停止により不良品が発生することを適切に防ぐことができる。
【0060】
尚、印刷装置14は、プラスチック以外の厚物媒体、例えば、金属又は木材等で形成された厚物媒体に対して印刷を行ってもよい。また、厚物媒体は、例えば各種製品の形状に加工された特殊形状の媒体であってよい。より具体的に、この厚物媒体は、例えば家電製品、自動車部品といった工業製品等であってよい。
【0061】
また、印刷装置14は、例えば、印刷動作の前又は後に媒体に対する加工等が行われる環境で使用されてもよい。この加工は、例えば、印刷動作と同期して行われる工程である。このような工程としては、例えば、IDカード等の印刷を行う場合に印刷後に行うID番号の識別及びデータベースへの登録等が考えられる。また、紙等の媒体を用いて書籍、新聞等の印刷を行う場合について、印刷後に行う媒体の断裁、折り、製本等が考えられる。このような場合、印刷動作とその前又は後の工程とを同期させる必要があるため、タクトタイムを一定にすることが特に求められる。また、そのために、印刷動作を停止させないことが特に求められる。
【0062】
この場合も、本例によれば、例えば、印刷動作の停止を適切に防ぐことにより、タクトタイムを一定に保つことが可能となる。また、これにより、例えば、印刷動作とその前又は後の工程とを適切に同期させることができる。
【0063】
また、印刷装置14は、厚物媒体以外に、例えば、媒体がロール状に巻かれたロール状媒体を用いて印刷を行ってもよい。この場合、印刷装置14は、例えば、インクジェットヘッド等の印刷ヘッドの上流側のロール状媒体から媒体を繰り出し、下流側で、印刷後の媒体を巻き取る。この繰り出しから巻き取りまでの距離は、例えば1m以上(例えば1〜15m)である。この距離は、2m以上であってもよい。
【0064】
また、ロール状媒体を用いる場合において、印刷装置14は、例えば、シングルパス方式で印刷を行うインクジェットプリンタであってよい。この場合、印刷装置14は、例えば、ロール状媒体からの媒体の繰り出しを一定の速度で続けたまま、搬送を停止させることなく、印刷動作を行う。
【0065】
シングルパス方式で印刷を行うインクジェットプリンタ等は、高速な印刷が可能であるため、画像形成処理と印刷動作を並行して行おうとする場合には、画像形成処理を高速に行うことが特に求められる。より具体的には、例えば、シングルパス方式で印刷を行う印刷装置14により、ロール状媒体を用い、搬送を停止させることなく印刷を行う場合、例えば、インクジェットヘッドのスキャン時に媒体の搬送を一時的に停止させるマルチパス方式で印刷を行うインクジェットプリンタ等と比べて、高速に媒体を搬送することとなる。例えば、この場合、印刷装置14は、例えば、数10cm〜1m/s以上の速度で媒体を搬送する。このような場合、画像形成処理が間に合わなくなって印刷動作を停止させるとしても、搬送の急停止は困難である。また、ロール状媒体の繰り出しから巻き取りまでの距離が1m以上等と長い場合、媒体に蛇行が生じやすくなるため、印刷動作の停止・再開をさせると、媒体の安定した搬送が困難になるおそれがある。また、蛇行により、印刷画質に影響が生じる場合がある。
【0066】
更には、例えば、画像形成処理の速度が間に合わず、印刷動作を停止させることとなると、媒体に無駄が生じることとなる。また、断裁間隔が一定にならないという問題も発生する。また、印刷動作が停止すると、印刷装置14の稼働率が低下し、印刷物の製造コストの上昇要因にもなる。そのため、ロール状媒体を用い、シングルパス方式で印刷を行う場合には、画像形成処理が間に合わなくなる事態を防ぎ、印刷動作を停止させないことが、特に求められる。
【0067】
これに対し、本例によれば、例えば、画像形成処理を高速化することにより、画像形成処理の速度が間に合わず、印刷動作が停止することを適切に防止できる。更には、これにより、印刷動作が停止した場合に生じる各種の問題の発生を適切に防ぐことができる。
【0068】
また、印刷装置14は、例えば、大判の媒体へ高解像度の印刷を行う大判プリンタであってもよい。この場合、画像形成処理に要する時間が大きくなる。そのため、この場合、画像形成処理を高速化することが特に求められる。また、印刷装置14は、例えば、インクジェットヘッドをスキャンさせて印刷を行うマルチパス方式のインクジェットプリンタであってもよい。
【0069】
また、印刷システム10は、例えば、複数の印刷装置14を備えてもよい。複数の印刷装置14は、例えば同じ性能の印刷装置である。複数の印刷装置14は、同一機種の印刷装置であることが好ましい。この場合、複数の画像形成処理部120a〜120dのそれぞれは、例えば、複数の印刷装置14のそれぞれに対応して設けられており、対応する印刷装置14が印刷するラスタ画像をそれぞれ形成する。画像形成処理部120a〜120dの台数と、印刷装置14の台数との対応関係は、必ずしも1対1に限らず、例えば、1対n、n対1、m対n(m、nは、1以上の整数)であってもよい。
【0070】
また、この場合、印刷タイミング制御部106は、複数の印刷装置14のそれぞれへ画像形成データ206をページの順番に応じて順次転送することにより、PDFデータ202におけるページの順番に合わせて、複数の印刷装置14に印刷動作を行わせる。この場合、1台の印刷装置14を用いる場合と比べ、印刷の進行がより速くなるため、画像形成処理の高速化がより求められる。これに対し、本例によれば、画像形成処理を高速化することにより、複数の印刷装置14で並列に印刷を行う場合にも、印刷動作を停止させることなく、適切に画像形成処理を行うことができる。
【0071】
図2は、印刷システム10の構成の第2の例を示す。尚、以下に説明する点を除き、図2において、図1と同じ符号を付した構成は、図1における構成と同一又は同様である。また、本例において、PDFデータ202は、例えば数100〜数千(例えば100ページ以上、更には、1000ページ以上)のページからなるデータであってよい。このような場合、以下において説明する本例の効果は、より顕著となる。
【0072】
本例において、PDF再構築処理部102は、画像形成処理部120a〜120dの数でPDFデータ202を単に分割するのではなく、PDFデータ202を一定のページ数(以下、上限ページ数とする)単位で分割することにより、複数の離散ページPDFデータ204を作成する。この場合、PDF再構築処理部102は、それぞれの画像形成処理部120a〜120d用に単一の離散ページPDFデータ204を作成するのではなく、必要に応じて、それぞれの画像形成処理部120a〜120dに対応して、2以上の離散ページPDFデータ204を作成する。また、それぞれの離散ページPDFデータ204は、上限ページ数のページをそれぞれ含む。尚、PDFデータ202のページ数が上限ページ数の整数倍でない場合等において、一部の離散ページPDFデータ204は、上限ページ数よりも少ない数のページを含んでもよい。
【0073】
これにより、PDF再構築処理部102は、例えば、画像形成処理部120a〜120dの数よりも多くの数の離散ページPDFデータ204に、PDFデータ202を分割する。また、少なくともいずれかの画像形成処理部120a〜120dへ、2以上の離散ページPDFデータ204を、順次転送する。
【0074】
ここで、例えば、PDFデータ202のページ数が非常に多い場合、画像形成処理部120a〜120dの数で分割するのみだと、離散ページPDFデータ204のページ数も多くなり、各画像形成処理に要する時間も長くなる。また、その結果、画像形成処理部120a〜120d内における離散ページPDFデータ204の生存期間も長くなる。
【0075】
これに対し、本例によれば、例えば、PDFデータ202のページ数が多い場合にも、各離散ページPDFデータ204の画像形成処理に要する時間を適切に短縮できる。また、これにより、画像形成処理完了後の離散ページPDFデータ204を、作成後、短い時間で順次削除できる。
【0076】
また、この場合も、図1を用いて説明した場合と同様に、複数の画像形成処理部120a〜120dで並列に画像形成処理を行うことにより、画像形成処理を適切に高速化できる。また、一定ページ数のページを含む離散ページPDFデータ204を用いることにより、画像形成処理の初期化に要する時間の影響を適切に抑えることができる。そのため、本例によれば、例えば、画像形成処理の初期化に要する時間等の性能上の課題を適切に改善しつつ、個人情報等を含むデータの装置内での生存時間を、より適切に、短く抑えることができる。また、これにより、画像形成処理を高速化と、セキュリティ上のリスクの低減とを、適切に両立できる。
【0077】
図3は、印刷システム10において行う各処理のタイミングを示すシーケンス図であり、図2を用いて説明した構成におけるシーケンス図の一例を示す。尚、図1を用いて説明した構成におけるシーケンス図は、例えば、それぞれの画像形成処理部120a〜120dにおいて1個目の離散ページPDFデータ204に対する画像形成処理を行うまでの処理と同様である。
【0078】
本例の印刷システム10においては、先ず、PDF再構築処理部102が、ページ分割処理を行い、PDFデータ202を、複数の離散ページPDFデータ204に分割する。本例において、PDF再構築処理部102は、上限ページ数を3ページとして、離散ページPDFデータ204の分割を行う。
【0079】
また、PDF再構築処理部102は、分割後の各離散ページPDFデータ204を、複数の画像形成処理部120a〜120dへ順次転送する。この場合、本例において、PDF再構築処理部102は、先ず、それぞれの画像形成処理部120a〜120dへ、最初の処理対象となる1個の離散ページPDFデータ204をそれぞれ転送する。
【0080】
尚、PDF再構築処理部102は、画像形成処理部120a〜120dへ、2個目以降の離散ページPDFデータ204についても、作成後、順次転送するのが好ましい。このよう構成すれば、離散ページPDFデータ204が待ち時間無く転送されることにより、全体としての処理時間の短縮化を図ることができる。
【0081】
複数の画像形成処理部120a〜120dは、PDF再構築処理部102から受け取る離散ページPDFデータ204に基づき、並列画像形成処理を行う。並列画像形成処理において、それぞれの画像形成処理部120a〜120dは、離散ページPDFデータ204に対し、先頭のページから順次、画像形成処理を行う。この画像形成処理において、画像形成処理部120a〜120dは、所定の初期化処理を行った後、離散ページPDFデータ204の各ページに対する画像形成を行い、各ページに対応する画像形成データ206を作成する。そして、各ページに対応して作成した画像形成データ206を、印刷タイミング制御部106へ順次転送する。また、転送後、その画像形成データ206を削除する。
【0082】
また、印刷タイミング制御部106は、印刷タイミング制御処理を行うことにより、PDFデータ202におけるページの順番に合わせて、画像形成処理部120a〜120dから受け取る画像形成データ206を、印刷装置14へ、順次転送する。これにより、印刷装置14は、PDFデータ202のページの順番に合わせて、各ページを印刷する。
【0083】
ここで、それぞれの画像形成処理部120a〜120dにおいて、1回の画像形成処理の対象となる離散ページPDFデータ204は、複数のページを含む。そのため、例えば1ページ毎に初期化処理を行う場合等と比べ、初期化処理に要する時間の影響は、小さくなる。従って、本例によれば、例えば、初期化に要する時間の影響を抑えつつ、適切に画像形成処理を行うことができる。
【0084】
尚、PDFデータ202を分割した離散ページPDFデータ204を用いて画像形成処理を行う本例においては、PDFデータのページを分割する処理に伴う非効率性が問題とならないことも重要である。これに対して、本例においては、例えば、複数の離散ページPDFデータ204に対する画像形成処理を含む印刷の各処理を、順次バッチ処置により行う。この場合、例えば、続けて行う複数回の画像形成処理に対応する複数の離散ページPDFデータ204について、処理中の離散ページPDFデータ204に対する画像形成処理のジョブが完了する前に、次のジョブ用の離散ページPDFデータ204を用意できればよい。そのため、本例によれば、例えば、PDFデータのページを分割する処理に伴う非効率性も、大きな問題とはならない。従って、本例によれば、例えば、複数の画像形成処理を適切に並列実行できる。また、これにより、画像形成処理を適切に高速化できる。
【0085】
図4は、画像形成処理の初期化に要する時間の問題について更に詳しく説明する図であり、PDF再構築処理部102においてPDFデータ202を1ページ毎に分割した場合の処理におけるシーケンス図の一例を示す。この処理は、図1図3を用いて説明した構成と異なり、本発明に対する比較例となる構成の例である。
【0086】
本比較例において、PDF再構築処理部102は、PDFデータ202の各ページを複数のページ単位PDFデータ210に分割する。ページ単位PDFデータ210は、1ページのPDFデータである。また、それぞれの画像形成処理部120a〜120dは、PDF再構築処理部102から順次受け取るページ単位PDFデータ210に対し、画像形成処理を順次行う。
【0087】
この場合、画像形成処理部120a〜120dにおいては、各ページ単位PDFデータ210に応じて1ページ分の画像形成処理を行う毎に、所定の初期化処理を行うことが必要となる。そのため、図に示したように、各画像形成処理部120a〜120dにおいて行う処理に要する時間全体に対し、初期化に要する時間の影響が大きくなる。
【0088】
従って、このような場合には、初期化に要する時間の影響により、画像形成処理に要する時間が大きく増大することとなる。また、その結果、並列に行う複数の画像形成処理の全体での処理を適切に高速化できないおそれがある。
【0089】
これに対し、例えば図1図3を用いて説明した本発明に関する構成の場合には、複数のページ分の画像形成処理あたりに1回初期化の処理を行えばよいため、初期化に要する時間の影響を十分に低減できる。また、これにより、画像形成処理を適切に高速化できる。
【0090】
尚、例えば図1図3を用いて説明した構成のように、IDカード等に印刷を行う場合、1ページあたりの印刷面積が小さいため、画像形成処理に要する時間と比べ、初期化に要する時間の割合が大きくなる。より具体的には、例えば、画像形成処理の初期化と、各ページの画像形成処理に要する時間とは、同程度になる場合もある。
【0091】
この場合、例えば、画像形成処理の初期化と、各ページの画像形成処理に要する時間とを、それぞれ5秒とすると、初期化の時間を考慮した1ページあたりの画像形成処理時間は、図3を用いて説明した構成において、(5+(5×3))/3=6.7秒となる。また、図4を用いて説明した構成において、(5+(5×1))/1=10秒となる。そのため、このような具体例からも、図1図3を用いて説明した本発明に関する構成により、画像形成処理を適切に高速化できることがわかる。
【0092】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、例えば印刷システムに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0094】
10・・・印刷システム、12・・・印刷制御部、14・・・印刷装置、102・・・PDF再構築処理部、104・・・並列画像形成処理部、106・・・印刷タイミング制御部、120a、120b、120c、120d・・・画像形成処理部、202・・・PDFデータ、204・・・離散ページPDFデータ、206・・・画像形成データ、210・・・ページ単位PDFデータ
図1
図2
図3
図4