(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693845
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】超高分子量ポリ(弗化ビニリデン)
(51)【国際特許分類】
C08F 14/22 20060101AFI20150312BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20150312BHJP
C08L 27/16 20060101ALI20150312BHJP
D01F 6/12 20060101ALI20150312BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20150312BHJP
H01M 2/16 20060101ALI20150312BHJP
H01M 4/13915 20100101ALN20150312BHJP
【FI】
C08F14/22
C08L23/00
C08L27/16
D01F6/12 Z
H01M4/62 Z
H01M2/16 P
!H01M4/13915
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-518499(P2009-518499)
(86)(22)【出願日】2007年6月26日
(65)【公表番号】特表2009-542857(P2009-542857A)
(43)【公表日】2009年12月3日
(86)【国際出願番号】US2007072085
(87)【国際公開番号】WO2008005745
(87)【国際公開日】20080110
【審査請求日】2010年6月3日
(31)【優先権主張番号】60/818,869
(32)【優先日】2006年7月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ラミン・アミン−サナイェイ
【審査官】
阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−289023(JP,A)
【文献】
特開2001−085061(JP,A)
【文献】
特開平06−336510(JP,A)
【文献】
特開平10−255808(JP,A)
【文献】
特開2000−309672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00− 19/44
C08F 2/00− 2/60
C08F 6/00−246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)10%n−メチルピロリドン(NMP)中20℃及び0.1s-1で35Pa.sを超える溶液粘度を有する超高分子量ポリ弗化ビニリデンと、(b)非弗素化界面活性剤とを含むポリ弗化ビニリデンエマルジョン。
【請求項2】
10%n−メチルピロリドン(NMP)中20℃で45Pa.sを超える溶液粘度を有する、請求項1に記載のポリ弗化ビニリデンエマルジョン。
【請求項3】
10%n−メチルピロリドン(NMP)中20℃で50Pa.sを超える溶液粘度を有する請求項2に記載のポリ弗化ビニリデンエマルジョン。
【請求項4】
前記ポリ弗化ビニリデンが単独重合体である、請求項1に記載のポリ弗化ビニリデンエマルジョン。
【請求項5】
前記ポリ弗化ビニリデンが共重合体である、請求項1に記載のポリ弗化ビニリデンエマルジョン。
【請求項6】
前記ポリ弗化ビニリデンが弗化ビニリデンとヘキサフルオルプロペンとの共重合体である、請求項5に記載のポリ弗化ビニリデンエマルジョン。
【請求項7】
高配向繊維;高耐衝撃性物品;ポリオレフィン用の重合体加工用添加剤;リチウムイオン電池における電極用の結合剤及び/又は隔離板;ゲル押出繊維;ゲル押出フィルム;膜及び中空繊維;並びに流延膜、フィルム及び中空繊維よりなる群から選択される物品に用いられる、請求項1に記載のポリ弗化ビニリデンエマルジョン。
【請求項8】
重合反応器に、100〜2000ppmのレベルの連鎖移動剤+有機過酸化物を添加する工程を含む、請求項1に記載のポリ弗化ビニリデンエマルジョンの形成方法であって、該方法は、開始剤の一部及びフッ化ビニリデン(VDF)を最初の装入で添加し、残りを連続的な供給で添加するエマルジョン重合である方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、超高分子量及び予想外の物性を有するポリ弗化ビニリデン重合体に関するものである。この超高分子量重合体は、透明であり、融点が低く、結晶化度が低下し、耐衝撃性に優れ、しかも降伏点伸びが大きい。この超高分子量ポリ弗化ビニリデンは、最終用途及び最終製品において、そのまま用いたり、又は他の重合体とブレンドすることができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ポリ弗化ビニリデン(PVDF)重合体は、押出、射出成形、紡糸、押出吹込成形及びインフレーションフィルム法といった多くの異なる方法によって重合体構造物に成形される溶融加工可能な樹脂である。また、これらの重合体は、それらの低い表面エネルギーと相挙動のため、重合体加工助剤としても使用されている。PVDFの分子量が増加するとその溶融強度も増加することが知られているが、引落比のような他の特性は減少する場合が多い。架橋されたPVDFは、その溶融強度を増加させる可能性があるが、ただし、これらのPVDFは加工が容易ではなく、かつ、多くの場合かなりの量のゲルを含有するという理由で限界がある。
【0003】
高分子量のPVDFは、乳化重合により産業規模で作られている。最も高い分子量の商品であるKynar 761A(アーケマ社)は、35kpの溶融粘度及び7.5%NMP中25℃で350cpの溶液粘度を有する。懸濁重合により産業規模で製造されている最も高い分子量のPVDFであるKF−7200(株式会社クレハ)は、7.5%NMP中25℃で約1900cpの溶液粘度を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
驚くべきことに、超高分子量を有する弗素重合体を作製し加工することができること、及び当該超高分子量材料によって示される物性が単に分子量の大きな増加により予想されるに過ぎない物性の域をはるかに超えるものであることが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の概要
本発明は、10%のn−メチル
ピロリドン(NMP)中20℃で35Pa.sを超える溶液粘度を有する超高分子量ポリ弗化ビニリデンに関する。当該超高分子量ポリ弗化ビニリデンは、非常に大きい降伏点伸び、優れた透明性、高いゲル強度及び優れた衝撃強度を含め、ユニークな特性を有する。
【0006】
また、本発明は、超高分子量ポリ弗化ビニリデンの合成方法に関するものでもある。
【0007】
さらに、本発明は、当該超高分子量ポリ弗化ビニリデンの使用に関するものでもある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、他の市販試料に対する、本発明の超高分子量PVDF(例1及び2)の溶液挙動及び粘度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明の詳細な説明
ここで使用するときに、用語「弗化ビニリデン重合体」は、その意味に、通常は固体の高分子量単独重合体及び高分子量共重合体の両方を含む。このような共重合体としては、テトラフルオルエチレン、トリフルオルエチレン、クロルトリフルオルエチレン、ヘキサフルオルプロペン、弗化ビニル、ペンタフルオルプロペン、ペルフルオルメチルビニルエーテル、ペルフルオルプロピルビニルエーテル及び弗化ビニリデンと容易に共重合するであろう任意の他の単量体よりなる群から選択される少なくとも1種の共単量体と共重合した少なくとも50モルパーセントの弗化ビニリデンを含有するものが挙げられる。特に好ましいものは、少なくとも約70から99モルパーセントまでの弗化ビニリデンと、それに対応して1〜30パーセントのテトラフルオルエチレンとから構成される共重合体、例えば英国特許第827,308号に開示されたもの;及び約70〜99パーセントの弗化ビニリデンと1〜30パーセントのヘキサフルオルプロペンとから構成される共重合体(例えば米国特許第3,178,399号);及び約70〜99モルパーセントの弗化ビニリデンと1〜30モルパーセントのトリフルオルエチレンとから構成される共重合体である。弗化ビニリデンとヘキサフルオルプロペンとテトラフルオルエチレンとの三元共重合体、例えば米国特許第2,968,649号に開示されたもの、及び弗化ビニリデンとトリフルオルエチレンとテトラフルオルエチレンとの三元共重合体も、ここで具体化した方法によって製造できる弗化ビニリデン共重合体の代表例である。
【0010】
本発明の方法は、弗化ビニリデン単独重合体の重合に関する一般的な例示であるが、当業者であれば、同様の重合技術を弗化ビニリデンと一種以上の弗素化又は非弗素化共反応性単量体との共重合体の製造にも適用できることが分かるであろう。
【0011】
当該重合体は、乳化重合方法で作製するのが便利であるが、懸濁法、溶液法又は超臨界CO
2法で合成することもできるであろう。乳化重合方法では、反応器に脱イオン水と、重合中に反応体の塊を乳化することができる水溶性界面活性剤と、パラフィン系防汚剤とを装入する。
【0012】
この混合物を撹拌し、そして脱酸素化する。続いて、所定量の連鎖移動剤(CTA)を反応器に導入するが、ただし、本願の方法ではCTAは使用しなくてもさしつかえない。反応器の温度を所望のレベルにまで上昇させ、そして弗化ビニリデンをこの反応器に導入する。弗化ビニリデンの最初の装入分を導入し、反応器内の圧力が所望のレベルに達したら、開始剤のエマルジョン又は溶液を導入して重合を開始させる。弗化ビニリデンを追加の開始剤と同時に供給して所望の圧力を保持する。反応の温度は使用する開始剤の特徴に応じて変更することができる。当業者であればそのやり方が分かるであろう。典型的には、反応器の温度は、約30℃〜120℃、好ましくは約60℃〜110℃であろう。重合圧力は、通常40〜50気圧の範囲内で変更できる。反応器内で所望の重合体転化量に達したら単量体の供給を停止するが、ただし、開始剤の供給は、残留単量体を消費させるために適宜続行する。続いて、残留ガス(未反応の単量体を含有する)を排出し、そして反応器からラテックスを回収する。次いで、重合体を、標準的な方法、例えば、酸凝固、凍結融解、噴霧乾燥、凍結乾燥又は高速せん断凝固分離によってラテックスから分離することができる。
【0013】
使用される乳化剤は、弗化ビニリデン重合の技術分野において知られているように、弗素化されていてもよいし、弗素化されていなくてもよい。当該重合に使用するのに好適な界面活性剤は、当該技術分野において周知であり、通常は水溶性ハロゲン化界面活性剤、特に弗素化界面活性剤、例えば、過弗素化又は部分弗素化アルキルカルボキシレートのアンモニウム、置換第四アンモニウム又はアルカリ金属塩、過弗素化又は部分弗素化モノアルキル燐酸エステル、過弗素化又は部分弗素化アルキルエーテル又はポリエーテルカルボキシレート、過弗素化又は部分弗素化アルキルスルホネート及び過弗素化又は部分弗素化アルキルスルフェートである。非弗素化界面活性剤としては、米国特許出願公開第10/832535号;同11/149797号;同60/706463号;及び同60/706464号に記載されたものが挙げられる。界面活性剤の装入量は、使用される全単量体の重量に基づき0.05重量%〜2重量%、最も好ましくは、界面活性剤の装入量は0.1重量%〜0.2重量%である。
【0014】
反応は、無機過酸化物、酸化剤及び還元剤の「レドックス」系及び有機過酸化物を含めて弗素化単量体の重合のために知られている任意の好適な開始剤を添加することによって開始及び維持できる。典型的な無機過酸化物の例は、65℃〜105℃の温度範囲で有用な活性を有する過硫酸のアンモニウム塩又はアルカリ金属塩である。「レドックス」系は温度が低くても機能することができ、例としては、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド又は過硫酸塩といった酸化剤と、還元金属塩(鉄(II)塩が具体例である)といった還元剤との組合せが挙げられ、随意に、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜燐酸塩又はアスコルビン酸といった活性剤が併用される。重合に使用できる有機過酸化物のなかでは、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、ペルオキシエステル類及びペルオキシジカーボネート類の部類が挙げられる。過酸化ジアルキルの例は過酸化ジ−t−ブチルであり、ペルオキシエステルの例はペルオキシピバル酸t−ブチル及びペルオキシピバル酸t−アミルであり、ペルオキシジカーボネートの例は、ジ(n−プロピル)ペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(sec−ブチル)ペルオキシジカーボネート及びジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネートである。弗化ビニリデン重合及び他の弗素化単量体との共重合にジイソプロピルペルオキシジカーボネートを使用することは、米国特許第3,475,396号に教示されており、さらにこれを弗化ビニリデン/ヘキサフルオルプロピレン共重合体を作製する際に使用することが米国特許第4,360,652号に例示されている。弗化ビニリデン重合にジ(n−プロピル)ペルオキシジカーボネートを使用することは、特開昭58−065711号公報に記載されている。重合に必要な開始剤の量は、その活性及び重合のために使用される温度に関係する。使用される開始剤の総量は、一般に、使用される全単量体重量に基づき重量基準で100〜2000ppmである。典型的には、反応開始時に十分な開始剤を添加し、続いて適宜追加の開始剤を添加して重合を所定の転化率に維持することができる。この開始剤は、選択した開始剤に応じて、純粋な形態、溶液の状態、懸濁液の状態又はエマルジョンの状態で添加できる。具体例として、ペルオキシジカーボネートは、水性エマルジョンの状態で添加するのが便利である。
【0015】
この重合に好適な連鎖移動剤(CTA)は当該技術分野において公知であり、典型的には、エタン及びプロパンのような短鎖炭化水素、酢酸エチル又はマレイン酸ジエチルのようなエステル、HCFCなどである。有機過酸化物を開始剤として使用する場合には、これは、フリーラジカル重合中においても効果的なCTAとして作用し得るであろう。ただし、追加のCTAを反応開始と同時に全て添加してもよいし、或いは、部分的に添加したり、反応期間全体にわたって連続的に添加してもよい。CTAの量とその添加態様は、所望の特性に依存する。本発明では、通常、慎重に添加されるCTAの量は、ゼロ又はほぼゼロ、すなわち500ppm以下である。これに対し、有機過酸化物+CTAの装入量を含めた全有機物装入量は、使用される全単量体重量に基づき重量基準で100〜2000ppm、最も好ましくは全有機物装入量は、重量基準で150〜1500ppmである。
【0016】
当該重合では、随意にパラフィン系防汚剤を使用する。任意の長鎖飽和炭化水素ワックス又は同オイルを使用することができる。パラフィンの反応器添加量は、使用される全単量体重量を基準にして0.01重量%〜0.3重量%である。
【0017】
弗化ビニリデンとヘキサフルオルプロピレンとの共重合を実行する場合、又は反応速度の異なる任意の2種の共反応性弗素化単量体の共重合を実行する場合には、単量体の初期装入比率及び重合中の増加単量体供給比率を見かけの反応性比に従って調節して最終共重合体生成物における組成のドリフトを回避することができる。
【0018】
市販のPVDFは、弾性が低く、溶融強度が低く、しかも耐衝撃性に乏しい直鎖状の重合体である。このものは高い降伏点伸びを示さないので、高配向超強靱繊維又は同フィルムを製造するのは可能ではないであろう。通常のPVDFの溶液粘度は、フィルム流延、繊維の製造又は中空繊維の製造といった速度の速いゲル押出方法に使用するのに十分なゲル強度を有していない。さらに、通常のPVDFは、PVDFをリチウムイオン電池における結合剤として使用する場合にはいくつかの欠点を有する。というのは、電極へのPVDFの添加と充填は、電池の性能にとって重要な要素だからである。
【0019】
本発明の超高分子量ポリ弗化ビニリデンは、市販のPVDFとは非常に異なる興味深くかつ予測できない特性の組合せを示す。これらの特性のいくつかとしては、さらに低い溶融温度、減少した結晶化度、極めて優れた耐衝撃性及び予測することができないほど改善した透明性が挙げられる。さらに驚くべきことに、当該重合体は、非常に大きい降伏点伸びを示す。
【0020】
本発明の超高分子量PVDFの溶液粘度は、10%NMP中20℃で35Pa.sを超え;好ましくは45Pa.sを超え、さらに好ましくは50Pa.sを超える。特定の理論に縛られるわけではないが、このような高い溶液粘度の溶液中において溶解重合体鎖が浸透極限に達し、その結果として溶液特性の突然の変化を示すものと予想される。この溶液は、非ニュートンとなってずり減粘挙動を示し、そして重合体濃度が低くても高いゲル強度を示すことができると考えられる。通常のPVDF溶液は、低い重合体濃度ではこれらのタイプの挙動を示さない。
【0021】
当該超高分子量PVDFは、通常のPVDFと比較して高い透明性を示す。このPVDFから作られた物品は、このような高い透明性が望まれる用途に有用であろう。
【0022】
本発明のPVDFは、非常に大きい降伏点伸びを示す。この特性により、この新規な重合体を高配向繊維の製造及び高耐衝撃性物品といった多くの用途に使用することが可能になる。
【0023】
さらに、この新規な重合体を使用することは、ポリオレフィン用の重合体加工用添加剤;電極用の結合剤として及び/又は隔離板として液体リチウムイオン電池の製造;固体リチウムイオン電池用のPMEの製造;繊維のゲル押出、膜及びフィルムのゲル押出又は流延並びに中空繊維といった多くの用途において利益となり得るであろう。また、このものは、ポリオレフィンを処理加工する際の添加剤としても使用できる。
【0024】
また、本発明の超高分子量PVDFを通常のPVDF及びポリメタクリル酸メチル及びその共重合体といった他の相溶性重合体とブレンドして、その溶融強度及び他の特性を改善させることもできる。
【0025】
当業者であれば、本明細書における開示及び列挙したこれらの材料の用途を参考にして、このようなユニークな複数の特性を有するPVDFについて多くの他の用途を想起することができる。
【0026】
次の実施例は、本発明の実施について本発明者が考えるベストモードをさらに例示するものであり、限定ではなく例示であると考えるべきである。
【実施例】
【0027】
実施例
例1、2
80ガロンのステンレススチール製反応器に、345lbsの脱イオン水、225gのペルフルオルデカン酸アンモニウム、6gのパラフィンワックス及び必要量の酢酸エチル(連鎖移動剤(CTA))を装入した。排気後に、23rpmで撹拌を開始し、そして反応器を加熱した。反応器の温度が90℃の所望の設定点にまで到達した後に、VDFの装入を開始する。続いて、当該反応器に40lbsのVDFを装入することによって反応器の圧力を650psiまで上昇させた。反応器の圧力が安定した後に、当該反応器に3.5lbsのNPP(ジ−N−プロピルペルオキシジカーボネート)エマルジョンを添加して重合を開始させた。この開始剤エマルジョンは、0.2重量%のペルフルオルデカン酸アンモニウムを含有する脱イオン水中1.0重量%NPPであった。このNPPエマルジョンのさらなる添加の割合を調節して、1時間当たりおよそ70ポンドのVDF重合速度を得、そしてこれを維持した。VDFの単独重合を、約190ポンドのVDFが反応素材に導入されるまで続行した。VDFの供給を止め、そして、このバッチを上記反応温度で反応させ、かつ、減少圧力で残留単量体を消費させるように開始剤を供給することによっって完全に反応させた。20分後に撹拌を止め、そして反応器のガス抜きをし、ラテックスを回収した。このラテックスを凝固させ、該ラテックスを脱イオン水で洗浄し、そして乾燥させることによって重合体樹脂を単離した。こうして製造された樹脂は次の特性を有する。
【0028】
掲げた比較例は、アーケマ社製の製品:KYNAR 761A、KYNAR FLEX7300及びKYNAR FLEX7200についてのものである。
【表1】
【表2】