(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シートクッションと、前記シートクッションの少なくとも一部を上昇させられるように構成されたクッション昇降機構とを備え、前記シートクッションに着座している着座者が降車時に前記シートクッションの上昇による押上げ力を受けられるように構成された車両用シートであって、
降車時に開かれるドアが所定位置まで開かれていない状態では、前記クッション昇降機構の駆動部を動作させる操作スイッチが操作されても、前記駆動部が動作しないように構成されており、
前記操作スイッチは、前記ドアの室内側であって、前記ドアを開方向に所定位置まで回動させた着座者が上体を車両の外側に出して、前傾姿勢で操作できるように、そのドアの窓の下側に配置されていることを特徴とする車両用シート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した車両用シートでは、着座者の姿勢の如何に係わらずその着座者が立ち上がろうとするときにシートクッション100が着座者の臀部を押上げる。このため、着座者が上体を起こした状態で立ち上がろうとすると、着座者の頭部が車両の乗降口の天井部分に当たることがある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、着座者が降車する際に、その着座者が乗降口の天井部分に頭を当てないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、シートクッションと、前記シートクッションの少なくとも一部を上昇させられるように構成されたクッション昇降機構とを備え、前記シートクッションに着座している着座者が降車時に前記シートクッションの上昇による押上げ力を受けられるように構成された車両用シートであって、
降車時に開かれるドアが所定位置まで開かれていない状態では、前記クッション昇降機構の駆動部を動作させる操作スイッチが操作されても、前記駆動部が動作しないように構成されており、前記操作スイッチは、前記ドアの室内側であって、前記ドアを開方向に所定位置まで回動させた着座者が上体を車両の外側に出して、前傾姿勢で操作できるように、そのドアの窓の下側に配置されて
いることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、クッション昇降機構の駆動部の操作スイッチは、降車時に開かれるドアの室内側であって、そのドアの窓の下側に配置されており、前記ドアが開かれた状態でその操作スイッチが操作されることで、前記駆動部が動作するように構成されている。このため、着座者は、降車時にドアを開けた後、上体を自然に車両の外側に出し、前傾姿勢で操作スイッチを操作するようになる。そして、着座者が操作スイッチを操作することでクッション昇降機構が動作し、シートクッションが上昇するようになる。即ち、着座者は前傾姿勢の状態でシートクッションにより臀部が押上げられるため、前傾姿勢で立ち上がるようになる。これにより、着座者が頭部を車両の乗降口の天井部分に当てるようなことがなくなる。
また、着座者が運転中に誤って操作スイッチにさわっても可動座部が上昇するようなことがない。
【0008】
請求項2の発明によると、クッション昇降機構の駆動部はモータを備えており、操作スイッチは操作されている間だけオンし、その操作スイッチがオンしている間だけモータに対する給電が可能なように構成されていることを特徴とする。
このため、着座者はシートクッションが上昇する間、常に、操作スイッチを操作することで前傾姿勢を保持するようになる。この結果、着座者の頭部が乗降口の天井部分に当たり難くなる。
【0009】
請求項3の発明による
と、クッション昇降機構は、前記シートクッションの少なくとも一部を車両外側で低く、室内側で高くなるように傾斜した状態で上昇させられるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、着座者が降車する際に、その着座者が乗降口の天井部分に頭を当てるようなことがなくなる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態1]
以下、
図1から
図7に基づいて本発明の実施形態1に係る車両用シートについて説明する。
ここで、図中における前後左右及び上下は車両用シート及びその車両用シートが設置される乗用車の前後左右及び上下に対応している。また、明細書中の前後左右及び上下も上記した前後左右及び上下に対応している。
【0013】
<車両用シート10の概要について>
本実施形態に係る車両用シート10は、
図6、
図7に示すように、車高が比較的低い乗用車2において、右側の乗降口3を通って右方向から着座するように構成されたシート(運転席等)である。
車両用シート10は、
図1(A)(B)に示すように、シート本体30と、そのシート本体30を車室フロアFに対して前後スライドさせる前後スライド機構20等とを備えている。
シート本体30は、シートフレーム31と、そのシートフレーム31上に設置されたシートクッション40と、前記シートフレーム31の後端部に上下回動可能な状態で連結されたシートバック35と、シートクッション40の一部M(42,44c)を前記シートフレーム31等に対して昇降させるクッション昇降機構50とから構成されている。
【0014】
<シートクッション40について>
シートクッション40は、
図1(A)に示すように、中央部分の前側から順番にクッション前部41、クッション中央部42、クッション後部43を備えており、前記中央部分の右側(乗降口(図示省略)側)に右サイド部44、前記中央部分の左側(車室中央側)に左サイド部45が設けられている。
クッション前部41は、着座した乗員の主として大腿部を支える部分であり、着座面が後側で低くなるように緩やかに傾斜した状態で形成されている。クッション中央部42は、主として乗員の臀部を支える部分であり、着座面が最も低い位置にあって平坦に形成されている。クッション後部43は前方で低くなるように緩やかに傾斜した状態で形成されている。
右サイド部44は、着座面が右側(乗降口側)で高くなるように傾斜した状態で形成されており、前部44f、中央部44c及び後部44bに分割されている。左サイド部45は、着座面が左側(車室中央側)で高くなるように傾斜した状態で形成されている。
【0015】
シートクッション40のクッション中央部42と右サイド部44の中央部44cとは一体化されており、そのシートクッション40の他の部分、即ち、右サイド部44の前部44f、後部44bとクッション前部41と左サイド部45とクッション後部43とから分割されている。そして、シートクッション40の右サイド部44の前部44f、後部44bとクッション前部41と左サイド部45とクッション後部43とがシートフレーム31に固定されている。このため、シートクッション40の右サイド部44の前部44f、後部44bとクッション前部41と左サイド部45とクッション後部43とを、以後、シートクッション40の固定座部Sと呼ぶことにする。
そして、シートクッション40のクッション中央部42と右サイド部44の中央部44cとが、
図1(B)に示すように、クッション昇降機構50(後記する)の働きでシートクッション40の固定座部S、及びシートフレーム31に対して昇降可能に構成されている。このため、シートクッション40のクッション中央部42と右サイド部44の中央部44cとを、以後、シートクッション40の可動座部Mと呼ぶことにする。
【0016】
<クッション昇降機構50について>
クッション昇降機構50は、シートフレーム31、及びシートクッション40の固定座部Sに対してシートクッション40の可動座部Mを上昇させ、さらに乗降口側が低く、室内側が高くなるように傾斜させるための機構である。クッション昇降機構50は、
図2の縦断面図に示すように、シートフレーム31の前後に吊り支持されたベース板52と、そのベース板52上に設置された前後一対のクロスリンク53(
図3参照)と、それらのクロスリンク53を動作させる駆動部(図示省略)とから構成されている。
クッション昇降機構50のベース板52は、
図2に示すように、側面形状略U字形に折り曲げ成形されており、そのベース板52の前端上部がシートフレーム31の前部にボルト止めされている。また、前記ベース板52の後端上部がシートフレーム31の後部で幅方向に延びる後部支持管31tに連結されている。
【0017】
クッション昇降機構50の前後一対のクロスリンク53は、シートクッション40の可動座部Mを前後から支えてその可動座部Mを昇降及び傾斜させられるように構成されている。
クロスリンク53は、
図3に示すように、直線状の第1リンク53aと第2リンク53bとから構成されており、両リンク53a,53bの中央部近傍が中央連結ピン53xによって互いに上下回動可能な状態で連結されている。そして、第1リンク53aの基端部(下端部)が下端連結ピン54によって上下回動可能な状態でベース板52の底部右端に形成された受け部(図示省略)に連結されている。また、第1リンク53aの先端部(上端部)にはローラ53rが装着されており、そのローラ53rがシートクッション40の可動座部Mの下側に左右方向に延びるように形成されたレール部40fに沿って転動できるように構成されている。
また、第2リンク53bの基端部(上端部)は、上端連結ピン55によって上下回動可能な状態でシートクッション40の可動座部Mにおけるレール部40fの右端近傍に連結されている。また、第2リンク53bの先端部(下端部)にはローラ53zが装着されており、そのローラ53zがベース板52の底部52yに沿って左右方向に転動できるように構成されている。
【0018】
クッション昇降機構50の駆動部(図示省略)は、モータ56(
図4参照)の回転力を利用してクロスリンク53の第1リンク53aと第2リンク53bとを起立方向、あるいは倒伏方向に動作させて、可動座部Mを昇降及び傾斜させる部分である。即ち、モータ56が正転方向に回転することで、前記駆動部はクロスリンク53を起立させる方向に動作する。これにより、シートクッション40の可動座部Mが着座位置から上昇し、その可動座部Mが上限位置まで上昇する過程で乗降口3側に所定角度で傾斜するようになる。また、モータ56が逆転方向に回転することにより、前記駆動部はクロスリンク53を倒伏させる方向に動作する。これにより、シートクッション40の可動座部Mが下降して元の着座位置まで戻される。
【0019】
モータ56は、
図4に示す電気回路によって駆動されるように構成されている。
即ち、前記電気回路は、着座者が操作する操作スイッチ57と、運転席側のドア5が所定角度(例えば、約30°)を超えて開方向に水平回動したときにオン動作するドアスイッチLS等により構成されている。なお、シートクッション40には、体重検知センサ等も設けられており、体重に応じてドアスイッチLSのオン動作角度を調整できるように構成されている。
操作スイッチ57は、
図5に示すように、ドア5の室内側で、窓Wの下側に設けられたアームレスト5aの上面前側に取付けられている。これにより、着座者が降車する際、前記ドア5を開方向に所定角度(約30°)だけ水平回動した状態で、着座者が上体を乗降口3の外に出し、前傾姿勢で前記操作スイッチ57にさわれるようになる。
【0020】
操作スイッチ57は、
図4に示すように、上昇、下降、及び停止の三方向に切換え可能に構成されており、例えば、バネ力で常に停止位置に保持されている。前記停止位置では、上昇側の接点と下降側の接点とが共に開放されている(オフ状態)。この状態から操作スイッチ57がバネ力に抗して上昇方向に押し操作されると、押し操作されている間、
図4に示すように、上昇側の接点が閉じられる(上昇側オン)。また、操作スイッチ57がバネ力に抗して下降方向に押し操作されると、押し操作されている間、下降側の接点が閉じられる(下降側オン)。
操作スイッチ57は、
図4に示すように、ドアスイッチLSを介してモータ56に接続されている。このため、運転席側のドア5が所定角度(例えば、約30°)を超えて開放されてドアスイッチLSがオンし、かつ操作スイッチ57が上昇側オン、あるいは下降側オンのときに、モータ56に対して給電が行われる。
なお、操作スイッチ57が上昇側オン、あるいは下降側オンのときでも、ドア5が所定角度(例えば、約30°)を超えて開放されていない状態では、ドアスイッチLSがオフのため、モータ56に対する給電は行われない。
【0021】
<本実施形態に係る車両用シート10の動作について>
車両用シート10(運転席)に着座している着座者が降車する場合には、先ず、
図6に示すように、ドア5を開き、身体を右側に向けて、乗降口3から脚部を車外に出すようにする。この状態で、ドア5は約30°以上水平回動して半開状態に保持されている。次に、着座者が上体を乗降口3から外に出し、操作スイッチ57を上昇方向に押し操作する。前述のように、操作スイッチ57は、ドア5のアームレスト5aの上面に取付けられているため、操作スイッチ57を操作する際に着座者は前傾姿勢になる。このようにして、操作スイッチ57が上昇方向に押し操作されると、クッション昇降機構50のモータ56に対して給電が行われ、そのモータ56が正転方向に回転してクロスリンク53が起立方向に動作する。この結果、シートクッション40の可動座部Mが上昇し、着座者の臀部が可動座部Mによって押上げられる。このとき、着座者は前傾姿勢で操作スイッチ57を押し操作しているため、着座者の臀部が可動座部Mによって押上げられても(
図7参照)、着座者の頭部が乗降口3の天井部分に当たることはない。そして、
図7に示すように、シートクッション40の可動座部Mが上限位置まで上昇し、さらに乗降口3側が低く、室内側が高くなるように傾斜した状態で、モータ56が停止する。この状態で、着座者は中腰の姿勢となり、膝が伸びるため立ち上がりが楽になる。これにより、体力が低下した着座者であっても自身の力で降車できるようになる。
なお、この状態から可動座部Mを元の着座位置まで下降させるには、ドア5を開いたままで操作スイッチ57を下降方向に押し操作する。
【0022】
<本実施形態に係る車両用シート10の長所について>
本実施形態に係る車両用シート10によると、クッション昇降機構50のモータ56の操作スイッチ57は、降車時に開かれるドア5の室内側であって、かつドア5が開方向に所定位置まで回動させられた状態で着座者が前傾姿勢でさわれる位置に配置されている。このため、降車時に、着座者はドア5を開けた後、上体を自然に車両の外側に出し、前傾姿勢で操作スイッチ57を操作するようになる。そして、着座者が操作スイッチ57を操作することでクッション昇降機構50が動作し、シートクッション40の可動座部Mが上昇するようになる。即ち、着座者は前傾姿勢の状態で可動座部Mにより臀部が押上げられるため、前かがみの姿勢で立ち上がるようになる。これにより、着座者が頭部を乗降口3の天井部分に当てるようなことがなくなる。
また、操作スイッチ57は操作されている間だけオンし、その操作スイッチ57がオンしている間だけモータ56に対する給電が可能なように構成されている。このため、着座者は可動座部Mが上昇する間、常に、操作スイッチ57を操作することで前傾姿勢を保持するようになる。この結果、着座者の頭部が乗降口3の天井部分に当たり難くなる。
また、ドア5が開方向に所定位置まで回動していない状態では、操作スイッチ57がオンしていても、モータ56に対する給電が行われないように構成されている。このため、着座者が運転中に誤って操作スイッチ57にさわっても可動座部Mが上昇するような不具合はない。
【0023】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、シートクッション40の可動座部Mを上昇させ、乗降口3側が低く、室内側が高くなるように傾斜させるクッション昇降機構50を例示した。しかし、シートクッション40を前向き位置から水平回動させて乗降口3側を向け、そのシートクッション40の可動座部Mを上昇させながら前側(乗降口3側)が低くなるように傾斜させる構成とすることも可能である。
また、本実施形態では、操作スイッチ57をドア5のアームレスト5aの位置に配置する例を示したが、操作スイッチ57をドア5の開放レバーの近傍に設けることも可能である。
また、本実施形態では、シートクッション40を可動座部Mと固定座部Sとから構成し、可動座部Mをクッション昇降機構50で昇降させる例を示した。しかし、例えば、シートクッション40を全体的にクッション昇降機構50により昇降させる構成でも可能である。
また、クロスリンク53を使用したクッション昇降機構50を例示したが、クロスリンク53の代わりにボールネジ&ナット機構、エアシリンダ等を利用したクッション昇降機構を使用することも可能である。
また、乗降口3の天井部分に着座者の頭部の接近を検知するセンサ、例えば、光電センサと光源とを設け、着座者の頭部が天井部分の近傍で光を遮ることを光電センサが検出したときに、クッション昇降機構50が可動座部Mの上昇を停止させるようにすることも可能である。
また、車両用シート10を運転席として使用し、運転席側のドア5に操作スイッチ57を設ける例を示したが、運転席以外の座席に本発明に係る車両用シート10を適用することも可能である。