(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スイッチング素子とインダクタと整流ダイオードと出力平滑コンデンサとを含む降圧コンバータ回路部と、前記スイッチング素子に直列に接続されて前記スイッチング素子に流れる電流を電圧に変換して検出する電流検出回路と、前記スイッチング素子に流れるピーク電流の制限値の基準となる基準電圧を出力する基準電圧生成回路と、前記スイッチング素子をオン/オフ制御するスイッチング制御回路と、前記電流検出回路からの検出信号と前記基準電圧とを比較して前記検出信号が前記基準電圧を超えたときに前記スイッチング素子をオフするためのターンオフ信号を前記スイッチング制御回路に出力する比較器とを備え、直流電圧源からの電圧を入力して直流電力を負荷部に供給するスイッチング電源回路において、
前記インダクタに結合されて前記インダクタに印加される電圧に比例した電圧を検出する補助巻線と、前記スイッチング素子がオン状態のときの前記補助巻線電圧の極性を負電圧としたとき、前記補助巻線から出力される補助巻線電圧を入力して前記補助巻線電圧が正電圧からゼロボルト付近の閾値電圧に達したときに前記スイッチング素子をオンするためのターンオン信号を前記スイッチング制御回路に出力するゼロ電圧検出回路と、前記負荷部に流れる出力電流を調整するための調光信号を入力し、前記調光信号に基づいた前記基準電圧を生成するための基準電圧生成信号を前記基準電圧生成回路に出力する調光信号処理部とを備え、
前記スイッチング制御回路は、前記ターンオン信号と前記ターンオフ信号に基づき前記スイッチング素子をオン/オフ制御する第1の動作モードと、前記スイッチング素子を前記ターンオフ信号と前記スイッチング制御回路内で生成される一定のスイッチング周期に基づくタイミングのターンオン信号によりオン/オフ動作させる第2の動作モードとを有し、
前記調光信号処理部は、前記調光信号に基づいて前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとを交互に切り替えるための切り替えパルス信号を前記スイッチング制御回路に出力し、前記第2の動作モードにおける前記スイッチング周期は、スイッチング電源回路の動作範囲内において、前記インダクタが電流不連続モードで動作する周期に設定されることを特徴とするスイッチング電源回路。
前記調光信号処理部には、前記調光信号に対して第1及び第2の設定点が設定されており、前記出力電流の最大値を示す調光点から前記第1の設定点までの範囲の調光信号が入力されているときには、該調光信号が示す出力電流値に対応した基準電圧を生成するための前記基準電圧生成信号を出力し、前記第1の設定点から前記出力電流の最小値を示す調光点までの範囲の調光信号が入力されているときには、常に前記第1の設定点が示す出力電流値に対応した基準電圧を生成するための前記基準電圧生成信号を出力するとともに、
前記出力電流の最大値を示す調光点から前記第2の設定点までの範囲の調光信号が入力されているときには、常に前記第1の動作モードでスイッチング動作を行うための前記切り替えパルス信号を出力し、前記第2の設定点から前記出力電流の最小値を示す調光点までの範囲の調光信号が入力されているときには、前記第1の動作モードと前記第2の動作モードを交互に切り替える前記切り替えパルス信号を出力して、前記調光信号に基づき前記第1の動作モードで動作している割合を変化させることにより前記出力電流の調節を行うことを特徴とする請求項1に記載のスイッチング電源回路。
前記補助巻線に並列に接続される整流平滑回路を備え、前記補助巻線電圧を前記整流平滑回路により整流平滑して得られる直流電圧を、前記スイッチング制御回路と、前記調光信号処理部と、前記比較器と、前記基準電圧生成回路と、前記ゼロ電圧検出回路とを含むスイッチング制御部の駆動用電圧として供給することを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチング電源回路。
前記補助巻線と前記ゼロ電圧検出回路の間に接続され、前記補助巻線からの出力電圧を分圧する分圧回路と前記ゼロ電圧検出回路による前記ゼロボルト付近の閾値電圧の検出タイミングを調節するための遅延回路とにより構成される分圧遅延回路を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載のスイッチング電源回路。
前記降圧コンバータ回路部は、前記直流電圧源の正極側に前記整流ダイオードのカソード端子と前記負荷部の正極側が接続され、前記負荷部の負極側と前記整流ダイオードのアノード端子との間に前記インダクタが接続され、前記整流ダイオードと前記インダクタの接続点と前記直流電圧源の負極側との間に前記電流検出回路が直列接続された前記スイッチング素子が接続され、前記負荷部に対して並列に前記出力平滑コンデンサが接続されることにより構成されるローサイドスイッチング型の降圧コンバータ回路であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載のスイッチング電源回路。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るスイッチング電源回路1を示す回路構成図である。また、
図2は、スイッチング電源回路1の動作を模式的に示す波形チャートである。
【0021】
図1に示すように、スイッチング電源回路1は、スイッチング素子Q1,インダクタL1,整流ダイオードD1及び出力平滑コンデンサC1とで構成される降圧コンバータ回路部2と、スイッチング素子Q1をオン/オフ制御するスイッチング制御回路3と、スイッチング素子Q1に直列に接続される電流検出回路4と、スイッチング素子Q1に流れるピーク電流の制限値となる基準電圧を出力する基準電圧生成回路5と、電流検出回路4の出力信号が基準電圧を超えたときにスイッチング素子Q1をオフするためのターンオフ信号をスイッチング制御回路3に出力する比較器6とを備え、直流電圧源Vdcからの電圧を入力して直流電力を負荷部7に供給する。
【0022】
本発明では、上記の構成に加え、インダクタL1に結合され、インダクタL1に印加される電圧を検出する補助巻線8と、スイッチング素子Q1がオン状態のときの補助巻線8の電圧の極性を負電圧としたとき、この補助巻線電圧が正電圧から0V(ゼロボルト)付近の閾値電圧に達したときにスイッチング素子Q1をオンするためのターンオン信号をスイッチング制御回路3に出力するゼロ電圧検出回路9を備えている。
【0023】
図1では、降圧コンバータ回路部2の構成として、負荷部7に出力平滑コンデンサC1が並列接続され、この並列回路にインダクタL1が直列に接続され、この並直列回路に整流ダイオードD1が並列接続され、整流ダイオードD1のカソード端子は出力平滑コンデンサC1の一端とともに直流電圧源Vdcの正極端子に接続され、アノード端子はインダクタL1を介してコンデンサC1の他端に接続され、スイッチング素子Q1は、ドレイン端子がダイオードD1のアノード端子に接続され、ソース端子が電流検出回路4に接続された、いわゆるローサイドスイッチング型の回路を構成している。本発明は、ハイサイドスイッチング型の降圧コンバータにも適用可能であるが、ローサイドスイッチング型の降圧コンバータとすることで簡単で安価な回路構成とすることができるため、より好適である。
【0024】
次に、
図1及び
図2を用いて、スイッチング電源回路1の基本回路動作について説明する。ここでは、基準電圧生成回路5から出力される基準電圧を1V、電流検出回路4を構成する抵抗素子4aの抵抗値を1Ωとして説明する。また、本説明では、閾値電圧は0Vに設定されているものとする。
【0025】
直流電圧源Vdcから直流電圧が印加され、かつスイッチング制御回路3が動作を開始すると、スイッチング素子Q1がターンオンし、直流電圧源Vdcの正極側から流れる電流は負荷部7と出力平滑コンデンサC1,インダクタL1,スイッチング素子Q1を通り、電流検出回路4を介して直流電圧源Vdcの負極側に流れ、インダクタ電流ILは
図2のA→Bのように流れる。スイッチング素子Q1のオン期間中には、直流電圧源Vdcから負荷部7に電力が供給され、同時にインダクタL1にエネルギーが蓄積される。
【0026】
スイッチング素子Q1に流れる電流が増加し、1A(アンペア)に達すると(
図2のB点;ピーク電流値Ipに相当)、電流検出回路4で検出される電圧値は1V(=1Ω×1A)となり、閾値電圧である1Vに達し、比較器6の作用によりスイッチング制御回路3はスイッチング素子Q1をターンオフする。
【0027】
スイッチング素子Q1がターンオフすると、インダクタL1に蓄えられたエネルギーが整流ダイオードD1を通して負荷部7に供給され、インダクタ電流ILは
図2のB→Cのように流れる。インダクタL1のエネルギーが全て放出され、インダクタ電流ILがゼロに達すると、整流ダイオードD1はオフ状態となり、スイッチング素子Q1に対して並列に存在する寄生容量CossとインダクタL1の直列共振現象により、インダクタ電流ILは逆方向に流れ(
図2のC→D)、インダクタL1両端の電圧はCa→Da、さらにEaと変化して振動を始める。
【0028】
ここでインダクタL1両端の電圧が正電圧から0Vに達すると(
図2のDa点)、補助巻線8及びゼロ電圧検出回路9の作用によりスイッチング制御回路3はスイッチング素子Q1を再びターンオンし、以後、インダクタL1両端の電圧が正電圧から0Vに達する毎にこの動作が繰り返される。以上の動作を本発明では第1の動作モードと呼ぶ。
【0029】
このとき、インダクタ電流ILの平均値が負荷部7に流れる出力電流Ioになるため、出力電流Ioは、以下の式(2)のように表される。
Io=Ip/2 ・・・(2)
すなわち、出力電流Ioは直流電圧源Vdcからの入力電圧Vinや出力電圧Voutに依存せず、設定したピーク電流値Ipのみに依存する一定値となる。
【0030】
また、スイッチング電源回路1では、スイッチング素子Q1がターンオンする際には、インダクタ電流ILがほぼ0A(ゼロアンペア)になっているため、ターンオン時のスイッチング素子Q1の電流もほぼ0Aになる。従って、スイッチング素子Q1のターンオン時の損失が小さくなり、効率が改善される。
【0031】
以上のように、本実施形態に係るスイッチング電源回路1では、インダクタL1に印加される電圧に比例した電圧を検出する補助巻線8と、補助巻線8から出力される補助巻線電圧を入力して、補助巻線電圧が正電圧から0V付近に達したときにスイッチング素子Q1をオンするためのターンオン信号をスイッチング制御回路3に出力するゼロ電圧検出回路9を備えたことにより、入出力電圧が変化しても出力電流を一定値に保つことができるとともに、効率が改善される。
【0032】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係るスイッチング電源回路1aを示す回路構成図である。
図3において、
図1と共通する構成部分には同一符号を付している。以下では、第1実施形態に係るスイッチング電源回路1と共通する構成部分の説明は適宜省略して、主として相違点について説明する。
【0033】
図3に示すスイッチング電源回路1aでは、第1実施形態で示した構成要素の他に、調光信号10に基づいた基準電圧を生成するための基準電圧生成信号SGを基準電圧生成回路5に出力する調光信号処理部11を備えている。調光信号10は、負荷部7に流れる出力電流を調整するための信号であり、スイッチング電源回路1aの外部から入力されるものであっても、内部に設けた生成回路で生成されたものであってもよい。
尚、本実施形態では、基準電圧生成回路5は、抵抗素子5aとコンデンサ5bで構成されるRCフィルタとしている。
【0034】
以下に、スイッチング電源回路1aにおける調光信号処理部11の動作について、
図4を用いて具体的に説明する。
図4は、本実施形態に係る調光信号処理部11の動作を説明する図であり、(a)は、調光信号10のパルス幅と基準電圧生成信号SGのパルス幅との関係を示すグラフであり、(b)は、調光信号10のパルス幅と基準電圧生成回路5から出力される基準電圧値との関係を示すグラフである。
【0035】
尚、ここでの説明においては、調光信号10をハイ(High)=1V、ロー(Low)=0Vのパルス信号として、パルス幅100%(常にハイ)のときを最大出力電流として、パルス幅の大きさに比例した出力電流を出力するものとする。また、電流検出回路4の抵抗素子4aの抵抗値は1Ωとする。
【0036】
図4(a)に示すように、調光信号処理部11は調光信号10を入力し、調光信号10のパルス幅が100%からY%の範囲の場合は調光信号10のパルス波形をそのまま基準電圧生成信号SGとして基準電圧生成回路5に出力し、調光信号10のパルス幅がY%以下の場合は常にパルス幅Y%のパルス波形を基準電圧生成信号SGとして基準電圧生成回路5に出力するものとする。
このとき、
図4(b)に示すように、基準電圧生成回路5で生成される基準電圧は調光信号処理部11からのパルス波形の平均値となり、調光信号10のパルス幅が100%のときは1V、50%のときは0.5Vというように、調光信号10のパルス幅が100%からY%の範囲の場合には調光信号10のパルス幅に比例した直流電圧となる。そして、調光信号10のパルス幅がY%以下の場合は、基準電圧値は、Y×0.01Vの一定値になる。
【0037】
このように調光信号10が入力される調光信号処理部11の働きにより、調光信号10のパルス幅が100%のときは基準電圧が1Vとなるため、負荷部7に流れる出力電流Ioは0.5(A)(=1V÷1Ω÷2)となり、これが最大出力電流になる。そして、調光信号10のパルス幅を100%から次第に減少させると、それに比例して基準電圧値も低下するため、出力電流Ioも調光信号10のパルス幅に比例して減少させることができる。さらに、調光信号10のパルス幅がY%以下の場合には、基準電圧値がY×0.01Vで固定されるため、出力電流値IoはY×0.01÷2(A)で固定となり、これが最小出力電流になる。
【0038】
以上のように、本実施形態に係るスイッチング電源回路1aでは、調光信号10のパルス幅に応じた基準電圧生成信号SGを基準電圧生成回路5に出力する調光信号処理部11を備えたことにより、調光信号10のパルス幅に比例した出力電流Ioを得ることができる。また、上述の
図4に示した例では、調光信号処理部11によって最小出力電流(Y%)を設定することもできる。
【0039】
なお、本実施形態の説明では、調光信号10をパルス信号としたが、パルス信号に限定されるものではなく、例えば、調光信号を直流電圧として、この直流電圧の大きさに比例した基準電圧値を生成するようにしてもよい。
【0040】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態に係るスイッチング電源回路1bを示す回路構成図である。
図5において、
図1,
図2と共通する構成部分には同一符号を付している。以下では、第1,2実施形態に係るスイッチング電源回路1,1aと共通する構成部分の説明は適宜省略して、主として相違点について説明する。
【0041】
図5に示すスイッチング電源回路1bでは、第2実施形態で示した構成要素の他、負荷部7に流れる出力電流を調整するための調光信号10に基づいてスイッチング制御回路3の動作モードを切り替えるための切り替えパルス信号SPをスイッチング制御回路3に出力する調光信号処理部11を備えている。
【0042】
スイッチング制御回路3は、動作モードとして2つの動作モードを備えている。
第1の動作モードでは、第1実施形態で説明した電流検出回路4の検出結果に基づくターンオフ信号と、ゼロ電圧検出回路9の検出結果に基づくターンオン信号とによりスイッチング素子Q1をオン/オフ動作させる。
【0043】
第2の動作モードでは、ターンオフ動作は第1の動作モードと同じく電流検出回路4の検出結果に基づくが、ターンオン動作についてはゼロ電圧検出回路9の検出結果には基づかず、スイッチング制御回路3の内部で生成された一定のスイッチング周波数Tsに基づくタイミングのターンオン信号でスイッチング素子Q1のターンオン動作を行う。尚、スイッチング周波数Tsは、スイッチング電源回路1bの動作範囲内において、インダクタL1が常に電流不連続モードで動作するように十分に大きな周期に設定されている。
【0044】
図6および
図7を用いて、スイッチング電源回路1bの動作について、具体的に説明する。
図6は、スイッチング制御回路3の各動作モードにおけるインダクタ電流ILの波形を模式的に示す波形チャートであり、(a)は、第1の動作モードにおける波形チャート、(b)は、第2の動作モードにおける波形チャートである。また、
図7は、スイッチング電源回路1bの各動作モードにおける主要部の信号波形を模式的に示す波形チャートである。
【0045】
図6(a)に示すように、第1の動作モードでは、第1実施形態にて説明したように、電流検出回路4で検出された電圧が基準電圧(ピーク電流Ipに対応)を超えるとスイッチング素子Q1がターンオフし、その後、インダクタ電流ILが減少してゼロになると、補助巻線8を介してゼロ電圧検出回路9が動作し、スイッチング素子Q1が再びターンオンする動作を繰り返す。このとき、負荷部7に流れる出力電流IoはIp/2に等しい。
【0046】
また、
図6(b)に示すように、第2の動作モードでは、電流検出回路4で検出された電圧が基準電圧(ピーク電流Ipに対応)を超えるとスイッチング素子Q1がターンオフし、その後、インダクタ電流ILが減少してゼロになる。しかし、第2の動作モードではゼロ電圧検出回路9の動作を無視し、スイッチング制御回路3の内部で生成された一定のスイッチング周期Tsに基づくタイミングのターンオン信号でスイッチング素子Q1がオンする。
【0047】
図7では、調光信号処理部11から出力される切り替えパルス信号SPと、それに伴うインダクタ電流IL及び出力電流Ioの波形を模式的に示している。尚、説明の都合上、切り替えパルス信号SPがハイ(High)のときを第1の動作モード、ロー(Low)のときを第2の動作モードと仮定する。
【0048】
切り替えパルス信号SPがハイのときには、スイッチング制御回路3が第1の動作モードで動作するため、インダクタ電流ILは連続的な三角波となり、出力電流Ioはピーク電流値をIpとするとIp/2となる。一方、切り替えパルス信号SPがローの場合には、スイッチング制御回路3は第2の動作モードで動作するため、インダクタ電流ILは三角波1パルス分が設定スイッチング周期Ts毎に表れる波形となり、この期間では出力電流Ioは第1の動作モードのときよりも低い状態になる。従って、切り替えパルス信号SPがハイの期間の割合を変化させることにより、出力電流Ioの平均値を調整することができ、ハイの期間の割合が短いほど、出力電流Ioを小さくすることができる。
【0049】
結果として、第1の動作モードでは、インダクタ電流ILが連続的に流れるのに対して、第2の動作モードでは、インダクタ電流ILがスイッチング周期Tsの間隔で間欠的に流れる。スイッチング周波数Tsは、インダクタL1が常に電流不連続モードで動作するように十分大きな値に設定されているため、第2の動作モードではスイッチング動作を休止する期間が多くなり、出力電流Ioは第1の動作モードよりも低下する。
【0050】
以上の特性を利用して、第1の動作モードのみで動作させる場合には、第2実施形態と同様に、調光信号10に基づいた基準電圧を生成することにより、出力電流値そのものを調整することができる。同時に、調光信号10に基づいて第1の動作モードと第2の動作モードを交互に切り替える切り替えパルス信号SPを調光信号処理部11からスイッチング制御回路3に出力することにより、パルスモードでの出力電流値の調整が可能になる。
【0051】
以上のように、本実施形態に係るスイッチング電源回路1bでは、スイッチング制御回路3に第1及び第2の動作モードを備え、調光信号10に基づき基準電圧生成信号SGを基準電圧生成回路5に出力し、かつ切り替えパルス信号SPをスイッチング制御回路3に出力する調光信号処理部11を備えたことにより、負荷部7に流れる出力電流Ioを、電流値そのもの及びパルスモードの両方で調整可能になる。
【0052】
図8は、本発明の第3実施形態に係る調光信号10および調光信号処理部11の具体的な動作例を説明する図であり、(a)は、調光信号10のパルス幅と基準電圧生成信号SGのパルス幅との関係を示すグラフ、(b)は、調光信号10と切り替えパルス信号SPのパルス幅との関係を示すグラフ、(c)は、調光信号10のパルス幅と出力電流Ioとの関係を示すグラフである。
【0053】
本動作例では、本実施形態に係る
図5で示した回路構成において、調光信号処理部11には調光信号10に対して第1及び第2の設定点が設けられており、出力電流Ioの最大値を示す調光点から第1の設定点までの範囲の調光信号10が入力されているときには、この調光信号10が示す出力電流値に対応した基準電圧を生成するための基準電圧生成信号SGを出力し、第1の設定点から出力電流の最小値を示す調光点までの範囲の調光信号10が入力されているときには、常に第1の設定点が示す出力電流値に対応した基準電圧を生成するための基準電圧生成信号SGを出力する一方、出力電流Ioの最大値を示す調光点から第2の設定点までの範囲の調光信号が入力されているときには、常に第1の動作モードでスイッチング動作を行うための切り替えパルス信号SPを出力し、第2の設定点から出力電流の最小値を示す調光点までの範囲の調光信号10が入力されているときには、第1の動作モードと第2の動作モードを交互に切り替える切り替えパルス信号SPを出力することにより、出力電流Ioの制御を行う。
【0054】
本動作例について、
図5及び
図8を用いて詳細に説明する。尚、説明をわかりやすくするため、調光信号10をハイ(High)=1V、ロー(Low)=0Vのパルス信号として、パルス幅100%(常にハイ)のときを最大出力電流として、このパルス幅の大きさに概略比例した出力電流Ioを出力するものとする。また、切り替えパルス信号SPがハイのときを第1の動作モード、ローのときを第2の動作モードとする。また、第1および第2の設定点をそれぞれ調光信号10のパルス幅が30%のときとする。
【0055】
また、
図8(a)に示すように、調光信号処理部11は調光信号10のパルス幅が100%(最大出力電流)から30%(第1の設定点)の範囲の場合は調光信号10のパルス波形をそのまま基準電圧生成回路5に出力し(図中のG−H)、調光信号10のパルス幅が30%以下の場合は常にパルス幅30%のパルス波形を基準電圧生成回路5に出力するものとする(図中のH−I)。このとき、基準電圧生成回路5で生成される基準電圧は調光信号処理部11からのパルス波形の平均値となり、調光信号10のパルス幅が100%のときは1V、50%のときは0.5Vと、調光信号10のパルス幅に比例した直流電圧となり、第1の設定点である調光信号10のパルス幅が30%以下のとき、基準電圧値は0.3Vの一定値になる。尚、電流検出回路4の抵抗素子4aの抵抗値は1Ωとする。
【0056】
さらに、
図8(b)に示すように、調光信号処理部11は、調光信号10のパルス幅が100%(最大出力電流)から30%(第2の設定点)の範囲では切り替えパルス信号SPのパルス幅を100%(ハイ)とし、常に第1の動作モードで動作させる(図中のJ−K)ものとし、調光信号のパルス幅が30%以下の場合は、調光信号10のパルス幅に比例して直線的に切り替えパルス信号SPのパルス幅を減少させ、調光信号10のパルス幅が0%のとき、切り替えパルス信号SPのパルス幅も0%とする(図中のK−L)。
【0057】
以上のように電流検出回路4、基準電圧生成回路5、調光信号処理部11を設定した場合、調光信号10のパルス幅が100%のときは基準電圧が1Vとなり、さらに第1の動作モードで動作しているため、負荷部3に流れる出力電流Ioは0.5A(=1V÷1Ω÷2)となり、これが最大出力電流になる(
図8(c)のM点)。
【0058】
また、
図8(c)に示すように、調光信号10のパルス幅を100%から次第に減少させると、それに比例して基準電圧値も低下するため、出力電流Ioも調光信号10のパルス幅に比例して減少する(図中のM−N)。そして、調光信号10のパルス幅が第1の設定点(=第2の設定点)である30%以下になると、基準電圧は0.3Vで一定となり、これに換わって、切り替えパルス信号SPのパルス幅が減少する。切り替えパルス信号SPのパルス幅が減少すると、先に説明したように、出力電流Ioは切り替えパルス信号SPのパルス幅に略比例して減少する(図中のN−P)。
【0059】
以上のように出力電流の制御方法を、電流値そのものを変えることによる制御(第1の動作モードのみ)と、パルスモードでの制御(第1及び第2の動作モードの繰り返し)で切り替えることには、下記の利点がある。すなわち、上述の第2実施形態で示したように、第1の動作モードだけで出力電流Ioを調整する場合、基準電圧(すなわちピーク電流値Ip)が小さくなればなるほど、スイッチング周波数が高くなる。スイッチング周波数が高くなると、スイッチング損失の割合が増加し、また高周波ノイズが発生する恐れもある。それに対して、本実施形態のように、ある程度出力電流Ioが小さくなったとき、さらに出力電流Ioを小さくしたい場合には、基準電圧を一定にし、変わりにパルスモードで出力電流Ioの調整を行えば、スイッチング周波数の上昇を抑えることができる。
【0060】
なお、パルスモードで出力電流Ioの調整を行うには、例えば、負荷部7またはスイッチング素子Q1に直列に別のスイッチング素子を追加し、この追加した別のスイッチング素子のオン/オフ動作により、出力電流Ioをパルス的に供給するという方法も考えられる。ただし、この場合には追加した別のスイッチング素子の抵抗成分により損失が発生するため、効率が低下する。従って、本実施形態のようにスイッチング制御回路3の動作モードの切り替えにより、パルスモードで出力電流の調整を行う方法には、効率改善という利点もある。
【0061】
以上のように、本実施形態に係るスイッチング電源回路1bは、調光信号処理部11に調光信号10に対して第1及び第2の設定点を設けて、これらの設定点を基準に出力電流の調整方法を切り替えることにより、高効率かつ高周波ノイズの発生の少ないスイッチング電源回路を実現できる。
【0062】
なお、上記の第3実施形態に係る回路動作の説明では、調光信号10、調光信号処理部11、基準電圧生成回路5、基準電圧生成信号SG、切り替えパルス信号PGの回路構成及び形態を具体的に限定して説明したが、これらは上記の回路構成及び形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の回路構成及び形態への変更が可能である。
【0063】
(第1変形例)
図9は、本発明の第3実施形態の第1変形例に係るスイッチング電源回路1cを示す回路構成図である。
図9において、
図5と共通する構成部分には同一符号を付している。以下では、第1〜3実施形態に係るスイッチング電源回路1〜1bと共通する構成部分の説明は適宜省略して、主として相違点について説明する。
【0064】
図9に示すスイッチング電源回路1cは、補助巻線8に並列に接続される整流平滑回路13を備え、補助巻線8からの出力電圧を整流平滑回路13により整流平滑して得られる直流電圧を、スイッチング制御回路3、基準電圧生成回路5、比較器6、ゼロ電圧検出回路9及び調光信号処理部11とから成るスイッチング制御部12の駆動用電圧として供給する。
【0065】
整流平滑回路13は、一例として、
図9に示すように、2つのコンデンサ13a,13bと2つのダイオード13c,13dとで構成される。この整流平滑回路13では、入力電源電圧Vinと補助巻線8の巻数比に比例した直流電圧がコンデンサ13bに蓄えられ、これをスイッチング制御部12の駆動用電圧として供給できる。スイッチング制御部12の駆動用電源電圧としては、10V〜15Vが好適である。
【0066】
なお、直流電圧源Vdcとしては、商用交流電源を整流平滑して得られる直流電圧、あるいは商用交流電源を昇圧および力率改善して得られる直流電圧を使用する場合が想定されるが、この場合、入力電圧Vinは概略130V〜400Vの範囲となる。もし、スイッチング制御部12の駆動用電圧をこの入力電圧Vinから得ようとした場合、電圧が高すぎるため、例えば、シリーズレギュレータで降圧して使用すると、電圧差に応じた損失が発生するため、スイッチング電源回路の効率が低下する。
【0067】
これに対して、本変形例のように補助巻線8に並列に整流平滑回路13を設けることによってスイッチング制御部12の駆動用電圧を生成した場合、シリーズレギュレータよりも損失が小さいため、スイッチング電源回路の効率を改善することができる。
【0068】
以上のように、本変形例に係るスイッチング電源回路1cは、補助巻線8に並列に接続される整流平滑回路13を備え、補助巻線8からの出力電圧を整流平滑回路13により整流平滑して得られる直流電圧を、スイッチング制御回路3、基準電圧生成回路5、比較器6、ゼロ電圧検出回路9及び調光信号処理部11とから成るスイッチング制御部12の駆動用電圧として供給することにより、スイッチング電源回路の効率を改善することができる。
【0069】
なお、上記の説明では、整流平滑回路13の回路構成を具体的に限定して説明したが、整流平滑回路13は上記の回路構成のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の回路構成への変更が可能である。また、本変形例は、第3実施形態に限定されるものではなく、第1,2実施形態、及び本発明の範囲内で想定される他の形態においても同様に適用可能である。
【0070】
(第2変形例)
図10は、本発明の第3実施形態の第2変形例に係るスイッチング電源回路1dを示す回路構成図である。
図10において、
図5と共通する構成部分には同一符号を付している。以下では、第1〜3実施形態に係るスイッチング電源回路1〜1bと共通する構成部分の説明は適宜省略して、主として相違点について説明する。
【0071】
図10に示すスイッチング電源回路1dは、補助巻線8とゼロ電圧検出回路9との間に接続され、補助巻線8からの出力電圧を分圧する分圧回路と、ゼロ電圧検出回路9による0V付近の閾値電圧の検出タイミングを調節するための遅延回路とにより構成される分圧遅延回路14を備えている。ここでは、上記の0V付近の閾値電圧は0Vに設定されているものとする。
【0072】
図10に示すように、分圧遅延回路14は、2つの抵抗素子14a,14bとコンデンサ14cで構成されている。2つの抵抗素子14a,14bのそれぞれの抵抗値をR14a,R14bとすると、分圧比は、R14b/(R14a+R14b)となり、遅延時間はおよそコンデンサ14cの静電容量と抵抗素子14a及び14bの並列抵抗値の積になる。
【0073】
次に、
図11を用いて、分圧遅延回路14の動作と効果を説明する。
図11はスイッチング電源回路1dの主要部(インダクタ電流IL、インダクタ電圧VL及びスイッチング素子Q1のドレイン−ソース間電圧Vds)の波形を模式的に示す波形チャートである。
【0074】
図1に示すスイッチング電源回路1のように分圧遅延回路14を備えていない場合、
図2に示すように、インダクタ電圧VLが正電圧からゼロになった時点(図中のDa点)で、補助巻線8及びゼロ電圧検出回路9の作用によりスイッチング素子Q1がターンオンする。このとき、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間電圧Vds(図中のDb点)は極小値ではないため、ターンオン損失が発生する。
【0075】
一方、スイッチング電源回路1dのように分圧遅延回路14を備えている場合は、
図11に示すように、インダクタ電圧VLが正電圧から0V(ゼロボルト)になったとき(図中のDa点)から、遅延時間を経てゼロ電圧検出回路9が動作するため、インダクタ電圧VLが極小値のとき(図中のP点)にスイッチング素子Q1がターンオンするように調整することができる。このとき、スイッチング素子Q1のドレイン−ソース間電圧Vdsも極小値のとき(図中のQ点)にターンオンするため、スイッチング素子Q1のターンオン損失が低減される。
【0076】
また、分圧遅延回路14がある場合、補助巻線8からの出力電圧を分圧することにより、ゼロ電圧検出回路9の動作により補助巻線8による検出電圧を好適な電圧レベルに調整することができる。
【0077】
以上のように、本変形例に係るスイッチング電源回路1dは、補助巻線8とゼロ電圧検出回路9の間に接続され、補助巻線8からの出力電圧を分圧する分圧回路と、ゼロ電圧検出回路9によるゼロ電圧検出のタイミングを調節するための遅延回路とにより構成される分圧遅延回路14を備えたことにより、スイッチング素子Q1のターンオン損失を低減し、スイッチング電源回路の効率を改善することができる。また、補助巻線8による検出電圧を、ゼロ電圧検出回路9の動作により好適なレベルに調整することが可能になる。
【0078】
なお、上記の説明では、分圧遅延回路14の回路構成を具体的に限定して説明したが、分圧遅延回路14は上記の回路構成のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の回路構成への変更が可能である。また、本変形例は、第3実施形態に限定されるものではなく、第1,2実施形態、及び本発明の範囲内で想定される他の形態においても同様に適用可能である。
【0079】
さらに、上記では、ゼロ電圧検出回路の0V付近の閾値電圧を0Vとして説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で0V以外の閾値電圧とすることも可能である。ただし、スイッチング素子Q1の損失を抑制するために、0Vに近い−1Vから1Vの範囲内に閾値電圧を設定することがより好適である。
【0080】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態の回路構成のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0081】
例えば、負荷部7は、負荷の種類を特に限定するものではなく、さまざまな負荷が接続可能であり、例えば、複数の発光ダイオード(LED)を直列に接続したLEDモジュールなどが適用できる。
【0082】
また、電流検出回路4、基準電圧生成回路5の回路構成は、第1〜3実施形態で示した回路に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更ができる。
【0083】
また、第1〜第3実施形態に係るスイッチング電源回路1〜1dにおいて、スイッチング素子Q1をMOSFETとして説明したが、スイッチング素子Q1これに限定されるものではなく、たとえば、バイポーラ型トランジスタを用いたものであってもよい。