特許第5693873号(P5693873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693873
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】万能安全注射器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
   A61M5/32
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2010-104725(P2010-104725)
(22)【出願日】2010年4月30日
(65)【公開番号】特開2010-259797(P2010-259797A)
(43)【公開日】2010年11月18日
【審査請求日】2013年4月9日
(31)【優先権主張番号】12/435,652
(32)【優先日】2009年5月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510077381
【氏名又は名称】サクハラム・ディー・マハーカー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100119426
【弁理士】
【氏名又は名称】小見山 泰明
(72)【発明者】
【氏名】サクハラム・ディー・マハーカー
【審査官】 大町 真義
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−514628(JP,A)
【文献】 特開2008−253767(JP,A)
【文献】 特表2008−516676(JP,A)
【文献】 特表2004−500177(JP,A)
【文献】 米国特許第5267961(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器組立体であって、
その遠位端部にノズルを有する細長いバレルであって、その中に長手方向に細長い空洞を規定する細長いバレルと、
前記ノズル内に装着される弾性Oリングと、
長手方向に細長いチャネルを規定するプランジャーであって、少なくとも部分的に前記バレル内で移動可能に配置されて、完全に引き込まれた位置と充分に前進した位置との間で変位する、プランジャーと、
針と、
遠位端部にて前記針に取り付けられる針保持器であって、前記プランジャーの前記チャネル内で少なくとも部分的に移動可能に配置されて、当該針が前記ノズルの前記遠位端部から少なくとも部分的に突き出る第1の位置と、当該針が当該バレルの中に完全に封入される第2の位置との間を移動する、針保持器と、
前記バレルに動作可能に取り付けられるバネ保持具と、
前記バネ保持具によって動作可能に支持されるバネであって、前記針保持器と結合し、前記第2の位置へ向けて当該針保持器を付勢するバネと、
前記針保持器を前記バネ保持具にラッチし、それによって前記バネを圧縮状態に維持する第1のラッチであって、前記充分に前進した位置への前記プランジャーの移動に対応して位置を変更可能であって、それによって当該針保持器は当該バネ保持具から解放されて当該圧縮されたバネが伸長することができ、それによって当該針保持器を前記第2の位置へ移動させる、第1のラッチと、
前記充分に前進した位置への前記プランジャーの移動に対応して、当該プランジャーを前記バレルにラッチし、それによって当該プランジャーが当該充分に前進した位置に移動した後に、当該バレルに対して当該プランジャーが移動することを防ぐ、第2のラッチと、
を備え、
前記バネ保持具は長手方向に細長い通路を規定する細長の形状を有し、当該バネ保持具が前記プランジャーの前記チャネル内に移動可能に配置され、
前記針保持器は細長の形状を有し、当該針保持器の近位部分が前記バネ保持具の前記通路内に配置され、
前記針保持器は前記第1の位置と前記第2の位置との間の移動のために前記通路の中で摺動自在に装着され、
前記バネは、前記バネ保持具の前記通路内に配置されて、当該通路内で前記針保持器と結合する、注射器組立体。
【請求項2】
請求項1記載の注射器において、
前記バネは略円筒形状を有し、
前記バネ保持具は前記バネの外側表面の少なくとも一部分と係合して、当該バネの略円筒形状を維持する、注射器。
【請求項3】
請求項1記載の注射器において、
前記第1のラッチは、前記バネ保持具によって形成されるラッチ突起を備え、
前記ラッチ突起は、前記針保持器が前記第1の位置にある場合に、当該針保持器の前記近位端部と係合する、注射器。
【請求項4】
請求項記載の注射器において、
前記ラッチ突起はラッチされた位置に向けて内向きに付勢され、そのラッチされた位置で当該突起は前記針保持器の一部分と重なり、それによって当該針保持器を前記第1の位置に保持し、
前記ラッチ突起はラッチが解除された位置へと外向きに変形可能であり、そのラッチが解除された位置で当該突起は前記針保持器を外して前記バネが伸長し、それによって当該針保持器が前記第2の位置に移動することが可能になる、注射器。
【請求項5】
請求項記載の注射器において、
前記プランジャーは、前記ラッチ突起と係合し、当該プランジャーが前記バレルの中の所定の前進した位置に移動するときに当該ラッチ突起を前記ラッチが解除された位置へと外向きに変形させるように構成された少なくとも1つの傾斜表面を備える、注射器。
【請求項6】
請求項1記載の注射器において、
前記バレルは、前記バネ保持具によって形成される相補的な係止要素を受け取りおよび係止し、それによって当該バネ保持具を当該バレルに固定するように構成される第1の係止ポケットを備える、注射器。
【請求項7】
請求項1記載の注射器において、
前記第2のラッチは、前記バレルによって形成される第2の係止ポケットを備え、
前記第2の係止ポケットは、前記プランジャーから突き出る少なくとも1つの相補的な係止突起を受け取りおよび係止するように構成され、それによって、当該プランジャーが所定の前進した位置に移動するとき、当該プランジャーを前記バレルに係止するように構成された、注射器。
【請求項8】
請求項1記載の注射器において、
前記バネは、前記針保持器と前記バネ保持具との間で圧縮され、当該バネの近位端部で当該針保持器によって拘束され、当該バネの遠位端部で当該バネ保持具によって拘束される、注射器。
【請求項9】
請求項1記載の注射器において、
前記プランジャーの遠位端部に取り付けられて、前記Oリングに接触し、当該プランジャーの前進移動によって前記注射器のすべての内容物を排出する弾性キャップを更に備える、注射器。
【請求項10】
請求項記載の注射器において、
前記弾性キャップは、前記ノズルおよび前記バレルと連動して、それらの間にある膨張可能な液体チャンバを規定する、注射器。
【請求項11】
請求項10記載の注射器において、
前記注射器は、前記バレルの前記近位端部を通じて薬で予め一杯になり、
前記ノズルに適合し、前記針保持器が前記第1の位置にある場合に、前記針を可逆的に遮断するように構成される針キャップを更に備え、
前記針キャップは、予め一杯になっている薬が患者に投与される場合に、前記ノズルから取り外し可能である、注射器。
【請求項12】
請求項1記載の注射器において、
前記注射器の操作者が動作させると、前記プランジャーの移動にかかわりなく、前記第1のラッチを解放するように構成された手動スイッチを更に備える、注射器。
【請求項13】
請求項12記載の注射器において、
前記手動スイッチは、アクチュエータプレートによってそれぞれの近位端部において連結される第1の細長いプレートおよび第2の細長いプレートを備え、
前記細長いプレートの遠位端部は、選択的に前記第1のラッチと係合し、そして当該第1のラッチを解放する、注射器。
【請求項14】
請求項13記載の注射器において、
前記第1の細長いプレートおよび前記第2の細長いプレートは、前記プランジャーと前記バネ保持具との間の前記バレル内で長手方向に延在する、注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には注射器に関し、より詳細には、人間または動物から液体、エアロゾル、または粒子懸濁液を注射および/または除去するための注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
(汚染された針穿刺および微生物の伝染)
注射器は多数の用途で使用される。一般に注射器は、円筒管としっかりと適合するプランジャーを有する単一の軸方向ピストンポンプである。プランジャーは管(すなわち「バレル」)の内側に沿って押し引きでき、それによって圧力勾配を生成する。液体、エアロゾル、または粒子懸濁液の注射または除去のために人間または動物の皮膚、粘膜および内臓を穿刺することが意図された鋭利な貫通性のある中空針を多くの注射器は有する。
【0003】
患者に使用された皮下注射器は危険であり、しばしば致命的な細菌によって汚染されることがある。偶発的な針穿刺によって注射器は治療または補助医師、看護師、医療従事者、および清掃作業員に細菌を感染させることができる。アメリカ連邦議会は工学的な安全装置の使用を義務化する「針穿刺安全および防止活動」公法106−430、114Stat.1901−1904(2000)を成立させた。
【0004】
皮下注射器および針は偶発的な針穿刺の29%に関与する。危険な感染症の可能性に加えて、偶発的な針穿刺は、針刺し損傷のそれぞれの事故当たり合計3500ドルにもなる医療費の増加にも関与する。
【0005】
針穿刺を防ぐことを目的とする装置は利用可能であり、使用後に皮下注射針の上に付けられるさやまたはスリーブなどの針を覆う装置を備える。使用された針を覆うヒンジ装置または摺動装置は「安全」針装置と呼ばれる。針の機械的カッター、粉砕機、および針の電気式蒸発器が現在使用されている物のすべてである。しかしながら、針の使用後に針が誰をも傷つけにくいことを保証する引き込み可能な装置が提供されることが最善の保護かもしれない。
【0006】
(安全な特徴を有する装置の望ましい特性)
改良された工学的制御は、しばしば職業上の危険を減少させる最も効果的な方法の1つであり、したがって針の突き刺し予防計画の重要な要素である。そのような制御には、針の不必要な使用を減少させ、安全な機能を有する装置を実装することが含まれる。多くの情報源が安全装置の望ましい特性を特定してきた[米国労働安全衛生局(OSHA)1999年c、食品医薬品局(FDA)1992年、Jaggerら1988年、Chiarello1995年、QuebbemanおよびShort1995年、Pugliese1998年、Fisher1999年、ECRI1999年]。これらの特性には下記の事項を含む。
・装置は無針である。
・安全機能は装置に不可欠な部分である。
・装置は好ましくは受動的に機能する(すなわち、それは使用者による活性化を要求しない)。使用者の活性化が必要な場合には、安全機能は一方の手を用いた手法と協同でき、露出した鋭利な物の後ろで労働者の手を維持することができる。
・使用者は安全機能が活性化しているか否かを容易に見分けることができる。
・安全機能は不活性化されることができず、廃棄の間も保護を維持できる。
・装置は確実に機能する。
・装置は取り扱いが容易で実用的である。
・装置は患者保護のために安全で効果的である。
【0007】
これらのそれぞれの特性は望ましいけれども、いくつかは実現不可能で、適用できない、または特定の看護状態では利用できない。たとえば、皮膚貫通のための代替物は入手できないので針は常に必要である。また、使用者による活性化が必要な安全機能は場合によっては受動的なものより好ましい。各装置はそれ自体の長所および究極的には労働災害を減らす能力で検討されなければならない。ここに載せられた望ましい特性はそれ故に装置設計および選択のための指針としてのみ役立つべきである。
【0008】
(針穿刺の予防および感染の制御)
市販されているいくつかの引き込み可能な注射器があり、たとえば、ニュージャージー州フランクリンレイクスにあるBecton、Dickenson,and Co.(BD)によって製造されるインテグラ(商標)注射器、テキサス州リッテルエルムにあるRetractable Technologies,Inc.(RTI)によって製造される引き込み可能なバニッシュポイント(登録商標)注射器、フロリダ州アポップカにあるSafety Medical International、Inc.によって製造されるsaf−T−syringes(商標)注射器、オーストラリア、スラックスクリークにあるOccupational & Medical Innovations (OMI) Ltd.によって製造されるOMI注射器(商標)、および、オーストラリア、シドニーにあるUnilife Medical Solutionsによって製造されるUnitract Syringe(商標)がある。これらの例では、針の周囲にバネが取り付けられたノズルが注射器の中空プランジャーの中に針を引き込む。すべてのこれらの注射器ではゴム製ストッパーの切断またはゴム製プラグの移動によってバレル空洞とプランジャー空洞との間の連絡手段の生成が必要であり、以下の欠陥を有する。
(a)この機械的な操作には使用者の側の自発的な活動が要求される。当該装置は能動的であり使用者に依存する。これらの装置は、注射器の最終的な安全のためには好ましい方法である受動的には動作しない。
(b)針がまだ患者の体にある間に、ゴム製シールの切断または破壊という能動的操作の衝撃が針先に伝わる。
(c)針が患者の体から外され、引き込みが開始されると、引き込みプロセスの間にエアロゾルおよび微生物が他の人に広がる危険がある。
(d)引き込み可能な針注射器は不正開封防止がされておらず、汚染された針、これらの注射器のプランジャー空洞中の浮遊物が漏れて、針刺し損傷および微生物の伝染を発生させる場合が多い。
(e)したがってこれらは他の針および注射器のように、安全な廃棄のために鋭利器材廃棄容器に廃棄されることが要求される。
(f)工学的な安全が装置に付与されたとしても、使用後は安全ではなく、鋭利器材廃棄容器への廃棄をする必要性が残る。鋭利器材廃棄容器への廃棄は高価でぜいたくであり、多くの国々で利用可能ではなく、手頃な価格でもない。
(g)それでも無節操な人々はこれらの引き込み可能な針注射器を使用し、引き込みを開始せずに、次にそれらを再使用することができる。
【0009】
(開発途上世界における安全ではない注射)
偶発的針穿刺および微生物の伝染はアメリカ合衆国、カナダ、オーストラリアおよび西欧に集中している唯一の問題である。皮下注射器による重大な危険は、アメリカ合衆国における「針穿刺安全および防止活動」を含む、これらの国々を通過した法律によって取り組まれていない。
【0010】
1つの重大な危険は使い捨ての汚染された注射器の再使用および不適切な殺菌である。注射器の再使用はインド、パキスタン、中国、東南アジア諸国およびアフリカでは蔓延している。国際連合のいくつかの報告書および出版物ではこの危険を強調してきたが、犯人はしばしば医療従事者を管理する責任を持つ人々で、または使用済みの注射器を医療供給網に侵入させることを許可する無節操な労働者であるから解決策は見えていない。(「インドでは70パーセントの注射器は安全ではない(Seventy per cent syringes unsafe in India)」ヒンドゥー、2004年12月17日;世界保健機関広報、1999年、77(10):789−800;「開発途上世界における安全ではない注射および血液感染性の病原菌:総説(Unsafe injections in the developing world and transmission of blood borne pathogens: a review)」Simons L、Kane A、Lloyd J、Saffron M、Kane M.世界保健機関、ジュネーブ、スイス)
【0011】
(安全ではない注射の原因は注射器の再使用である)
現存する法律および教育プログラムは役に立たないことが証明された。すべての再使用された安全ではない注射器にはすでに目立つ「再使用しないで下さい」のラベルが付けてある。ほとんどの場合に、ガラスの注射器は殺菌するために煮沸消毒することができ、使い捨ての滅菌プラスチック注射器よりも安価に使用することができる。これらの国々における滅菌のコストは高価な事前に殺菌された使い捨ての注射器と比較して安いが、使い捨ての注射器は大規模に使用されていないので高価なままである。使い捨てのプラスチック注射器でも何度も繰り返して煮沸消毒して再使用される。最終的に多くの国々の政府は失望し、再使用することができないように注射器そのものを破壊する手段に訴えた。再使用問題の重要性のためにこれらの政府は針刺し損傷および微生物の伝染のより深刻なひどい状況を全体としては放置することを余儀なくさせられている。この二重の疾患のためにAIDSおよび肝炎は蔓延し、大流行となっている。
【0012】
(関連のある再使用防止技術)
現状は皮肉にも注射器は使い捨てであることが意図されているけれども、そうではないことが事実である。これらは耐久性のあるプラスチックから製造される。
【0013】
再使用防止技術の多くは注射器の部品の1つ、好ましくはプランジャーが、自発的に使用者によってまたは再使用しようとして破壊されることに頼っている。インドの市場に出回っている1つの自動破壊注射器は薬が注入される場合にプランジャーを係止するバレルのノズルのリングに頼っている。プランジャーは意図的に脆弱に製造されている。再使用のために引き戻された場合に、それは破壊される。しかしながら、皮下注射針はまだ、針穿刺を生じおよび感染症を拡大させるために露出し、犯人はとにかく汚染された針の再使用であろう。
【0014】
予防接種のために使用される別の自動破壊注射器はバレルの中にクリップを有する。注入後に、クリップで注射器を係止する。針はそのままで安全ではない。さらに別の自動破壊注射器は、いかなる注射器の再使用の可能性をも排除するために「臨床医によって活性化される」特有のプランジャー破壊機構を採用する。この機構では、1回だけの注射とは異なり、使用者が薬を複数回吸引し、使用後に注射器を破壊することができる。したがって制御は使用者の手または臨床医の手にあり、このようにして廃棄物を削減する。血液によって感染する感染症を拡大させるので、針は安全ではないままである。
【0015】
(発展途上国における不充分な鋭利器廃棄)
世界の約75%は使用済みの汚染された注射器/鋭利器の処分のための信頼できるシステムを有していない。鋭利器材容器サービスは利用可能でも手頃な価格でもない。たとえ鋭利器材廃棄容器が提供されたとしても、再使用はより利益になるので、労働者は鋭利器材廃棄容器を使用するよりも注射器を再使用するであろう。
【0016】
注射器の製造および分配は世界的なビジネスであるが、流通を制御し、またはこれらの装置に対する安全要求を強制する方法はない。これらの2つの異なる世界は異なる目的および異なるメッセージを有するので、特定の使い捨ての装置の使用を実施することは不可能である。先進国は汚染された針穿刺からその国の人々を保護しようと努力しているが、開発途上世界の標語は「1つの注射に1つの注射器」である。これらの問題を解決するために使用者を信頼することはできないので、安全のために、その使用者の制御のもとにない、それ自体の機構による安全を保証する万能注射器に対する需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第7,481,797B2号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】「インドでは70パーセントの注射器は安全ではない(Seventy per cent syringes unsafe in India)」ヒンドゥー、2004年12月17日;世界保健機関広報、1999年、77(10):789−800
【非特許文献2】「開発途上世界における安全ではない注射および血液感染性の病原菌:総説(Unsafe injections in the developing world and transmission of blood borne pathogens: a review)」Simons L、Kane A、Lloyd J、Saffron M、Kane M.世界保健機関、ジュネーブ、スイス
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の1つの実施形態の目的は、(1)針穿刺および微生物の伝染の防止を保証するために注射の完了時に針を自動的に引き込み、(2)第1の使用後に自分で無効にし、改ざんおよび再使用ができない、および(3)バレルの中に自分自身が引き込んだ針をしっかりと係止し、廃棄のために鋭利器材廃棄容器を必要としない、万能安全注射器を提供することである。この実施形態では使用される場所が世界のどの国であっても万能な安全を保証し、感染症を防ぎ、安全装置規則に適合する。
【0020】
実際のところ、この万能安全注射器はその機能性のために鋭利器装置として分類されない。血液によって感染する病原菌標準では「皮膚を突き通すことができる汚染されたすべての物体には、これに限定されるわけではないが針、外科用メス、割れたガラス、割れた細長い管、および歯科用ワイヤの露出した端部が含まれる」として「汚染された鋭利器」を規定する。外科用メスおよび刃物はこの定義に含まれる。(参考:[1]米国労働安全衛生局(OSHA)、汚染された鋭利器の定義、備えられるべき工学的制御および良き労働慣行の制御、ECPは毎年見直されなければならない。06/03/2005[2]ジョーンズ・ホプキンス安全方針手引書番号HSE805題名:最後の検討日09/21/07研究所の廃棄物の廃棄−鋭利器廃棄[3]このSOPはコーネル所内動物実験委員会(IACUC)および動物資源と教育のためのコーネルセンター(Cornell Center for Animal Resources and Education(CARE))によって承認されている。
【0021】
本発明のある実施形態の1つの目的は注射の終了時の自動引き込みによって潜在的に鋭利な皮下注射器を非鋭利装置に転換することである。このようにすることで、針は露出せず、不正開封を防止する係止のために、針はそれ自体の安全容器の中にあるので、針穿刺を生じさせることができない。使用後に皮膚を突き刺すことができない注射器は高価な鋭利器材廃棄容器用の鋭利器装置ではない。
【0022】
本発明のある実施形態の別の目的は、針がまだ患者の体にあり、誰に対してもどのような針刺し損傷をも発生させる環境にない場合であっても、注射が完了すると即座に皮下注射針を引き込む万能安全注射器を提供することである。さらに、インターロックされ自動的に機能しなくなった注射器の本体の中に引き込まれた針が回復できないほどに係止される。この設計によって鋭利器装置として定義されず、鋭利器材廃棄容器への廃棄を必要とせず、それによって高価な廃棄方法を節約する。鋭利器材廃棄容器に廃棄される資源を非鋭利注射器の開発に利用することができる。
【0023】
本発明のある実施形態の追加的な目的は、自動無効化だけではなく、薬の注射終了時の針の引き込みなどすべての安全な特徴を有し、全体としては受動的であり、使用者の側に行動が必要ない万能安全注射器を提供することである。注射器は操作者の制御無しで自立した正確な機械として動作し、使用者の意思にかかわらず安全である。
【0024】
これらの問題の工学的な解決は複雑および非生産的である。針穿刺安全および防止活動では針穿刺および感染症を防ぐことが意図される注射器は、針を引き込み、プランジャーの中心の内部に格納しなければならないことを要求する。再使用禁止法では、再使用を防ぐために、注射器の特定の部品、特にプランジャーを破壊する自動破壊注射器を要求する。しかしながら、プランジャーの破壊では汚染された引き込まれた針を解放し、それによって健康被害を発生させる。これらの問題に対する1つの解答は構成部品を破壊するよりも注射器を永久に無効にすることである。
【0025】
本発明のある実施形態のさらに別の目的は、さまざまな安全ではない注射器を自動引き込み可能な安全注射器に転換するために適合させることができる引き込み制御システムを提供することである。
【0026】
本発明のさらなる目的は従来の注射器組立体方法および現存する連続動作注射器組立体機械技術によって組み立てられることのできない、自動引き込みおよび自動的に無効になる万能注射器の組立方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
1つの例示的な実施形態によれば、安全注射器組立体は、バレルの遠位端部に位置する中空ノズルを形成する中空内部およびバレルの内部への開口を備える細長い、略円筒バレル、バレルの中で摺動自在に装着されおよび長手方向の開口チャネルを備えるプランジャー、針、その遠位端部で針を装着しおよびノズルの遠位端部から針保持器の遠位端部にある針が突き出る前進した位置と、針が完全にバレルの中に封入される引き込まれた位置との間で移動するためにプランジャーの長手方向の開口チャネルに摺動自在に装着される針保持器、バレルと針保持器との間のバネ保持具、針保持器を引き込まれた位置方向に移動させるバネ保持具内に位置する圧縮されたバネ、およびバネを圧縮状態に維持するために針保持器を引き込み管にラッチするラッチを備え、第1のラッチは充分に前進した位置へのプランジャーの前進移動に対応して解放でき、それによって引き込み管から針保持器が解放され、圧縮されたバネが伸長でき、それによって針保持器を引き込まれた位置へ移動できる。
【0028】
1つの実施は、針がバレルの中に引き込まれた後にバレルに対してプランジャーが移動することを防ぐために、所定の前進した位置へのプランジャーの前進移動に対応してプランジャーをバレルにラッチする第2のラッチをも含む。
【0029】
本発明の上述の要約は本発明のそれぞれの実施形態またはすべての態様を示すことを意図していない。上記の特徴および利点、および本発明の他の特徴と利点は、添付図面および添付の特許請求の範囲を参照した、以下の好ましい実施形態の詳細な説明および本発明を実施するための最良の実施形態から容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】内部構造を明らかにするためにバレル、プランジャーおよびプランジャーキャップの部分を断面にし、その針が充分に前進した位置にある安全注射器の透視図である。
図2】取り外し可能な針保護キャップが付加された図1の注射器の中心を通る長手方向の断面図である。
図3】プランジャーが完全に引き込まれた位置にある、図2に示される断面図と同一の図面である。
図4】プランジャーが充分に前進した位置にあり、針が完全に引き込まれた位置にある、図2に示される断面図と同一の図面である。
図5図1図4の注射器中のバレルの側面図である。
図6図5に示される位置から(バレルの長手方向の軸の周りに)90度回転した図5のバレルの側面図である。
図7図5および図6のバレルの透視図である。
図8】針が前進した位置にあるが、図4に示される注射器の遠位部分の拡大図である。
図9図5図7のバレルの遠位部分の拡大側面図である。
図10図1図4の注射器の中のプランジャーキャップを通る長手方向の断面図である。
図11図1の注射器の拡大端面図である。
図12図6中の線12−12に沿った断面図である。
図13図1図4の注射器中のプランジャーの側面図である。
図14図13に示される位置から(プランジャーの長手方向の軸の周りに)90度回転した図13のプランジャーの側面図である。
図15図14中の線15−15に沿った拡大断面図である。
図16図13図15のプランジャーの遠位端部のさらなる拡大端面図である。
図17図13図15のプランジャーの透視図である。
図18図1図4の注射器中のバネ保持具の拡大透視図である。
図19】バネ保持具の近位部分が長手方向の断面図で示される図18の透視図である。
図20】バレルが除去され、注射器の残余部分が図2に示される位置から(注射器の長手方向の軸の周りに)180度回転した、図2に示される断面の部分の拡大図である。
図21】針が部分的に引き込まれ、内部構造を明らかにするためにプランジャーの追加部分が断面になった図1の注射器の透視図である。
図22a】修正された安全注射器の近位部分の分解側面図である。
図22b】修正された安全注射器の近位部分の分解側面図である。
図22c】修正された安全注射器の近位部分の分解側面図であり、図22dに示される位置から(バレルの長手方向の軸の周りに)90度回転しているが、図22dに示されるバレル端部部分と同一の縦軸方向の断面図である。
図22d】修正された安全注射器の近位部分の分解側面図である。
図23】部品に組み立てられているが、図22a〜図22cに示される側面図と同一の側面図である。
図24】バレルが断面図で示される、別の修正された安全注射器の近位部分の部品の部分側面図である。
図25図1図4の注射器に任意で使用される手動スイッチの側面図である。
図26図25に示される手動スイッチの右側端部からの端面図である。
図27】スイッチが図1図4の注射器に取り付けられている、図25中の線27−27に沿った拡大断面図である。
図28】手動スイッチの遠位端部部分および注射器の隣接部分を示す、図28に示される組立体の一部分の拡大側面図である。
図29図25図28に示される手動スイッチの透視図である。
図30a図1図4の注射器を組み立てる逐次ステップを説明する図である。
図30b図1図4の注射器を組み立てる逐次ステップを説明する図である。
図30c図1図4の注射器を組み立てる逐次ステップを説明する図である。
図30d図1図4の注射器を組み立てる逐次ステップを説明する図である。
図30e図1図4の注射器を組み立てる逐次ステップを説明する図である。
図30f図1図4の注射器を組み立てる逐次ステップを説明する図である。
図30g図1図4の注射器を組み立てる逐次ステップを説明する図である。
図30h図1図4の注射器を組み立てる逐次ステップを説明する図である。
図30i図1図4の注射器を組み立てる逐次ステップを説明する図である。
図31図1図4に示される種類の注射器を再利用するプロセスの概略図である。
図32a】プランジャーが2つの異なる位置にあり、プランジャーの一部が長手方向の断面図で示される、修正されたプランジャーおよびバネ保持具の一部の透視図である。
図32b】プランジャーが2つの異なる位置にあり、プランジャーの一部が長手方向の断面図で示される、修正されたプランジャーおよびバネ保持具の一部の透視図である。
図33】プランジャーの軸を通じて縦軸の長手方向のプレーンに沿ったプランジャーの部分的な、図32bに示される透視図と同一の透視図である。
図34図32の線33に沿ったバネ保持具、針保持器およびバネの部分的な、図33に示される透視図と同一の透視図である。
図35図33の線34に沿ったバネ保持具、針保持器、バネおよびプランジャーのさらなる部分的な、図34に示される透視図と同一の透視図である。
図36図32図35の修正されたバネ保持具およびプランジャーを使用した注射器の近位端部部分の側面図である。
図37図32図36に示される修正されたバネ保持具の透視図である。
図38a図32図36に示されるプランジャーの近位端部分の側面図および底面図である。
図38b図32図36に示されるプランジャーの近位端部分の側面図および底面図である。
図39図32図38に示されるプランジャー、バネ保持具および針保持器の組立体の側面図である。
図40図37に示されるバネ保持具の近位端部の拡大端面図である。
図41図37に示されるバネ保持具の近位端部分の拡大側面図である。
図42】プランジャーの遠位端部に挿入された、図37に示されるバネ保持具の拡大上面図である。
図43図42に示される組立体の透視図である。
図44図37に示されるバネ保持具の遠位端部の拡大端面図である。
図45】プランジャーが部分的にだけ取り付けられ、組立体の近位端部分だけが断面で示される、図36に示される注射器の近位端部分の透視図である。
図46】プランジャーが取り付けられ、プランジャーの側面リブを通過する面に沿って組立体の近位端部分が断面で示される図45に示される注射器の近位端部分の透視図である。
図47】プランジャーが取り付けられた図45に示される透視図と同一の透視図である。
図48図37に示されるバネ保持具の近位端部分の拡大透視図である。
図49】異なる角度からであるが、図48に示されるバネ保持具の同一近位端部分の拡大透視図である。
図50図36中の線50−50に沿った拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は多様な修正および代替形態が可能であるが、それらの特定の実施形態の一例が図面に示され、明細書に詳細に記載されている。しかしながら、開示された特定の形態に本発明を制限することは意図されておらず、それに反して、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神および趣旨から逸脱しない範囲のすべての修正形態、均等形態、および代替形態を含むことが意図されていることを理解するべきである。
【0032】
それぞれがそれ自体は特有の特徴および代替実施形態を有する、本発明のいくつかの異なる実施形態が記載される。これらの特徴の置換および組合せは、また一方で、さらなる実施形態につながる。
【0033】
さて図面に戻り、最初に図1図4を参照すると、安全注射器組立体は、バレル10、プランジャー11、中空弾性(ゴム製)プランジャーキャップ12(「ゴム製ピストン」または「ゴム製ストッパー」とも称する)、皮下注射針13および針保持器14を備える。注射器は、バレル10の遠位端部に装着された針保護キャップ15、およびOリング16、バレル10内のバネ17およびバネ保持具18をも備える。
【0034】
図2図4は3つの異なる状態の注射器を表現している。図2では、注射器は、たとえば、使用前の、組み立てられ、包装されおよび出荷される通常の状態である。針13は前進した位置にあり針はキャップ15で保護され、プランジャー11は部分的に、しかしバレル10の中の充分には前進していない位置にあることが分かる。したがって、図2で図示される例では、注射器は、たとえば、図3に図示される位置へ、たとえばプランジャー11を引き込むことによって、針13を介して、バレル10内に液体を吸い込む準備ができている。図3からは、プランジャーを引き込むことで、針13または針保持器14の位置は実質的に変化しないように見える。以下に詳細に記載されるように、第1のラッチは針保持器14、および、それ故に、図1図3に示される前進した位置の針13を係止し、バネ17を圧縮された状態で保持する。図示される実施形態では、プランジャー11が図4に示される位置に前進すると第1のラッチは解放され、それによってバネ17が伸長し、針保持器14および針13をバレル10の中へ自動的に引き込むことができる。
【0035】
図4では、プランジャー11が充分に前進し、プランジャーキャップ12がバレル内部の主要部分の遠位端部と係合する。同様に、針13および針保持器14がバネ17の伸長によって引き込まれる。図4では針13が充分に引き込まれ、尖っている端部が完全にバレル10の中に封入されるように見える。以下に詳細に記載されるように、プランジャーが前進し図4に示される位置に来ると、第2のラッチはプランジャー11をバレル10に好ましくは自動的に係止させ、それによって注射器の再使用を防ぐ。
【0036】
図1図12に示されるバレル10は特に機能的な特徴を持つように設計された。バレル10は細長い、中空管である、直円柱として通常示され、その遠位端部で、エラストマーのOリング16を受け取るくぼみ21(図8参照)を含む略円錐台形チャンバ20を形成する。図8を参照すると、Oリングくぼみ21の近位側の、たくさんの隆起して成形された保持具22(図示される実施形態では4つ)は、くぼみ21の中のOリング16を拘束またはそうでなければ保持する。円錐形のチャンバ20の遠位側では、バレル10は、バレル10の管状本体部分の中空内部と通じている中空テーパーノズル23で終わる。望ましくは、バレル10はその開口マージン24(図7参照)まで均一の直径を有する。図示される実施形態のバレルマージン24は一対の一体に形成された、外側に延在する直径フランジ25を備え、それには望ましくは摩擦線(friction lines)が形成され(図示せず)、それは薬を注入または吸引する通常の使用のためにプランジャー11をバレル10に対して長手方向に移動させることが望まれる場合に、バレルと使用者の指とを釣り合わせることを容易にする。
【0037】
図1図12に描かれる例示的な実施形態を引き続いて参照すると、バレルマージン24にはバレルの外側円筒壁の上に一対の係止スリーブまたはポケット26および27も備えられている。第1の係止ポケット26はバネ保持具18上の係止突起を受け取るように構成され、プランジャーが充分に前進すると第2の係止ポケット27はプランジャー11上の一対の係止突起を受け取り、以下に詳細に記載されているように、それによってバネ保持具18および充分に前進したプランジャー11をバレル10にしっかりと係止する。理想的には、係止ポケット26および27はフランジ25の中心にある横軸に垂直な横軸の上に中心がある(図7図11および図12参照)。あるいは係止ポケット26、27は長手方向というよりも横に挿入される構造の係止手段を形成する直径窓で置き換えられてもよい。
【0038】
図8はバレル10の遠位端部部分の拡大された横断側面図であり、ここで液体は針13を介して注射器に入り、たとえば、同一の針13を介して患者の体に注入されてもよい。プランジャーキャップ12の円錐形の表面12a、バレル壁28の内側、中心にある針保持器14のOD表面、および遠位端部にあるOリング16の間で協同的に定義される液密のチャンバ内に薬が通常は存在する。たとえば、プランジャーキャップ12がOリング16から取り外されると、液体チャンバが膨張し、それによって液体を中に引き込み、プランジャーキャップ12がOリング16に近づくと収縮またはつぶれ、それによって注射器から液体を排出する。
【0039】
液体(たとえば、薬)は針保持器の開口部43、44を介して出入りする。注射の完了後に注射器内に液体が残ることは明らかである。「残留量」は注射の完了後に注射器内に残る液体の量であり、針、または針出口部分と通じていない空間の中に残る液体を示す。図8は、針13の近位端部がプランジャーキャップ12およびOリング16によって少なくとも部分的に規定される液体チャンバと流体連通していることを示し、プランジャーキャップ12およびOリング16の両方とも好ましくは圧縮性の材料から形成され、プランジャー11がバレル中でその充分に前進した位置に達し圧縮性の材料が通常の形状に戻ると、協同的にチャンバの最後の液体の容積を空にする。
【0040】
図1に戻って参照すると、針保護キャップ15は、使用されるためにキャップ15が除去されるまで不注意な針穿刺から保護するだけではなく、穿刺針13の鋭利部を保護する。キャップ15は使用前はノズル23の気密および水密密閉体にもなり、使用後はいかなる汚染物質の漏れをも防ぎ、注射器全体を生物学的廃棄物に捨てることができる。キャップ15およびノズル23は予め一杯になった注射器に対して、キャップ15を締め付けるために、たとえば、内部係止ルアーテーパ、またはねじ山さえをも備えていてもよい。
【0041】
バレル10の外側表面には、バレルの中の液体の容積レベルを示す目盛を備えていてもよい。これらの目盛には、たとえば、針保持器14などの内部構成部品の容積が考慮に入れられている。
【0042】
本発明のプランジャー11は図13図17に示されるように従来とは異なる。プランジャー11の近位端部には、バレル10に対してプランジャー11が長手方向に移動させるように使用者が握り、押すことができる円形つまみプレート30を好ましくは形成する。プランジャーの使用中に滑ることを防ぐために、つまみプレート30の周囲にはギザギザまたは彫り込みがされていてもよい。
【0043】
プランジャーの遠位端部11には、結合してプランジャー11に中空ゴム製プランジャーキャップ12を装着するための頭部31を形成する。図8および図10に示されるように、弾性キャップ12の外径はその中央部分に向かうに従って小さくなり、キャップ12の端部の柔軟なマージンでのみキャップ12はバレル10の内壁と係合する。非圧縮状態では、キャップ12の係合端部分の外側直径はバレル10の内径よりもわずかに大きく、キャップ/バレル接触面で気密で液密なシールを形成するためにキャップ12はしっかりとバレルの内壁を押圧する。キャップ12の遠位内側マージンは針保持器14の外側表面と気密および液密な接触面を形成するように構成される。プランジャー11がバレル10内で充分に前進させられると、キャップ12の遠位端部表面12aはバレル10の内側表面の円錐形の遠位端部表面32と大まかに適合し合うように略円錐形である。この共動的な接触面はデッドスペースを減少させることが意図され、注射器からの液体の完全な排出を確保する。バレル中の組立プロセスの間につぶれることを防ぐためにキャップ12の外壁はいくらか厚くなっていてもよい。
【0044】
再び図13および図14を参照すると、プランジャー11の頭部31は中空プランジャーキャップ12内で適合するように構成される。キャップ12はプランジャー11の頭部31に係止され、キャップ12の平らな近位端部33はプランジャー頭部31の底部で円板34の平らな、前方表面に隣接する。板34はゴム製キャップ12に前進する力を伝える。針保持器14ばかりではなくプランジャーキャップ12とバレル10との間の気密で液密なシールのために、バレル10内でのプランジャー11の前進移動はプランジャーキャップ12とバレル11の遠位端部との間のバレル10の内部に圧力を生成する。同様に、プランジャー11の引き込み移動はバレル11内部のその部分に真空を生成する。
【0045】
プランジャー頭部31の結合表面の一部分およびキャップ12は、余裕をもたせるようにお互いにわずかに間隔をあけている。
【0046】
針保持器の詳細は図2図4図8および図20図21に示される。針13および針保持器14の遠位部分の両方とも中空である。図8に示されるように、中空針13の内部40は、針保持器14の中空遠位部分41の内部と通じている。中空遠位部分41の内部チャネルの近位端部は42で見えなくなる。針保持器14はバレル10の内部と、針保持器14の直径に沿って横方向に延在する開口部43を介して、針保持器14の中空部分の側壁を介して液体でつながっている(図8)。たとえば、薬の注射のための針注射器組立体の使用前および使用中(以降「通常の使用」と称する)、側面開口部43は、時々小さい円筒空洞の内にあるOリング16の近位側に位置する。側面開口部43によって、薬などの液体が針保持器14および針13を介してバレル10に入りおよび/または出ることができる。針13の近位端部は針保持器肩部44に位置し、いくつかの従来技術配置のように針が引き込み時に「開口」端部を有さないように、針保持器14の遠位部分41のブラインドチャネルで終わる。その代わりに針13は針保持器14の空洞の中で結合され、境界域で側面開口部43を通じて液体が移送される。
【0047】
図8の実施形態をさらに参照すると、針保持器14の遠位端部45は針保持器組立中に針13を挿入することを容易にするためのテーパー開口部が設けられてもよい。針注射器組立体の通常の使用の間は、針保持器14はバレル10に間接的に係止され、プランジャー11およびそのゴム製キャップ12は、バレル10内で針保持器14に沿った長手方向の前後に摺動できるように自由になっている。
【0048】
図13図17を参照すると、プランジャー11と針保持器14との間の長手方向に相対的な摺動移動ができるように、針保持器14はプランジャー11の一体式の部品として形成される長手方向の空洞であるチャネル46(図15および図16)内に装着される。針保持器14は、2つの位置の間、すなわち、図1図3に示される前進した位置と、図4に示される引き込まれた位置との間で通常は摺動可能である。いくつかの実施形態では、チャネル46内で針保持器14を保持するために、弾性を保持する要素または戻り止め(図示せず)の複数の対が対向するチャネル46の壁からお互いに向かう方向に突き出ている。
【0049】
図15および図16に図示するように、プランジャー11は複数のリブを備えていてもよい。例として、平行なリブ47および48の第1の対は上述された針保持器14を受け取るために、長手方向のチャネル46を規定する。チャネル46の下側部分は半円筒であり、上側部分は半円筒下側部分の対向側面の接線方向に平行な表面によって形成される。追加の3つの長手方向のリブ49、50および51は、バレルの内壁10と係合するために、プランジャー11の外側表面の周りに間隔をあけて外側に延在し、それによってバレル10内でプランジャーを中心に維持する。
【0050】
バレル、プランジャー、およびノズルが装着される皮下注射針を有する従来の注射器は本質的には治療薬だけではなく予防手段としての救命装置である。しかしながら使用後の針穿刺、および無節操な注射器の再使用または針はそれらを凶器としている。本発明のある実施形態の1つの目的は、使用後の針を自動的に引き込み、その再使用を防ぐために注射器を自動的に無効にする、一体化した受動的な針引き込みおよび再使用制御ユニットを提供することである。どの注射器に取り付けられても、この一体化した引き込みおよび再使用防止機構は、従来の注射器に関係がある危険を取り除き、さらにこの広く使用される装置の救命機能を維持する。さらに、全自動化によって使用者の制御または自発性から注射器を隔てている。すべての安全機構は下記のようにただ1つの一体化した管状ユニットにまとまっている。一体化した引き込みユニットは指標のプランジャー前進によって動作し、それらの同期動作によって普通の注射器を精密引き込み機構に変換する。ユニットは移動プランジャーに同期し、すべての注射器動作を制御する。
【0051】
図18図21を参照すると、図示される実施形態のバネ保持具18はバネの全周で圧縮バネ17を支持するように設計される単一のポリマー管から構成される。バネ17の遠位端部はバネ保持具18の遠位端部に近い内部肩部60(図21参照)によって支持される。一実施形態では、密着した長さに圧縮されると、バネ17は1.1kgから1.8kg(2.5ポンドから4ポンド)の力が出る。バネ17の近位端部は、バネ保持具18と圧縮されたバネ17とに共通の中央軸に沿って好ましくは同心円上に延在する針保持器14の近位端部の頭部61の前方表面を押圧する。図面に示される管状構造は、プランジャーの動作または針保持器の引き込み中に、針保持器14がまっすぐにとどまり、横方向に曲がらないことを保証する。好ましい実施によれば、針保持器14がまっすぐに前進し、引き込み軸もまっすぐになることを保証するために、バネ保持具18の中央長手方向の軸はプランジャー空洞の中心に正確に位置する。
【0052】
バネ保持具18は、カンチレバー62の遠位端部から半径方向外側に延在する係止フランジ63(図2図4)を有する側面カンチレバー62によってバレル10に係止される(図1図4および図18図21参照)。カンチレバー62はバレル10の係止ポケット26に収まることを妨害する。組立中にカンチレバー62が係止ポケット26に押し込まれると、弾性的に変形するまたは歪むスリーブ26によって充分に係止フランジ63がポケット26を通過することができる。係止フランジ63が完全にポケット26を通過すると、ポケット26はその通常の形状に戻り、フランジ63はポケット26の遠位端部の一部と重なるために外側にはまる。好ましい実施形態では、この結合接触面はその後のバレル10からのバネ保持具18のどのような脱離をも防ぎ、すなわち、バネ保持具18のバレル10への係止は永続的になる。
【0053】
バネ保持具肩部60と針保持器頭部61との間でバネ17を圧縮された状態に保持するために、針保持器の頭部61の一部と重なるように、ラッチ突起64はバネ保持具18の内部表面から半径方向内側に延在する(図18および図19)。この突起64は上で参照した第1のラッチの部品を形成し、図1図3に示されるそれらの前進した位置で、バネ17を圧縮された状態に保持し、針保持器14を係止し、したがって、針13を係止する。図18および図19に図示するように、好ましくはバネ保持具18と一体である、自由近位端部66aおよび固定遠位端部66bを備える半柔軟性の、弾性セグメント66を形成するために、略U字形状の開口部65はバネ保持具18の半分より遠位に形成される。図示される実施形態では、U字形状の開口部65の底面の幅はバネ保持具18の内径よりも小さい。
【0054】
図18および図19に描かれたラッチ突起64はセグメント66の内側表面に形成され、セグメント66の自由端部66aに隣接する。突起64の近位側はテーパーになっており、組立中に針保持器14およびバネ17がバネ保持具に挿入されると、セグメント66は外側に曲がる。針保持器頭部61が突起64を通過すると、針保持器14をその前進した位置で保持するために突起64が頭部61の一部と重なり、圧縮されたバネ17の力に抵抗するためにセグメント66はその通常の位置に戻る。図18図20に図示するように、強度を増すためにセグメント66は壁の厚さが厚く形成されてもよい。さらに、セグメント66は、バネ保持具18および針保持器14の両方をバレル内およびプランジャーチャネル46内の中心に保つためにバレルの内壁10と係合する外側突起67と共に形成されてもよい。
【0055】
ある実施形態によれば、半柔軟性のセグメント66はその近位自由端部66aの近くに2つの側面の突起(すなわち「ウィングス(wing)」)68を備える。チャネル46を形成するプランジャーリブ47および48の表面の遠位部分と同一の直線状のプレーンの中にウィングス68の内側表面は位置する。図17に図示するように、リブ47、48の近位部分は遠位部分よりも高く、遠位および近位部分の間の移動部分は一対の斜面47a、48aを形成するためにテーパーになっている。これらの斜面は針保持器頭部61と重なる突起64によって形成されるバネラッチを解放するように機能する。斜面47aおよび47bがウィングス68をリブ47および48のより高い近位部分の上に持ち上げると、ラッチ突起64の外側への移動によってバネラッチは解放される。この働きによって針保持器頭部61からの突起64の拘束力を解放し、それによってバネ17が伸長し、針保持器14を図4に示される位置に引き込むことが可能になる。
【0056】
上述の例示的な実施形態を進めていくと、プランジャー斜面47aおよび48aによってウィングス68が半径方向外側に曲がると、セグメント66がバレル10の内部の円筒空間に幾何学的に適合することを確実にするために、半柔軟性のセグメント66の外側表面は面取りされている。
【0057】
一般的に、プランジャー11はその通常動作の間では注射器の唯一の移動部品である。プランジャー11は、上記のように、プランジャーキャップ12を介してバレル10によって定義される液体チャンバと適合する。バレル10内のプランジャー11の直線移動量によって、注射器組立体から抜かれて投与される液体の量が決定される。これらのプランジャー11の移動量は、したがって、注射器の無効化ばかりではなく注射器の機能的な結果および針保持器14の引き込みに対する機械的な指標となることができる。
【0058】
バレル10に取り込まれる液体の量はプランジャー11の引き込み移動の長さに依存し、それは図3に図示するようにバネ保持具18によって制限される。したがって、バネ保持具18の長さを調節することによって、たとえば、所望の投与量に対して注射器に引き込むことができる液体の最大容量が確定できる。この特徴は集団予防接種注射または自己注射用途に役に立つ。
【0059】
上記の特徴に加えて、本発明の注射器組立体の実施形態は注射器の再使用を防ぐために設計された無効化の特徴を持つように組み立てることができる。たとえば、針保持器14を自動的に引き込むためにバネラッチは解放されると同時に、注射器の再使用を防ぐためにプランジャーバレルラッチは自動的に係合される。1つの例示的な構造では、プランジャーバレルラッチはバレル上の係止ポケット27およびその近位端部近くのプランジャー11から半径方向外向きに突き出す一対の係止突起70および71の組合せによって形成される(図1図4図14図17および図20参照)。図14に示されるように、リード突起70は突起71よりわずかに長く、引き込まれた位置(たとえば、図3に示される位置)から押し下げられた位置(たとえば、図4に示される位置)にプランジャーが前進すると、その遠位側で係止ポケット27への進入を容易にするテーパー表面を備える。プランジャー11がバレル10に対して押し下げられると、突起70は係止ポケット27の中に押し込まれる。それと同時に、ポケット27および/または突起70は突起70が長手方向にポケット27を充分に通過することができるように曲がり、歪み、またはそうでなければ変形する。突起70がポケット27を完全に通過すると、突起70および/またはポケット27は通常の形状に戻り、突起70はポケット27の遠位端部の一部と重なる。これでプランジャー11とバレル10とを一緒に係止することによってバレル10に対するその後のプランジャー11のいかなる引き込みをも防ぎ、それによって注射器組立体を無効化する。
【0060】
前述された係止ポケット26と同様に、係止ポケット27はバレル10と一体に成形される。係止ポケット27は係止突起70が通過できるように傾斜内部表面を形成する。第2の突起71は係止ポケット27と実質的に同一寸法を有し、リード突起70の通過後にポケットのどのような変形をも防ぐためにポケットの内側にぴったりと適合する。係止部品間には厳密な公差があり、たとえば、充分に前進した位置へのプランジャーの移動によって薬の注射が完了した後にプランジャー11は取り外されないようにバレル10に係止される、(図4および図8参照)。インターロックはほとんどが隠されて隔絶され、不正開封が防止される。
【0061】
図22cおよび図23は代替実施形態を示し、すなわち伸長した近位端部分80を有する修正されたバレル10aは、フランジ25aの向こう側で、バレル10aの近位端部の近くに位置する一対の直径方向に対向する四角い係止窓81、82を形成する。図示された窓81、82はフランジ25aの中心線から90度離れて位置するが、必要ならばフランジ25aと同一角度位置に成形することができる。たとえば、図22bに示されるように、一対のテーパー状の入り口トラック83、84はバレル10aの近位端部から窓81、82に通じており、代替バネ保持具86との組立を容易にする。図22bのバレル端部部分の回転図では面取りされた遠位端部90を有する半円のバネ保持具86の近位端部に成形された三角形の係止突起87、88と組み立てるために配置された窓81、82が示される。係止突起87、88は入り口トラック83、84に挿入され、挿入力によって窓81、82の中に突起87、88が入ることができるようにバレルの壁が図23に示すように歪む。図22aに図示される修正されたプランジャー11aの剛性および存在によって、バネ保持具86の内側でしっかりとバネ保持具86をバレル10aに係止する。
【0062】
図22bのバネ保持具86は硬いマージン93の下の本体の内側に成形された2つの三角形の係止ポケット91、92をも備える。薬を注入するために注射器が使用され、注射の端部ポイント(バレルの遠位壁23とプランジャーキャップ12との接触)が目前に迫ると、図23に描かれるようにマージン93の下でプランジャーリブ96、97の外側表面の上にある一対の係止突起94、95が2つの係止ポケット91、92の中に入る。係止突起94、95がマージン93を通過するにつれてプランジャーリブ96、97はお互いの方向に歪み、次にマージン93の遠位端の上の肩部の下で突起94、95がパチンと音を立てると通常の形状に戻る。係止突起94、95は好ましくは不正開封を防止する係合のために0.06cm(0.025インチ)を超えてマージン93の遠位端部表面と重なる。
【0063】
図23は、プランジャー11aが充分に前進した位置で、修正されたバレル10a、バネ保持具86、および修正されたプランジャー11aが完全に組み立てられた場合に、一対の係止突起87、88および一対の係止突起94、95の両方によって形成される係止を示す。
【0064】
図24に示される別の代替バレルプランジャー係止配置では、プランジャー11bとバレルとの永続的な係止を作り出すために、プランジャー11bのバックリブ64aの上に成形されたテーパー状のリード端97を有する円形または四角い支柱96が図23の窓81と類似した窓98の中に入る。
【0065】
上述された万能の自動安全注射器は殺菌して供給され、好ましくは注射器自体に印刷されている「最初に薬を吸引せよ」という指示と共にすぐに使用できる。この注射器は受動的であり、全体としては自動であり使用者の安全のための制御下には無い。注射器の動作の特徴に途中でまたは偶然に機能しなくなることがないことは重要である。したがって、不完全な針の引き込みおよび不完全な注射器の無効化を避けるために、いくつかの安全装置が備えられることが好ましい。当該安全装置は、単独で、集合的に、またはどのような組合せでも以下の項目を含むことができる。
1.すべての注射器に対して従来と同様に、注射器は、部分的に引き込まれるプランジャーと共に殺菌して包装される。これは不完全な引き込みを避けるための安全な位置であり注射器設計によって達成される。プランジャー係止突起70はバレル係止スリーブ27の近位端部表面に重なり、したがって図2に図示するように意図的ではないプランジャーの前進を禁止する。プランジャーキャップ12がバレル端部の近くに接近する前に、係止突起70はスリーブ27の端部に充分に接触する。
2.針キャップ15はバレルノズルにテーパーで係止され、バレル内部の空気の量を維持する。この空気量によって針の自動引き込みを開始する活性ポイントへのプランジャーの前進移動を防ぐ。気密空気のためにプランジャーを押圧しても、使用者はプランジャーを自動針引き込みのポイントへ前進させることはできない。使用者が薬の注入の準備ができると、使用者は針キャップを取り除き、ロックに気づき、最初に薬を吸引することによって不完全な引き込みを避ける。
3.最初に薬を吸引することによってバレル中に常にいくらかの液体があることが保証され、それによって使用者が注射を完了するまでプランジャーのトリガポイントへの前進を防ぐことができる。これは効果がある訓練となり、使用者は「最初に薬を吸引せよ」手順を使用するように訓練される。
【0066】
針注射器組立体の通常の使用の間は、バレル10および針ホルダ14は通常は固定して保持され、プランジャー11はバレル10および針保持器14の両方に対して自由に軸方向に移動する。プランジャー11の前進移動はバレル10の端部壁とプランジャーキャップ12との接触によって制限される。
【0067】
液体が注射器の中に吸引されると、使用者は所望の容量に注射器を満たし、空気を抜いて容量を調節する。プランジャー11はバレルから完全に引き抜かれることはなく、これは不注意による液体のこぼれを防ぐ安全機能である。図3に描かれるように、プランジャー11の引き込みはプランジャーのゴム製キャップ12の内部とバネ保持具18との接触によって制限される。
【0068】
バレル10の近位端部のタブ25によって、薬を吸引するために使用者は片手でプランジャー11を引くことができ、薬を注入するためにプランジャーを片手で押すことができる。次に確立した手順を使用して薬は患者に注入される。
【0069】
バレル10内でのプランジャー11の長手方向の前進によって薬が注入されにつれて、プランジャーの上の斜面47aおよび48aはバネ保持具18のラッチセグメント66のウィングス68を曲げ、それによってラッチ突起64を外側に押圧する。これによって針保持器頭部61の圧縮力を取り除き、次にバネ17はプランジャーチャネルの中に針を完全に引き込み、針をその位置に保持する。同時に、バレル10およびプランジャー11はインターロックされ、したがって注射器を無効にする。この働きは瞬間的なものである。自動インターロックは使用制御のもとにはなく、それを無効にする機構はない。
【0070】
(手動スイッチ)
注射器の臨床の使用にはさまざまな状況があり、注射器バレルのすべての内容物を空にできないまたは空にする必要がない状況があり、この場合には引き込みトリガ機構が活性化されない。それにもかかわらず、医療従事者の安全のために、使用済みの注射器の針は引き込まれなければならず、注射器はそれらの再使用を防ぐために動作できないようにしなければならない。これらの目的は、要求に応じて動作する、すなわち、手順を遂行するまたは特定の薬を投与する医療従事者の自発的な動作によって動作する手動スイッチの形態で任意に付け加えられる安全機構によって達成される。
【0071】
上述された万能注射器のための手動スイッチ100の1つの実施形態は図25図29に示され、安定させるために中心でブリッジ103(図26)によって連結された2つの細長い平行なプレート101および102(図25)から構成される。プレート101および102の長い軸に対して90度の角度にあるアクチュエータプレート104によって、2つのプレート101および102は近位端部で一緒に連結される。アクチュエータプレート104を押圧すると使用者はバレル10の内部のスイッチ100を前進させることができる。中央チャネル46を形成するプランジャーリブ47および48の中のスロット105および106にスイッチは係合する(図15および図16参照)。プレート101および102は利用可能な空間の大きさに機械加工または成形され、図で示される実施形態では、断面が略四角形である。プレート101および102の遠位端部107および108は略三角形の形状を有し、バネ保持具18のラッチセグメント66のウィングス68の近位端とごく接近して位置する。スイッチ100が前進すると、ウィングス68の下で三角形の部分107および108が前進し、それらを持ち上げて針保持器頭部61を解放し、針保持器14、したがって、針13を引き込む。
【0072】
図26に示される一対の凸状戻り止め109は、スイッチ100の不注意な前進移動、およびその結果生じる針の不完全な引き込み13を防ぐ。手動スイッチ100の内側表面には凸状戻り止め109の下に2つの三角形の戻り止め110も備えられる。スイッチ100がバレル10の内部で前進すると、スイッチ100をバネ保持具18、したがってバレル10に係止するために三角形の戻り止め110はラッチセグメント66の下面に係合し、手動スイッチ100は引き込まれることができない。針13の引き込みおよび注射器の無効化は永続的であり、使用者の思考と制御が及ばない。1つの配置では、活性プレート104はバレルの近位端部10と修正されたプランジャー11bのつまみプレート30との間の空間に位置する。
【0073】
スイッチ100が前進すると、平行なプレート101および102はバレル10に入り、バネ保持具18のラッチセグメント66のどちらかの側面の上に位置する。ブリッジ103はへこみおよび管状バネ保持具18の上に載る。
【0074】
図27に示されるように、スイッチ100はしっかりとバレル10内に位置し、カンチレバー62の反対側に沿って摺動する。注射器機能の何れをも妨げることなく存在し、たとえば、薬の吸引および注入等の注射器の通常の操作中にはプランジャーは直線方向に自由に移動できる。
【0075】
手動スイッチ100を備える注射器はノズル23を通じて外側に延在する針13をすぐに使用できるように提供される。この注射器は手動で制御されるので、操作者は従来の注射器と正確に同一の方法で注射器を使用することができ、注射される液体の量を制御するためのどのような位置でも注射器の使用を停止することができる。使用者が手順は完了したまたは注射器をこれ以上使用する必要がないと一旦判断すると、使用者は針保持器頭部61を解放するためにウィングス68を持ち上げるアクチュエータプレート104を単に前進させ、バネ17が伸長して針保持器14、したがって針13を、プランジャーチャネル46の中に引き込むことができる。
【0076】
プランジャー11はバネラッチを解放するための二重のトリガ機構を避けるために、針13の自動引き込みを引き起こす斜面47a、48aを除去することによって修正されてもよい。スイッチ100は好ましくは注射器の組立中に取り付けられるので、注射器と分離できない一体の部分になってもよい。
【0077】
本発明は薬の注射に限定されるものではなく、薬の患者への注射は注射器の多くの用途の1つである。これに限定されるものではないが、カテーテルの静脈への挿入、血液または体の液体の吸引、または注入の制御、などの他の手順は、熟練した制御およびプランジャーの前進の判断を要求する。これは上述された注射器の自動化された機能に取って代わる。したがって、注射器には引き込み動作をさせるために上記のような手動制御スイッチが備えられていてもよい。手動スイッチは操作のためにバレルマージンで利用でき、スイッチを押圧するだけで即座に針を引き込む。引き込みが開始される前に注射器はその内容物が空になっていることが好ましい。
【0078】
多くの取締機関は、スイッチが注射器と切り離すことができない安全注射器装置を要求または勧告する。一般的に、これらの要求または勧告ではクランプ、スイッチなどの装置の機能を変更する医療装置の機能的な付属品は装置と切り離すべきではないと述べられている。これらのスイッチまたは他の付属品は移動して機能しなければならないが、取り外し可能であるべきではない。したがって、スイッチが取り付けられたバレルだけではなく手動スイッチも好ましくはこれらの医療装置標準および規則に適合するように設計される。手動スイッチは注射器内部に位置するので、装置からの分離は問題がなく、したがって注射器は法的な要求および/または勧告に適合する。当業者は本発明から逸脱することなく、かれらの目標を達成するための他の特定のスイッチ構造を工夫してもよい。
【0079】
(注射器の長さの最適化)
針穿刺感染症が無く、再使用できない上に、上述された注射器は引き込まれたそれ自体の針に対する永続的な鋭利器材廃棄容器として機能する。無駄のない空間に最適化されることは必要であるが、このためにわずかに長いことが要求されてもよい。余分なプランジャー/バレル長は、プランジャー取っ手と指フランジとの間の空間の使用者の指に適合する。伸ばされたバレル長は、引き込まれた針保持器および針全体を係止し格納するために使用される。
【0080】
圧縮バネ17はその後の引き込まれた状態での針保持器14の維持管理ばかりではなく皮下注射針13および針保持器14の完全な引き込みを保証するように設計されている。注射器の構成部品は完全にインターロックされおよび動作不能である。
【0081】
針13の引き込みはバネ17または他の伸縮付勢手段によって達成されるので、ラッチを解除すると、使用者の手は針先の近辺には近寄らないので、それによって引き込み中の針穿刺の可能性が最小化される。
【0082】
図示された注射器の構成部品の数は、費用効率を維持するために従来の注射器と有意に異なるわけではない。
【0083】
注射器の操作は一方向であるので、偶発的誤用は最小化される、すなわち、一旦引き込まれると、針保持器は所定の位置で係止されるので、針は再び引き伸ばすことはできない。
【0084】
注射器の多様な部品の要求されるすべての操作は通常のおよび引き込み動作モードの両方の場合に針から充分に離れた注射器の近位端部でまたは近くで行われるので、注射器の操作は特に安全である。
【0085】
針注射器組立体は製造が容易、費用効率が高い、およびこの分野で使用が容易である。一般的に、部品は、すぐに入手できる医療グレードステンレス鋼針および圧縮バネを使用して、従来のプラスチック成形ですべて製造することができる。プラスチック部品は、ポリプロピレンなどの医療グレードの、ガンマ線に対して安定なポリマーの射出成形によって製造できる。より高い強度が要求される針保持器およびバネ保持具はポリカーボネートから成形されることができる。プランジャーキャップ12およびOリング16は非ラテックスの、合成エラストマーまたはシリコーンから成形されることができる。円滑な、摩擦のない移動が要求されるスイッチはHDPEから製造されることができる。言うまでもなく、材料選択は構成部品の強度および機能的な要求によって導かれる。上述した材料は、現在入手できるまたは現在入手できない代替化合物または改良された化合物によって置き換えられることができる。紫外線硬化性接着剤を使用することによって針は針保持器に結合されてもよい。注射器は無菌室で組み立てられて包装され、ガンマ線放射によって殺菌される。
【0086】
(組立技術)
従来の注射器はいかなる方向性も要求しない単に別の部品に適合する同じ寸法の部品を備え、たとえば、プランジャーはゴム製ピストンに適合し、ゴム製ピストンはバレルに適合する。1つの可能性のあるやり方では、回転または振動フィーダーの何れかによって正しい位置に部品が一旦置かれると、連続回転運動機械のターレットによってそれらはお互いに圧入される。全体の組立プロセスは縦軸方向であり、部品(バレル、ゴム製ピストン、およびプランジャー)は一軸に並べられる。
【0087】
使い捨ての引き込み可能な針注射器は、操作のための複雑な部品に報いる特別に要求される機能、および組立のための横方向の配置の必要性を有する精密装置である。
【0088】
図30a〜図30iでは、上述された引き込み可能な針および使い捨ての自動的に無効になる注射器を組み立てるための例示的な組立手順を描く。本発明の製造および製作は、純粋に例示的な目的で1つの代表的な実施形態として提供されている以下の明細書に開示される方法に限定されないことを理解すべきである。そのようなものとして、製造の他の方法および手段は本発明の趣旨および精神の範囲内で確実に想定される。
【0089】
バルクローダは第1のフィーダーボールにバレルを供給し、第2のフィーダーボールにOリングを供給し、次にタッチスクリーンの開始ボタンを押圧すると組立動作を開始する。4つのバレルはボールに供給され、ダイアルで4つのネストに運ばれる。バレルは、パッドプリンターが1つの側面に目盛を印刷する印刷工程に仕分けされる。バレルはインクを乾燥させるために紫外線硬化工程に仕分けされる。Oリングの4つのレーンが供給されてバレルに取り付けられる。シリコーンが縦軸方向のバレルに均一にジェット噴霧される「スプレーメーション(Spraymation)」(あるいは等価の)シリコーン工程に部品が仕分けされ、次に部品はプランジャーをサブ組立する注射器組立機械に排出される。
【0090】
整合プランジャー形状を有する安定したプランジャーブロックはしっかりと、それぞれ工程で2つの空気圧で制御されたクランプのもとの小さい工程台にねじ込まれる。それぞれのブロックには、プランジャーサブ組立体と係合するためのバレルブロックを受け取るための精密なトラックが備えられる。
【0091】
プランジャー11は4つのレーンのボールで供給されつまみプレート30の導きでダイアルに向かう。4つのゴム製プランジャーキャップ12はボールで供給され、並べられ、およびプランジャー11の端部に配置される。4つのバネ保持具18は4つのプランジャーチャネル46に配置されて前方に押圧される。4つの処理されたバレル10が取り上げられ、深く配置するためにプランジャー組立体に押圧され、次にそれぞれのバネ保持具18の係止カンチレバー62が対応するバレル10の係止ポケット26に圧入される。バネフィーダーは次に4つのプランジャー11の組立体穴部200を通じて4つのバネ17を供給し、それらをバネ保持具18の中に前進させる。4つの針保持器14が取り上げられ、組立体穴部200を通じてプランジャー11に供給され、バネ保持具18の中に装着される。アーミング工程ではバレルノズル23を通じて延在させるために針保持器14を前方に押圧する。一方向プラグ202はそれぞれの組立体穴部200の近くに挿入される。針13が次にそれぞれの針保持器14に結合され、バレル10は針保護キャップ15で蓋をされる。すべての組立動作はそれぞれの工程でセンサーを用いて検証される。一列で3つの不良部品が製造される場合には、機械が停止し、操作者に問題を解決するように警告が発せられる。誤りが見つかればいかなる部分でも動作は停止する。適切な組立体を保証するために目視検査工程でサブ組立体が仕分けされる。
【0092】
図30gを参照すると、それぞれのバネ保持具18の近位端部は、組立体穴部200を通じた針引き込みユニットの組立中は、バネ17および針保持器14の連続供給を可能にするために開口しており、次にプラグ202で閉じられる。一旦バネ保持具18の中に供給されると、バネ17および針保持器14は軸方向にだけ移動することができ、引き込まれるとバネ保持具18から突き出すことができるがプランジャー11の中央チャネル46にとどまったままである。
【0093】
つまみプレート30には、この手順では、組立中にバネ保持具18の中にバネ17および針保持器14の供給を可能にするために、中央穴部200が設けられている。図2および図3に描かれるように、Oリング16およびバレルノズル23を通じて針保持器14を遠位端に前進させて動作可能にするためにも穴部200が使用される。組立工具201(図30f)が穴部200を通じて挿入されると、バレルのノズル23の中のその前進した位置で針保持器14が係止されるまで、工具201は針保持器14の長手方向に前進し、バネ17を圧縮させる(図2参照)。一旦、一体式の引き込み組立体の組立が完了し注射器が使用できるようになると、図15に示すようにプランジャー穴部200はプラグ202で閉められる。プラグ202のステム204の一体式の部品として形成される保持リング203は、プランジャー11の所定の位置にプラグ202を係止するためにつまみプレート30の遠位表面の下でパチッと締まる。
【0094】
(再利用)
注射器は使い捨ての装置として使用されるけれども、耐久性のあるプラスチックから製造されるので簡単には使い捨てにできない。環境を汚染する上に、高騰する石油およびそれから生成される石油化学製品のコストのためにこれらの材料が高価になるからである。したがって環境への影響だけではなく経済のためにも注射器は再利用されなければならず、プラスチックは回収され再使用されなければならない。図31は将来の用途のためにプラスチックを回収するための注射器の再利用の方法を図示している。それぞれの注射器は一般に3つのプラスチックポリマーおよびステンレス鋼から構成される。たとえば、バレル10、プランジャー11および針保護キャップ15はポリプロピレンから製造されてもよく、プランジャーキャップ12は合成ゴム、ネオプレンまたはイソプレンから製造されてもよく、引き込み制御ユニットおよび針保持器14はポリカーボネートから製造されてもよく、バネ17および針13はステンレス鋼から製造されてもよい。異なる用途での再使用のために純粋な形でこれらの材料を分離するための、単純な、エネルギーを消費しない、経済的な再利用方法を使用できる。注射器は病院で発生するプラスチック廃棄物の17%にもなるのでプロセスは費用効率が高い。再利用ステップは図31に示される。
【0095】
(ステップ1−ポリプロピレンの回収)
使用済みの、汚染された注射器は病院の生物学的な廃棄物に要求されるように赤い袋に収集される。予防措置を考慮して、容器はそれらを殺菌するために高圧蒸気滅菌チャンバ300を通過する。殺菌した注射器301は次にバルクでホッパー302に供給され、および水冷切削ホイール303によって注射器を断片に切削され、第1の水で満たされたタンク304に入れられる。ここで他の材料の断片はより比重が大きいので沈むが、すべてのポリプロピレン(ポリプロピレンの断片は比重0.9を有する)は比重1.0を有する水の表面に浮く。タンク304からコンベヤー306に浮遊する断片をすくい取るために羽根車305が設置されてもよい。タンク304の中の水はポンプ307によって継続的に再利用(re−claimed)される。
【0096】
(ステップ2−ポリカーボネートの回収)
比重1.20のポリカーボネートの沈んだ断片は、ネオプレンおよび鋼断片と一緒に、比重1.26のグリセロールで満たされた第2のタンク310に移動する。他の材料の断片はより比重が大きいので沈むがポリカーボネート断片はタンク310のグリセロールの表面に浮く。タンク310からコンベヤー312に浮遊する断片をすくい取るために羽根車311が設置されてもよい。タンク310の中のグリセロールはポンプ313によって継続的に再利用される。
【0097】
(ステップ3−合成ゴムの回収)
一般に可変の比重を有するネオプレンまたはブチルイソプレンから製造されるプランジャーキャップ断片は、ネオプレンまたはブチルイソプレンの比重よりも大きい比重を有する溶剤を含むタンク320に移動する。当該溶剤はゴム産業で一般に使用される。断片はタンク320の中の溶剤の表面に浮くが、残りの断片の鋼はより比重が大きいので沈む。タンク320からコンベヤー322に浮遊する断片をすくい取るために羽根車321が設置されてもよい。タンク3230の中の溶剤はポンプ323によって継続的に再利用される。
【0098】
(ステップ4−ステンレス鋼の回収)
ステンレス鋼の最後の断片はタンク320の底に沈み、コンテナ330に移動し、そこで回収され、炉内で溶融され、接着剤などの残りの汚染物質をもきれいに燃焼させる。
【0099】
したがって注射器のすべての構成部品は回収され、利益を生みおよび環境への影響を避けて、他の製品を作るために使用される。コスト削減によって消費者は利益を得る。
【0100】
異なる比重を有する、構成部品を分離するために使用される液体は混和性なので、タンクはお互いに従来のバルブで分離されている。液体の混合によって比重が変化する。液体がお互いに混合しない場合には、プロセスは著しく効率的である。
【0101】
(追加実施形態)
注射器の機能的属性は水圧機能に関与する構成部品(たとえば、バレル10、プランジャー11、ゴム製ストッパー12、「O」リング16など)および注射に関与する針保持器14および針13に存在する。針の引き込みのための安全機構および再使用防止は追加機能である。引き込みは、針保持器14と可逆的に係合する、圧縮されたバネ17に取り囲まれたバネ保持具18によって決まり、それはプランジャー11がバレル10の中で前進して注射が完了すると、針保持器14および針13をプランジャー斜面47a、48aと接触して引き込ませる。好ましい実施では、この一連の出来事は正確にタイミング制御され使用者の制御のもとにはない。注射器の再使用は、注射器と共に前進し無意識に機能する係止スロットおよびプランジャーフランジ71の形態でバレルの上に位置する再使用防止機構27によっても無効にされている。これは、薬の注射の完了時の強制的な針の引き込みによって針穿刺損傷の防止およびそれに続く微生物の感染症を防止するという万能注射器の目的を満たす。同時に無節操な人々による注射器の構成部品の再使用を注射器構成部品の自動インターロックによって防ぐ。
【0102】
バネ保持具18の修正された実施形態が図32図50に図示される。引き込み機能に加えて、この修正された装置では注射器自体をインターロックする。物理的一体性およびすべての注射器部品の配置を維持することに役立つポリカーボネートなどの高性能プラスチック(注射器構成部品に使用される柔らかいポリプロピレンプラスチックとは異なる)から構成される。その形状によってバレル周囲の一体性を維持する。プランジャーフランジ(明細書では「リブ」とも称する)は機械的に係合され、バネ保持具の形状配置を維持し、側面フランジ/リブはバネ保持具の直径溝に係合する。すべてのこれらの要素は精密装置として動作させるために安全モジュールの半円のアンカー部分に集中している。
【0103】
図32図50を参照すると、最初は図37であるが、安全制御モジュール500は、遠位引き込み制御部分502(明細書では「圧縮プレート」とも称される)と対向して間隔を開けて位置する曲がった近位アンカーおよび係止部分501(明細書では「半円のアンカープレート」とも称される)を有する単一の、細長いプラスチック要素を含むバネ保持具を形成する。一対の細長いバー503および504は近位および遠位部分501および502で相互に接続する。バー503および504の長さは、以下に詳細に記載されている針引き込みのための動作範囲を決定する。図36に図示するように、モジュール500は、近位アンカー部分501を開口し、バレル505の近位端部、およびバレル505の内部に位置する遠位引き込み制御部分502を有するバレル505に挿入される。
【0104】
図36図40に図示するように、制御モジュール500の内部にプランジャー507を受け取るために(図37で示される)チャネル506が形成される。この実施形態では、図39に示されるようにプランジャー507は、細長いバー503および504の内側表面503aおよび504aのそれぞれに沿ってモジュール500の内部に延在する(たとえば、図38bに示される)一対の細長いリブ508および509を形成する。バレル505が除去され、モジュール500とプランジャー507との関係を示すためにプランジャー507が図39に部分断面図で示される。プランジャーリブ508および509の細長い端は、薬の注射を完了するためにプランジャーが前進した後に針(たとえば、図1の13)の引き込みを開始するように位置する角度のある斜面508aおよび509a(図32b)を形成する。さらに、図36および図45図47に図示され、以下に詳細に記載されるように、(図38bで最もよく見える)リブ508および509の外側側壁の上の追加の2つの三角形の突起508bおよび509bはプランジャー507をモジュール500にラッチするように機能する。この実施形態では、通常動作の間に、プランジャー507は好ましくは注射器の唯一の移動要素であり、モジュール500と常に接触している。
【0105】
図45図47に示すように、安全制御モジュール500の近位アンカー部分501はバレル505に取り付けられ、2つの通常三角形の、ダイヤメトラルタブまたは突起510および511(図40)がバレル505中の一対の相補的な、好ましくは四角い開口部512および513に収まる。バレル505の伸長または実質的にバレル505の内径と同一の外径を有するモジュール500を支持するステップを必要としない。半円のアンカー部分501の内部表面504a(図36)は、プランジャーチャネル546と組み合わせて、軸方向引き込みチャネルを形成する。タブ510および511は傾斜したトラック514および515を介して、開口部512および513に隣接するバレル505の内部表面によって形成されるバレル開口部512および513に入る。一旦係合されると、反対の角度516および517はバレル壁と当たるので、タブ510および511が開口部512、513から出ることが制限される。タブ510および511の遠位マージンが開口部512および513の下側マージンに隣接するので、モジュール500はバレル505に沈むことができない。プランジャーフランジ508、509は直径方向でバレル505の一体性を維持する。プランジャー507の中央チャネル546を形成するプランジャー507の長手方向に延在するリブまたはフランジ508、509は、2つの固い支柱512、513の間に固定され、前述されたように中央チャネル506の引き込み要素を保持する。バックフランジは結合していないバレル505の周囲を支持する。
【0106】
一旦組み立てられると、モジュール500はプランジャー507にしっかりと係合し、バレル壁を切断することなくバレル505から除去されることはできない。図50に示されるように固いバー503および504(図37)は前面フランジ547、548およびプランジャー11の側面フランジ549、551の両方を支持する。針が引き込まれた後にプランジャーの移動を防ぐためにプランジャー507をモジュール500にそしてバレル505に係止するためにプランジャー側面斜面508bおよび509bをそれぞれ受け取る面取りされた入り口522および523と共に一対の窓520および521をもバー503および504は形成する。
【0107】
図37をもう一度参照すると、バー503および504の遠位端部は、支持部531から半径方向内側に突き出るリング532で終わる片持ち遠位バネ支持部531(明細書では「支持バー」とも称する)を形成する支柱530によって一緒に連結される。図33図35に示されるように、リング532は針保持器(たとえば、図1の14)が通過する開口部533(図40)を形成する。リング532の近位側は引き込みバネの遠位端部(たとえば、図1の17)を受け取り動作可能に支持する。図42図43に示されるように、バネ支持部531の内部表面はバネの大きさに適合する谷部534を形成し、バネを軸方向の配置に維持する。近接して、その近位端部で中央に角のある突起536を有する片持ち近位バネ支持部535(明細書では「圧力プレート」とも称する)を支柱530は形成する。注射の準備ができた、リング開口部533を通じて前進した針保持器14、および注射器ノズル23を通じて前進した針と共に、バネを圧縮状態に維持するために、突起536は針保持器頭部を押圧する。
【0108】
中央突起536のどちらかの側面にある近位バネ支持部535のマージンは、注射器の通常の操作中に液体を吸引および排出するためにプランジャーがバレル505内で移動するとプランジャーリブ508および509と常に直接に接触する2つの傾斜した表面537および538を備える。プランジャー507の前進移動によって注射が完了すると、斜面508aおよび509aは突起536のマージンの上で傾斜した表面537および538と接触する。斜面508a、509aが表面537、538に沿って前進すると、片持ち近位バネ支持部535は半径方向外側に曲げられ、針保持器の近位端部から突起536を外す、それによって針保持器を解放し、バネが長手方向に伸長することができる。これによって取り付けられた針と一緒に針保持器を引き込む。ゴム製ストッパーがバレル505の前面端部に接触すると斜面508a、509aの位置はゴム製ストッパーの位置に対する指標となる。
【0109】
針保持器の屈曲を防ぎ、針保持器から突起536を解放することを保証するために、支柱540は近位バネ支持部535の上に備えられる。支柱540は支持部535の中心に位置し、バレルの内壁に向かって延在し、それによって針保持器14をまっすぐに維持する。したがって針の引き込みはすべての状況で保証される。
【0110】
バネ支持リング532と突起536との距離は圧縮バネの固体長および針保持器頭部の厚さにほぼ等しい。針保持器の頭部と突起536との回復可能な接触は角のある接触表面によって強化される。針保持器の頭部を外すためにその三角形の斜面が安全制御モジュールの突起536を半径方向にずらすと、圧縮されたバネの解放はプランジャーの前進によって達成される。
【0111】
幾何学的な針保持器14の長さはバネ保持具500のラッチ突起536と針が注射器から突き出ているバレル505のノズルとの間の距離に等しい。これは機械的な距離であり、バネが存在するか否かに関係のないことである。非圧縮の状態の、自然に伸長した状態では、バネ17は引き込まれた位置にある針保持器14をプランジャー端部の方向へ移動させようとする。機能が動作するためには、針保持器14および針13は注射器ノズルから突き出なければならない。この位置で針保持器14の頭部を押圧する圧縮プレート突起536によってバネ17が完全に圧縮される。
【0112】
(代替実施形態)
本明細書の以下に記述されているものは発明の趣旨および精神の範囲内にある種々の代替実施形態および変形形態である。以下に記述される変形形態は本発明のすべての実施形態またはすべての態様を示すことを意図しておらず、したがって制限的であると解釈されるべきではない。さらに、以下の変形形態および実施形態は論理的に禁止されないどのような組合せまたはサブコンビネーションで使用されてもよい。
【0113】
本発明の一実施形態では、安全注射器組立体が示される。注射器組立体は、その遠位端部にノズルを有する細長いバレルを備える。バレルは、その中の長手方向に延在する空洞を備える。バレルに加えて、注射器組立体は、長手方向に細長いチャネルを有するプランジャーをも備える。完全に引き込まれた位置と充分に前進した位置との間で移動できるように、プランジャーはバレルの中で少なくとも部分的に移動可能に配置される。
【0114】
注射器組立体さらには、その遠位端部に取り付けられた針を有する針保持器を備える。針がノズルの遠位端部から少なくとも部分的に突き出る第1の(前進した)位置と、針が完全にバレルの中に封入される第2の(引き込まれた)位置との間で移動できるように、針保持器はプランジャーチャネルの中で少なくとも部分的に移動可能に配置されている。バネ保持具はバレルに取り付けられる。圧縮バネはバネ保持具によって動作可能に支持される。バネは針保持器と結合し、第2の、引き込まれた位置の方へ付勢する。
【0115】
第1のラッチは針保持器をバネ保持具にラッチするように作用し、それによってバネを圧縮状態に維持する。プランジャーが充分に前進した位置に移動することに対応して、第1のラッチは位置を変えることができる。第1のラッチが位置を変えると、針保持器はバネ保持具から解放され、圧縮されたバネが伸長しそれによって針保持器を第2の位置へ移動させることが可能になる。プランジャーが充分に前進した位置に移動することに対応して、第2のラッチはプランジャーをバレルにラッチするように作用し、それによってプランジャーが充分に前進した位置に移動した後のバレルに対するプランジャーの移動を防ぐ。
【0116】
この実施形態の1つの面によれば、バネは略円筒形状である。この場合には、バネの形状を略円筒に維持するために、バネ保持具はバネの外側表面の少なくとも一部分に係合する。
【0117】
別の態様によれば、バネ保持具は長手方向に細長い通路を規定する。この特定の配置では、針保持器はバネ保持具の通路を通過し、第1の位置と第2の位置との間の移動のためにバネ保持具の通路の中で摺動自在に装着される。
【0118】
別の面の一部として、第1のラッチは、バネ保持具によって形成されるラッチ突起を備える。針保持器が第1の位置にある場合には、ラッチ突起は針保持器の近位端部に係合する。突起が針保持器の一部に重なり、それによって第1の位置に針保持器を保持するラッチされる位置の内側方向にラッチ突起が通常付勢されることが望ましい場合がある。この場合には、ラッチ突起はラッチが解除された位置である外側に変形可能であり、その位置では突起の係合が外れて針保持器がバネを伸長し、それによって針保持器を第2の位置へ移動させることが可能になる。さらに、プランジャーは、ラッチ突起と係合すると共にバレル内でプランジャーが所定の前進した位置に移動すると、ラッチ突起をラッチが解除された位置である外側へ曲げるように構成される1つまたは複数の傾斜表面を備えてもよい。
【0119】
さらに別の面によれば、バネ保持具によって形成される相補的な係止要素を受け取り、それと係止する形状、大きさ、およびそのように方向付けられ、それによってバネ保持具をバレルにしっかり固定する第1の係止ポケットをバレルは備える。
【0120】
この実施形態の別の態様の一部として、第2のラッチは、バレルによって形成される第2の係止ポケットを備える。第2の係止ポケットは、それによってプランジャーがバレルに対して所定の前進した位置に移動するとプランジャーがバレルに係止するプランジャーから突き出る1つまたは複数の相補的な係止突起を受け取り、それと係止する形状、大きさ、およびそのように方向付けられる。
【0121】
さらに別の面では、バネは針保持器とバネ保持具との間で圧縮される。特に、バネはバネの近位端部で針保持器に拘束され、バネの遠位端部でバネ保持具に拘束される。
【0122】
なおさらに別の態様によれば、注射器はさらに、プランジャーの遠位端部に取り付けられ、バレルの内部表面に係合する弾性キャップを備える。弾性キャップはノズルおよびバレル側壁と協力してそれらの間の膨張可能な液体チャンバを規定する。
【0123】
別の代替態様の一部として、注射器は、針保持器が第1の位置にある場合には、針の上に適合するように設計されている針キャップをさらに備える。針キャップはノズルに取り外し可能に付けられ、液体をバレルの中に閉じ込めるように構成される。
【0124】
この実施形態のさらに別の面では、注射器は、プランジャー移動に関係なく第1のラッチを解放する動作が可能な手動スイッチをさらに備えてもよい。1つの例示的な構造では、手動スイッチは、それぞれの近位端部でアクチュエータプレートによって連結される第1の細長いプレートおよび第2の細長いプレートを備える。細長いプレートの遠位端部は選択的に係合し、それによって第1のラッチを解放する。第1の細長いプレートおよび第2の細長いプレートはプランジャーとバネ保持具との間でバレル内で長手方向に延在する。
【0125】
本発明の別の実施形態では、注射器組立体が提供される。この実施形態では、注射器組立体は、その遠位端部でノズルを有する中空バレルを備える。バレルは少なくとも一対の開口部を規定する。プランジャーはバレル内で摺動自在に移動可能である。プランジャーおよびバレルは協同的にそれらの間にある液体チャンバを規定する。プランジャーはそれから横方向外側へ突き出る少なくとも2つの一体に形成されたフランジを備える。中空針は液体チャンバと流体連通しており、バレルに対して引き込まれ可能に装着される。
【0126】
この実施形態の注射器組立体は、少なくとも一対の一体に形成された突起を有する保持具本体を備えるバネ保持具をも備える。それぞれの突起は保持具本体からバレル開口部のそれぞれの1つに横方向外側へ突き出し、それによってバネ保持具をバレルに係止する。バネ保持具本体は、プランジャーを受け取り、それを通過する長手方向に細長い通路を規定する。バネ保持具およびプランジャーは協同的に針引き込みチャネルを規定する。
【0127】
針引き込み機構は針引き込みチャネルを通過するバネ保持具によって動作可能に支持される。針引き込み機構は、その遠位端部で針に取り付けられた針保持器を備える。バネは針保持器の一部と外接し、針がバレルの外側のノズルから突き出る前進した位置、および、針および針保持器が完全にバレルの中に封入される引き込まれる位置から針保持器を付勢する。
【0128】
注射器の通常の操作中には、バネ保持具は針保持器を把持し、それによって針保持器とバネ保持具との間で圧縮状態のバネを保持する。しかしながら、プランジャーが充分に前進した位置に摺動すると、バネ保持具は針保持器を解放し、それによってバネが伸長することができるようになり、それによって針保持器を引き込まれた位置に移動させる。さらに、バネ保持具は少なくとも2つの窓を規定する。プランジャーが充分に前進した位置に達すると、それぞれの窓はプランジャーフランジのそれぞれを受け取る形状、大きさ、およびそのように方向付けられ、それによってプランジャーはバネ保持具に係止され、針がバレルの中に引き込まれた後にバレルに対するプランジャーの移動を防ぐ。
【0129】
この実施形態の1つの態様によれば、保持具本体はその近位端部で実質的に半円筒アンカー部分を備える。アンカー部分はバレルの内径表面の直径と実質的に等しい直径を有する外側直径表面を備える。アンカー部分はまたその内側の周囲表面がプランジャーと接触し、それによってプランジャーの移動中に長手方向に細長い通路によってプランジャーを安定させる構成に製造されてもよい。この点に対して、プランジャーフランジは好ましくはバネ保持具本体アンカー部分の内側の周囲表面と係合するように設計される。
【0130】
この実施形態の別の態様では、バネ保持具本体はその遠位端部に一体に形成された支持バーを備える。支持バーは、それを通じて少なくとも針引き込み機構の一部を受け取り、それによって針引き込み機構を支持する一体式のリングを備える。支持バーは好ましくは第1の細長い支柱および第2の細長い支柱によってアンカープレートに接続されている。支持バーはバネに適合しバネの長手方向の配置を維持するように構成される長手方向に細長い谷部をも備えるように設計されてもよい。
【0131】
別の面では、バネ保持具本体はそれから内側に延在する突起を有する中央圧力プレートを備える。突起は針保持器の近位端部と係合し、それによって圧縮状態のバネを保持する。1つの特定の配置では、プランジャーが充分に前進した位置に向けて移動する間は、圧力プレートの側面はプランジャーフランジと常に接触し、プランジャー充分に前進した位置に達するとプランジャーフランジは圧力プレートを半径方向外側へ曲げる。この場合には、プランジャーフランジは好ましくは半円のアンカー部分と常に接触している。
【0132】
さらに別の実施形態によれば、自動的に引き込み可能な皮下注射器組立体が提供される。注射器組立体は、その遠位端部でノズルを有する略円筒の中空バレルを備える。バレルは、ノズルの中で装着されるエラストマーのOリングを備える。その遠位端部で中空針が取り付けられる細長い針保持器は、バレル内で処理される。バネは針保持器および針を押圧し、引き込まれた位置に付勢する。
【0133】
注射器組立体は、その近位端部で半円のアンカープレートを有するバネ保持具をも備える。バネ保持具はその近位端部で一対の開口部も規定する。さらに、バネ保持具はその遠位端部で圧縮プレートでも形成される。圧縮プレートは針保持器を係合し一時的に針保持器を拘束するように設計されている保持突起で製造される。針保持器を拘束することでバネを圧縮するように作用し、同様にバレルノズルから針を突き出させる。
【0134】
上に示された構造に加えて、この実施形態の注射器組立体は、それらの間にある中央空洞を協同的に規定する長手方向に延在する、2つの平行なリブを有する細長いプランジャーさらに備える。それぞれのリブはバネ保持具圧縮プレートと選択的に接触するように指標化される傾斜を備える。それぞれのリブは、リブの近位部分から突き出た三角形の突起をさらに備える。三角形の突起はバネ保持具開口部のそれぞれに選択的に係合するように位置する。
【0135】
この実施形態によれば、プランジャーをバレルノズルの方のバレル内の所定の前進した位置に移動させると次のように作用する。(1)プランジャー斜面を圧縮プレートに係合し、それによって保持突起を外側へ曲げ、針保持器を解放し、そしてバネが伸長し、針をバレル内で完全に引き込まれた位置にする。(2)プランジャー突起のそれぞれをバネ保持具開口部のそれぞれに係合させ、それによってプランジャーをバネ保持具とインターロックさせ、注射器を無効にする。
【0136】
この実施形態の1つの面によれば、注射器組立体は、動作可能に針およびバレルノズルに取り付けられた雌型ルアー端部を有する中空カテーテルを備える。理想的には、中空カテーテルは静脈を穿刺している間はフラッシュバックコンファーメーション(flashback confirmation)を示す。さらに、針が引き込まれると静脈にアクセスできるように中空カテーテルを静脈に残す。カテーテルは、同一譲受人のその全体を本願明細書に援用する2009年1月27日に発行された「引き込み可能な針の使い捨て安全注射器(Retractable Needle Single Use Safety Syringe)」という名称の米国特許第7,481,797B2号、Dr.Sakharam D.Mahurkar、と同様に設計される。
【0137】
別の面によれば、プランジャーとバネ保持具とをインターロックさせることによってバレルを破裂させるなどの注射器組立体を破壊しなければバレルからプランジャーおよびキャップを取り外すことを不可能にする。この点に関して、プランジャーをバネ保持具にインターロックさせると注射器組立体から中身がこぼれないことが好ましい。
【0138】
この実施形態の別の態様の一部として、注射器組立体は、針の上に取り付けられた針遮断シールドをさらに備える。遮断シールドは遮断シールドが除去されるまで予め一杯になった注射器を維持しバレル内の液体を保持するように構成される。所定の前進した位置にプランジャーが不注意に前進することを防ぐことで、偶発的な針の引き込みを防ぐバレルと気密なシールを形成するように構成される遮断シールドも望ましい。注射器はバレルの開口近位端部を通じて、管の遠位端部部分が弾性キャップの外側表面とバレルの内側表面との間に延在した状態で、キャップの遠位端部と密封Oリングとの間の空間に、プランジャーとバレルとの間でプランジャーの全長に沿って延在する充填管を挿入することで薬または他の液体で予め一杯になっていてもよい。充填管は注射器を所望の量の選択された液体で予め満たすために使用され、次に注射器から引き抜かれる。
【0139】
本発明を実施するための最良の実施形態が詳細に記載されたが、本発明に関する当業者であれば添付の特許請求の範囲内の本発明を実施するための多様な代替の設計および実施形態を理解することができるであろう。
〔態様1〕
注射器組立体であって、
その遠位端部にノズルを有する細長いバレルであって、その中に長手方向に細長い空洞を規定する細長いバレルと、
前記ノズル内に装着される弾性Oリングと、
長手方向に細長いチャネルを規定するプランジャーであって、少なくとも部分的に前記バレル内で移動可能に配置されて、完全に引き込まれた位置と充分に前進した位置との間で変位する、プランジャーと、
針と、
遠位端部にて前記針に取り付けられる針保持器であって、前記プランジャーの前記チャネル内で少なくとも部分的に移動可能に配置されて、当該針が前記ノズルの前記遠位端部から少なくとも部分的に突き出る第1の位置と、当該針が当該バレルの中に完全に封入される第2の位置との間を移動する、針保持器と、
前記バレルに動作可能に取り付けられるバネ保持具と、
前記バネ保持具によって動作可能に支持されるバネであって、前記針保持器と結合し、前記第2の位置へ向けて当該針保持器を付勢するバネと、
前記針保持器を前記バネ保持具にラッチし、それによって前記バネを圧縮状態に維持する第1のラッチであって、前記充分に前進した位置への前記プランジャーの移動に対応して位置を変更可能であって、それによって当該針保持器は当該バネ保持具から解放されて当該圧縮されたバネが伸長することができ、それによって当該針保持器を前記第2の位置へ移動させる、第1のラッチと、
前記充分に前進した位置への前記プランジャーの移動に対応して、当該プランジャーを前記バレルにラッチし、それによって当該プランジャーが当該充分に前進した位置に移動した後に、当該バレルに対して当該プランジャーが移動することを防ぐ、第2のラッチと、
を備える、注射器組立体。
〔態様2〕
態様1記載の注射器において、
前記バネは略円筒形状を有し、
前記バネ保持具は前記バネの外側表面の少なくとも一部分と係合して、当該バネの略円筒形状を維持する、注射器。
〔態様3〕
態様1記載の注射器において、
前記バネ保持具は長手方向に細長い通路を規定し、
前記針保持器は前記第1の位置と前記第2の位置との間の移動のために前記通路の中で摺動自在に装着される、注射器。
〔態様4〕
態様1記載の注射器において、
前記第1のラッチは、前記バネ保持具によって形成されるラッチ突起を備え、
前記ラッチ突起は、前記針保持器が前記第1の位置にある場合に、当該針保持器の前記近位端部と係合する、注射器。
〔態様5〕
態様4記載の注射器において、
前記ラッチ突起はラッチされた位置に向けて内向きに付勢され、そのラッチされた位置で当該突起は前記針保持器の一部分と重なり、それによって当該針保持器を前記第1の位置に保持し、
前記ラッチ突起はラッチが解除された位置へと外向きに変形可能であり、そのラッチが解除された位置で当該突起は前記針保持器を外して前記バネが伸長し、それによって当該針保持器が前記第2の位置に移動することが可能になる、注射器。
〔態様6〕
態様5記載の注射器において、
前記プランジャーは、前記ラッチ突起と係合し、当該プランジャーが前記バレルの中の所定の前進した位置に移動するときに当該ラッチ突起を前記ラッチが解除された位置へと外向きに変形させるように構成された少なくとも1つの傾斜表面を備える、注射器。
〔態様7〕
態様1記載の注射器において、
前記バレルは、前記バネ保持具によって形成される相補的な係止要素を受け取りおよび係止し、それによって当該バネ保持具を当該バレルに固定するように構成される第1の係止ポケットを備える、注射器。
〔態様8〕
態様7記載の注射器において、
前記第2のラッチは、前記バレルを有する前記バネ保持具によって形成される第2の係止ポケットを備え、
前記第2の係止ポケットは、前記プランジャーから突き出る少なくとも1つの相補的な係止突起を受け取りおよび係止するように構成され、それによって、当該プランジャーが所定の前進した位置に移動するとき、当該プランジャーを前記バネ保持具および前記バレルに係止するように構成された、注射器。
〔態様9〕
態様1記載の注射器において、
前記第2のラッチは、前記バレルによって形成される第2の係止ポケットを備え、
前記第2の係止ポケットは、前記プランジャーから突き出る少なくとも1つの相補的な係止突起を受け取りおよび係止するように構成され、それによって、当該プランジャーが所定の前進した位置に移動するとき、当該プランジャーを前記バレルに係止するように構成された、注射器。
〔態様10〕
態様1記載の注射器において、
前記バネは、前記針保持器と前記バネ保持具との間で圧縮され、当該バネの近位端部で当該針保持器によって拘束され、当該バネの遠位端部で当該バネ保持具によって拘束される、注射器。
〔態様11〕
態様1記載の注射器において、
前記プランジャーの遠位端部に取り付けられて、前記Oリングに接触し、当該プランジャーの前進移動によって前記注射器のすべての内容物を排出する弾性キャップを更に備える、注射器。
〔態様12〕
態様11記載の注射器において、
前記弾性キャップは、前記ノズルおよび前記バレルと連動して、それらの間にある膨張可能な液体チャンバを規定する、注射器。
〔態様13〕
態様12記載の注射器において、
前記注射器は、前記バレルの前記近位端部を通じて薬で予め一杯になり、
前記ノズルに適合し、前記針保持器が前記第1の位置にある場合に、前記針を可逆的に遮断するように構成される針キャップを更に備え、
前記針キャップは、予め一杯になっている薬が患者に投与される場合に、前記ノズルから取り外し可能である、注射器。
〔態様14〕
態様1記載の注射器において、
前記注射器の操作者が動作させると、前記プランジャーの移動にかかわりなく、前記第1のラッチを解放するように構成された手動スイッチを更に備える、注射器。
〔態様15〕
態様14記載の注射器において、
前記手動スイッチは、アクチュエータプレートによってそれぞれの近位端部において連結される第1の細長いプレートおよび第2の細長いプレートを備え、
前記細長いプレートの遠位端部は、選択的に前記第1のラッチと係合し、そして当該第1のラッチを解放する、注射器。
〔態様16〕
態様15記載の注射器において、
前記第1の細長いプレートおよび前記第2の細長いプレートは、前記プランジャーと前記バネ保持具との間の前記バレル内で長手方向に延在する、注射器。
〔態様17〕
安全注射器組立体を動作不可能な状態に固定する方法であって、
前記安全注射器組立体は、
細長で、略円筒形状を有し、その中で長手方向に細長い空洞を規定するバレルであって、当該バレルの遠位端部にて中空ノズルを形成し、当該ノズルが当該バレルの当該空洞に通じる、バレルと、
長手方向に細長い開口チャネルを規定し、少なくとも部分的に前記バレルの前記空洞の中で摺動自在に装着され、第1の方向に完全に引き込まれた位置に向けて引き込まれる場合に当該バレルの当該空洞に液体を吸引し、第2の方向に充分に前進した位置に向けて前進した場合に当該バレルから液体を排出するように構成されるプランジャーと、
前記ノズル内に装着される弾性Oリングと、
前記プランジャーの遠位端部に取り付けられ、前記バレルの内部表面に係合する弾性キャップと、
中空針と、
遠位端部にて前記針に装着された針保持器であって、当該針保持器の当該遠位端部の当該針が前記ノズルの遠位端部から前記バレルの外側に突き出る前進した位置と、当該針および当該針保持器が当該バレルの中に完全に封入される引き込まれた位置との間で移動するために、前記プランジャーの前記チャネルの内部および当該バレルの前記空洞の内部で摺動自在に装着される針保持器と、
前記バレルの前記空洞内に位置し、当該バレルに係止されるバネ保持具と、
前記バネ保持具内に位置し、前記針保持器に外接する圧縮バネであって、当該針保持器を前記引き込まれた位置に向けて押圧する圧縮バネと、を備え、
前記方法は、
前記針保持器を前記バネ保持具にラッチして、前記バネを一時的に圧縮状態に維持する工程であって、第1のラッチは前記プランジャーが前記充分に前進した位置に摺動することに対応して解放され、それによって、当該針保持器は当該バネ保持具から解放され、前記バネが伸長し、それによって当該針保持器を前記引き込まれた位置に移動させる工程と、
前記プランジャーが前記充分に前進した位置に摺動することに対応して当該プランジャーを前記バレルにラッチし、それによって、前記針が当該バレルの中に引き込まれた後に当該バレルに対して当該プランジャーが移動することを防ぐ、工程と、
を備える、方法。
〔態様18〕
態様17記載の方法において、
前記プランジャーは、その横方向外側へ突き出る少なくとも2つのフランジを備え、
前記バネ保持具は、前記プランジャーが前記充分に前進した位置に達すると、前記少なくとも2つのプランジャーフランジのそれぞれの突起をそれぞれが受け取るように構成される少なくとも2つの窓を規定し、それによって当該プランジャーは当該バネ保持具に係止される、方法。
〔態様19〕
態様18記載の方法において、
前記保持具本体は、その近位端部に実質的に半円筒アンカー部分を備え、
前記アンカー部分は、第1の直径を有する外側表面を備え、
前記バレルは、前記第1の直径と実質的に等しい第2の直径を有する内側表面を備える、方法。
〔態様20〕
態様19記載の方法において、
前記アンカー部分は、前記長手方向に細長い通路を通じて前記プランジャーが移動する間に、当該プランジャーと接触し、それによって当該プランジャーを安定させるように構成される内側周囲表面を備える、方法。
〔態様21〕
態様20記載の方法において、
前記少なくとも2つのプランジャーフランジは、前記アンカー部分の前記内側周囲表面に係合するように構成される、方法。
〔態様22〕
態様18記載の方法において、
前記バネ保持具本体はその遠位端部に支持バーを備え、
前記支持バーは、それを通じて針引き込み機構の少なくとも一部分を受け取り支持するリングを含む、方法。
〔態様23〕
態様22記載の方法において、
前記支持バーは、第1の細長い支柱および第2の細長い支柱によって前記アンカープレートに接続されている、方法。
〔態様24〕
態様23記載の方法において、
前記支持バーは、前記バネと結合して前記バネの長手方向の配置を維持するように構成される長手方向に細長い谷部を規定する、方法。
〔態様25〕
態様18記載の方法において、
前記バネ保持具本体は、その内側に向けて延在し前記針保持器の近位端部と係合する突起を有する中央圧力プレートを備え、それによって、前記バネを圧縮状態に保つ、方法。
〔態様26〕
態様25記載の方法において、
前記圧力プレートの側面は、前記プランジャーが前記充分に前進した位置に向けて移動する場合には、前記プランジャーフランジと常に接触し、
前記プランジャーフランジは、前記プランジャーが前記充分に前進した位置に達すると、前記圧力プレートを半径方向外側へ向けて曲げる、方法。
〔態様27〕
態様26記載の方法において、
前記プランジャーフランジは、前記アンカー部分と常に接触している、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図22c
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図31
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図38a
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図50