特許第5693897号(P5693897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693897
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】交流電圧調整装置
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/14 20060101AFI20150312BHJP
   H02J 3/12 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   G05F1/14 A
   H02J3/12
【請求項の数】8
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2010-196587(P2010-196587)
(22)【出願日】2010年9月2日
(65)【公開番号】特開2012-53736(P2012-53736A)
(43)【公開日】2012年3月15日
【審査請求日】2013年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】508362310
【氏名又は名称】八和エレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097353
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 功二
(72)【発明者】
【氏名】盛林 磯雄
(72)【発明者】
【氏名】竹田 佳生
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−075661(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3011364(JP,U)
【文献】 特開2006−187102(JP,A)
【文献】 特開昭61−262822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/12− 7/00
H02J 3/00− 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の入力端から入力される交流電源の電圧を変圧して一対の出力端から出力する交流電圧調整装置であって、
前記入力端の一方に一端が接続されると共に該入力端の他方に他端が接続されて両端間に複数のタップを設けた単巻トランスと、
一次巻線と、該一次巻線に磁気結合されて前記入力端の一方と前記出力端の一方の間に両端が接続された二次巻線とを有する第1複巻トランスと、
一端にて前記入力端の一方側及び他方側とのいずれかに接続される一次巻線と、該一次巻線に磁気結合されて一端にて前記入力端の一方側及び他方側とのいずれかに接続されると共に他端にて前記第1複巻トランスの一次巻線の他端に接続される二次巻線とを有する第2複巻トランスと、
前記第1複巻トランスの一次巻線の一端に接続されて、該一端と前記単巻トランスの複数のタップのいずれか1つとの接続を切り替え可能なタップ切替第1スイッチと、
前記第2複巻トランスの一次巻線の他端に接続されて、該他端と前記単巻トランスの複数のタップのいずれか1つとの接続を切り替え可能なタップ切替第2スイッチと
を備えたことを特徴とする交流電圧調整装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の交流電圧調整装置において、前記タップ切替第1スイッチ及びタップ切替第2スイッチを電気的に切り替え可能なものとし、
前記交流電源の出力電圧を検出する出力電圧検出手段と、
前記交流電源の目標出力電圧を入力する目標電圧入力手段と、
前記タップ切替第1スイッチ及びタップ切替第2スイッチの切り替えの組み合わせと、該組合せに応じた前記交流電源の出力電圧との関係を表す組合せデータを記憶するデータ記憶手段と、
前記出力電圧検出手段により検出された出力電圧値と前記目標電圧入力手段から入力された目標電圧値とを比較し、前記データ記憶手段に記憶された組合せデータに基づいて該出力電圧値と目標電圧値の差を最小にさせる前記タップ切替第1スイッチ及びタップ切替第2スイッチの切り替えの組み合わせを演算する演算制御手段と、
該演算制御手段による演算結果に基づいて、前記タップ切替第1スイッチ及びタップ切替第2スイッチの切り替えを行うスイッチ切替手段と
を設けたことを特徴とする交流電圧調整装置。
【請求項3】
前記第2複巻トランスの二次巻線の一端側に、該一端側と前記入力端の一方側及び他方側のいずれか一方との接続を切り替える複巻トランス第1切替スイッチを設け、前記第2複巻トランスの一次巻線の一端側に、該一端側と前記入力端の一方側及び他方側のいずれか一方との接続を切り替える複巻トランス第2切替スイッチを設けたことを特徴とする前記請求項1に記載の交流電圧調整装置。
【請求項4】
前記請求項3に記載の交流電圧調整装置において、前記タップ切替第1スイッチ、タップ切替第2スイッチ、複巻トランス第1切替スイッチ及び複巻トランス第2切替スイッチを電気的に切り替え可能なものとし、
前記交流電源の出力電圧を検出する出力電圧検出手段と、
前記交流電源の目標出力電圧を入力する目標電圧入力手段と、
前記タップ切替第1スイッチ、タップ切替第2スイッチ、複巻トランス第1切替スイッチ及び複巻トランス第2切替スイッチの切り替えの組合せと、該組合せに応じた前記交流電源の出力電圧との関係を表す組合せデータを記憶するデータ記憶手段と、
前記出力電圧検出手段により検出された出力電圧値と前記目標電圧入力手段から入力された目標電圧値とを比較し、前記データ記憶手段に記憶された組合せデータに基づいて該出力電圧値と目標電圧値の差を最小にさせる前記タップ切替第1スイッチ、タップ切替第2スイッチ、複巻トランス第1切替スイッチ及び複巻トランス第2切替スイッチの切り替えの組み合わせを演算する演算制御手段と、
該演算制御手段による演算結果に基づいて、前記タップ切替第1スイッチ、タップ切替第2スイッチ、複巻トランス第1切替スイッチ及び複巻トランス第2切替スイッチの切り替えを行うスイッチ切替手段と
を設けたことを特徴とする交流電圧調整装置。
【請求項5】
一対の入力端から入力される交流電源の電圧を変圧して一対の出力端から出力する交流電圧調整装置であって、
前記入力端の一方に一端が接続されると共に該入力端の他方に他端が接続されて両端間に複数のタップを設けた単巻トランスと、
一次巻線と、該一次巻線に磁気結合されて一端にて前記入力端の一方と接続された二次巻線とを有し、該一次巻線の他端にて前記入力端の一方側及び他方側とのいずれかに接続される複巻第1トランスと、
一次巻線と、該一次巻線に磁気結合されて一端にて前記複巻第1トランスの二次巻線の他端に接続されると共に他端にて出力端の一方側に接続された二次巻線とを有し、前記一次巻線の他端にて前記入力端の一方側及び他方側とのいずれかに接続される前記複巻第1トランスとは一次巻線と二次巻線の比率が異なる複巻第2トランスと、
前記複巻第1トランスの一次巻線の一端に接続されて、該一端と前記単巻トランスの複数のタップのいずれか1つとの接続を切り替え可能なタップ第1切替スイッチと、
前記複巻第2トランスの一次巻線の一端に接続されて、該一端と前記単巻トランスの複数のタップのいずれか1つとの接続を切り替え可能なタップ第2切替スイッチと
を備えたことを特徴とする交流電圧調整装置。
【請求項6】
前記請求項5に記載の交流電圧調整装置において、前記タップ第1切替スイッチ及びタップ第2切替スイッチを電気的に切り替え可能なものとし、
前記交流電源の出力電圧を検出する出力電圧検出手段と、
前記交流電源の目標出力電圧を入力する目標電圧入力手段と、
前記タップ第1切替スイッチ及びタップ第2切替スイッチの切り替えの組合せと、該組合せに応じた前記交流電源の出力電圧との関係を表す組合せデータを記憶するデータ記憶手段と、
前記出力電圧検出手段により検出された出力電圧値と前記目標電圧入力手段から入力された目標電圧値とを比較し、前記データ記憶手段に記憶された組合せデータに基づいて該出力電圧値と目標電圧値の差を最小にさせる前記タップ第1切替スイッチ及びタップ第2切替スイッチの切り替えの組み合わせを演算する演算制御手段と、
該演算制御手段による演算結果に基づいて、前記タップ第1切替スイッチ及びタップ第2切替スイッチの切り替えを行うスイッチ切替手段と
を設けたことを特徴とする交流電圧調整装置。
【請求項7】
前記複巻第1トランスの一次巻線の他端側に、該他端側と前記入力端の一方側及び他方側のいずれか一方との接続を切り替える第1複巻トランス切替スイッチを設け、前記複巻第2トランスの一次巻線の他端側に、該他端側と前記入力端の一方側及び他方側のいずれか一方との接続を切り替える第2複巻トランス切替スイッチを設けたことを特徴とする前記請求項5に記載の交流電圧調整装置。
【請求項8】
前記請求項7に記載の交流電圧調整装置において、前記タップ第1切替スイッチ、タップ第2切替スイッチ、第1複巻トランス切替スイッチ及び第2複巻トランス切替スイッチを電気的に切り替え可能なものとし、
前記交流電源の出力電圧を検出する出力電圧検出手段と、
前記交流電源の目標出力電圧を入力する目標電圧入力手段と、
前記タップ第1切替スイッチ、タップ第2切替スイッチ、第1複巻トランス切替スイッチ及び第2複巻トランス切替スイッチの切り替えの組合せと、該組合せに応じた前記交流電源の出力電圧との関係を表す組合せデータを記憶するデータ記憶手段と、
前記出力電圧検出手段により検出された出力電圧値と前記目標電圧入力手段から入力された目標電圧値とを比較し、前記データ記憶手段に記憶された組合せデータに基づいて該出力電圧値と目標電圧値の差を最小にさせる前記タップ第1切替スイッチ、タップ第2切替スイッチ、第1複巻トランス切替スイッチ及び第2複巻トランス切替スイッチの切り替えの組み合わせを演算する演算制御手段と、
該演算制御手段による演算結果に基づいて、前記タップ第1切替スイッチ、タップ第2切替スイッチ、第1複巻トランス切替スイッチ及び第2複巻トランス切替スイッチの切り替えを行うスイッチ切替手段と
を設けたことを特徴とする交流電圧調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された交流電源の電圧を昇圧あるいは降圧することにより出力する交流電圧調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の交流電圧調整装置としては、特許文献1に示すように、入力端の一方に一端が接続され、入力端の他方に他端が接続され、中間に少なくとも一つのタップを有する単巻トランスと、一次巻線とそれに磁気結合されて入力端の一方と出力端の他方の間に両端が連結された二次巻線とを有するトランスと、トランスの一次巻線の一端及び他端と、単巻トランスの一端、タップ及び他端との相互接続を選択的に切り替えるスイッチとを備えたものが知られている。しかし、このトランスは、出力電圧を増加させるような調整が可能であるが、出力電圧を減少させる調整は出来ない。そのため、目標となる所定の出力電圧を減少させたい場合に対応することができず、出力電圧の調整範囲が制限されるという問題がある。
【0003】
また、特許文献2に示すように、比較的小容量のインバータ装置の出力により、交流の負荷電圧を定格の正弦波形に直列補償して安定化する交流安定化電源装置が知られている。しかし、この電源装置のようにインバータ装置を用いた場合、変換効率が85〜90%程度と低く、電力利用に無駄が生じる。また、発展途上国のように電力事情が悪く、電源電圧の変動が非常に大きい用途においては、突入電流が定格の400%程度に大きくなるが、このような大きな電流にはインバータ装置では対応が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−187102号公報
【特許文献2】特開平5−113830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決しようとするものであり、スイッチの切り替えによって出力電圧を広い範囲で容易かつ細かく調整が可能であり、変換効率が高く耐久性も高くかつ安価な交流電圧調整装置を提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、大きな入力電圧の変動に対して、出力電圧を精度よく安定化できるような交流安定化電源としての機能を有する交流電圧調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴は、一対の入力端から入力される交流電源の電圧を変圧して一対の出力端から出力する交流電圧調整装置であって、入力端の一方に一端が接続されると共に入力端の他方に他端が接続されて両端間に複数のタップを設けた単巻トランスと、一次巻線と、一次巻線に磁気結合されて入力端の一方と出力端の一方の間に両端が接続された二次巻線とを有する第1複巻トランスと、一端にて入力端の一方側及び他方側とのいずれかに接続される一次巻線と、一次巻線に磁気結合されて一端にて入力端の一方側及び他方側とのいずれかに接続されると共に他端にて第1複巻トランスの一次巻線の他端に接続される二次巻線とを有する第2複巻トランスと、第1複巻トランスの一次巻線の一端に接続されて、一端と単巻トランスの複数のタップのいずれか1つとの接続を切り替え可能なタップ切替第1スイッチと、第2複巻トランスの一次巻線の他端に接続されて、他端と単巻トランスの複数のタップのいずれか1つとの接続を切り替え可能なタップ切替第2スイッチとを備えたことにある。なお、本発明において、複巻トランスについては、降圧トランスであり、以下の全ての複巻トランスについても同様である。
【0007】
第1の特徴においては、交流電圧調整装置の動作は、以下の(1)〜(4)の4つの場合に分けられる。なお、この4つの場合については、便宜上スイッチで接続が切り替えられている図9図12を参照して説明する。
(1)第2複巻トランスFT2の一次巻線の一端側と二次巻線の一端側がいずれも入力端の一方側に接続された場合(図9参照)
タップ切替第1スイッチTSW1の単巻トランスSTにおけるタップ位置での電圧を入力電圧から引いた電圧が、第1複巻トランスFT1の一次巻線に極性に合わせて加えられる。この電圧に第1複巻トランスFT1の一次巻線と二次巻線の比を掛け合わせて減圧された値の第1の電圧が二次巻線に出力される。一方、タップ切替第2スイッチTSW2の単巻トランスSTにおけるタップ位置での電圧を入力電圧から引いた電圧が、第2複巻トランスFT2の一次巻線に極性が反転した状態で加えられる。この電圧に第2複巻トランスFT2の一次巻線と二次巻線の比を掛け合わせて減圧された値の電圧が二次巻線に出力される。さらに、第2複巻トランスFT2の二次巻線からの反転した電圧が第1複巻トランスFT1の一次巻線に加えられ、この電圧に第1複巻トランスFT1の一次巻線と二次巻線の比を掛け合わせてさらに減圧された値の第2の電圧が、二次巻線側に出力される。さらに、入力電圧に第1の電圧が加えられ、第2の電圧が引かれて、出力電圧として出力端から出力される。
【0008】
以上のように、本発明の上記(1)においては、入力電圧に対して、タップ切替第1スイッチTSW1と第1複巻トランスFT1を経た電圧が加えられ、タップ切替第2スイッチTSW2と第2複巻トランスFT2及び第1複巻トランスFT1を経た電圧が引かれて出力端から出力される。その結果、(1)の場合は、入力電圧に対して、第1複巻トランスFT1で減圧された電圧が加えられると共に、第2複巻トランスFT2と第1複巻トランスFT1で二重に減圧された電圧が引かれることにより、入力電圧に対して2段階で非常に細かく調整された出力電圧を出力することができる。
【0009】
(2)第2複巻トランスFT2の一次巻線の一端側が入力端の他方側に、二次巻線の一端側が入力端の一方側に接続された場合(図10参照)
タップ切替第1スイッチTSW1の単巻トランスSTにおけるタップ位置からの電圧については、上記(1)の場合と同様である。タップ切替第2スイッチTSW2の単巻トランスSTにおけるタップ位置での電圧は、第2複巻トランスFT2の一次巻線に極性を合わせて加えられる。さらに、この電圧に第2複巻トランスFT2の一次巻線と二次巻線の比を掛け合わせて減圧された値の電圧が、二次巻線側に出力される。第2複巻トランスFT2の二次巻線からの電圧が第1複巻トランスFT1の一次巻線に加えられ、この電圧に第1複巻トランスFT1の一次巻線と二次巻線の比を掛け合わせて減圧された値の第2の電圧が、二次巻線側に出力される。さらに、入力電圧に第1の電圧と第2の電圧が加えられて、出力電圧として出力端から出力される。
【0010】
以上のように、(2)の場合は、入力電圧に対してタップ切替第1スイッチTSW1と第1複巻トランスFT1を経た電圧が加えられ、タップ切替第2スイッチTSW2と第2複巻トランスFT2及び第1複巻トランスFT1を経た電圧が加えられて出力端から出力される。その結果、(2)の場合は、入力電圧に対して、第1複巻トランスFT1で減圧された出力が加えられると共に、第2複巻トランスFT2と第1複巻トランスFT1で二重に減圧された出力が加えられることにより、入力電圧に対して2段階で非常に細かく調整された出力電圧を出力することができる。
【0011】
(3)第2複巻トランスFT2の一次巻線の一端側が入力端の一方側に、二次巻線の一端側が入力端の他方側に接続された場合(図11参照)
タップ切替第1スイッチTSW1の単巻トランスSTにおけるタップ位置での電圧が、第1複巻トランスFT1の一次巻線に極性が反転した状態で加えられる。さらに、この電圧に第1複巻トランスFT1の一次巻線と二次巻線の比を掛け合わせて減圧された第1の電圧が二次巻線に出力される。一方、タップ切替第2スイッチTSW2の単巻トランスSTにおけるタップ位置での電圧については、上記図9の場合と同様である。さらに、入力電圧から第1の電圧と第2の電圧が引かれて、出力電圧として出力端から出力される。このように、(3)においては、入力電圧に対してタップ切替第1スイッチTSW1と第1複巻トランスFT1を経た電圧が引かれ、タップ切替第2スイッチTSW2と第2複巻トランスFT2及び第1複巻トランスFT1を経た電圧が引かれて出力端から出力される。その結果、この場合は、入力電圧に対して、第1複巻トランスFT1で減圧された出力電圧が引かれると共に、第2複巻トランスFT2と第1複巻トランスFT1で二重に減圧された出力電圧が引かれることにより、入力電圧に対して2段階で非常に細かく調整された出力電圧を供給することができる。
【0012】
(4)第2複巻トランスFT2の一次巻線と二次巻線の一端側がいずれも入力端の他方側に接続された場合(図12参照)
タップ切替第1スイッチTSW1の単巻トランスSTにおけるタップ位置での電圧は、図11の場合と同様に処理され、また、タップ切替第2スイッチTSW2の単巻トランスSTにおけるタップ位置での電圧は、上記図10の場合と同様に処理される。さらに、入力電圧から第1の電圧が引かれると共に第2の電圧が加えられて、出力電圧として出力端から出力される。このように、(4)においては、入力電圧に対してタップ切替第1スイッチTSW1と第1複巻トランスFT1を経た電圧が引かれ、タップ切替第2スイッチTSW2と第2複巻トランスFT2及び第1複巻トランスFT1を経た電圧が加えられて出力端から出力される。その結果、この場合は、入力電圧に対して、第1複巻トランスFT1で減圧された出力電圧が引かれると共に、第2複巻トランスFT2と第1複巻トランスFT1で二重に減圧された出力電圧が加えられることにより、入力電圧に対して2段階で非常に細かく調整された出力電圧を供給することができる。
【0013】
以上のように、第1の特徴においては、所定の入力電圧に対して、第1タップ切替スイッチの切り替えによって細かく調節されかつ第1複巻トランスで減圧された電圧と、第2タップ切替スイッチの切り替えによって細かく調節されかつ第2複巻トランスと第1複巻トランスによって二重に減圧された電圧を、入力電圧に対して加えたり引いたりすることにより、非常に広い範囲で細かく調節した出力電圧を出力させることができ、従来のインバータを用いたものに比べて電圧調整の範囲を広めることができる。また、第1の特徴においては、トランスを用いていることにより、入力電圧に対する出力電圧の変換効率を、従来のインバータを用いた方式等に比べて大幅に高めることができる。
【0014】
また、第1の特徴において、タップ切替第1スイッチ及びタップ切替第2スイッチを電気的に切り替え可能なものとし、交流電源の出力電圧を検出する出力電圧検出手段と、交流電源の目標出力電圧を入力する目標電圧入力手段と、タップ切替第1スイッチ及びタップ切替第2スイッチの切り替えの組み合わせと、組合せに応じた交流電源の出力電圧との関係を表す組合せデータを記憶するデータ記憶手段と、出力電圧検出手段により検出された出力電圧値と目標電圧入力手段から入力された目標電圧値とを比較し、データ記憶手段に記憶された組合せデータに基づいて出力電圧値と目標電圧値の差を最小にさせるタップ切替第1スイッチ及びタップ切替第2スイッチの切り替えの組み合わせを演算する演算制御手段と、演算制御手段による演算結果に基づいて、タップ切替第1スイッチ及びタップ切替第2スイッチの切り替えを行うスイッチ切替手段とを設けることができる。
【0015】
第2複巻トランスFT2の一次巻線と二次巻線の一端側が、入力端の一方側と他方側のいずれかに接続された上記(1)〜(4)のいずれかの場合において、出力電圧として目標電圧値が決められることにより、以下の制御が行われる。入力電圧が変動することにより出力電圧が目標電圧値から変動したような場合に、演算制御手段により、出力電圧検出手段により検出された出力電圧値と目標電圧入力手段から入力された目標電圧値とが比較される。演算制御手段は、出力電圧の目標電圧値からの差を出来る限り小さくするために、データ記憶手段に記憶された組合せデータに基づいて出力電圧値と目標電圧値の差を最小にさせる第1及び第2タップ切替スイッチの切り替えの組み合わせを演算により求める。その演算結果に基づいて、スイッチ切替手段により電気的に迅速に第1及び第2タップ切替スイッチの切り替えが行われ、出力電圧の目標電圧値からの差が最小になるように制御される。その結果、この交流電圧調整装置は、入力電圧の変動に対する出力電圧の変動を最小限に抑える交流安定化電源として機能できる。
【0016】
また、第1の特徴において、第2複巻トランスの二次巻線の一端側に、一端側と入力端の一方側及び他方側のいずれか一方との接続を切り替える複巻トランス第1切替スイッチを設け、第2複巻トランスの一次巻線の一端側に、一端側と前記入力端の一方側及び他方側のいずれか一方との接続を切り替える複巻トランス第2切替スイッチを設けることができる。これにより、図9図12に示すように、複巻トランス第1切替スイッチSW22と複巻トランス第2切替スイッチSW21を切り替えることにより、上記(1)〜(4)の4つの場合を簡単に切り替えることができる。その結果、複巻トランス第1切替スイッチSW22と複巻トランス第2切替スイッチSW21により第1複巻トランスFT1と第2複巻トランスFT2の一次巻線にそれぞれ入力される電圧の極性を切り替えつつ、その大きさをタップ切替第1スイッチ及びタップ切替第2スイッチの切り替え位置で細かい電圧に調節しながら出力させることができる。
【0017】
複巻トランス第1切替スイッチSW22と複巻トランス第2切替スイッチSW21を設けた場合、さらに、タップ切替第1スイッチ、タップ切替第2スイッチ、複巻トランス第1切替スイッチ及び複巻トランス第2切替スイッチを電気的に切り替え可能なものとし、交流電源の出力電圧を検出する出力電圧検出手段と、交流電源の目標出力電圧を入力する目標電圧入力手段と、タップ切替第1スイッチ、タップ切替第2スイッチ、複巻トランス第1切替スイッチ及び複巻トランス第2切替スイッチの切り替えの組合せと、組合せに応じた交流電源の出力電圧との関係を表す組合せデータを記憶するデータ記憶手段と、出力電圧検出手段により検出された出力電圧値と目標電圧入力手段から入力された目標電圧値とを比較し、データ記憶手段に記憶された組合せデータに基づいて出力電圧値と目標電圧値の差を最小にさせるタップ切替第1スイッチ、タップ切替第2スイッチ、複巻トランス第1切替スイッチ及び複巻トランス第2切替スイッチの切り替えの組み合わせを演算する演算制御手段と、演算制御手段による演算結果に基づいて、タップ切替第1スイッチ、タップ切替第2スイッチ、複巻トランス第1切替スイッチ及び複巻トランス第2切替スイッチの切り替えを行うスイッチ切替手段とを設けることができる。
【0018】
これにより、図13に示すように、入力電圧が変動することにより出力電圧が目標電圧値から変動したような場合に、演算制御手段により、出力電圧検出手段により検出された出力電圧値と目標電圧入力手段から入力された目標電圧値とが比較される。演算制御手段は、出力電圧の目標電圧値からの差を出来る限り小さくするために、データ記憶手段に記憶された組合せデータに基づいて出力電圧値と目標電圧値の差を最小にさせるタップ切替第1スイッチ及びタップ切替第2スイッチと複巻トランス第1切替スイッチ及び複巻トランス第2切替スイッチの切り替えの組み合わせが演算される。その演算結果に基づいて、スイッチ切替手段により電気的に迅速にタップ切替第1スイッチ及びタップ切替第2スイッチと複巻トランス第1切替スイッチ及び複巻トランス第2切替スイッチの切り替えが行われ、出力電圧の目標電圧値からの差が最小になるように制御される。その結果、本発明においては、交流電圧調整装置を入力電圧の変動に対する出力電圧の変動を最小限に抑える交流安定化電源として有効に活用できる。
【0019】
本発明の第2の特徴は、一対の入力端から入力される交流電源の電圧を変圧して一対の出力端から出力する交流電圧調整装置であって、入力端の一方に一端が接続されると共に入力端の他方に他端が接続されて両端間に複数のタップを設けた単巻トランスと、一次巻線と、一次巻線に磁気結合されて一端にて入力端の一方と接続された二次巻線とを有し、一次巻線の他端にて入力端の一方側及び他方側とのいずれかに接続される複巻第1トランスと、一次巻線と、一次巻線に磁気結合されて一端にて複巻第1トランスの二次巻線の他端に接続されると共に他端にて出力端の一方側に接続された二次巻線とを有し、一次巻線の他端にて入力端の一方側及び他方側とのいずれかに接続される複巻第1トランスとは一次巻線と二次巻線の比率が異なる複巻第2トランスと、複巻第1トランスの一次巻線の一端に接続されて、一端と単巻トランスの複数のタップのいずれか1つとの接続を切り替え可能なタップ第1切替スイッチと、複巻第2トランスの一次巻線の一端に接続されて、一端と単巻トランスの複数のタップのいずれか1つとの接続を切り替え可能なタップ第2切替スイッチとを備えたことにある。
【0020】
第2の特徴においては、交流電圧調整装置の動作は、以下の(1)〜(4)の4つの場合に分けられる。なお、この4つの場合については、便宜上スイッチで接続が切り替えられている図14図17を参照して説明する。
(1)複巻第1トランスFT1と複巻第2トランスFT2の一次巻線の他端側がいずれも入力端の一方側に接続された場合(図14参照)
タップ第1切替スイッチTSW1の単巻トランスSTにおけるタップ位置での電圧を入力電圧から引いた電圧が、複巻第1トランスFT1の一次巻線に極性を合わせて加えられる。この電圧に複巻第1トランスFT1の一次巻線と二次巻線の比を掛け合わせた値の第1の電圧が二次巻線に出力される。一方、タップ第2切替スイッチTSW2の単巻トランスSTにおけるタップ位置での電圧を入力電圧から引いた値の電圧が、複巻第2トランスFT2の一次巻線に極性を合わせて加えられる。この電圧に複巻第2トランスFT2の一次巻線と二次巻線の比を掛け合わせた値の第2の電圧が二次巻線側に出力される。ここで、複巻第2トランスは複巻第1トランスとは一次巻線と二次巻線の比率が異なるため、複巻第1トランスとは異なった比率の電圧が出力される。さらに、入力電圧に第1の電圧と第2の電圧が加えられて、出力電圧として出力端から出力される。
【0021】
以上のように、本発明の上記(1)においては、入力電圧に対してタップ第1切替スイッチTSW1と複巻第1トランスFT1を経た電圧が加えられ、タップ第2切替スイッチTSW2と複巻第2トランスFT2を経た電圧が加えられて出力端から出力される。その結果、この場合は、入力電圧に対して、複巻第1トランスFT1で降圧された電圧が加えられると共に、複巻第2トランスFT2で複巻第1トランスとは異なった比率で降圧された電圧が加えられることにより、入力電圧に対して非常に細かく調整された出力電圧を出力することができる。
【0022】
(2)複巻第1トランスFT1の一次巻線の他端側が入力端の一方側に接続され、複巻第2トランスFT2の一次巻線の他端側が入力端の他方側に接続された場合(図15参照)
タップ第1切替スイッチTSW1の単巻トランスSTにおけるタップ位置での電圧が複巻第1トランスFT1に加えられる場合については、図14と同様である。一方、タップ第2切替スイッチTSW2の単巻トランスSTにおけるタップ位置での電圧は、複巻第2トランスFT2の一次巻線に極性が反転した状態で加えられる。この電圧に複巻第2トランスFT2の一次巻線と二次巻線の比を掛け合わせた値の第2の電圧が二次巻線側に出力される。さらに、入力電圧に第1の電圧が加えられると共に第2の電圧が引かれて、出力電圧として出力端から出力される。そのため、(2)においては、入力電圧に対してタップ第1切替スイッチTSW1と複巻第1トランスFT1を経た電圧が加えられ、タップ第2切替スイッチTSW2と複巻第2トランスFT2を経た電圧が引かれて出力端から出力される。その結果、この場合は、入力電圧に対して、複巻第1トランスFT1で減圧された電圧が加えられると共に、複巻第2トランスFT2で複巻第1トランスFT1とは異なった比率で減圧された電圧が引かれることにより、入力電圧に対して非常に細かく調整された出力電圧を出力することができる。
【0023】
(3)複巻第1トランスFT1の一次巻線の他端側が入力端の他方側に接続され、複巻第2トランスFT2の一次巻線の他端側が入力端の一方側に接続された場合(図16参照)
タップ第1切替スイッチTSW1の単巻トランスSTにおけるタップ位置での電圧が、複巻第1トランスFT1の一次巻線に極性が反転した状態で加えられる。この電圧に複巻第1トランスFT1の一次巻線と二次巻線の比を掛け合わせた値の第1の電圧が二次巻線に出力される。また、タップ第2切替スイッチTSW2の単巻トランスSTにおけるタップ位置での電圧については、図14と同様である。さらに、入力電圧に対して第1の電圧が引かれる共に第2の電圧が加えられて、出力電圧として出力端から出力される。そのため、(3)においては、入力電圧に対してタップ第1切替スイッチTSW1と複巻第1トランスFT1を経た電圧が引かれ、タップ第2切替スイッチTSW2と複巻第2トランスFT2を経た電圧が加えられて出力端から出力される。その結果、この場合は、入力電圧に対して、複巻第1トランスFT1で減圧された電圧が引かれると共に、複巻第2トランスFT2で複巻第1トランスとは異なった比率で減圧された電圧が加えられることにより、入力電圧に対して非常に細かく調整された出力電圧を出力することができる。
【0024】
(4)複巻第1トランスFT1と複巻第2トランスFT2の一次巻線の他端側がいずれも入力端の他方側に接続された場合(図17参照)
タップ第1切替スイッチTSW1の単巻トランスSTにおけるタップ位置での電圧については図16と同様に処理され、タップ第2切替スイッチTSW2の単巻トランスSTにおけるタップ位置での電圧については、図15の場合と同様に処理される。さらに、入力電圧から第1の電圧と第2の電圧が引かれて、出力電圧として出力端から出力される。そのため、(4)においては、入力電圧に対してタップ第1切替スイッチTSW1と複巻第1トランスFT1を経た電圧が引かれ、タップ第2切替スイッチTSW2と複巻第2トランスFT2を経た電圧が引かれて出力端から出力される。その結果、この場合は、入力電圧に対して、複巻第1トランスFT1で減圧された電圧が引かれると共に、複巻第2トランスFT2で複巻第1トランスとは異なった比率で減圧された電圧が引かれることにより、入力電圧に対して非常に細かく調整された出力電圧を出力することができる。
【0025】
以上のように、第2の特徴においては、所定の入力電圧に対して、タップ第1切替スイッチTSW1の切り替えによって細かく調節されかつ複巻第1トランスFT1で減圧された電圧と、タップ第2切替スイッチTSW2の切り替えによって細かく調節されかつ複巻第1トランスFT1とは巻線比の異なる複巻第2トランスFT2で減圧された電圧を、入力電圧に対して加えたり引いたりすることにより、非常に広い範囲で細かく調節した出力電圧を出力させることができ、従来のインバータを用いたものに比べて電圧調整の範囲を広めることができる。また、第2の特徴においては、電圧調整にトランスを用いていることにより、入力電圧に対する出力電圧の変換効率を、従来のインバータを用いた方式等に比べて大幅に高めることができる。
【0026】
また、第2の特徴において、タップ第1切替スイッチ及びタップ第2切替スイッチを電気的に切り替え可能なものとし、交流電源の出力電圧を検出する出力電圧検出手段と、交流電源の目標出力電圧を入力する目標電圧入力手段と、タップ第1切替スイッチ及びタップ第2切替スイッチの切り替えの組合せと、組合せに応じた交流電源の出力電圧との関係を表す組合せデータを記憶するデータ記憶手段と、出力電圧検出手段により検出された出力電圧値と目標電圧入力手段から入力された目標電圧値とを比較し、データ記憶手段に記憶された組合せデータに基づいて出力電圧値と目標電圧値の差を最小にさせるタップ第1切替スイッチ及びタップ第2切替スイッチの切り替えの組み合わせを演算する演算制御手段と、演算制御手段による演算結果に基づいて、タップ第1切替スイッチ及びタップ第2切替スイッチの切り替えを行うスイッチ切替手段とを設けることができる。
【0027】
複巻第1トランスFT1と複巻第2トランスFT2の一次巻線の他端側が、入力端の一方側と他方側のいずれかに接続された上記(1)〜(4)のいずれかの場合において、出力電圧として目標電圧値が決められていると、以下の制御が行われる。入力電圧が変動することにより出力電圧が目標電圧値から変動したような場合に、演算制御手段により、出力電圧検出手段により検出された出力電圧値と目標電圧入力手段から入力された目標電圧値とが比較される。演算制御装置は、出力電圧の目標電圧値からの差を出来る限り小さくするために、データ記憶手段に記憶された組合せデータに基づいて出力電圧値と目標電圧値の差を最小にさせる第1及び第2タップ切替スイッチの切り替えの組み合わせを演算により求める。その演算結果に基づいて、スイッチ切替手段により電気的に迅速にタップ第1及びタップ第2切替スイッチの切り替えが行われ、出力電圧の目標電圧値からの差が最小になるように制御される。その結果、本発明においては、交流電圧調整装置は、入力電圧の変動に対する出力電圧の変動を最小限に抑える交流安定化電源として有効に活用される。
【0028】
また、第2の特徴において、複巻第1トランスの一次巻線の他端側に、他端側と入力端の一方側及び他方側のいずれか一方との接続を切り替える第1複巻トランス切替スイッチを設け、複巻第2トランスの一次巻線の他端側に、他端側と入力端の一方側及び他方側のいずれか一方との接続を切り替える第2複巻トランス切替スイッチを設けることができる。これにより、図14図17に示すように、複巻第1トランスの一次巻線の他端側と入力端の一方側及び他方側のいずれかとの接続を第1複巻トランス切替スイッチにより簡単に切り替えることができ、複巻第2トランスの一次巻線の他端側と入力端と一方側及び他方側のいずれかとの接続を第2複巻トランス切替スイッチにより簡単に切り替えることができる。その結果、第1複巻トランス切替スイッチと第2複巻トランス切替スイッチにより複巻第1トランスと複巻第2トランスの一次巻線にそれぞれ入力される電圧の極性を切り替えつつ、その大きさをタップ第1切替スイッチ及びタップ第2切替スイッチの切り替え位置で細かい電圧に調節しながら出力させることができる。
【0029】
第1及び第2複巻トランス切替スイッチを設けた場合、さらに、タップ第1切替スイッチ、タップ第2切替スイッチ、第1複巻トランス切替スイッチ及び第2複巻トランス切替スイッチを電気的に切り替え可能なものとし、交流電源の出力電圧を検出する出力電圧検出手段と、交流電源の目標出力電圧を入力する目標電圧入力手段と、タップ第1切替スイッチ、タップ第2切替スイッチ、第1複巻トランス切替スイッチ及び第2複巻トランス切替スイッチの切り替えの組合せと、組合せに応じた交流電源の出力電圧との関係を表す組合せデータを記憶するデータ記憶手段と、出力電圧検出手段により検出された出力電圧値と目標電圧入力手段から入力された目標電圧値とを比較し、データ記憶手段に記憶された組合せデータに基づいて出力電圧値と目標電圧値の差を最小にさせるタップ第1切替スイッチ、タップ第2切替スイッチ、第1複巻トランス切替スイッチ及び第2複巻トランス切替スイッチの切り替えの組み合わせを演算する演算制御手段と、演算制御手段による演算結果に基づいて、タップ第1切替スイッチ、タップ第2切替スイッチ、第1複巻トランス切替スイッチ及び第2複巻トランス切替スイッチの切り替えを行うスイッチ切替手段とを設けることができる。
【0030】
これにより、図18に示すように、入力電圧が変動することにより出力電圧が目標電圧値から変動したような場合に、演算制御手段により、出力電圧検出手段により検出された出力電圧値と目標電圧入力手段から入力された目標電圧値とが比較される。演算制御手段は、出力電圧の目標電圧値からの差を出来る限り小さくするために、データ記憶手段に記憶された組合せデータに基づいて出力電圧値と目標電圧値の差を最小にさせるタップ第1及びタップ第2切替スイッチと第1及び第2複巻トランス切替スイッチの切り替えの組み合わせが演算される。その演算結果に基づいて、スイッチ切替手段により電気的に迅速にタップ第1及びタップ第2切替スイッチと第1及び第2複巻トランス切替スイッチの切り替えが行われ、出力電圧の目標電圧値からの差が最小になるように制御される。その結果、この交流電圧調整装置は、入力電圧の変動に対する出力電圧の変動を最小限に抑える交流安定化電源として機能できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の第1の特徴においては、第1タップ切替スイッチによる単巻トランスのタップ位置の切り替えによって細かく調節されかつ第1複巻トランスで減圧された電圧と、第2タップ切替スイッチの切り替えによって細かく調節されかつ第1及び第2複巻トランスで二重に減圧された電圧を、入力電圧に対して加えたり引いたりすることにより、非常に広い範囲で細かく調節した出力電圧を出力させることができ、従来のインバータを用いたものに比べて電圧調整の範囲を広めることができる。また、電圧調整にトランスを用いていることにより、入力電圧に対する出力電圧の変換効率を、従来のインバータを用いた方式等に比べて大幅に高めることができる。また、第1の特徴において、タップ切替第1及び第2スイッチと複巻トランス第1及び第2切替スイッチを電気的に切り替え可能なものとし、出力電圧検出手段と、目標電圧入力手段と、データ記憶手段と、演算制御手段と、スイッチ切替手段とを設けることにより、交流電圧調整装置を入力電圧の変動に対する出力電圧の変動を最小限に抑える交流安定化電源として有効に活用できる。
【0032】
本発明の第2の特徴においては、タップ第1切替スイッチによる単巻トランスのタップ位置の切り替えによって細かく調節されかつ複巻第1トランスで減圧された電圧と、タップ第2切替スイッチによる単巻トランスのタップ位置の切り替えによって細かく調節されかつ複巻第1トランスとは巻線比の異なる複巻第2トランスで減圧された電圧を、入力電圧に対して加えたり引いたりすることにより、非常に広い範囲で細かく調節した出力電圧を出力させることができ、従来のインバータを用いたものに比べて電圧調整の範囲を広めることができる。また、電圧調整にトランスを用いていることにより、入力電圧に対する出力電圧の変換効率を、従来のインバータを用いた方式等に比べて大幅に高めることができる。また、第2の特徴において、タップ第1及び第2切替スイッチと第1及び第2複巻トランス切替スイッチを電気的に切り替え可能なものとし、出力電圧検出手段と、目標電圧入力手段と、データ記憶手段と、演算制御手段と、スイッチ切替手段とを設けることにより、交流電圧調整装置を入力電圧の変動に対する出力電圧の変動を最小限に抑える交流安定化電源として有効に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の参考例1である交流電圧調整装置の概略構成を示すブロック図である。
図2参考例2である参考例1の交流電圧調整装置を交流安定化電源として用いた概略構成を示すブロック図である。
図3参考例3である交流電圧調整装置の概略構成を示すブロック図である。
図4参考例3の変形例1である交流電圧調整装置の概略構成を示すブロック図である。
図5参考例3の変形例2である交流電圧調整装置の概略構成を示すブロック図である。
図6参考例4である参考例3の交流電圧調整装置を交流安定化電源として用いた概略構成を示すブロック図である。
図7参考例4の変形例1である交流電圧調整装置の概略構成を示すブロック図である。
図8参考例4の変形例2である交流電圧調整装置の概略構成を示すブロック図である。
図9実施例1である交流電圧調整装置の態様(1)を概略構成を示すブロック図である。
図10実施例1の態様(2)の概略構成を示すブロック図である。
図11実施例1の態様(3)の概略構成を示すブロック図である。
図12実施例1の態様(4)の概略構成を示すブロック図である。
図13実施例2である実施例1の交流電圧調整装置を交流安定化電源として用いたものの概略構成を示すブロック図である。
図14実施例3である交流電圧調整装置の態様(1)を概略構成を示すブロック図である。
図15実施例3の態様(2)の概略構成を示すブロック図である。
図16実施例3の態様(3)の概略構成を示すブロック図である。
図17実施例3の態様(4)の概略構成を示すブロック図である。
図18実施例4である実施例3の交流電圧調整装置を交流安定化電源として用いたものの概略構成を示すブロック図である。
図19実施例5である三相交流電源用の交流電圧調整装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、参考例1である交流電圧調整装置の概略構成をブロック図により示したものである。交流電圧調整装置10は、100vの交流電源が入力される一対の入力端a1,a2と、交流電源の電圧を変圧した出力電圧を出力する一対の出力端b1,b2とを備えており、他方の入力端a2と出力端b2が直結された共通の電極となっている。両入力端a1,a2間には、単巻トランスSTが両端にて接続されており、両端を含めた間には入力端a2側から順に等間隔で5つのタップt1〜t5を設けている。これらタップt1〜t5に加わる電圧は、0v,25v,50v,75v,100vとなる。入力端a1と出力端b1の間には、複巻トランスFTが一次巻線に磁気結合された二次巻線の両端にて接続されている。複巻トランスFTは、一次巻線と二次巻線の比が5:1であり、両巻線の定格電圧が100v/20vである降圧トランスである。複巻トランスFTの一次巻線の一端(図1の左端)にはタップ切替スイッチSW1が接続されており、一端とタップt1〜t5のいずれか1つとの接続を切り替え可能になっている。また、複巻トランスFTの一次巻線の他端(図1の右端)には切替スイッチSW2が接続されており、一次巻線の他端と入力端a1側及び入力端a2側のいずれか一方との接続を切り替え可能になっている。
【0035】
上記構成の参考例1に係る交流電圧調整装置10の動作は、以下の(1)、(2)の2つの場合に分けられる。
(1)切替スイッチSW2により複巻トランスFTの一次巻線の他端と入力端a1とが接続された場合(図1参照)
単巻トランスSTのタップ切替スイッチSW1により選択された例えばタップ位置t2での電圧25vを入力電圧100vから引いた電圧75vが、複巻トランスFTの一次巻線側に極性を合わせて加えられる。さらに、この電圧75vに複巻トランスFTの一次巻線と二次巻線の比20/100=1/5を掛け合わせた値の電圧15vが入力電圧100vに加えられ、出力端b1,b2から115vの出力電圧として出力される。
【0036】
(2)切替スイッチSW2により複巻トランスFTの一次巻線の他端と入力端a2とが接続された場合(図1と反対)
複巻トランスFTの一次巻線側に単巻トランスSTのタップ切替スイッチSW1により選択された例えばタップt2位置での電圧25vが、複巻トランスFTの一次巻線側に極性が反転した状態で加えられる。さらに、この電圧25vに複巻トランスFTの一次巻線と二次巻線の比1/5を掛け合わせた値の電圧5vが入力電圧100vから引かれて、出力端b1,b2から出力電圧95vとして出力される。
以上のように、(1),(2)において切替スイッチSW2とタップ切替スイッチSW1の全ての組み合わせとそれによる出力電圧値との関係を下記表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
その結果、参考例1においては、切替スイッチSW2とタップ切替スイッチSW1の切り替え位置の組み合わせにより、入力電圧100vに対してタップ切替スイッチSW1の切り替え位置によって細かく調節されかつ複巻トランスFTで減圧された電圧を、入力電圧100vに加えたり引いたりしながら出力電圧を80v〜120vの広い範囲で細かい単位で簡単に調節することができ、従来のインバータを用いたものに比べて電圧調整の範囲を広めることができる。また、参考例1においては、電圧調整に単巻トランスSTと複巻トランスFTを用いていることにより、入力電圧に対する出力電圧の変換効率を、従来のインバータを用いた方式等に比べて大幅に高めることができる。
【0039】
次に、参考例2について、図2により説明する。
参考例2は、上記参考例1の交流電圧調整装置10を用いて交流安定化電源用に変更したものである。交流電圧調整装置10Aは、入力電圧の変動に対して出力電圧を予め定めた目標出力電圧に保持するものである。参考例2では、参考例1におけるタップ切替スイッチSW1を各タップt1〜t5に接続された電気的なスイッチである電界効果トランジスタやIGBT等からなる5個のスイッチFET1〜FET5とし、切替スイッチSW2を同じ一対の電界効果トランジスタやIGBT等からなるものとした。交流電圧調整装置10Aは、出力電圧の変動を抑えるようなタップ切替スイッチSW1と切替スイッチSW2の切り替えの組み合わせを演算する演算制御装置11を備えている。演算制御装置11は、I/O,ROM,RAM,CPU等からなるマイクロコンピュータ等を設けており、データ記憶手段であるROMにはタップ切替スイッチSW1及び切替スイッチSW2の切り替えの組合せと、組合せに応じた交流電源の出力電圧との関係を表す上記表1に相当する組合せデータD1が記憶されている。
【0040】
演算制御装置11の入力側には、交流電源の目標出力電圧を入力する目標電圧入力部12が接続されている。目標電圧入力部12から入力された目標出力電圧は、演算制御装置11のRAMに記憶されるようになっており、本実施例では目標出力電圧は100vとなっている。出力端子b1,b2間には交流電源の出力電圧を検出する出力電圧検出手段である出力電圧検出器13が接続されており、出力電圧検出器13は演算制御装置11に接続されている。演算制御装置11の出力側には、スイッチ切替部14が接続されている。スイッチ切替部14は、演算制御装置11からの出力を受けて、スイッチFET1〜5のいずれかを選択してオン信号を出力し、切替スイッチSW2に端子a1あるいはa2のいずれかの選択信号を出力するものである。
【0041】
上記構成の参考例2においては、交流電源の入力電圧が変動することにより出力電圧が目標電圧値100vから変動したような場合に、演算制御装置11は、出力電圧検出器13により検出された出力電圧値を読み込んで、目標電圧入力部12から入力された目標電圧値100vと比較する。演算制御装置11は、読み込んだ出力電圧値の目標電圧値からの差を出来る限り小さくするために、ROMに記憶された組合せデータD1に基づいて出力電圧値と目標電圧値100vの差を最小にさせるタップ切替スイッチSW1及び切替スイッチSW2の切り替えの組み合わせを演算により求める。演算制御装置11による演算結果が、スイッチ切替部14に出力され、スイッチ切替部14がスイッチFET1〜5のいずれかを選択してオン信号を出力し、切替スイッチSW2に端子a1あるいはa2のいずれかの選択信号を出力する。その結果、この交流電圧調整装置10Aは、入力電圧80〜120vの広い範囲の変動に対して、出力電圧100vの変動を±2.5%程度の範囲に抑える交流安定化電源として有効に活用できる。また、参考例2においては、タップ切替スイッチSW1及び切替スイッチSW2を流れる電流を出力電流に比べて大幅に少なくできるため、これらスイッチとして大電流の半導体素子を用いる必要がないため、スイッチ素子を安価にすることができ、装置コストを安価にできる。
【0042】
つぎに、参考例3について図3により説明する。
交流電圧調整装置20は、100vの交流電源が入力される一対の入力端a1,a2と、交流電源の電圧を変圧した出力電圧を出力する一対の出力端b1,b2とを備えており、他方の入力端a2と出力端b2が直結された共通の電極となっている。両入力端a1,a2には、複数のタップを設けた単巻トランスSTが両端にて接続されている。単巻トランスSTは、入力端a1と中間mの間の第1のタップ群t21〜t24と、中間mから他端側a2間の第2のタップ群t11〜t15にそれぞれ等間隔に分けられている。第1のタップ群t21〜t24に加わる電圧は、25v,50v,75v,100vであり、第2のタップ群t11〜t15に加わる電圧は、5v,10v,15v,20v,25vである。
【0043】
入力端a1と出力端b1の間には、複巻トランスFTが一次巻線に磁気結合された二次巻線の両端にて接続されている。複巻トランスFTは、一次巻線と二次巻線の比が5:1であり、両巻線の定格電圧が100v/20vである降圧トランスである。複巻トランスFTの一次巻線の一端(図3の左端)には第1タップ切替スイッチSW1が接続されており、一端と第1のタップ群t21〜t24のいずれか1つとの接続を切り替え可能になっている。また、複巻トランスFTの一次巻線の他端(図3の右端)には第2タップ切替スイッチSW2が接続されており、他端と第2のタップ群t11〜t15のいずれか1つとの接続を切り替え可能になっている。その結果、第1及び第2タップ切替スイッチSW1,SW2によるタップの切り替えによる組合せは20通りとなっている。
【0044】
参考例3においては、第1タップ切替スイッチSW1の第1のタップ群におけるタップ位置例えばt22での電圧50vから第2タップ切替スイッチSW2の第2のタップ群におけるタップ位置例えばt13での電圧15vを引いた電圧35vが、複巻トランスFTの一次巻線側に極性を反転した状態で加えられる。さらに、この電圧に複巻トランスFTの一次巻線と二次巻線の比1/5を掛け合わせた値の電圧7vが二次巻線に出力され、その電圧7vが入力電圧100vから引かれて、出力電圧93vとして出力端b1,b2から出力される。このような第1タップ切替スイッチSW1と第2タップ切替スイッチSW2の20種類全てのタップの組み合わせとそれによる出力電圧値との関係を下記表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
その結果、参考例3においては、入力電圧100vに対して、第1及び第2タップ切替スイッチSW1,SW2の切り替え位置によって20種類に細かく調節して複巻トランスFTで減圧した電圧を、入力電圧100vから引いて出力端から出力させることができ、従来のインバータを用いたものに比べて電圧調整の範囲を広めることができる。また、参考例3においては、電圧調整にトランスを用いていることにより、入力電圧に対する出力電圧の変換効率を、従来のインバータを用いた方式等に比べて大幅に高めることができる。
【0047】
次に、上記参考例3の変形例1について図4により説明する。
本変形例1では、上記参考例3において、第1タップ切替スイッチSW1を第1のタップ群t21〜t24に代えて第2のタップ群t11〜t15に接続を切り替え、第2タップ切替スイッチSW2を第2のタップ群t11〜t15に代えて第1のタップ群t21〜t24に接続を切り替えた。その他の構成については、参考例3と同様である。
【0048】
変形例1においては、第2タップ切替スイッチSW2の第1のタップ群におけるタップ位置例えばt22での電圧50vから第1タップ切替スイッチSW1の第2のタップ群におけるタップ位置例えばt13での電圧15vを引いた電圧35vが、複巻トランスFTの一次巻線側に極性を合わせて加えられる。さらに、この電圧に複巻トランスFTの一次巻線と二次巻線の比1/5を掛け合わせた値の電圧7vが二次巻線に出力され、その電圧7vが入力電圧100vに加えられて、出力電圧107vとして出力端b1,b2から出力される。このような第1タップ切替スイッチSW1と第2タップ切替スイッチSW2の20種類全てのタップの組み合わせとそれによる出力電圧値との関係を下記表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
その結果、本変形例1においては、入力電圧100vに対して、第1及び第2タップ切替スイッチSW1,SW2の切り替え位置によって20種類に細かく調節して複巻トランスFTで減圧した電圧を、入力電圧100vに加えて出力端b1,b2から出力させることができる等、参考例3と同様の効果が得られる。
【0051】
次に、上記参考例3の変形例2について図5により説明する。
本変形例2では、上記参考例3及び変形例1を合わせたものであって、第1タップ切替スイッチSW1の第1のタップ群t21〜t24と第2のタップ群t11〜t15との接続と、第2タップ切替スイッチSW2の第2のタップ群t11〜t15と第1のタップ群t21〜t24との接続を、相互に切り替える一次巻線切替スイッチCSWを設けたものである。その他の構成については、参考例3及びその変形例1と同様である。
【0052】
本変形例2においては、一次巻線切替スイッチCSWにより第1タップ切替スイッチSW1が第1のタップ群t21〜t24に、第2タップ切替スイッチSW2が第2のタップ群t11〜t15に切り替えられたときは、参考例3と同様、第1タップ切替スイッチSW1が第1のタップ群t21〜t24におけるタップ位置での電圧から第2タップ切替スイッチSW1の第2のタップ群におけるタップ位置での電圧を引いた電圧が、複巻トランスFTの一次巻線側に極性を反転した状態で加えられる。さらに、この電圧に複巻トランスFTの一次巻線と二次巻線の比1/5を掛け合わせた値の電圧が二次巻線に出力され、その電圧が入力電圧100vから引かれて、出力端b1,b2から出力される。
【0053】
また、一次巻線切替スイッチCSWにより第1タップ切替スイッチSW1が第2のタップ群t11〜t15に、第2タップ切替スイッチSW2が第1のタップ群に切り替えられたときは、変形例1と同様、第2タップ切替スイッチSW2の第1のタップ群t21〜t24におけるタップ位置での電圧から第1タップ切替スイッチSW1の第2のタップ群におけるタップ位置での電圧を引いた電圧が、複巻トランスFTの一次巻線側に極性を合わせて加えられる。さらに、この電圧に複巻トランスFTの一次巻線と二次巻線の比1/5を掛け合わせた値の電圧が二次巻線に出力され、その電圧が入力電圧100vに加えられて出力端b1,b2から出力される。このような一次巻線切替スイッチCSWの切替と、第1タップ切替スイッチSW1と第2タップ切替スイッチSW2による第1のタップ群t21〜t24と第2のタップ群t11〜t15と切り替えによる全ての組み合わせと、それによる出力電圧値との関係については、上記表2、表3を合わせた結果となる。
【0054】
その結果、本変形例2においては、第1及び第2タップ切替スイッチSW1,SW2の第1のタップ群t21〜t24と第2タップ群t11〜t15への切替位置と、一次巻線切替スイッチCSWによる両切替スイッチSW1,SW2の両タップ群への切り替えとによって、細かく調節されかつ複巻トランスFTで減圧された39種類の電圧を入力電圧100vに加えたり引いたりすることにより、出力電圧をさらに広い範囲で細かく簡単に調節することができる。そのため、本変形例においても、従来のインバータを用いたものに比べて電圧調整の範囲を広めることができる等、参考例3、変形例1と同様の効果が得られる。
【0055】
次に、参考例4について、図6により説明する。
参考例4は、上記参考例3の交流電圧調整装置20を用いて交流安定化電源用に変更したものである。この交流電圧調整装置20Aは、入力電圧の変動に対して出力電圧を予め定めた目標出力電圧に保持するものである。参考例4では、参考例3における第1及び第2タップ切替スイッチSW1,SW2を、第1のタップ群t21〜t24と第2のタップ群t11〜t15に接続された電気的なスイッチである電界効果トランジスタやIGBT等からなる9個のスイッチFET1〜4.FET5〜9とした。交流電圧調整装置20Aの演算制御装置11、目標電圧入力部12、出力電圧検出器13、スイッチ切替部14については、上記参考例2のものと同様である。演算制御装置11のROMには、第1及び第2タップ切替スイッチSW1,SW2の切り替えの組合せと、組合せに応じた交流電源の出力電圧との関係を表す上記表2に相当する組合せデータD2が記憶されており、RAMには目標電圧入力部12から入力された目標電圧値100vが記憶されている。
【0056】
上記構成の参考例4においては、交流電源の入力電圧が変動することにより出力電圧が目標電圧値から変動したような場合に、演算制御装置11は、出力電圧検出器13により検出された出力電圧値を読み込んで、目標電圧入力部12から入力された目標電圧値100vとを比較する。演算制御装置11は、読み込んだ出力電圧値の目標電圧値100vからの差を出来る限り小さくするために、ROMに記憶された組合せデータD2に基づいて出力電圧値と目標電圧値100vの差を最小にさせる第1及び第2タップ切替スイッチSW1,SW2の切り替えの組み合わせを演算により求める。演算制御装置11による演算結果が、スイッチ切替部14に出力され、スイッチ切替部14がスイッチFET1〜4とスイッチFET5〜9からぞれぞれ1つずつを選択してオン信号を出力する。その結果、この交流電圧調整装置20Aは、入力電圧の100〜123vの広い範囲の変動に対して、出力電圧100vの変動を±0.5%程度の範囲に抑える交流安定化電源として有効に活用できる。また、参考例4においては、第1及び第2タップ切替スイッチSW1,SW2を流れる電流を出力電流に比べて大幅に少なくできるため、これらスイッチSW1,SW2として大電流の半導体素子を用いる必要がないため、スイッチ素子を安価にすることができ、装置コストを安価にできる。
【0057】
次に、上記参考例4の変形例1について図7により説明する。
本変形例1では、上記参考例4において、第1タップ切替スイッチSW1を第1のタップ群t21〜t24に代えて第2のタップ群t11〜t15に接続を切り替え、第2タップ切替スイッチSW2を第2のタップ群t11〜t15に代えて第1のタップ群t21〜t24に接続を切り替えた。演算制御装置11のROMには、第1及び第2タップ切替スイッチSW1,SW2の切り替えの組合せと、組合せに応じた交流電源の出力電圧との関係を表す上記表3に相当する組合せデータD3が記憶され、RAMには目標電圧入力部12から入力された目標電圧値100vが記憶されている。その他の構成については、参考例4と同様である。
【0058】
上記構成の変形例1においても、参考例4と同様の動作が行われ、目標電圧入力部12から入力された目標電圧値100vとを比較する。演算制御装置11は、読み込んだ出力電圧値の目標電圧値からの差を出来る限り小さくするために、ROMに記憶された組合せデータD3に基づいて出力電圧値と目標電圧値100vの差を最小にさせる第1及び第2タップ切替スイッチSW1,SW2の切り替えの組み合わせを演算により求める。演算制御装置11による演算結果が、スイッチ切替部14に出力され、スイッチ切替部14がスイッチFET1〜4とFET5〜9とからそれぞれ1つずつ選択してオン信号を出力する。その結果、この交流電圧調整装置21Aは、入力電圧の84〜100vの広い範囲の変動に対して、出力電圧100vの変動を±0.5%程度の範囲に抑える交流安定化電源として有効に活用できる。また、変形例1においては、第1及び第2タップ切替スイッチSW1,SW2を流れる電流を出力電流に比べて大幅に少なくできるため、これらスイッチとして大電流の半導体素子を用いる必要がないため、スイッチ素子を安価にすることができ、装置コストを安価にできる。
【0059】
次に、上記参考例4の変形例2について図8により説明する。
本変形例2では、上記参考例4において、第1タップ切替スイッチSW1の第1のタップ群t21〜t24と第2のタップ群t11〜t15との接続と、第2タップ切替スイッチSW2の第2のタップ群t11〜t15と第1のタップ群t21〜t24との接続を、相互に切り替える一次巻線切替スイッチCSWを設けたものである。一次巻線切替スイッチCSWも第1タップ切替スイッチSW1、第2タップ切替スイッチSW2と同様、電気的なスイッチであるFETやIGBT等である。演算制御装置11のROMには、第1及び第2タップ切替スイッチSW1,SW2の切り替えの組合せ及び一次巻線切替スイッチCSWの切り替えを合わせた組合せと、この組合せに応じた交流電源の出力電圧との関係を表す上記表2、表3に相当する組合せデータD4が記憶され、RAMには目標電圧入力部12から入力された目標電圧値100vが記憶されている。その他の構成については、参考例4と同様である。
【0060】
上記構成の変形例2においても、参考例4と同様の動作が行われ、目標電圧入力部12から入力された目標電圧値100vとを比較する。演算制御装置11は、読み込んだ出力電圧値の目標電圧値からの差を出来る限り小さくするために、ROMに記憶された組合せデータD4に基づいて出力電圧値と目標電圧値100vの差を最小にさせる第1及び第2タップ切替スイッチSW1,SW2の切り替えの組み合わせと一次巻線切替スイッチCSWの切り替えを合わせた組合せを演算により求める。演算制御装置11による演算結果が、スイッチ切替部14に出力され、スイッチ切替部14がスイッチFET1〜4、スイッチFET5〜9のそれぞれ1つと、スイッチCSWのいずれかを選択してオン信号を出力する。その結果、この交流電圧調整装置22Aは、入力電圧84〜123vの非常に広い範囲の変動に対して、出力電圧100vの変動を±0.5%程度の範囲に抑える交流安定化電源として有効に活用できる。また、変形例2においては、第1及び第2タップ切替スイッチSW1,SW2を流れる電流を出力電流に比べて大幅に少なくできるため、これらスイッチとして大電流の半導体素子を用いる必要がないため、スイッチ素子を安価にすることができ、装置コストを安価にできる。
【0061】
つぎに、実施例1について図9図12により説明する。
交流電圧調整装置30は、100vの交流電源が入力される一対の入力端a1,a2と、交流電源の電圧を変圧した出力電圧を出力する一対の出力端b1,b2とを備えており、他方の入力端a2と出力端b2が直結された共通の電極となっている。両入力端a1,a2には、単巻トランスSTが両端にて接続されており、両端を含めた間には他端側から順に等間隔で5つのタップt1〜t5を設けている。これらタップt1〜t5に加わる電圧は、0v,25v,50v,75v,100vとなる。単巻トランスSTの5つのタップt1〜t5には、タップ切替第1スイッチTSW1とタップ切替第2スイッチTSW2が別個に切り替え可能に接続されている。
【0062】
入力端a1と出力端b1の間には、第1複巻トランスFT1が一次巻線に磁気結合された二次巻線の両端にて接続されている。第1複巻トランスFT1は、一次巻線と二次巻線の比が5:1であり、両巻線の定格電圧が100v/20vである降圧トランスである。第1複巻トランスFT1に対して、第2複巻トランスFT2が併設されている。第2複巻トランスFT2は、一次巻線と二次巻線の比が8:1であり、両巻線の定格電圧が100v/12.5vである降圧トランスである。第1複巻トランスFT1の一次巻線の一端(図の左端)にはタップ切替第1スイッチTSW1が接続されており、一端とタップt1〜t5のいずれか1つとの接続が切り替え可能になっている。第1複巻トランスFT1の一次巻線の他端(図の右端)は、第2複巻トランスFT2の二次巻線の他端に接続されている。
【0063】
上記単巻トランスSTと第1複巻トランスFT1の間において入力端a1のリード線とアース側の入出力端a2,b2間のリード線間には、複巻トランス第1切替スイッチSW22と複巻トランス第2切替スイッチSW21とが並列に接続されている。複巻トランス第1切替スイッチSW22は、第2複巻トランスFT2の二次巻線の一端に接続されて、二次巻線の一端と入力端a1側とアース側の入出力端a2,b2側との接続の切り替えが可能になっている。複巻トランス第2切替スイッチSW21は、第2複巻トランスFT2の一次巻線の一端に接続されて、一次巻線の一端と入力端a1とアース側の入出力端a2,b2との接続の切り替えが可能になっている。第2複巻トランスFT2の一次巻線の他端には、タップ切替第2スイッチTSW2が接続されており、他端とタップt1〜t5のいずれか1つとの接続が切り替え可能になっている。
【0064】
つぎに、実施例1の動作について、複巻トランス第1切替スイッチSW22と複巻トランス第2切替スイッチSW21が、入力端a1とアース側の入出力端a2,b2の何れに切りかえられているかの4つの場合について、以下の(1)〜(4)に分けて説明する。
(1)複巻トランス第1切替スイッチSW22と複巻トランス第2切替スイッチSW21が、いずれも入力端a1側に接続された場合(図9参照)
タップ切替第1スイッチTSW1とタップ切替第2スイッチTSW2が、単巻トランスSTにおける例えばタップ位置t4とタップt2に接続されていると、タップ位置t4での電圧75vを入力電圧100vから引いた電圧25vが、第1複巻トランスFT1の一次巻線に極性に合わせて加えられる。この電圧25vに第1複巻トランスFT1の一次巻線と二次巻線の比1/5を掛け合わせた値の電圧5vが二次巻線に出力される。この複巻トランス第1切替スイッチSW22とタップ切替第1スイッチTSW1の全ての組み合わせと、それによる第1複巻トランスFT1の二次巻線側の電圧値との関係を下記表4に示す。
【0065】
【表4】
【0066】
一方、タップ切替第2スイッチTSW2の単巻トランスSTにおけるタップ位置t2での電圧25vを入力電圧100vから引いた電圧75vが、第2複巻トランスFT2の一次巻線に極性を反転した状態で加えられる。この電圧に第2複巻トランスFT2の一次巻線と二次巻線の比1/8を掛け合わせた値の電圧9.375vが二次巻線に出力される。さらに、この電圧9.375vが第1複巻トランスFT1の一次巻線に加えられ、この電圧に第1複巻トランスFT1の一次巻線と二次巻線の比1/5を掛け合わせた値の電圧1.875vが、二次巻線側に出力される。この複巻トランス第2切替スイッチSW21とタップ切替第2スイッチTSW2の全ての組み合わせと、それによる第2複巻トランスFT2と第1複巻トランスFT1の各二次巻線側の電圧値との関係を下記表5−1、表5−2に示す。
【0067】
【表5-1】
【0068】
【表5-2】
【0069】
以上のように、実施例1の上記(1)においては、入力電圧100vに対して、タップ切替第1スイッチTSW1と第1複巻トランスFT1を経た0〜20vの範囲の電圧が加えられ、タップ切替第2スイッチTSW2と第2複巻トランスFT2及び第1複巻トランスFT1を経た0〜−2.5vの範囲の電圧が引かれて、出力端から97.5〜120vの範囲の電圧が出力される。その結果、(1)の場合は、入力電圧に対して、第1複巻トランスFT1で減圧された電圧が加えられると共に、第2複巻トランスFT2と第1複巻トランスFT1で二重に減圧された電圧が引かれることにより、入力電圧に対して2段階で非常に細かく調整された出力電圧を出力することができる。
【0070】
(2)複巻トランス第1切替スイッチSW22が入力端a1側に接続され、複巻トランス第2切替スイッチSW21が入出力端a2,b2側に接続された場合(図10参照)
タップ切替第1スイッチTSW1の単巻トランスSTにおけるタップ位置t4からの電圧については、上記図9の場合と同様である。タップ切替第2スイッチTSW2の単巻トランスSTにおけるタップ位置t2での電圧25vは、第2複巻トランスFT2の一次巻線に極性を合わせて加えられる。さらに、この電圧に第2複巻トランスFT2の一次巻線と二次巻線の比1/8を掛け合わせた値の電圧3.125vが、二次巻線側に出力される。第2複巻トランスFT2の二次巻線からの電圧が第1複巻トランスFT1の一次巻線に加えられ、この電圧に第1複巻トランスFT1の一次巻線と二次巻線の比1/5を掛け合わせた値の電圧0.625vが、二次巻線側に出力される。この場合も、上記表4と表5−1、表5−2の関係が適用される。
【0071】
以上のように、(2)においては、入力電圧100vに対して、タップ切替第1スイッチTSW1と第1複巻トランスFT1を経た0〜20vの範囲の電圧が加えられ、タップ切替第2スイッチTSW2と第2複巻トランスFT2及び第1複巻トランスFT1を経た0〜2.5vの範囲の電圧が加えられて、出力端から100〜122.5vの範囲の電圧が出力される。その結果、この場合は、入力電圧に対して、第1複巻トランスFT1で変圧された出力が加えられると共に、第2複巻トランスFT2と第1複巻トランスFT1の2段階で大きく変圧された出力が加えられることにより、入力電圧に対して非常に細かく調整された出力電圧を供給することができる。
【0072】
(3)複巻トランス第1切替スイッチSW22が入出力端a2,b2側に接続され、複巻トランス第2切替スイッチSW21が入力端a1側に接続された場合(図11参照)
タップ切替第1スイッチTSW1の単巻トランスSTにおける例えばタップ位置t4での電圧75vが、第1複巻トランスFT1の一次巻線に極性が反転した状態で加えられる。さらに、この電圧に第1複巻トランスFT1の一次巻線と二次巻線の比1/5を掛け合わせた値の電圧15vが二次巻線に出力される。一方、タップ切替第2スイッチTSW2の単巻トランスSTにおけるタップ位置での電圧については、上記図9の場合と同様であり、第1複巻トランスFT1の二次巻線から電圧0.625vが出力される。この場合も、上記表4と表5−1、表5−2の関係が適用される。
【0073】
以上のように、(3)においては、入力電圧100vに対して、タップ切替第1スイッチTSW1と第1複巻トランスFT1を経た0〜−20vの範囲の電圧が引かれ、タップ切替第2スイッチTSW2と第2複巻トランスFT2及び第1複巻トランスFT1を経た0〜−2.5vの範囲の電圧が引かれて、出力端から77.5〜100vの範囲の電圧が出力される。その結果、この場合は、入力電圧に対して、第1複巻トランスFT1で変圧された出力電圧が引かれると共に、第2複巻トランスFT2と第1複巻トランスFT1でそれぞれ変圧された出力電圧が引かれることにより、入力電圧に対して非常に細かく調整された出力電圧を供給することができる。
【0074】
(4)複巻トランス第1切替スイッチSW22と複巻トランス第2切替スイッチSW21がいずれも入出力端a2,b2側に接続された場合(図12参照)
タップ切替第1スイッチTSW1の単巻トランスSTにおけるタップ位置t4での電圧75vは、図11の場合と同様に処理され、また、タップ切替第2スイッチTSW2の単巻トランスSTにおけるタップ位置t2での電圧25vは、上記図10の場合と同様に処理される。この場合も、上記表4と表5−1、表5−2の関係が適用される。そのため、(4)においては、入力電圧100vに対して、タップ切替第1スイッチTSW1と第1複巻トランスFT1を経た0〜−20vの範囲の電圧が引かれ、タップ切替第2スイッチTSW2と第2複巻トランスFT2及び第1複巻トランスFT1を経た0〜2.5vの範囲の電圧が加えられて、出力端から80〜102.5vの範囲の電圧が出力される。その結果、この場合は、入力電圧に対して、第1複巻トランスFT1で変圧された出力電圧が引かれると共に、第2複巻トランスFT2と第1複巻トランスFT1でそれぞれ変圧された出力電圧が加えられることにより、入力電圧に対して非常に細かく調整された出力電圧を供給することができる。
【0075】
以上のように実施例1においては、所定の入力電圧に対して、タップ切替第1スイッチTSW1の切り替えによって細かく調節されかつ第1複巻トランスFT1で±5v単位で減圧された電圧と、タップ切替第2スイッチTSW2の切り替えによって細かく調節されかつ第1及び第2複巻トランスFT1,FT2で二重に±0.625v単位で減圧された電圧を、入力電圧に対して加えたり引いたりすることにより、非常に広い範囲で細かく調節した出力電圧を出力させることができ、従来のインバータを用いたものに比べて電圧調整の範囲を広めることができる。また、実施例1においては、電圧調整にトランスを用いていることにより、入力電圧に対する出力電圧の変換効率を、従来のインバータを用いた方式等に比べて大幅に高めることができる。
【0076】
なお、実施例1においては、第2複巻トランスFT2の一次巻線、二次巻線の各一端の入力端a1,a2のいずれかへの接続を、複巻トランス第1切替スイッチSW22と複巻トランス第2切替スイッチSW21の切り替えによって行っているが、これに代えて、複巻トランス第1切替スイッチSW22と複巻トランス第2切替スイッチSW21を用いずに、直接リード線で接続した4つの場合に分けて、それぞれの場合を実施例とすることも可能である。
【0077】
次に、実施例2について、図13により説明する。
実施例2は、上記実施例1の交流電圧調整装置30を用いて交流安定化電源用に変更したものである。この交流電圧調整装置30Aは、入力電圧の変動に対して出力電圧を予め定めた目標出力電圧に保持するものである。実施例2では、実施例1におけるタップ切替第1スイッチTSW1及びタップ切替第2スイッチTSW2を、タップt1〜t5に接続された電気的なスイッチである電界効果トランジスタやIGBT等からなる各5個のスイッチFET1〜5とFET6〜10とした。また、複巻トランス第1切替スイッチSW22と複巻トランス第2切替スイッチSW21も電気的なスイッチである電界効果トランジスタやIGBT等からなるスイッチとした。交流電圧調整装置30Aの演算制御装置11、目標電圧入力部12、出力電圧検出器13、スイッチ切替部14については、上記参考例2のものと同様である。演算制御装置11のROMには、タップ切替第1及び第2スイッチTSW1,TSW2の切り替えの組合せと、複巻トランス第1切替スイッチSW22と複巻トランス第2切替スイッチSW21の切替の組み合わせを合わせた組合せに応じた第2複巻トランスFT2と第1複巻トランスFT1の各二次巻線側の電圧値との関係を表す上記表4と表5−1、表5−2に相当する組合せデータD5が記憶されている。
【0078】
上記構成の実施例2においては、交流電源の入力電圧が変動することにより出力電圧が目標電圧値から変動したような場合に、演算制御装置11は、出力電圧検出器13により検出された出力電圧値を読み込んで、目標電圧入力部12から入力された目標電圧値100vとを比較する。演算制御装置11は、読み込んだ出力電圧値の目標電圧値100vからの差を出来る限り小さくするために、ROMに記憶された組合せデータD5に基づいて出力電圧値と目標電圧値100vの差を最小にさせるタップ切替第1及び第2スイッチTSW1,TSW2の切り替えの組み合わせと、複巻トランス第1切替スイッチSW22と複巻トランス第2切替スイッチSW21の切替の組み合わせを合わせた組み合わせを演算により求める。演算制御装置11による演算結果が、スイッチ切替部14に出力され、スイッチ切替部14がスイッチFET1〜5とFET6〜10とからそれぞれ1つずつを選択してオン信号を出力し、複巻トランス第1切替スイッチSW22と複巻トランス第2切替スイッチSW21の切替を選択しオンオフのいずれかの信号を選択して出力する。
【0079】
その結果、実施例2においては、交流電圧調整装置30Aは、入力電圧77.5v〜122.5vの広い範囲の変動に対する出力電圧の変動を最小限に抑える交流安定化電源として有効に活用できる。また、実施例2においては、タップ切替第1及び第2スイッチTSW1,TSW2と複巻トランス第1切替スイッチSW22及び複巻トランス第2切替スイッチSW21を流れる電流を出力電流に比べて大幅に少なくできるため、これらスイッチとして大電流の半導体素子を用いる必要がないため、スイッチ素子を安価にすることができ、装置コストを安価にできる。
【0080】
なお、実施例2においては、第2複巻トランスFT2の一次巻線、二次巻線の各一端の入力端a1,a2のいずれかへの接続を、電気的スイッチである複巻トランス第1切替スイッチSW22と複巻トランス第2切替スイッチSW21の自動的な切り替えによって行っているが、これに代えて、複巻トランス第1切替スイッチSW22と複巻トランス第2切替スイッチSW21を用いずに、直接リード線で接続した4つの場合に分けて、それぞれの場合を実施例とすることも可能である。
【0081】
つぎに、実施例3について図14図17により説明する。
交流電圧調整装置40は、100vの交流電源が入力される一対の入力端a1,a2と、交流電源の電圧を変圧した出力電圧を出力する一対の出力端b1,b2とを備えており、他方の入力端a2と出力端b2が直結された共通の電極となっている。両入力端a1,a2には、単巻トランスSTが両端にて接続されており、両端を含めた間には他端側から順に等間隔で5つのタップt1〜t5を設けている。これらタップt1〜t5に加わる電圧は、0v,25v,50v,75v,100vとなる。単巻トランスSTの5つのタップt1〜t5には、タップ第1切替スイッチTSW1とタップ第2切替スイッチTSW2が別個に切り替え可能に接続されている。
【0082】
入力端a1と出力端b1の間には、複巻第1トランスFT1が配置され、その一次巻線に磁気結合された二次巻線の一端にて入力端a1に接続されている。複巻第1トランスFT1は、一次巻線と二次巻線の比が5:1であり、両巻線の定格電圧が100v/20vである降圧トランスである。複巻第1トランスFT1に対して、複巻第2トランスFT2が併設されて、二次巻線の一端が複巻第1トランスFT1の二次巻線の他端に接続され、二次巻線の他端が出力端b1に接続されている。複巻第2トランスFT2は、一次巻線と二次巻線の比が40:1と複巻第1トランスFT1に比べて8倍の巻線比であり、両巻線の定格電圧が100v/2.5vである降圧トランスである。複巻第1トランスFT1の一次巻線の一端にはタップ第1切替スイッチTSW1が接続されており、一端とタップt1〜t5のいずれか1つとの接続を切り替え可能になっている。複巻第2トランスFT2の一次巻線の一端にはタップ第2切替スイッチTSW2が接続されており、一端とタップt1〜t5のいずれか1つとの接続を切り替え可能になっている。
【0083】
上記単巻トランスSTと複巻第1トランスFT1の間において入力端a1のリード線とアース側の入出力端a2,b2間のリード線との間には、第1複巻トランス切替スイッチSW11と第2複巻トランス切替スイッチSW21とが並列に接続されている。第1複巻トランス切替スイッチSW11は、複巻第1トランスFT1の一次巻線の他端に接続されて、一次巻線の他端と入力端a1及びアース側の入出力端a2,b2との接続の切り替えが可能になっている。第2複巻トランス切替スイッチSW21は、複巻第2トランスFT2の一次巻線の他端に接続されて、一次巻線の他端と入力端a1及びアース側の入出力端a2,b2との接続の切り替えが可能になっている。
【0084】
つぎに、実施例3の動作について、第1複巻トランス切替スイッチSW11と第2複巻トランス切替スイッチSW21が、入力端a1とアース側の入出力端a2,b2の何れに切り替えられているかの4つの場合について、以下の(1)〜(4)に分けて説明する。
(1)第1複巻トランス切替スイッチSW11と第2複巻トランス切替スイッチSW21が、いずれも入力端a1側に接続された場合(図14参照)
タップ第1切替スイッチTSW1とタップ第2切替スイッチTSW2が、単巻トランスSTにおける例えばタップ位置t4とタップt2に接続されていると、タップ位置t4での電圧75vを入力電圧100vから引いた電圧25vが、複巻第1トランスFT1の一次巻線に極性合わせて加えられる。この電圧25vに複巻第1トランスFT1の一次巻線と二次巻線の比1/5を掛け合わせた値の電圧5vが二次巻線に出力される。この第1複巻トランス切替スイッチSW11とタップ第1切替スイッチTSW1の全ての組み合わせと、それによる複巻第1トランスFT1の二次巻線側の電圧値との関係を下記表6に示す。
【0085】
【表6】
【0086】
一方、タップ第2切替スイッチTSW2の単巻トランスSTにおけるタップ位置t2での電圧25vを入力電圧100vから引いた電圧75vが、複巻第2トランスFT2の一次巻線に極性を合わせて加えられる。この電圧に複巻第2トランスFT2の一次巻線と二次巻線の比1/40を掛け合わせた値の電圧1.875vが二次巻線に出力される。この第2複巻トランス切替スイッチSW21とタップ第2切替スイッチTSW2の全ての組み合わせと、それによる複巻第2トランスFT2の二次巻線側の電圧値との関係を下記表7に示す。
【0087】
【表7】
【0088】
以上のように、実施例3の上記(1)においては、入力電圧100vに対して、タップ第1切替スイッチTSW1と複巻第1トランスFT1を経た0〜20vの範囲の電圧が加えられ、タップ第2切替スイッチTSW2と複巻第2トランスFT2を経た0〜2.5vの範囲の電圧が加えられて、出力端から100〜122.5vの範囲の電圧が出力される。その結果、(1)の場合は、入力電圧に対して、複巻第1トランスFT1で減圧された電圧が加えられると共に、複巻第2トランスFT2により複巻第1トランスFT1に比べてさらに大きく減圧された電圧が加えられることにより、入力電圧に対して2段階で非常に細かく調整された出力電圧を出力することができる。
【0089】
(2)第1複巻トランス切替スイッチSW11が入力端a1側に接続され、第2複巻トランス切替スイッチSW21が入出力端a2,b2側に接続された場合(図15参照)
タップ第1切替スイッチTSW1の単巻トランスSTにおけるタップ位置t4からの電圧については、上記図14の場合と同様である。タップ第2切替スイッチTSW2の単巻トランスSTにおけるタップ位置t2での電圧25vは、複巻第2トランスFT2の一次巻線に極性が反転した状態で加えられる。さらに、この電圧に複巻第2トランスFT2の一次巻線と二次巻線の比1/40を掛け合わせた値の電圧0.625vが、二次巻線側に出力される。この場合も、上記表6と表7の関係が適用される。
【0090】
以上のように、(2)においては、入力電圧100vに対して、タップ第1切替スイッチTSW1と複巻第1トランスFT1を経た0〜20vの範囲の電圧が加えられ、タップ第2切替スイッチTSW2と複巻第2トランスFT2を経た0〜−2.5vの範囲の電圧が引かれて、97.5〜120vの範囲の電圧が出力端から出力される。その結果、この場合は、入力電圧に対して、複巻第1トランスFT1で変圧された出力が加えられると共に、複巻第2トランスFT2により複巻第1トランスFT1に比べてさらに大きく減圧された出力が引かれることにより、入力電圧に対して2段階で非常に細かく調整された出力電圧を供給することができる。
【0091】
(3)第1複巻トランス切替スイッチSW11が入出力端a2,b2側に接続され、第2複巻トランス切替スイッチSW21が入力端a1側に接続された場合(図16参照)
タップ第1切替スイッチTSW1の単巻トランスSTにおける例えばタップ位置t4での電圧75vが、複巻第1トランスFT1の一次巻線に極性が反転した状態で加えられる。さらに、この電圧に複巻第1トランスFT1の一次巻線と二次巻線の比1/5を掛け合わせた値の電圧15vが二次巻線に出力される。一方、タップ第2切替スイッチTSW2の単巻トランスSTにおけるタップt2位置での電圧については、上記図14の場合と同様であり、複巻第2トランスFT2の二次巻線から電圧1.875vが出力される。この場合も、上記表6と表7の関係が適用される。
【0092】
以上のように、(3)においては、入力電圧100vに対して、タップ第1切替スイッチTSW1と複巻第1トランスFT1を経た0〜−20vの範囲の電圧が引かれ、タップ第2切替スイッチTSW2と複巻第2トランスFT2を経た0〜2.5vの範囲の電圧が加えられて、80〜102.5vの範囲の電圧が出力端から出力される。その結果、この場合は、入力電圧に対して、複巻第1トランスFT1で変圧された出力電圧が引かれると共に、複巻第2トランスFT2により複巻第1トランスFT1に比べてさらに大きく減圧された電圧が加えられることにより、入力電圧に対して2段階で非常に細かく調整された出力電圧を供給することができる。
【0093】
(4)第1複巻トランス切替スイッチSW11と第2複巻トランス切替スイッチSW21がいずれも入出力端a2,b2側に接続された場合(図17参照)
タップ第1切替スイッチTSW1の単巻トランスSTにおけるタップ位置t4での電圧75vは、図16の場合と同様に処理され、また、タップ第2切替スイッチTSW2の単巻トランスSTにおけるタップ位置t2での電圧25vは、上記図15の場合と同様に処理される。この場合も、上記表6と表7の関係が適用される。そのため、入力電圧100vに対して、タップ第1切替スイッチTSW1と複巻第1トランスFT1を経た0〜−20vの範囲の電圧が引かれ、タップ第2切替スイッチTSW2と複巻第2トランスFT2を経た0〜−2.5vの範囲の電圧が引かれて、77.5〜100vの範囲の電圧が出力端から出力される。その結果、この場合は、入力電圧に対して、複巻第1トランスFT1で減圧された出力電圧が引かれると共に、複巻第2トランスFT2で大きく減圧された出力電圧が引かれることにより、入力電圧に対して2段階で非常に細かく調整された出力電圧を供給することができる。
【0094】
以上のように実施例3においては、所定の入力電圧に対して、タップ第1切替スイッチTSW1の切り替えによって細かく調節されかつ複巻第1トランスFT1により±5v単位で減圧された電圧と、タップ第2切替スイッチTSW2の切り替えによって細かく調節されかつ複巻第2トランスFT2により±0.625v単位で大きく減圧された電圧を、入力電圧に対して加えたり引いたりすることにより、非常に広い範囲で細かく調節した出力電圧を出力させることができ、従来のインバータを用いたものに比べて電圧調整の範囲を広めることができる。また、実施例3においては、電圧調整にトランスを用いていることにより、入力電圧に対する出力電圧の変換効率を、従来のインバータを用いた方式等に比べて大幅に高めることができる。
【0095】
なお、実施例3においては、複巻第1トランスFT1と複巻第2トランスFT2の各一次巻線の他端の入力端a1,a2のいずれかへの接続を、第1複巻トランス切替スイッチSW11と第2複巻トランス切替スイッチSW21の切り替えによって行っているが、これに代えて、第1複巻トランス切替スイッチSW11と第2複巻トランス切替スイッチSW21を用いずに、直接リード線で接続した4つの場合に分けて、それぞれの範囲の出力電圧が得られるような実施例とすることも可能である。
【0096】
次に、実施例4について、図18により説明する。
実施例4は、上記実施例3の交流電圧調整装置40を用いて交流安定化電源用に変更したものである。この交流電圧調整装置40Aは、入力電圧の変動に対して出力電圧を予め定めた目標出力電圧に保持するものである。実施例4では、実施例3におけるタップ第1切替スイッチTSW1及びタップ第2切替スイッチTSW2を、タップt1〜t5に接続された電気的なスイッチである電界効果トランジスタやIGBT等からなる各5個のスイッチFET1〜5とFET6〜10とした。また、第1複巻トランス切替スイッチSW11と第2複巻トランス切替スイッチSW21も電気的なスイッチである電界効果トランジスタやIGBT等からなるスイッチとした。交流電圧調整装置40Aの演算制御装置11、目標電圧入力部12、出力電圧検出器13、スイッチ切替部14については、上記参考例2のものと同様である。演算制御装置11のROMには、タップ第1切替スイッチTSW1及びタップ第2切替スイッチTSW2の切り替えの組合せと、第1複巻トランス切替スイッチSW11と第2複巻トランス切替スイッチSW21の切替の組み合わせを合わせた組合せに応じた交流電源の出力電圧との関係を表す上記表6,7に相当する組合せデータD6が記憶されている。
【0097】
上記構成の実施例4においては、交流電源の入力電圧が変動することにより出力電圧が目標電圧値から変動したような場合に、演算制御装置11は、出力電圧検出器13により検出された出力電圧値を読み込んで、目標電圧入力部12から入力された目標電圧値100vとを比較する。演算制御装置11は、読み込んだ出力電圧値の目標電圧値100vからの差を出来る限り小さくするために、ROMに記憶された組合せデータD6に基づいて出力電圧値と目標電圧値100vの差を最小にさせるタップ第1切替スイッチTSW1及びタップ第2切替スイッチTSW2の切り替えの組み合わせと、第1複巻トランス切替スイッチSW11と第2複巻トランス切替スイッチSW21の切替の組み合わせを合わせた組み合わせを演算により求める。演算制御装置11による演算結果が、スイッチ切替部14に出力され、スイッチ切替部14がスイッチFET1〜5とスイッチFET6〜10とからそれぞれ1つずつを選択してオン信号を出力し、第1複巻トランス切替スイッチSW11と第2複巻トランス切替スイッチSW21の切替をそれぞれ選択してオン信号を出力する。
【0098】
その結果、実施例4においては、交流電圧調整装置40Aは、入力電圧81.6〜129vの広い範囲の変動に対する出力電圧100vの変動を最小限に抑える交流安定化電源として有効に機能できる。また、実施例4においては、タップ第1切替スイッチTSW1及びタップ第2切替スイッチTSW2と第1複巻トランス切替スイッチSW11及び第2複巻トランス切替スイッチSW21を流れる電流を出力電流に比べて大幅に少なくできるため、これらスイッチとして大電流の半導体素子を用いる必要がないため、スイッチ素子を安価にすることができ、装置コストを安価にできる。
【0099】
なお、実施例4においては、複巻第1トランスFT1、複巻第2トランスFT2の一次巻線の他端の入力端a1,a2側のいずれかへの接続を、電気的スイッチである第1複巻トランス切替スイッチSW11と第2複巻トランス切替スイッチSW21の自動的な切り替えによって行っているが、これに代えて、第1複巻トランス切替スイッチSW11と第2複巻トランス切替スイッチSW21を用いずに、直接リード線で接続した4つの場合に分けて、それぞれの場合を実施例とすることも可能である。
【0100】
つぎに、実施例5について、図19により説明する。
上記実施例及び変形例においては、交流電圧調整装置として、単相100vの交流電源を用いているが、これに限らず三相100vの電源に対しても本発明を適用できる。図19に示すように、上記各実施例及び変形例に示した単相交流電圧調整装置を、三相入力端子U,V,Wと三相出力端子U'、V'、W'の各相間にそれぞれ1個ずつ接続することが可能である。これにより、三相交流電源に対しても上記各実施例、変形例に示したと同様の効果が得られる。この場合、電圧も三相100vに限らず200v以上に対しても適用可能である。
【0101】
なお、上記実施例及び変形例においては、交流電圧調整装置として、単相100vの交流電源を用いているが、これに限らず単相200v以上の交流電源とすることも可能である。また、単巻変圧器としては、通常は複巻変圧器の一次巻線と二次巻線を連結したものが用いられるが、これに限らず、複巻変圧器の一次巻線や二次巻線を単独で用いることも可能である。また、上記各種の複巻変圧器の巻線比や定格についても、上記実施例、変形例に示したものに限らず、変更することが可能である。その他、上記各実施例及び変形例に示したものは一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0102】
10,20,21,22,30,40…交流電圧調整装置、11…演算制御装置、12…目標電圧入力部、13…出力電圧検出部、14…スイッチ切替部。
図1
図2
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図5
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