特許第5693911号(P5693911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5693911-回転機器の絶縁低下防止方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693911
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】回転機器の絶縁低下防止方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20150312BHJP
   H02K 15/12 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   H02K15/02 A
   H02K15/12 C
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-238417(P2010-238417)
(22)【出願日】2010年10月25日
(65)【公開番号】特開2012-95385(P2012-95385A)
(43)【公開日】2012年5月17日
【審査請求日】2013年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230940
【氏名又は名称】日本原子力発電株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503434966
【氏名又は名称】ケイテー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行
(74)【代理人】
【識別番号】100126147
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 成年
(72)【発明者】
【氏名】三屋 政志
(72)【発明者】
【氏名】手塚 洋三
(72)【発明者】
【氏名】山口 泰司
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−112343(JP,A)
【文献】 特開平01−274800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機器を回転子と固定子に分解した際の回転機器の絶縁低下防止方法であって、
前記回転子及び前記固定子をそれぞれヒーターシートで覆い、
前記ヒーターシートで覆われた前記回転子及び前記固定子を防水透湿性素材の防湿カバーでさらに覆い、
前記ヒーターシートに通電して、前記回転子及び前記固定子を外気温より高い所定の温度とすることを特徴とする回転機器の絶縁低下防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機器の絶縁低下防止方法に関し、特に、回転機器の分解点検時に生じる絶縁能力の低下を防止する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機等の回転機器を点検のため分解した場合には、固定子や回転子を開放状態で放置すると、吸湿により、絶縁能力の低下をきたすことが多い。このため、分解点検中において、固定子や回転子が吸湿しないように養生が求められる。
【0003】
特に、大型電動機の分解点検作業では、屋外や屋外に近い環境下で作業が行われるため、夜間の温度低下や外気の影響を受けやすく吸湿が起こりやすい。さらに、大型電動機の分解点検作業では、3週間程度通電が行われないため、吸湿による絶縁低下が起き易い状態となる。したがって、十分な養生が必要である。
【0004】
大型電動機の吸湿を防止するためには、電動機の固定子や回転子を加熱することが考えられる。例えば、電動機の固定子や回転子を加熱する技術には、温風や熱風を用いて、回転子や固定子に塗布した絶縁材料であるワニスを加熱して乾燥させる手法が実施されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-264961号公報
【特許文献2】特開2003-169451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術では加熱に温風や熱風を用いるため、風があたる箇所が局所的に過度に乾燥する恐れがある。特に、3週間程度の長期間にわたる分解点検期間中、乾燥機を運転する場合には、風があたる箇所を調節する必要があり、本来不要である作業が生じることとなる。
【0007】
また、逆に、風が当たらない箇所については十分な加熱が行われず、吸湿が進む可能性がある。このように、温風や熱風を用いることは加熱にムラが生じる恐れがある。
【0008】
そもそも、特許文献1、2に記載の技術は、ワニスを乾燥することを目的としており、大型電動機の分解点検作業時の養生を目的とするものでもない。
【0009】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、ヒーターシートにより固定子や回転子の加温養生を行う回転機器の絶縁低下防止方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の回転機器の絶縁低下防止方法は、回転機器を回転子と固定子に分解した際の回転機器の絶縁低下防止方法であって、回転子及び固定子をそれぞれヒーターシートで覆い、ヒーターシートで覆われた回転子及び固定子全体を防水透湿性素材の防湿カバーで覆い、ヒーターシートに通電して、回転子及び固定子を外気温より高い所定の温度とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の回転機器の絶縁低下防止方法によれば、ヒーターシートにより、回転子及び固定子の加温養生を行うことを特徴とする。さらに、気密性が高く、形状の変化が可能で、除湿のできる除湿カバーを用いる。これにより、防湿カバーの湿気排出が行われ、回転子及び固定子の吸湿防止が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の回転機器の絶縁低下防止方法を用いて固定子及び回転子の加温養生を行う方法を示す図。
図2】本実施形態の回転機器の絶縁低下防止方法を用いて固定子の加温養生を行った評価結果を示す図。
図3】本実施形態の回転機器の絶縁低下防止方法を用いて回転子の加温養生を行った評価結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態である回転機器の絶縁低下防止方法について、図を参照して詳細に説明をする。
【0014】
本実施形態の回転機器の絶縁低下防止方法では、ヒーターシートで固定子及び回転子をそれぞれ覆い加温養生を行い、さらに、固定子や回転子が吸湿しないように防湿のできる防湿カバーで覆い、吸湿防止を図ることを特徴とする。
【0015】
図1(a)は、本実施形態の回転機器の絶縁低下防止方法を用いて固定子の加温養生を行う方法を示す図であり、図1(b)は、本実施形態の回転機器の絶縁低下防止方法を用いて回転子の加温養生を行う方法を示す図である。
【0016】
図1(a)に示すように、本実施形態の回転機器の絶縁低下防止方法を用いた固定子の加温養生は、まず、固定子Aをヒーターシート1で覆い、さらに、固定子A全体を防湿カバー2で覆う。最後に固定バンド3a〜3cを巻きつけて、固定子Aにヒーターシート1及び防湿カバー2を固定する。
【0017】
ヒーターシート1は、固定子に巻きつけることが可能な形状変化性を有するヒータを用いることが好ましい。例えば、ヒーターシート1には、柔軟性を有する繊維状等の発熱素材を用いることが可能である。
【0018】
防湿カバー2は、防湿ができ、形状変化性があり、難燃性を有する素材のシートを用いることが好ましい。例えば、防湿カバー2には、防水透湿性素材を用いることが可能であり、外からの水等の浸入を防止し、中の湿気は外に排出する。このため、固定子を屋外に置く場合であっても、降雨等に起因した吸湿による絶縁能力の低下を防止することができる。
【0019】
固定子の加温養生は、図1(a)に示すように、固定子をヒーターシート1及び防湿カバー2で覆った後に、ヒーターシート1に通電を開始することにより実施される。ヒーターシート1の出力は予備評価の結果に基づいて予め設定してもよく、固定子に複数の温度測定器を取り付け、温度測定結果に基づいて不図示の温度調節器により、ヒーターシート1の出力を調節し、固定子の温度が所定の設定温度となるように調節してもよい。設定温度は例えば、外気温に対し、20℃前後高い温度とすればよい。
【0020】
次に、図1(b)に示すように、本実施形態の回転機器の絶縁低下防止方法を用いた回転子の加温養生は、まず、回転子Bをヒーターシート4で覆い、さらに、回転子B全体を防湿カバー5で覆う。最後に固定バンド6a〜6cを巻きつけて、回転子Bにヒーターシート4及び防湿カバー6を固定する。
【0021】
ヒーターシート4及び防湿カバー6については上記固定子Aの場合と同様のものを用い、上記固定子Aの場合と同様の温度調節を行えばよい。
【0022】
図2は、本実施形態の回転機器の絶縁低下防止方法を用いて実際に固定子の加温養生を行った評価結果を示す図である。電源投入し測定開始から1時間程度で、ケース内部は温度・湿度が安定した数値に到達した。実験当日の外気湿度は、時間とともに上昇し、朝方には90%を越える高湿になっていたが、ケース内の湿度は40%を下回り、吸湿防止の効果が確認された。また、内部の温度については40℃をキープしており、中はふんわりあったかい程度で、高温によるやけどの心配もない。
【0023】
図3は、本実施形態の回転機器の絶縁低下防止方法を用いて実際に回転子の加温養生を行った評価結果を示す図である。電源投入し測定開始から1.5時間程度で、回転子内部は温度・湿度がやや安定した数値となった。実験日は外気湿度は、気温の変化とともに、湿度の変化も激しく、朝7:00ごろの突然の豪雨により外湿度は急上昇したものの、内部の温・湿度とも大きな変化は無く安定することが確認された。また内部の温度については最高値48℃を記録したが、回転子が素手でさわれない程の熱さではなく、やけどの心配もない。当日は気温変化が激しかったが、固定子同様安定したデータが得られた。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の回転機器の絶縁低下防止方法では、ヒーターシートにより、回転子及び固定子の加温養生を行うことを特徴とする。さらに、気密性が高く、形状の変化が可能(電動機の大きさが異なっていても対応可能)で、除湿のできる除湿カバーを用いる。これにより、防湿カバーの湿気排出が行われ、回転子及び固定子の吸湿防止が可能となる。
【符号の説明】
【0025】
1:ヒーターシート
2:防湿カバー
3:固定バンド
4:ヒーターシート
5:防湿カバー
6:固定バンド
図1
図2
図3