特許第5693921号(P5693921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693921
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】ドアパネル用排水弁
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
   B60J5/00 501E
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-250419(P2010-250419)
(22)【出願日】2010年11月9日
(65)【公開番号】特開2012-101618(P2012-101618A)
(43)【公開日】2012年5月31日
【審査請求日】2013年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(72)【発明者】
【氏名】金田 弘明
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開平02−000292(JP,U)
【文献】 特開2006−214837(JP,A)
【文献】 特開2003−314454(JP,A)
【文献】 特開平04−262089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00, 5/04, 5/10
F16K 31/18−31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアパネル(2)の下端部に形成された水抜き穴(3)に,外側から取付けられる排水弁であって、中央部に穴部(12)を有する底板(11)の外周端部の全域から,上端面が前記ドアパネル外面の前記水抜き穴の周囲部分に当接する外壁(13)を立設した水受部材(10)と、前記水受部材の上面に,前記穴部を塞いだ状態で,一方端部に設けた回動軸(21)を支点として回動自在に設けられ,水より比重の小さい略板状の浮き部材(20)と、前記水受部材の外壁の内側から立設され,前記ドアパネル内面の前記水抜き穴の周囲部分に係合する係合突起(30)と、を備え、前記水受部材に溜まった水の浮力で前記浮き部材を浮かせて前記穴部を開口し,該穴部から水を排出することを特徴とするドアパネル用排水弁。
【請求項2】
自動車のドアパネル(2)の下端部に形成された水抜き穴(3)に,外側から取付けられる排水弁であって、中央部に穴部(12)を有する底板(11)の外周端部の全域から,上端面が前記ドアパネル外面の前記水抜き穴の周囲部分に当接する外壁(13)を立設した水受部材(10)と、前記水受部材の上面に,前記穴部を塞いだ状態で,一方端部に設けた回動軸(21)を支点として回動自在に設けられ,水より比重の小さい略板状の浮き部材(20)と、前記水受部材の外壁の内側から立設され,前記ドアパネル内面の前記水抜き穴の周囲部分に係合する係合突起(30)と、を備え、前記浮き部材の周端部の少なくとも一部を,斜め上方に傾斜する傾斜部(22)とし、前記水受部材に溜まった水の浮力で前記浮き部材を浮かせて前記穴部を開口し,該穴部から水を排出することを特徴とするドアパネル用排水弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアパネルの下端部に取付けられ、ドアパネルの内部に侵入した水を車外に排出する排水弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアパネルの下端部には、当該ドアパネルとドアガラスとの間部分などから侵入してきた水を車外に排出するための水抜き構造が形成されている。この水抜き構造には、単に水抜き穴を形成しただけのものや、水抜き穴を、ドアを閉じた際にウエザーストリップで塞ぐものがある。
【0003】
しかし、水抜き穴を形成しただけのものは、そこから騒音が室内へ侵入するので遮音性が悪くなるといった問題がある。また、水抜き穴をウエザーストリップで塞ぐものは、ドアを開けないと水を排水することができないので、ドアを開けた際にドアパネルの内部に溜まっていた水が一度に排出され、乗降者の衣服を汚してしまい易い等の問題が発生する。
【0004】
また、こうした問題に鑑み、水抜き穴に弁構造を設けたものが創案されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1に記載の弁構造は、水の通路(連通孔)を、一方端部が固着された弁(フラップ)によって閉鎖し、溜まった水の重みによって、弁をその固着部分を支点として回動させて通路を開き、排水するようにしている。
【0005】
また、特許文献2に記載の弁構造も同様に、一方端部を回動部分とした弁(フラップ)で水の通路(連通路)を閉鎖しておき、溜まった水の重みで弁を開いて排水するようにしている。
【0006】
すなわち、これら両文献に記載の弁構造は、通常状態では、弁の一方端部の撓み剛性によって水の通路を塞いでおき、ドアパネルの内部に水が溜まると、その水の重みで弁を押し開いて排水するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−091633号公報
【特許文献2】特開2008−126691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1および特許文献2に記載の弁構造は、上記したように、通常状態では弁の一方端部の撓み剛性によって水の通路を塞ぐ構成であるため、経年変化によって弁の一方端部が劣化して撓み剛性が低下すると、その弁は自重のみによって回動して通路が開いてしまう危険性がある。その場合、走行時における遮音性が著しく低下するといった問題が発生する。
【0009】
本発明はこうした点に鑑み創案されたもので、長期間にわたって優れた排水性と遮音性を発揮することのできるドアパネル用の排水弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
図1乃至図6を参照して説明する。請求項1に記載のドアパネル用排水弁1は、自動車のドアパネル2の下端部に形成された水抜き穴3に、下外側から取付けられるものであり、中央部に穴部12を有する底板11の外周端部の全域から、上端面が前記ドアパネル2外面の前記水抜き穴3の周囲部分に当接する外壁13を立設した水受部材10を備える。
【0011】
また、前記水受部材10の上面に、前記穴部12を塞いだ状態で、一方端部に設けた回動軸21を支点として回動自在に設けられ、水より比重の小さい略板状の浮き部材20を備える。さらに、前記水受部材10の外壁13の上端面内側から立設され、前記ドアパネル2内面の前記水抜き穴3の周囲部分に係合する係合突起30を備える。
【0012】
そして、前記水受部材10に溜まった水の浮力で前記浮き部材20を浮かせて前記穴部12を開口し、当該穴部12から水を排出するものである。
【0013】
請求項2に記載のドアパネル用排水弁1は、自動車のドアパネル2の下端部に形成された水抜き穴3に、下外側から取付けられるものであり、中央部に穴部12を有する底板11の外周端部の全域から、上端面が前記ドアパネル2外面の前記水抜き穴3の周囲部分に当接する外壁13を立設した水受部材10を備える。
【0014】
また、前記水受部材10の上面に、前記穴部12を塞いだ状態で、一方端部に設けた回動軸21を支点として回動自在に設けられ、水より比重の小さい略板状の浮き部材20を備える。さらに、前記水受部材10の外壁13の上端面内側から立設され、前記ドアパネル2内面の前記水抜き穴3の周囲部分に係合する係合突起30を備える。
【0015】
また、前記浮き部材20の周端部の少なくとも一部を、斜め上方に傾斜する傾斜部22としている。そして、前記水受部材10に溜まった水の浮力で前記浮き部材20を浮かせて前記穴部12を開口し、当該穴部12から水を排出するものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載のドアパネル用排水弁1は、水受部材10に溜まった水の浮力で浮き部材20を浮かせて穴部12を開口し、その穴部12から水を排出するようにしているので、優れた排水性と遮音性を長期間にわたって発揮することができる。
【0017】
すなわち、浮き部材20は水受部材10の上面に設けているため、通常の状態では、浮き部材20は水受部材10に下から支えられた姿勢で穴部12を塞いでおり、従来技術のように一方端部の撓み剛性によって塞ぐものではない。従って、経年変化によって撓み剛性が低下し、穴部12が開口して遮音性が低下してしまうといったことがなく、その結果、長期にわたって優れた排水性と遮音性を確保することができる。
【0018】
請求項2に記載のドアパネル用排水弁1は、請求項1に記載の発明と同様の効果を発揮することができる。また、浮き部材20の周端部の少なくとも一部を、斜め上方に傾斜する傾斜部22としているので、より効果的に浮かせることができる。
【0019】
例えば、多量の水が水受部材10に急激に流入した場合、傾斜部22を設けていないと、浮き部材20はその水圧によって押し下げられるため瞬時に穴部12を開口することができないが、傾斜部22を設けたことによって、水が当該傾斜部22と水受部材10の底板11との間に流れ込んで水受部材10に大きな浮力を与える。これにより、浮き部材20は瞬時に浮き上がって穴部12を開口するので、水受部材10に流入してきた大量の水の全てを円滑に排水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る排水弁が取付けられる自動車を示す側面図である。
図2図1のX−X線断面拡大図である。
図3】本発明の実施形態に係る排水弁を示すもので、図2の要部拡大一部切断面図である(図4のY−Y線一部切断面図)。
図4図3に示す排水弁の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るドアパネル用排水弁1の実施形態を、図1乃至図4に示す。これは、自動車のインナーパネル2aとアウターパネル2bで構成されるドアパネル2の前記インナーパネル2aの下端部に形成された平面矩形状の水抜き穴3に、外側から取付けることのできる排水弁1であり、水受部材10、浮き部材20および係合突起30を備える。なお、図2において、符号5はボディパネルを示し、符号6は当該ボディパネル5に取付けられ、ドアパネル2に弾接するウエザーストリップを示す。
【0022】
水受部材10は樹脂製であり、中央部に穴部12を有する底板11の外周端部の全域から、上端面がドアパネル2外面の水抜き穴3の下面周囲部分に当接する外壁13を立設して構成される。本実施形態では、平面矩形状の水抜き穴3に対応して、底板11を平面矩形状とし、その四方端部から外壁13を立設している。なお、外壁13の上端面には、ドアパネル2の下面に弾接するシール材14を設けている。また、穴部12も平面矩形状としている。
【0023】
浮き部材20は、水受部材10の上面に、穴部12を塞いだ状態で、一方端部に設けた回動軸21を支点として揺動自在に設けられ、水より比重の小さい略板状(平面矩形状)である。また、この浮き部材20は高い遮音性を備え、廉価な材料で形成することが望ましい。こうした点に鑑み、本実施形態では浮き部材20を発泡ウレタンで形成している。また、浮き部材20の回動軸21に隣接する端部と、それに対向する端部の双方を、斜め上方に傾斜する傾斜部22としている。なお、回動軸21は、その両端部を、水受部材10の外壁13内面の水平方向に設けた軸受15によって下方から支持されている。
【0024】
係合突起30は、水受部材10の外壁13の内側から一体的に立設された樹脂製で、その外周側に形成した係合部31をドアパネル2内面の水抜き穴3の周囲部分に係合させている。なお、本実施形態における係合突起30は、四つの外壁13のそれぞれ中央に設けている。
【0025】
本実施形態に係るドアパネル用排水弁1の作用について説明する。まず、この排水弁1の取付けは、ドアパネル2の外側から、その四つの係合突起30をドアパネル2(インナーパネル2a)に形成された水抜き穴3に差し込むことによって行う(図2参照)。従って、容易に取付けることができる。
【0026】
この差し込みによって、外壁13の上端面に設けたシール材14がドアパネル2の外面に密に弾接すると共に、各係合突起30の係合部31がドアパネル2の内面に係合し、当該排水弁1(水受部材10)がドアパネル2に水密に、かつ抜け出し不能に組付く。従って、この状態では、水受部材10および浮き部材20によって、水抜き穴3の直下に水密性の高い箱状容器が形成される。
【0027】
排水弁1をドアパネル2に取付けた状態では、水受部材10の穴部12は浮き部材20の自重によって塞がれる。従って、この通常の状態では浮き部材20のいずれの箇所にも大きな荷重が集中しないので、この浮き部材20は長期間にわたって損傷することなくその機能を発揮することができる。また、走行中においても、穴部12は浮き部材20によって塞がれた状態にあるので、騒音の侵入を効果的に防止することができる。
【0028】
この状態で、水が、例えば、ドアパネル2とドアガラス4との間からドアパネル2の内部に侵入すると、そのまま流下してドアパネル2の下端部に達して水抜き穴3から水受部材10に達する。これにより、比重が水より小さい浮き部材20は、浮力の作用により、回動軸21を支点として回動するようにして浮き上がり、穴部12を開口し、そこから水を車外へ排出する。従って、ドアパネル2の内部に侵入してきた水を、常に円滑に排水することができる。
【0029】
なお、本実施形態では、浮き部材20の回動軸21に隣接する部分と、それに対向する部分を傾斜部22としているので、この傾斜部22と底板11との間に流入する水が、浮き部材20に強い浮力を与える。従って、浮き部材20は瞬時に浮き上がって穴部12を開口し、水を迅速に排出する。これにより、水がドアパネル2内部の他の箇所に流出するのを防止して、全ての水を確実に排出することができる。
【0030】
排水が完了すると、浮き部材20はその自重によって回動軸21を支点として元の状態まで回動して再び穴部12を塞ぐ。これにより、優れた排水性と遮音性の双方を長期間にわたって発揮することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 排水弁
2 ドアパネル
2a インナーパネル
2b アウターパネル
3 水抜き穴
4 ドアガラス
5 ボディパネル
6 ウエザーストリップ
10 水受部材
11 底板
12 穴部
13 外壁
14 シール材
15 軸受
20 浮き部材
21 回動軸
22 傾斜部
30 係合突起
31 係合部
図1
図2
図3
図4