(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下位体の上部に旋回体が旋回自在に設けられるとともにアクチュエータ駆動用のエンジンと電動発電機とを有するハイブリッド建設機械において用いられ、前記電動発電機に連結されるとともに前記旋回体を旋回駆動するハイブリッド建機用旋回駆動装置であって、
ケースと、
前記ケースの内周に配置された複数の内歯と、
前記ケースに収納されるとともに前記内歯に噛み合う外歯が外周に設けられた外歯歯車と、
前記外歯歯車に形成されたクランク用孔を貫通し、駆動力が伝達されたときには回転して前記外歯歯車を偏心させて揺動回転させ、前記外歯歯車が揺動回転したときは当該外歯歯車からの駆動力により回転されるクランク軸と、
前記クランク軸の一端側を回転自在に保持する端部キャリア、前記クランク軸の他端側を回転自在に保持する基部キャリア、及び、前記端部キャリアと前記基部キャリアとを連結する支柱、を有するキャリアと、
前記電動発電機の回転軸に連結されるとともに当該電動発電機と反対側である他端側の端部に入出力ギア部が設けられた第1入出力軸と、
前記クランク軸の一端側に第1スプライン結合部を介して固定されるとともに、外周に形成された歯が前記入出力ギア部に噛み合うクランク軸用歯車と、
前記基部キャリアに一体に形成された第2入出力軸と、
前記第2入出力軸に対して第2スプライン結合部を介して固定され、前記下位体に設けられたリングギアに噛み合うピニオンと、
を備え、
前記電動発電機の定格回転数は、6000rpm以上で10000rpm以下の範囲に設定され、
前記ピニオンから前記第1入出力軸に対して駆動力が伝達される際における増速比は、60以上で110以下の範囲に設定され、
前記入出力ギア部及び前記クランク軸用歯車の間と、前記第1スプライン結合部と、前記クランク軸及び前記外歯歯車の間と、前記外歯歯車及び前記内歯の間と、前記第2スプライン結合部と、によって規定される前記第1入出力軸から前記ピニオンまでの間のバックラッシュ量の合計が、0.25度以上で0.50度以下の範囲に設定されていることを特徴とする、ハイブリッド建機用旋回駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハイブリッド建設機械において、上記の電動発電機の小型化を図るとともにこの電動発電機における回生能力を高めるためには、電動発電機に対して高速の回転が入力されるように構成されることが望ましい。このためには、ハイブリッド建機用旋回駆動装置として、増速比の高い旋回駆動装置が必要となる。ハイブリッド建機用旋回駆動装置として、特許文献2に開示されたような3段式の遊星歯車機構を有する旋回駆動装置を用いることで、増速比を高めたハイブリッド建機用旋回駆動装置を実現することが考えられる。
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示された旋回駆動装置の場合、上述のように3段式の遊星歯車機構を備えて構成されるため、駆動力の伝達経路において、歯の噛み合い部やスプライン結合部が非常に多く存在してしまうことになり、バックラッシュの増大を招いてしまうことになる。このため、ショベル機におけるバケット部分のような旋回体の先端部において、旋回動作の停止時における揺り戻しの発生による揺動範囲が大きくなってしまうことになる。これにより、ハイブリッド建設機械を操縦している操縦者が所望の箇所にバケット部分のような旋回体の先端部を停止させる操作を行うことが困難になってしまい、操作性の悪化を招いてしまうことになる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、高い増速比を確保して電動発電機に高速の回転を入力することができるとともに、操縦者が所望の箇所に旋回体の先端部を容易に停止させる操作を行うことができて操作性の向上を図ることができるハイブリッド建機用旋回駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1発明に係るハイブリッド建機用旋回駆動装置は、下位体の上部に旋回体が旋回自在に設けられるとともにアクチュエータ駆動用のエンジンと電動発電機とを有するハイブリッド建設機械において用いられ、前記電動発電機に連結されるとともに前記旋回体を旋回駆動するハイブリッド建機用旋回駆動装置に関する。そして、第1発明に係るハイブリッド建機用旋回駆動装置は、ケースと、前記ケースの内周に配置された複数の内歯と、前記ケースに収納されるとともに前記内歯に噛み合う外歯が外周に設けられた外歯歯車と、前記外歯歯車に形成されたクランク用孔を貫通し、駆動力が伝達されたときには回転して前記外歯歯車を偏心させて揺動回転させ、前記外歯歯車が揺動回転したときは当該外歯歯車からの駆動力により回転されるクランク軸と、前記クランク軸の一端側を回転自在に保持する端部キャリア、前記クランク軸の他端側を回転自在に保持する基部キャリア、及び、前記端部キャリアと前記基部キャリアとを連結する支柱、を有するキャリアと、前記電動発電機の回転軸に連結されるとともに当該電動発電機と反対側である他端側の端部に入出力ギア部が設けられた第1入出力軸と、前記クランク軸の一端側に第1スプライン結合部を介して固定されるとともに、外周に形成された歯が前記入出力ギア部に噛み合うクランク軸用歯車と、前記基部キャリアに一体に形成された第2入出力軸と、前記第2入出力軸に対して第2スプライン結合部を介して固定され、前記下位体に設けられたリングギアに噛み合うピニオンと、を備え、前記電動発電機の定格回転数は、6000rpm以上で10000rpm以下の範囲に設定され、前記ピニオンから前記第1入出力軸に対して駆動力が伝達される際における増速比は、60以上で110以下の範囲に設定され、前記入出力ギア部及び前記クランク軸用歯車の間と、前記第1スプライン結合部と、前記クランク軸及び前記外歯歯車の間と、前記外歯歯車及び前記内歯の間と、前記第2スプライン結合部と、によって規定される前記第1入出力軸から前記ピニオンまでの間のバックラッシュ量の合計が、0.25度以上で0.50度以下の範囲に設定されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によると、ハイブリッド建機用旋回駆動装置が、キャリアに回転自在に保持されたクランク軸の回転とともにケースの内周の内歯に噛み合う外歯歯車が偏心して揺動回転する偏心揺動型の駆動機構を備えて構成されている。そして、電動発電機の回転軸に連結される第1入出力軸は、クランク軸の一端側に固定されるクランク軸用歯車と噛み合い、下位体のリングギアに噛み合うピニオンが固定される第2入出力軸は、キャリアの基部キャリアに一体形成される。このため、第1入出力軸とピニオンとの間の駆動力伝達経路において、高い増速比を容易に確保することができるとともに、定格回転数が高速の6000rpm以上10000rpm以下の範囲に設定された電動発電機に対して高速の回転を入力することができる。そして、ピニオンから第1入出力軸に駆動力が伝達される際の増速比が60以上110以下の範囲に設定されることで、電動発電機における回生能力を十分に高い水準まで効率よく高めることができる。尚、増速比が60以上に設定されることで十分な回生能力が得られ、増速比が110を超えると回生能力を高める効果が急速に収束してしまうことになる。
【0010】
また、特許文献2に開示されたような3段式の遊星歯車機構を有する旋回駆動装置の場合、歯の噛み合い部分やスプライン結合部が非常に多くの箇所に存在してしまうことになる。しかし、本発明によると、歯の噛み合い部分やスプライン結合部としては、入出力ギア部及びクランク軸用歯車の間と、第1スプライン結合部と、クランク軸及び外歯歯車の間と、外歯歯車及び内歯の間と、第2スプライン結合部とが存在し、相当に少ない箇所のみに存在する構成となる。そして、上記の箇所によって規定される第1入出力軸からピニオンまでの間のバックラッシュ量の合計が、0.25度以上0.50度以下の範囲に設定されることで、駆動効率の低下を抑制しつつ、バックラッシュを十分に低減することができる。これにより、旋回動作の停止時における揺り戻しの発生による揺動範囲を小さくすることができ、操縦者が所望の箇所に旋回体の先端部を停止させる操作を容易に行うことができる。尚、上記バックラッシュ量の合計について、0.25度未満となると駆動効率の急激な低下を招いてしまうことになり、0.50度を超えると旋回動作の停止時における揺り戻しの揺動範囲が急激に大きくなってしまうことになる。従って、このハイブリッド建機用旋回駆動装置によると、高い増速比を確保して電動発電機に高速の回転を入力することができるとともに、操縦者が所望の箇所に旋回体の先端部を容易に停止させる操作を行うことができて操作性の向上を図ることができる。
【0011】
第2発明に係るハイブリッド建機用旋回駆動装置は、第1発明のハイブリッド建機用旋回駆動装置において、前記支柱と前記クランク軸とは、前記キャリアの周方向に沿って交互に並んで配置され、前記支柱は、前記キャリアの軸方向に垂直な断面が前記キャリアの径方向における当該支柱の中央部分の内側に偏った位置において凹む形状に形成されるように、側面に凹み部分が設けられ、前記外歯歯車に設けられて前記支柱が貫通する支柱貫通孔における前記支柱に対向する側面部分が、前記支柱における前記凹み部分に沿うように前記支柱貫通孔の内側に向かって張り出した側面部分として設けられていることを特徴とする。
【0012】
この発明によると、支柱の側面に凹み部分が設けられ、外歯歯車における支柱貫通孔の側面部分が支柱の凹み部分に沿って張り出す部分として設けられる。このため、支柱貫通孔の張り出した部分に対応させてクランク軸の径方向の寸法を大きく設定することができる。そして、クランク軸が大径化されることにより耐久性が向上する。一方、支柱の側面に設けられる凹み部分は、キャリアの径方向における支柱の中央部分の内側に偏った位置に設けられるため、ハイブリッド建機用旋回駆動装置のねじり剛性に対する影響を小さくすることができる。このように、ハイブリッド建機用旋回駆動装置全体として、ねじり剛性を維持しながら、耐久性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、高い増速比を確保して電動発電機に高速の回転を入力することができるとともに、操縦者が所望の箇所に旋回体の先端部を容易に停止させる操作を行うことができて操作性の向上を図ることができるハイブリッド建機用旋回駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明の実施形態に係るハイブリッド建機用旋回駆動装置は、下位体の上部に旋回体が旋回自在に設けられるとともにアクチュエータ駆動用のエンジンと電動発電機とを有するハイブリッド建設機械において広く用いることができるものである。即ち、本実施形態は、ハイブリッド建設機械において用いられ、電動発電機に連結されるとともに旋回体を旋回駆動するハイブリッド建機用旋回駆動装置に関して、広く適用することができるものである。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係るハイブリッド建機用旋回駆動装置1(以下、単に「旋回駆動装置1」ともいう)が適用されるショベル機100を模式的に示す平面図である。
図1に示すショベル機100は、一対の走行クローラ101を有する下部走行体を構成する下位体の上部に旋回体102が旋回自在に設けられるとともにアクチュエータ駆動用のエンジン(図示せず)と電動発電機10とを有するハイブリッド建設機械として構成されている。
【0017】
ショベル機100においては、下位体の本体部(図示せず)には、内周に歯が形成されたリングギア103が固定されており、旋回体102には、電動発電機10及びこの電動発電機10に連結された旋回駆動装置1が設置されている。旋回駆動装置1は、後述するピニオン17(
図2を参照)においてリングギア103に対して噛み合うように配置され、後述するケース11(
図2を参照)において旋回体102に取り付けられている。そして、旋回駆動装置1が電動発電機10によって駆動されることで、旋回体102が下位体の本体部に対して旋回駆動されることになる。また、旋回体102の旋回制動時には、旋回駆動装置1によって電動発電機10が駆動されることで、旋回体102の慣性エネルギを電気エネルギに変換して回生する発電が電動発電機10において行われることになる。
【0018】
また、
図1に示すショベル機100においては、前述のエンジンによって駆動される油圧ポンプと、旋回体102に設けられた複数のアクチュエータと、上記エンジンによって駆動される発電機(図示せず)と、この発電機による発電電力が充電される蓄電装置(図示せず)とが備えられている。電動発電機10は、上記の蓄電装置から供給される電力によって駆動されるとともに、旋回体102の旋回制動時には発電した電力をこの蓄電装置に充電するように構成されている。この電動発電機10としては、高い回生能力を確保するため、高速回転に対応可能なようにその定格回転数が6000rpm以上で10000rpm以下の範囲に設定されたものが用いられている。
【0019】
また、上記の複数のアクチュエータは、上記の油圧ポンプから供給される圧油によって駆動される。そして、ショベル機100においては、複数のアクチュエータとして、上記圧油により油圧シリンダによって駆動されるブーム104、アーム105、アタッチメントとしてのバケット106が設けられている。尚、旋回体102の旋回駆動時には、旋回体102の先端部となるバケット106は図中の両端矢印Aで示す方向に回転することになる。
【0020】
次に、本実施形態に係るハイブリッド建機用旋回駆動装置1について詳しく説明する。
図2は、旋回駆動装置1を正面から見た断面図である。尚、
図2では、電動発電機10については、二点鎖線で外形の一部を図示しており、その入出力用の回転軸10aの一部のみ実線で図示している。この
図2に示すように、旋回駆動装置1は、ケース11、第1入出力軸12、増減速部13、第2入出力軸14、ピン内歯15、ピニオン17等を備えて構成されている。そして、旋回駆動装置1は、一端側(図中の上側)においてケース11に対して電動発電機10が取り付けられており、他端側(図中の下側)においてケース11から突出するように位置する第2入出力軸14にピニオン17が取り付けられている。尚、ピニオン17は、第2入出力軸14に対してスプライン結合部18(本実施形態における第2スプライン結合部)を介して固定されている。
【0021】
図2に示す旋回駆動装置1においては、上側に配置された電動発電機10から駆動力が第1入出力軸12に入力されたときは、その入力された回転をケース11内に配置された増減速部13を介して減速して伝達して第2入出力軸14に取り付けられたピニオン17から出力する。尚、前述のように、旋回駆動装置1は、ピニオン17が下位体の本体部に設けられたリングギア103と噛み合うように配置されており、電動発電機10からの駆動力に伴って旋回駆動装置1が作動してピニオン17が回転することで、旋回体102が下位体に対して旋回駆動される。一方、旋回駆動装置1において、旋回体102の慣性エネルギによる駆動力が下側に配置されたピニオン17及び第2入出力軸14に入力されたときは、その入力された回転を増減速部13を介して増速して伝達して第1入出力軸12から電動発電機10に出力する。尚、以下の説明においては、旋回駆動装置1において、電動発電機10が配置される上側を一端側として、ピニオン17が配置される下側を他端側として説明する。
【0022】
図2に示すように、旋回駆動装置1のケース11は、筒状の第1ケース部11aと第1ケース部11aの一端側に配置される第2ケース部11bとで構成され、これらの縁部同士がボルト(図示せず)で連結されている。ケース11の内部には、増減速部13等が収納され、第1入出力軸12、増減速部13、及び第2入出力軸14は、旋回駆動装置1の回転中心線P(
図2において一点鎖線で図示)の方向である軸方向に沿って直列に配置されている。ケース11は、一端側(第2ケース部11bの端部側)には前述のように電動発電機10が固定され、他端側(第1ケース部11aの端部側)が開口形成されている。尚、ケース11の内部は外部に対してシール部材によって密封されており、この密封されたケース11の内部には潤滑油が充填されている。
【0023】
図3は、
図2における増減速部13及びその近傍を拡大して示す断面図である。
図2及び
図3に示すように、本実施形態における内歯を構成するピン内歯15(
図2及び
図3では断面でなく外形を図示)は、ピン状の部材(丸棒状の部材)として形成されている。そして、ピン内歯15は、その長手方向が回転中心線Pと平行に位置するように配置されるとともに、ケース11の内周において周方向に沿って等間隔で配列され、後述する外歯歯車22の外歯47と噛み合うように構成されている。
【0024】
図2及び
図3に示すように、第1入出力軸12は、軸状の歯車部材として設けられ、電動発電機10の回転軸10aと同心上の回転中心線P上に配置されている。そして、第1入出力軸12は、その一端側の端部において回転軸10aがキー結合を介して連結されている。また、第1入出力軸12は、電動発電機10と反対側である他端側の端部において、後述する増減速部13のクランク軸用歯車19に噛み合う入出力ギア部12aが設けられている。このように、第1入出力軸12は、電動発電機10の回転軸10aと増減速部13のクランク軸用歯車19との間で回転駆動力を伝達するように構成されている。
【0025】
図2及び
図3に示すように、増減速部13は、クランク軸用歯車19、クランク軸20、キャリア21、外歯歯車22、クランク軸軸受(26、27)、ブレーキ機構35等を備えて構成されている。
【0026】
クランク軸用歯車19は、スパーギアとして構成されている。そして、クランク軸用歯車19は、その外周に形成された歯が第1入出力軸12の入出力ギア部12aと噛み合うように入出力ギア部12aの周囲に複数(本実施形態では3つ)配置され、入出力ギア部12aに対して旋回駆動装置1の径方向(回転中心線Pに対して垂直な方向)に位置している。このクランク軸用歯車19は、中央部分に貫通孔が形成され、この貫通孔においてクランク軸20の一端側に対してスプライン結合部16(本実施形態における第1スプライン結合部)を介して固定されている。これにより、クランク軸用歯車19は、第1入出力軸12とクランク軸20との間で回転駆動力を伝達するように構成されている。
【0027】
クランク軸20は、回転中心線Pを中心とした周方向に沿った均等角度の位置に複数(本実施形態では3つ)配置されており、その軸方向が回転中心線Pと平行になるように配置されている。各クランク軸20(
図2及び
図3では、断面でなく外形を図示)は、外歯歯車22に形成されたクランク用孔30をそれぞれ貫通するように配置された軸部材として設けられている。そして、クランク軸20は、一端側に配置された第1入出力軸12からの駆動力がクランク軸用歯車19を介して伝達されたときには、自ら回転することで外歯歯車22を偏心させて揺動回転させるように構成されている。一方、クランク軸20は、他端側に配置された第2入出力軸14からの駆動力が伝達されて外歯歯車22が揺動回転したときには、外歯歯車22からの駆動力により回転されるように構成されている。これにより、クランク軸20は、自らの回転(自転)に伴う外歯歯車22の回転とともに公転動作を行い、一方、自らの公転動作に伴う外歯歯車22の回転とともに回転(自転)動作を行うことになる。
【0028】
また、クランク軸20には、第1偏心部20a、第2偏心部20b、第1軸部20c、第2軸部20dが形成され、一端側から、第1軸部20c、第1偏心部20a、第2偏心部20b、第2軸部20dの順番で設けられている。第1偏心部20a及び第2偏心部20bは、軸方向と垂直な断面が円形断面となるように形成され、それぞれの中心位置がクランク軸20の回転中心線Q(
図3において一点鎖線で図示)に対して偏心するように設けられている。第1偏心部20a及び第2偏心部20bは、外歯歯車22のクランク用孔30に配置されている。
【0029】
クランク軸20の一端側に設けられた第1軸部20cは、円筒ころ軸受(又はニードルころ軸受)として設けられた第1クランク軸軸受26を介してキャリア21に対して回転自在に保持されている。クランク軸20の他端側に設けられた第2軸部20dは、円筒ころ軸受(又はニードルころ軸受)として設けられた第2クランク軸軸受27を介してキャリア21に対して回転自在に保持されている。また、第1軸部20cには、第1クランク軸軸受26から一端側に突出するように位置するその端部側において、前述したように、クランク軸用歯車19がスプライン結合部16を介して固定されている。尚、本実施形態では、クランク軸20を回転自在に保持する第1及び第2クランク軸軸受(26、27)として円筒ころ軸受が用いられるものを例示しているが、この通りでなくてもよく、例えば、テーパころ軸受が用いられるものであってもよい。
【0030】
ブレーキ機構35は、クランク軸20の第1軸部20cの一端側に配置され、クランク軸20を係止するためにクランク軸20の一端側の端部に制動力を付与する機構として設けられている。このブレーキ機構35は、摩擦板36、保持部材37、ピストン部材38、バネ39等を備えて構成されている。摩擦板36は、複数枚並んで配置され、クランク軸20の一端側の端部に対して軸方向の相対変位が可能で径方向の相対変位が拘束された状態でスプライン結合部を介して連結されている。保持部材37は、キャリア21における後述の端部キャリア24の一端側に固定されるとともに、摩擦板36を保持する部材として設けられている。ピストン部材38は、第1ケース部11bの内壁との間で油圧室を区画しており、この油圧室から圧油が排出された状態では、バネ39の付勢力で付勢されて他端側に変位して複数の摩擦板36を押圧して摩擦力を発生させる。これにより、ブレーキ機構35において、クランク軸20に制動力が付与される。一方、上記油圧室に圧油が供給されることで、ピストン部材38がバネ39の付勢力に抗して一端側に変位する。これにより、ブレーキ機構35において、制動力が解除されるよう構成されている。
【0031】
キャリア21は、基部キャリア23と、端部キャリア24と、支柱25とを備えて構成されている。基部キャリア23は、その他端側において第2入出力軸14が一体に形成されてケース11内に配置されている。基部キャリア23は、その一端側にクランク保持穴40が形成され、このクランク保持穴40によって各クランク軸20の他端側をその第2軸部20dにて第2クランク軸軸受27を介して回転自在に保持している。クランク保持穴40は、回転中心線Pを中心とした周方向に沿った均等角度の位置に形成されている。
【0032】
端部キャリア24は、支柱25を介して基部キャリア23と連結され、円板状の部材として設けられている。端部キャリア24には、回転中心線Pを中心とした周方向に沿った均等角度の位置にクランク軸20の一端側の第1軸部20cが配置される貫通孔としてクランク貫通孔41が形成されている。このクランク貫通孔41において、クランク軸20の一端側がその第1軸部20cにて第1クランク軸軸受26を介して回転自在に保持されている。
【0033】
支柱25は、基部キャリア23と端部キャリア24との間に配置され、基部キャリア23と端部キャリア24とを連結する柱状部分として設けられている。支柱25は、回転中心線Pを中心とした周方向に沿った均等角度の位置に複数(本実施形態では3つ)配置され、その軸方向が回転中心線Pと平行となるように配置されている。尚、支柱25とクランク軸20とは、回転中心線Pを中心とした周方向に沿って(即ち、キャリア21の周方向に沿って)交互に並んで配置されている。各支柱25は、基部キャリア23に一体に形成され、基部キャリア23の一端側において突出するように設けられている。そして、各支柱25には、端部キャリア24に形成された貫通孔に向かって開口するとともに軸方向に沿って延び、支柱ピン42が圧入される支柱ピン穴43が形成されている。支柱ピン42が端部キャリア24の一端側から支柱ピン穴43に亘って圧入されることで、基部キャリア23及び端部キャリア24の周方向の位置が合わされる。また、各支柱25には、端部キャリア24に形成された貫通孔に向かって開口するとともに軸方向に沿って延び、支柱ボルト44が挿入される支柱ボルト穴45が形成されている。支柱ボルト穴45の内周には、雌ネジ部分が形成され、支柱ボルト44の他端側には、雄ネジ部分として形成されたネジ部が設けられている。支柱ボルト44は、端部キャリア24を貫通するよう配置されるとともにそのネジ部が支柱ボルト穴45の雌ネジ部分と螺合することで、端部キャリア24と基部キャリア23とを支柱25を介して結合するように構成されている。
【0034】
尚、キャリア21は、第2入出力軸14とともに、ケース11に対して、一対の主軸受50を介して回転自在に保持されている。一対の主軸受50は、主軸受50aと主軸受50bとを備えて構成されている。主軸受50aは、端部キャリア24をその外周側においてケース11の内周側に対して回転自在に保持する玉軸受として構成されている。一方、主軸受50bは、基部キャリア23及び第2入出力軸14をその外周側においてケース11の内周側に対して回転自在に保持する自動調心ころ軸受として構成されている。
【0035】
外歯歯車22は、平行に配置された状態でケース11内に収納される第1外歯歯車22aと第2外歯歯車22bとで構成されている。第1外歯歯車22a及び第2外歯歯車22bにはそれぞれ、クランク軸20が貫通するクランク用孔30、及び、支柱25が貫通する支柱貫通孔46が形成されている。第1外歯歯車22a及び第2外歯歯車22bは、回転中心線Pと平行な方向において、クランク用孔30及び支柱貫通孔46の位置がそれぞれ対応するように配置されている。外歯歯車22(22a、22b)のクランク用孔30は、円形孔として形成され、クランク軸20に対応して外歯歯車22の周方向に沿って均等角度の位置に複数(本実施形態では3つ)配置されている。また、支柱貫通孔46は、支柱25の断面形状に対応した孔として形成され、支柱25に対応して外歯歯車22の周方向に沿った均等角度の位置に複数(本実施形態では3つ)配置されている。また、支柱貫通孔46は、外歯歯車22の周方向において、クランク用孔30と交互に形成されている。尚、支柱貫通孔46には、支柱25が遊嵌状態で貫通している。
【0036】
また、第1外歯歯車22a及び第2外歯歯車22bのそれぞれの外周には、ピン内歯15に噛み合う外歯47が設けられている。尚、第1外歯歯車22a及び第2外歯歯車22bの外歯47の歯数は、ピン内歯15の歯数よりも1個又は複数個少なくなるように設けられている。このため、外歯歯車22(22a、22b)は、クランク軸20の回転に対応して回転する際、及び、自ら回転することでクランク軸20を回転させる際には、噛み合う外歯47とピン内歯15との噛み合いがずれ、偏心して揺動回転することになる。
【0037】
また、外歯歯車22は、クランク用孔30において外歯用軸受(48、49)を介してクランク軸20を回転自在に保持している。外歯用軸受48は第1偏心部20aを第1外歯歯車22aに対して、外歯用軸受49は第2偏心部20bを第2外歯歯車22bに対して、それぞれ回転自在に保持している。これらの外歯用軸受(48、49)は、円筒ころ軸受(又はニードルころ軸受)として構成されている。
【0038】
ここで、支柱25及び外歯歯車22(22a、22b)の形状について更に詳しく説明する。
図4は、
図2に示す旋回駆動装置1のB−B線矢視位置から見た断面図である。尚、
図4は、旋回駆動装置1について、
図2に対して拡大した状態で示している。
【0039】
図4によく示すように、各支柱25は、キャリア21の軸方向に垂直な断面(即ち、回転中心線Pに垂直な断面)がキャリア21の径方向における各支柱25の中央部分の内側に偏った位置において凹む形状に形成されるように、側面に凹み部分25aが設けられている。凹み部分25aは、各支柱25に一対で設けられ、各支柱25においてキャリア21の周方向における両側の各側面にそれぞれ設けられている。
【0040】
また、外歯歯車22(22a、22b)に設けられて各支柱25が貫通する各支柱貫通孔46における各支柱25に対向する側面部分46aが、各支柱25における凹み部分25aに沿うように支柱貫通孔46の内側に向かって張り出した側面部分46aとして設けられている。側面部分46aは、各支柱貫通孔46に一対で設けられ、各支柱貫通孔46において外歯歯車22(22a、22b)の周方向における両側の各側面にそれぞれ設けられている。各側面部分46aは、上記のように、各凹み部分25aに沿って設けられており、各凹み部分25aに対応して湾曲して張り出す形状に形成されている。
【0041】
また、外歯歯車22(22a、22b)においては、側面部分46aとクランク用孔30との間の部分の肉厚寸法が、要求される強度が確保される範囲で薄く形成されている。即ち、クランク用孔30及び外歯用軸受(48、49)が、外歯歯車22(22a、22b)の周方向の両側に配置された側面部分46aに対して、より接近した位置に配置されるように、上記の肉厚寸法が設定されている。これにより、第1偏心部20a及び第2偏心部20bの大径化が図られ、クランク軸20の径方向の寸法が大きくなるように設定されている。
【0042】
また、外歯歯車22(22a、22b)においては、外歯歯車22(22a、22b)の半径方向に延びるとともに外歯用軸受(48、49)の外周に接する接線R(
図4にて二点鎖線Rで示す接線)のそれぞれに対して支柱貫通孔46の全てが外歯用軸受(48、49)と反対側に配置されている。即ち、支柱貫通孔46は、接線Rと交わることなく、接線Rに対して外歯用軸受(47、48)と反対側に配置されている。このため、外歯歯車22(22a、22b)において、クランク用孔30と支柱貫通孔46との間の部分に対して外歯歯車22(22a、22b)の半径方向における外周側の部分であって外歯47の近傍の部分の肉厚を厚くすることができる。これにより、凹み部分25aを形成しても
図2乃至
図4に示す旋回駆動装置1のように、ピン内歯15の本数が比較的少なくてピン内歯15の1本当りの負荷が大きい旋回駆動装置1の場合であっても、外歯歯車22(22a、22b)におけるクランク用孔30と支柱貫通孔46と外歯47とが回りに配置された部分での十分な強度を確保することができる。
【0043】
上述した旋回駆動装置1は、ピニオン17から第1入出力軸12に対して駆動力が伝達される際における増速比が、60以上で110以下の範囲に設定されている。また、この旋回駆動装置1においては、バックラッシュ量の合計は、入出力ギア部12a及びクランク軸用歯車19の間と、第1スプライン結合部16と、外歯用軸受(48、49)を介したクランク軸20及び外歯歯車22の間と、外歯歯車22及びピン内歯15の間と、第2スプライン結合部18と、によって規定されることになる。そして、旋回駆動装置1では、このバックラッシュ量の合計が、0.25度(°)以上で0.50度(°)以下の範囲に設定されている。
【0044】
次に、上述した旋回駆動装置1の作動について説明する。旋回体102の旋回駆動時には、旋回駆動装置1は、図示しない蓄電装置から供給される電力によって駆動される電動発電機10の運転が行われることにより作動する。そして、電動発電機10の運転が開始されると、電動発電機10の回転軸10aによって駆動される第1入出力軸12が回転する。第1入出力軸12が回転すると、入出力ギア部12aに噛み合う各クランク軸用歯車19が回転し、各クランク軸用歯車19が固定された各クランク軸20とともに第1及び第2偏心部(20a、20b)が回転する。この回転に伴って、第1及び第2偏心部(20a、20b)から外歯歯車22(22a、22b)に対して荷重が作用し、外歯歯車22(22a、22b)がピン内歯15と噛み合いをずらしながら揺動するように偏心して回転する。そして、外歯歯車22(22a、22b)の揺動回転に伴って、外歯歯車22(22a、22b)に対して回転保持されたクランク軸20が自転しながら回転中心線Pを中心として公転動作を行う。このクランク軸20の公転動作により、クランク軸20を回転自在に保持するキャリア21とともに、第2入出力軸14が回転し、リングギア103に噛み合うピニオン17から大きなトルクが出力されることになる。これにより、旋回体102が旋回駆動されることになる。
【0045】
一方、旋回体102の旋回制動時には、旋回体102の慣性エネルギによる駆動力がピニオン17を介して第2入出力軸14に入力され、第2入出力軸14の回転とともに各クランク軸20が公転動作を行う。このクランク軸20の公転とともに外歯歯車22(22a、22b)がピン内歯15との噛み合いをずらしながら揺動するように偏心して回転し、外歯歯車22(22a、22b)から各クランク軸20の第1及び第2偏心部(20a、20b)に対して荷重が作用し、各クランク軸20が回転される。そして、各クランク軸20に固定された各クランク軸用歯車19に噛み合う第1入出力軸12から電動発電機10の回転軸10aに駆動力が入力され、制動中の電動発電機10において発電が行われることになる。発電された電力は、図示しない蓄電装置に充電されることになる。
【0046】
尚、上記の旋回制動時においては、ピニオン17から第1入出力軸12までの駆動力伝達経路において回転速度が60倍以上110倍以下の範囲で増速され、その増速された高速の回転が電動発電機10に入力される。そして、電動発電機10の回転が停止するまでの間、発電が行われることになる。また、旋回駆動装置1のバックラッシュ量の合計が0.25度以上で0.50度以下の範囲に設定されているため、旋回制動動作が終了するタイミング(即ち、旋回動作の停止時)においては、旋回体102の先端部であるバケット106での揺り戻しの発生が大幅に抑制されることになる。
【0047】
以上説明したように、旋回駆動装置1は、キャリア21に回転自在に保持されたクランク軸20の回転とともにケース11の内周の内歯に噛み合う外歯歯車22が偏心して揺動回転する偏心揺動型の駆動機構を備えて構成されている。そして、電動発電機10の回転軸10aに連結される第1入出力軸12は、クランク軸20の一端側に固定されるクランク軸用歯車19と噛み合い、下位体のリングギア103に噛み合うピニオン17が固定される第2入出力軸14は、キャリア21の基部キャリア23に一体形成される。このため、第1入出力軸12とピニオン17との間の駆動力伝達経路において、高い増速比を容易に確保することができるとともに、定格回転数が高速の6000rpm以上10000rpm以下の範囲に設定された電動発電機10に対して高速の回転を入力することができる。そして、ピニオン17から第1入出力軸12に駆動力が伝達される際の増速比が60以上110以下に設定されることで、電動発電機10における回生能力を十分に高い水準まで効率よく高めることができる。
【0048】
また、旋回駆動装置1によると、歯の噛み合い部分やスプライン結合部としては、入出力ギア部12a及びクランク軸用歯車19の間と、第1スプライン結合部16と、クランク軸20及び外歯歯車22の間と、外歯歯車22及びピン内歯15の間と、第2スプライン結合部18とが存在し、相当に少ない箇所のみに存在する構成となる。そして、上記の箇所によって規定される第1入出力軸12からピニオン17までの間のバックラッシュ量の合計が、0.25度以上0.50度以下の範囲に設定されることで、駆動効率の低下を抑制しつつ、バックラッシュを十分に低減することができる。これにより、旋回動作の停止時における揺り戻しの発生による揺動範囲を小さくすることができ、操縦者が所望の箇所に旋回体102の先端部のバケット106を停止させる操作を容易に行うことができる。
【0049】
従って、本実施形態によると、高い増速比を確保して電動発電機10に高速の回転を入力することができるとともに、操縦者が所望の箇所に旋回体102の先端部を容易に停止させる操作を行うことができて操作性の向上を図ることができるハイブリッド建機用旋回駆動装置1を提供することができる。
【0050】
また、旋回駆動装置1によると、支柱25の側面に凹み部分25aが設けられ、外歯歯車22(22a、22b)における支柱貫通孔46の側面部分46aが支柱25の凹み部分25aに沿って張り出す部分として設けられる。このため、支柱貫通孔46の張り出した部分に対応させてクランク軸20の径方向の寸法を大きく設定することができる。そして、クランク軸20が大径化されることによりクランク軸20の耐久性が向上する。一方、支柱25の側面に設けられる凹み部分25aは、キャリア21の径方向における支柱の中央部分の内側に偏った位置に設けられるため、旋回駆動装置1のねじり剛性に対する影響を小さくすることができる。このように、旋回駆動装置1全体として、ねじり剛性を維持しながら耐久性の向上を図ることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施することができる。
【0052】
(1)本実施形態では、ショベル機として構成されたハイブリッド建設機械において用いられる場合を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、ショベル機以外のハイブリッド建設機械において用いられるものであってもよい
【0053】
(2)また、クランク軸やキャリア等については、種々形態を変更して実施することができる。例えば、クランク軸が回転中心線上に配置されたセンタクランクタイプのハイブリッド建機用旋回駆動装置に本発明が適用されてもよい。また、基部キャリアと端部キャリアとを連結する支柱は、基部キャリアに一体に形成されていなくてもよく、基部キャリアとは別部材として形成されていてもよい。また、クランク軸及び支柱の数は、本実施形態とは異なっていてもよい。また、クランク軸の偏心部の個数や外歯歯車の枚数については、2つでなくてもよい。また、クランク軸用歯車については、スパーギアとして構成されていなくてもよく、例えば、ヘリカルギアとして構成されていてもよい。