特許第5693957号(P5693957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5693957-HCV/GBV−Bキメラウイルス 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693957
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】HCV/GBV−Bキメラウイルス
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20150312BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20150312BHJP
   C12N 7/00 20060101ALI20150312BHJP
   A01K 67/027 20060101ALI20150312BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K19/00
   C12N7/00
   A01K67/027
   C12N5/00 102
【請求項の数】18
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2010-520878(P2010-520878)
(86)(22)【出願日】2009年7月15日
(86)【国際出願番号】JP2009062786
(87)【国際公開番号】WO2010008010
(87)【国際公開日】20100121
【審査請求日】2012年5月29日
(31)【優先権主張番号】特願2008-184179(P2008-184179)
(32)【優先日】2008年7月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399115851
【氏名又は名称】株式会社先端生命科学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088546
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英次郎
(72)【発明者】
【氏名】槇 昇
(72)【発明者】
【氏名】森 健一
(72)【発明者】
【氏名】深井 浩未
【審査官】 馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/036879(WO,A1)
【文献】 LEMM J. A. et al.,Replication-competent chimeric hepatitis C virus subgenomic replicons,Intervirology,2005年,Vol.48,p.183-91
【文献】 LOHMANN V. et al.,Viral and cellular determinants of hepatitis C virus RNA replication in cell culture,J Virol.,2003年,Vol.77,p.3007-19
【文献】 LINDSTROM H. et al.,Mutations of the Hepatitis C virus protein NS4B on either side of the ER membrane affect the efficie,Virus Res.,2006年,Vol.121,p.169-78
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
A01K 67/027
C07K 19/00
C12N 5/10
C12N 7/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C型肝炎ウイルスのRNA及びGBウイルス−BのRNAを含むHCV/GBV−BキメラRNAであって、前記C型肝炎ウイルスのRNAが、C型肝炎ウイルスのポリプロテインのアミノ酸配列における第1804番のロイシン及び第1966番のリジンを含むNS4Bタンパク質をコードするRNAを含み、かつ、
(A)C型肝炎ウイルスの、5’非翻訳領域のRNAを含むHCV−5’側RNA、
(B)GBウイルス−Bの、E1タンパク質及びE2タンパク質をコードするRNAを含むGBV−B−RNA、並びに
(C)C型肝炎ウイルスの、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードするRNA、並びに3’非翻訳領域のRNAを含むHCV−3’側RNA、
を含み、前記HCV−5’側RNA(A)及びHCV−3’側RNA(C)の間に、GBV−B−RNA(B)が挿入される、HCV/GBV−BキメラRNA。
【請求項2】
前記HCV−5’側RNA(A)が、5’非翻訳領域のRNA及びコアタンパク質の一部又は全部をコードするRNAを含み、
前記GBV−B−RNA(B)が、コアタンパク質の一部、E1タンパク質、E2タンパク質、及びp6タンパク質をコードするRNAを含み、
前記HCV−3’側RNA(C)が、p7タンパク質、NS2タンパク質、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードするRNA、並びに3’非翻訳領域のRNAを含む、
請求項1に記載のHCV/GBV−BキメラRNA。
【請求項3】
前記HCV−5’側RNA(A)及び前記HCV−3’側RNA(C)が、それぞれ、配列番号57で示される塩基配列の相当する領域の塩基配列、又は該塩基配列と95%以上の相同性を有する塩基配列を有し、霊長類の肝臓細胞内で増殖可能なウイルス粒子をコードする請求項1又は2記載のHCV/GBV−BキメラRNA。
【請求項4】
前記GBV−B−RNA(B)が、コアタンパク質の全部、E1タンパク質、E2タンパク質、及びp6タンパク質をコードするRNAを含み、
前記HCV−3’側RNA(C)が、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードするRNA、並びに3’非翻訳領域のRNAを含む、
請求項1に記載のHCV/GBV−BキメラRNA。
【請求項5】
C型肝炎ウイルスのRNA及びGBウイルス−BのRNAを含むHCV/GBV−BキメラRNAであって、前記C型肝炎ウイルスのRNAが、C型肝炎ウイルスのポリプロテインのアミノ酸配列における第1804番のロイシン及び第1966番のリジンを含むNS4Bタンパク質をコードするRNAを含み、かつ、
(A)C型肝炎ウイルスの、5’非翻訳領域のRNA並びにコアタンパク質及びE1タンパク質の一部をコードするRNAを含むHCV−5’側RNA、
(B)GBウイルス−Bの、E1タンパク質の一部及びE2タンパク質をコードするRNAを含むGBV−B−RNA、並びに
(C)C型肝炎ウイルスの、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードするRNA、並びに3’非翻訳領域のRNAを含むHCV−3’側RNA、
を含み、前記HCV−5’側RNA(A)及びHCV−3’側RNA(C)の間に、GBV−B−RNA(B)が挿入され、前記HCV−5’側RNA(A)によりコードされるE1タンパク質の一部は、E1タンパク質のN末端側の一部分であり、前記GBV−B−RNA(B)によりコードされるE1タンパク質の一部は、E1タンパク質のC末端側の一部分であり、これらの両方の部分の融合によりE1タンパク質の全長がカバーされる、HCV/GBV−BキメラRNA。
【請求項6】
前記HCV−5’側RNA(A)によりコードされるE1タンパク質の一部は、E1タンパク質のN末端から30アミノ酸以下の領域である請求項5記載のHCV/GBV−BキメラRNA。
【請求項7】
前記HCV−3’側RNA(C)が、p7タンパク質、NS2タンパク質、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードするRNA、並びに3’非翻訳領域のRNAを含む、請求項4又は5記載のHCV/GBV−BキメラRNA。
【請求項8】
前記HCV−5’側RNA(A)及び前記HCV−3’側RNA(C)が、それぞれ、配列番号57で示される塩基配列の相当する領域の塩基配列、又は該塩基配列と95%以上の相同性を有する塩基配列を有し、前記GBV−B−RNA(B)が、配列番号99で示される塩基配列の相当する領域の塩基配列、又は該塩基配列と95%以上の相同性を有する塩基配列を有し、霊長類の肝臓細胞内で増殖可能なウイルス粒子をコードする請求項4〜7のいずれか1項に記載のHCV/GBV−BキメラRNA。
【請求項9】
配列番号55で表される塩基配列からなるRNAである、請求項2記載のHCV/GBV−BキメラRNA。
【請求項10】
配列番号93、95若しくは97で表される塩基配列、又はこれらの塩基配列と95%以上の相同性を有する塩基配列を含み、霊長類の肝臓細胞内で増殖可能なウイルス粒子をコードする請求項5記載のHCV/GBV−BキメラRNA。
【請求項11】
配列番号93、95又は97で表される塩基配列からなるRNAである、請求項10記載のHCV/GBV−BキメラRNA。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のHCV/GBV−BキメラRNAの相補的なHCV/GBV−Bマイナス鎖キメラRNA。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のHCV/GBV−BキメラRNAを含むHCV/GBV−Bキメラウイルス。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のHCV/GBV−BキメラRNAをコードする、HCV/GBV−BキメラDNA。
【請求項15】
請求項14に記載のDNAを含むベクター。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のRNA又は請求項14に記載のDNAから翻訳されるHCV/GBV−Bキメラタンパク質。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のHCV/GBV−BキメラRNAを含む、HCV/GBV−BキメラRNA複製細胞。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のHCV/GBV−BキメラRNA、又は請求項13に記載のHCV/GBV−Bキメラウイルスを接種された非ヒト動物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎ウイルス(以下「HCV」と称することがある)とGBウイルスB(以下「GBV−B」と称することがある)のキメラRNA及びそのキメラRNAを含むキメラウイルスに関する。
【背景技術】
【0002】
HCVはC型慢性肝炎の原因因子であり、WHOの統計によれば、世界中で1.7億人の感染者がいると推定されている。HCVは、フラビウイルス科、フラビウイルス属に分類されるウイルスであり、血液や血液成分を介して感染し、肝臓で増殖すると考えられている。HCVの感染者は、感染初期においては比較的軽微な症状を引き起こすのみであるが、高頻度に慢性化し、一定期間の無症候性期を経た後、慢性肝炎を発症する。そして感染が長期化するに従って、肝硬変へと病状が増悪化し、高い頻度で肝がんに至る。肝がんの95%は肝炎ウイルスが関与しており、その80%がHCVの感染によると考えられている。
【0003】
HCVは約9600塩基のプラス鎖RNAをゲノムとして持ち、遺伝子配列の解析から、少なくとも6種類の遺伝子型が存在していると推定されている。約9600塩基のゲノムは、感染後、宿主細胞内でmRNAとして機能し、約3000アミノ酸長の一つながりのポリプロテインが合成され、宿主のシグナルペプチダーゼ、シグナルペプチジルペプチダーセ、及びHCVゲノムがコードするプロテアーゼにより切断される。その結果core(コア)、E1、E2、p7、NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、NS5Bの10種類のタンパク質が産生される。この翻訳枠(オープンリーディングフレーム)以外に、5’末端、3’末端に非翻訳領域(UTR)が存在し、翻訳調節、ゲノムの複製調節機能を担っている。
【0004】
このうちコア、E1及びE2はウイルスを構成する構造タンパク質であり、ウイルスゲノムはコア蛋白によりパッケージされ、キャプシドを形成し、脂質二重膜にアンカーしたE1、E2外皮蛋白によって取り囲まれ、ウイルス粒子(ビリオン)を形成すると考えられている。p7についてはその機能は明らかではないが、ウイルスの増殖に必須であることが報告されている。NS2はメタルプロテアーゼであり、それ自身の切断に必要であるが、それ以外の機能については分かっていない。NS3からNS5Bは複合体を形成し、宿主タンパク質とともに、RNA複製装置を形成し、ゲノムRNAの複製を行うと考えられている。
【0005】
C型慢性肝炎の治療には、広くインターフェロンが用いられている。近年、インターフェロンの剤型の改良や、インターフェロンとリバビリンとの併用療法などの投与方法の改善により、HCVが体内から駆除され、完治する割合も徐々に増加してきている。しかしながら、未だにインターフェロン投与による完治率は5割程度であり、インターフェロン投与による重篤な副作用や高齢者などに適応出来ない症例が多く、HCVに効果的な治療法や薬剤の開発が望まれている。
【0006】
HCVは、ヒトでは血液又は血液成分を介して感染するが、ヒト以外の生物では、類人猿(チンパンジー)に感染し、感染により肝炎を発症し慢性肝炎に至る場合もある。しかしながら、飼育が容易な小型の実験動物では、HCVに高率に感染するものは知られていない。
【0007】
一方、急性肝炎を発症した外科医から採取した血清を小型霊長類のタマリンに接種すると肝炎を誘発することが判明した。この原因不明の輸血性肝炎サルの血液を、分子生物学的手法で解析することにより、2種類のウイルスであるGBV−A、及びGBV−Bが同定された(非特許文献1)。このうち、GBV−Bは分子構造的にHCVに最も近縁であり、新世界ザルのタマリンやマーモセットに感染し肝炎を誘発することが分かった(非特許文献2)。HCVは感染宿主域が狭く、適当な動物モデルが無いため、GBV−Bとタマリンの動物モデルは、HCVの感染増殖の代替モデルとして利用可能と考えられている。しかしながら、GBV−BはHCVとの構造的類似性は確認されているものの、HCVとのアミノ酸相同性は約28%と低く、HCVに特異的に作用する薬剤の開発及び評価系として、GBV−Bとタマリンの動物モデルをそのまま用いても、HCVに特異的に作用する薬剤をスクリーニングすることはできない。
【0008】
GBV−Bを用いたHCVの動物モデルを構築するため、GBV−B遺伝子をベースとして、GBV−B遺伝子の一部の遺伝子を、対応するHCV遺伝子と置換したり、GBV−B遺伝子に一部のHCV遺伝子を挿入して、HCV/GBV−Bキメラウイルスを作製する試みが行われている。Rijnbrandらは、GBV−Bの5’UTRの一部を対応するHCVの5’UTRに置換えて、タマリンに感染可能であることを示した(非特許文献3)。また、Haqshenasらは、GBV−Bの外皮蛋白E2の高可変領域1(HVR1)にHCVのHVR1を挿入したキメラウイルスを作製し、マーモセットでの感染を確認した(非特許文献4)。しかしながら、これらのキメラウイルスは、大部分がGBV−B遺伝子であり、HCVとしての複製機能を有していない。従って、これらのキメラウイルスは、HCV治療薬の開発に有用であるとは言えない。
【0009】
【特許文献1】WO 2008/136470 A1
【非特許文献1】「ジャーナル・オブ・ヴィロロジー(Journal of Virology)」(米国)1995年、第69巻、p5621−5630
【非特許文献2】「ヴィロロジー(Virology)」(米国)1999年、第262巻、p470−478
【非特許文献3】「ヘパトロジー(Hepatology)」(米国)2005年、第41巻、p986−994
【非特許文献4】「ジャーナル・オブ・ジェネラル・ヴィロロジー(Journal of General Virology)」(英国)2007年、第88巻、p895−902
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
HCVは、チンパンジー以外には、感染し増殖する動物モデルが存在しないため、効率的に薬剤の開発を行うことが困難であった。また、チンパンジーは動物保護法の適用により、動物実験に使用することが禁じられている。このような理由から、現在広く用いられているインターフェロン治療は、患者を被検体として直接治療法が開発、改良されてきており、患者に多大な負担を強いてきた。そのため、前臨床試験での小型の動物モデルを用いた医薬品の開発や評価が重要となっている。一方、小型霊長類のタマリンに感染するGBV−Bは、遺伝子構造がHCVに類似し、肝炎症状を誘発することから、HCVの動物モデルとして期待されている。本発明の目的は、HCV治療薬の開発や評価系に用いることのできるHCV動物モデルを構築するために、HCVの複製機能を維持し、タマリン又はマーモセットに感染することのできるHCV/GBV−Bキメラウイルスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、HCVに特異的及び効果的に作用する薬剤の開発に使用することのできるHCV/GBV−Bキメラウイルスについて鋭意研究を行い、C型肝炎ウイルスのポリプロテインのアミノ酸配列における第1804番のロイシン及び第1966番のリジンを含むNS4Bタンパク質をコードするRNAを含むHCVのRNAと、GBV−BのRNAとを連結することによって、HCVとしての複製機能を維持し、そしてタマリンやマーモセットに持続感染し、増殖することのできるHCV/GBV−BキメラRNAを作製した。
このHCV/GBV−BキメラRNAの、ヒト肝がん由来細胞株における複製効率は、親株のHCVの複製効率と比較して上昇していた。すなわち、本発明者は、得られたHCV/GBV−BキメラRNAが、HCVの複製機能を充分維持していることを見出した。
更に、このHCV/GBV−BキメラRNAをマーモセットの初代肝細胞に導入したところ、HCV/GBV−BキメラRNAは細胞内で自律的に増殖し、細胞上清中にコア蛋白を持続的に放出した。すなわち、本発明者は、HCV/GBV−BキメラRNAをマーモセットの初代肝細胞にトランスフェクションすることで、再感染可能なHCV/GBV−Bキメラウイルスを産生できることを見出した。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
【0012】
従って、本発明はC型肝炎ウイルスのRNA及びGBウイルス−BのRNAを含むHCV/GBV−BキメラRNAであって、前記C型肝炎ウイルスのRNAが、C型肝炎ウイルスのポリプロテインのアミノ酸配列における第1804番のロイシン及び第1966番のリジンを含むNS4Bタンパク質をコードするRNAを含み、かつ、
(A)C型肝炎ウイルスの、5’非翻訳領域のRNAを含むHCV−5’側RNA、
(B)GBウイルス−Bの、E1タンパク質及びE2タンパク質をコードするRNAを含むGBV−B−RNA、並びに
(C)C型肝炎ウイルスの、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードするRNA、並びに3’非翻訳領域のRNAを含むHCV−3’側RNA、
を含み、前記HCV−5’側RNA(A)及びHCV−3’側RNA(C)の間に、GBV−B−RNA(B)が挿入される、HCV/GBV−BキメラRNAを提供する。
本発明はまた、C型肝炎ウイルスのRNA及びGBウイルス−BのRNAを含むHCV/GBV−BキメラRNAであって、前記C型肝炎ウイルスのRNAが、C型肝炎ウイルスのポリプロテインのアミノ酸配列における第1804番のロイシン及び第1966番のリジンを含むNS4Bタンパク質をコードするRNAを含み、かつ、
(A)C型肝炎ウイルスの、5’非翻訳領域のRNA並びにコアタンパク質及びE1タンパク質の一部をコードするRNAを含むHCV−5’側RNA、
(B)GBウイルス−Bの、E1タンパク質の一部及びE2タンパク質をコードするRNAを含むGBV−B−RNA、並びに
(C)C型肝炎ウイルスの、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードするRNA、並びに3’非翻訳領域のRNAを含むHCV−3’側RNA、
を含み、前記HCV−5’側RNA(A)及びHCV−3’側RNA(C)の間に、GBV−B−RNA(B)が挿入され、前記HCV−5’側RNA(A)によりコードされるE1タンパク質の一部は、E1タンパク質のN末端側の一部分であり、前記GBV−B−RNA(B)によりコードされるE1タンパク質の一部は、E1タンパク質のC末端側の一部分であり、これらの両方の部分の融合によりE1タンパク質の全長がカバーされる、HCV/GBV−BキメラRNAを提供する。
また、本発明は、前記HCV/GBV−BキメラRNAの相補的なHCV/GBV−Bマイナス鎖キメラRNAに関する。
また、本発明は、前記HCV/GBV−BキメラRNAを含むHCV/GBV−Bキメラウイルスに関する。
また、本発明は、前記HCV/GBV−BキメラRNAをコードする、HCV/GBV−BキメラDNAに関する。
また、本発明は、前記RNA又は請求項7に記載のDNAから翻訳されるHCV/GBV−Bキメラタンパク質に関する。
また、本発明は、前記HCV/GBV−BキメラRNAを含む、HCV/GBV−BキメラRNA複製細胞に関する。
また、本発明は、前記HCV/GBV−BキメラRNA、又は前記HCV/GBV−Bキメラウイルスを接種された非ヒト動物に関する。
本明細書において、HCV/GBV−Bキメラ遺伝子は、HCV/GBV−BキメラRNA及びHCV/GBV−BキメラDNAを意味する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のHCV/GBV−BキメラRNAによれば、ヒト肝臓由来細胞において、in vitroで高い効率で複製することのできるレプリコンRNAを提供することが可能である。更に、マーモセットの初代肝細胞において自律的に複製し、持続感染及び再感染可能なHCV/GBV−Bキメラウイルス粒子を産生することができる。
本発明のHCV/GBV−Bキメラウイルスを用いることにより、小型霊長類であるタマリンやマーモセットを用いたHCV動物モデルを構築することができる。そして、この動物モデルを利用することにより、HCVの基礎研究はもとより、肝炎の重症化を抑制、又は阻害する医薬品の開発や評価を行うことができ、より有効な感染の予防薬及び治療薬の開発及び評価が可能となる。
また、本発明は、このHCV/GBV−Bキメラ遺伝子が複製する細胞を提供する。このHCV/GBV−Bキメラ遺伝子が複製している細胞のHCV/GBV−Bキメラ複製系を用いて、HCVの増殖を抑制する薬剤のスクリーニングができる。また、動物モデルはスクリーニングされた薬剤の効果を評価する方法としても有効である。この場合、薬剤の評価をこの方法で行うことが重要であり、薬剤の管理に必須であれば、薬剤を製造する方法としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のHCV/GBV−BキメラRNAをHuh−7細胞にトランスフェクションし、4時間、24時間、48時間、72時間後の上清中のHCVのコアタンパク質の濃度を測定した図である。
図2】本発明のHCV/GBV−BキメラRNAを、タマリンの初代肝細胞にトランスフェクションし、上清中のHCVのコアタンパク質の濃度を測定した図である。
図3】本発明のin vitro合成HCV/GBV−Bキメラウイルスを、タマリンの初代肝細胞に感染させ、上清中のHCVゲノム数を測定した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のHCV/GBV−BキメラRNAは、C型肝炎ウイルスのRNA及びGBウイルス−BのRNAが連結したものであり、C型肝炎ウイルスのポリプロテインのアミノ酸配列における第1804番のロイシン及び第1966番のリジンを含むNS4Bタンパク質をコードするRNAを含む。本発明のHCV/GBV−BキメラRNAは、タマリンやマーモセット等の霊長類哺乳動物の肝臓細胞中で増殖可能なウイルス粒子をコードするものである。
第1804番のロイシン及び第1966番のリジンのそれぞれのアミノ酸番号は、3010個のアミノ酸からなるC型肝炎ウイルスの全長のポリプロテインにおけるアミノ酸番号を示している。第1804番のロイシン及び第1966番のリジンは、NS4Bタンパク質に含まれるアミノ酸である。本発明者らは、先にこれらのアミノ酸をコードする塩基配列を含むC型肝炎ウイルスのRNAを報告した(特許文献1)が、それまで、これらのアミノ酸を含むNS4Bタンパク質は報告されていなかった。従って、これらのアミノ酸を含むHCVポリプロテイン、これらのアミノ酸をコードするポリヌクレオチドを含むRNAレプリコンも報告されていなかった。
【0016】
前記HCVのポリプロテインは、例えば、3010個のアミノ酸からなる遺伝子型1bのC型肝炎ウイルスにおいては、第1番目〜第191番目のアミノ酸配列からなるコアタンパク質、第192番目〜第383番目のアミノ酸配列からなるE1タンパク質、第384番目〜第746番目のアミノ酸配列からなるE2タンパク質、第747番目〜第809番目のアミノ酸配列からなるp7タンパク質、第810番目〜第1026番目のアミノ酸配列からなるNS2タンパク質、第1027番目〜第1657番目のアミノ酸配列からなるNS3タンパク質、第1658番目〜第1711番目のアミノ酸配列からなるNS4Aタンパク質、第1712番目〜第1972番目のアミノ酸配列からなるNS4Bタンパク質、第1973番目〜第2419番目のアミノ酸配列からなるNS5Aタンパク質、又は第2420番目〜第3010番目のアミノ酸配列からなるNS5Bタンパク質からなる。本明細書において、HCVのポリプロテインは、HCVのRNAから翻訳される一つながりのタンパク質を意味し、例えば遺伝子型1bのHCVにおいては、3010アミノ酸からなるタンパク質である。
【0017】
本発明のHCV/GBV−BキメラRNAは、3010個のアミノ酸からなるC型肝炎ウイルスの全長のポリプロテインにおける第1804番のロイシン及び第1966番のリジンをコードするポリヌクレオチドを含むことにより、ヒト肝臓由来の細胞で複製することができ、且つマーモセットの初代肝細胞において自律的に複製し、再感染可能なHCV/GBV−Bキメラウイルス粒子を産生することができる。
【0018】
HCV/GBV−BキメラRNAは、更に、キメラRNAの複製及び感染を実質的に阻害しないRNAを含むことができる。例えば、選択マーカー遺伝子、リポーター遺伝子、又はIRES配列を含むことができる。
【0019】
本発明のHCV/GBV−BキメラRNAは、前記第1804番のロイシン及び第1966番のリジンをコードするポリヌクレオチドを含み、かつ、HCVの5’側RNA、GBV−B−RNA、及びHCVの3’側RNAの3つの部分を含み、好ましくは、配列番号55で表される塩基配列からなるキメラRNAである。
(A)HCVの5’側RNA
HCVの5’側のRNAは、少なくともHCVの5’非翻訳領域のRNAを含む。更に、HCVのコアタンパク質の一部又は全部をコードするRNAを含むことができる。
HCVの遺伝子においては、例えば、一般的な遺伝子型1bのHCV遺伝子は、5’非翻訳領域のRNA(第1番〜第341番:以下、5’UTRと称することがある)と、それに続いて、前記のウイルス構造タンパク質であるコアタンパク質をコードするRNA(第342番〜第914番)、E1タンパク質をコードするRNA(第915番〜第1490番)、及びE2タンパク質をコードするRNA(第1491番〜第2579番)、並びに非構造タンパク質であるp7タンパク質をコードするRNA(第2580番〜第2768番)、NS2タンパク質をコードするRNA(第2769番〜第3419番)、NS3蛋白をコードするRNA(第3420番〜第5312番)、NS4Aタンパク質をコードするRNA(第5313番〜第5474番)、NS4Bタンパク質をコードするRNA(第5475番〜第6257番)、NS5Aタンパク質をコードするRNA(第6258番〜第7598番)、及びNS5Bタンパク質をコードするRNA(第7599番〜第9371番)と、更に3’非翻訳領域のRNA(第9372番以降:以下、3’UTRと称することがある)とからなっている。
【0020】
5’UTRは、遺伝子型1bのC型肝炎ウイルス遺伝子においては、通常341ヌクレオチドからなり、HCVの5’側のRNAは、その全長のヌクレオチド配列を含むことが好ましい。
また、コアタンパク質をコードするRNAは、第342番〜第914番の573個のヌクレオチドからなり、HCVの5’側のRNAは、その全部又は一部のヌクレオチドを含むことができる。
HCVの5’側RNAの塩基配列は、特に限定されるものではないが、配列番号55の相当する領域の塩基配列に対して、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を有する。HCV/GBV−BキメラRNAは、HCVの5’側RNAを含むことにより、5’UTRのRNA又はコアタンパク質をコードするRNAの機能を阻害する薬剤をスクリーニングすることができる。
【0021】
(B)GBV−B−RNA
GBV−B−RNAは、少なくともE1タンパク質をコードするRNA、E2タンパク質をコードするRNAを含むことが好ましい。更に、コアタンパク質をコードするRNAの一部又は全部、及び/又はp6タンパク質をコードするRNAの一部又は全部を含むことができる。
GBV−Bの遺伝子は、5’非翻訳領域のRNA(第1番〜第445番:以下、5’UTRと称することがある)と、それに続いて、ウイルスの構造タンパク質であるコアタンパク質をコードするRNA(第446番〜第913番)、E1タンパク質をコードするRNA(第914番〜第1489番)、及びE2タンパク質をコードするRNA(第1490番〜第2284番)、並びに非構造タンパク質であるp6タンパク質をコードするRNA(第2285番〜第2452番)、p7タンパク質をコードするRNA(第2453番〜第2641番)、NS2タンパク質をコードするRNA(第2642番〜第3265番)、NS3蛋白をコードするRNA(第3266番〜第5125番)、NS4Aタンパク質をコードするRNA(第5126番〜第5290番)、NS4Bタンパク質をコードするRNA(第5291番〜第6034番)、NS5Aタンパク質をコードするRNA(第6035番〜第7267番)、及びNS5Bタンパク質をコードするRNA(第7268番〜第9037番)と、更に3’非翻訳領域のRNA(第9038番以降:以下、3’UTRと称することがある)とからなっている。HCVの遺伝子との構造上の違いは、GBV−Bがp6タンパク質をコードする領域を有していることである。
【0022】
GBV−BのE1タンパク質をコードするRNAは、第914番〜第1489番の576個のヌクレオチドからなり、その全長のヌクレオチド配列を含むことが好ましい。E2タンパク質をコードするRNAは、第1490番〜第2284番の795個のヌクレオチドからなり、その全長のヌクレオチドを含むことが好ましい。
E1タンパク質をコードするRNA、E2タンパク質をコードするRNAを含むことにより、HCV/GBV−BキメラRNAは、タマリン及びマーモセットなどの実験動物、又はこれらの動物由来の細胞に感染することが可能になる。
【0023】
また、コアタンパク質をコードするRNAは、第446番〜第913番の468個のヌクレオチドからなり、GBV−B−RNAは、その全部又は一部のヌクレオチドを含むことができる。
更に、p6タンパク質は、第2285番〜第2452番の168個のヌクレオチドからなり、GBV−B−RNAは、その全部又は一部のヌクレオチドを含むことができる。
GBV−B−RNAの塩基配列は、翻訳されたGBV−Bのタンパク質としての機能、すなわち、産生されたキメラウイルスがタマリン及びマーモセットなどの実験動物への感染能を有する限り、特に限定されない。
【0024】
(C)HCVの3’側RNA
HCVの3’側のRNAは、少なくともNS3タンパク質をコードするRNA、NS4Aタンパク質をコードするRNA、NS4Bタンパク質をコードするRNA、NS5Aタンパク質をコードするRNA、及びNS5Bタンパク質をコードするRNA、並びに3’非翻訳領域のRNAを含む。更に、HCVのp7タンパク質をコードするRNA、NS2タンパク質をコードするRNAを含むことができる。
p7タンパク質をコードするRNAは、第2580番〜第2768番の189個のヌクレオチドからなり、その全部又は一部のヌクレオチドを含むことができる。NS2タンパク質をコードするRNAは、第2769番〜第3419番の651個のヌクレオチドからなり、その全長のヌクレオチドを含むことができる。
NS3タンパク質をコードするRNAは、第3420番〜第5312番の1893個のヌクレオチドからなり、その全長のヌクレオチドを含むことが好ましい。
NS4Aタンパク質をコードするRNAは、第5313番〜第5474番の162個のヌクレオチドからなり、その全長のヌクレオチドを含むことが好ましい。
NS4Bタンパク質をコードするRNAは、第5475番〜第6257番の783個のヌクレオチドからなり、その全長のヌクレオチドを含むことが好ましい。
NS5Aタンパク質をコードするRNAは、第6258番〜第7598番の1341個のヌクレオチドからなり、その全長のヌクレオチドを含むことが好ましい。
NS5Bタンパク質をコードするRNAは、第7599番〜第9371番の1773個のヌクレオチドからなり、その全長のヌクレオチドを含むことが好ましい。
3’UTRのRNAは、第9372番以降のRNAであり、ウイルス株によってその長さは異なるが、通常41ヌクレオチドの可変領域、株により長さの異なるポリU領域、及び98ヌクレオチドの3’X領域からなる。HCVの3’側RNAは、その全長の3’UTRを含むことが好ましい。
【0025】
HCV/GBV−BキメラRNAは、コアをコードするRNAとして、HCVのコアをコードするRNA、GBV−BのコアをコードするRNA、又はHCVとGBV−BとのキメラのコアをコードするRNAを含むことができる。HCV/GBV−BキメラRNAから翻訳されるこれらのコアタンパク質は、HCV/GBV−Bキメラウイルス粒子に含まれることができる。
HCV/GBV−BキメラRNAは、GBV−Bのp6タンパク質をコードするRNAの全部又は一部、HCVのp7タンパク質をコードするRNAの全部又は一部、及び/又はNS2タンパク質をコードするRNAの全部又は一部を含むことができる。
【0026】
前記HCVの3’側RNAは、C型肝炎ウイルスのポリプロテインのアミノ酸配列における第1804番のロイシン及び第1966番のリジンをコードするRNAを含む。このアミノ酸は、NS4Bタンパク質に含まれており、この2つのアミノ酸配列をコードするRNAを含むこと、より好ましくは、この2つのアミノ酸配列を含むNS4BタンパクをコードするRNAを含むことにより、本発明のHCV/GBV−BキメラRNAは、マーモセットの初代肝細胞においてもRNAの複製、キメラウイルスの産生を行うことができると考えられる。
HCVの3’側RNAの塩基配列は、特に限定されるものではないが、配列番号55の相当する領域の塩基配列に対して、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を有する。
【0027】
更に、HCV/GBV−BキメラRNAは、HCVの3’側RNAを含むことにより、非構造タンパク質の機能を阻害する薬剤、3’UTRのRNAの機能を阻害する薬剤をスクリーニング又は評価することができる。
【0028】
本発明のHCV/GBV−BキメラRNAは、前記HCVの5’側RNA(A)、GBV−B−RNA(B)、及びHCVの3’側RNA(C)をその順番で結合したものである。すなわち、5’側RNA(A)、及びHCVの3’側RNA(C)の間にGBV−B−RNA(B)が挿入されたものである
【0029】
本発明において、HCV−RNAの遺伝子型は、特に限定されるものではないが、HCVの遺伝子型1bが好ましい。HCV遺伝子は、その塩基配列によって、少なくとも6種類の遺伝子型に分類することが可能であり、遺伝子型1bは遺伝子型1に属する亜型である。遺伝子型1bのHCVは、そのRNAの塩基配列から分類されるが、例えば、配列番号57の塩基配列に対して、90%以上の相同性を示す塩基配列からなるポリヌクレオチドを有するHCVが含まれる。
【0030】
本発明のHCV/GBV−BキメラRNAは、細胞内、例えば、ヒト肝細胞、タマリンの肝細胞、マーモセットの肝細胞で複製することも可能である。すなわち、レプリコンRNAとして機能することもできる。レプリコンRNAとして機能する場合、本発明のHCV/GBV−BキメラRNAは、タンパク質の鋳型となるプラス鎖RNA、すなわち、mRNAとして機能する。このプラス鎖RNAからマイナス鎖RNAが合成され、そのマイナス鎖RNAを鋳型として、プラス鎖RNAを合成することができる。本発明のHCV/GBV−Bマイナス鎖キメラRNAも、プラス鎖であるHCV/GBV−BキメラRNAの鋳型となる点で、有用である。
【0031】
本発明のHCV/GBV−Bキメラウイルスは、前記HCV/GBV−BキメラRNAを含み、前記HCV/GBV−Bキメラから翻訳されたウイルスを構成するいくつかのタンパク質を含むことができる。ウイルスを構成するタンパク質は、限定されるものではないが、例えば、HCVのコアタンパク質、HCVのコアタンパク質の一部とGBV−Bのコアタンパク質の一部からなるキメラコアタンパク質、GBV−BのE1タンパク質、及びE2タンパク質を挙げることができる。
【0032】
本発明のHCV/GBV−BキメラDNAは、前記HCV/GBV−BキメラRNAに対応するするDNAである限り、限定されるものではなく、例えば、HCV/GBV−BキメラRNAから逆転写酵素により合成された一本鎖のcDNA、その1本鎖cDNAとその相補鎖からなる二本鎖DNA、又はプラスミドに組み込まれた二本鎖DNAなどを挙げることができる。
【0033】
本発明のベクターは、前記HCV/GBV−BキメラDNAを含むベクターである。特に限定されるものではないが、例えば、プラスミドベクター、直鎖状2本鎖DNAベクター並びに、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクター等のウイルスベクターを挙げることができるが、好ましくはプラスミドベクターである。
【0034】
本発明のHCV/GBV−Bキメラタンパク質は、前記HCV/GBV−BキメラRNAから翻訳されたタンパク質であり、例えば、RNAのタンパク質をコードされた領域から翻訳される一本のキメラポリプロテイン(配列番号56)、又はHCVのコアタンパク質の一部とGBV−Bのコアタンパク質の一部からなるキメラコアタンパク質を挙げることができる。
【0035】
本発明のHCV/GBV−BキメラRNAは、任意の遺伝子工学的手法を用いて作製することができる。限定するものではないが、キメラRNAは、例えば、以下のような方法で作製することができる。
前記のHCV/GBV−BキメラRNAをコードするDNAを、常法によりクローニングベクターに挿入して、DNAクローンを作製する。得られたDNAをRNAプロモーターの下流に挿入して、レプリコンRNAを産生することのできるDNAクローンを作製する。より具体的には、例えば、劇症C型肝炎患者から単離されたTPF1クローン(特許文献1)のコア蛋白156番目からE2蛋白までを欠失した遺伝子を構築し、GBV−Bのコア蛋白124番目からp6蛋白までの遺伝子を化学合成し、HCVの欠失させた部分に挿入・連結し、HCV/GBV−Bキメラ遺伝子を構築することができる。前記RNAプロモーターは、プラスミドクローン中に含まれるものであることが好ましい。RNAプロモーターとしては、限定するものではないが、T7 RNAプロモーター、SP6 RNAプロモーター、SP3 RNAプロモーターが挙げられ、T7 RNAプロモーターが特に好ましい。
【0036】
本発明として、さらに以下のものを挙げることができる。
【0037】
すなわち、この態様(以下、便宜的に「E1融合型」と呼ぶことがある)では、HCV/GBV−BキメラRNAは、
(A)C型肝炎ウイルスの、5’非翻訳領域のRNA並びにコアタンパク質及びE1タンパク質の一部をコードするRNAを含むHCV−5’側RNA、
(B)GBウイルス−Bの、E1タンパク質の一部及びE2タンパク質をコードするRNAを含むGBV−B−RNA、並びに
(C)C型肝炎ウイルスの、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードするRNA、並びに3’非翻訳領域のRNAを含み、好ましくは、p7タンパク質、NS2タンパク質、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードするRNA、並びに3’非翻訳領域のRNAを含むHCV−3’側RNA、
を含む。そして、前記HCV−5’側RNA(A)及びHCV−3’側RNA(C)の間に、GBV−B−RNA(B)が挿入され、前記HCV−5’側RNA(A)によりコードされるE1タンパク質の一部は、E1タンパク質のN末端側の一部分であり、前記GBV−B−RNA(B)によりコードされるE1タンパク質の一部は、E1タンパク質のC末端側の一部分であり、これらの両方の部分の融合によりE1タンパク質の全長がカバーされる。
【0038】
E1融合型において、HCV−5’側RNA(A)中の5’非翻訳領域のRNA並びにコアタンパク質は、上記した通りであり、好ましくは配列番号57に示す塩基配列の相当する領域(すなわち、5’非翻訳領域のRNAは、配列番号57に示す塩基配列の第1番〜第341番、コアタンパク質コード領域は、配列番号57に示す塩基配列の第342番〜第914番)の塩基配列、又は該塩基配列と90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有する塩基配列であって、霊長類の肝臓細胞内で増殖可能なウイルス粒子を構築可能なものが好ましい。なお、塩基配列の「相同性」とは、比較すべき2つの塩基配列中の塩基ができるだけ多く一致するように両配列を整列させ、一致した塩基数を全塩基数で除したものを百分率で表したものである。上記整列の際には、必要に応じ、比較する2つの配列の一方又は双方に適宜ギャップを挿入する。このような配列の整列化は、例えばBLAST、FASTA、CLUSTAL W等の周知のプログラムを用いて行なうことができる。ギャップが挿入される場合、上記全塩基数は、1つのギャップを1つの塩基として数えた数となる。このようにして数えた全塩基数が、比較する2つの配列間で異なる場合には、相同性(%)は、長い方の配列の全塩基数で、一致した塩基数を除して算出される。
【0039】
E1融合型では、HCV−5’側RNA(A)は、E1タンパク質のN末端側の一部をコードする領域も含む。HCVのE1タンパク質は、上記の通り、配列番号57に示す塩基配列の第915番〜第1490番であるので、この配列の5’側の一部領域又はこれと90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有する塩基配列であって、タマリンやマーモセット等の霊長類の肝臓細胞内で増殖可能なウイルス粒子を構築可能なものが好ましい。ここで、E1タンパク質のN末端側の一部をコードする領域は、E1タンパク質のN末端から30アミノ酸以下の領域であることが霊長類肝臓細胞内での増殖性の観点から好ましい。下記実施例では、HCV−5’側RNA(A)により、E1タンパク質のN末端から11アミノ酸がコードされるv11−E12キメラRNA及び27アミノ酸がコードされるv27−E12キメラRNAを構築し、いずれもマーモセット初代肝臓細胞中での優れた増殖性が確認されている。
【0040】
続くGBウイルス−BのRNA(GBV−B−RNA)(B)は、E1タンパク質のC末端側の一部分と、E2タンパク質をコードする。なお、ここで、「C末端側の一部分」とは、HCV−5’側RNA(A)によりコードされるE1タンパク質の部分領域よりもC末端側という意味であり、好ましい態様では、E1タンパク質の大部分は、GBV−B−RNA(B)によりコードされる。GBV−B−RNAの全長の塩基配列を配列番号99、それによりコードされるアミノ酸配列を配列番号100に示す。配列番号99に示す塩基配列中、E1タンパク質コード領域は、第914番〜第1489番であり、E2タンパク質コード領域は、第1490番〜第2284番である。GBV−B−RNA(B)は、さらに、p6タンパク質もコードすることが好ましい。配列番号99に示す塩基配列中、p6タンパク質コード領域は、第2285番〜第2452番である。GBV−B−RNA(B)は、配列番号99に示す、相当する領域の塩基配列又はこれと90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有する塩基配列であって、霊長類の肝臓細胞内で増殖可能なウイルス粒子を構築可能なものが好ましい。
【0041】
E1融合型では、E1タンパク質は、HCV−5’側RNA(A)とGBV−B−RNA(B)の両者によりコードされるが、これらの両方の部分の融合によりE1タンパク質の全長がカバーされる。なお、両者によりコードされる領域は、一部重複してもよい。この場合、重複領域のサイズは、アミノ酸で1個〜24個程度が好ましい。例えば、下記実施例で作製したv11キメラ遺伝子では、HCV−5’側RNA(A)により、E1タンパク質のN末端から11アミノ酸がコードされ、一方、GBV−B−RNA(B)により、E1タンパク質のN末端から3番目のアミノ酸からコードされているのでアミノ酸8個分が重複している。同様に、v27では、HCV−5’側RNA(A)により、E1タンパク質のN末端から27アミノ酸がコードされ、一方、GBV−B−RNA(B)により、E1タンパク質のN末端から3番目のアミノ酸からコードされているのでアミノ酸24個分が重複している。
【0042】
続くHCV−3’側RNA(C)は、上記と同様であり、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードするRNA、並びに3’非翻訳領域のRNAを含み、好ましくは、p7タンパク質、NS2タンパク質、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードするRNA、並びに3’非翻訳領域のRNAを含む。上記の通り、p7タンパク質は、配列番号57に示す塩基配列中、p7タンパク質コード領域は第2580番〜第2768番であり、NS2タンパク質コード領域は第2769番〜第3419番であり、NS3蛋白コード領域は第3420番〜第5312番であり、NS4Aタンパク質コード領域は第5313番〜第5474番であり、NS4Bタンパク質コード領域は第5475番〜第6257番であり、NS5Aタンパク質コード領域は第6258番〜第7598番であり、及びNS5Bタンパク質コード領域は、第7599番〜第9371番であり、3’非翻訳領域のRNAは第9372番以降である。HCV−3’側RNA(C)は、配列番号57に示される塩基配列中のこれらの領域の塩基配列該塩基配列と90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有する塩基配列であって、霊長類の肝臓細胞内で増殖可能なウイルス粒子を構築可能なものが好ましい。
【0043】
なお、言うまでもなく、上記(A)(B)(C)の領域は、読み枠を合わせて連結され、それによりコードされるタンパク質は、タマリンやマーモセット等の霊長類の肝臓細胞内で増殖可能なウイルス粒子をコードするものである。E1融合型の好ましい具体例としては、下記実施例で構築したv11−E12キメラRNA(配列番号93)及びv27−E12キメラRNA(配列番号95)並びにこれらと好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有し、霊長類の肝臓細胞内で増殖可能なウイルス粒子をコードするものを挙げることができる。
【0044】
また、別の好ましい態様として、コアタンパク質の全部がGBV−B−RNAによりコードされるもの(以下、便宜的に「コアGB型」)と呼ぶことがある)を挙げることができる。すなわち、コアGB型では、
(A)C型肝炎ウイルスの、5’非翻訳領域のRNAを含むHCV−5’側RNA、
(B)GBウイルス−Bの、E1タンパク質及びE2タンパク質をコードするRNAを含むGBV−B−RNA、並びに
(C)C型肝炎ウイルスの、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードするRNA、並びに3’非翻訳領域のRNAを含み、好ましくは、p7タンパク質、NS2タンパク質、NS3タンパク質、NS4Aタンパク質、NS4Bタンパク質、NS5Aタンパク質及びNS5Bタンパク質をコードするRNA、並びに3’非翻訳領域のRNAを含むHCV−3’側RNA、
を含む。
【0045】
コアGB型において、HCV−5’側RNA(A)中の5’非翻訳領域のRNAは、上記したE1融合型の5’非翻訳領域のRNAと同様であり、その好ましいものもE1融合型の場合と同様である。
【0046】
コアGB型では、続くコアタンパク質が、GBV−B−RNA(B)によりコードされる。GBV−B−RNA中のコアタンパク質コード領域は、配列番号99に示される塩基配列中、第446番〜第913番であり、コアGB型のコアタンパク質コード領域は、配列番号99のこの領域の塩基配列又は該塩基配列と好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有し、霊長類の肝臓細胞内で増殖可能なウイルス粒子をコードするものが好ましい。
【0047】
続くE1タンパク質コード領域もその全長がGBV−B−RNA(B)によりコードされる。上記のとおり、配列番号99に示す塩基配列中、E1タンパク質コード領域は、第914番〜第1489番であり、E2タンパク質コード領域は、第1490番〜第2284番である。GBV−B−RNA(B)は、さらに、p6タンパク質もコードすることが好ましい。配列番号99に示す塩基配列中、p6タンパク質コード領域は、第2285番〜第2452番である。GBV−B−RNA(B)は、配列番号99に示す、相当する領域の塩基配列又はこれと90%以上、さらに好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有する塩基配列であって、霊長類の肝臓細胞内で増殖可能なウイルス粒子を構築可能なものが好ましい。
【0048】
E1タンパク質コード領域よりも下流の構造(HCV−3’側RNA(C)も含めて)は、上記したE1融合型と同様であり、上記したE1融合型についてのこれらの領域の説明がそのまま当てはまる。
【0049】
なお、言うまでもなく、上記(A)(B)(C)の領域は、読み枠を合わせて連結され、それによりコードされるタンパク質は、タマリンやマーモセット等の霊長類の肝臓細胞内で増殖可能なウイルス粒子をコードするものである。コアGB型の好ましい具体例としては、下記実施例で構築したC6キメラRNA(配列番号97)及びこれと好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有し、霊長類の肝臓細胞内で増殖可能なウイルス粒子をコードするものを挙げることができる。
【0050】
E1融合型やコアGB型も、上記と同様、任意の遺伝子工学的手法を用いて作製することができる。限定するものではないが、キメラRNAは、例えば、以下のような方法で作製することができる。
【0051】
前記のHCV/GBV−BキメラRNAをコードするDNAを、常法によりクローニングベクターに挿入して、DNAクローンを作製する。得られたDNAをRNAプロモーターの下流に挿入して、レプリコンRNAを産生することのできるDNAクローンを作製する。より具体的には、例えば、劇症C型肝炎患者から単離されたTPF1クローンを、それがコードするアミノ酸配列の1804番目がロイシン、1966番目がリジンになるように変異させたpTPF1/4B(特許文献1、配列番号57)中の、上記GBV−B−RNA(B)によりコードされる領域を欠失したDNAを構築し、一方、上記GBV−B−RNA(B)のDNAを化学合成し、HCVの欠失させた部分に挿入・連結し、HCV/GBV−BキメラDNAを構築することができる。前記RNAプロモーターは、プラスミドクローン中に含まれるものであることが好ましい。RNAプロモーターとしては、限定するものではないが、T7 RNAプロモーター、SP6 RNAプロモーター、SP3 RNAプロモーターが挙げられ、T7 RNAプロモーターが特に好ましい。なお、E1融合型及びコアGB型の好ましい例の具体的な構築方法は下記実施例に詳細に記載されている。
【0052】
本発明のHCV/GBV−BキメラRNAは、前記のDNAが挿入されたベクターから作製することが可能である。DNAクローンを鋳型として、RNAポリメラーゼによりRNAを合成する。RNA合成は、5’非翻訳領域から、常法により開始させることができる。鋳型DNAがプラスミドクローンの場合には、そのプラスミドクローンから、RNAプロモーターの下流に連結された前記DNA領域を制限酵素によって切り出し、そのDNA断片を鋳型として用いてRNAを合成することもできる。なお、好ましくは合成されるRNAの3’末端がウイルスゲノムRNAの3’非翻訳領域と一致し、他の配列が付加されたり削除されたりしないことが好ましい。例えば、本発明のHCV/GBV−BキメラRNAの1つの好ましい態様の場合は、HCVの5’UTRの上流にT7RNAプロモーター、3’UTR末端に制限酵素XhoI部位を有したベクターに挿入し、XhoI消化後、T7RNAポリメラーゼによりHCVゲノムRNAを合成することができる。
【0053】
本発明の複製細胞は、前記のHCV/GBV−BキメラRNAを任意の細胞に導入することによって作製することができる。HCV/GBV−BキメラRNAを導入する細胞としては、特に限定されないが、サル肝由来細胞、又はヒト肝由来細胞が好ましい。サル肝由来細胞としては、マーモセット初代肝細胞、又はタマリン初代肝細胞を挙げることができる。また、ヒト肝がん由来細胞としては、例えばHuh7細胞、HepG2細胞、又はHep3B細胞、あるいはIMY−N9細胞が挙げられ、その他のがん細胞としては、HeLa細胞、CHO細胞、COS細胞、Vero細胞、又は293細胞を挙げることができる。
【0054】
HCV/GBV−BキメラRNAの細胞内への導入は、任意のトランスフェクション法により行うことができる。そのような導入法としては、例えば、エレクトロポレーション、パーティクルガン法、リポフェクション法を挙げることができる。例えば、ヒト肝がん由来細胞株のHuh7細胞に導入する場合は、エレクトロポレーションが特に好ましい。サル肝由来細胞に導入する場合は、リポフェクション法が好ましい。
【0055】
前記複製細胞を用いることによって、C型肝炎ウイルスの感染を制御する物質をスクリーニングすることが可能である。「C型肝炎ウイルスの感染を制御」とは、例えば、HCVのRNAの複製の制御(例えば、促進又は抑制)、RNAからタンパク質への翻訳の制御(例えば、促進又は抑制)を意味する。
具体的には、複製細胞と試験物質を接触させ、HCV/GBV−BキメラRNAの増加度を分析することによって試験物質のスクリーニングを行うことができる。HCV/GBV−BキメラRNAの増加度とは、レプリコンRNAの複製の速度又は量の変化を意味する。具体的には、複製細胞中のHCV/GBV−BキメラRNAの量を検出又は測定し、対照の被検物質と接触しない複製細胞のHCV/GBV−BキメラRNAの量と比較することによって、被検物質をスクリーニングすることができる。また、細胞中又は上清中のC型肝炎ウイルスのタンパク質、GBV−Bのタンパク質、又はHCV/GBV−Bキメラタンパク質の量を検出又は測定し、対照の被検物質と接触しない複製細胞のそれと比較することによっても、被検物質をスクリーニングすることが可能である。スクリーニングにおいて検出又は測定することのできるC型肝炎ウイルスタンパク質は、特に限定されないが、好ましくは、コアタンパク質であり、市販のキットを用いてコアタンパク質を測定することも可能である。また、スクリーニング方法を自動化することによって、ハイスループットのスクリーニング方法に適応することも可能である。
【0056】
本発明の複製細胞は、HCV/GBV−BキメラRNA、HCV/GBV−Bキメラタンパク質、及びHCV/GBV−Bキメラウイルスを産生することができる。また、本発明の複製細胞におけるHCV/GBV−BキメラRNAの複製は、一過性の複製でも持続的な複製でもよい。更に、複製細胞によりHCV/GBV−Bキメラウイルスが産生される場合は、産生されたウイルスが細胞に再感染することもできる。
【0057】
本発明のHCV/GBV−BキメラRNA、又はHCV/GBV−Bキメラウイルスを実験動物に接種することにより、HCV感染のモデル動物を作成することができる。
非ヒトの実験動物としては、HCV/GBV−Bキメラウイルスが複製又は感染するものであれば、特に限定されないが、好ましくは小型霊長類であり、より好ましくはマーモセット又はタマリンである。
【0058】
HCV/GBV−BキメラRNAの実験動物への投与方法としては、特に限定されるものではないが、腹腔内、筋肉内、脊髄内、頭蓋内、静脈内、呼吸器内、経口投与、又は肝内投与を挙げることができ、肝内への直接投与が好ましい。また、HCV/GBV−Bキメラウイルスの実験動物への投与方法も、特に限定されるものではないが、腹腔内、筋肉内、脊髄内、頭蓋内、静脈内、呼吸器内、経口投与、又は肝内投与を挙げることができ、静脈内投与が好ましい。
【0059】
HCV/GBV−BキメラRNA及びHCV/GBV−Bキメラウイルスが、複製又は感染した実験動物を用いることによって、C型肝炎ウイルスの感染を制御する物質をスクリーニング、又は評価することが可能である。
例えば、実験動物に試験物質を投与し、HCV/GBV−Bキメラウイルスの増加度、肝炎の発症などを分析することによって試験物質のスクリーニング又は評価を行うことができる。
【0060】
《作用》
本発明のHCV/GBV−BキメラRNAに用いるHCVのRNAは、C型肝炎ウイルスのポリプロテインのアミノ酸配列における第1804番のロイシン及び第1966番のリジンを含むNS4Bタンパク質をコードするRNAを含む。一般的なHCVでは、第1804番のアミノ酸はグルタミンであり、第1966番のアミノ酸はグルタミン酸であるが、第1804番のロイシン及び第1966番のリジンと置換されることにより、RNAの複製効率が驚異的に上昇する。そのため、前記RNAを含むキメラウイルスは、タマリンの細胞、若しくは生体内、又はマーモセットの細胞若しくは生体内での複製及び増殖の効率が高いと考えられる。前記のHCVのRNAは、キメラウイルスでない場合でも、タマリンやマーモセットの細胞で複製することができると考えられるが、GBV−BのRNAとのキメラRNAとすることによって、複製効率又は感染効率が上昇すると考えられる。特に、第1804番のロイシン及び第1966番のリジンを含む、HCVの遺伝子型1bのRNAにおいて、複製効率が上昇すると考えられるため、キメラRNAに用いるHCVのRNAは、遺伝子型1bが好ましい。更に、本発明のHCV/GBV−BキメラRNA、又はHCV/GBV−Bキメラウイルスは、Huh−7の細胞における複製機能を有しており、HCVとしての複製機能を維持していると考えられる。そのため、本発明の非ヒト動物は、HCVの予防薬及び治療薬の開発するために有用である。
【実施例】
【0061】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0062】
参考例 高感染性HCV(pTPF1/4B)の構築(特許文献1、配列番号57)
【0063】
《参考例1:劇症C型肝炎ウイルス全長遺伝子の単離及び解析》
(A)血清からのRNAの抽出
劇症肝炎患者の急性期に採取した血清250μLより、High Pure Viral Nucleic Acid Kit (Roche diagnostics corporation)を用い、メーカーの推奨する方法に従い、RNAを精製した。
【0064】
(B)cDNAの合成及びPCRによるcDNAの増幅
精製したRNAにXR58Rプライマーを加え、SuperSucript II reverse transcriptase (Invitrogen社)により、メーカーの推奨する方法に従い、42℃、1時間逆転写反応を行わせ、cDNAを得た。得られた反応液にRNaseH(Invitrogen)を加え、37℃、30分反応させ、RNAを分解した。この反応液を、HC-LongA1プライマーと1b9405Rプライマー及びTakara LA Taq DNA polymerase (宝酒造)を用い、94℃、20秒、68℃、9分間からなる30回のサーマルサイクル反応によるポリメラーゼチェインリアクション(PCR)を行い、cDNAを増幅した。更に、得られた反応液の一部を、HC85FとHC9302Rプライマーを用いてPCRを行い、HCV cDNAを増幅した。
【0065】
(C)cDNAのクローニング
増幅したDNA断片は、0.7%アガロースゲルを用い電気泳動によって分離し、QIAquick gel purification kit (QIAGEN社)を用い、メーカーの推奨する方法に従って、DNA断片を回収した。回収したDNA断片は、pGEM-T easyベクター(Promega社)と連結反応させ、そのプラスミドによりDH5α株を形質転換した。アンピシリン耐性の形質転換体を選択し、2YT培地を用いて培養した。培養した菌体からWizard Plus SV Miniprep DNA Purification Systemを用いプラスミドを精製した。
【0066】
(D)塩基配列の決定
HCV cDNAの塩基配列は、HCVの遺伝子型1bの塩基配列に基づいて設計したプライマーを用い、決定した。CEQ DTCS Quick Start Kit(ベックマン・コールター)を用い、メーカーの推奨する方法に従い、反応を行い、CEQ2000 XL DNA analysis system (Software version 4.0.0、ベックマン・コールター)により解析した。得られたデータをSequencher (Version 4.1.2、Gene Codes Corporation)により解析した。得られたHCVクローンをpTPF1-0193と命名した。
【0067】
(E)5’非翻訳領域のcDNAの取得と塩基配列の決定
更に、前記の(A)の工程で得られたRNAより、5’RACE法により、5’非翻訳領域の末端のcDNAを取得した。5’RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends, Version2.0 (Invitrogen社)のキットを用い、添付の指示書に従って、実施した。
cDNA合成のためのアンチセンスプライマーは、Chiba-asを使用した。SuperScript II Reverse Transcriptase(Invitrogen)でcDNAを合成し、S.N.A.P columnで精製後、cDNAにTdT-tailing反応を行い、dCTPを付加した。キットに添付の5’RACE Abridged Anchorプライマー及びKY78プライマーでTakara LA Taq DNA polymerase(宝酒造)を用いて、1回目のPCRを行った。このPCR産物の一部を鋳型として、キットに添付のUTPプライマーとKM2プライマーで、Takara LA Taq DNA polymerase(宝酒造)を用いて2回目のPCRを行い、PCR産物を得た。このPCR産物をpGEM-T easyベクターにクローニングし、前記(D)の工程に従い、塩基配列を決定した。得られた配列における第1位から第709位までを含むHCV cDNAクローンをpTPF1-0007と命名した。
【0068】
(F)3’非翻訳領域のcDNAの取得と塩基配列の決定
前記の(A)の工程で得られたRNAより、3’RACE法により、3’非翻訳領域の末端のcDNAを取得した。まず、患者のRNAにPoly(A) Tailing Kit(Ambion)を用いて、添付の指示書に従い、Poly(A)を付加した。XR58Rプライマーの代わりにdT-Adpプライマーを、1st PCRのプライマーとして3UTR-1Fプライマー及びAdpプライマーを、2nd PCRのプライマーとしてXR58F及びAdpプライマーを用いた以外は、前記工程(B)〜(D)の操作を繰り返した。得られたHCV cDNAクローンを pTPF1-8994と命名した。
【0069】
得られたHCV株をTPF1株と命名した。TPF1株は、全長9594塩基のHCVであった。得られたTPF1株のポリヌクレオチドは、その342番から9374番の間に、3010個の一つながりのアミノ酸をコードする翻訳領域を有するものであった。
【0070】
《参考例2:サブジェノミックRNAレプリコンの作成》
C型肝炎ウイルスTPF1株の全長のポリヌクレオチドを、pBluescriptIISK(+)のT7 RNAプロモーター配列の下流に挿入した(以下、pTPF1と称する)。
【0071】
次に、pTPF1の構造タンパク質をコードする領域と非構造タンパク質をコードする領域の一部を、ネオマイシン耐性遺伝子(ネオマイシンリン酸転移酵素、NPT-II)及びEMCV-IRES(脳心筋炎ウイルスの内部リボゾーム結合部位)と入れ替えて、plasmid DNA pRepTPF1を構築した。この構築手順は、既報(Lohmann et al., Science, (1999) 285, p.110-113)に従った。
【0072】
具体的にはまずpTPF1を制限酵素AgeI及びBsrGIで切断し、その切断部位に、pTPF1由来の5’UTRからCore領域におよぶ配列とpcDNA3.1(+)由来のネオマイシン耐性遺伝子とをPCR増幅により増幅し制限酵素AgeIとPmeIで切断した断片、及びEMCV-IRESからNS3領域におよぶ配列をPCR増幅により結合し制限酵素PmeI及びBsrGIで切断した断片を連結挿入した。このplasmid DNA pRepTPF1をXbaIで切断したものを鋳型に、Megascript T7 kit (Ambion)を用いてRNAを合成した。メーカーの推奨する方法にてRNAを精製した。
【0073】
ヒト肝がん細胞(Huh7、JCRB0403)はDulbecco’s modified Eagle medium (D-MEM, IWAKI)に10%ウシ胎仔血清(FBS)、ペニシリンとストレプトマイシンをそれぞれ50 U/mL、50 μg/mLとなるように加えたものを培養液として、5%二酸化炭素付加、37℃で培養を行った。コンフルエントになる前の細胞をトリプシン、EDTA処理により培養皿から剥離させ、血清添加培地に再懸濁することによりトリプシンを不活化する。PBSで2回洗浄後、1.25% DMSOを添加したCytomix(120mM Potassium chloride、10mM Potassium phosphate、5mM Magnesium chloride、25mM HEPES、0.15mM Calcium chloride、2mMEGTA、pH7.6)に再懸濁し、ギャップ0.4 cmのエレクトロポレーションキュベットに移す。
【0074】
適当量のRNAを細胞に加えた後、5分間氷上で十分冷却する。エレクトロポレーター(Bio-Rad)で、960uF、250Vにてパルスを加える。直ちに8mLの培地に再懸濁し、一部をプレートに播く。一定時間培養した後、培養プレートにG418(ネオマイシン)を1mg/mLの濃度で添加した。その後、4日間隔で培養液を交換しながら培養を継続した。播種時から約20日間培養後の培養プレートから生存細胞のコロニーをクローン化し、培養を継続した。このようなコロニーのクローニングにより、pRepTPF1レプリコンRNAが自律複製している細胞を樹立することができた。レプリコンRNA複製の有無は、細胞性RNAに含まれる複製レプリコンRNAのコピー数を、定量的RT-PCR法にて解析した。
【0075】
マイナス鎖の定量方法
レプリコンRNAの自律複製が起こっていることは、細胞中にHCV RNAの5’UTR領域のマイナス鎖が検出できるか否かで調べた。マイナス鎖の特異的な定量法は特願平08−187097号公報に記載のマイナス鎖RNAの特異的検出法と同様の方法で行った。
pRepTPF-1を鋳型にin vitroで合成したRNAをエレクトロポレーションで導入した細胞から、有意な量のマイナス鎖が検出でき、細胞内においてレプリコンRNAが自律的に複製していることが確認された。
【0076】
《参考例3:適応変異の解析》
参考例2に従って、pRepTPF1を鋳型にin vitroで合成したRNAをHuh7細胞へトランスフェクションすることで樹立したレプリコンRNA複製細胞株から、ISOGEN(日本ジーン)を用いて、メーカーの推奨する条件に従い細胞内RNAを抽出した。
【0077】
この細胞内RNAから参考例1でTPF1より遺伝子を取得したのと同様の手順で、レプリコンRNAのほぼ全領域にわたるDNAを増幅した。具体的には、抽出した細胞内RNAを鋳型としてSuperSucript II reverse transcriptase (Invitrogen)とXR58RプライマーとによりレプリコンRNAに対するcDNAを合成した。
【0078】
このcDNAの一部をPCRにより増幅し、pGEM-T easyベクターにクローニングしたクローンの配列を決定したところ、塩基数5752番目のAがT、6237番目のGがAへの置換が認められた。その結果、アミノ酸番号1804に相当するアミノ酸がQ(グルタミン)からL(ロイシン)、アミノ酸番号1966に相当するアミノ酸がE(グルタミン酸)からK(リジン)へそれぞれ変異した。
【0079】
次に、前記のアミノ酸置換がレプリコンRNAの複製に及ぼす影響について検討した。まず、参考例2において作製したHCV RNAレプリコン pRepTPF1にアミノ酸番号1804(QからLへ)及びアミノ酸番号1906(EからKへ)の適応変異をQuick Mutagenesis Kit (Stratagene)を用いメーカーの推奨する方法に従い、導入した。このアミノ酸置換を導入したレプリコンRNAをpRep4Bと命名した。
【0080】
変異を引き起こす塩基配列を有しないpRepTPF1及びアミノ酸変異を有するpRep4Bのplasmid DNAをXbaIで切断したものを鋳型に、Megascript T7 kit (Ambion)を用いてRNAを合成した。メーカーの推奨する方法にてRNAを精製した。精製したそれぞれのRNAをHuh7細胞にトランスフェクションし、G418存在下で約20日間培養を行いクリスタルバイオレットで生存細胞を染色した。染色されたコロニー数を計測し、トランスフェクションしたレプリコンRNA量1μg当りのコロニー数を計算した。
【0081】
RepTPF1 RNA 1μgをトランスフェクションした場合には1個のG418耐性コロニーが選択され、Rep4B RNA 1μgをトランスフェクションした場合には104個のコロニーが選択された。つまり、レプリコンRNAにおけるアミノ酸変異を引き起こす塩基変異は、Huh7細胞においてレプリコンRNAの複製効率を増大させる適応変異であると考えられた。
【0082】
《参考例4:HCV RNAの複製に対する適応変異の効果》
参考例2において作成した完全長HCV DNA pTPF1を制限酵素SfiIで切断し、その切断部位に、pRep4Bを制限酵素SfiIで切断した断片を連結挿入することで、適応変異が挿入された完全長HCV DNA pTPF1/4Bを作製した。この塩基配列(RNAで 表記)を配列番号57、これがコードするアミノ酸配列を配列番号58に示す。
【0083】
《実施例1:HCV/GBV−Bキメラ遺伝子の構築》
(1)C156キメラ遺伝子(配列番号55)
ヒト肝がん細胞株で増殖が確認されているHCV遺伝子を含む上記pTPF1/4BをAge Iプライマー5’−GGAACCGGTGAGTACACCGGAATTGCCAGG−3’(配列番号101)とSpl Iプライマーの5’−ACCCGTACGCCATGCGCCAGGGCCCTGGCAG−3’(配列番号102)の存在下で、Takara EX Taq DNA polymerase(宝酒造)を用い、94℃、20秒、68℃、30秒間からなる20回のサーマルサイクル反応によるポリメラーゼチェインリアクション(PCR)を行うことにより、TPF1ゲノムの5’UTRからコア蛋白の156番目までを増幅した。
【0084】
増幅した断片は、0.7%アガロースゲル電気泳動によって分離し、QIAquick gel purification kit(QIAGEN)を用い、メーカーの推奨する方法にてDNA断片を回収した。回収したTPF1断片は、メーカーの推奨する方法に従いpGEM−T easyベクター(Promega)と連結反応させ、そのプラスミドによりDH5α株を形質転換させた。アンピシリン耐性で、IPTGとX−galを加えた寒天培地上での平板培養で白色コロニーを形成する形質転換体を選び、アンピシリンを100μg/mLとなるよう加えた2YT培地にて培養した。培養した菌体からWizard Plus SV Miniprep DNA Purification Systemを用いplasmidを精製した。
【0085】
精製したプラスミドに組み込まれているTPF1断片の配列は、ベクター及びHCV配列に適合する適宜準備したプライマーを用い、CEQ DTCS Quick Start Kit(ベックマン・コルター)により、メーカーの推奨する方法に従い反応を行い、CEQ2000 XL DNA analysis system(Software version 4.0.0、ベックマン・コールター)により解析した。得られたデータを基に、Sequencher(Version 4.1.2、Gene Codes Corporation)を用い配列データの統合、解析を行いpTPF1−AgeSplの塩基配列を確認した。
【0086】
一方、GBV−Bの外皮蛋白を含む遺伝子については、コア蛋白124番目からp6蛋白までの遺伝子を以下の合成遺伝子を用いて構築した。
GBBC−s1(配列番号1):5’−CGTACGCTTGCTGGAGGATGGAGTCAACTGGGCTACTGGTTGGTTCGGTGTCCACCTTTT−3’
GBBCE1−s2(配列番号2):5’−TGTGGTATGTCTGCTATCTTTGGCCTGTCCCTGTAGTGGGGCGCGGGTCACTGACCCAGA−3’
GBBE1−s3(配列番号3):5’−CACAAATACCACAATCCTGACCAATTGCTGCCAGCGTAATCAGGTTATCTATTGTTCTCC−3’
GBBE1−s4(配列番号4):5’−TTCCACTTGCCTACACGAGCCTGGTTGTGTGATCTGTGCGGACGAGTGCTGGGTTCCCGC−3’
GBBE1−s5(配列番号5):5’−CAATCCGTACATCTCACACCCTTCCAATTGGACTGGCACGGACTCCTTCTTGGCTGACCA−3’
GBBE1−s6(配列番号6):5’−CATTGATTTTGTTATGGGCGCTCTTGTGACCTGTGACGCCCTTGACATTGGTGAGTTGTG−3’
GBBE1−s7(配列番号7):5’−TGGTGCGTGTGTATTAGTCGGTGACTGGCTTGTCAGGCACTGGCTTATTCACATAGACCT−3’
GBBE1−s8(配列番号8):5’−CAATGAAACTGGTACTTGTTACCTGGAAGTGCCCACTGGAATAGATCCTGGGTTCCTAGG−3’
GBBE1−s9(配列番号9):5’−GTTTATCGGGTGGATGGCCGGCAAGGTCGAGGCTGTCATCTTCTTGACCAAACTGGCTTC−3’
GBBE1−s10(配列番号10):5’−ACAAGTACCATACGCTATTGCGACTATGTTTAGCAGTGTACACTACCTGGCGGTTGGCGC−3’
GBBE1−s11(配列番号11):5’−TCTGATCTACTATGCCTCTCGGGGCAAGTGGTATCAGTTGCTCCTAGCGCTTATGCTTTA−3’
GBBE12−s12(配列番号12):5’−CATAGAAGCGACCTCTGGAAACCCCATCAGGGTGCCCACTGGATGCTCAATAGCTGAGTT−3’
GBBE2−s13(配列番号13):5’−TTGCTCGCCTTTGATGATACCATGTCCTTGCCACTCTTATTTGAGTGAGAATGTGTCAGA−3’
GBBE2−s14(配列番号14):5’−AGTCATTTGTTACAGTCCAAAGTGGACCAGGCCTATCACTCTAGAGTATAACAACTCCAT−3’
GBBE2−s15(配列番号15):5’−ATCTTGGTACCCCTATACAATCCCTGGTGCGAGGGGATGTATGGTTAAATTCAAAAATAA−3’
GBBE2−s16(配列番号16):5’−CACATGGGGTTGCTGCCGTATTCGCAATGTGCCATCGTACTGCACTATGGGCACTGATGC−3’
GBBE2−s17(配列番号17):5’−AGTGTGGAACGACACTCGCAACACTTACGAAGCATGCGGTGTAACACCATGGCTAACAAC−3’
GBBE2−s18(配列番号18):5’−CGCATGGCACAACGGCTCAGCCCTGAAATTGGCTATATTACAATACCCTGGGTCTAAAGA−3’
GBBE2−s19(配列番号19):5’−AATGTTTAAACCTCATAATTGGATGTCAGGCCATTTGTATTTTGAGGGATCAGATACCCC−3’
GBBE2−s20(配列番号20):5’−TATAGTTTACTTTTATGACCCTGTGAATTCCACTCTCCTACCACCGGAGAGGTGGGCTAG−3’
GBBE2−s21(配列番号21):5’−GTTGCCCGGTACCCCACCTGTGGTACGTGGTTCTTGGTTACAGGTTCCGCAAGGGTTTTA−3’
GBBE2−s22(配列番号22):5’−CAGTGATGTGAAAGACCTAGCCACAGGATTGATCACCAAAGACAAAGCCTGGAAAAATTA−3’
GBBE2−s23(配列番号23):5’−TCAGGTCTTATATTCCGCCACGGGTGCTTTGTCTCTTACGGGAGTTACCACCAAGGCCGT−3’
GBBE2−s24(配列番号24):5’−GGTGCTAATTCTGTTGGGGTTGTGTGGCAGCAAGTATCTTATTTTAGCCTACCTCTGTTA−3’
GBBE2P6−s25(配列番号25):5’−CTTGTCCCTTTGTTTTGGGCGCGCTTCTGGTTACCCTTTGCGTCCTGTGCTCCCATCCCA−3’
GBBP6−s26(配列番号26):5’−GTCGTATCTCCAAGCTGGCTGGGATGTTTTGTCTAAAGCTCAAGTAGCTCCTTTTGCTTT−3’
GBBP6−s27(配列番号27):5’−GATTTTCTTCATCTGTTGCTATCTCCGCTGCAGGCTACGTTATGCTGCCCTTTTAGGGTT−3’
GBBP6−as1(配列番号28):5’−GCCCGCAGCCATGGGCACAAACCCTAAAAGGGCAGCATAACGTAGCCTG−3’
GBBP6−as2(配列番号29):5’−CAGCGGAGATAGCAACAGATGAAGAAAATCAAAGCAAAAGGAGCTACTTGAGCTTTAGAC−3’
GBBP6−as3(配列番号30):5’−AAAACATCCCAGCCAGCTTGGAGATACGACTGGGATGGGAGCACAGGACGCAAAGGGTAA−3’
GBBE2−as4(配列番号31):5’−CCAGAAGCGCGCCCAAAACAAAGGGACAAGTAACAGAGGTAGGCTAAAATAAGATACTTG−3’
GBBE2−as5(配列番号32):5’−CTGCCACACAACCCCAACAGAATTAGCACCACGGCCTTGGTGGTAACTCCCGTAAGAGAC−3’
GBBE2−as6(配列番号33):5’−AAAGCACCCGTGGCGGAATATAAGACCTGATAATTTTTCCAGGCTTTGTCTTTGGTGATC−3’
GBBE2−as7(配列番号34):5’−AATCCTGTGGCTAGGTCTTTCACATCACTGTAAAACCCTTGCGGAACCTGTAACCAAGAA−3’
GBBE2−as8(配列番号35):5’−CCACGTACCACAGGTGGGGTACCGGGCAACCTAGCCCACCTCTCCGGTGGTAGGAGAGTG−3’
GBBE2−as9(配列番号36):5’−GAATTCACAGGGTCATAAAAGTAAACTATAGGGGTATCTGATCCCTCAAAATACAAATGG−3’
GBBE2−as10(配列番号37):5’−CCTGACATCCAATTATGAGGTTTAAACATTTCTTTAGACCCAGGGTATTGTAATATAGCC−3’
GBBE2−as11(配列番号38):5’−AATTTCAGGGCTGAGCCGTTGTGCCATGCGGTTGTTAGCCATGGTGTTACACCGCATGCT−3’
GBBE2−as12(配列番号39):5’−TCGTAAGTGTTGCGAGTGTCGTTCCACACTGCATCAGTGCCCATAGTGCAGTACGATGGC−3’
GBBE2−as13(配列番号40):5’−ACATTGCGAATACGGCAGCAACCCCATGTGTTATTTTTGAATTTAACCATACATCCCCTC−3’
GBBE2−as14(配列番号41):5’−GCACCAGGGATTGTATAGGGGTACCAAGATATGGAGTTGTTATACTCTAGAGTGATAGGC−3’
GBBE2−as15(配列番号42):5’−CTGGTCCACTTTGGACTGTAACAAATGACTTCTGACACATTCTCACTCAAATAAGAGTGG−3’
GBBE2−as16(配列番号43):5’−CAAGGACATGGTATCATCAAAGGCGAGCAAAACTCAGCTATTGAGCATCCAGTGGGCACC−3’
GBBE21−as17(配列番号44):5’−CTGATGGGGTTTCCAGAGGTCGCTTCTATGTAAAGCATAAGCGCTAGGAGCAACTGATAC−3’
GBBE1−as18(配列番号45):5’−CACTTGCCCCGAGAGGCATAGTAGATCAGAGCGCCAACCGCCAGGTAGTGTACACTGCTA−3’
GBBE1−as19(配列番号46):5’−AACATAGTCGCAATAGCGTATGGTACTTGTGAAGCCAGTTTGGTCAAGAAGATGACAGCC−3’
GBBE1−as20(配列番号47):5’−TCGACCTTGCCGGCCATCCACCCGATAAACCCTAGGAACCCAGGATCTATTCCAGTGGGC−3’
GBBE1−as21(配列番号48):5’−ACTTCCAGGTAACAAGTACCAGTTTCATTGAGGTCTATGTGAATAAGCCAGTGCCTGACA−3’
GBBE1−as22(配列番号49):5’−AGCCAGTCACCGACTAATACACACGCACCACACAACTCACCAATGTCAAGGGCGTCACAG−3’
GBBE1−as23(配列番号50):5’−GTCACAAGAGCGCCCATAACAAAATCAATGTGGTCAGCCAAGAAGGAGTCCGTGCCAGTC−3’
GBBE1−as24(配列番号51):5’−CAATTGGAAGGGTGTGAGATGTACGGATTGGCGGGAACCCAGCACTCGTCCGCACAGATC−3’
GBBE1−as25(配列番号52):5’−ACACAACCAGGCTCGTGTAGGCAAGTGGAAGGAGAACAATAGATAACCTGATTACGCTGG−3’
GBBE1C−as26(配列番号53):5’−CAGCAATTGGTCAGGATTGTGGTATTTGTGTCTGGGTCAGTGACCCGCGCCCCACTACAG−3’
GBBC−as27(配列番号54):5’−GGACAGGCCAAAGATAGCAGACATACCACAAAAAGGTGGACACCGAACCAACCAGTAGCCCA−3’
【0087】
各合成遺伝子の5’末端のリン酸化のため、T4 Polynucleotide Kinase(宝酒造)を用いてリン酸化反応を行った。これらのリン酸化産物を混合し、95℃から室温まで徐冷することで、各合成遺伝子をアニーリングさせ、Takara Ligation Kit(宝酒造)を用いて連結反応を行った。この連結物をKlenow Fragment(宝酒造)を用いて二本鎖DNA末端の平滑化を行った。この二本鎖DNAをpGEM−T easyベクターにクローニングし、塩基配列を決定し、目的のGBV−B遺伝子であることを確認した。
【0088】
また、pTPF1/4BのXba I部位をXho I部位に変換させるため、pTPF1/4Bに塩基数9594番目のTからCへの遺伝子変異をQuick Mutagenesis Kit(Stratagene)を用いメーカーの推奨する方法に従い、変異を導入した。この変異を導入したプラスミドをpTPF1/4B−Xhoと命名した。
【0089】
そして、pTPF1/4BからPCRによりクローニングされ、制限酵素で消化されたAge I−Spl I断片とpTPF1/4Bから制限酵素で消化されたBbvC I−Rsr II断片並びに制限酵素で消化されたGBV−B遺伝子のSpl I−BbvC I断片をpTPF1/4B−XhoのAge I−Rsr IIで消化されたベクターに連結することにより、GBV−B外皮蛋白を有するHCV/GBV−BキメラプラスミドpTPF/GBB−C156E12を構築した。
【0090】
(2)v11キメラ遺伝子(配列番号93)
pTPF1/4Bを前述のAge IプライマーとEcoR V(v11)プライマーの5’−GATATCGTACAGCCCGGATACGTTGCGCAC−3’(配列番号103)の存在下で、Takara EX Taq DNA polymerase(宝酒造)を用い、94℃、20秒、68℃、30秒間からなる20回のサーマルサイクル反応によるPCRを行うことにより、TPF1ゲノムの5’UTRからE1蛋白の11番目までを増幅した。この増幅産物を実施例1でHCV遺伝子断片(pTPF1−AgeSpl)を取得したのと同様の手法を用いpGEM−Teasyベクターと連結反応を行い、常法に従い配列を決定した。その結果、pTPF1−AgeEcoR(v11)の塩基配列を確認した。
【0091】
一方、GBV−Bの外皮蛋白を含む遺伝子については、pTPF/GBB−C156E12をSnaBIプライマー5‘−TACGTAACTGACCCAGACACAAATACCACA−3’(配列番号104)とBbvCIプライマー5‘−CCTCAGCCATGGGCACAAACCCTAAAAGGG−3’(配列番号105)の存在下で,Takara EX Taq DNA polymerase(宝酒造)を用い、94℃、20秒、68℃、90秒間からなる20回のサーマルサイクル反応によるPCRを行うことにより、GBV−B ゲノムのE1蛋白の3番目からp6蛋白までを増幅した。この増幅産物をpGEM−T easyベクターと連結反応を行い、配列を決定した。その結果、pGBV−B SnaBbvの塩基配列を確認した。
【0092】
そして、pTPF1/4BからPCRによりクローニングされ、制限酵素で消化されたAge I−EcoR V(v11)断片と制限酵素で消化されたGBV−B遺伝子のSna BI−BbvC I断片をpTPF1/4B−XhoのAge I−BbvCIで消化されたベクターに連結することにより、GBV−B外皮蛋白を有するHCV/GBV−BキメラプラスミドpTPF/GBB−v11E12を構築した。
【0093】
(3)v27キメラ遺伝子(配列番号95)
上記pTPF1/4Bを前述のAge IプライマーとEcoR V(v27)プライマーの5’−GATATCCGCTGCCTCATACACAATGCTTGA−3’(配列番号106)の存在下で、Takara EX Taq DNA polymerase(宝酒造)を用い、94℃、20秒、68℃、90秒間からなる20回のサーマルサイクル反応によるPCRを行うことにより、TPF1ゲノムの5’UTRからE1蛋白の27番目までを増幅した。この増幅産物を実施例1でHCV遺伝子断片(pTPF1−AgeSpl)を取得したのと同様の手法を用いpGEM−Teasyベクターと連結反応を行い、常法に従い配列を決定した。その結果、pTPF1−AgeEcoR(v27)の塩基配列を確認した。
【0094】
そして、pTPF1/4BからPCRによりクローニングされ、制限酵素で消化されたAge I−EcoR V(v27)断片と上述のpGBV−B SnaBbvを制限酵素Sna BI−BbvC Iで消化した断片をpTPF1/4B−XhoのAge I−BbvCIで消化されたベクターに連結することにより、GBV−B外皮蛋白を有するHCV/GBV−BキメラプラスミドpTPF/GBB−v27E12を構築した。
【0095】
(4)C6キメラ遺伝子(配列番号97)
TPF1の5‘UTRを有するGBV−Bのコア蛋白からE1の125番目までの遺伝子を以下の合成遺伝子を用いて構築した。
GBBC−s28(配列番号59):5‘−ACCGGTGAGTACACCGGAATTGCCAGGACGACCGGGTCCTTTCTTGGATCAACCCGCTCA−3’
GBBC−s29(配列番号60):5‘−ATGCCTGGAGATTTGGGCGTGCCCCCGCGAGACTGCTAGCCGAGTAGTGTTGGGTCGCGA−3’
GBBC−s30(配列番号61):5‘−AAGGCCTTGTGGTACTGCCTGATAGGGTGCTTGCGAGTGCCCCGGGAGGTCTCGTAGACC−3’
GBBC−s31(配列番号62):5‘−GTGCATCATGCCTGTTATTTCTACTCAAACAAGTCCTGTACCTGCGCCCAGAACGCGCAA−3’
GBBC−s32(配列番号63):5‘−GAACAAGCAGACGCAGGCTTCATATCCTGTGTCCATTAAAACATCTGTTGAAAGGGGACA−3’
GBBC−s33(配列番号64):5‘−ACGAGCAAAGCGCAAAGTCCAGCGCGATGCTCGGCCTCGTAATTACAAAATTGCTGGTAT−3’
GBBC−s34(配列番号65):5‘−CCATGATGGCTTGCAGACATTGGCTCAGGCTGCTTTGCCAGCTCATGGTTGGGGACGCCA−3’
GBBC−s35(配列番号66):5‘−AGACCCTCGCCATAAGTCTCGCAATCTTGGAATCCTTCTGGATTACCCTTTGGGGTGGAT−3’
GBBC−s36(配列番号67):5‘−TGGTGATGTTACAACTCACACACCTCTAGTAGGCCCGCTGGTGGCAGGAGCGGTCGTTCG−3’
GBBC−s37(配列番号68):5‘−ACCAGTCTGCCAGATAGTACGCTTGCTGGAGGATGGAGTCAACTGGGCTACTGGTTGGTT−3’
GBBC−s38(配列番号69):5‘−CGGTGTCCACCTTTTTGTGGTATGTCTGCTATCTTTGGCCTGTCCCTGTAGTGGGGCGCG−3’
GBBC−s39(配列番号70):5‘−GGTCACTGACCCAGACACAAATACCACAATCCTGACCAATTGCTGCCAGCGTAATCAGGT−3’
GBBC−s40(配列番号71):5‘−TATCTATTGTTCTCCTTCCACTTGCCTACACGAGCCTGGTTGTGTGATCTGTGCGGACGA−3’
GBBC−s41(配列番号72):5‘−GTGCTGGGTTCCCGCCAATCCGTACATCTCACACCCTTCCAATTGGACTGGCACGGACTC−3’
GBBC−s42(配列番号73):5‘−CTTCTTGGCTGACCACATTGATTTTGTTATGGGCGCTCTTGTGACCTGTGACGCCCTTGA−3’
GBBC−s43(配列番号74):5‘−CATTGGTGAGTTGTGTGGTGCGTGTGTATTAGTCGGTGACTGGCTTGTCAGGCACTGGCT−3’
GBBC−s44(配列番号75):5‘−TATTCACATAGACCTCAATGAAACTGGTACTTGTTACCTGGAAGTGCCCACTGGAATAGA−3’
GBBC−as28(配列番号76):5‘−CCTAGGAACCCAGGATCTATTCCAGTGGGCACTTCCAGGTAACAAGTACCAGTTTCATTG−3’
GBBC−as29(配列番号77):5‘−AGGTCTATGTGAATAAGCCAGTGCCTGACAAGCCAGTCACCGACTAATACACACGCACCA−3’
GBBC−as30(配列番号78):5‘−CACAACTCACCAATGTCAAGGGCGTCACAGGTCACAAGAGCGCCCATAACAAAATCAATG−3’
GBBC−as31(配列番号79):5‘−TGGTCAGCCAAGAAGGAGTCCGTGCCAGTCCAATTGGAAGGGTGTGAGATGTACGGATTG−3’
GBBC−as32(配列番号80):5‘−GCGGGAACCCAGCACTCGTCCGCACAGATCACACAACCAGGCTCGTGTAGGCAAGTGGAA−3’
GBBC−as33(配列番号81):5‘−GGAGAACAATAGATAACCTGATTACGCTGGCAGCAATTGGTCAGGATTGTGGTATTTGTG−3’
GBBC−as34(配列番号82):5‘−TCTGGGTCAGTGACCCGCGCCCCACTACAGGGACAGGCCAAAGATAGCAGACATACCACA−3’
GBBC−as35(配列番号83):5‘−AAAAGGTGGACACCGAACCAACCAGTAGCCCAGTTGACTCCATCCTCCAGCAAGCGTACT−3’
GBBC−as36(配列番号84):5‘−ATCTGGCAGACTGGTCGAACGACCGCTCCTGCCACCAGCGGGCCTACTAGAGGTGTGTGA−3’
GBBC−as37(配列番号85):5‘−GTTGTAACATCACCAATCCACCCCAAAGGGTAATCCAGAAGGATTCCAAGATTGCGAGAC−3’
GBBC−as38(配列番号86):5‘−TTATGGCGAGGGTCTTGGCGTCCCCAACCATGAGCTGGCAAAGCAGCCTGAGCCAATGTC−3’
GBBC−as39(配列番号87):5‘−TGCAAGCCATCATGGATACCAGCAATTTTGTAATTACGAGGCCGAGCATCGCGCTGGACT−3’
GBBC−as40(配列番号88):5‘−TTGCGCTTTGCTCGTTGTCCCCTTTCAACAGATGTTTTAATGGACACAGGATATGAAGCC−3’
GBBC−as41(配列番号89):5‘−TGCGTCTGCTTGTTCTTGCGCGTTCTGGGCGCAGGTACAGGACTTGTTTGAGTAGAAATA−3’
GBBC−as42(配列番号90):5‘−ACAGGCATGATGCACGGTCTACGAGACCTCCCGGGGCACTCGCAAGCACCCTATCAGGCA−3’
GBBC−as43(配列番号91):5‘−GTACCACAAGGCCTTTCGCGACCCAACACTACTCGGCTAGCAGTCTCGCGGGGGCACGCC−3’
GBBC−as44(配列番号92):5‘−CAAATCTCCAGGCATTGAGCGGGTTGATCCAAGAAAGGACCCGGTCGTCCTGGCAATTCC−3’
【0096】
各合成遺伝子の5’末端のリン酸化のため、T4 Polynucleotide Kinase(宝酒造)を用いてリン酸化反応を行った。これらのリン酸化産物を混合し、95℃から室温まで徐冷することで、各合成遺伝子をアニーリングさせ、Takara Ligation Kit(宝酒造)を用いて連結反応を行った。この連結物をKlenow Fragment(宝酒造)を用いて二本鎖DNA末端の平滑化を行った。この二本鎖DNAをpGEM−T easyベクターにクローニングし、塩基配列を決定し、目的遺伝子であるTPF1 5‘UTRを有するGBV−Bのコア蛋白からE1の125番目までの遺伝子であることを確認した。
【0097】
そして、上記で合成されたTPF1 5‘UTRとGBV−Bのコア蛋白からE1の125番目までの遺伝子を制限酵素AgeI−AvrIIで消化された遺伝子断片をHCV/GBV−BキメラプラスミドpTPF/GBB−C156E12を制限酵素AgeI−AvrIIで消化されたベクターに連結することにより、GBV−Bのコア蛋白からp6蛋白までを有するHCV/GBV−BキメラプラスミドpTPF/GBB−C6を構築した。
【0098】
《実施例2:HCV/GBV−Bキメラ遺伝子のHuh7細胞における増殖》
実施例1において構築したpTPF/GBB−C156E12をXhoIで切断し、それを鋳型に、Megascript T7 kit(Ambion)又はAmpliScribe T7−Flash transcription kit(Epicentre)を用いてRNAを合成した。メーカーの推奨する方法にてRNAを精製した。
【0099】
ヒト肝がん細胞(Huh7、JCRB0403)はDulbecco’s modified Eagle medium(D−MEM,IWAKI)に10%ウシ胎仔血清(FBS)、ペニシリンを50U/mL及びストレプトマイシンを50μg/mLとなるように加えたものを培養液として、5%二酸化炭素付加、37℃で培養を行った。コンフルエントになる前の細胞をトリプシン、EDTA処理により培養皿から剥離させ、血清添加培地に再懸濁することによりトリプシンを不活化した。PBSで2回洗浄後、1.25%DMSOを添加したCytomix(120mM Potassium chloride、10mM Potassium phosphate、5mM Magnesium chloride、25mM HEPES、0.15mM Calcium chloride、2mMEGTA、pH7.6)に再懸濁し、ギャップ0.4cmのエレクトロポレーションキュベットに移す。
【0100】
10μgのRNAを細胞に加えた後、5分間氷上で十分冷却する。エレクトロポレーター(Bio−Rad)で、960μF、250Vにてパルスを加える。トランスフェクションを行った細胞は、直ちに10mLの培地に再懸濁し、12wellプレートに(直径22.1mm)に1mLずつ播き培養を開始した。4時間、24時間、48時間及び72時間に培養上清を回収した。回収した培養上清は、2krpmで10分間遠心し上清を回収した。上清100μLをHCVコア抗原のキット(富士レビオ、ルミパルス)を使用し測定した。
【0101】
図1に示すように、エレクトロポレーターを用いて細胞内にRNAを導入した実験区(エレクトロポレーション有り)におけるコア抗原の測定値は24時間から上昇し、72時間後も増加していた。一方、対照区(エレクトロポレーション無し)は上清中のコア抗原の測定値は検出限界以下であることを確認した。この結果は本願発明のHCV/GBV−Bキメラ遺伝子が細胞中において複製し、コア蛋白質を上清中に分泌していることを示している。HCV/GBV−Bキメラ遺伝子が、in−vitroで複製可能であることを示したものである。
【0102】
《実施例3:HCV/GBV−Bキメラ遺伝子のマーモセット初代肝臓細胞における増殖》
実施例2においてHuh7細胞において複製可能であったHCV/GBV−Bキメラ遺伝子型が、マーモセット初代肝臓細胞において複製可能か評価を試みた。実施例2と同様の方法を用いてpTPF/GBB−C156E12のRNAを合成した。
【0103】
マーモセット初代肝臓細胞(BIOPREDIC INTERNATIONAL)は、メーカーの推奨する方法にて培養を行った。具体的には、凍結マーモセット初代肝細胞を37℃のウォーターバスにおいて溶解し、予め37℃に温めておいたLeibovitz’s L−15 medium(Invitrogen)に1% GlutaMAX−I Supplement(Invitrogen)を加えた培養液30mLに懸濁した。細胞は1krpm(160×g)で1分間遠心により上清を除去し、細胞ペレットをWilliam’s medium E(Invitrogen)に1% Glutamax−I supplement(Invitrogen)、4μg/mL Bovine insulinと10%ウシ胎仔血清(FBS)を加えた培養液で約6×10cells/mLになるように再懸濁した。再懸濁を行った細胞は、コラーゲンタイプIコート24wellプレート(直径15.6mm)に0.5mLずつ播き5%二酸化炭素付加、37℃で培養を行った培養を開始した。
【0104】
1日間培養を行ったマーモセット初代肝臓細胞に、精製したTPF/GBB−C156E12及び遺伝子導入試薬HilyMax(DOJINDO)をそれぞれ1wellあたり2μgと4μL添加し、5%二酸化炭素付加、37℃で4時間培養を行った。遺伝子導入方法は、メーカーの推奨する方法にて行った。4時間培養後、PBSで3回洗浄を行い、William’s medium Eに(Invitrogen)に1% Glutamax−I supplement(Invitrogen)、Bovine insulinとHydrocortisone hemisuccinateをそれぞれ4μg/mL、50μMとなるように加えたものを培養液(増殖培地)として、5%二酸化炭素付加、37℃で培養を開始した。4時間、24時間、48時間、72時間、96時間、144時間、192時間、240時間、288時間及び336時間に培養上清を回収した。回収した培養上清は、2krpmで10分間遠心し上清を回収した。上清100μLをHCVコア抗原のキット(富士レビオ、ルミパルス)を使用し測定した。
【0105】
図2に示すように、コア抗原の測定値は24時間、144時間及び240時間において対照区(エレクトロポレーション無し)に比べ高い値を示した。この結果は本願発明のHCV/GBV−Bキメラ遺伝子が、マーモセット初代肝臓細胞中において持続的に複製し、コア蛋白質を上清中に散発的に分泌していることを示している。HCV/GBV−Bキメラ遺伝子が、マーモセットの生体内(肝臓)において持続的に複製可能であることを示したものである。
【0106】
《実施例4:HCV/GBV−Bキメラウイルスのマーモセット初代肝臓細胞への感染》
実施例1において構築したpTPF/GBB−C156E12、pTPF1/GBB−v11E12、pTPF/GBB−v27E12およびpTPF/GBB−C6をXhoIで切断し、実施例2と同様の方法を用いてRNAを合成した。
【0107】
マーモセット初代肝臓細胞は、実施例3に記載の方法にて培養を行った。再懸濁を行った細胞は、コラーゲンタイプIコート6wellプレート(直径34.6mm)に2mLずつ播き5%二酸化炭素付加、37℃で培養を行った培養を開始した。
【0108】
1日間培養を行ったマーモセット初代肝臓細胞に、精製したTPF/GBBキメラRNA4種と遺伝子導入試薬HilyMaxをそれぞれ1wellあたり5μgと15μL添加し、5%二酸化炭素付加、37℃で4時間培養を行った。遺伝子導入方法は、メーカーの推奨する方法にて行った。4時間培養後、PBSで3回洗浄後増殖培地を添加し、5%二酸化炭素付加、37℃で培養を開始した。48時間に培養上清を回収し、回収した培養上清は、2krpmで10分間遠心し上清を回収した。回収した培養上清は、感染試験に使用するまで−80℃で保存した。
【0109】
また、被感染細胞としてマーモセット初代肝臓細胞を新規に溶解し、コラーゲンタイプIコート6wellプレートにて培養を行った。1日間培養を行った細胞に、遺伝子導入後48時間に回収した培養上清(5倍希釈)を500μL添加し、5%二酸化炭素付加、37℃で6時間培養を行った。6時間培養後、PBSで3回洗浄後増殖培地を添加し、5%二酸化炭素付加、37℃で培養を開始した。24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、168時間、192時間および216時間に培養上清を回収した。回収した培養上清は、2krpmで10分間遠心し上清を回収した。TPF1/GBBキメラの再感染の有無は、培養上清中に含まれるキメラウイルスのゲノム数を定量的RT−PCRにて測定した。
【0110】
図3に示すように、感染試験に使用した全てのTPF1/GBBキメラウイルスのゲノム数は一旦検出限界近傍にまで減少したが、その後増加に転じた。この結果は、本願発明のHCV/GBV−BキメラRNAをマーモセット初代肝細胞に遺伝子導入することで得られる培養上清中には、naiveな同細胞に対して再感染可能なキメラウイルス粒子が存在していることを示している。HCV/GBV−Bキメラウイルスが、マーモセットの生体内(肝臓)において再感染可能であることを示したものである。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のHCV/GBV−Bキメラウイルスを、小型霊長類であるタマリンやマーモセットに感染することにより、HCVの動物モデルを構築することができる。そして、この動物モデルを利用することにより、肝炎の重症化を抑制、又は阻害する医薬品の開発や評価を行うことができ、より有効な感染の予防薬及び治療薬の開発及び評価が可能となる。
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]