特許第5693997号(P5693997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5693997
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】車両用ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/19 20060101AFI20150312BHJP
   B60R 21/05 20060101ALI20150312BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   B62D1/19
   B60R21/05 F
   B60R21/05 G
   B29C45/14
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-38392(P2011-38392)
(22)【出願日】2011年2月24日
(65)【公開番号】特開2012-171585(P2012-171585A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2014年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000237307
【氏名又は名称】富士機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 圭
(72)【発明者】
【氏名】今垣 進
(72)【発明者】
【氏名】高木 喜哲
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 良雄
(72)【発明者】
【氏名】藤村 統
【審査官】 柳元 八大
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−083782(JP,U)
【文献】 特開2007−015670(JP,A)
【文献】 特開2001−315649(JP,A)
【文献】 特開2006−062434(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0043722(US,A1)
【文献】 特開2008−296752(JP,A)
【文献】 特開2005−014832(JP,A)
【文献】 実開昭64−030779(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/19
B29C 45/14
B60R 21/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングコラムを支持するとともに車両側固定部に固定される固定ブラケットを備え、
該固定ブラケットが固定板部を備えるとともに、該固定板部には、所定荷重以上の車両前方への荷重が前記ステアリングコラムに作用したとき、前記固定ブラケットが車両前方側に離脱できるように前記固定板部を保持するカプセルが連結され、
該カプセルを介して前記固定板部が前記車両側固定部の取付面に固定されており、
前記固定板部における前記カプセルよりも車両前方側に、前記取付面に向けて突出する樹脂製のこじり抑制部が形成され
前記こじり抑制部は、車幅方向に延びる第1突条部と、該第1突条部に直交するように前記第1突条部から延設された第2突条部とからなる略T字状に形成されていることを特徴とする車両用ステアリング装置。
【請求項2】
ステアリングコラムを支持するとともに車両側固定部に固定される固定ブラケットを備え、
該固定ブラケットが固定板部を備えるとともに、該固定板部には、所定荷重以上の車両前方への荷重が前記ステアリングコラムに作用したとき、前記固定ブラケットが車両前方側に離脱できるように前記固定板部を保持するカプセルが連結され、
該カプセルを介して前記固定板部が前記車両側固定部の取付面に固定されており、
前記固定板部における前記カプセルよりも車両前方側に、前記取付面に向けて突出する樹脂製のこじり抑制部が形成され
前記カプセルと前記固定板部は、射出成形された樹脂ピンにより連結され、前記こじり抑制部は、前記樹脂ピンと同時に射出成形されることを特徴とする車両用ステアリング装置。
【請求項3】
前記こじり抑制部を形成する樹脂材料は、前記樹脂ピンを形成する樹脂材料と同じである請求項に記載の車両用ステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定荷重以上の車両前方への荷重が作用することにより、車両側固定部から固定ブラケットが車両前方側に離脱するように構成されている車両用ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用ステアリング装置には、例えば車両が前面衝突し、慣性の作用により運転者がステアリングホイールに衝突(二次衝突)した場合に、その衝撃緩和等を目的として、ステアリングコラムが車両から離脱するように構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5に示すように、特許文献1のステアリング装置90において、ステアリングシャフト(図示せず)を回転可能に支持するステアリングコラム91には、車体取付ブラケット92(固定ブラケット)が取り付けられている。この車体取付ブラケット92の左右両側のフランジ部93には、車体後方側が開放された切欠き溝(図示せず)が形成されている。また、各車体取付ブラケット92には、カプセル96が、切欠き溝の左右両側縁部を挟持するように車体取付ブラケット92に一体化されている。このカプセル96は、車両本体94の取付面94aに固定されるとともに、車体取付ブラケット92を車体前方側に離脱可能に保持している。
【0004】
さらに、フランジ部93において、カプセル96よりも車体前方側には突起95(こじり抑制部)が、車両本体94の取付面94a側に突出するように形成されている。この突起95は、半球面状をなし、車両本体94の取付面94aに軽く接触するようにフランジ部93からの突出量が設定されている。
【0005】
そして、例えば、運転者がステアリングホイールに衝突(二次衝突)したとき、車体取付ブラケット92には、取付面94aへ向けた曲げモーメント(矢印M)が作用し、フランジ部93に形成された突起95が車両本体94の取付面94aに当接する。すると、この突起95の当接により、カプセル96にこじりが発生することが抑制される。その結果、カプセル96から車体取付ブラケット92が円滑に離脱して、二次衝突時の衝撃が緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−15670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、カプセル96にこじりが発生するのを抑制するための突起95は、フランジ部93からの突出量が多すぎると、突起95が取付面94aに強接触になってしまい、衝突時に、車体取付ブラケット92がカプセル96から円滑に離脱できなくなってしまう。よって、突起95のフランジ部93からの突出量は精度良く設定されなければならないが、特許文献1の突起95は、プレス成形によってフランジ部93に形成されており、突起95を精度良く形成するためにコストが嵩んでしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、カプセルのこじりを抑制しつつ、固定ブラケットの円滑な離脱を安価な構成で可能にすることができる車両用ステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、請求項1及び請求項2に記載の発明は、ステアリングコラムを支持するとともに車両側固定部に固定される固定ブラケットを備え、該固定ブラケットが固定板部を備えるとともに、該固定板部には、所定荷重以上の車両前方への荷重が前記ステアリングコラムに作用したとき、前記固定ブラケットが車両前方側に離脱できるように前記固定板部を保持するカプセルが連結され、該カプセルを介して前記固定板部が前記車両側固定部の取付面に固定されており、前記固定板部における前記カプセルよりも車両前方側に、前記取付面に向けて突出する樹脂製のこじり抑制部が形成されていることを要旨とする。
【0010】
上記発明によれば、こじり抑制部が樹脂材料によって形成されているため、固定板部に曲げモーメントが作用し、こじり抑制部が車両側固定部の取付面に押し付けられたとき、こじり抑制部は金属で形成される場合と比べて大きく塑性変形しながらも、固定板部と取付面との隙間を維持し、カプセルのこじりを抑制する。よって、こじり抑制部は、取付面に押し付けられた際の変形量を加味して若干突出量が多く形成されていてもよく、こじり抑制部は、その突出量が目標値となるように精度良く形成されていなくてもよい。したがって、プレス成形等でこじり抑制部の突出量が目標値となるように精度良く形成する場合と比べると、こじり抑制部、ひいては固定ブラケットの製造コストを抑えることができる。
【0011】
また、請求項1に記載の車両用ステアリング装置において、前記こじり抑制部は、車幅方向に延びる第1突条部と、該第1突条部に直交するように前記第1突条部から延設された第2突条部とからなる略T字状に形成されている
【0012】
上記発明によれば、例えば、こじり抑制部を円柱状に形成する場合と比べると、第1突条部によって取付面への接触面積を十分に確保することができ、カプセルのこじりを効果的に防止することができる。また、曲げモーメントが車幅方向に偏って作用しても、車幅方向へ延びる第1突条部によって固定板部と取付面との隙間を維持することができ、カプセルのこじりを防止することができる。加えて、過大な曲げモーメントによって第1突条部が過大に押し潰されそうになっても第2突条部により、固定板部と取付面との隙間を維持することができ、カプセルのこじりを防止することができる。
【0013】
また、請求項に記載の車両用ステアリング装置において、前記カプセルと前記固定板部は、射出成形された樹脂ピンにより連結され、前記こじり抑制部は、前記樹脂ピンと同時に射出成形される
【0014】
上記発明によれば、樹脂ピンを射出成形した後に、固定板部にこじり抑制部をプレス成形する場合と比べると、製造工程を一つ減らすことができ、しかも、こじり抑制部を固定板部に簡単に形成することができる。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の車両用ステアリング装置において、前記こじり抑制部を形成する樹脂材料は、前記樹脂ピンを形成する樹脂材料と同じであることを要旨とする。
【0016】
上記発明によれば、樹脂ピンとこじり抑制部とを別々の樹脂材料で形成する場合と比べると、射出成形の際の手間を減らすことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カプセルのこじりを抑制しつつ、固定ブラケットの円滑な離脱を安価な構成で可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の車両用ステアリング装置を示す斜視図。
図2】(a)は車両用ステアリング装置を示す平面図、(b)は図2(a)の2b−2b線断面図。
図3】(a)は固定板部及びこじり抑制部を示す部分斜視図、(b)は固定板部及びカプセルを示す平面図。
図4】車両用ステアリング装置を示す部分側面図。
図5】背景技術を示す部分側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。
図1に示すように、車両用ステアリング装置11において、ステアリングシャフト13は、ステアリングコラム14に挿通されるとともに、このステアリングコラム14によって回転可能に支持されている。そして、ステアリングコラム14において、車両前後方向の後端(軸方向一端)からのステアリングシャフト13の突出端(軸方向一端)にステアリングホイール12が連結されている。
【0020】
ステアリングシャフト13は、車両前後方向の前端(軸方向他端)がインターミディエイトシャフト(図示せず)に連結されるとともに、ステアリング操作に基づく回転及び操舵トルクが、ステアリングギア(ラック&ピニオン機構)等の図示しない操舵輪の舵角を変更する転舵機構へと伝達されるようになっている。また、ステアリングシャフト13は、ステアリングホイール12が固定される中空状のアッパシャフト13aと、このアッパシャフト13aに収容されるロアシャフト(図示せず)とを一体化して形成されている。アッパシャフト13aと、ロアシャフトとは、スプライン嵌合することにより互いに軸方向へ相対摺動可能、且つ一体回転可能に構成されている。
【0021】
また、ステアリングコラム14は、軸受(図示せず)を介してアッパシャフト13aを回転可能に収容支持するアウタチューブ14aと、ステアリングシャフト13のロアシャフトを収容するインナチューブ14bとを一体化して形成されている。アウタチューブ14aは、その内周にインナチューブ14bが挿入されることにより、インナチューブ14bに対して軸方向に相対摺動可能に設けられている。
【0022】
また、ステアリングコラム14(インナーチューブ14b)の前端(軸方向他端)には、減速機構Sのハウジング17が一体に設けられとともに、このハウジング17には、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与するモータM(EPSアクチュエータ)が一体化されている。
【0023】
ステアリングコラム14の車両前方側は、車両に固定された支持ブラケット(図示せず)によって車両に支持されている。また、ステアリングコラム14の車両後方側は固定ブラケット25によって、車両の一部である車両側固定部としての取付ステー20に固定されている。図1及び図2に示すように、固定ブラケット25は、取付ステー20への固定機能を担う第1ブラケット31と、この第1ブラケット31と一体化されるとともにチルト機能を担う第2ブラケット41と、から構成されている。
【0024】
第1ブラケット31は、一枚の金属板(鉄板)を整形して形成されるとともに、ステアリングコラム14を上方から車幅方向に跨ぐように配置されている。第1ブラケット31は、ステアリングコラム14の車幅方向両側に位置し、かつ取付ステー20に対し固定される一対の固定板部32と、両固定板部32を繋ぐ連結板部33とから形成されている。
【0025】
また、図3に示すように、各固定板部32には、切欠き溝32aが固定板部32における車両後方側に開口するように形成されている。さらに、各固定板部32において、切欠き溝32aに対する車幅方向両側には、ピン用孔32bが固定板部32を厚み方向に貫通して形成されている。そして、図1図3に示すように、各固定板部32には、金属材料製のカプセル35が連結されるとともに、このカプセル35は車幅方向において切欠き溝32aを挟む部位を上下から挟持している。
【0026】
カプセル35と固定板部32とは、複数本の樹脂ピン36を、カプセル35に形成された挿通孔35a、及び固定板部32のピン用孔32bに樹脂材料を射出成形することにより一体化されている。そして、図4に示すように、各固定板部32に連結されたカプセル35に対し、取付ステー20から突出するボルト26が挿通されるとともに、このボルト26にナット27が締結されることで、固定板部32が取付ステー20に固定されている。すなわち、第1ブラケット31を介して固定ブラケット25が取付ステー20の取付面20aに固定されるとともに、固定ブラケット25と取付ステー20との間には、カプセル35、樹脂ピン36、ボルト26、及びナット27からなる離脱機構が設けられている。
【0027】
図1及び図2に示すように、固定ブラケット25における第2ブラケット41は、一枚の金属板(鉄板)をコ字状に整形して形成され、各固定板部32の内側に配される一対の側板部44と、両側板部44を上端縁で繋ぐとともにステアリングコラム14を上方から車幅方向に跨ぐ連結板部46とから形成されている。そして、第2ブラケット41は、連結板部46がステアリングコラム14を上方から覆うとともに、一対の側板部44がステアリングコラム14を車幅方向両側から覆うように配置されている。各側板部44にはチルト長孔44aがステアリングコラム14の上下方向(傾動方向)に沿って延びるように形成されている。そして、上記第2ブラケット41は、その連結板部46の上面が第1ブラケット31における連結板部33の下面に接合されている。
【0028】
また、第2ブラケット41の内側には、ステアリングコラム14の下側に固着されたコラムブラケット52が配置されている。このコラムブラケット52は、一枚の金属板(鉄板)をコ字状に整形して形成され、各側板部44の内側に配される一対の支持板部53と、両支持板部53の下端縁を繋ぐ接続板部54とから形成されている。各支持板部53には、ステアリングコラム14の車両前後方向に延びるテレスコ長孔53aが形成されるとともに、両支持板部53の内面にはステアリングコラム14が接合されている。
【0029】
そして、第2ブラケット41の各側板部44に形成されたチルト長孔44a、及びコラムブラケット52の各支持板部53に形成されたテレスコ長孔53aに支軸58が挿通されるとともに、支軸58の側板部44からの突出端にナット55が螺着されている。この結果、コラムブラケット52が第2ブラケット41に連結されるとともに、ステアリングコラム14がコラムブラケット52を介して第2ブラケット41に支持されている。
【0030】
また、支軸58には操作レバー59が一体回転可能に連結されるとともに、この操作レバー59と、第2ブラケット41の側板部44との間には、操作レバー59の操作に応じてステアリングコラム14の軸方向への移動及び揺動のロック又はアンロックを行うロック機構60が設けられている。
【0031】
そして、ロック機構60をアンロック状態とし、固定ブラケット25に対してコラムブラケット52及びステアリングコラム14を傾動させることにより、チルト長孔44aの範囲内で上下方向におけるステアリング位置を調整可能な構成となっている。また、固定ブラケット25に対してコラムブラケット52を軸方向に相対移動させることにより、テレスコ長孔53aの範囲内で軸線方向におけるステアリング位置を調整可能な構成となっている。
【0032】
図3に示すように、各固定板部32におけるカプセル35よりも車両前方側には、樹脂製のこじり抑制部37が一体成形されている。こじり抑制部37は、樹脂ピン36を固定板部32とカプセル35に射出成形する製造工程の際に、樹脂ピン36と同時に射出成形される。また、こじり抑制部37と樹脂ピン36とは同じ樹脂材料によって形成されている。そして、こじり抑制部37は、固定板部32を形成する金属材料(鉄板)よりも強度の低い樹脂材料によって形成されている。
【0033】
こじり抑制部37は、車幅方向に延びる第1突条部37aと、この第1突条部37aに直交するように第1突条部37aから延設された第2突条部37bとから平面視T字状に形成されている。第2突条部37bは、第1突条部37aからカプセル35に達するまで延び、第1突条部37aの上面、第2突条部37bの上面、及びカプセル35の上面は全て同一平面上に位置している。
【0034】
こじり抑制部37の固定板部32からの突出量(上下方向への高さ)は、カプセル35の固定板部32からの突出量と同じであり、取付ステー20の取付面20aに対しこじり抑制部37の上面が軽く接触するような突出量(目標値)に設定されるのが好ましい。しかし、こじり抑制部37は、その突出量が目標値になるように精度良く形成されなくてもよく、目標値より若干突出量が多くなるように形成されていてもよい。また、こじり抑制部37は、樹脂材料によって形成されているため、取付ステー20の取付面20aに対し、押し付けられた際、押し潰される方向へ若干の変形が許容されるようになっている。
【0035】
なお、こじり抑制部37は、各固定板部32に設けた凹部(図示せず)に樹脂材料が流入した状態で、各固定板部32に一体化され、位置決めされている。上記の凹部は、こじり抑制部37を平面視した通りT字状(図3参照)に凹設したものや、ピン用孔32bと同様の貫通孔として形成することができる。ただし、こじり抑制部37と各固定板部32との接合強度が十分であれば、凹部を設けなくてもよい。
【0036】
次に、車両用ステアリング装置11の作用について説明する。
例えば、車両が前面衝突し、慣性の作用により運転者がステアリングホイール12に衝突(二次衝突)した場合、ステアリングコラム14を介して固定ブラケット25に対して所定荷重以上の車両前方への荷重が作用すると、樹脂ピン36がせん断される。すると、カプセル35を取付ステー20に残した状態で、固定ブラケット25が取付ステー20から車両前方側に離脱する。
【0037】
このとき、固定ブラケット25は、ステアリングコラム14の軸方向の中央ではなく、後方寄りを支持している。このため、図4に示すように、ステアリングコラム14には、取付面20aへ向けた曲げモーメント(矢印N)が作用し、この曲げモーメントを受けて固定ブラケット25は取付面20aに向けて回動しようとする。このとき、こじり抑制部37が取付面20aに押し付けられるため、固定ブラケット25の取付面20aに向けた回動が規制される。
【0038】
そして、こじり抑制部37の突出量は、取付ステー20の取付面20aに対しこじり抑制部37が軽く接触する量(目標値)、又は目標値より若干多くなっている。このため、曲げモーメントによってこじり抑制部37が取付面20aに向けて押し付けられ、取付面20aと固定板部32との間に一定の隙間が維持されるとともに、カプセル35にこじりが発生することが抑制される。その結果、カプセル35から固定ブラケット25が円滑に離脱して、二次衝突時の衝撃が緩和される。
【0039】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)固定ブラケット25に対して所定荷重以上の荷重が作用したときに、カプセル35のこじりを抑制するために、固定ブラケット25の固定板部32にこじり抑制部37を形成し、そのこじり抑制部37を樹脂材料によって形成した。すなわち、こじり抑制部37を、固定板部32を形成する金属材料より強度の低い樹脂材料によって形成した。このため、固定板部32に曲げモーメントが作用し、こじり抑制部37が取付ステー20の取付面20aに押し付けられたとき、こじり抑制部37は金属で形成される場合と比べて大きく塑性変形しながらも、固定板部32と取付面20aとの隙間を維持し、カプセル35のこじりを抑制する。よって、こじり抑制部37の突出量は、こじりを抑制するために精度良く設定されていなくてもよく、例えば、目標とする突出量よりも若干多くなっていてもよい。このため、プレス成形等でこじり抑制部37の突出量が目標値となるように精度良く形成する場合と比べると、こじり抑制部37、ひいては固定ブラケット25の製造コストを抑えることができる。その結果として、カプセル35のこじりを抑制しつつ、固定ブラケット25の円滑な離脱を安価な構成で可能にすることができる。
【0040】
(2)また、カプセル35のこじりを抑制するためのこじり抑制部37は、樹脂材料によって形成され、固定板部32を形成する金属材料と比べると剛性が低くなっている。このため、こじり抑制部37が取付面20aに押し付けられたとき、こじり抑制部37が金属材料で形成された場合と比べると、取付面20aとの間に発生する摩擦抵抗を軽減することができ、固定ブラケット25を円滑に離脱させることができる。
【0041】
(3)こじり抑制部37は固定板部32に射出成形されており、カプセル35を固定板部32に連結する樹脂ピン36を射出成形する製造工程で同時に形成される。このため、樹脂ピン36を射出成形した後に、固定板部32にこじり抑制部37をプレス成形する場合と比べると、製造工程を一つ減らすことができ、しかも、こじり抑制部37を固定板部32に簡単に形成することができる。
【0042】
(4)こじり抑制部37を形成する樹脂材料は、樹脂ピン36を形成する樹脂材料と同じである。このため、例えば、樹脂ピン36とこじり抑制部37とを別々の樹脂材料で形成する場合と比べると、射出成形の際の手間を減らすことができる。
【0043】
(5)こじり抑制部37は固定板部32に射出成形されており、カプセル35を固定板部32に連結する樹脂ピン36を射出成形するのと同時に形成される。すなわち、樹脂ピン36を射出成形する際に用いた型に、こじり抑制部37を成形するための加工を施すだけでこじり抑制部37を固定板部32に形成することができる。したがって、樹脂製のこじり抑制部37は、固定板部32に簡単に形成することができ、しかも、型形状によってこじり抑制部37の形状を所望する形状にすることができる。
【0044】
(6)こじり抑制部37をプレス成形で固定板部32に形成するには、プレス成形を見越して固定板部32の板厚を厚くする必要があるが、こじり抑制部37を樹脂材料で形成するため、固定板部32の板厚を厚くする必要がなく、固定ブラケット25(第1ブラケット31)の軽量化を図ることができる。
【0045】
(7)こじり抑制部37は平面視T字状に形成され、車幅方向に延びる第1突条部37aと、この第1突条部37aに直交するように第1突条部37aから延設された第2突条部37bとを一体に備える。このため、例えば、こじり抑制部37を円柱状に形成する場合と比べると、第1突条部37aによって取付面20aへの接触面積を十分に確保することができ、カプセル35のこじりを効果的に防止することができる。さらに、曲げモーメントが車幅方向に偏って作用しても、車幅方向へ延びる第1突条部37aによって固定板部32と取付面20aとの隙間を維持することができ、カプセル35のこじりを防止することができる。加えて、過大な曲げモーメントによって第1突条部37aが過大に押し潰されそうになっても第2突条部37bにより、固定板部32と取付面20aとの隙間を維持することができ、カプセル35のこじりを防止することができる。
【0046】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、こじり抑制部37を平面視T字状に形成したが、こじり抑制部37は平面視円形の円柱状であってもよいし、車幅方向に延びる直方体状であってもよく、半球状であってもよい。すなわち、こじり抑制部37の形状は任意に変更してもよい。
【0047】
○ 実施形態では、こじり抑制部37を形成する樹脂材料を、樹脂ピン36を形成する樹脂材料と同じにしたが、こじり抑制部37と樹脂ピン36とで別々の樹脂材料としてもよい。
【0048】
○ 実施形態では、樹脂ピン36を射出成形する製造工程の際に、こじり抑制部37を射出成形したが、別々に形成してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0049】
(イ)前記こじり抑制部を形成する樹脂材料は、前記固定板部を形成する金属材料より剛性が低い請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の車両用ステアリング装置。
【符号の説明】
【0050】
14…ステアリングコラム、20…車両側固定部としての取付ステー、20a…取付面、25…固定ブラケット、32…固定板部、35…カプセル、36…樹脂ピン、37…こじり抑制部、37a…第1突条部、37b…第2突条部。
図1
図2
図3
図4
図5