特許第5694011号(P5694011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694011
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】ピンチロールの昇降機構
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20150312BHJP
   B41J 13/02 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   B65H5/06 F
   B41J13/02
【請求項の数】2
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-51997(P2011-51997)
(22)【出願日】2011年3月9日
(65)【公開番号】特開2012-188207(P2012-188207A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2014年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】田中 一平
(72)【発明者】
【氏名】杉山 裕一
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−302013(JP,A)
【文献】 特開平09−183547(JP,A)
【文献】 特開2006−193303(JP,A)
【文献】 特開2010−052889(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
B41J 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並んで配設された複数の駆動ロールに媒体を挟んだ状態でそれぞれ弾接させ、前記駆動ロールを回転させることにより、前記駆動ロールとともに前記媒体を搬送するピンチロールの昇降機構において、
開口部が形成されるとともに、前記駆動ロールが並ぶ方向に延長して配設された板状部材と、
他方の端部においてピンチロールが配設され、前記板状部材と平行に設けられた支軸に回動可能に配設されるとともに、一方の端部と前記他方の端部とがそれぞれ反対方向に付勢された支持部材と、
前記支持部材の前記一方の端部がガイド部に当接するように配設されるとともに、係止部により前記開口部と係合して前記板状部材に摺動自在に配設されたカムと、
駆動手段により前記板状部材を所定の方向に引っ張る引張手段と、
前記板状部材を前記所定の方向と反対の方向に付勢するバネと
を有し、
前記ガイド部は、前記一方の端部が位置することによって、前記他方の端部に設けられた前記ピンチロールを前記駆動ロールに弾接させる第1の領域と、前記他方の端部を上昇させるとともに、前記一方の端部により前記所定の方向と反対の方向に前記カムを付勢する第2の領域と、前記他方の端部を上昇させた状態に固定する第3の領域とを備えており、
作業者は前記カムを移動させて、ピンチロールを昇降させる場合には、前記一方の端部を前記ガイド部の前記第1の領域に位置させ、ピンチロールを昇降させない場合には、前記一方の端部を前記ガイド部の前記第3の領域に位置させ、
前記一方の端部が前記第1の領域に位置するときは、
作業者が前記駆動手段を駆動して前記引張手段により前記板状部材を前記所定の方向に引っ張ることにより、前記板状部材とともに前記カムが前記所定の方向に移動し、前記一方の端部が前記ガイド部の前記第2の領域に位置するようになって前記他方の端部が上昇し、
前記作業者が前記駆動手段の駆動を停止して前記引張手段による前記板状部材への前記所定の方向への引っ張りを解除すると、前記バネの付勢力により前記板状部材とともに前記カムが前記所定の方向と反対の方向に移動し、前記一方の端部が前記ガイド部の前記第1の領域に位置するようになって他方の端部が降下することとなり、
前記一方の端部が前記第3の領域に位置するときは、
前記作業者が前記駆動手段を駆動して前記引張手段により前記板状部材を前記所定の方向に引っ張ることにより、前記板状部材は前記所定の方向に移動するが、前記カムは前記板状部材とともに移動することなく、前記一方の端部が前記第3の領域に位置したままで前記他方の端部が上昇した状態を維持し、
前記作業者が前記駆動手段の駆動を停止して前記引張手段による前記板状部材への前記所定の方向への引っ張りを解除すると、前記バネの付勢力により前記板状部材は前記所定の方向の反対の方向に移動するが、前記カムは前記板状部材とともに移動することなく、前記一方の端部が前記第3の領域に位置したままで前記他方の端部が上昇した状態を維持する
ことを特徴とするピンチロールの昇降機構。
【請求項2】
請求項1に記載のピンチロールの昇降機構において、
前記ガイド部において、前記第1の領域と隣接して前記第2の領域が設けられ、前記第2の領域と隣接して前記第3の領域が設けられており、前記第2の領域と前記第3の領域との間には、前記支持部材の前記一方の端部が容易に前記第2の領域から前記第3の領域にガイドされないように凸部が設けられている
ことを特徴とするピンチロールの昇降機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンチロールの昇降機構に関し、さらに詳細には、被印刷物たる記録紙などの媒体の搬送方向と直交する方向にインクヘッドが移動し、当該媒体上にインクヘッドから吐出されるインクにより所望の印刷を行う印刷装置において、当該媒体を駆動ロールと狭持して搬送方向に搬送するピンチロールの昇降機構に関するものである。
【0002】
なお、本明細書において「媒体」とは、普通紙などの紙類よりなる各種の記録媒体は勿論のこと、PVC、ポリエステルなどの樹脂材料、アルミ、鉄などの金属材料、布、木材などのような各種の材料が含まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
従来より、被印刷物たる記録紙などの媒体の搬送方向と直交する方向に移動するインクヘッドからインクを吐出することにより、当該媒体上に所望の印刷を行う印刷装置が知られている。
【0004】
こうした印刷装置においては、インクヘッドの移動方向に延設されたプラテン上に、駆動ロールとピンチロールとにより構成される搬送機構が所定の間隔を開けて、直線上に複数配設されている。
【0005】
搬送機構を構成する駆動ロールは、それぞれ駆動モーターにより回転するようになされており、また、ピンチロールは、常時駆動ロールに弾接されており、駆動ロールとピンチロールとに狭持された媒体は、駆動ロールが回転することにより搬送方向に搬送されるようになっている。
【0006】
こうした構成の搬送機構を備えた印刷装置においては、媒体をセットする際に、媒体を搬送方向に対してまっすぐにしなければ、媒体にシワが入ったり、ジャミングが発生したりしてしまっていた。
【0007】
このため、媒体をセットする際に、媒体が斜めになると、一旦、搬送機構から媒体を外して再度セットし直さなければならず、媒体をセットする作業が煩雑になるという問題点が指摘されていた。
【0008】
こうした問題点を解決するための手段としては、例えば、特許文献1に開示されているような技術が知られている。
【0009】
この特許文献1に開示された技術とは、各搬送機構における全てのピンチロールを同時に昇降可能にしたものであって、各搬送機構において、支軸を中心に回動するピンチロールレバーの先端にピンチロールを設け、ピンチロールレバーの後部には、回転することによりピンチロールレバーの後部を押圧してピンチロールレバーの先端を上昇させるシャフトを設けるようにしている。
【0010】
なお、各搬送機構のシャフトは、断面形状が四角形あるいは楕円形状であって、互いに一体的に形成されており、シャフトの回転時には各搬送機構においてピンチロールの昇降がなされる。
【0011】
これにより、作業者が必要に応じてシャフトを回転させることにより、当該シャフトがピンチロールレバーの後部を押圧してピンチロールレバーの先端を上昇させることでピンチロールを上昇させることができ、ピンチロールの駆動ロールへの弾接状態を解除することができる。
【0012】
従って、媒体のセット時に媒体の方向を修正したい場合には、シャフトを回転させてピンチロールを上昇させた後に媒体の方向を修正し、再度シャフトを回転させてピンチロールを降下させることにより、媒体を駆動ロールおよびピンチロールに適正な状態で狭持させることができる。
【0013】

しかしながら、特許文献1に開示された技術においては、ピンチロールの昇降が作業者により実行されることとなり、作業経験のない作業者においては、ピンチロールの昇降作業を適切に行うことができず、ピンチロールが昇降していない状態で媒体の方向を修正してしまい、媒体にシワや折り目などを付けてしまうことが問題点として指摘されていた。
【0014】

ところで、媒体が布地の場合などでは、布地端のほつれ部分を駆動ロールとピンチロールとで狭持してしまうと、媒体搬送時に媒体の搬送が安定しなくなってしまっていた。
【0015】
こうした場合、特許文献1に開示された技術では全てのピンチロールを同時に昇降してしまうため、布地端のほつれ部分に位置するピンチロールのみを昇降するようなことができず、柔軟性のない技術であることが問題点として指摘されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平11−189354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、昇降するピンチロールを選択することが可能であるとともに、容易にピンチロールの昇降を行うことができるピンチロールの昇降機構を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は、んで配設された複数の駆動ロールに媒体を挟んだ状態でそれぞれ弾接させ、上記駆動ロールを回転させることにより、上記駆動ロールとともに上記媒体を搬送するピンチロールの昇降機構において、開口部が形成されるとともに、上記駆動ロールが並ぶ方向に延長して配設された板状部材と、他方の端部においてピンチロールが配設され、上記板状部材と平行に設けられた支軸に回動可能に配設されるとともに、一方の端部と上記他方の端部とがそれぞれ反対方向に付勢された支持部材と、上記支持部材の上記一方の端部がガイド部に当接するように配設されるとともに、係止部により上記開口部と係合して上記板状部材に摺動自在に配設されたカムと、駆動手段により上記板状部材を所定の方向に引っ張る引張手段と、上記板状部材を上記所定の方向と反対の方向に付勢するバネとを有し、上記ガイド部は、上記一方の端部が位置することによって、上記他方の端部に設けられた上記ピンチロールを上記駆動ロールに弾接させる第1の領域と、上記他方の端部を上昇させるとともに、上記一方の端部により上記所定の方向と反対の方向に上記カムを付勢する第2の領域と、上記他方の端部を上昇させた状態に固定する第3の領域とを備えており、作業者は上記カムを移動させて、ピンチロールを昇降させる場合には、上記一方の端部を上記ガイド部の上記第1の領域に位置させ、ピンチロールを昇降させない場合には、上記一方の端部を上記ガイド部の上記第3の領域に位置させ、上記一方の端部が上記第1の領域に位置するときは、作業者が上記駆動手段を駆動して上記引張手段により上記板状部材を上記所定の方向に引っ張ることにより、上記板状部材とともに上記カムが上記所定の方向に移動し、上記一方の端部が上記ガイド部の上記第2の領域に位置するようになって上記他方の端部が上昇し、上記作業者が上記駆動手段の駆動を停止して上記引張手段による上記板状部材への上記所定の方向への引っ張りを解除すると、上記バネの付勢力により上記板状部材とともに上記カムが上記所定の方向と反対の方向に移動し、上記一方の端部が上記ガイド部の上記第1の領域に位置するようになって他方の端部が降下することとなり、上記一方の端部が上記第3の領域に位置するときは、上記作業者が上記駆動手段を駆動して上記引張手段により上記板状部材を上記所定の方向に引っ張ることにより、上記板状部材は上記所定の方向に移動するが、上記カムは上記板状部材とともに移動することなく、上記一方の端部が上記第3の領域に位置したままで上記他方の端部が上昇した状態を維持し、上記作業者が上記駆動手段の駆動を停止して上記引張手段による上記板状部材への上記所定の方向への引っ張りを解除すると、上記バネの付勢力により上記板状部材は上記所定の方向の反対の方向に移動するが、上記カムは上記板状部材とともに移動することなく、上記一方の端部が上記第3の領域に位置したままで上記他方の端部が上昇した状態を維持するようにしたものである。
【0019】
また、本発明は、上記した発明において、上記ガイド部において、上記第1の領域と隣接して上記第2の領域が設けられ、上記第2の領域と隣接して上記第3の領域が設けられており、上記第2の領域と上記第3の領域との間には、上記支持部材の上記一方の端部が容易に上記第2の領域から上記第3の領域にガイドされないように凸部が設けられているようにしたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上説明したように構成されているので、昇降するピンチロールを選択することが可能であるとともに、容易にピンチロールの昇降を行うことができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明によるピンチロールの昇降機構を備えた印刷装置の要部を示す概略構成説明図である。
図2図2は、本発明によるピンチロールの昇降機構において、ピンチロールが駆動ロールと弾接した状態のときの要部を示す概略構成説明図である。
図3図3は、図2に示す状態において、板状部材とカムの係止部とを省略し、支持部材とカムとの当接状態を示す説明図である。
図4図4は、図2のA矢視図である。
図5図5は、本発明によるピンチロールの昇降機構において、ピンチロールと駆動ロールとの弾接状態を解除したときの要部を示す概略構成説明図である。
図6図6は、図5に示す状態において、板状部材とカムの係止部とを省略し、支持部材とカムとの当接状態を示す説明図である。
図7図7は、図5のB矢視図である。
図8図8は、本発明によるピンチロールの昇降機構において、ピンチロールを降下不可能な状態としたときの要部を示す概略構成説明図である。
図9図9は、図8に示す状態において、板状部材とカムの係止部とを省略し、支持部材とカムとの当接状態を示す説明図である。
図10図10は、図8のC矢視図である。
図11図11は、カムによって支持部材を固定した状態で板状部材を左方側に移動した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるピンチロールの昇降機構の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0023】

ここで、図1には、本発明によるピンチロールの昇降機構を備えた印刷装置の要部の概略構成説明図が示されている。
【0024】
また、図2には、本発明によるピンチロールの昇降機構において、ピンチロールが駆動ロールと当接した状態のときの要部の概略構成説明図が示さされている。
【0025】
また、図3には、図2に示す状態において、板状部材とカムの係止部とを省略し、支持部材とカムの当接した状態を示す説明図が示されている。
【0026】
また、図4には、図2のA矢視図が示されている。
【0027】

この図1に示すピンチロールの昇降機構10は、インクを吐出するインクヘッド(図示せず。)の移動方向と直交する方向に延設されたプラテン102上に、所定の間隔を開けて複数の駆動ロール104が一列に配設された印刷装置において、ピンチロール16が駆動ロール104に弾接した状態となるよう配設されている。
【0028】
そして、ピンチロールの昇降機構10は、一方の端部12aがバネ14に接続されるとともに、他方の端部12bがワイヤー16に接続される板状部材12と、ワイヤー16を巻き取る巻き取りローラー18と、巻き取りローラー18を駆動する駆動モーター20と、板状部材12に形成された開口部12cに摺動自在に配設されたカム22と、一方の端部24aがカム22に当接するとともに、他方の端部24bにピンチロール26a、26b、26c、26dが設けられた支持部材24とを有して構成されている。
【0029】
より詳細には、板状部材12には、左方側端部においてのみ上方側に拡張されて幅方向で開口された略L字形状の開口部12cが設けられており、この開口部12cにカム22の係止部22bが幅方向に摺動自在に係合している。
【0030】
なお、この開口部12cは、印刷装置に設けられた駆動ロール104の数だけ板状部材12に設けられており、左方側端部において拡張されている拡張部12caからカム22の係止部22b(後述する。)を挿入し、板状部材12とカム22とが係合される。
【0031】
また、板状部材12の一方の端部12aにおいては、一方の端部14aが印刷装置内に固定的に接続されたバネ14の他方の端部14bと接続されている。なお、このバネ14は、常に板状部材12を右方側に付勢するように配設されている。
【0032】
さらに、板状部材12の他方の端部12bにおいては、ワイヤー16が接続されており、このワイヤー16は、駆動モーター20により駆動される巻き取りローラー18に接続されている。
【0033】
駆動モーター20は、例えば、作業者がスイッチを押すことにより駆動および停止の切り換えを行うことができるようになされており、こうしたスイッチは印刷装置において作業者が作業しやすい位置に設けられている。
【0034】
また、駆動モーター20には、上方側に延設された回転軸20aの先端に溝20baが形成されたプーリー20bが設けられている。
【0035】
このプーリー20bに形成された溝20baは、巻き取りローラー18に形成された溝(図示せず。)と互いに噛み合うように形成されており、駆動モーター20が駆動されて回転軸20aとともにプーリー20bが回転することにより巻き取りローラー18が回転するように形成されている。
【0036】
カム22は、後方側に突出するようにして、支持部材24の一方の端部24aをガイドするガイド部30が形成されている。
【0037】
このガイド部30は、カム22の左方側の上端部近傍において平坦面22cが設けられるとともに、右方側の下端部近傍において平坦面22eが設けられている。さらに、この平坦面22cの左方側端部から平坦面22eの右方側端部に向かって傾斜する傾斜面22aが設けられ、傾斜面22aと平坦面22eとが交差する部分において凸部22dが設けられている。
【0038】
また、カム22は、前方側に突出するようにして摘み部22fが形成されるとともに、係止部22bが形成される。
【0039】
そして、カム22は、この係止部22bを開口部12cと係合させることにより板状部材12と摺動自在に配設されている。
【0040】
さらに、カム22は、作業者により摘み部22fを摘まれて、係止部22bが摺動できる開口部12cの開口範囲内で右方側あるいは左方側に移動することができる。
【0041】
支持部材24は、板状部材12と平行に設けられた支軸28に回動可能に配設されており、他方の端部24bに4つのピンチロール26、26b、26c、26dが設けられている。
【0042】
また、支持部材24は、一方の端部24aがカム22の平坦面22c、傾斜面22a、凸部22dおよび平坦面22eと当接する位置に配設されている。
【0043】
さらに、支持部材24は、例えば、コイルバネ(図示せず。)などにより、他方の端部24bが支軸28を中心として常に下方側に付勢されるとともに、一方の端部24aが支軸28を中心として常に上方側に付勢された状態で配設されている。
【0044】

以上の構成において、本発明によるピンチロールの昇降機構10によりピンチロールを昇降する場合について説明する。
【0045】
このピンチロールの昇降機構10においては、各搬送機構の全てのピンチロールを同時に昇降することができものであり、各搬送機構の全てのピンチロールを同時に上昇させるには、まず、作業者が印刷装置に設けられたスイッチ(図示せず。)を押すことにより駆動モーター20を駆動させ、駆動モーター20の駆動により回転軸20aを回転するとともにプーリー20bを回転する。
【0046】
そして、プーリー20bが回転することにより、巻き取りロール18が回転しワイヤー16を巻き取ることとなる。
【0047】
こうしてワイヤー16が巻き取りロール18に巻き取られると、ワイヤー16が接続された板状部材12が左方側に移動することとなる。
【0048】
すると、係止部22bが、板状部材12の開口部12cの右方側端部に位置していることにより、開口部12cの右方側端辺12cbにより左方側に押圧されるため、板状部材12とともに、カム12も左方側に移動する。
【0049】
そして、カム22が左方側に移動することにより、カム22の平坦面22cに当接していた支持部材24の一方の端部24aが平坦面22cから傾斜面22aに移動し、傾斜面22aの下端に位置する凸部22と当接する位置まで移動する(図5乃至図7を参照する。)。
【0050】
このとき、支持部材24の一方の端部24aは、カム22の凸部22dに当接しながら右下がりに傾斜した傾斜面22aに位置するとともに、支軸28を中心として上方側に付勢されている。このため、支持部材24によってカム22は右方側に付勢された状態となっている。
【0051】
なお、駆動モーター20は、ワイヤー16を巻き取りロール18に巻き取ったときに、支持部材24の一方の端部24aがカム22の凸部22dを超えて平坦面22eに位置することがないように駆動量が予め設定されている。
【0052】
さらに、駆動モーター20は、バネ14の右方側に働く付勢力および支持部材24の一方の端部24が傾斜面22aに位置しているときにカム22における右方側に働く付勢力に抗していた板状部材12を左方側に引ことができる駆動力が予め設定されている。
【0053】
そして、支持部材24は、一方の端部24aが平坦面22cから傾斜面22aに移動することにより、支軸28を中心として回動し、他方の端部24bが上方側に移動してピンチロール26a、26b、26c、26dを上昇させる。
【0054】
これにより、各搬送機構においてピンチロール26a、26b、26c、26dの駆動ロール104への弾接状態を同時に解除することとなる。
【0055】
なお、こうしたピンチロール26a、26b、26c、26dを上昇してピンチロール26a、26b、26c、26dの駆動ロール104への弾接状態を解除した状態は、駆動モーター20が駆動している間は維持されているものであり、この状態で、作業者は、媒体の配置位置や配置方向の修正などの所定の作業を行う。
【0056】
そして、作業者が所定の作業を終えると、作業者が印刷装置に設けられたスイッチを押すことにより、駆動モーター20の駆動を停止させる。
【0057】
これにより、板状部材12は、バネ14の付勢力により右方側へ移動することとなり、バネ14の付勢力によって巻き取りロール18に巻き取られたワイヤー16が引き出される。なお、駆動モーター20は、この際に空転するように設定されている。
【0058】
さらに、板状部材12が右方側に移動すると、カム22の凸部22dと当接し、傾斜面22aの下端に位置していた支持部材24の一方の端部24aが傾斜面22aを移動し、平坦面22cと当接した状態となる(図2乃至図4を参照する。)。
【0059】
支持部材24の一方の端部24aが傾斜面22aの下端から傾斜部22aの上方側に位置する平坦面22cへ移動することにより、支持部材24は、支軸28を中心として回動し、他方の端部24bが下方側に移動してピンチロール26a、26b、26c、26dを降下することとなる。
【0060】
これにより、各搬送機構においてピンチロール26a、26b、26c、26dが駆動ロール104へ弾接することとなる。
【0061】

また、このピンチロールの昇降機構10においては、複数あるピンチロールと駆動ロールとにより構成される搬送機構において、ピンチロールを駆動ロールに弾接して媒体を搬送する搬送機構と、ピンチロールを駆動ロールに弾接せずに媒体を搬送しない搬送機構とを選択することができるものである。
【0062】
具体的には、まず、作業者がピンチロールを駆動ロールに弾接せずに媒体を搬送しない搬送機構を選択し、選択した搬送機構においてピンチロールが設けられた支持部材24の一方の端部24aが当接したカム22の摘み部22fを摘み、板状部材12を移動することなくカム22のみを左方側に移動させる。
【0063】
このとき、カム22は、係止部22bにより板状部材12の開口部12cにガイドされて左方側に移動する。そして、作業者は、支持部材24の一方の端部24aが凸部22dを超えて平坦面22eに位置するまでカム22を左方側に移動させる(図8乃至10を参照する。)。
【0064】
このように、支持部材24の一方の端部24aが平坦面22eに位置するようにカム22を移動させることにより、支持部材24は、支軸28を中心として回動し、他方の端部24が上方側に移動することとなる。このとき、カム22においては、右方側への付勢力は生じていない。
【0065】
これにより、支持部材24は、支持部材24の一方の端部24aが平坦面22eに位置し、ピンチロール26a、26b、26c、26dを上方側に位置させた状態で、カム22によって固定されることとなる。
【0066】
つまり、ピンチロールを駆動ロールに弾接して媒体を搬送する搬送機構においては、上記において説明した全てのピンチロールを同時に昇降する際と同様に、支持部材24の一方の端部24aは平坦面22cに位置し、ピンチロール26a、26b、26c、26dが駆動ロールと弾接した状態であり、カム22によって支持部材24が固定されていない。
【0067】
これに対し、ピンチロールを駆動ロールに弾接せずに媒体を搬送しない搬送機構においては、支持部材24の一方の端部24aが平坦面22eに位置し、ピンチロール26a、26b、26c、26dを上昇させた状態で、カム22によって支持部材24を固定している。
【0068】
こうして、作業者によりカム22による支持部材24の固定が実行された後に、カム22によって支持部材24が固定されていない搬送機構において、ピンチロールの昇降を行うものであるが、こうした動作については、上記において説明した全てのピンチロールを同時に昇降するときと同様のため、その詳細な説明は省略することとする。
【0069】
そして、カム22によって支持部材24が固定されている搬送機構においては、作業者が印刷装置に設けられたスイッチ(図示せず。)を押して駆動モーター20を駆動させて板状部材12を左方側に移動したとき、カム22においては係止部22bが板状部材12の開口部12cの拡張部12caの近傍に位置しており(図8を参照する。)、板状部材12が左方側に移動しても係止部22が開口部12cの右方側端辺12cbと接することがない(図11を参照する。)。
【0070】
このため、カム22によって固定された支持部材24は、板状部材12を左方側に移動してもカム22が左方側に移動することはない。そして、当該支持部材24はカム22によって他方の端部24bが上昇した状態を維持し続ける。
【0071】
その後、作業者がカム22によって支持部材24が固定されていない搬送機構においてピンチロール26a、26b、26c、26dを上昇させた状態で所定の作業を終えると、作業者は、印刷装置に設けられたスイッチを押して、駆動モーター20の駆動を停止させる。
【0072】
すると、板状部材12は、バネ14の付勢力により右方側へ移動するものであるが、このとき、カム22には右方側への付勢力が生じていないため、板状部材12とともにカム22は右方側に移動することはない。そして、支持部材24は、カム22によって他方の端部が24bが上昇した状態を維持し続ける。
【0073】
このように、ピンチロールを駆動ロールに弾接せずに媒体を搬送しない搬送機構においては、ピンチロールの昇降が行われることがない。
【0074】
こうしたピンチロール26a、26b、26c、26dを上昇させた状態で、カム22によって支持部材24を固定した搬送機構、つまり、ピンチロールを駆動ロールに弾接せずに媒体を搬送しない搬送機構においては、作業者が摘み部22fを摘んで板状部材12を移動させることなくカム22のみを右方側に移動させることで、一方の端部24aを平面22eから平坦面22cに移動させてカム22による支持部材24の固定状態を解除することができる。
【0075】
こうして、カム22による支持部材24の固定状態を解除された搬送機構においては、ピンチロールの昇降を行うことができる状態となる。
【0076】

以上において説明したように、本発明によるピンチロールの昇降機構10においては、一方の端部12aをバネ14により右方側へ付勢した状態で固定するとともに、他方の端部12bを駆動モーター20による駆動により巻き取られるワイヤー16と接続した板状部材12を備えるようにした。
【0077】
また、板状部材12の所定の複数の位置に設けられた開口部12cに係止部22bを係合して摺動可能に配設されたカム22を設け、支軸28に回動可能に配設され、他方の端部24bに4つのピンチロールが設けられた支持部材24の一方の端部24aが、カム22に形成されたガイド部30に当接するようにした。
【0078】
そして、駆動モーター20を駆動してワイヤー16を巻き取り板状部材12を左方側に移動することで、支持部材24の一方の端部24aがガイド部30において平坦面22cから傾斜面22aを移動し凸部22dの近傍に位置するようにする。
【0079】
これにより、支持部材24が支軸28を中心として回動して他方の端部24bに設けられたピンチロールを上昇させるようにした。
【0080】
また、駆動モーター20の駆動を停止して、バネ14の付勢力により板状部材14を右方側に移動することで、支持部材24の一方の端部24aがガイド部30において傾斜面22aから平坦面22cまで移動するようにした。
【0081】
これにより、支持部材24が支軸28を中心として回動して他方の端部24bに設けられたピンチロールを降下するようにした。
【0082】
さらに、カム22を開口部12cの開口範囲内で右方側に移動させ、支持部材24の一方の端部24aをガイド部30の平坦面22eに位置させて、カム22によって支持部材24を固定することにより、カム22を右方側に移動させた搬送機構においては、板状部材12を左方側あるいは右方側に移動させても支持部材24が固定された状態を維持し、ピンチロールの昇降を行うことができないようにした。
【0083】
このため、本発明によるピンチロールの昇降機構10においては、駆動モーター20の駆動によりピンチロールを昇降することができ、作業経験のない作業者においても容易にピンチロールの昇降作業を適切に実行することができるようになる。
【0084】
さらに、本発明によるピンチロールの昇降機構10においては、作業者は、ピンチロールの昇降を行う搬送機構とピンチロールの昇降を行わない搬送機構とを決め、ピンチロールの昇降を行う搬送機構のみにより媒体をピンチロールと駆動ロール104とに狭持することができ、媒体の種類によって、選択的にピンチロールの昇降を行う搬送機構を変更することができるようになる。
【0085】
このため、本発明によるピンチロールの昇降機構10は、従来の技術によるピンチロールの昇降機構に比べて、柔軟性の高い技術となっている。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、駆動ロールとにより媒体を狭持するピンチロールを有する搬送機構を備えた印刷装置などに利用することができる。
【符号の説明】
【0087】
10 ピンチロールの昇降機構、12 板状部材、14 バネ、20 駆動モーター、22 カム、24 支持部材、26a、26b、26c、26d ピンチロール、102 プラテン、104 駆動ロール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11