(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、実施形態に基づき本開示を説明する。本開示は実施形態に限定されるものではなく、実施形態における種々の数値や材料は例示である。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示に係る表示装置の全般に関する説明
2.第1の実施形態(その他)
【0016】
[本開示に係る表示装置の全般に関する説明]
本開示の表示装置において、表示部には、異なる原色を表示する複数の種類の副画素の組から構成された画素が配列される。表示部は、1つの画素が3種類の副画素の組から成る、所謂カラー表示の構成とすることができる。カラー表示の場合、通常、1つの画素は、赤色を表示する副画素、緑色を表示する副画素、及び、青色を表示する副画素の組から成る。場合によっては、これらの3種類の副画素に更に1種類あるいは複数種類の副画素を加えた1組(例えば、輝度向上のために白色を表示する副画素を加えた1組、色再現範囲を拡大するために補色を表示する副画素を加えた1組、色再現範囲を拡大するためにイエローを表示する副画素を加えた1組、色再現範囲を拡大するためにイエロー及びシアンを表示する副画素を加えた1組)から画素が成る構成することもできる。
【0017】
上述したように、本開示の表示装置にあっては、副画素が表示する原色のうちの1つを第1原色と表すとき、第1原色を表示する副画素から成りそれぞれ隣接する副画素列の境界間の距離が、第1原色とは異なる原色を表示する同種の副画素から成りそれぞれ隣接する副画素列の境界間の距離よりも短い。第1原色は副画素が表示する原色のうち最も明度が高い原色である構成とすることが好ましい。
【0018】
この場合において、副画素が表示する原色のうち最も明度が低い原色を第2原色と表すとき、第2原色を表示する副画素から成りそれぞれ隣接する副画素列の境界間の距離が、第2原色とは異なる原色を表示する同種の副画素から成りそれぞれ隣接する副画素列の境界間の距離よりも長い構成とすることができる。更に、第1原色を表示する副画素と第2原色を表示する副画素は、行方向において交互に並んで配列されている構成とすることができる。
【0019】
上述した各種の好ましい構成を含む本開示の表示装置にあっては、第1原色を表示する副画素から成りそれぞれ隣接する副画素列の境界は重なる構成とすることができる。
【0020】
上述した各種の好ましい構成を含む本開示の表示装置にあっては、光学分離部は表示部の前面に対向して配置されている構成とすることができる。あるいは又、表示部は透過型の表示パネルから成り、表示装置は表示部を背面から照射する照明部を更に備えており、光学分離部は照明部と表示部との間に配置されている構成とすることもできる。前者の場合には、表示部として、液晶表示パネル、エレクトロルミネッセンス表示パネル、プラズマ表示パネル等といった、周知の表示部材を用いることができる。後者の場合には、表示部として、例えば透過型液晶表示パネルといった周知の表示部材を用いることができる。
【0021】
光学分離部の構成は特に限定するものではなく、パララックスバリアや、レンチキュラーレンズといったレンズシートなどの周知の部材を用いることができる。光学分離部は、固定的な構成であってもよいし、動的に切り替え可能な構成であってもよい。
【0022】
固定的なパララックスバリアは、アクリル系樹脂・ポリカーボネート樹脂(PC)・ABS樹脂・ポリメタクリル酸メチル(PMMA)・ポリアリレート樹脂(PAR)・ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)・ガラスなどといった周知の透明な材料から成る基材を用いて、フォトリソグラフ法とエッチング法との組合せ、スクリーン印刷法やインクジェット印刷法といった各種印刷法、電気メッキ法や無電解メッキ法といった各種メッキ法、リフトオフ法等の周知の方法により形成することができる。一方、動的に切り替え可能なパララックスバリアは、例えば、液晶材料層を備えた電気的に切り替え可能なライトバルブによって構成することができる。液晶材料層を用いたライトバルブを構成する材料の種類や、液晶材料層の動作モードは特に限定するものではない。場合によっては、モノクロ表示の液晶表示パネルを動的なパララックスバリアとして用いることもできる。パララックスバリアの開口部の大きさや配列ピッチ等は、表示装置の仕様等に応じて適宜設定すればよい。
【0023】
固定的なレンズシートは、例えば、上述した周知の透明な材料等を用いて一体的に成型して構成することができるし、あるいは又、上述した材料等から成るシート状の基材の上に例えば感光性の樹脂材料等を用いてレンズ列を形成して構成することができる。一方、動的に切り替え可能なレンズシートは、例えば、透明な一対のシートと、シート間に配置された液晶材料層を備え、液晶材料層によって電気的に切り替え可能な屈折率分布レンズを形成するといった構成とすることができる。レンズ列の光学パワーや、レンズ列のピッチ等は、表示装置の仕様などに応じて適宜設定すればよい。
【0024】
表示装置が透過型表示パネルと照明部とを備えている構成にあっては、周知の照明部を用いることができる。照明部の構成は、特に限定するものではない。一般に、照明部は、光源、プリズムシート、拡散シート、導光板等といった周知の部材から構成することができる。
【0025】
後述する実施形態においては、アクティブマトリクス方式の透過型カラー液晶表示パネルを表示部として用い、固定的なパララックスバリアを光学分離部として用いる。また、実施形態にあっては、光学分離部は表示部と照明部との間に配置されているとして説明する。
【0026】
液晶表示パネルは、例えば、透明第1電極を備えたフロントパネル、透明第2電極を備えたリアパネル、及び、フロントパネルとリアパネルとの間に配置された液晶材料から成る。液晶表示パネルの動作モードは特に限定するものではない。所謂TN(Twisted Nematic)モードで駆動される構成であってもよいし、VA(Vertical Alignment)モードあるいはIPS(In-Plane Switching)モードで駆動される構成であってもよい。
【0027】
より具体的には、フロントパネルは、例えば、ガラス基板から成る第1の基板と、第1の基板の内面に設けられた透明第1電極(共通電極とも呼ばれ、例えば、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)から成る)と、第1の基板の外面に設けられた偏光フィルムとから構成されている。透過型のカラー液晶表示装置においては、第1の基板の内面に、アクリル樹脂やエポキシ樹脂から成るオーバーコート層によって被覆されたカラーフィルターが設けられている。カラーフィルターの配置パターンは特に限定するものではない。そして、フロントパネルは、更に、オーバーコート層上に透明第1電極が形成された構成を有している。尚、透明第1電極上には配向膜が形成されている。
【0028】
一方、リアパネルは、例えば、ガラス基板から成る第2の基板と、第2の基板の内面に形成されたスイッチング素子と、スイッチング素子によって導通/非導通が制御される透明第2電極(画素電極とも呼ばれ、例えば、ITOから成る)と、第2の基板の外面に設けられた偏光フィルムとから構成されている。透明第2電極を含む全面には配向膜が形成されている。液晶表示パネルを構成する各種の部材や液晶材料は、周知の部材や材料から構成することができる。スイッチング素子として、例えば薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)といった3端子素子や、MIM(Metal Insulator Metal)素子、バリスタ素子、ダイオード等の2端子素子を例示することができる。これらのスイッチング素子には、例えば行方向に延びる走査線や列方向に延びる信号線が接続されている。走査線や信号線といった配線によって、隣接する副画素の間には遮光部が形成される。
【0029】
表示部の画素(ピクセル)の数M×Nを(M,N)で表記したとき、(M,N)の値として、具体的には、VGA(640,480)、S−VGA(800,600)、XGA(1024,768)、APRC(1152,900)、S−XGA(1280,1024)、U−XGA(1600,1200)、HD−TV(1920,1080)、Q−XGA(2048,1536)の他、(1920,1035)、(720,480)、(1280,960)等、画像表示用解像度の幾つかを例示することができるが、これらの値に限定するものではない。
【0030】
表示部を駆動する駆動回路などは、種々の回路から構成することができる。これらは周知の回路素子などを用いて構成することができる。
【0031】
本明細書に示す各種の条件は、厳密に成立する場合の他、実質的に成立する場合にも満たされる。設計上あるいは製造上生ずる種々のばらつきの存在は許容される。
【0032】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、本開示に係る表示装置に関する。
【0033】
図1は、第1の実施形態の表示装置を仮想的に分離したときの模式的な斜視図である。
【0034】
図1に示すように、表示装置1は、
異なる原色を表示する複数の種類の副画素の組から構成された画素12が、行方向(図においてX方向)および列方向(図においてY方向)に2次元マトリクス状に配列された表示部10、並びに、
表示部10に表示される画像を複数の視点用の画像に分離する光学分離部30、
を備えている。
【0035】
表示装置1は表示部10を背面から照射する照明部20を更に備えており、光学分離部30は表示部の前面に配置されている。照明部20は、光源、プリズムシート、拡散シート、導光板等といった部材(これらは図示せず)から構成されている。拡散シート等を介した拡散光が、発光面21から表示部10の背面に向かって照射される。光学分離部30は、表示部10に表示される多視点用画像を分離し、各観察領域WA
L,WA
C,WA
Rにおいて各視点用の画像を観察可能とする。
【0036】
表示部10は、透過型の表示パネル(具体的には、アクティブマトリクス方式の透過型カラー液晶表示パネル)から成り、観察領域WA側のフロントパネル、照明部20側のリアパネル、フロントパネルとリアパネルとの間に配置された液晶材料等から構成されている。図示の都合上、
図1においては表示部10を1枚のパネルとして表した。
【0037】
表示部10は、視点A
1ないし視点A
4用の多視点用画像を表示する。表示部10の表示領域11には、行方向にM個、列方向にN個、合計M×N個の画素12が配列されている。第m列(但し、m=1,2・・・,M)、第n行目(但し、n=1,2・・・,N)の画素12を、第(m,n)番目の画素12あるいは画素12
(m,n)と表す。また、第m列目の画素(具体的には、画素12
(m,1)ないし画素12
(m,n))を、画素12
mと表す場合がある。表示部10の画素数(M,N)は、例えば(1024,768)である。画素12は、列方向に並んだ4種類の副画素から構成されている。尚、図示の都合上、
図1においては副画素の表示を省略した。副画素の詳細については、後述する
図2を参照して、後ほど詳しく説明する。
【0038】
光学分離部30は、列方向に延び、行方向に複数並んで配置される開口部31と、開口部31以外の部分に位置するマスク部32とを備えている。開口部31は、行方向に複数(P個)並んで配列されている。第p列目(但し、p=1,2・・・,P)の開口部31を、開口部31
pと表す。
【0039】
光学分離部30は、例えばPETフィルム上に、黒色顔料を含有した感光性材料層を形成した後、フォトリソグラフ法とエッチング法との組合せによりマスク部32を残して感光性材料層を除去することにより構成した。感光性材料層が除去された部分が開口部31となり、感光性材料層が残った部分がマスク部32となる。尚、後述する
図5においては、光学分離部30の基材となるPETフィルムの図示を省略し、開口部31とマスク部32とを模式的に示した。また、明確化のために、マスク部32を黒く表示した。
【0040】
各実施形態において、表示装置に表示される画像の視点数は、
図1に示す各観察領域WA
L,WA
C,WA
Rにおいて、それぞれ、視点A
1,A
2,A
3,A
4の4つであるとして説明するが、これに限るものではない。観察領域の個数や視点の数は、表示装置の設計に応じて適宜設定することができる。
【0041】
以上、表示装置1の概要について説明した。引き続き、表示部10の概要について説明する。
【0042】
図2は、表示部の一部の模式的な平面図である。より具体的には、第(m−1)列ないし第(m+4)列、第n行目の画素12を含む部分の表示部10の模式的な平面図である。
【0043】
画素12は、列方向に並ぶ4種類の副画素の組、具体的には、赤色を表示する副画素(赤色副画素)12R、緑色を表示する副画素(緑色副画素)12G、青色を表示する副画素(青色副画素)12B、及び、白色を表示する副画素(白色副画素)12Wの組から構成されている。
図2において、符号「R」は赤色副画素12Rの区画を示し、符号「G」は緑色副画素12Gの区画を示す。同様に、符号「B」は青色副画素12Bの区画を示し、符号「W」は白色副画素12Wの区画を示す。
【0044】
各副画素12R,12G,12B,12Wの周囲は、行方向に延びる走査線といった配線などから成る遮光部13と、列方向に延びる信号線といった配線などから成る遮光部14によって囲まれている。副画素12R,12G,12B,12Wは矩形状である。符号BWは遮光部14の幅を示す。表示部10の全体において幅BWは一定の値である。
【0045】
画素12を構成する各副画素12R,12G,12B,12Wの行方向の配列について説明する。画素12の最上部(
図2において最も+Y方向側)については、緑色副画素12Gと赤色副画素12Rとが行方向において交互に配列されている。最上部から1段下(
図2において−Y方向側)については、青色副画素12Bと白色副画素12Wとが行方向において交互に配列されている。同様に、最上部から2段下については、赤色副画素12Rと緑色副画素12Gとが行方向において交互に配列されている。最上部から3段下(最下部)については、白色副画素12Wと青色副画素12Bとが行方向において交互に配列されている。第n行目以外の画素12についての各副画素12R,12G,12B,12Wの行方向の配列についても同様である。従って、画素12は、[(最上部)副画素12G/副画素12B/副画素12R/副画素12W(最下部)]といった組から成る画素と、[(最上部)副画素12R/副画素12W/副画素12G/副画素12B(最下部)]といった組から成る画素が、行方向に交互に並んでいる。尚、副画素12R,12G,12B,12Wの列方向の幅TWは同一である。
【0046】
図2に示す符号LW
R,LW
G,LW
B,LW
Wは、それぞれ、副画素12R,12G,12B,12Wの行方向の幅を示す。第1の実施形態において、幅LW
R,LW
G,LW
B,LW
Wは、以下の式(1)、式(2)、式(3)に示す条件を満たす。
【0047】
LW
R=LW
G (1)
LW
W>LW
B (2)
LW
W+LW
B=LW
R+LW
G (3)
【0048】
図1に示す表示装置1には、各画素に対応して、図示せぬ赤色表示用の映像信号VS
R、緑色表示用の映像信号VS
G、及び、青色表示用の映像信号VS
Bが入力される。
図3の(A)及び(B)を参照して、副画素12R,12G,12B,12Wを駆動する信号の値について説明する。
【0049】
図3の(A)及び(B)は、副画素を駆動する信号を説明するための模式的なグラフである。尚、説明の都合上、映像信号VS
R,VS
G,VS
Bは、8ビットに離散化された0〜255階調であるとするが、これは例示に過ぎない。
【0050】
図3の(A)に示すように、表示装置1は、入力された映像信号VS
R,VS
G,VS
Bの値のうちの最小値を求める。図に示す関数MIN(VS
R,VS
G,VS
B)は、最小値を与える関数である。
図3の(A)に示す例では、MIN(VS
R,VS
G,VS
B)=VS
Bである。
【0051】
そして、
図3の(B)に示すように、白色副画素12Wを、MIN(VS
R,VS
G,VS
B)で与えられる信号に基づいて駆動する。一方、赤色副画素12Rを、VS
R−MIN(VS
R,VS
G,VS
B)で与えられる信号に基づいて駆動し、緑色副画素12Gを、VS
G−MIN(VS
R,VS
G,VS
B)で与えられる信号に基づいて駆動し、青色副画素12Bを、VS
B−MIN(VS
R,VS
G,VS
B)で与えられる信号に基づいて駆動する。
【0052】
以上、表示部10の概要について説明した。ここで、発明の理解を助けるため、参考例の表示部を用いた場合の課題について説明する。
【0053】
図4は、
図2に対応する図面であって、幅LW
R,LW
G,LW
B,LW
Wが全て等しい参考例の表示部の一部の模式的な平面図である。説明の都合上、参考例の表示部10’の構成要素を表す参照番号や符号は、基本的には、表示部10の説明で用いた構成要素を表す参照番号や符号と同様とする。尚、幅LW
R,LW
G,LW
B,LW
Wは全て等しいので、これらを区別せず単に幅LWとして表した。
【0054】
先ず、
図1に示す表示部10を参考例の表示部10’に置き換えたときの、表示部10’と光学分離部30との位置関係について説明する。
【0055】
図5は、副画素からの光が中央の観察領域の視点A
1乃至A
4に向かうために満たす条件を説明するための模式図である。
【0056】
説明の都合上、
図5にあっては、第p列目の開口部31
pは、開口部31
1と開口部31
Pとの間の中心に位置するものとする。また、第(m+1)列目の画素12
m+1と第(m+2)列目の画素12
m+2との間の中点、及び、観察領域WA
Cにおける視点A
2と視点A
3との間の中点は、開口部31
pの中心を通りZ方向に延びる仮想直線上に位置するものとする。画素ピッチをND[mm]と表し、開口部ピッチをRD[mm]と表す。光学分離部30と表示部10’との間の距離をZ1[mm]と表し、光学分離部30と観察領域WA
L,WA
C,WA
Rとの間の距離をZ2[mm]と表す。また、観察領域WA
L,WA
C,WA
Rにおいて隣接する視点間の距離をDP[mm]と表す。尚、表示部10’と発光部20との間の距離は特に限定するものではなく、表示装置の仕様に応じて、適宜好ましい値に設定される。
【0057】
開口部31の幅を符号PWと表し、マスク部32の幅を符号SWと表せば、開口部ピッチRD=SW+PWといった関係にある。定性的には、PW/RD=PW/(SW+PW)の値を小さくするほど、各視点用の画像の指向性は向上するが、観察される画像の輝度は低下する。PW/RDの値は、表示装置の仕様に応じて、適宜好ましい値に設定すればよい。
【0058】
開口部31
pを透過する画素12
m+3,12
m+2,12
m+1,12
mからの光のそれぞれが、中央の観察領域WA
Cの視点A
1,A
2,A
3,A
4に向かう条件について考察する。説明の都合上、開口部31の幅PWは充分小さいとし、開口部31の中心を通る光の軌道に注目して説明する。
【0059】
開口部31
pの中心を通りZ方向に延びる仮想直線を基準として、画素12
m+3の中心までの距離を符号X1で表し、中央の観察領域WA
Cの視点A
1までの距離を符号X2と表す。画素12
m+3からの光が開口部31
pを透過して観察領域WA
Cの視点A
1に向かうとき、幾何学的な相似関係から、以下の式(4)に示す条件を満たす。
【0061】
ここで、X1=1.5×ND、X2=1.5×DPであるので、これらを反映すると、式(4)は、以下の式(4’)のように表される。
【0062】
Z1:1.5×ND=Z2:1.5×DP (4’)
【0063】
上述した式(4’)を満たせば、画素12
m+2,12
m+1,12
mを透過する開口部31
pからの光も、それぞれ、観察領域WA
Cの視点A
2,A
3,A
4に向かうといったことは、幾何学的に明らかである。
【0064】
次に、開口部31
p+1を透過する画素12
m+3,12
m+2,12
m+1,12
mからの光のそれぞれが、右側の観察領域WA
Rの視点A
1,A
2,A
3,A
4に向かう条件について考察する。
【0065】
開口部31
pの中心を通りZ方向に延びる仮想直線を基準として、右側の観察領域WA
Rの視点A
1までの距離を符号X3と表す。画素12
m+3からの光が開口部31
p+1を透過して観察領域WA
Rの視点A
1に向かうとき、幾何学的な相似関係から、以下の式(5)に示す条件を満たす。
【0066】
Z1:RD−X1=(Z1+Z2):(X3−X1) (5)
【0067】
ここで、X1=1.5×ND、X3=2.5×DPであるので、これらを反映すると、式(5)は、以下の式(5’)のように表される。
【0068】
Z1:RD−1.5×ND=(Z1+Z2):(2.5×DP−1.5×ND) (5’)
【0069】
上述した式(5’)を満たせば、画素12
m+2,12
m+1,12
mを透過する開口部31
p+1からの光も、それぞれ、観察領域WA
Cの視点A
2,A
3,A
4に向かうといったことは、幾何学的に明らかである。
【0070】
距離Z2及び距離DPの値は、表示装置の仕様に基づいて所定の値に設定される。また、画素ピッチNDの値は、表示部10’の構造によって定まる。式(4’)と式(5’)より、距離Z1と開口部ピッチRDについて、以下の式(6)と式(7)を得る。
【0071】
Z1=Z2×ND/DP (6)
RD=4×DP×ND/(DP+ND) (7)
【0072】
例えば、表示部10’の画素ピッチNDが0.300[mm]、距離Z2が300[mm]、距離DPが65.0[mm]であったとすると、距離Z1は約1.39[mm]、開口部ピッチRDは約1.19[mm]である。
【0073】
上述した例では、開口部ピッチRDの値は画素ピッチNDの値の略4倍となる。従って、上述した「M」と「P」とは、M≒P×4といった関係にある。
【0074】
距離Z1や開口部ピッチRDは上述の条件を満たすように設定されており、観察領域WA
L,WA
C,WA
Rにおける視点A
1,A
2,A
3,A
4のそれぞれにおいて、所定の視点用の画像を観察することができる。
【0075】
次いで、
図6乃至
図8を参照して、視点の移動に起因する視認性の悪化について説明する。
【0076】
図6は、参考例の表示部を用いた場合において、画像観察者の視点が視点A
1にあるときに開口部31
pを通して観察される副画素の面積を説明するための模式的な平面図である。
【0077】
例えば、白色副画素12Wの面積に注目すると、この場合、開口部31
pを通して第12
m+3列目の白色副画素12Wが観察される。白色が表示される面積S
1の値は、S
1=TW×PWといった式で与えられる。
【0078】
図7は、参考例の表示部を用いた場合において、画像観察者の視点が視点A
1と視点A
2との間にあるときの、開口部31
pを通して観察される副画素の面積を説明するための模式的な平面図である。
【0079】
この場合には、開口部31
pを通して、第12
m+3列目の白色副画素12Wと第12
m+2列目の白色副画素12Wとが観察される。白色が表示される面積の値は面積S
2と面積S
3の値の和で与えられる。ここで、S
2+S
3=TW×(PW−BW)である。
【0080】
従って、
図6に対して
図7では、開口部31
pを通して観察される白色副画素12Wの面積が小さくなり光量は減少する。他の副画素12R,12G,12Bについても同様である。視点の移動による面積の変化は、開口部31
pと遮光部14との位置関係によって変化する。
【0081】
図8は、参考例の表示部を用いた場合において、画像観察者の視点の移動と開口部31
pを通して観察される第n行目の副画素12R,12G,12B,12Wの面積の変化との関係を説明する模式的なグラフである。
【0082】
図8において、グラフの横軸は視点の位置を表す。グラフの縦軸は、開口部31
pを介して観察される各副画素の面積を示す。尚、縦軸の値は、上述した面積S
1を基準として正規化した。
【0083】
画像観察者の視点が移動する場合、開口部31を介して観測される画素の面積は、表示部の全体において
図8に示すように変化する。従って、画像観察者の視点が移動すると、表示される画像の輝度変化やモアレが生じ、視認性が悪化する。
【0084】
以上、参考例の表示部を用いた場合の課題について説明した。次いで、
図2に示す表示部10を用いた場合について説明する。
【0085】
副画素12R,12G,12B,12Wが表示する原色のうちの1つを第1原色と表すとき、第1原色を表示する副画素から成りそれぞれ隣接する副画素列の境界間の距離と、第1原色とは異なる原色を表示する同種の副画素から成りそれぞれ隣接する副画素列の境界間の距離との関係について説明する。
【0086】
赤色、緑色、青色および白色のうち、白色は最も明度が高い原色である。ここでは、副画素が表示する原色のうちの白色を第1原色と表す。
【0087】
以下、
図9ないし
図11を参照して説明するように、第1原色(白色)を表示する副画素12Wから成りそれぞれ隣接する副画素列の境界間の距離は、第1原色とは異なる原色(即ち、赤色、緑色および青色)を表示する同種の副画素から成りそれぞれ隣接する副画素列の境界間の距離よりも短い。
【0088】
図9は、白色を表示する副画素から成る副画素列の境界を説明するための、表示部の一部の模式的な平面図である。
【0089】
副画素12Wにおける+Y方向側の辺(上辺)を符号w
nで表し、−Y方向側の辺(下辺)を符号w
sで表す。同様に、+X方向側の辺(右辺)を符号w
eで表し、−X方向側の辺(左辺)を符号w
wで表す。
【0090】
例えば、第(m−1)列目の画素12
m-1に属する副画素12Wから成る副画素列と、第m列目の画素12
mに属する副画素12Wから成る副画素列に注目すると、これら二つの副画素列は、それぞれ隣接する副画素列を構成する。隣接するこの2つの副画素列の境界に注目すると、第(m−1)列目の副画素列の境界は辺w
eを含む直線状の境界BL
weとなる。また、第m列目の副画素列の境界は辺w
wを含む直線状の境界BL
wwとなる。そして、境界BL
weと境界BL
wwとの距離は0である。換言すれば、境界BL
weと境界BL
wwとは重なっている。他の白色の副画素列においても同様である。
【0091】
図10は、青色を表示する副画素から成る副画素列の境界を説明するための、表示部の一部の模式的な平面図である。
【0092】
副画素12Bにおける+Y方向側の辺(上辺)を符号b
nで表し、−Y方向側の辺(下辺)を符号b
sで表す。同様に、+X方向側の辺(右辺)を符号b
eで表し、−X方向側の辺(左辺)を符号b
wで表す。
【0093】
上述した副画素12Wの境界について説明したのと同様に、例えば、第(m−1)列目の画素12
m-1に属する副画素12Bから成る副画素列と、第m列目の画素12
mに属する副画素12Bから成る副画素列に注目すると、これら二つの副画素列は、それぞれ隣接する副画素列を構成する。隣接するこの2つの副画素列の境界に注目すると、第(m−1)列目の副画素列の境界は辺b
eを含む直線状の境界BL
beとなる。また、第m列目の副画素列の境界は辺b
wを含む直線状の境界BL
bwとなる。そして、境界BL
beと境界BL
bwとの距離は、
図2に示す遮光部14の幅BWよりも大きい。
【0094】
図11は、赤色を表示する副画素から成る副画素列の境界、及び、緑色を表示する副画素から成る副画素列の境界を説明するための、表示部の一部の模式的な平面図である。
【0095】
副画素12Rにおける+Y方向側の辺(上辺)を符号r
nで表し、−Y方向側の辺(下辺)を符号r
sで表す。同様に、+X方向側の辺(右辺)を符号r
eで表し、−X方向側の辺(左辺)を符号r
wで表す。また、副画素12Gにおける+Y方向側の辺(上辺)を符号g
nで表し、−Y方向側の辺(右辺)を符号g
sで表す。同様に、+X方向側の辺(上辺)を符号g
eで表し、−X方向側の辺(右辺)を符号g
wで表す。
【0096】
上述した副画素12Wの境界について説明したのと同様に、例えば、第(m+2)列目の画素12
m+2に属する副画素12Rから成る副画素列と、第(m+3)列目の画素12
m+3に属する副画素12Rから成る副画素列に注目すると、これら二つの副画素列は、それぞれ隣接する副画素列を構成する。隣接するこの2つの副画素列の境界に注目すると、第(m+2)列目の副画素列の境界は辺r
eを含む直線状の境界BL
reとなる。また、第(m+3)列目の副画素列の境界は辺r
wを含む直線状の境界BL
rwとなる。そして、境界BL
reと境界BL
rwとの距離は、
図2に示す遮光部14の幅BWと同じである。副画素12Gから成る副画素列の境界の関係は、副画素12Rについての説明において符号を適宜読み替えればよい。境界BL
geと境界BL
gwとの距離も、
図2に示す遮光部14の幅BWと同じである。
【0097】
以上説明したように、第1原色(白色)を表示する副画素12Wから成りそれぞれ隣接する副画素列の境界間の距離は、第1原色とは異なる原色を表示する同種の副画素から成りそれぞれ隣接する副画素列の境界間の距離よりも短い。
【0098】
また、赤色、緑色、青色および白色のうち、青色は最も明度が低い原色である。副画素が表示する原色のうちの青色を第2原色と表せば、第2原色を表示する副画素12Bから成りそれぞれ隣接する副画素列の境界間の距離が、第2原色とは異なる原色を表示する同種の副画素から成りそれぞれ隣接する副画素列の境界間の距離よりも長い。第1原色を表示する副画素と第2原色を表示する副画素は、行方向において交互に並んで配列されている。
【0099】
以上説明した構成とすることによって、後述する
図14に示すように、第1原色を表示する画素について、視点の移動に起因する視認性の悪化が軽減される。これによって、視点の移動に起因する視認性の悪化を軽減することができる。
【0100】
図12は、第1の実施形態の表示装置において、画像観察者の視点が視点A
1にあるときに開口部31
pを通して観察される白色副画素の面積を説明するための模式的な平面図である。
【0101】
白色副画素12Wの面積に注目すると、開口部31
pを通して第12
m+3列目の白色副画素12Wが観察される。白色が表示される面積S
4の値は、S
4=TW×PWといった式で与えられる。
【0102】
図13は、第1の実施形態の表示装置において、画像観察者の視点が視点A
1と視点A
2との間にあるときの、開口部31
pを通して観察される白色副画素の面積を説明するための模式的な平面図である。
【0103】
この場合には、開口部31
pを通して、第12
m+3列目の白色副画素12Wと第12
m+2列目の白色副画素12Wとが観察される。白色が表示される面積の値は面積S
5と面積S
6の値の和で与えられる。上述したように、境界BL
weと境界BL
wwとは重なっているので、S
5+S
6=TW×PWである。
【0104】
従って、
図12と
図13では、開口部31
pを通して観察される白色副画素12Wの面積は一定である。例えば隣接する副画素12Wが同じ輝度であれば、光量は一定である。このように、開口部31
pと遮光部14との位置関係が変化しても、開口部31
pを通して観察される白色副画素12Wの面積は一定である。
【0105】
図14は、第1の実施形態の表示装置において、画像観察者の視点の移動と開口部31
pを通して観察される副画素12R,12G,12B,12Wの面積の変化との関係を説明する模式的なグラフである。グラフの横軸と縦軸は、
図8において説明した通りであるので、説明を省略する。
【0106】
図2に示す幅LW
Rと幅LW
Gとが
図4に示す幅LWと同じであるとすれば、
図14に示す赤色副画素12Rと緑色副画素12Gとについてのグラフは、
図8に示すグラフと同一である。一方、
図8と
図14とを対比して明らかなように、視点が移動しても開口部31を通して観察される白色副画素12Wの面積は一定となる。赤色、緑色、青色および白色のうち、白色は最も明度が高い原色であるので、視点の移動による画像の輝度変化やモアレが軽減される。
【0107】
尚、第1の実施形態の表示装置において、画像観察者の視点の移動と開口部31を通して観察される青色副画素12Bの面積の変化は、参考例の表示部10’を用いた場合よりも多少顕著になる。しかしながら、人間の視覚において網膜のS錐体から輝度チャネルへの寄与は非常に小さいので、輝度変化やモアレに与える影響は少なく問題とはならない。
【0108】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0109】
例えば、表示部の副画素の配列は種々変更することができる。
【0110】
図15は、変形例の表示部の一部の模式的な平面図である。
【0111】
図15に示す表示部110にあっては、画素12は、[(最上部)副画素12G/副画素12R/副画素12W/副画素12B(最下部)]といった組から成る画素と、[(最上部)副画素12R/副画素12G/副画素12B/副画素12W(最下部)]といった組から成る画素が、行方向に交互に並ぶ。
【0112】
図16も、変形例の表示部の一部の模式的な平面図である。
【0113】
図16に示す表示部210にあっては、画素12は、副画素12R,12G,12Bから成る組と、副画素12R,12G,12Wから成る組とで構成されている。そして、画素12は、[(最上部)副画素12R/副画素12G/副画素12B(最下部)]といった組から成る画素と、[(最上部)副画素12R/副画素12G/副画素12W(最下部)]といった組から成る画素が、行方向に交互に並ぶ。
【0114】
図17も、変形例の表示部の一部の模式的な平面図である。
【0115】
図17に示す表示部310にあっては、画素12は、副画素12R,12G,12Bから成る組から構成されている。この場合には、最も明度が高い緑色を第1原色とすればよい。
【0116】
なお、本開示の技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)異なる原色を表示する複数の種類の副画素の組から構成された画素が、行方向および列方向に2次元マトリクス状に配列された表示部、並びに、
表示部に表示される画像を複数の視点用の画像に分離する光学分離部、
を備えており、
副画素が表示する原色のうちの1つを第1原色と表すとき、第1原色を表示する副画素から成りそれぞれ隣接する副画素列の境界間の距離が、第1原色とは異なる原色を表示する同種の副画素から成りそれぞれ隣接する副画素列の境界間の距離よりも短い表示装置。
(2)第1原色は副画素が表示する原色のうち最も明度が高い原色である前記(1)に記載の表示装置。
(3)副画素が表示する原色のうち最も明度が低い原色を第2原色と表すとき、第2原色を表示する副画素から成りそれぞれ隣接する副画素列の境界間の距離が、第2原色とは異なる原色を表示する同種の副画素から成りそれぞれ隣接する副画素列の境界間の距離よりも長い前記(1)または(2)に記載の表示装置。
(4)第1原色を表示する副画素と第2原色を表示する副画素は、行方向において交互に並んで配列されている前記(3)に記載の表示装置。
(5)第1原色を表示する副画素から成りそれぞれ隣接する副画素列の境界は重なる前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の表示装置。