(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694039
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】津波シェルタ
(51)【国際特許分類】
B63C 9/06 20060101AFI20150312BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20150312BHJP
B63B 43/14 20060101ALI20150312BHJP
A62B 99/00 20090101ALI20150312BHJP
【FI】
B63C9/06
E04H9/14 Z
B63B43/14
A62B99/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-92357(P2011-92357)
(22)【出願日】2011年4月18日
(65)【公開番号】特開2012-224160(P2012-224160A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2013年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2011-82852(P2011-82852)
(32)【優先日】2011年4月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392027427
【氏名又は名称】株式会社シルバーロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100082429
【弁理士】
【氏名又は名称】森 義明
(74)【代理人】
【識別番号】100147706
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162754
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 真樹
(72)【発明者】
【氏名】高見 千秋
【審査官】
中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭46−012382(JP,B1)
【文献】
英国特許出願公開第02006121(GB,A)
【文献】
特開平08−276894(JP,A)
【文献】
特公昭58−032079(JP,B2)
【文献】
特開平11−141173(JP,A)
【文献】
特開2006−158874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 9/06,9/00,9/02
B63B 43/14
E04H 9/14
A62B 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空体で許容積載重量下で水に浮かぶ浮力を付与するその内容積を有する鋼鉄製ハウジングと、
ハウジングの少なくとも1対の対向面において、該対向面の中心点を結ぶ線の中点を中心として互いに反対側の最も遠い位置に設けられ、内側に開く出入り用の水密性開閉ハッチと、
開閉ハッチの反対側にて対向面の対角線上の反対側のコーナー部分に設けられた非常用出口とで構成されていることを特徴とする津波シェルタ。
【請求項2】
耐圧透明体が嵌めこまれた窓がハウジングに少なくとも1つ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の津波シェルタ。
【請求項3】
ハウジング内の内圧を調整する内圧調整部がハウジングの壁面に更に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の津波シェルタ。
【請求項4】
ハウジングの構成面が内部で仕切られて複数の独立空間で構成された中空2重壁となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の津波シェルタ。
【請求項5】
ハウジングの外面に中空の浮力補助タンクが更に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の津波シェルタ。
【請求項6】
ハウジングの内面が断熱材で覆われていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の津波シェルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震によって津波が発生した際に、その津波が引くまでの間、人が一時的に避難するための津波シェルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
我が国は世界でも有数の地震国であり、毎年のように地震によって尊い生命を失う被害者が発生しているのが現実である。地震は前触れもなく突然発生し、広範囲にわたって無数の家屋や道路、橋、港湾などを瞬時に破壊し、多くの人を瓦礫の中に閉じ込めてしまう。そして続いて倒壊した家屋から出火して一面を焼き尽くす。地震が巨大でその震源地が海底である場合、大きな津波を引き起こし、この巨大津波の破壊力は凄まじく堅固に構築された防波堤をも簡単に破壊し、破壊した構造物ごと海岸地帯を襲って陸の構造物も破壊し尽くし、建物の瓦礫を人もろとも根こそぎ海中に引きずり込む。
【0003】
このような津波に対しては、津波来襲警報によって自治体が予め指定した高台にある学校や公民館等の避難施設へと避難するより他にないが、地震発生から津波の第1波の来襲までの時間は非常に短く、且つ2波、3波と数次に繰り返して来襲するため安全な場所に逃げ込む余裕は小さく、一瞬の判断の遅れが惨事を招くことになる。特に、避難施設が海岸から離れている場合、海岸近くの住民の避難が間に合わず、津波にのまれてしまう。
【0004】
仮に、津波にのまれず、浮遊物にしがみついたりしてかろうじて助かったとしても、冬場の津波では救助されるまでに時間が掛かると寒さで落命してしまう。
【0005】
このような実情に鑑みて、安全な場所へ避難することが間に合わない場合には一時的に避難するための津波シェルタを自宅近く或いは集落の集会所、海岸近くに津波避難のための設備に付設して設けておき、とりあえずその中に避難して、ラジオなどの情報を得てから行動することが望ましい。
【0006】
このような地震や津波に対する家族用の津波シェルタとして特許文献1〜3に示すようなものが提案されている。特許文献1に記載のシェルタは、安全な場所への避難が間に合わない場合には一時的に避難するための津波シェルタを自宅近くに設けておき、とりあえずその中に避難し、事態が一応鎮静化してから行動することが出来るようにするためのもので、そのためには大波に呑まれても流されないこと、人間が呼吸するための空気が確保されること、地面にしっかりと固定され、出入口が密閉可能な気密性の構造とすること、特に、津波は他の災害に比べて持続時間が短く、通常は数分程度で引いてしまうため、その構造は可能な限り簡易で、安価であるようなものを提案している。しかしながら、予想を超えたような大津波の破壊力は想像以上のものがあり、しかも繰り返して襲ってくるため地面に固定されている場合には水没或いは土砂や瓦礫に埋没してしまう危険性がある。
【0007】
特許文献2に記載のシェルタは、基礎地盤の上に設置され、津波到来時に浮遊する津波シェルタ装置であって、上部に形成された避難室と、下部に形成された浮力室とからなり、水上において浮遊可能なハウジングと、前記ハウジングの外面と前記基礎地盤との間に連結された連結索とで構成されているものであって、連結索の長さは到来が予想される津波の水位より少なくとも長く設定されると共に前記ハウジングの重心位置は前記ハウジングの浮心位置より下方に位置するというものであるが、津波は単に巨大な海水が押し寄せるだけでなく、海底から巻き上げた大量の土砂や破壊された家屋の瓦礫を巻き込んで押し寄せるため、当然、基礎地盤に連結された連結索にこれら瓦礫が絡まり、収容された人もろとも瞬時に避難室を海中に引き込んでしまうことが高い確率で予想され、水没する危険性があって万全でない。
【0008】
特許文献3に記載のシェルタは家屋に対して一体に付設されて家屋の一部を構成するものであって、該家屋内からの出入りが可能とされてなるものであり、津波来襲時には密閉手段にてシェルタを密閉すると同時に分離手段により家屋からシェルタを分離させ、家屋から分離された状態において水に浮くようになっている。しかしながらこの場合も特許文献2と同様、分離された状態において家屋とリンクで接続されているため、リンク長以上の大津波が押し寄せた場合、当然、水没してしまうし、瓦礫が絡まったり衝撃的にリンクに衝突してこれを破壊し、同時に海中に引きずり込んでしまうことが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−159388
【特許文献2】特開2008−74385
【特許文献3】特開2007−277998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
何百年、何千年というような長いスパンで見れば、巨大な大陸プレートの移動によって発生する震災や津波は人知や想像を遥かに超えた規模で発生する。このような災害に備えるのであれば固定的であってはならず、津波シェルタはいかなる規模、いかなる状況に於いても柔軟に耐え得るものでなければならない。本発明はかかる問題に対処するためになされたもので、どのような規模の津波が押し寄せたとしても、来襲した津波に逆らわず、津波の去った後に収容した人が安全且つ確実に脱出できるような津波シェルタを開発することその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の津波シェルタ(A)は、
中空体で許容積載重量下で水に浮かぶ浮力を付与するその内容積を有する鋼鉄製ハウジング(1)と、
ハウジング(1)の少なくとも1対の対向面において、該対向面の中心点を結ぶ線の中点を中心として互いに反対側の最も遠い位置に設けられ
、内側に開く出入り用の水密性開閉ハッチ(2)と
、
開閉ハッチ(2)の反対側にて対向面の対角線上の反対側のコーナー部分に設けられた非常用出口(10)とで構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の津波シェルタ(A)は、「耐圧透明体が嵌めこまれた窓(3)がハウジング(1)に少なくとも1つ設けられている」ことを特徴とする。
【0013】
請求項3は請求項1又は2の津波シェルタ(A)において、「ハウジング(1)内の内圧を調整する内圧調整部(4)がハウジング(1)の壁面に更に設けられている」ことを特徴とする。
【0014】
請求項4は、請求項1〜3に記載の津波シェルタ(A)において、「ハウジング(1)の構成面(1a)が内部で仕切られて複数の独立空間(R)で構成された中空二重壁となっている」ことを特徴とする。
【0015】
請求項5は請求項1〜4の津波シェルタ(A)に対する付加で、「ハウジング(1)の外面に中空の浮力補助タンク(6)が更に設けられている」ことを特徴とする。
【0016】
請求項6は請求項1〜5の津波シェルタ(A)に対する更なる付加で、「ハウジング(1)の内面が断熱材(8)で覆われている」ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の津波シェルタ(A)の開閉ハッチ(2)が、ハウジング(1)の一対の対向面において、該対向面の中心点を結ぶ線の中点を中心として互いに反対側の最も遠い位置に設けられているので、津波が去った後、津波シェルタ(A)が横倒し或いは転倒状態又はその他の姿勢で地面に接地し、或いは海上に浮かんでいた場合でも、いずれかの開閉ハッチ(2)が上側になり、たとえ下側の開閉ハッチ(2)が泥の中や海中に沈んでいたとしても、上側の開閉ハッチ(2)を開閉してハウジング(1)から脱出することができる。
【0018】
また、ハウジング(1)は許容積載重量で水に浮かぶ浮力を有するので、津波の来襲時に水位が急上昇したとしても水位の急上昇に連れて津波シェルタ(A)も浮き上がり、浮遊物に混じって津波とともに移動する。この時、開閉ハッチ(2)は水密性であるから、いったん閉じれば外部からの水の侵入はない。また、津波シェルタ(A)が津波とともに揺れながら移動するときに漂流物と激しく衝突することもあるが、全面が鋼鉄製であるから、このような衝突によって損傷を受けることがない。
【0019】
そしてこの津波シェルタ(A)には必要に応じて耐圧ガラスや耐圧プラスチックスのような耐圧透明体が嵌めこまれた窓(3)が設けられているので、ハウジング内の明り取りだけでなく、津波シェルタ(A)に収容されている人はこの窓(3)を通して外部の状況を知ることができる。更に、このハウジング(1)には必要に応じて内圧を調整する内圧調整部(4)が設けられているので、内圧が上昇するとこれが開放して外部に放出し、内圧が過剰に高まらないようにしている。
【0020】
津波シェルタ(A)のハウジング(1)の構成面(1a)が内部で仕切られて複数の独立空間(R)で構成された中空二重壁となっている場合は、仮に剛性の高い浮遊物が激しく衝突して外壁(11a)を破ったとしても、水が入り込むのは破れた部分の独立空間(R)に限られ、しかも浮力自体は鋼鉄製ハウジング(1)の内容積で担保されているため浮力が大きく損なわれることもなく、そしてハウジング(1)内まで流れ込むことがないので、収容された人に危害が及ぶことはなく安全である。
【0021】
そしてハウジング(1)の外面に中空の浮力補助タンク(6)が更に設けられておれば、これが水の喫水線に一致することになるため、浮遊物が衝突したとしても最初に衝突するのはこの浮力補助タンク(6)であり、ハウジング(1)の構成面でないため、これが破損してもハウジング(1)内に水が浸入するというようなことはないし、前述のように沈没することはない。なお、ハウジング(1)の内面が断熱材(8)で覆われていれば、長時間、冬場において海上に津波シェルタ(A)が漂っていたとしても、寒気が内部に入り込まず、収容されている人が耐えがたいような寒さから身を守ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る津波シェルタの第1実施例の平面図
【
図3】本発明に係る津波シェルタの第2実施例の部分断面図
【
図5】本発明に係る津波シェルタの第3実施例の部分正面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例について図面に基づいて詳細に説明する。
図1、2は本発明の第1実施例で、ハウジング(1)は中空体で人や緊急避難物資を収納出来ればよく、例えば方形中空体(平面視で2辺の長さが等しく、高さが異なる(即ち、高い又は低い)中空直方体(勿論、図示していないが3辺とも長さが異なる中空直方体又は3辺とも長さが等しい中空立方体でもよい。)、或いはこれらも図示しないが、中空円盤状、中空円筒状、中空円錐台状の鋼鉄製溶接構造の箱体で、一対の対向面である天井面と底面(更には側面)或いは対向側面に人が出入りするための開閉ハッチ(2)が設けられている。開閉ハッチ(2)の位置は後述する。
【0024】
ハウジング(1)は無窓でもよいし、耐圧透明体が嵌めこまれた窓(3)を少なくとも1つ設けてもよい。無窓の場合はハウジング(1)内から外部の情況が見えないため、津波が収まったとの情報をラジオや携帯電話で得たり、或いはある程度の安全性をハウジング(1)の壁面を通して感じられた時点で開閉ハッチ(2)を開くことになる。
【0025】
窓(3)は耐圧ガラスや耐圧プラスチックスのような耐圧透明体が嵌めこまれ、且つ外部から水が浸入しないようにパッキン(図示せず)が介挿された構造となっており、窓(3)を通して外部の状況を視認することが出来る。窓(3)の数は前述のように1でもよいが、天井面と床面にそれぞれ一箇所ずつ、或いはハウジング(1)を構成する面に1つずつ或いはそれ以上設けてもよい。耐圧透明体は浮遊物が直接激突しても破損しないだけの厚みと強度をもったものが使用される。
【0026】
同様に出入り口を始めとする開口部(2b)や非常用出口(10)、窓(3)には閉じた状態で外部から水が入らないようにパッキンが設けられている。
【0027】
また、外部からの水の侵入がなく且つ内部の圧力を開放する内圧調整部(4)、例えば開閉可能な通孔あるいは圧力弁が必要に応じて設置されている。開閉可能な通孔の場合、通孔に脱着可能な栓(例えば、ボルトの螺着)を設けることになる。内圧調整部(4)を設けない場合は内部の空気の入れ替えが出来ないため数時間の短期使用になる。
【0028】
ハウジング(1)の内容積は、家族用の場合は家族の人数分と予備人数と備品を十分に収容できる大きさで、地域用の場合は、予定している地域住人の人数分と備品を収容できる大きさで、且つ、収容した人や物の総重量を超える許容積載重量下で十分水に浮かぶ内容積を有する。板厚は津波襲来時に押し寄せる浮遊物の衝突にも耐え得るような厚みで、例えば10mm程度の鋼板のようなものが選定される。ハウジング(1)は鋼板を溶接した溶接構造のもので、大型のものは図示していないが縦横にリブが設けられている。強度向上のため小型でもリブを設けることは可能である。
【0029】
ハウジング(1)の内面は鋼板剥き出しのままでもよいが、内面には断熱材(8)による断熱層を形成しておくことが好ましい。冬場や夏場での災害に対しては外の冷気や熱気を遮断して退避中のハウジング(1)内の居住性を少しでも高めることが出来る。
【0030】
ハウジング(1)は前述のように中空体であって、内部に人や緊急避難物資が積み込まれればよく、その形状は問わないが、鋼鉄製であるところから前述のような形状になる。このような形状において、開閉ハッチ(2)を設ける位置は、ハウジング(1)の少なくとも1対の対向面において、該対向面の中心点を結ぶ線の中点を中心として互いに反対側の最も遠い位置ということになる。即ち、ハウジング(1)が方形中空体の場合、その天井面と底面、或いは対向側面がハウジング(1)の1対の対向面であり、これらの面の中心点を結ぶ線の中点を中心として互いに反対側の最も遠い位置とは、対向面の対角線上で反対側のコーナー部分ということになる。その場合、対向面の対角線上で反対側のコーナー部分に設けておくことが好ましい。
【0031】
ハウジング(1)が中空円盤状又は中空円筒状の場合、円形の天井面と底面、或いはカーブした側面における対向側面がハウジング(1)の1対の対向面であり、これらの面の中心点を結ぶ線の中点を中心として互いに反対側の最も遠い位置とは、該中点を対称点として、互いに点対称の位置ということになる。
【0032】
ハウジング(1)が中空円錐台状の場合は、天井面と底面の大きさが異なるため、点対称とは言えないが、これらの面の中心点を結ぶ線の中点を中心として互いに反対側の最も遠い位置、即ち、前記中点を中心として互いに反対の位置で天井面と底面の周縁部分ということになる。対向側面も同様で、前記中点を中心として互いに反対の位置で天井面と底面にそれぞれ近い位置ということになる。
【0033】
上記位置であれば、津波が去った後、津波シェルタ(A)がどのような接地姿勢でもいずれかの面が接地面に対して離れ、仮に一方の開閉ハッチ(2)が接地側に位置して開くことが出来なかったとしても、他方は上側になるから確実に開くことが出来る。
【0034】
開閉ハッチ(2)は、その一端が出入り用の開口部(2b)の近傍に設けられたヒンジ(2a)に取り付けられており、他端にロック装置(12)が設けられている。ロック装置(12)は開閉ハッチ(2)を閉めたとき、水密状態を満足させるようなものであればよく閉戸時にはロック装置(12)の開閉レバー(12a)のロック部(12b)によってロックされている。上記開閉レバー(12a)を回して上記ロック部(12b)のロックを解除すれば、外向きに開扉することができる。なお、図示していないが、津波後の接地状況によって津波シェルタ(A)が瓦礫の中に埋まってしまい、外向きに開くことが出来ない場合も考えられるので、開閉ハッチ(2)を内側に開くようにしておいてもよい。その他、非常用として内側からボルトのような締結物(10a)を外し、内側の取っ手(10c)により内側から非常用蓋(10b)を内側から明け、非常用出口(10)を開くようにしてもよい。非常用出口(10)は開閉ハッチ(2)のように開閉ハッチ(2)の反対側にて対向面の対角線上の反対側のコーナー部分に設けておくことが好ましい。
【0035】
津波シェルタ(A)が特に大型の場合、ハウジング(1)の外側面と内側面に開閉ハッチ(2)に至るステップ(9)が設けられている。
【0036】
図3、4は第2実施例で、津波シェルタ(A)の構成面が外壁(11a)と内壁(11b)及び外壁(11a)と内壁(11b)の間に設けられて独立空間(R)を構成する複数の仕切り壁(11c)とで2重壁になっている場合である。2重壁により浮力が増すだけでなく、津波に襲われた際に浮遊物が激突し、外壁(11a)の一部に孔が開いたとしても水の浸入は孔の開いた独立空間(R)だけであって室内への水の浸入は完全に防がれる。
【0037】
図5、6は第3実施例で、開閉ハッチ(2)が上下の面に構成されたハウジング(1)の外面に中空の浮力補助タンク(6)を更に設けた場合である。図の浮力補助タンク(6)は半円筒状でハウジング(1)の対向する両側面中央部分に全長にわたって設けられており、仕切り壁により複数の独立空間(R)が形成されている。勿論、図示していないが開閉ハッチ(2)を浮力補助タンク(6)と同じ面に形成してもよい。また、図では1重壁の津波シェルタ(A)に浮力補助タンク(6)が設けられている例を示すが、2重壁の場合でも当然適用される。また、浮力補助タンク(6)は対向する2面だけの場合を示すが、4面にわたって形成してもよい。なお、津波シェルタ(A)の底面及び天面の四隅には接地用の脚(15)が形成されている。また、衝撃防止のため津波シェルタ(A)の外面に図示しないが古タイヤを喫水線に合わせて或いは窓(3)を除く全面に吊るしておいてもよい。
【0038】
その他、津波シェルタ(A)に備品として用意されるものは、酸素ボンベ(或いは圧縮空気ボンベ)、食料品、水、懐中電灯、寝袋などの寝具、薬剤、照明弾、ラジオ、電池その他緊急避難用品で、これらは津波シェルタ(A)が津波に飲み込まれて激しく揺動したときに室内で移動・散乱しないように固定されている。
【0039】
このような本発明の津波シェルタ(A)は家族用の場合、庭などの空き地に載置される。大型の地域用の場合は、公民館や集会所などの人目に付き易いところに設置される。
【0040】
次に、本発明の津波シェルタ(A)への避難・使用方法について以下に説明する。地震等が発生して津波が発生する危険性のある場合には、警報に合わせて高台などに避難するのが最も好ましいが、間に合わない場合にはステップ(9)を利用して津波シェルタ(A)の上によじ登り、ロック装置(12)を開錠して開閉ハッチ(2)を開き、内部に入る。全員が収容されたことを確認して開閉ハッチ(2)を閉じロックする。このようにすることで迅速に津波シェルタ(A)内に避難することができる。津波シェルタ(A)内に避難した後、津波が来るのを待つ。
【0041】
津波が押し寄せるとその強大な破壊力で家屋が一瞬に破壊され瓦礫化する。瓦礫は津波に乗って海水と渾然一体となり津波シェルタ(A)を襲う。津波シェルタ(A)は地面に載置されているだけであるから、津波によって浮上し、津波とともに陸側に押し込まれた後、浮上したままであれば津波の引き波と共に海上に流れ出る。数次にわたって襲来を繰り返した後、沈静化し、津波シェルタ(A)は陸地に打ち上げられるか海上を漂う。この間、収容された人は積み込まれた緊急避難用品を使用して救援を待つ。津波シェルタ(A)の空気が汚れてきた場合には、酸素ボンベや圧縮空気ボンベを開栓して酸素を供給する。これによって内圧が高まれば、内圧調整部(4)から空気を逃がし適正な内圧を保つようにする。
【0042】
幸いにして陸地に打ち上げられた場合、いずれかの開閉ハッチ(2)で上側を向いているところを開き脱出する。津波シェルタ(A)が瓦礫に埋まり開閉ハッチ(2)を開くことが出来ない場合には、脱出可能な位置にある非常用出口(10)のボルト(10a)を内側から外し、非常用蓋(10b)を内側から外す。それすら出来ない場合には、携帯電話などで外部と連絡をとる。
【0043】
海上に浮かんでいる場合には、携帯電話を利用しながらそのまま救助を待つか、適当な開閉ハッチ(2)を開いて救助用風船や旗、照明弾を打ち上げるなど救助を求めることになる。
【符号の説明】
【0044】
(A) 津波シェルタ
(R) 独立空間
(1) ハウジング
(1a) ハウジングの構成面
(2) 開閉ハッチ
(2a) ヒンジ
(2b) 開口部
(3) 窓
(4) 内圧調整部
(6) 浮力補助タンク
(8) 断熱材
(9) ステップ
(10) 非常用出口
(10a) ボルト
(11a) 非常用蓋
(11b) 外壁
(11c) 内壁
(12) 仕切り壁
(12a) ロック装置
(12b) 開閉レバー