特許第5694046号(P5694046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694046
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 23/00 20060101AFI20150312BHJP
   H02P 27/04 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   H02P7/36 303U
   H02P7/628 ZZHV
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-108365(P2011-108365)
(22)【出願日】2011年5月13日
(65)【公開番号】特開2012-239358(P2012-239358A)
(43)【公開日】2012年12月6日
【審査請求日】2013年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 統公
(72)【発明者】
【氏名】脇本 亨
(72)【発明者】
【氏名】越野 尚人
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−301685(JP,A)
【文献】 特開2002−204579(JP,A)
【文献】 特開2009−071982(JP,A)
【文献】 特開2009−296846(JP,A)
【文献】 特開2004−129405(JP,A)
【文献】 特開2008−220119(JP,A)
【文献】 特開2011−166878(JP,A)
【文献】 特開2006−311770(JP,A)
【文献】 特開2010−200537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 23/00
H02P 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相回転電機と電力供給線を介して接続されるインバータに含まれるスイッチング素子をPWM制御方式によりスイッチング制御する制御装置であって、
三相回転電機の巻線間に発生するサージ電圧の変動周期をTmとした場合に、
スイッチング素子のスイッチング間隔ΔtがTm/2を中心とする所定の範囲内にあるときに、スイッチング間隔Δtが所定の範囲外となるように所定のパラメータを変更する変更部を有することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
所定の値αを0<α≦Tm/2とした場合に、
所定の範囲は、Tm/2−α<Δt<Tm/2+αであることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の制御装置において、
変更部は、
スイッチング間隔ΔtがTm/2−α又はTm/2+αのいずれかとなるように前記パラメータを変更することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の制御装置において、
前記パラメータは、PWM制御方式における変調率であることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の制御装置において、
前記パラメータは、PWM制御方式におけるキャリア周波数であることを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の制御装置において、
前記パラメータは、スイッチング素子のスイッチング速度であることを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関し、特に、インバータを制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に優しい車両として、ハイブリッド車や電気自動車が注目を集めている。ハイブリッド車や電気自動車に搭載された直流電源の出力は、インバータによって交流に変換されてモータに供給されている。そのため、スイッチング素子のオン・オフのタイミングでモータの巻線間に通常の交流電流で駆動する際の電圧よりも高い急峻なサージ電圧が発生することがある。そして、急峻なサージ電圧により特定のコイルに電圧が集中し、隣接するコイルとの間の電位差が大きくなり、コイル間の絶縁が劣化する場合がある。
【0003】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、バッテリのバッテリ電圧を昇圧してシステム電圧とするコンバータと、そのシステム電圧をインバータ入力電圧として受けて駆動し、回転機を駆動制御するインバータと、に対して制御を行う回転機の電圧保護制御装置が開示されている。ここでは、回転機の目標トルクを設定する目標トルク設定手段と、設定された目標トルクに応じたインバータ入力電圧を設定するインバータ入力電圧設定手段と、スイッチングによるサージ電圧がピークとなるトルク近傍において、システム電圧を低下させることでインバータ入力電圧を抑制するインバータ入力電圧抑制手段と、を備えることが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−71982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に構成によれば、低トルク領域において、インバータの入力電圧を抑制することでモータの電圧保護を行うことができるが、変調率が高い高トルク領域や高回転領域において、インバータを構成するスイッチング素子の連続スイッチング時のモータに対する過大な線間電圧を低減することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制御装置は、三相回転電機と電力供給線を介して接続されるインバータに含まれるスイッチング素子をPWM制御方式によりスイッチング制御する制御装置であって、三相回転電機の巻線間に発生するサージ電圧の変動周期をTmとした場合に、スイッチング素子のスイッチング間隔ΔtがTm/2を中心とする所定の範囲内にあるときに、スイッチング間隔Δtが所定の範囲外となるように所定のパラメータを変更する変更部を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る制御装置において、所定の値αを0<α≦Tm/2とした場合に、所定の範囲は、Tm/2−α<Δt<Tm/2+αであることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る制御装置において、変更部は、スイッチング間隔ΔtがTm/2−α又はTm/2+αのいずれかとなるように前記パラメータを変更することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る制御装置において、前記パラメータは、PWM制御方式における変調率であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る制御装置において、前記パラメータは、PWM制御方式におけるキャリア周波数であることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る制御装置において、前記パラメータは、スイッチング素子のスイッチング速度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スイッチング素子のスイッチング間隔ΔtがTm/2を中心とする所定の範囲内にあるときに、スイッチング間隔Δtが所定の範囲外となるように、所定のパラメータが変更される。これにより、重畳するサージ電圧の大きさを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る実施の形態において、電源装置システムを示す図である。
図2】本発明に係る実施の形態において、制御装置の構成図である。
図3】本発明に係る実施の形態において、電源装置システムにおいて、モータジェネレータの巻線間電圧が過大になることを抑制する手順を示すフローチャートである。
図4】一般的に、電源装置システムにおいて、モータジェネレータの入力端電圧と巻線間電圧の変動周期情報との関係を示す図である。
図5】一般的に、電源装置システムにおいて、モータジェネレータの入力端電圧と巻線間電圧の変動周期情報との関係を示す図である。
図6】本発明に係る実施の形態において、電源装置システムにおいて、モータジェネレータの入力端電圧と巻線間電圧の変動周期情報との関係を示す図である。
図7】本発明に係る実施の形態において、電源装置システムを示す図である。
図8】本発明に係る実施の形態において、制御装置の構成図である。
図9】本発明に係る実施の形態において、電源装置システムにおいて、モータジェネレータの巻線間電圧が過大になることを抑制する手順を示すフローチャートである。
図10】本発明に係る実施の形態において、電源装置システムを示す図である。
図11】本発明に係る実施の形態において、制御装置の構成図である。
図12】本発明に係る実施の形態において、ゲート電圧制御回路を示す図である。
図13】本発明に係る実施の形態において、電源装置システムにおいて、モータジェネレータの巻線間電圧が過大になることを抑制する手順を示すフローチャートである。
図14】一般的に、電源装置システムにおいて、モータジェネレータの入力端電圧と巻線間電圧の変動周期情報との関係を示す図である。
図15】本発明に係る実施の形態において、電源装置システムにおいて、モータジェネレータの入力端電圧と巻線間電圧の変動周期情報との関係を示す図である。
図16】本発明に係る実施の形態において、電源装置システムにおいて、モータジェネレータの入力端電圧と巻線間電圧の変動周期情報との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では電源装置システムは、ハイブリッド車に搭載されるものとして説明するが、電気自動車に搭載されるものであってもよい。
【0015】
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0016】
図1は、電源装置システム10を示す図である。電源装置システム10は、インバータ回路20と、蓄電装置30と、コンデンサ40と、モータジェネレータ50と、制御装置70とを備える。なお、以下では電源装置システム10は、内燃機関と電動機とを動力源とするハイブリッド車に搭載されるものとして説明する。
【0017】
インバータ回路20は、車両の力行時には蓄電装置30の直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ50に供給し、これによりモータジェネレータ50が回転駆動される。また、インバータ回路20は、車両の回生時にはモータジェネレータ50で発電された交流電圧を直流電圧に変換して蓄電装置30に供給し、これにより蓄電装置30が充電される。
【0018】
インバータ回路20の構成要素として、正極側ライン8と負極側ライン9との間にトランジスタ201とトランジスタ204とが直列接続される。また、トランジスタ201にはダイオード202が並列に接続され、トランジスタ204にはダイオード205が並列に接続される。そして、トランジスタ201及びトランジスタ204のゲート端子には、スイッチング制御を行うためのゲート電圧制御回路203及びゲート電圧制御回路206が接続されている。ここで、ゲート電圧制御回路203,206は、それぞれ制御装置70からの制御信号によって、トランジスタ201,204がオン/オフするようにゲート端子に与える電圧を変更する機能を有する。
【0019】
インバータ回路20の別の構成要素として、正極側ライン8と負極側ライン9との間にトランジスタ207とトランジスタ210とが直列接続される。また、トランジスタ207にはダイオード208が並列に接続され、トランジスタ210にはダイオード211が並列に接続される。そして、トランジスタ207及びトランジスタ210のゲート端子には、スイッチング制御を行うためのゲート電圧制御回路209及びゲート電圧制御回路212が接続されている。ここで、ゲート電圧制御回路209,212は、それぞれ制御装置70からの制御信号によって、トランジスタ207,210がオン/オフするようにゲート端子に与える電圧を変更する機能を有する。
【0020】
インバータ回路20のさらに別の構成要素として、正極側ライン8と負極側ライン9との間にトランジスタ213とトランジスタ216とが直列接続される。また、トランジスタ213にはダイオード214が並列に接続され、トランジスタ216にはダイオード217が並列に接続される。そして、トランジスタ213及びトランジスタ216のゲート端子には、スイッチング制御を行うためのゲート電圧制御回路215及びゲート電圧制御回路218が接続されている。ここで、ゲート電圧制御回路215,218は、それぞれ制御装置70からの制御信号によって、トランジスタ213,216がオン/オフするようにゲート端子に与える電圧を変更する機能を有する。
【0021】
蓄電装置30は、負荷側に対して電力を供給するためのバッテリからなる電源装置である。また、蓄電装置30は、充放電可能な直流電源であって、例えば、炭素物質で構成された負極と、リチウムイオンが移動するための電解液と、リチウムイオンを可逆的に出し入れできる正極活物質とを有するリチウムイオン二次電池を用いることができる。蓄電装置30は、正極側端子が正極側ライン8と接続され、負極側端子が負極側ライン9と接続される。
【0022】
コンデンサ40は、正極側ライン8と負極側ライン9との間に接続され、正極側ライン8と負極側ライン9との間の電圧変動を平滑化する平滑コンデンサである。
【0023】
モータジェネレータ50は、蓄電装置30に接続される負荷である。モータジェネレータ50は、U相コイル502とV相コイル504とW相コイル506とを含んで構成される。U相コイル502は、トランジスタ201とトランジスタ204との接続点と中性点51との間に接続されるコイルである。V相コイル504は、トランジスタ207とトランジスタ210との接続点と中性点51との間に接続されるコイルである。W相コイル506は、トランジスタ213とトランジスタ216との接続点と中性点51との間に接続されるコイルである。
【0024】
次に、制御装置70について説明する。制御装置70は、電源装置システム10において、インバータ回路20等を制御する機能を有する。ここでは、特に、制御装置70の各機能のうち、インバータ回路20の各トランジスタのスイッチング制御について説明する。
【0025】
図2は、制御装置70の構成図である。制御装置70は、モータ制御用相電圧演算部702と、PWM信号補正部704と、インバータ用PWM信号変換部706とを備える。
【0026】
モータ制御用相電圧演算部702は、外部からのトルク指令値TR、電圧センサ62で検出されたシステム電圧Vm、電流センサ64で検出された電流値Iu、電流センサ66で検出された電流値Iv、レゾルバ68からの回転角θに基づいて、公知のベクトル制御演算を実施して相電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*を求めてPWM信号補正部704に出力する。
【0027】
PWM信号補正部704は、相電圧指令値Vu*、Vv*、Vw*に基づいて、変調率Ku、Kv、Kwを求め、変調率Ku'、Kv'、Kw'に更新した後でインバータ用PWM信号変換部706に出力する。ここで、変調率Ku、Kv、Kwは、それぞれKu=Vu*/Vm、Kv=Vv*/Vm、Kw=Vw*/Vmの式を用いて求めることができる。
【0028】
また、PWM信号補正部704は、モータ共振周期情報707等に基づいて、変調率Ku、Kv、Kwを変調率Ku'、Kv'、Kw'に更新する。具体的には、PWM信号補正部704は、変調率Ku、Kv、Kwの値がそれぞれ−1<Ku、Kv、Kw<1の範囲外であれば、Ku、Kv、Kwの値をそのままKu'、Kv'、Kw'として出力する。そして、変調率Ku、Kv、Kwの値がそれぞれ−1<Ku、Kv、Kw<1の範囲内であれば、スイッチング間隔Δtu、Δtv、Δtwを算出し、Tm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲内であるか否かを判断する。ここで、モータジェネレータ50の各相のスイッチング間隔Δtu、Δtv、Δtwとする。各スイッチング間隔Δtu、Δtv、Δtwは、キャリア信号の周期をTsとした場合に、それぞれΔtu=(1−|Ku|)*Ts/2、Δtv=(1−|Kv|)*Ts/2、Δtw=(1−|Kw|)*Ts/2の式を用いて求めることができる。また、モータ共振周期情報707は、モータジェネレータ50の巻線間電圧におけるサージ電圧の変動周期であり、ここでは当該変動周期をTmとする。なお、αの範囲は、α≦Tm/2が好ましい。
【0029】
そして、PWM信号補正部704は、Tm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲外のときは、Ku、Kv、Kwの値をそのままKu'、Kv'、Kw'として出力する。また、PWM信号補正部704は、Tm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲内のときは、Δtu、Δtv、ΔtwがTm/2±αのいずれかとなるように変調率Ku、Kv、KwをそれぞれKu±xu、Kv±xv、Kw±xwに補正し、それらをKu'、Kv'、Kw'として出力する。ここで、各xu、xv、xwは、それぞれxu=1−2/Ts(Ts/2±α)−|Ku|、xv=1−2/Ts(Ts/2±α)−|Kv|、xw=1−2/Ts(Ts/2±α)−|Kw|の式を用いて求める。
【0030】
インバータ用PWM信号変換部706は、変調率Ku'、Kv'、Kw'とキャリア信号に基づいて、インバータ回路20の各トランジスタをオン/オフするためのPWMU信号、PWMV信号、PWMW信号を生成し、各信号を対応する各ゲート電圧制御回路に出力する機能を有する。
【0031】
続いて、上記構成の電源装置システム10の作用について図3を参照して説明する。図3は、電源装置システム10において、モータジェネレータ50の巻線間電圧が過大になることを抑制する手順を示すフローチャートである。電源装置システム10の制御装置70において、変調率Ku、Kv、Kwを算出する(S01)。
【0032】
次に、変調率Ku、Kv、Kwの値がそれぞれ−1<Ku、Kv、Kw<1の範囲内であるか否かを判断する(S02)。S02において、−1<Ku、Kv、Kw<1の範囲外であると判断したときは、S06へと進む。
【0033】
S02において、−1<Ku、Kv、Kw<1の範囲内と判断されたときは、スイッチング間隔Δtu、Δtv、Δtwを算出する(S03)。
【0034】
S03の後は、スイッチング間隔Δtu、Δtv、ΔtwがTm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲内であるか否かを判断する(S04)。S04において、Tm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲外であると判断したときは、S06へと進む。
【0035】
S04において、Tm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲内であると判断したときは、変調率Ku、Kv、KwをそれぞれKu±xu、Kv±xv、Kw±xwに補正し、それらをKu'、Kv'、Kw'とする(S05)。その後は、S07へと進む。
【0036】
S06では、Ku、Kv、Kwの値をそのままKu'、Kv'、Kw'とする(S06)。その後は、S07へと進む。
【0037】
S07では、Ku'、Kv'、Kw'をインバータ用PWM信号変換部706に対して出力する(S07)。
【0038】
一般的に、モータジェネレータ50の入力端電圧と巻線間電圧の変動周期情報は図4に示されるような関係になる。ここで、スイッチング間隔Δtu、Δtv、Δtwを短くして、例えば、スイッチング間隔Δtu、Δtv、ΔtwをTm/2とした場合には、図5に示されるように、最大のサージ電圧が重畳して巻線間電圧が最も過大となることを発明者は発見した。
【0039】
しかし、本発明の実施形態である電源装置システム10によれば、スイッチング間隔Δtu、Δtv、ΔtwがTm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲内となる場合に、Tm/2±αとなるように変調率Ku、Kv、KwをそれぞれKu±xu、Kv±xv、Kw±xwに補正する。これにより、例えば、αをTm/4としてサージ電圧の最大値となる箇所からずらすことで、図6に示されるように、巻線間電圧が過大となることを抑制することができる。
【0040】
次に、電源装置システム10の第1変形例である電源装置システム11について説明する。図7は、電源装置システム11を示す図である。電源装置システム11と電源装置システム10との相違は、制御装置71のみであるため、その相違点を中心に説明する。
【0041】
図8は、制御装置71の構成図である。制御装置71は、モータ制御用相電圧演算部712と、周波数制御部714と、インバータ用PWM信号変換部716とを備える。ここで、制御装置71と制御装置70との相違は、PWM信号補正部704の代わりに周波数制御部714を用いている点である。ここで、周波数制御部714とPWM信号補正部704とはほぼ同様の機能を有しており、以下にその相違について説明する。
【0042】
PWM信号補正部704では、スイッチング間隔Δtu、Δtv、ΔtwがTm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲内となる場合に、Tm/2±αとなるように変調率Ku、Kv、KwをそれぞれKu±xu、Kv±xv、Kw±xwに補正している。一方、周波数制御部714では、スイッチング間隔Δtu、Δtv、ΔtwがTm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲内となる場合に、Tm/2±αとなるようにキャリア周波数fcをfc±yに補正し、fc'として出力する。
【0043】
続いて、上記構成の電源装置システム11の作用について図9を参照して説明する。図9は、電源装置システム11において、モータジェネレータ50の巻線間電圧が過大になることを抑制する手順を示すフローチャートである。電源装置システム11の制御装置71において、変調率Ku、Kv、Kwを算出する(S11)。
【0044】
次に、変調率Ku、Kv、Kwの値がそれぞれ−1<Ku、Kv、Kw<1の範囲内であるか否かを判断する(S12)。S12において、−1<Ku、Kv、Kw<1の範囲外であると判断したときは、S16へと進む。
【0045】
S12において、−1<Ku、Kv、Kw<1の範囲内と判断されたときは、スイッチング間隔Δtu、Δtv、Δtwを算出する(S13)。
【0046】
S13の後は、スイッチング間隔Δtu、Δtv、ΔtwがTm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲内であるか否かを判断する(S14)。S14において、Tm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲外であると判断したときは、S16へと進む。
【0047】
S14において、Tm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲内であると判断したときは、キャリア周波数fcをfc±yとする(S15)。その後は、S17へと進む。
【0048】
S16では、fcの値をそのままfc'とする(S16)。その後は、S17へと進む。
【0049】
S17では、fc'をインバータ用PWM信号変換部716に対して出力する(S17)。
【0050】
本発明の実施形態である電源装置システム11によれば、スイッチング間隔Δtu、Δtv、ΔtwがTm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲内となる場合に、Tm/2±αとなるようにキャリア周波数fcをそれぞれfc±yに補正する。これにより、電源装置システム11においても、電源装置システム10と同様に巻線間電圧が過大となることを抑制することができる。
【0051】
次に、電源装置システム10の第2変形例である電源装置システム12について説明する。図10は、電源装置システム12を示す図である。電源装置システム12と電源装置システム10との相違は、インバータ回路22の各ゲート電圧制御回路と制御装置72のみであるため、その相違点を中心に説明する。
【0052】
図11は、制御装置72の構成図である。制御装置72は、モータ制御用相電圧演算部722と、ゲート抵抗変更判定部724と、インバータ用PWM信号変換部726とを備える。ここで、制御装置72と制御装置70との相違は、PWM信号補正部704の代わりにゲート抵抗変更判定部724を用いている点である。ここで、ゲート抵抗変更判定部724とPWM信号補正部704とはほぼ同様の機能を有しており、以下にその相違について説明する。
【0053】
PWM信号補正部704では、変調率Ku、Kv、Kwの値がそれぞれ−1<Ku、Kv、Kw<1の範囲外、又は、スイッチング間隔Δtu、Δtv、ΔtwがTm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲外の場合に、変調率Ku、Kv、Kwの値をそのままKu'、Kv'、Kw'としている。一方、ゲート抵抗変更判定部724では、変調率Ku、Kv、Kwの値がそれぞれ−1<Ku、Kv、Kw<1の範囲外、又は、スイッチング間隔Δtu、Δtv、ΔtwがTm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲外の場合に、ゲート抵抗選択信号SをLowレベルにして出力する。
【0054】
また、PWM信号補正部704では、スイッチング間隔Δtu、Δtv、ΔtwがTm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲内となる場合に、Tm/2±αとなるように変調率Ku、Kv、KwをそれぞれKu±xu、Kv±xv、Kw±xwに補正している。一方、ゲート抵抗変更判定部724では、スイッチング間隔Δtu、Δtv、ΔtwがTm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲内となる場合に、ゲート抵抗選択信号SをHighレベルにして出力する。
【0055】
次に、インバータ回路22のゲート電圧制御回路223〜238について説明する。ここで、ゲート電圧制御回路223〜238は、それぞれ同じ回路であるため、以下ではゲート電圧制御回路223を用いて説明する。図12は、ゲート電圧制御回路223を示す図である。ゲート電圧制御回路223は、ゲートドライバ回路223aと、ゲート抵抗選択回路223bと、スイッチ回路223cと、抵抗素子223d,223eとを備える。
【0056】
抵抗素子223eの抵抗値は、抵抗素子223dの抵抗値に比べて大きい。そして、抵抗素子223d,223eの一方側端子はそれぞれトランジスタ201のゲート端子に接続され、他方側端子はそれぞれスイッチ回路223cに接続される。ゲートドライバ回路223aは、制御装置70からの制御信号であるPWMU信号によって、トランジスタ201がオン/オフするようにゲート端子に与える電圧を変更する機能を有する。
【0057】
スイッチ回路223cは、ゲート抵抗選択回路223bからの切替制御によって、ゲートドライバ回路223aの接続先を抵抗素子223d,223eのいずれかに切り替える機能を有する。ゲート抵抗選択回路223bは、ゲート抵抗選択信号SがHighレベルのときはゲートドライバ回路223aの接続先が抵抗素子223eとなるようにし、ゲート抵抗選択信号SがLowレベルのときはゲートドライバ回路223aの接続先を抵抗素子223dとする。
【0058】
続いて、上記構成の電源装置システム12の作用について図13を参照して説明する。図13は、電源装置システム12において、モータジェネレータ50の巻線間電圧が過大になることを抑制する手順を示すフローチャートである。電源装置システム12の制御装置72において、変調率Ku、Kv、Kwを算出する(S21)。
【0059】
次に、変調率Ku、Kv、Kwの値がそれぞれ−1<Ku、Kv、Kw<1の範囲内であるか否かを判断する(S22)。S22において、−1<Ku、Kv、Kw<1の範囲外であると判断したときは、S26へと進む。
【0060】
S22において、−1<Ku、Kv、Kw<1の範囲内と判断されたときは、スイッチング間隔Δtu、Δtv、Δtwを算出する(S23)。
【0061】
S23の後は、スイッチング間隔Δtu、Δtv、ΔtwがTm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲内であるか否かを判断する(S24)。S24において、Tm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲外であると判断したときは、S26へと進む。
【0062】
S24において、Tm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲内であると判断したときは、ゲート抵抗選択信号SをHighレベルとする(S25)。その後は、S27へと進む。
【0063】
S26では、ゲート抵抗選択信号SをLowレベルとする(S26)。その後は、S27へと進む。
【0064】
S27では、ゲート抵抗選択信号Sをインバータ回路20の各ゲート電圧制御回路に対して出力する(S27)。
【0065】
一般的に、モータジェネレータ50の入力端電圧と巻線間電圧の変動周期情報は図14に示されるような関係になる。ここで、スイッチング間隔Δtu、Δtv、Δtwを短くして、Tm/2としたときに、ゲート抵抗選択回路223bによるスイッチ回路223cの切替がない場合は、最大のサージ電圧が重畳して巻線間電圧が最も過大となることが分かる。
【0066】
しかし、本発明の実施形態である電源装置システム12によれば、スイッチング間隔Δtu、Δtv、ΔtwがTm/2−α<Δtu、Δtv、Δtw<Tm/2+αの範囲内となる場合に、ゲート抵抗選択信号SをHighレベルにして出力する。これにより、スイッチ回路223cにおいて抵抗値が大きい抵抗素子223eが接続される。なお、その他のスイッチ回路226〜238においても抵抗値の大きい側の抵抗素子226e〜238eが接続される。これにより、インバータ回路20の各トランジスタへの入力電圧が変化する傾きを小さくする。これにより、図15に示されるように、各トランジスタのスイッチング速度を低下させて、巻線間電圧を低減することができる。なお、図15に示されるように、トランジスタ201のオン/オフのスイッチングのうち、オフ側のスイッチング速度が遅くなるように抵抗素子の値を調整しているが、図16に示されるように、オン側のスイッチング速度が遅くなるように抵抗素子の値を調整することで、巻線間電圧を低減することも可能である。
【符号の説明】
【0067】
8 正極側ライン、9 負極側ライン、10,11,12 電源装置システム、20 、22 インバータ回路、30 蓄電装置、40 コンデンサ、50 モータジェネレータ、51 中性点、62 電圧センサ、64,66 電流センサ、68 レゾルバ、70,71,72 制御装置、201,204,207,210,213,216 トランジスタ、202,205,208,211,214,217 ダイオード、203,206,209,212,215,218,223,226,229,232,235,238 ゲート電圧制御回路、223a ゲートドライバ回路、223b ゲート抵抗選択回路、223c スイッチ回路、223d,223e 抵抗素子、502 U相コイル、504 V相コイル、506 W相コイル、702 モータ制御用相電圧演算部、704 PWM信号補正部、706 インバータ用PWM信号変換部、707 モータ共振周期情報、712 モータ制御用相電圧演算部、714 周波数制御部、716 インバータ用PWM信号変換部、722 モータ制御用相電圧演算部、724 ゲート抵抗変更判定部、726 インバータ用PWM信号変換部。
図1
図2
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図5
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図10
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図16