(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両における内燃機関(エンジン)のブローバイガス還元装置には、ブローバイガスの流量を制御する流量制御弁としてPCV(Positive Crankcase Ventilation)バルブが用いられる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
PCVバルブの従来例について説明する。
図8はPCVバルブを示す断面図、
図9は
図8のIX−IX線矢視断面図である。
図8に示すように、PCVバルブ1は、ケース2とバルブ体3とスプリング4とを備えている。ケース2には軸方向(
図8において左右方向)に延びるガス通路5が設けられている。ガス通路5にはブローバイガスが流通する。また、バルブ体3は、ガス通路5内に軸方向に進退可能に設けられている。また、スプリング4は、ケース2とバルブ体3との間に介装されており、バルブ体3を後退方向(
図8において右方)へ付勢している。
【0004】
PCVバルブ1は、ガス通路5を流れるブローバイガスの流量をバルブ体3の進退によって制御すなわち計量する。また、ケース2とバルブ体3との間には、バルブ体3の作動安定性を向上するために、バルブ体3を軸方向にガイドするガイド手段Gが設けられている。ガイド手段Gは、ケース2に設けられかつ軸方向に延びる中空筒状のガイド壁2aと、バルブ体3に設けられかつガイド壁2aの軸心部に配置されるガイド軸3aと、ガイド壁2aに放射状に設けられかつガイド軸3aに対して摺動接触する複数のガイド突起3bとを備える(
図9参照)。バルブ体3の進退に際し、ガイド突起3bに対してガイド軸3aが摺動接触することにより、バルブ体3が軸方向にガイドされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記PCVバルブ1によると、ガイド突起3bの軸方向の長さL1が、バルブ体3の進退方向の移動量M1に比べてかなり長い。このため、ブローバイガスの流通抵抗が大きくなり、最大流量が制限されるという問題があった。ひいては、大流量のブローバイガスを流すことができず、排気量の大きい内燃機関に対応することが困難であった。なお、バルブ体3の進退方向の移動量M1は、バルブ体3の最後退位置と最前進位置との間を移動範囲とする移動量であって、
図8ではガイド軸3aの前端の移動量で示されている。ガイド突起3bの軸方向の長さL1とは、ガイド軸3aに摺動接触する接触面の軸方向の長さのことをいう。また、流体の力学によると、ガスの流量の理論式は、ガスの流量をQ、上流側の圧力と下流側の圧力との差圧をΔP、平板間の距離(ガイド突起3bの相互間の距離に相当する)をh、ガスの粘度をμ、平板の長さ(ガイド突起3bの軸方向の長さL1に相当する)をLとしたとき、
Q=(ΔP×h
3)/12μL
で表される。したがって、理論式からも、ガイド突起3bの軸方向の長さL1が長いほど、ガスの流量が小さくなることがわかる。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、弁体の作動安定性を向上するとともに、流体の流通抵抗を低減して最大流量を増大することのできる流量制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、流体通路を設けたケースと、流体通路内に軸方向に進退可能に設けられた弁体と、弁体を後退方向へ付勢するスプリングとを備え、流体通路を流れる流体の流量を弁体の進退によって制御する流量制御弁であって、ケースと弁体との間に、弁体を進退方向にガイドするガイド手段が設けられ、ガイド手段は、ケースに設けられかつ軸方向に延びる中空筒状のガイド壁と、弁体に設けられかつガイド壁の軸心部に配置されるガイド軸と、ガイド壁及びガイド軸のいずれか一方の部材に放射状に設けられかつ他方の部材に対して摺動接触する複数のガイド突起とを備え、ガイド突起の軸方向の長さは、弁体の進退方向の移動量に比べて短い長さに設定されている。この構成によると、弁体の進退に際し、ガイド手段のガイド壁及びガイド軸のいずれか一方の部材に放射状に設けられたガイド突起と、他方の部材とが摺動接触することにより、弁体が進退方向にガイドされる。このため、弁体の作動安定性を向上することができる。また、ガイド突起の軸方向の長さが、弁体の進退方向の移動量に比べて短い長さに設定されている。このため、流体の流通抵抗を低減して最大流量を増大することができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、複数のガイド突起のうち、少なくとも1つのガイド突起は、残りのガイド突起に対して軸方向にずれた位置に配置されている。この構成によると、ガイド突起による流体通路の通路断面積の減少を抑制することにより、流体の流通抵抗を低減し、最大流量を増大することができる。
【0010】
第3の発明は、第1又は2の発明において、弁体の進退方向の移動範囲全域において、他方の部材と全てのガイド突起とが摺動接触する構成としている。この構成によると、弁体の進退方向の移動範囲全域において、弁体を進退方向にガイドすることができる。
【0011】
第4の発明は、第1〜3のいずれかの発明において、内燃機関のブローバイガス還元装置に用いられるPCVバルブである。この構成によると、弁体の作動安定性を向上するとともに、流体の流通抵抗を低減して最大流量を増大することのできるPCVバルブを内燃機関のブローバイガス還元装置に用いることにより、排気量の大きい内燃機関に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0014】
[実施形態1]
実施形態1について説明する。実施形態1では、流量制御弁として、内燃機関のブローバイガス還元装置に用いられるPCVバルブを例示する。説明の都合上、ブローバイガス還元装置の一例を説明した後でPCVバルブについて説明する。なお、
図3はブローバイガス還元装置を示す構成図である。
図3に示すように、ブローバイガス還元装置10は、内燃機関であるエンジン12のエンジン本体13の燃焼室からシリンダブロック14のクランクケース15内に洩れたブローバイガスをインテークマニホールド20内に導入することにより、燃焼室で再び燃焼させるシステムである。
【0015】
前記エンジン本体13は、前記シリンダブロック14と、前記クランクケース15の下面側に締結されたオイルパン16と、シリンダブロック14の上面側に締結されたシリンダヘッド17と、シリンダヘッド17の上面側に締結されたシリンダヘッドカバー18とを備えている。エンジン本体13は、吸気、圧縮、爆発、排気といった行程を経ることにより駆動力を得る。また、エンジン本体13の燃焼室(図示しない。)内での燃焼にともない、エンジン本体13内すなわちクランクケース15内や、そのクランクケース15内に連通するシリンダヘッドカバー18内にはブローバイガスが発生する。また、ブローバイガスが流入するシリンダヘッドカバー18内及びクランクケース15内等は、本明細書でいう「エンジン本体内」に相当する。
【0016】
前記シリンダヘッドカバー18には、新気導入口18a及びブローバイガス取出口18bが設けられている。新気導入口18aに、新気導入通路30の一端(下流端)が連通されている。また、ブローバイガス取出口18bに、ブローバイガス通路36の一端(上流端)が連通されている。なお、新気導入口18a及び/又はブローバイガス取出口18bは、シリンダヘッドカバー18に代えてクランクケース15に設けることもできる。
【0017】
前記シリンダヘッド17には、サージタンク21を備えるインテークマニホールド20の一端(下流端)が連通されている。インテークマニホールド20の他端(上流端)には、スロットルボデー24及び吸気管路23を介して、エアクリーナ25が連通されている。スロットルボデー24は、スロットル弁24aを備えている。スロットル弁24aは、例えばアクセルペダル(図示しない)に連繋されており、そのペダルの踏込み量(操作量)に応じて開閉される。また、エアクリーナ25は、空気いわゆる新気を導入するもので、その新気をろ過するフィルタエレメント26を内蔵している。エアクリーナ25、吸気管路23、スロットルボデー24及びインテークマニホールド20により、新気すなわち吸入空気をエンジン本体13の燃焼室に導入するための一連の吸気通路27が形成されている。吸気通路27において、スロットル弁24aよりも上流側の通路部分を上流側の吸気通路部27aといい、スロットル弁24aよりも下流側の通路部分を下流側の吸気通路部27bという。
【0018】
前記吸気管路23には新気取入口29が形成されている。新気取入口29には、前記新気導入通路30の他端(上流端)が連通されている。新気導入通路30には逆流防止弁32が設けられている。逆流防止弁32は、前記上流側の吸気通路部27aからクランクケース15内への空気いわゆる新気の流れ(
図3中、矢印Y1参照)を許容し、かつ、その逆方向への流れすなわち逆流(
図3中、矢印Y3参照)を阻止する。また、前記サージタンク21にはブローバイガス導入口34が形成されている。ブローバイガス導入口34には、前記ブローバイガス通路36の他端(下流端)が連通されている。
【0019】
次に、前記ブローバイガス還元装置10の作動について説明する。エンジン12の軽、中負荷時においては、スロットル弁24aがほぼ全閉に近い状態にある。このため、吸気通路27の下流側の吸気通路部27bに上流側の吸気通路部27aより大きな負圧(真空側に大きくなる負圧)が発生する。したがって、エンジン本体13内のブローバイガスが、ブローバイガス通路36を通じて下流側の吸気通路部27bに導入される(
図3中、矢印Y2参照)。このとき、ブローバイガス通路36を流れるブローバイガスの流量がPCVバルブ40(後述する)によって制御される。
【0020】
また、ブローバイガスがエンジン本体13内からブローバイガス通路36を通じて下流側の吸気通路部27bに導入されるにともない逆流防止弁32が開弁する。これにより、吸気通路27の上流側の吸気通路部27aの新気が、新気導入通路30を通じてエンジン本体13内に導入される(
図3中、矢印Y1参照)。そして、エンジン本体13内に導入された新気は、ブローバイガスとともにブローバイガス通路36を通じて下流側の吸気通路部27bに導入される(
図3中、矢印Y2参照)。上記のようにして、エンジン本体13内が掃気される。
【0021】
また、エンジン12の高負荷においては、スロットル弁24aの開度が大きくなる。したがって、吸気通路27の下流側の吸気通路部27bの圧力が大気圧に近づく。したがって、エンジン本体13内のブローバイガスが下流側の吸気通路部27b内に導入されにくくなり、エンジン本体13内の圧力も大気圧に近づく。このため、上流側の吸気通路部27aから新気導入通路30を通ってエンジン本体13内に導入される新気の流量も減少する。また、逆流防止弁32の閉弁によって、エンジン本体13内から新気導入通路30へのブローバイガスの逆流(
図3中、矢印Y3参照)が阻止される。
【0022】
前記ブローバイガス通路36には、ブローバイガスの流量を制御するための流量制御弁としてのPCVバルブ40が設けられている。PCVバルブ40は、ブローバイガスの上流側圧力と下流側圧力との差圧に応じてブローバイガスの流量を制御すなわち計量することによって、差圧の急変にともなうブローバイガスの流量の急変を防止する。
【0023】
次に、PCVバルブ40について説明する。
図1はPCVバルブを示す断面図、
図2は
図1のII−II線矢視断面図である。なお、説明の都合上、
図1の左側を前側とし、その右側を後側として説明を行う。
図1に示すように、PCVバルブ40のケース42は、例えば樹脂製で中空円筒状をなしている。ケース42は、前後に分割された第1ケース半体43と第2ケース半体44とを備えている。
【0024】
前記第1ケース半体43は、中空円筒状に形成された筒状部45と、その筒状部45の後端部から後方へ延出された延出筒部46と、筒状部45の後端部から径方向外方へ張り出された円環状の接合フランジ47と、筒状部45の後端部から径方向内方へ張り出された円環状の張出壁48とを有している。延出筒部46は、筒状部45と同一円上に形成されており、筒状部45の内径より僅かに大きい内径、及び、筒状部45の外径より僅かに小さい外径を有している。
【0025】
前記第2ケース半体44は、中空円筒状に形成された筒状部50と、その筒状部50の後端部から径方向内方へ張り出された円環状の後端壁51と、筒状部50の前端部から径方向外方へ張り出された円環状の接合フランジ52とを有している。筒状部50の接合フランジ52を含む前端面には、中空円形状の嵌合凹部53が同心状に形成されている。第2ケース半体44の筒状部50の前端部内に前記第1ケース半体43の延出筒部46が嵌合されるとともに、第2ケース半体44の嵌合凹部53に第1ケース半体43の接合フランジ47が圧入されている。そして、両ケース半体43,44の接合フランジ47,52が相互に溶着、接着等により接合されることによって、前記ケース42が構成されている。
【0026】
前記第1ケース半体43の中空部と前記第2ケース半体44の中空部とにより、前記ケース42の軸方向に延びる一連のガス通路55が形成されている。第2ケース半体44の後端壁51の中空孔部は、ガス通路55の入口55aになっている。また、第1ケース半体43の前端開口部は、ガス通路55の出口55eとなっている。また、第1ケース半体43の張出壁48は、ガス通路55を入口55a側すなわち上流側の通路部55bと、出口55e側すなわち下流側の通路部55dとに区画している。張出壁48の中空孔部は、上流側の通路部55bと下流側の通路部55dとを連通する計量孔55cとなっている。なお、第2ケース半体44は、前記ブローバイガス通路36(
図3参照)の上流側の通路部に接続される。また、第1ケース半体43は、ブローバイガス通路36の下流側の通路部に接続される。また、第2ケース半体44は、前記シリンダヘッドカバー18のブローバイガス取出口18b(
図3参照)に接続される場合もある。したがって、ガス通路55には流体であるブローバイガスが流れる。なお、ガス通路55は本明細書でいう「流体通路」に相当する。
【0027】
前記ガス通路55には、バルブ体60が軸方向(
図1において左右方向)に進退可能に配置されている。バルブ体60は、例えば金属製で、ほぼ円柱状に形成されている。バルブ体60の外周面には、先細りのテーパ状をなす計量面61が形成されている。バルブ体60は、ガス通路55における上流側の通路部55bから計量孔55c内に挿通されている。計量孔55cの孔壁面すなわち張出壁48の内周面(符号省略)と計量面61とにより計量部70が構成されている。したがって、バルブ体60が後退(
図1において右方へ移動)するにともなって計量部70の有効開口面積すなわち通路断面積が増大される。また逆に、バルブ体60が前進(
図1において左方へ移動)するにともなって計量部70の通路断面積が減少される。なお、バルブ体60は本明細書でいう「弁体」に相当する。
【0028】
前記バルブ体60の後端部には、径方向外方へ張り出す円環板状のガイドフランジ62が形成されている。ガイドフランジ62の外周面は、前記第2ケース半体44の筒状部50の内周面に摺動接触可能となっている。これにより、バルブ体60の進退に際し、第2ケース半体44に対してバルブ体60の後端部が同心状に支持された状態で軸方向にガイドされる。なお、第2ケース半体44の筒状部50とガイドフランジ62とは、バルブ体60の後端部を進退方向すなわち軸方向にガイドする後側のガイド手段を構成している。また、第2ケース半体44の筒状部50は本明細書でいう「後側のガイド壁」に相当する。また、ガイドフランジ62の外周部には、ブローバイガスの通過を許容する適数個(例えば3個、
図1では1個を示す)の切欠き62aが形成されている。
【0029】
前記ケース42と前記バルブ体60との間には、圧縮コイルスプリングからなるスプリング72が介装されている。スプリング72はバルブ体60に嵌合されている。スプリング72の後端部は、バルブ体60のガイドフランジ62に係止されている。また、スプリング72の前端部は、第1ケース半体43の張出壁48に係止されている。スプリング72は、常にバルブ体60を後退方向(
図1において右方)すなわち計量部70の通路断面積が増大する方向へ付勢している。また、バルブ体60の進退方向の移動量Mは、バルブ体60の最後退位置と最前進位置との間を移動範囲とする移動量であって、
図1ではバルブ体60の軸部64(後述する)の前端の移動量で示されている。なお、バルブ体60の最後退位置においてガイドフランジ62が第2ケース半体44の後端壁51に当接する。
【0030】
前記ケース42と前記バルブ体60との間には、バルブ体60の作動安定性を向上するために、バルブ体60を進退方向すなわち軸方向にガイドするガイド手段GFが設けられている。ガイド手段GFは、バルブ体60の軸部64と、前記第1ケース半体43の筒状部45及びガイド突起66とにより構成されている(
図2参照)。
【0031】
図1に示すように、前記軸部64は、前記バルブ体60の先端部(下流側端部)に同心状に突出されており、小径の丸軸状をなしている(
図2参照)。軸部64は、前記下流側の通路部55d内、すなわち前記第1ケース半体43の筒状部45の軸心部に配置されている。また、前記ガイド突起66は、前記第1ケース半体43の筒状部45の内周面に放射状に複数(本実施形態では4個を示す)形成されている。ガイド突起66は、筒状部45の周方向に90°間隔で配置されている。また、ガイド突起66は、筒状部45の軸方向に延びるリブ状に形成されている(
図1参照)。また、ガイド突起66の先端部(径方向の内端部)にはガイド面66a(
図2参照)が形成されている。ガイド面66aは、前記バルブ体60の軸部64の外周面に摺動接触可能となっている。これにより、バルブ体60の進退に際し、第1ケース半体43に対してバルブ体60の前端部が同心状に支持された状態で軸方向にガイドされる。なお、ガイド手段GFは本明細書でいう「前側のガイド手段」に相当する。また、第1ケース半体43の筒状部45は本明細書でいう「ガイド壁」、「前側のガイド壁」に相当する。また、バルブ体60の軸部64は本明細書でいう「ガイド軸」に相当する。
【0032】
図1に示すように、前記ガイド突起66(詳しくはガイド面66a(
図2参照))の軸方向の長さ66Lは、前記バルブ体60の進退方向(軸方向)の移動量M(
図1参照)に比べて短い長さに設定されている。ガイド突起66の軸方向の長さ66Lとは、軸部64に摺動接触する接触面の軸方向の長さのことをいう。また、バルブ体60の進退方向の移動範囲全域において、軸部64(詳しくは外周面)と全て(4個)のガイド突起66(詳しくはガイド面66a(
図2参照))とが摺動接触可能に構成されている。
【0033】
次に、前記したPCVバルブ40の作動について説明する。ケース42内のガス通路55の上流側の通路部55bよりも下流側の通路部55dが低圧(負圧)になると、ブローバイガスが、入口55aから上流側の通路部55b内に流入した後、計量孔55c、下流側の通路部55dを通って出口55eから流出する。このとき、上流側の通路部55bの上流側圧力と下流側の通路部55dの下流側圧力(スプリング72の付勢力を含む)との差圧に応じて、バルブ体60が進退(軸方向に移動)する。これにより、ガス通路55を流れるブローバイガスの流量が制御すなわち計量される。詳しくは、上流側圧力が下流側圧力より大きくかつ上流側圧力と下流側圧力との差圧が大きいときには、バルブ体60がスプリング72の付勢力に抗して前進されることにより、計量部70の通路断面積が減少されるため、ブローバイガスの流量が少なくなる。また、上流側圧力と下流側圧力との差圧が小さくなると、バルブ体60がスプリング72の付勢力により後退されることにより、計量部70の通路断面積が増大されるため、ブローバイガスの流量が多くなる。このように、計量部70の通路断面積が増減されることにより、ガス通路55を流れるブローバイガスの流量が制御される。
【0034】
前記したPCVバルブ40によると、バルブ体60の進退に際し、ガイド手段GFにおける第1ケース半体43の筒状部45に放射状に設けられたガイド突起66と、バルブ体60の軸部64とが摺動接触することにより、バルブ体60が進退方向(軸方向)にガイドされる。このため、バルブ体60の作動安定性を向上することができる。また、バルブ体60の進退に際しては、第2ケース半体44の筒状部50と、バルブ体60のガイドフランジ62とが摺動接触することにより、バルブ体60が進退方向(軸方向)にガイドされる。
【0035】
また、ガイド突起66の軸方向の長さ66Lが、バルブ体60の進退方向(軸方向)の移動量Mに比べて短い長さに設定されている(
図1参照)。このため、ブローバイガスの流通抵抗を低減して最大流量を増大することができる。
【0036】
また、バルブ体60の進退方向の移動範囲全域において、軸部64と全てのガイド突起66とが摺動接触可能に構成されている。したがって、バルブ体60の進退方向の移動範囲全域において、バルブ体60を進退方向にガイドすることができる。
【0037】
また、バルブ体60の作動安定性を向上するとともに、ブローバイガスの流通抵抗を低減して最大流量を増大することのできるPCVバルブ60をエンジン12のブローバイガス還元装置10(
図3参照)に用いることにより、排気量の大きい内燃機関に対応することができる。
【0038】
[実施形態2]
実施形態2について説明する。本実施形態以降の実施形態は、前記実施形態1の一部を変更したものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明を省略する。
図4はPCVバルブを示す断面図、
図5は
図4のV−V線矢視断面図、
図6は
図4のVI−VI線矢視断面図である。
図5に示すように、本実施形態は、前記実施形態1(
図1参照)のPCVバルブ40における4個のガイド突起66を、左右に対向する位置関係にある2個のガイド突起66(符号(A)を付す)と、上下に対向する位置関係にある2個のガイド突起66(符号(B)を付す)とに組分けている。そして、一方の組のガイド突起66(符号(A)を付す)を、残りの組のガイド突起66(符号(B)を付す)よりも前方(
図4において左方)にずらして配置したものである(
図6参照)。すなわち、両組のガイド突起66(A),266(B)が軸方向にずれた位置関係をもって配置されている。この場合も、バルブ体60の進退方向の移動範囲全域において、軸部64と全て(4個)のガイド突起66(A)、66(B)とが摺動接触可能に構成されている。
【0039】
したがって、全てのガイド突起66(A)、66(B)によるガス通路55の通路断面積の減少を抑制することができる。すなわち、ガス通路55の通路断面積は、
図5及び
図6に示すように、各組のガイド突起66(A),ガイド突起66(B)において、それぞれ2個分ずつのガイド突起66の断面積相当分減少する。このことは、前記実施形態1におけるガス通路55の通路断面積が4個分のガイド突起66の断面積相当分減少する場合と比べて、ガス通路55の通路断面積の減少量が小さくて済むことになる。このため、ブローバイガスの流通抵抗を低減し、大流量のブローバイガスを流すことができる。なお、4個のガイド突起66を1個と3個とに組分けしてもよい。
【0040】
[実施形態3]
実施形態3について説明する。
図7はPCVバルブを示す断面図である。
図7に示すように、本実施形態は、前記実施形態2(
図4参照)のPCVバルブ40における一方(前側)の組のガイド突起66(A)を、バルブ体60の後退位置及びその後退位置周辺において軸部64に対して接触しないように配置したものである。すなわち、一方の組の前側のガイド突起66(A)は、実施形態2における位置よりも更に前方に配置されている。
【0041】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明は、PCVバルブ40に限らず、ブローバイガス以外の流体の流量を制御する流量制御弁としても適用することもできる。また、ガイド突起66は、第1ケース半体43の筒状部45に代えてバルブ体60の軸部64に設けてもよい。また、ガイド突起66は、第1ケース半体43の筒状部45又はバルブ体60の軸部64に一体形成しても良いし、別体で形成したものを取付けてもよい。また、ガイド突起66の形状、個数等は適宜変更することができる。