特許第5694266号(P5694266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5694266光ファイバ及びそれを用いたファイバレーザ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694266
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】光ファイバ及びそれを用いたファイバレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/036 20060101AFI20150312BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20150312BHJP
   G02B 6/024 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   G02B6/036 501
   H01S3/067
   G02B6/024 301
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-220588(P2012-220588)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-74741(P2014-74741A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2013年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】柏木 正浩
【審査官】 奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−547048(JP,A)
【文献】 特開2012−099649(JP,A)
【文献】 特開2008−293004(JP,A)
【文献】 特開平10−160947(JP,A)
【文献】 特開2012−088356(JP,A)
【文献】 特表2008−547049(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/146792(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00− 6/036
G02B 6/44
H01S 3/00− 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアと前記コアを囲み前記コアの屈折率よりも低い屈折率のクラッドとを有し、所定波長の光を少なくともLP01モード及びLP02モードで伝播する光ファイバであって、
前記LP02モードの光の強度が前記LP01モードの光の強度より大きい領域のうち、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域よりも外周側における前記コアの領域の少なくとも一部のヤング率が、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度よりも大きい領域のヤング率よりも小さい
ことを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
前記LP02モードの光の強度が前記LP01モードの光の強度より大きい領域のうち、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域よりも外周側における前記コアの全ての領域のヤング率が、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度よりも大きい領域のヤング率よりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記コアの屈折率が径方向において一定である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記クラッドにおける前記所定波長の光を伝播する導波領域の少なくとも一部のヤング率が、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域のヤング率よりも小さい
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記クラッドにおける全ての前記導波領域のヤング率が、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域のヤング率よりも小さい
ことを特徴とする請求項4に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記LP02モードの光の強度が前記LP01モードの光の強度より大きい領域のうち、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域よりも外周側における前記コアの領域の少なくとも一部のヤング率が、前記クラッドにおける前記導波領域のヤング率よりも小さい
ことを特徴とする請求項5に記載の光ファイバ。
【請求項7】
前記クラッドの屈折率が径方向において一定である
ことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項8】
前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域のヤング率よりも小さいヤング率とされる領域には、屈折率を高くすると共にヤング率を小さくするドーパントと、屈折率を低くすると共にヤング率を小さくするドーパントとが共添加されている
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項9】
前記コアの少なくとも一部には、前記所定波長の光を誘導放出する活性元素が添加されている
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項10】
前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域の少なくとも一部には、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域のヤング率よりも小さいヤング率とされる前記コアの領域よりも、前記活性元素が高い濃度で添加されている
ことを特徴とする請求項9に記載の光ファイバ。
【請求項11】
前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域のヤング率よりも小さいヤング率とされる前記コアの領域には、前記活性元素が非添加とされる
ことを特徴とする請求項10に記載の光ファイバ。
【請求項12】
前記クラッド内に前記コアを挟む一対の応力付与部が設けられていることを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の光ファイバ。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか1項に記載の光ファイバと、
前記コアに入射する前記所定波長の種光を出射する種光源と、
前記活性元素を励起する励起光を出射する励起光源と、
を備える
ことを特徴とするファイバレーザ装置。
【請求項14】
前記種光は、前記光ファイバの軸対称のモードのみを励振すること
を特徴とする請求項13に記載のファイバレーザ装置。
【請求項15】
請求項8から12のいずれか1項に記載の光ファイバと、
前記活性元素を励起する励起光を出射する励起光源と、
前記光ファイバの一方側に設けられ、前記励起光により励起された前記活性元素が放出する光のうち前記所定波長の光を反射する第1FBGと、
前記光ファイバの他方側に設けられ、前記第1FBGが反射する光と同じ波長の光を前記第1FBGよりも低い反射率で反射する第2FBGと、
を備えることを特徴とするファイバレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアの直径が大きい場合であっても、ビーム品質の良い光を出射することができる光ファイバ、及び、それを用いたファイバレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工機等において使用されるファイバレーザ装置の一つとして、レーザ発振器(MO:Master Oscillator)等の種光源により発生される光を、増幅用光ファイバを有する増幅器(PA:Power Amplifier)で増幅して出射するMO−PA(Master Oscillator−Power Amplifier)型のファイバレーザ装置が知られている。このようなファイバレーザ装置として、波長変換素子により、近赤外光の波長帯域を有する光を短波長側に変換することで、可視光の波長帯域を有する光を出射することが行われている。
【0003】
このような波長変換を行う際、波長変換される前の光に多数のモードが存在すると、効率良く波長変換を行うことができない傾向があるため、波長変換素子に入射する光には出来るだけ基本モードの光のみが含まれて高次モードの光が含まれないことが望ましい。一方、ファイバレーザ装置の高出力化に伴い、よりパワーの大きな光を伝播するため、増幅用光ファイバ等の光ファイバにシングルモードファイバよりもコアの直径が大きいマルチモードファイバを用いたいという要望がある。そして、このような場合であっても、基本モードの光が含まれて高次モードの光が低減されたビーム品質の良い光を出射させたいという要望がある。
【0004】
下記特許文献1には、マルチモード光を伝播可能な増幅用ダブルクラッドファイバを有するファイバレーザ装置が記載されている。このファイバレーザ装置では、コアに入射する光にLP01モード(基本モード)の光のみが含まれるように、LP01モードの光のみを励振するようなモードコンバータを配して、マルチモードの光を伝播する増幅用ダブルクラッドファイバにおいてLP01モードの光を中心に増幅できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,818,630号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、光をマルチモードで伝播できる光ファイバにLP01モードの光のみを有する光を入射する場合であっても、LP01モードの光以外にLP02モードの光等の高次モードの光が励振されてしまう。特許文献1に記載の増幅用光ファイバにおいてLP02モード等の高次モードの光が励振されてしまうと、LP01モードの光の他、これら高次モードの光が増幅され、ビーム品質の良くない光が出射されてしまう。このように高次モードの光を含む光が出射されると、出射される光が集光されづらくなる等という問題や、上記のように波長変換素子において効率良く波長変換を行うことができないという問題がある。LP02モードの光は他の高次モードの光と比べてパワーが大きい傾向があるので、高次モードの光の中でもLP02モードの光を抑制することが重要である。
【0007】
そこで、本発明は、コアの直径が大きい場合であっても、ビーム品質の良い光を出射することができる光ファイバ及びそれを用いたファイバレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、コアと前記コアを囲むクラッドとを有し、所定波長の光を少なくともLP01モード及びLP02モードで伝播する光ファイバであって、前記LP02モードの光の強度が前記LP01モードの光の強度より大きい領域のうち、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域よりも外周側における前記コアの領域の少なくとも一部のヤング率が、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度よりも大きい領域のヤング率よりも小さいことを特徴とするものである。
【0009】
誘導ブリルアン散乱は、光ファイバ中を伝播する光と音響波との相互作用により生じる。この音響波は、ヤング率が小さい部位に集まる傾向がある。従って、このような光ファイバによれば、コアの内、LP01モードの光の強度がLP02モードの光の強度より大きい領域よりも外周側の領域に音響波が集まることになる。この領域は、LP02モードの光の強度が前記LP01モードの光の強度より大きくLP02モードの第2ピークが存在する領域でもあるため、この領域では、LP01モードの光よりもLP02モードの光の方が誘導ブリルアン散乱による影響が大きくなる。従って、LP02モードの光をLP01モードの光に比べて減衰して伝播させることができる。また、当該領域では、LP01モードの光の強度は小さいため、LP01モードの誘導ブリルアン散乱による損失はLP02モードの光と比べて大きくない。従って、上記光ファイバによれば、コアの直径が大きい場合であっても、LP01モードの光の損失を抑制しつつLP02モードの光を損失さることができ、ビーム品質の良い光を出射することができるのである。
【0010】
また、前記LP02モードの光の強度が前記LP01モードの光の強度より大きい領域のうち、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域よりも外周側における前記コアの全ての領域のヤング率が、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度よりも大きい領域のヤング率よりも小さいことが好ましい。
【0011】
このような光ファイバによれば、LP02モードの光を更に損失させて伝播することができる。
【0012】
また、前記コアの屈折率が径方向において一定であることとしても良い。
【0013】
また、前記クラッドにおける前記所定波長の光を伝播する導波領域の少なくとも一部のヤング率が、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域のヤング率よりも小さいことが好ましい。
【0014】
通常、コアを伝播する光のモードフィールド径はコアの直径よりも大きい。つまり、光ファイバを伝播する光は、クラッドにおけるコアと隣接する領域までコアからはみ出て伝播する。このクラッドにおける光の導波領域では、LP01モードの光の強度よりもLP02モードの光の強度の方が大きい。従って、このクラッドの導波領域のヤング率が小さくされて音響波がこの領域にも集まることにより、LP02モードの光をLP01モードの光よりも更に損失させることができる。
【0015】
また、前記クラッドにおける全ての導波領域のヤング率が、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域のヤング率よりも小さいことが好ましい。
【0016】
このような光ファイバによれば、クラッドの導波領域においてLP02モードの光を更に損失させて伝播することができる。
【0017】
この場合、前記LP02モードの光の強度が前記LP01モードの光の強度より大きい領域のうち、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域よりも外周側における前記コアの領域の少なくとも一部のヤング率が、前記クラッドにおける前記導波領域のヤング率よりも小さいことが好ましい。
【0018】
このようにコアの一部とクラッドの一部のヤング率が定められることにより、クラッドの導波領域と比べて、LP02モードの光の強度がLP01モードの光の強度より大きい領域のうちLP01モードの光の強度がLP02モードの光の強度より大きい領域よりも外周側におけるコアの領域に音響波をより集めることができる。LP02モードの光の強度とLP01モードの光の強度の差は、クラッドの導波領域よりも、上記のコアの領域の方が大きい。従って、クラッドの導波領域と比べて上記のコアの領域に音響波をより集めることで、クラッドの導波領域よりも上記のコアの領域において誘導ブリルアン散乱の影響を大きくすることにより、LP01モードの光の損失に比べて、LP02モードの光の損失をより大きくすることができる。こうして、ビーム品質をより向上させることができる。
【0019】
また、前記クラッドの屈折率が径方向において一定であることとしても良い。
【0020】
また、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域のヤング率よりも小さいヤング率とされる領域には、屈折率を高くすると共にヤング率を小さくするドーパントと、屈折率を低くすると共にヤング率を小さくするドーパントとが共添加されていることが好ましい。
【0021】
屈折率を高くすると共にヤング率を小さくするドーパントと、屈折率を低くすると共にヤング率を小さくするドーパントとが共添加されることにより、ヤング率を小さくしつつ屈折率を所望の状態とすることができる。例えば、LP01モードの光の強度がLP02モードの光の強度より大きい領域のヤング率よりも小さいヤング率とされる領域がコアの領域である場合、この領域のヤング率を小さくしつつ、この領域とコアの他の領域とを同じ屈折率にすることができる。同様にLP01モードの光の強度がLP02モードの光の強度より大きい領域のヤング率よりも小さいヤング率とされる領域がクラッドの導波領域である場合、この導波領域のヤング率を小さくしつつ、この導波領域とクラッドの他の領域とを同じ屈折率にすることができる。
【0022】
また、前記コアの少なくとも一部には、前記所定波長の光を誘導放出する活性元素が添加されていることとしても良く、この場合、LP02モードの光を損失させることができる増幅用光ファイバを実現することができる。
【0023】
さらに、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域の少なくとも一部には、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域のヤング率よりも小さいヤング率とされる前記コアの領域よりも、前記活性元素が高い濃度で添加されていることが好ましい。
【0024】
LP01モードの光の強度がLP02モードの光の強度より大きい領域のヤング率よりも小さいヤング率とされるコアの領域は、誘導ブリルアン散乱により光を損失させようとする領域である。従って、この領域よりもLP01モードの光の強度がLP02モードの光の強度より大きい領域において、光を増幅させることにより、効率良くLP01モードの光を増幅することができる。
【0025】
また、前記LP01モードの光の強度が前記LP02モードの光の強度より大きい領域のヤング率よりも小さいヤング率とされる前記コアの領域には、前記活性元素が非添加とされることが好ましい。
【0026】
誘導ブリルアン散乱によりLP02モードの光を損失させようとする領域に活性元素が非添加とされることで、LP02モードの光をより一層と損失させることができる。
【0027】
また、前記クラッド内に前記コアを挟む一対の応力付与部が設けられていることが好ましく、このような応力付与部を設けることにより、コアを伝播する光を単一偏波とすることができる。このような単一偏波を光ファイバから出射することにより、光ファイバから出射された光を波長変換素子に入射して波長変換する際、効率良く光を波長変換することができる。
【0028】
また、本発明のファイバレーザ装置は、コアの少なくとも一部に活性元素が添加されている上記に記載のいずれかの光ファイバと、前記コアに入射する前記所定波長の種光を出射する種光源と、前記活性元素を励起する励起光を出射する励起光源と、を備えることを特徴とするものである。
【0029】
このようなファイバレーザ装置によれば、光ファイバにおいてLP02モードの光を損失しつつ、LP01モードの光を増幅させることができるので、ビーム品質の良い光を出射することができる。
【0030】
また、このようなファイバレーザ装置において、前記種光は、前記光ファイバの軸対称のモードのみを励振することが好ましい。
【0031】
このようなファイバレーザ装置によれば、光ファイバにおいて、非軸対称の高次モードが伝播しないため、非軸対称の高次モードが増幅されて出射することがなく、集光が行いやすい良好なビーム品質の光を出射することができる。
【0032】
また、本発明のファイバレーザ装置は、コアの少なくとも一部に活性元素が添加されている上記に記載のいずれかの光ファイバと、前記活性元素を励起する励起光を出射する励起光源と、前記光ファイバの一方側に設けられ、前記励起光により励起された前記活性元素が放出する光のうち前記所定波長の光を反射する第1FBGと、前記光ファイバの他方側に設けられ、前記第1FBGが反射する光と同じ波長の光を前記第1FBGよりも低い反射率で反射する第2FBGと、を備えることを特徴とするものである。
【0033】
このようなファイバレーザ装置によれば、光の共振において、光ファイバのコアを光が伝播するときに、LP02モードの光を損失しつつLP01モードの光を増幅することができるので、良好なビーム品質の光を出射することができる。
【発明の効果】
【0034】
以上のように、本発明によれば、コアの直径が大きい場合であっても、ビーム品質の良い光を出射することができる光ファイバ及びそれを用いたファイバレーザ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1実施形態に係る光ファイバの長手方向に垂直な断面の様子を示す図である。
図2図1の光ファイバの屈折率、光の強度、ヤング率、活性元素の分布の様子を示す図である。
図3図1の光ファイバを用いたファイバレーザ装置を示す図である。
図4図1の光ファイバを用いた他のファイバレーザ装置を示す図である。
図5図2(D)に示すヤング率の大きさの分布の他の例を示す図である。
図6図2(D)に示すヤング率の大きさの分布の更に他の例を示す図である。
図7】増幅用光ファイバにおいて、第3領域に活性元素が添加される場合の活性元素の濃度分布を示す図である。
図8】増幅用光ファイバの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明に係る光ファイバ、及び、それを用いたファイバレーザ装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解の容易のため、それぞれの図のスケールと、以下の説明に記載のスケールとが異なる場合がある。
【0037】
<増幅用光ファイバについての説明>
図1は、本発明の第1実施形態に係る光ファイバの長手方向に垂直な断面の様子を示す図である。
【0038】
本実施形態の光ファイバは増幅用光ファイバであり、図1に示すように増幅用光ファイバ10は、コア11と、コア11の外周面を隙間なく囲むクラッド12と、クラッド12の外周面を被覆する外部クラッド13と、外部クラッド13を被覆する被覆層14とを主な構成として備える。コア11の直径は、通常のシングルモードファイバのコアの直径よりも大きくされており、例えば30μmとされる。また、クラッド12の外径は例えば420μmとされ、外部クラッド13の外径は例えば440μmとされる。
【0039】
図2は、図1の増幅用光ファイバ10のコア11とその周囲における様子を示した図である。具体的には、図2(A)は図1の点線で示される領域でのコア11とクラッド12とを示し、図2(B)は図2(A)に示す領域での屈折率分布を示し、図2(C)は増幅用光ファイバ10が所定波長の光を伝播したときのLP01モードの光とLP02モードの光をパワーで規格化した場合のLP01モードの光及びLP02モードの光の強度分布を示し、図2(D)は図2(A)に示す領域でのヤング率の大きさの分布を示し、図2(E)は図2(A)に示す領域での活性元素の濃度分布を示す。
【0040】
図2(B)に示すように、クラッド12の屈折率はコア11の屈折率よりも低くされている。なお、特に図示しないが、外部クラッド13の屈折率はクラッド12の屈折率よりも低くされている。また、本実施形態の増幅用光ファイバ10では、コア11の屈折率が径方向において一定とされており、クラッド12の屈折率も径方向で一定とされている。コア11とクラッド12との比屈折率差は、例えば0.15%とされる。コア11及びクラッド12は、例えば後述のように必要なドーパントが添加された石英から構成され、外部クラッド13は、例えば紫外線硬化樹脂や屈折率を下げるドーパントが添加された石英から構成され、被覆層は、例えば外部クラッドとは異なる紫外線硬化樹脂から構成される。
【0041】
増幅用光ファイバ10は、上記のようにコア11の直径がシングルモードファイバの直径よりも大きくされており、コア11を伝播する光が基本モードであるLP01モードの光の他に軸対称の高次モードの光を含む光を伝播するマルチモードファイバとされる。従って、例えばLP01モードの光のみを含む光がコア11に入射する場合、軸対称の高次モードの光が励振する場合がある。この場合、コア11に所定波長の光を入射するとコア11を伝播する光のモードとしては、LP01モードの他にLP02モードやLP03モード等が存在する。高次モードの中でも一般的にLP02モードの光の強度が他の高次モードの光の強度よりも大きく、その影響が大きいため、本実施形態においては、高次モードの光についてはLP02モードの光を考慮して、影響がLP02モードの光よりも少ないLP03モード以上の高次モードの光については、特に考慮しないものとする。
【0042】
このようにコア11をLP01モードの光及びLP02モードの光を含む光が伝播すると、LP01モードの光とLP02モードの光をパワーで規格化する場合にLP01モードの光及びLP02モードの光が図2(C)に示すような強度分布を有して伝播する。この光の波長は、例えば図2(E)に示す活性元素が励起状態をされる場合に、当該活性元素が誘導放出を起こす波長とされる。それぞれのモードの光は、コア11の中心で最も強くなる強度分布を有しており、中心においては、LP02モードの光の強度の方がLP01モードの光の強度よりも大きい。そして、コア11の中心から径方向に離れると、LP01モードの光の強度が、LP02モードの強度よりも大きくなる。ここで、図2(C)において、コア11の中心からLP01モードの光の強度がLP02モードの光の強度よりも大きくなるまでの径方向における領域を第1領域11aとする。従って、第1領域11aでは、LP02モードの光の強度がLP01モードの光の強度よりも大きい。そして第1領域11aから更に径方向に離れると、再びLP02モードの光の強度がLP01モードの光の強度よりも大きくなる。そこで、第1領域11aに隣接する外周側の領域でLP01モードの光の強度がLP02モードの光の強度よりも大きい領域を第2領域11bとする。そして第2領域11bから更に径方向に離れると、コア11の外周面に到達する。従って、コア11において第2領域11bよりも外周側ではLP02モードの光の強度がLP01モードの光の強度よりも大きくなる。そこで、コア11における第2領域11bに隣接する外周側の領域を第3領域11cとする。
【0043】
また、図2(C)に示すように、光ファイバを伝播する光は、クラッドにおけるコアと隣接する領域までコアからはみ出て伝播する。従って、光の導波領域は、クラッド12のコア11と隣接する領域まで広がっている。本実施形態では、図2(C)でのクラッド12における光の導波領域を第4領域12aとする。この第4領域12aにおいては、LP02モードの光の強度がLP01モードの光の強度よりも大きくなっている。
【0044】
また、増幅用光ファイバ10では、図2(D)に示すように、コア11の第3領域11cにおけるヤング率は、第2領域11bのヤング率よりも小さくされている。更に本実施形態においては、第4領域12aのヤング率は第3領域11cのヤング率と同等とされて、第2領域11bのヤング率よりも小さくされている。また、本実施形態では、第1領域11aのヤング率と第2領域11bのヤング率とが同等とされ、第4領域12aよりも外周側におけるクラッド12のヤング率は、第4領域12aのヤング率よりも大きくされている。
【0045】
ヤング率を小さくするドーパントとしては、ゲルマニウム(Ge)、フッ素(F)、ホウ素(B)、リン(P)等を挙げることができ、ヤング率を大きくするドーパントとしては、アルミニウム(Al)を挙げることができる。このうち、ゲルマニウム、アルミニウム、リンは屈折率を高くし、フッ素、ホウ素は屈折率を低くするドーパントとして知られている。
【0046】
そこで、上記のようにコア11の径方向における屈折率を一定としつつ、第1領域11a及び第2領域11bのヤング率よりも第3領域11cのヤング率を小さくするには、例えば次のようにすればよい。すなわち、第1領域11a及び第2領域11bをゲルマニウムが所定の濃度で添加された石英で構成し、第3領域11cをゲルマニウムが第1領域11a及び第2領域11bよりも高い濃度で添加されると共にフッ素が添加された石英で構成して、第3領域11cの屈折率が第1領域11a及び第2領域11bの屈折率と同等に成るようゲルマニウム及びフッ素の添加量をそれぞれ調整すれば良い。このとき必要に応じて、第1領域11a及び第2領域11bに上記の他のドーパントが添加されても良い。
【0047】
また、上記のようにクラッド12の径方向における屈折率を一定としつつ、第4領域12aのヤング率と第3領域11cのヤング率を同等とし、更に、クラッド12の第4領域12aの外周側の領域のヤング率を第4領域12aのヤング率よりも大きくするには、例えば次のようにすればよい。すなわち、クラッド12の第4領域12aよりも外周側の領域をドーパントが特に添加されていない純粋な石英から構成し、第4領域12aをフッ素及びゲルマニウムが添加された石英で構成して、第4領域12aの屈折率が純粋な石英の屈折率とされつつ、第4領域12aのヤング率と第3領域11cのヤング率を同等となるように、フッ素及びゲルマニウムの添加量をそれぞれ調整すれば良い。なお必要に応じて第4領域12aに上記の他のドーパントが添加されても良い。
【0048】
上記第3領域11cや第4領域12aのように、屈折率を高くすると共にヤング率を小さくするドーパントと、屈折率を低くすると共にヤング率を小さくするドーパントとが共添加されることにより、ヤング率を小さくしつつ屈折率を所望の状態とすることができる。
【0049】
また、図2(E)に示すように、本実施形態の増幅用光ファイバ10では、第1領域11a,第2領域11bには活性元素が添加されており、第3領域11c及びクラッドには活性元素が添加されていない。この活性元素は励起光により励起状態とされる元素であり、代表的にはイッテルビウム(Yb)を挙げることができる。なお、このような活性元素としては、イッテルビウム(Yb)の他に、例えばネオジウム(Nd)やエルビウム(Er)等の希土類元素を挙げることができる。さらに活性元素として、希土類元素の他に、ビスマス(Bi)を挙げることができる。なお、第1領域11a,第2領域11bに添加される活性元素の濃度は、例えば活性限度がイッテルビウムである場合に16×1025(個/m)とされる。
【0050】
このような増幅用光ファイバ10のコア11に光が入射すると次のように伝播する。この光の波長は、上記のように励起状態とされる活性元素が誘導放出を起こす所定波長とされ、活性元素がイッテルビウムである場合には、例えば1070nmとされる。
【0051】
コア11は、入射する光をLP01モードの光及びLP02モードの光を含む光として伝播し得るため、少なくともLP01モードの光を含む光が入力すると、少なくともLP02モードが励振され、LP01モードの光とLP02モードの光をパワーで規格化する場合にLP01モードの光及びLP02モードの光は、図2(C)のような強度分布となり、増幅用光ファイバ10を伝播する。しかし、第3領域11c及び第4領域12aは、第1領域11a及び第2領域11bよりもヤング率が小さいため、音響波が第3領域11c及び第4領域12aに集まる。また、本実施形態では第4領域よりも外周側のクラッド12のヤング率が第4領域12aよりも大きいため、音響波がクラッド12の第4領域12a以外にも分散して伝達することが抑制され、音響波は第4領域12a及び第3領域11cに集中する傾向となる。従って、誘導ブリルアン散乱が主に第3領域11c及び第4領域12aで生じる。従って、これらの領域を伝播する光は誘導ブリルアン散乱により損失する。これらの領域では、上述のようにLP02モードの光の強度がLP01モードの光の強度よりも大きいため、LP02モードの光の誘導ブリルアン散乱による損失がLP01モードの光の損失よりも大きくなる。こうしてLP01モードの光よりもLP02モードの光が損失しながら、コア11に入射した光は伝播する。また、第3領域11cや第4領域12aでは、LP01モードの光の強度が然程大きくない。従って、コア11に入射した光のうちLP01モードの光は然程損失されない。
【0052】
また、上記のように増幅用光ファイバ10のコア11に所定波長の光が入射すると共に、クラッド12に活性元素を励起する波長の光が入射すると、次のようにコア11に入射した光が増幅される。すなわち、クラッド12に入射する励起光はクラッド12を主に伝播し、当該励起光がコア11を通過する際、コア11に添加されている活性元素が励起される。励起された活性元素は、コア11に入射てコア11を伝播する所定波長の光により誘導放出を起こして、この誘導放出によりコア11を伝播する所定波長の光は増幅される。このとき、コア11の第1領域11a及び第2領域11bに活性元素が添加され、LP02モードの光の強度がLP01モードの光の強度よりも大きな第3領域11cに活性元素が添加されておらず、更に、上記のようにLP01モードの光よりもLP02モードの光が損失しながら光が伝播する。従って、コア全体に活性元素が均一に添加されている増幅用光ファイバと比較する場合に、本実施形態の増幅用光ファイバ10によればLP01モードの光がLP02モードの光よりも効率良く増幅されて出射される。
【0053】
このとき下記式(1)を満たしていることが好ましい。
【数1】
【0054】
ただし、rは、コア11の径方向における中心からの距離であり、I01(r)は、図2(C)に示すLP01モードの光のコア11の径方向における中心から距離rにおける強度であり、I02(r)は、図2(C)に示すLP02モードの光のコア11の径方向における中心から距離rにおける強度であり、n(r)は、コア11の径方向における中心から距離rにおける活性元素の添加濃度であり、bはコア11の半径である。なお、rの単位は(m)であり、I01(r),I02(r)の単位は(W/m)であり、n(r)の単位は(個/m)であり、bの単位は(m)である。
【0055】
式(1)を満たす場合においては、出射する光におけるLP01モードの光のパワーがLP02モードの光のパワーよりも大きくなるように光が増幅されるため、出射する光のビーム品質がより一層と良くなる。
【0056】
以上のように本実施形態の増幅用光ファイバ10によれば、LP01モードの光の損失を抑制しつつLP02モードの光を損失させて、コア11に入射する光を増幅することができるので、ビーム品質の良い光を出射することができる。
【0057】
<ファイバレーザ装置についての説明>
次に上記の増幅用光ファイバ10を用いたファイバレーザ装置について図3を参照して説明する。図3は、本実施形態のファイバレーザ装置を示す図である。図3に示すように、本実施形態におけるファイバレーザ装置1は、種光となる光を出射する種光源20と、励起光を出射する励起光源30と、種光及び励起光が入力する光コンバイナ40と、光コンバイナ40から出射される種光及び励起光が入力する図1の増幅用光ファイバ10とを主な構成として備える。
【0058】
種光源20は、例えば、半導体レーザ装置や、ファブリペロー型やファイバリング型のファイバレーザ装置から構成されている。この種光源20は、LP01モードの光を含む所定波長の光を光ファイバから出射するように構成されている。また、この所定波長は、特に制限されるものではないが、増幅用光ファイバ10に添加される活性元素が誘導放出できる波長であり、例えば、上記のように活性元素がイッテルビウム(Yb)である場合には1070nmとされる。
【0059】
また、種光源20の出射する光は、コア、及び、コアを被覆するクラッドから構成されるシングルモードファイバ25から出射される。このシングルモードファイバ25は、種光源20から出射される光を、LP01モードの光から成るシングルモード光として伝播する。このシングルモードファイバ25の構成は特に制限されるものではないが、例えば、種光の波長が上記のように1070nmである場合には、コアの直径が10μmとされ、コアとクラッドとの比屈折率差が0.13%とされる。
【0060】
励起光源30は、複数のレーザダイオード31から構成され、レーザダイオード31は、本実施形態においては、例えば、GaAs系半導体を材料としたファブリペロー型半導体レーザであり、中心波長が915nmの光を出射する。また、励起光源30のそれぞれのレーザダイオード31は、マルチモードファイバ35に接続されており、レーザダイオード31から出射される励起光は、マルチモードファイバ35をマルチモード光として伝播する。
【0061】
マルチモードファイバ35及びシングルモードファイバ25が接続される光コンバイナ40は、シングルモードファイバ25を中心としてその周りにマルチモードファイバを配置した部分が溶融延伸されて一体化することにより構成されており、シングルモードファイバ25のコアと増幅用光ファイバ10のコア11とが光学的に結合され、マルチモードファイバ35のコアと増幅用光ファイバ10のクラッド12とが光学的に結合されている。
【0062】
次に、ファイバレーザ装置1の動作について説明する。
【0063】
まず、種光源20から出射する種光がシングルモードファイバ25から出射する。この種光の波長は、上述のように例えば1070μmとされる。このとき上述のシングルモードファイバ25の構成により、LP01モードを含む種光が伝播する。そして、シングルモードファイバ25を伝播する種光は、光コンバイナ40に入射する。
【0064】
また、励起光源30からは、増幅用光ファイバ10のコア11に添加されている活性元素を励起する励起光が出射される。このときの波長は、上述のように例えば915μmの波長とされる。そして、励起光源30から出射した励起光は、マルチモードファイバ35を伝播して、光コンバイナ40に入射する。
【0065】
光コンバイナ40から増幅用光ファイバ10のコア11に入射した種光は、コア11を伝播し、光コンバイナ40から増幅用光ファイバ10のクラッド12に入射した励起光は、クラッド12を主に伝播してコア11に添加されている活性元素を励起状態とする。そして励起状態とされた活性元素が種光により誘導放出を起こして種光が増幅する。このとき、上述の増幅用光ファイバ10の説明のように、種光は軸対称モードの光を励振する場合があり、LP02モードの光が励振する場合であっても、増幅用光ファイバ10の第3領域11c及び第4領域12aにおいて、LP02モードの光が主に損失して、全体としてLP01モードの光よりもLP02モードの光が損失される。そして、コア全体に活性元素が均一に添加される増幅用光ファイバと比べて、LP01モードの光がLP02モードの光よりも効率良く増幅されて出射される。従って、LP02モードの光の強度が抑制されたビーム品質の良い光が増幅用光ファイバ10から出射する。
【0066】
以上説明したように本実施形態のファイバレーザ装置1によれば、増幅用光ファイバ10においてLP02モードの光を損失させつつ、LP01モードの光を増幅させることができるので、ビーム品質の良い光を出射することができる。
【0067】
また、本実施形態のファイバレーザ装置1においては、増幅用光ファイバ10にLP01モードの光から成るシングルモード光を種光として入力しているため、励振されるLP02モードのパワーを小さく抑えることができ、LP01モードをより大きく増幅することができる。従って、良好なビーム品質の光を出射することができる。
【0068】
<ファイバレーザ装置の他の例についての説明>
次にファイバレーザ装置の他の例について図4を参照して詳細に説明する。なお、上記のファイバレーザ装置1の説明と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。
【0069】
図4は、本実施形態のファイバレーザ装置の他の例を示す図である。図4に示すように、本実施形態のファイバレーザ装置2は、励起光源30と、増幅用光ファイバ10と、光コンバイナ40と、増幅用光ファイバ10と光コンバイナ40との間に設けられるダブルクラッドファイバ65と、ダブルクラッドファイバ65に設けられる第1FBG61と、増幅用光ファイバ10のダブルクラッドファイバ65側と反対側に設けられるマルチモードファイバ66と、マルチモードファイバ66に設けられる第2FBG62とを主な構成として備える。
【0070】
ダブルクラッドファイバ65は、長手方向に垂直な断面の構造が増幅用光ファイバ10と同様とされ、コアと、コアの外周面を隙間なく囲むクラッドと、クラッドの外周面を被覆する外部クラッドと、外部クラッドを被覆する被覆層とから構成される。ダブルクラッドファイバ65のコア、クラッド、及び、外部クラッドの外径や屈折率、ヤング率等は、増幅用光ファイバ10のコア、クラッド、及び、外部クラッドの外径や屈折率、ヤング率等と同様とされるが、ダブルクラッドファイバ65のコアには活性元素が添加されていない点において、ダブルクラッドファイバ65は増幅用光ファイバ10と異なる。しかしダブルクラッドファイバ65のコア及びクラッドは増幅用光ファイバ10のコア及びクラッドと同様のヤング率を有しているため、ダブルクラッドファイバ65のコアをLP01モードの光及びLP02モードの光を含む光が伝播すると、増幅用光ファイバ10における説明と同様にして、LP01モードの光よりもLP02モードの光が損失する。つまり、本発明の光ファイバでは、コアに添加される活性元素は必須ではなく、増幅用光ファイバ10のみならずダブルクラッドファイバ65も本発明の光ファイバである。
【0071】
ダブルクラッドファイバ65の一端は、ファイバレーザ装置1において増幅用光ファイバ10が光コンバイナ40に接続されるのと同様にして、光コンバイナ40に接続されて、マルチモードファイバ35のコアとダブルクラッドファイバ65のクラッドとが光学的に接続されている。また、ダブルクラッドファイバ65の他端は、増幅用光ファイバ10の一端に接続され、ダブルクラッドファイバ65のコアと増幅用光ファイバ10のコア11とが接続され、ダブルクラッドファイバ65のクラッドと増幅用光ファイバ10のクラッド12とが接続されている。
【0072】
また、ダブルクラッドファイバ65のコアには、第1FBG61が設けられている。こうして第1FBG61は、増幅用光ファイバ10の一方側に設けられている。第1FBG61は、ダブルクラッドファイバ65の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されており、この周期が調整されることにより、励起状態とされた増幅用光ファイバ10の活性元素が放出する光の少なくとも一部の波長を反射するように構成されている。第1FBG61は、上述のように活性元素がイッテルビウムである場合、例えば1070nmにおいて反射率が、例えば100%とされる。
【0073】
また、増幅用光ファイバ10のダブルクラッドファイバ65側と反対側に設けられるマルチモードファイバ66は、コア及びコアの外周面を隙間なく囲むクラッドを有しており、マルチモードファイバ66のコア、クラッドの外径や屈折率、ヤング率等は、増幅用光ファイバ10のコア、クラッドの外径や屈折率、ヤング率等と同様とされるが、マルチモードファイバ66のコアには活性元素が添加されていない。つまり、マルチモードファイバ66は、コアに活性元素が添加されず外部クラッドを有さない点において増幅用光ファイバ10と異なる。しかしマルチモードファイバ66のコア及びクラッドは増幅用光ファイバ10のコア及びクラッドと同様のヤング率を有しているため、マルチモードファイバ66のコアをLP01モードの光及びLP02モードの光を含む光が伝播すると、増幅用光ファイバ10における説明と同様にして、LP01モードの光よりもLP02モードの光が損失する。つまり、増幅用光ファイバ10やダブルクラッドファイバ65のみならずマルチモードファイバ66も本発明の光ファイバである。
【0074】
マルチモードファイバ66の一端は、増幅用光ファイバ10の他端に接続されて、増幅用光ファイバ10のコア11とマルチモードファイバ66のコアとが接続されている。また、本実施形態では、マルチモードファイバ66の他端には何も接続されずに自由端とされている。
【0075】
また、マルチモードファイバ66のコアには、第2FBG62が設けられている。こうして第2FBG62は、増幅用光ファイバ10の他方側に設けられている。第2FBG62は、マルチモードファイバ66の長手方向に沿って一定の周期で屈折率が高くなる部分が繰り返されており、第1FBG61が反射する光と同じ波長の光を第1FBG61よりも低い反射率で反射するように構成され、例えば、第1FBG61が反射する光と同じ波長の光を50%の反射率で反射するように構成されている。
【0076】
このようなファイバレーザ装置2においては、励起光源30のそれぞれのレーザダイオード31から励起光が出射されると、この励起光が光コンバイナ40において、ダブルクラッドファイバ65のクラッドに入力して、ダブルクラッドファイバ65のクラッドから、増幅用光ファイバ10のクラッドに入力する。そして、ファイバレーザ装置1と同様にして、増幅用光ファイバ10のコア11に添加されている活性元素を励起状態とする。そして励起状態とされた活性元素は、特定の波長の自然放出光を放出する。このときの自然放出光は、例えば1070nmの波長を含み一定の波長帯域を有する光である。この自然放出光は、増幅用光ファイバ10のコア11を伝播して、ダブルクラッドファイバ65のコアに設けられている第1FBG61により反射され、反射された光が第2FBG62で反射されて、光の共振が生じ、共振する光が増幅用光ファイバ10のコア11を伝播するときに増幅される。このとき、増幅用光ファイバ10において、ファイバレーザ装置1と同様にして、コア11を伝播するLP01モードの光の損失が抑制されつつLP02モードの光が損失する。従って、コア全体に活性元素が均一に添加される増幅用光ファイバと比べて、LP01モードの光がLP02モードの光よりも効率良く増幅される。また、ダブルクラッドファイバ65及びマルチモードファイバ66のそれぞれのコアを共振する光が伝播するときにおいても、コア11を伝播するLP01モードの光の損失が抑制されつつLP02モードの光が損失する。こうしてLP02モードの光が損失されて、共振する光が増幅される。そして、一部の光が第2FBGと透過して、マルチモードファイバ66から出射される。このとき第2FBGを透過した光においてもマルチモードファイバ66を伝播している間にLP02モードの光が損失する。
【0077】
本例のファイバレーザ装置2においては、増幅用光ファイバ10のコア11を光が伝播するとき、及び、ダブルクラッドファイバ65のコア及びマルチモードファイバ66のコアを光が伝播するときに、LP01モードの光よりもLP02モードの光が損失するため、ビーム品質の良い光を出射することができる。
【0078】
なお、図3図4において破線にて示すように、ファイバレーザ装置1,2から出射する光の経路に、出射する光の波長を変換する波長変換素子50が配置されても良い。
【0079】
波長変換素子50は、入射する光の波長を長波長側に変換して波長変換された光を出射する素子であり、例えば、波長が1070nmといった近赤外光が入射する場合に、この光を波長変換して波長が535nmの可視光を出射する。このような波長変換素子50としては、誘導ラマン散乱を起こす光ファイバを挙げることができる。この誘導ラマン散乱を起こす光ファイバとしては、コアに非線形光学定数を上昇させるドーパントが添加される光ファイバを挙げることができる。このようなドーパントとしては、ゲルマニウムやリンが挙げられる。この場合、波長変換素子50は、一般的に所定強度以上の光が入射する場合に波長変換を行い、波長変換する入射光の強度の閾値は、コアの直径、ドーパントの添加濃度、長さ等によって変えることができる。或いは、波長変換素子50として、ニオブ酸リチウムとタンタル酸リチウムの単結晶から成る波長変換素子を挙げることができる。
【0080】
このような波長変換素子50が配置される場合には、増幅用光ファイバ10やマルチモードファイバ66から出射する光は、図示しないレンズにより集光されて波長変換素子50に入射される。このとき増幅用光ファイバ10やマルチモードファイバ66からは、上記のようにビーム品質が良い光が出射するので、波長変換素子50に入射する光の集光性を高くすることができる。このように光の集光性を高くすることにより、光のパワー密度が高くなり、波長変換素子50における変換効率が向上する。
【0081】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0082】
例えば、上記実施形態の光ファイバでは、第3領域11cの全ての領域におけるヤング率が第2領域11bのヤング率よりも小さいとされたが、本発明はこれに限らず、第3領域11cの一部のヤング率が第2領域11bのヤング率よりも小さければ良い。つまり、本発明の光ファイバとして増幅用光ファイバ10、ダブルクラッドファイバ65、マルチモードファイバ66を例として挙げたが、本発明はこれに限らず、所定波長の光を少なくともLP01モード及びLP02モードで伝播する光ファイバであって、第3領域11cの少なくとも一部のヤング率が、第2領域11bヤング率よりも小さい限りにおいて、適宜変更することができるのである。従って、本発明の光ファイバには、LP01モード及びLP02モード以外の光が伝播しても良い。
【0083】
また、上記実施形態の増幅用光ファイバ10、ダブルクラッドファイバ65、マルチモードファイバ66では、第3領域11cのヤング率と第4領域12aのヤング率とが互いに等しいとされたが、それぞれのヤング率が互いに異なっていても良い。図5は、増幅用光ファイバ10の第3領域11cのヤング率と第4領域12aのヤング率とが互いに異なる場合におけるヤング率の大きさの分布の一例を示す図であり、図2(D)に相当する図である。図5に示すように、本例では、第3領域11cのヤング率は、第4領域12aのヤング率よりも小さく、さらに第4領域12aのヤング率は、第1領域11a、第2領域11bのヤング率よりも小さくされている。なお、ダブルクラッドファイバ65、マルチモードファイバ66のヤング率の大きさの分布がこのような分布とされても良い。このようなヤング率の大きさの分布にするには、例えば、第4領域12aにヤング率を大きくするドーパントを添加すればよい。或いは、第4領域12aに添加されるべきヤング率を小さくするドーパントの量を減らしても良い。このように第3領域11cのヤング率が第4領域12aのヤング率よりも小さいことにより、第4領域12aと比べて第3領域11cに音響波をより集めることができる。図2(C)からも明らかなように、LP02モードの光の強度とLP01モードの光の強度の差は、第4領域12aよりも第3領域11cの方が大きい。従って、第4領域12aと比べて第3領域11cに音響波をより集めることで、第4領域12aよりも第3領域11cにおいて誘導ブリルアン散乱の影響を大きくすることにより、LP01モードの光の損失に比べて、LP02モードの光の損失をより大きくすることができる。こうして、ビーム品質をより向上させることができる。
【0084】
また、図6は、増幅用光ファイバ10の第3領域11cのヤング率と第4領域12aのヤング率とが互いに異なる場合におけるヤング率の大きさの分布の他の例を示す図であり、図2(D)に相当する図である。図6に示すように、本例では、第4領域12aのヤング率は、第3領域11cのヤング率よりも小さくされている。なお、ダブルクラッドファイバ65、マルチモードファイバ66のヤング率の大きさの分布がこのような分布とされても良い。このようなヤング率の大きさの分布にするには、例えば、第3領域11cのヤング率と第4領域12aのヤング率とが同じ場合よりも、第4領域12aにヤング率を小さくドーパントを多く添加すればよい。第3領域11cは、第2領域11bよりもヤング率が小さいために音響波を集めることができるが、このように第4領域12aのヤング率が第3領域11cのヤング率よりも小さいことにより、音響波を第2領域11bからより遠ざけることができ、第2領域11bにおける誘導ブリルアン散乱の影響を小さくすることができる。
【0085】
また、本発明の光ファイバでは、第4領域12aよりも外周側のクラッドのヤング率が第4領域12aのヤング率と同じとされても良く、或いは、第4領域12aのヤング率が第4領域よりも外周側のクラッドのヤング率と同じとされても良い。ただし、音響波がクラッドの第4領域12aよりも外周側の領域に分散して伝達することを抑制し、音響波が第4領域12aにより集中させることができきるため、上記実施形態のように第4領域12aよりも外周側のクラッドのヤング率が第4領域12aのヤング率よりも大きいことが好ましい。
【0086】
また、増幅用光ファイバ10やダブルクラッドファイバ65やマルチモードファイバ66では、第1領域11aのヤング率と第2領域11bのヤング率とが互いに異なっていても良い。
【0087】
また、増幅用光ファイバ10では、第1領域11a及び第2領域11bに活性元素が添加され、第3領域11cに活性元素が添加されていないものとしたが、本発明はこれに限らない。図7は、増幅用光ファイバ10において、第3領域11cに活性元素が添加される場合の活性元素の濃度分布を示す図である。図7に示すように、第3領域11cには活性元素が添加されていても良い。この場合、第3領域11cに添加される活性元素の濃度は、少なくとも第2領域11bに添加される活性元素の濃度よりも小さいことが好ましく、上述の式(1)を満たしていることがより好ましい。例えば、添加される活性元素Ybの濃度は、第1領域11a及び第2領域11bにおいて、16×1025(個/m)とされ、第3領域11cにおいて、8×1025(個/m)とされる。
【0088】
また、上記実施形態において、コア11の屈折率が径方向において一定であるとしたが、本発明はこれに限らず、第1領域11a及び第2領域11b及び第3領域11cの少なくとも一つが他の領域と異なる屈折率であっても良い。例えば、第3領域11cの屈折率が第1領域11a及び第2領域11bの屈折率よりも高い屈折率とされても良い。この場合、第1領域11a及び第2領域11bをゲルマニウムが所定の濃度で添加された石英で構成し、第3領域11cをゲルマニウムが第1領域11a及び第2領域11bよりも高い濃度で添加された石英で構成すれば良い。このような形態では、第3領域11cの屈折率を第1領域11aや第2領域11bの屈折率と同じにするためのドーパントを共添加する必要が無いため、光ファイバの製造が容易となる。或いは、第3領域11cの屈折率が第1領域11a及び第2領域11bの屈折率よりも低く、コア11の一部として機能するようクラッド12の屈折率よりも高い屈折率とされても良い。この場合、第3領域11cのヤング率が第2領域11bのヤング率よりも小さくなる範囲において上記実施形態で第3領域11cに添加するとされるゲルマニウムの量を減らすか、上記実施形態で第3領域11cに添加するとされるフッ素の量を増やしても良い。
【0089】
なお、上記実施形態において、クラッド12の屈折率が径方向において一定であるとしたが、第4領域12aよりも外周側の領域の屈折率と第4領域12aの屈折率とが異なっていても良い。例えば、第4領域12aの外周側の領域が何らドーパントが添加されない純粋な石英から成る場合、第4領域12aにはヤング率を小さくしかつ屈折率を小さくするドーパントが添加されることで、第4領域12aの屈折率が第4領域の外周側の屈折率よりも低くすることができる。また、第4領域12aにヤング率を小さくしかつ屈折率を低くするドーパントとヤング率を小さくしかつ屈折率を高くするドーパントとを共添加して、第4領域12aがクラッドとして機能する範囲において、第4領域12aの屈折率を第4領域12aの外周側の領域の屈折率よりも高くしても良い。
【0090】
また、上述の実施形態の増幅用光ファイバ10は、クラッド12内にコア11のみが配置される構造とされたが、本発明は、これに限らない。例えば、増幅用光ファイバ10のクラッド12内に一対の応力付与部が設けられても良い。図8は、このような増幅用光ファイバ10の変形例を示す図である。なお、上記の実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。
【0091】
図8において、増幅用光ファイバ15は、コア11を挟む一対の応力付与部18が、クラッド12内に設けられる点において、第1実施形態の増幅用光ファイバ10と異なる。つまり、本変形例の増幅用光ファイバ15は、偏波保持ファイバ(PANDA fiber)とされる。例えば、上記のように、コア11の直径が30μmで、コア11とクラッド12との比屈折率差が0.15%である場合、それぞれの応力付与部18は、例えば、直径が35μmとされ、クラッド12との比屈折率差が−1%とされて、コア11の外周面から5μmの間隔をあけて設けられる。応力付与部18を構成する材料としては、例えば、ドーパントとしてホウ素(B)が添加された石英を挙げることができる。このような応力付与部18を設けることにより、単一偏波の光を伝搬することができる。このような増幅用光ファイバ15は、コア11に入力する光と、コア11から出射する光との偏波消光比を20dB程度にすることができる。
【0092】
この単一偏波の光を出射することにより、単一偏波ではない光を出射する場合と比べて、出射する光と効率的に波長変換することができる。例えば、図3の光ファイバ増幅器1において、増幅用光ファイバ10の代わりに増幅用光ファイバ15を用いる場合、波長変換素子50において、効率的に波長変換することができる。また、図4に示す共振器においても、増幅用光ファイバ10に代わりに、増幅用光ファイバ15を用い、ダブルクラッドファイバ65やマルチモードファイバ66のクラッドにも同様の応力付与部を配置することにより、波長変換素子50において効率的に波長変換された光を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上説明したように、本発明によれば、コアの直径が大きい場合であっても、ビーム品質の良い光を出射することができる光ファイバ、及び、それを用いたファイバレーザ装置が提供され、加工用のファイバレーザ装置等においての利用が期待される。
【符号の説明】
【0094】
1,2・・・ファイバレーザ装置
10・・・増幅用光ファイバ
11・・・コア
11a・・・第1領域
11b・・・第2領域
11c・・・第3領域
12・・・クラッド
12a・・・第4領域
13・・・外部クラッド
14・・・被覆層
15・・・増幅用光ファイバ
18・・・応力付与部
20・・・種光源
25・・・シングルモードファイバ
30・・・励起光源
31・・・レーザダイオード
35・・・マルチモードファイバ
40・・・光コンバイナ
50・・・波長変換素子
65・・・ダブルクラッドファイバ
66・・・マルチモードファイバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8