(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
乳化型の日焼け止め化粧料には、耐水効果が高く、また、乳化安定性及び使用感触に優れた日焼け止め化粧料が要求されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、撥水性に優れ、水に接した際の再乳化性が少なくて化粧持ちが良く、使用感触、乳化安定性及び安全性に優れる乳化型の日焼け止め化粧料が開示されている。特許文献1記載の日焼け止め化粧料は、従来の界面活性剤を用いず、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体により油性物質を乳化し、さらに耐水性の皮膜形成剤を併用して、耐水性に優れる乳化型の日焼け止め化粧料を提供するものである。
一般的には、油中水型乳化製剤は水中油型乳化製剤に比べて撥水性と耐水性が高いことが知られているが、特許文献1記載の日焼け止め化粧料は、水中油型の乳化製剤に着目した耐水性向上を示したものである。しかしながら、油中水型の乳化製剤に関しては「べたつきがありさっぱりした使用感触が得られ難く、安定性上問題があること」が指摘されており、油中水型乳化製剤での耐水性向上については達成されていない。
【0004】
また、特許文献2では、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマーと特定の高分子シリコーンとUV−A領域に最大吸収波長を有する紫外線吸収剤を配合し、UV−A領域に高い紫外線防御効果を維持しつつ、べたつき感、軋み感を軽減することにより、優れた使用感触が持続し、耐水性にも優れる日焼け止め化粧料が開示されている。
しかしながら、使用感触と耐水性を両立させるには、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマーと高重合度ジメチコンの組み合わせに限定されており、高重合度ジメチコンを日焼け止め化粧料に配合すると使用感触の重さが伴うため、使用感触の幅が制限されてしまうという問題点がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「A.紫外線防御剤」
本発明において紫外線防御剤とは、紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤を意味する。
本発明では、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の両者を配合することが好ましい。
【0013】
本発明に用いる紫外線吸収剤は限定されないが、例えば、下記の化合物が挙げられる。
(1)安息香酸系紫外線吸収剤
例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステルなど。
(2)アントラニル酸系紫外線吸収剤
例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレートなど。
(3)サリチル酸系紫外線吸収剤
例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレートなど。
(4)ケイ皮酸系紫外線吸収剤
例えば、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメートなど。
(5)トリアジン系紫外線吸収剤
例えば、ビスレゾルシニルトリアジン。
さらに具体的には、ビス{〔4−(2−エチルヘキシロキシ)−2−ヒドロキシ〕フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス{4−(2−エチルヘキシロキシカルボニル)アニリノ}1,3,5−トリアジンなど。
(6)その他の紫外線吸収剤
例えば、3-(4'-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、2,2'-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジアニソイルメタン、4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン、5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン。ジモルホリノピリダジノンなどのピリダジン誘導体。
【0014】
本発明に用いる紫外線散乱剤は限定されないが、十分な紫外線防御能を有する紫外線散乱剤として、平均一次粒子径が10nm〜100nm、より好ましくは10nm〜50nmの微粒子酸化チタン及び微粒子酸化亜鉛が特に好ましい。平均粒子径は透過電子顕微鏡写真の画像解析による個数平均径などの常法によって測定される。
また、本発明においては、疎水化処理酸化亜鉛及び/又は疎水化処理酸化チタンを用いることが好ましい。
また、疎水化処理の方法は、特に制限されるものでなく、公知の方法にて処理することができる。例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン・ジメチルポリシロキサンコポリマー、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン類を用いた処理;オクチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等のシラン化合物を用いた処理;パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸を用いた処理;前記脂肪酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩等を用いた金属セッケン処理;パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩、パーフルオロアルキルトリメトキシシラン等を用いたフッ素処理等が挙げられる。
【0015】
紫外線防御剤(紫外線吸収剤及び/又は紫外線散乱剤)の配合量は、日焼け止め化粧料全量に対して、5〜45質量%であり、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは5〜35質量%である。
【0016】
「B.揮発性油分」
本発明に用いる揮発性油分は、例えば、低重合ジメチルポリシロキサンや環状ポリシロキサン(例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等)、イソヘキサデカン、フッ素系油分を使用できる。
揮発性油分は、本発明の日焼け止め化粧料が乳化組成物に調製される際には、油相を構成する成分である。
【0017】
揮発性油分の配合量は、日焼け止め化粧料全量に対して、1〜40質量%であり、好ましくは5〜35質量%、さらに好ましくは10〜30質量%である。
【0018】
「C.セチルジメチコンコポリオール」
本発明に用いるセチルジメチコンコポリオールは市販品を使用できる。例えば、商品名「ABIL EM90(Degussa製)」の市販品を好ましく使用できる。
本発明においては、油中水型乳化日焼け止め化粧料を製造する際に、界面活性剤として機能する成分である。
例えば、後述する「表2」では、本発明の実施例1では油中水型乳化日焼け止め化粧料の界面活性剤として機能しており、優れた乳化安定性を達成している。これに対して、比較例1及び比較例2では、界面活性剤として、それぞれ、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG−10ジメチコンを使用しているため、乳化安定性が達成できていない。
【0019】
セチルジメチコンコポリオールの配合量は、日焼け止め化粧料全量に対して、0.1〜5質量%であり、好ましくは0.1〜4質量%、さらに好ましくは0.1〜3質量%である。
【0020】
「D.(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー」
本発明に用いる(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマーは、ステアリル変性アクリレートシリコンとも称され、市販品を使用できる。例えば、商品名「KP−561P(信越化学工業製)」の市販品を好ましく使用できる。
【0021】
(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマーの配合量は、日焼け止め化粧料全量に対して、0.05〜6質量%であり、好ましくは0.05〜2質量%、さらに好ましくは0.05〜1質量%である。
【0022】
「E.有機変性粘土鉱物」
本発明に用いる有機変性粘土鉱物は、本発明の日焼け止め化粧料が乳化組成物として調製される際には乳化助剤として用いられものである。この有機変性粘土鉱物は、三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムの一種であり、粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性したものである。例えば、有機変性ベントナイト、有機変性ヘクトライトなどを用いることが出来る。
具体的には、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、ジメチルアルキルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が挙げられる。市販品としては、ベントン27(ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:ナショナルレッド社製)およびベントン38(ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:ナショナルレッド社製)が好ましく配合される。
【0023】
有機変性粘土鉱物の配合量は、日焼け止め化粧料全量に対して、0.1〜5質量%であり、好ましくは0.1〜4質量%、さらに好ましくは0.1〜3質量%である。
【0024】
上記必須成分を含有する日焼け止め化粧料の剤型は問わないが、クリームや乳液等の油中水型乳化日焼け止め化粧料に調製することが好ましい。
油中水型乳化日焼け止め化粧料を調製する場合に用いる界面活性剤は、必須成分の「C.セチルジメチコンコポリオール」であり、他の界面活性剤では、乳化安定性の達成が困難である。
また、油中水型乳化日焼け止め化粧料の必須成分として、さらに、水相として「F.水」を配合する。水相成分には、エタノール、グリセリン等を配合することが好ましい。
【0025】
「F.水」
本発明に使用する水は、油中水型乳化日焼け止め化粧料の内相の水相を構成する成分である。その配合量は、油中水型乳化日焼け止め化粧料全量に対して、5〜30質量%程度である。
なお、本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料において、水相(水に溶解している水溶性成分も含む)と油相(油分に溶解又は分散している成分も含む)の質量比は、水相:油相=3:7〜1:9の範囲が好ましい。
【0026】
本発明の日焼け止め化粧料は、上記必須成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、油分、保湿剤、増粘剤、粉末、アルコール、天然高分子、合成高分子、糖類、酸化防止剤、緩衝剤、各種抽出液、安定化剤、防腐剤、色素、香料等の通常化粧料に配合される成分を適宜配合することができる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合量は全量に対する質量%を表す。
【0028】
「表1」の油中水型日焼け止め化粧料の油相成分及び「表2」の油中水型乳化日焼け止め化粧料である乳液を常法により製造し、耐水性及び乳化安定性の評価を行った。
なお、「表1」に示す油中水型乳化日焼け止め化粧料の油相成分は、常法により水相成分と混合して油中水型乳化日焼け止め化粧料となる油相の処方である。「表1」の油相成分については、その耐水性について評価した。
【0029】
「耐水性判定1」
油中水型乳化日焼け止め化粧料を製造する際に使用する「表1」の油相成分の(当該油相成分は油中水型乳化日焼け止め化粧料の外相となる)に着目して、外相となる油相の膜自体の耐水性を評価した。
<耐水前吸光度>
試験例1(水相と混合することにより、本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料となる油相成分)、比較試験例1〜5(水相と混合しても、(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマーが配合されていないため、本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料にはならない油相成分)の油相成分を、PMMA板に2mg/cm
2塗布し、分光光度計(HITACHI U-4100)により280nm〜400nmの範囲の吸光度を測定した。
<耐水後吸光度>
上記PMMA板を29℃の水中に30分間浸して耐水させ、乾燥後に280nm〜400nmの範囲の吸光度を分光光度計(HITACHI U-4100)により測定した。
<耐水性判定1>
上記の耐水前後の280〜400nmの吸光度の積分値の比を算出して、耐水性を以下の如く判定した。
○:積分値の比が90%を超える。
△:積分値の比が80%を超えて90%以下である。
×:積分値の比が80%以下である。
【0030】
「耐水性判定2」
「表2」の油中水型乳化日焼け止め化粧料(乳液)を腕に2mg/cm
2塗布し、水中で30分間耐水させ、乾燥後の撥水性を目視にて評価した。
○:撥水性が保たれている。
×:撥水性が保たれていない。
【0031】
「乳化安定性」
「表2」の実施例及び比較例の油中水型乳化日焼け止め化粧料(乳液)を、それぞれガラス容器に入れ、45rpmで4時間回転させた後の乳化粒子の合一の有無を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:乳化粒子の合一が認められない。
×:乳化粒子の合一が認められる。
【0032】
<油中水型乳化日焼け止め化粧料を構成する油相成分>
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
「表1」及び「表2」の結果から、本発明の日焼け止め化粧料は極めて優れた耐水性と、乳化安定性を発揮することが理解できる。
さらに、実施例1の日焼け止め化粧料は、使用感触(べたつかず、油っぽくない)に優れ、また、汗や水にさらされても、白浮きをしない日焼け止め化粧料である。
【0035】
以下に本発明のその他の実施例を記載する。いずれも極めて優れた耐水性と、乳化安定性を有し、また、使用感触(べたつかず、油っぽくない)に優れ、また、汗や水さらされても、白浮きをしない日焼け止め化粧料である。
【0036】
実施例2:日焼け止めクリーム(W/Oクリーム)
配合成分 質量%
(1)微粒子酸化亜鉛 20
(2)微粒子酸化チタン 2
(3)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 7
(4)デカメチルシクロペンタシロキサン 10
(5)ミリスチン酸イソプロピル 5
(6)ミネラルオイル 1
(7)カルボキシ変性シリコーン 2
(8)(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/
メタクリル酸ジメチコン)コポリマー 0.8
(9)セチルジメチコンコポリオール 1
(10)有機変性ベントナイト 1
(11)イオン交換水 残量
(12)グリセリン 2.5
(13)1,3−ブチレングリコール 5
(14)アルコール 5
(15)フェノキシエタノール 0.5
製造方法:(1)〜(10)を混合分散した。その後、混合溶解した(11)〜(15)の水相を添加し混合し、目的の日焼け止めクリームを得た。
【0037】
実施例3:日焼け止めローション(2層型W/O乳液)
配合成分 質量%
(1)デカメチルシクロペンタシロキサン 20
(2)イソヘキサデカン 10
(3)ジメチルポリシロキサン(6cs) 5
(4)セチルジメチコンコポリオール 0.8
(5)有機変性ベントナイト 0.5
(6)オクトクリレン 3
(7)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5
(8)微粒子酸化亜鉛 12
(9)微粒子酸化チタン 5
(10)ポリメチルメタクリレート球状粉末 3
(11)(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/
メタクリル酸ジメチコン)コポリマー 1
(12)イオン交換水 残量
(13)2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオ−ル 1
(14)フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 2
(15)グリセリン 2
(16)1,3−ブチレングリコール 3
(17)パラベン 0.2
製造方法:(1)〜(11)を混合分散した。その後、混合溶解した(12)〜(17)の水相を添加し混合し、目的の日焼け止めローションを得た。
【0038】
実施例4:日焼け止めローション(2層型W/O乳液)
配合成分 質量%
(1)イソドデカン 17
(2)ジメチルポリシロキサン(6cs) 5
(3)トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 5
(4)イソステアリン酸 1
(5)セチルジメチコンコポリオール 2
(6)有機変性ベントナイト 0.4
(7)オルガノポリシロキサンエラストマー球状粉末 10
(8)微粒子酸化亜鉛 15
(9)(アクリレーツ/アクリル酸ステアリル/
メタクリル酸ジメチコン)コポリマー 0.2
(10)イオン交換水 残量
(11)トラネキサム酸 2
(12)EDTA 0.2
(13)キシリトール 3
(14)1,3−ブチレングリコール 5
(15)フェノキシエタノール 0.5
製造方法:(1)〜(9)を混合分散した。その後、混合溶解した(10)〜(15)の水相を添加し混合し、目的の日焼け止めローションを得た。