【文献】
MARTINEZ‐PAREDES Graciela 他2名,Lead Sensor Using Gold Nanostructured Screen-Printed Carbon Electrodes as Transducers,Electroanalysis ,ドイツ,John Wiley & Sons,2009年 4月,Vol.21 No.8,Page.925-930
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
形状制御されたナノ結晶は、触媒作用、自己集合およびナノデバイスの分野に強い影響を与える可能性が高い多数の展望があることから、ナノ結晶の形状を制御することは、ナノ材料研究における主要な目的の一つである。溶液中に分散された金属製ナノ粒子の合成に関するかなりの量の文献が入手できるが、硬質基板上に形成された非可動性ナノ構造の形成に関する調査はあまりない。
【0003】
これまで様々な金属ナノ構造を電着することによって金属薄膜の比表面積または表面多孔率を高めるという概念が広く研究されてきた。表面特性の研究は、それらを制御された方法で改変する方法と共に近年の科学研究における主要なテーマの一つである。ナノ結晶の物理化学的な特性は、表面原子の比率が大きいこと、加えてそれらの結晶構造によって決定される。前者は粒子またはナノ構造の大きさによって決定され、後者は、大部分は形状依存性によって決定される。大きさと様々な結晶学的な面がナノ材料の物理化学および電気特性に与える作用について、かなりの量の調査が報告されている。このような構造的な特性は、様々な結晶面におけるそれら特有の触媒作用および検知能力に関して研究されてきた。しかしながら、様々な結晶学的な面の特有な性能の大半は、これまでに溶液中で形成されたナノ粒子に関して研究されてきた。
【0004】
多くの金属製ナノ材料が有する深刻な問題は、それらは、溶液中でナノ粒子の懸濁液として形成され、基板の表面への固定が緩い(例えば樹枝状ナノ構造のケース)ことである。このため金属ナノ粒子の現実世界での用途に関する適用範囲は限定され、従って、硬質基板へしっかりと固定したナノ粒子集合体は未だに大きな課題である。従って、明確な形状、結晶学的な特性、および、基板への優れた機械的接着を示す金属製ナノ構造を形成する方法は、高秩序化された格子間の空間を有する良好に成形されたナノ構造の表面を必要とするセンサー、触媒および様々なその他の用途にとって最も高い重要性がある。
【0005】
回転円盤電極を用いたシアン化金、クエン酸塩およびリン酸塩溶液からの金ナノ構造表面の電着が報告されている。H.Y. Cheh, and R. Sard, Electrochemical And Structural Aspects Of Gold Electrodeposition From Dilute Solutions By Direct Current Journal of the Electrochemical Society, 1971. 118(11): p. 1737-&。
【0006】
しかしながら、硬質表面上への形状制御されたナノ材料合成に関しては孤立無援の試みしかなされてこなかった。この目的を達成することにおいて電気化学的な方法が主要な役割を果たす可能性があるが、これは、このような電気化学的な方法によって、大部分が形のはっきりした多様な形態を有するナノ構造に金属イオンを包含させることが期待されるためである。例えば、シリコン基板上へのTiO
2のナノ多孔質膜の形成で陽極酸化プロセスが用いられている。加えて、整列したAuナノチューブを形成するためのナノチャネルを利用したアルミナホイル製テンプレートも電着によって合成されている。
【0007】
近年のNiおよびNiベースの合金、Cu、ならびにAgの電着における研究開発において、コンフォーマルおよびナノ多孔質コーティング、加えて電着技術によるナノ構造の析出にさらに強い関心がよせられている。つい最近になって、化学的検知のような用途で使用するための電着されたバイメタルAu/PtナノフラワーおよびAgの樹枝状ナノ構造が提唱されている。
【0008】
大気に放出された空気中の水銀(Hg)の蒸気は発生源から長い距離を移動できるため地球環境問題とみなされる。人間への水銀蒸気の曝露は、全ての年齢の人々にとって脳、心臓、腎臓、肺および免疫系に有害である。それゆえに、特に石炭発電所やアルミナ精錬所のような固定された放出源において、工業的なガス状排気流のHgレベルをモニターすることが重要である。
【0009】
アルミナ精錬所や石炭火力発電所において最も広く容認されている水銀測定方法は、インピンジャー溶液のトレイン中で水銀を捕獲すること(すなわち、容器に定量のガスをバブリングすることによって液体中に水銀蒸気を捕獲すること)を含む。続いてこれらの溶液を、例えば冷蒸気原子吸光分析法(CVAAS)のような技術を用いてその後に解析することができる。この方法は、オンタリオ・ハイドロ(Ontario Hydro; OH)法と称されることもある。この方法の最も深刻な欠点は、この解析は一般的に現地外の研究所で高度な訓練を受けた人によって行われるため、時期的に適切な測定を行うことができないことである。
【0010】
この欠点を克服するために、近年、主に石炭火力発電所産業において水銀を測定できる連続的な水銀放出モニター(CMEM)を生産するための研究開発が始まっている。これまで、アルミナ精錬所のための、市販のまたは米国環境保護庁(US EPA)で承認されたCMEMは未だ生産されていない。
【0011】
公開文献で説明されている先進的なCMEMシステムは、OH法の実質的に自動化された(乾式)バージョンであり、ガスストリームをオンラインの解析器に通過させる前に前処理するプロセスを含む。水銀検知のための市販のシステムで用いられる数々の技術がある。これらの技術のうちいくつかを以下に示す:
・冷蒸気原子吸光分析法(CVAAS)
・原子蛍光分光分析法(AFS)
・紫外線差分光吸収分光
・誘導結合プラズマ原子発光分光分析(ICP−AES)
・抵抗型金薄膜センサー(Resistive Gold Film Sensor; RGFS)。
【0012】
CVAAS、AFS、ICP−AESの根底にあるメカニズムは、水銀が励起される253.7nmの波長帯の吸収および放出に影響を与えるものである。遺憾ながら、ある種の工業的な排出流で見出されるその他の化学物質もこの波長で励起されるため、不正確な水銀測定値が生じる。紫外線差分光吸収分光は似たような原理で作用するため同様の問題を持つと思われる。
【0013】
本発明は、特に、揮発性有機化合物(VOC)、水蒸気およびアンモニアによる干渉が一般的に起こるような工業的な排出流中の水銀蒸気を検出するための金センサーの表面を開発することに関する。
【0014】
電着された金および多孔質の金は、バイオセンシングのための水晶振動子微量天秤(QCM)の感度を改善することがわかっている。このタイプの表面の大部分が、電着プロセスによって達成される比表面積の増加に頼っている。米国特許第5992215号は、銅または金でコーティングした結晶表面を用いたセンサーを開示しており、それらの感度は、外部環境の作用を相殺するための二重遅延線型の表面弾性波(SAW)センサーを用いることによって高められる。この装置はまた、ヒーターも含む。
【0015】
本発明の目的は、工業的な煙道ガス用途、加えて小さい手持ち式のユニットの両方に適した、強力な水銀蒸気センサー素子として有用な改善された金ナノ構造表面を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この方法は、ナノ構造を強く接着させた基板から突き出るように成形された金ナノ構造を有する金ナノ構造表面を生産する。基板は、適切であればどのような金属でもよく、例えば銅であるが、好ましくは金である。好ましい金化合物は、酢酸鉛(IV)を含むテトラクロロ金(III)酸水和物である。鉛化合物は、その他の方向制御可能な化合物で置換されていてもよく、このような化合物としては、例えば様々な鉛(II)の塩、ハロゲン化物、サッカリン、ナフィオン(Nafion)、CTAB、SDS、トリトン(Triton)、および、システインが挙げられる。
【0021】
ナフィオンは、スルホン化テトラフルオロエチレンベースのフルオロポリマーのコポリマーであり、好ましくはペルフルオロスルホン酸−PTFEコポリマーであるナフィオン−117であり;
トリトンは、ポリエチレングリコールオクチルフェノールエーテルであり;例えば:トリトンX−114は、ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)、a[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−w−hであり、;化学式は、C
8H
16C
6H
4(−CH
2CH
2CO)
10Hであり;
CTABは、セチルトリメチルアンモニウム臭化物(C
16H
33)N(CH
3)
3Brであり;
SDSは、ドデシル硫酸ナトリウム(C
12H
25NaO
4S)である。
【0022】
形態構造は、様々な用途に応じて結晶構造と同様に重要なである。以下の実施例に記載したSEMSデータ(これは、形態構造を詳述したものである)およびXRD(これは、結晶性を詳述したものである)から、本発明において、本方法は、電着条件をわずかに変化させることによってその両方を制御することが示され、すなわち両方のパラメーターを適合させるのに使用することができる。
【0023】
形状制御されたナノ結晶は、触媒作用、自己集合およびナノデバイスの分野に強い影響を与える可能性が高い多数の展望があることから、ナノ結晶の形状を制御することは、ナノ材料研究における主要な目的の一つである。溶液中に分散された金属製ナノ粒子の合成に関するかなりの量の文献が入手できるが、硬質基板上に形成された非可動性ナノ構造の形成に関する調査はあまりない。本発明において、硬質基板上に金属製のナノ構造表面が形成される。特に重点が置かれるのは、これらの金属製ナノ構造のサイズ、形状および選択的な結晶成長である。
【0024】
成長は、析出溶液の組成、温度および電流密度によって制御される。析出速度は析出回数に応じて様々であってよく、好ましくは約150秒間であるが、例えば90秒間のように短くてもよいし、または、15分のように長くてもよく、これは、2つの電極システムが用いられるのか、もしくは3つの電極システムが用いられるのか、または、どのような析出プロトコールの選択された電流密度が使用されるのかによって決定される。好ましい析出溶液は、0.1〜0.5g/lの酢酸鉛と共に、2.718g/lのテトラクロロ金(III)酸水和物を含む。注目すべきことに、9g/lもの高濃度のテトラクロロ金(III)酸水和物を用いることによって、厚いナノスパイク構造が形成されると予想される。
【0025】
本発明において、これらの構造は、工業的な排出流中に見出される揮発性有機化合物(VOC)の存在下で水銀蒸気を検知するのに用いられる。本発明は、制御された結晶面を有する高度に配向され修飾された金ナノ構造が、数ヶ月連続した期間にわたる稼働においてQCMベースの水銀蒸気センサーの応答の規模と性能を実質的に高めることを示す。加えてこのようなセンサー表面は、多くの工業的な排出流に見出される干渉する揮発性有機化合物(VOC)の存在下でも十分に働くことができる。
【0026】
本発明のその他の形態において、センサー表面が、制御された結晶面を有する金ナノ構造が基板に強く接着している金基板である、水銀蒸気センサーが提供される。
【0027】
本発明のセンサーは、水晶振動子微量天秤(QCM)として知られている十分に確立された技術を利用する。QCMは、厚みすべりモード(TSM)音響共鳴器(これは、バルク音波(BAW)装置とも呼ばれる)をベースとした単一素子のセンサーを含むより広範な分類の一部である。これらは可動部を有さず、音響的電気的な現象を用いてセンサー表面における極めて小さい質量変化(4.24ng/cm
2・Hz)を測定することによって作動する。水銀は重い元素であるため、アルミナ精錬所の排気流中に存在するその他のガスや有機性の蒸気よりも原子的にかなり重い。従って水銀分子がQCMベースのセンサーの表面と相互作用すると、Hg原子は、その他の相互作用と比べてより高い質量(重量)を表面上に記録する。この相互作用は、Hg原子に高親和性を有する金で形成された検知層を用いることによって促進される。本発明の好ましい形態において、金の検知層は、蒸着させた金表面よりも3倍大きい表面積を有している可能性があり、さらに、干渉ガスの存在下で水銀の相互作用に優れた選択性を有している可能性がある。
【0028】
アルミナ精錬所に関して、微量のHgが様々な源からの排気で見出されており、具体的にはシュウ酸処理のための炉、蒸解、か焼炉および液体燃焼バーナーおよびボイラーのような、バイヤープロセス(バイヤープロセスとは、アルミナ精錬で用いられる化学的方法に付けられた名称である)に含まれるその他の副次的な源から見出されている。(ボーキサイト)鉱石の出所によって、水銀含量が50mg〜431mg/トンのボーキサイトが報告されている。精錬プロセス中、環境中に放出される前に水銀を捕獲するにはかなりの努力を要するが、それでもなお生産されたアルミナ1メートルトンごとに測定可能な量のHgが放出される。1年間のうちに(2006年〜2007年)オーストラリアのアルミナ精錬所から推定でおよそ2.9メートルトンの水銀蒸気が放出された。
【0029】
水銀の放出源、Hg蒸気の移動、ならびに環境的および社会的な影響をよりよく知るためには、バイヤープロセス内の戦略的なポイントに設置した連続的な水銀放出モニター(CMEM)が絶対的に必要である。例えば、水銀が気相中に逸散する可能性が最も高い一次プロセスをオペレーターが決定できるように、本センサーを蒸解もしくは蒸発スタックまたは再生熱酸化装置(Regenerative Thermal Oxidizer ; RTO)のアウトプットに設置することができる。
【0030】
本発明の表面を用いれば、水晶振動子微量天秤(QCM)ベースの水銀蒸気センサーの応答規模および安定性の実質的な増加が、電気化学的な経路を用いる先進的な表面の改変技術によって達成される。この技術を用いることによって、強く接着し且つよく形成されたナノ構造がQCMの金電極の表面で均質に制御されるように成長する。QCMベースのセンサーは、様々な干渉ガス(例えばアンモニア、二酸化硫黄、アセトン、二硫化ジメチル、エチルメルカプタン、メチルエチルケトン、アセトアルデヒドなど)をうまく処理し、さらに、アルミナ精錬所や石炭発電所の排気流のような多くの工業的な排出流に見出されるその他の干渉揮発性有機化合物(VOC)も克服できる見込みがある。注目すべきことに、このような先進的な表面は、このプロジェクトに関してQCMに適用されたものであるが、電気伝導度による(化学抵抗性)、または、質量ベースの検知メカニズムのいずれかに作用するその他のプラットフォームにも同様に適用できると予想される。例えば、表面弾性波(SAW)装置の類は、10億分率レベルの低いHg濃度の測定に最も適していると予想される。
【0031】
うまく形成されたナノ加工表面は多くの用途に関して大きな可能性があり、例えば化学的およびバイオセンシングにおける超高感度の層;触媒効率の強化;表面増強ラマン分光法(SERS)基板、自己洗浄表面;および、燃料電池技術において大きな可能性がある。注目すべきことに、Auは生体適合性材料であり、電着された構造の高い比表面積は多くのバイオセンシング用途にとって最適であると予想される。
【0032】
加えて、ナノスパイクの高秩序化された格子間の空間もまた、ピラミッド構造で観察されたものと類似した、または、それより優れた超疎水性を有すると予想される。本発明の表面は適度な格子間の空間を示し、それにより液滴と表面との間に、天然の超疎水性表面で示されるロータス効果のもととなる空気の二重層が形成されると予想される。電着パラメーターを制御することによって、一次構造上に節のような二次構造が形成された二重構造の粗さを有する階層ナノ構造を形成することが可能になり、さらにこれらの表面の超疎水性が高められる。加えてこのような二次的な節は、欠陥部位および比表面積を増加させることによって検知と触媒能力もさらに強化すると予想される。
【0033】
本発明の好ましい形態を図面を参照しながら説明するが、図面は以下の通りである。
【0034】
図1a)は、未改変の金電極表面(従来技術)の走査電子顕微鏡(SEM)画像、および、b)本発明の好ましい表面のSEM画像、および、c)より高濃度のテトラクロロ金(III)酸水和物電解質溶液を用いて形成されたより大きく厚いナノスパイク構造のSEM画像を示す;
図2は、a)ナノデンドライトの金表面(従来技術)のSEM画像を示し、b)〜d)は、本発明のいくつかのその他のナノ構造表面である;
図3は、異なる電着構造のGADDSパターンを説明し、ここでa)は、
図1b)ならびに
図2a)、b)およびc)のパターンを示し、加えて
図3b)は、
図1a)および
図2d)のパターンを示す;
図4は、析出回数を増加させた場合のナノ構造のSEM画像を示す;
図5は、
図4に示される構造のGADDSパターンを説明する;
図6は、
図1a)およびb)で示される表面の電気化学的な表面測定を示す;
図7は、熱処理前後の
図1b)の構造のSEM画像を示す;
図8は、熱処理前後の
図2a)の構造のSEM画像を示す;
図9は、89℃で運転した場合の水銀蒸気に対する未改変QCMセンサーおよびナノスパイクQCMセンサーのセンサー応答の比較を説明する;
図10は、センサー応答の比較、および、それに対応する各種の電着表面のSEM画像を説明する;
図11は、本発明に従って製造した場合の、異なるレベルの(低い)湿度の干渉および運転温度の存在下における、未改変QCMセンサーおよびナノスパイクQCMセンサーの応答の比較を示す;
図12は、センサー応答におけるアンモニア干渉および運転温度の作用の比較を示す;
図13は、89℃の運転温度における5種の水銀濃度に関する階乗の試験パターンを示す(Δfと変化率Δf/Δtとの両方が示される);
図14は、アンモニア、二硫化ジメチル、エチルメルカプタン、メチルエチルケトン、アセトアルデヒドのような化学種の干渉ガス、および、高レベルの水蒸気の存在下における水銀の連続パルス(3.65mg/m
3)を示す;
図15は、102℃の運転温度、干渉ガスの化学種の存在下における、未改変センサーおよび電着された(ナノスパイク)センサーの吸着相に関する性能のまとめを示し、ここでデータは、4ヶ月の連続した試験期間にわたり、5種の水銀蒸気濃度の試験それぞれに関して
図14に示される一連の試験を7回繰り返すことによって得られた;
図16は、4ヶ月の連続した試験期間にわたり、102℃の運転温度、干渉ガスの化学種の存在下における、未改変センサーおよび電着された(ナノスパイク)センサーの脱離相に関する性能のまとめを示す;
図17は、4ヶ月の試験期間にわたる未改変のセンサーと本発明のセンサーとの比較のまとめであり、ここで計算された変動計数(CoV)値は、データポイントごとに検量線で示される;
図18は、抽出希釈技術(extractive dilution technique)を用いて本発明のセンサー配置を説明する。
【0035】
本発明の好ましい析出方法を、水晶振動子微量天秤(QCM)のセンサー表面としての金ナノ構造表面の適用を参照しながら説明する。
【0036】
この実施例において、めっき溶液は、2.718g/lのテトラクロロ金(III)酸三水和物、および、0.177g/lの鉛(II)酢酸塩を含む。テトラクロロ金(III)酸三水和物および酢酸鉛の濃度は、所定のナノ構造が得られるようにそれぞれ最大で9g/lおよび0.5g/lの範囲で様々であってもよい。目的とするナノ構造を達成するのに好ましいパラメーターは、以下の通りである:
a)2つの電極システムの場合:
・電解質は、2.718g/Lのテトラクロロ金(III)酸三水和物、および、0.177g/Lの酢酸鉛(II)を含む。このケースにおいて、析出溶液の体積として10〜75mlを使用した。
・20〜25℃の電着温度を使用した。
・不活性または金の対電極を使用した。
・作用電極として金でコーティングしたQCM;QCMの両側を同時に使用した。
・塩化物イオン濃度を約30mMで過量に維持した。
・15秒〜150秒の析出時間を使用した。
・電着プロセス中、QCMの位置を固定した。
・陽極と陰極との間は2.5cmの間隔を維持した。
・電解質をマグネチックスターラーを用いて均質になるように撹拌した。
・動作モードは様々であってもよく、以下をベースにしていてもよい:
○定電流:0.1mA〜5mAの電流(これは、晒された電極表面に応じて選択され、ここで我々は、QCMを形成する両方の電極にわたり総面積0.32cm
2を用いた)、
○定電圧:0.2V〜2Vの一定の電位差を使用。
【0037】
b)3つの電極システムの場合:
・電解質は、2.718g/Lのテトラクロロ金(III)酸三水和物、および、0.177g/Lの酢酸鉛(II)を含み、総体積は5〜10mlであった。
・20〜25℃の電着温度。
・Ag/AgCl参照電極を有する不活性対電極。
・作用電極として金でコーティングしたQCM;QCMの両側を同時に使用した。
・塩化物イオン濃度を約30mMで過量に維持した。
・5〜15分間の析出時間。
・電着プロセス中、QCMの位置を固定した。
・0V〜0.5Vの一定の電位差を用いた(溶液のpHが2.5未満の場合)。
【0038】
例えば電極間の距離、電解質の濃度、析出電位、電着時間、電解質の温度などの様々な電着パラメーターの作用は、電着プロセス中に成長する構造および表面形態のタイプを決定することがわかっている。加えて、緩衝液(例えば酢酸塩およびクエン酸塩)、加えて既知の添加剤(サッカリン、CTAB、ナフィオン、SDS、トリトン、システイン、Pb
+2およびI
−イオン)を含む様々な電解質の作用によっても、有意に構造の成長をもたらすと予想される。
【0039】
図1bおよび1cに、ナノスパイクの形状制御された合成のための電着方法の重要性を示す。これらは、長期の水銀検知作業に用いられる構造である。
【0040】
図1a
これは、我々が使用した未改変のEビームで析出した金表面である。このタイプの表面の上部に、
図1bおよび1cに示される表面(さらに言えば、当方が示したその他全てのもの)を形成した。
【0041】
図1b
以下のパラメーターを用いてこの表面を析出させた:
・2つの電極システムを使用。
・150秒間の電着時間。
・2.718g/lのテトラクロロ金(III)酸三水和物、および、0.177g/lの酢酸鉛(II)溶液。
・2Vの電極間の電位差。
・2.5cmの電極間隔。
【0042】
図1c
以下のパラメーターを用いてこの表面を析出させた:
・3つの電極システムを使用。
・10分間の電着時間。
・8.1g/lのテトラクロロ金(III)酸三水和物、および、0.177g/lの酢酸鉛(II)溶液。
・Ag/AgCl参照電極を使用した場合、0.05Vの析出電位。
【0043】
我々が参照電極を用いたときのように3つの電極での析出システムを用いる場合、電極間の距離は重要ではない。
【0044】
また、
図2で示されるようなその他の構造も析出条件を調節することによって可能である。
【0045】
図2a
2つの電極システムを使用。
20秒間の電着時間。
27.18g/lのテトラクロロ金(III)酸水和物、および、1.77g/lの酢酸鉛(II)溶液。
−2Vの電極間の電位差。
2.5cmの電極間隔。
【0046】
図2b
2つの電極システムを使用。
120秒間の電着時間。
2.718g/lのテトラクロロ金(III)酸水和物、および、0.177g/lの酢酸鉛(II)溶液。
2M未満の塩化物イオン濃度。
−2Vの電極間の電位差。
2.5cmの電極間隔。
【0047】
図2c
2つの電極システムを使用。
120および150秒間の電着時間。
2.718g/lのテトラクロロ金(III)酸水和物、および、0.177g/lの酢酸鉛(II)溶液。
2M未満の塩化物イオン濃度。
−2Vの電極間の電位差
2cmの電極間隔
図2d
3つの電極システムを使用。
10分間の電着時間。
1%ナフィオン溶液中の8.7g/lのテトラブロモ金酸カリウム。
−0.35Vの電極間の電位差。
【0048】
図2bに示されるナノ構造(ナノプリズム)および
図2cに示されるナノ構造(八角形のナノ構造(nano-octagonal))も水銀蒸気検知に関して試験したところ、ナノスパイクに匹敵する結果を示した。
【0049】
これらのナノスパイク、ナノプリズムおよび八角形のナノ構造は、これまで水銀検知に用いられてこなかった。これらのナノ構造は、水銀蒸気検知に関して応答規模およびセンサー安定性の向上を示し、さらにこのようなセンサーは、高レベルの湿度(水蒸気)と多くの工業的な排出流に見出される様々なその他の化学物質および揮発性有機化合物(VOC)の干渉ガス種との両方に対処することができる。このような干渉ガス種としては、これらに限定されないが、アンモニア、二酸化硫黄、二酸化窒素、一酸化窒素、アルコール、アセトン、二硫化ジメチル、エチルメルカプタン、メチルエチルケトン、および、アセトアルデヒドが挙げられる。
【0050】
図2aに、金でコーティングした石英基板上に成長した樹枝状の(ナノワイヤーのような)構造を示したが、これは従来技術で報告されたものに類似している。これらのAuナノデンドライト(または「多孔質金」、または「ブラックゴールド(black gold)」と称される場合もある)は極めてもろいことがわかっており、容易に表面から洗い落とされる可能性がある。加えてナノデンドライトは極めて典型的な構造であり、銀や白金のようなその他の金属を用いたものでさえも文献で広く公開されている。それに対して、
図1b、1c、ならびに、
図2c、2bおよび2dにおけるSEM画像は、Auでコーティングした石英基板に(または
図2dのケースではガラス状炭素基板も)Auを電着することによって生産できる制御された結晶面を有する、高度に配向され修飾されたナノ構造を示す。これらの観察はまた、
図3に記載のそれぞれのナノ構造のGADDSプロファイルで[111]/[200]の範囲の様々な比率によって裏付けられる。ナノデンドライト以外にも、示されたその他全てのナノ構造は基板にしっかり固定され、さらに重要なことには、それらは様々な優先的な結晶方位を示す。このことから、本ナノ構造は、特定の物理化学特性および電気特性を有するナノ加工された表面を必要とする様々な用途にとって得に注目すべき魅力的な候補となる。
【0051】
ナノスパイクの形状制御された合成のための電着方法のさらなる重要性(
図1b、1cおよび4)は、
図5に示されるGADDSの結果から明らかである。ナノスパイクは、水銀検知にとって最も有望なナノ構造のようである。
図4に示される結果は、電着されたAuナノ構造の[111]から[200]へのピークの比率が、
図5で示されるように時間依存性の方式で増加していることが強く示されている。[111]ピークにおいて、150秒電着されたサンプルは未改変の金表面(0秒)と比較して800%の有意な強化が観察された。それに対応する
図4に示されるSEM画像は、厚さ100〜500nmの寸法を有し、長さが1500nmよりも長く、その先端が輪郭のはっきりした先が尖った三角形の形状を有するナノスパイクを示す。
図6に、未改変の(Eビームで蒸着させた)金表面と、電着されたナノスパイクの表面(
図1aに示される)との表面積の比較を示す。このデータは、上述のようにして析出したナノスパイク表面は、未改変の表面の3.15倍の表面積を有することを示す。これらはまた、超音波処理下でも損なわれない強い機械的強度/接着力も有しており、さらに、一般的な「マスキングテープ」または「スコッチテープ」試験で試験したところ、基板に対して優れた接着強度も示す。加えてこれらは、鋼製のピンセットで掻き取ったとしても、表面からこそげ落ちることはない。
【0052】
GADDSデータは明らかに、これらのナノスパイクは、慣例的手順で電着された、選択的に[110]面に別の方法で配向されると予想されるナノワイヤー/デンドライトとは関係がないことを示している。例えばナノプリズム(
図2b)、八角形のナノロッド(
図2c)および配向した金の粗い表面(
図2d)などのさらにその他のAuナノ構造は電着によって合成できるが、これは、
図3で示されるような[111]、[110]または[100]の結晶面のいずれかにおいてしっかりと接着した金属製ナノ構造の成長を制御する能力を示す。従って、構造的な特性を、結晶面に選択的に依存する具体的な用途に合わせることができる。
【0053】
図7は、長期間220℃の高温で空気中で一回処理したナノスパイク表面の熱安定性を示す。ナノ構造の大きさがわずかに減少したように見えるが、これらはそれでもなおそれらの形状を保持している。比較すると、
図8に示されるナノデンドライト構造は、同じように処理したところ有意に変化した形態を示す。
【0054】
このような表面を形成する際に必ずしも全てのサンプルを加熱処理する必要はない。
【0055】
図7aに示される「析出したままの」サンプルは熱処理しなかった。これらは、サンプルを析出させた直後に電気触媒作用、SERSまたは疎水性実験に用いることができる。しかしながら水銀センサーとして使用するためには、これらは「センサーのならし期間」中に約130または180℃に熱処理される。これは、センサー使用前の少なくとも3または4日の間に、実際の検知プロセスの際に用いられる温度よりもわずかに高い運転温度で、水銀の存在下で行われる。実際の検知プロセスは、一般的に80〜110℃で行われる。このデータのケースにおいて、第一の試験は89℃で70日で行われ、第二の試験で用いられたセンサーは、102℃で約4ヶ月試験した。これらのセンサーはいずれも「センサーのならし期間」中に熱処理された。第一のセンサーを約138℃でならし運転した。第二のセンサーを約178℃でならし運転した(ただし好ましいならし温度は150℃である)。
【0056】
ナノスパイクセンサーは、表面を熱処理しなくても水銀を検知するのに室温で用いることができる。このケースにおいて、このようなセンサーはかなり大きい応答規模を有すると予想されるが、恐らく干渉ガスにあまりよく対応していないものと予想される。低温での水銀実験に関して、ナノ構造を加熱処理する必要はない。
【0057】
図7および
図8は、極端な温度が表面にどのような作用があるかをを示している。いずれのサンプルも150℃よりも高温で加熱する必要はない。これは、ナノスパイク表面にあまり影響を与えないものと予想される。しかしながら
図8から観察されるようにナノデンドライトは破壊される。
【0058】
好ましい本発明のセンサーは、アルミナ精錬所で見出される水銀濃度を標的とするように具体的に設計され、ここで水銀蒸気の濃度は、典型的には0.5〜32mg/m
3もの広い範囲内である。注目すべきことに、石炭火力発電所の煙道ガスとは異なり、アルミナ精錬所で見出されるのは元素の水銀だけである。従ってそのために、水銀酸化物(例えばHgCl
2)を元素のHgに変換する触媒床を使用するという必要性がなくなる。ただし必要があれば、本発明のセンサーシステムにこのような触媒床を容易に追加することができる。
【0059】
また水銀濃度が低い(0.5mg/m
3未満)石炭火力発電所の煙道ガスとは異なり、水銀、特にバイヤープロセスの一部に含まれる水銀は、50mg/m
3もの高さに達する可能性がある。このような濃度は、表1に示される全てのセンサーの最大検出限界よりも有意に高い(これらのセンサーシステムの多くは、石炭火力発電所を対象としているため)。従って、ある一定条件下で検知する際に高くて530mg/m
3および低くて0.5mg/m
3のHg濃度が予想されることを考慮すると、アルミナ精錬所で見出される水銀濃度は一定していないので適切なサンプルの希釈率を決定することが困難になると予想される。
【0060】
実験データから、本発明のセンサーは1.0〜10.5mg/m
3の範囲で優れた性能を有することが実証され、ここで1〜4倍希釈を併用すればアルミナ精錬所に適した範囲になる。排出流が以下の干渉ガス種で汚染されている場合、我々はこの範囲で水銀濃度を検知することができる:
【0061】
【表1】
DMDS、エチルメルカプタン、MEKおよびアセトアルデヒドは低分子量であるため、センサー応答に対して最低限の作用しか観察されなかった。我々はまた、センサーを石炭火力発電所の排気流を部分的に模擬したSO
2とNO
Xとの混合物にも晒した。このケースにおいて、この排気流は、バイヤープロセス(アルミナ精錬所)で見出されるSO
2の濃度の3000倍以上の濃度を有する。本センサーはこれらの条件下でも作動することがわかったが、本センサーが本当に石炭火力発電所で用いることができるかどうかを決定するには、さらに多くの作業を行うことが必要である。
【0062】
本センサーシステムは、アルミナ精錬所中の固定ポイントに連結された単一のセンサーチャンバーを用いて1日およそ12回の測定を行うことが可能なように設計される。センサーチャンバーの数を二倍にすれば、より多くの測定値を得ることができる。アルミナ精錬所の排気流をサンプリングするのにサンプルシリンダーが用いられると予想される。このシリンダーは、1分以内で充填してもよいし、またあるいは平均したサンプルを得るために30分または1時間かけて充填してもよい。これは、アルミナ精錬所の工場管理者の要望に応じて決められると思われる。理想的には、これは、リアルタイムの解析であると予想される。
【0063】
注目すべきことに、このようにして開発された金センサー表面は、本願のプロジェクトに関してQCMに適用されているが、その他のセンサープラットフォームにも適用が可能である。このようにして開発された薄膜は、抵抗性金薄膜センサー、または、さらにより高感度の音響質量ベースのセンサーで使用が可能である。例えば、表面弾性波(SAW)装置の類は、10億分率レベルの低濃度の測定に最も適していると予想される(すなわちQCMセンサーよりもおよそ100倍も高感度である)。
【0064】
図18で示されるような本発明のシステムでは、プロセスの前部にポンプがある。加えて加熱したサンプルシリンダーが用いられる可能性もあり、ここで必要があれば希釈率を適用してもよい。
【0065】
この設定を用いることによって、センサーチャンバー中の圧力を大気圧より高い圧力制御することができる。実験室の設定で、試験はおよそ23psiで行われた。
【0066】
サンプルシリンダーを排出流サンプルで充填したら、続いてこの(希釈された)サンプルを加熱した供給ラインに流して加熱した質量流量制御器(MKS MFC 330AH)に送る。1:4の希釈率が好ましい。MFCは、200sccmの制御された速度でセンサーチャンバーにガスを供給する。VOC、水蒸気および水銀濃度が希釈したために十分に低く、ガス/蒸気が気相から凝集することが防がれるために、精度は改善される。
【0067】
注目すべきことに、センサーチャンバーの前にポンプを置くことで起こり得る負の作用は、ポンプがサンプルのそのままの状態を損なう恐れがあることである。ガス分子を剪断しない適切なポンプを選択してもよい。ポンプヘッドを加熱してもよい。
【実施例】
【0068】
水銀検知
ナノスパイクおよびナノプリズム構造は高い活性を有し、さらに、未改変の表面と比較して水銀蒸気に対する応答規模が増加していることが観察されている。
図9は、89℃(±3℃)の運転温度における1.02〜10.55mg/m
3の濃度範囲の水銀蒸気の5回のパルスに対する典型的なセンサー応答を示す。ナノスパイクセンサーは、未改変のものよりも180%も大きい応答規模を有することが観察できる。加えて
図10は、本明細書において詳述される方法の改変法によって形成された代替ナノ構造、すなわちa)未改変の表面、b)形成が不十分な電気めっきした表面、c)短いナノプリズム、d)ナノプリズム、および、e)その他のナノスパイク表面も、匹敵するセンサー性能を示す可能性があることを実証している:。ナノプリズムとナノスパイクとはいずれも、それぞれ匹敵する性能を有することがわかる。
【0069】
注目すべきことに、試験されたほとんどのナノ構造はナノスパイクである。ナノスパイク表面を有するセンサーは活発に試験されており、2つの別々の長期試験で優れた安定性を示している。第一の試験は、89℃(±3℃)の運転温度で2つの別々の試験期間で合計で70日試験を行った。第一の59日の試験(アンモニアの干渉と、10.4mg/m
3までの水蒸気を用いた低レベルの湿度の干渉がある条件化で、25日+34日)を行い、続いて第一の試験期間の56日後により高い干渉を試験するために追加で11日の試験を行った。56日の試験されない期間中は、センサーを室温で保存した。
【0070】
図9、
図11、
図12および
図13において重要な結果を強調表示した。ナノスパイクセンサーは、未改変QCMと比較したところ、それよりも180%も大きい応答規模を示し、ここで信号対雑音(S/N)比の66%の増加が観察された。
図11は、ナノスパイクセンサーの応答規模への最小の湿度の作用、さらに低温における不安定さの作用がどの程度あるかを示している。従って、運転温度におけるわずかな変動は、センサーの結果を有意に変化させることはないと予想される。
図13に示されるデータを得るのに階乗のような試験パターン(factorial like testing pattern)を使用した。センサーを、乾燥窒素中で、既知濃度のアンモニア(NH
3)および湿度(H
2O)の存在下で5種の固定濃度の水銀(Hg)に晒した。
図13に、この一連の試験からの応答曲線の例を示す。順に行われた試験それぞれに関して頻度の変化(Δf)と変化率(Δf/Δt)とを計算した。発生し得る浸透の全てに対応することはできないが、制限された時間枠内における比較できるパルスとの多くの可能な組み合わせとして示されるデータの分布が得られるように、試験を設計した。劣化データ(すなわち、センサーの寿命に対する応答規模対の減少)を集めるために比較可能なパルスを使用し、各センサーの応答再現性を確認した。試験の経過中に比較できるポイントで得られたデータの解析から、電着したセンサーの応答規模は−9%劣化したが、一方で未改変のものの応答規模は試験期間にわたり最大23.3%まで劣化したことが明らかになった。
【0071】
以下の表にデータをまとめた:
【0072】
【表2】
以下の表で、未改変のセンサーと比較した場合の電着したQCMの重要性をさらに強調表示した。このようなセンサーの標準偏差は、規模の点ではほぼ同一のようであることは明かであるが、電着されたサンプルのより大きい応答規模は、パーセンテージ(%)のエラーは、未改変QCMよりも少なくとも1.4および最大で8倍多いことを意味する。いずれのケースにおいても変動計数(CoV)を示した。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
第二の試験は、102℃の運転温度で1回の連続した試験期間にわたり合計で95日試験を行った。
図13および14に示されるようなパターンの順序を用いて、検知パルスのうち吸着相の間にセンサーを様々な干渉ガスに晒した。干渉ガス種としては、アンモニア、二硫化ジメチル、エチルメルカプタン、メチルエチルケトン、アセトアルデヒドが挙げられ、さらに23g/m
3までの水蒸気を用いた高レベルの湿度の干渉も挙げられる。
図14〜
図17において重要な結果を強調表示した。
図14は明らかに、電着されたナノスパイクセンサーは、優れた信号対雑音比、および、有意に大きい応答規模を有することを示す。
【0075】
図15および16に、電着されたナノスパイクと未改変QCM両方の、検知現象の吸脱着相それぞれに関する性能をまとめたが、これの結果は95日の試験期間の間に記載の改修された。
【0076】
各グループごとに回収された全てのデータポイントが示されるように25%および75%の四分位数を用いたボックスプロットを選択した(ここで箱ひげは、標準偏差(SD)を示し、星印は、各種の試験で得られた最小値および最大値を示す)。サンプルセットのサイズであるnは、各ボックスで示されるデータポイント数を示す。データの分布から、電着されたQCMは、未改変のセンサーよりもかなり性能が優れていることは明らかである。以下の表において、未改変のセンサーと比較した場合の電着されたQCMの重要性を強調表示した。
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
未改変のものと比較して、電着されたナノスパイクセンサーは以下の利点を有する:
・より優れた温度安定性を有すること、
・約3倍長い有効寿命を有することが推測されること、
・試験された湿度、および、化学物質/VOCの干渉濃度下でも安定であること、
・高い運転温度でもより優れたS/Nを有すること。
【0079】
従って、上記データから、ナノスパイク構造を有する電着された水銀センサーは、精錬所の排気流のためのオンラインの水銀元素センサーに非常によく適しており、それらを生産する大きな一歩であることが強く示されている。本センサーは、不安定な運転温度、高レベルの湿度、および、精錬所ガス流で一般的に見出される多くの化学物質/VOCの干渉に対処することができる。
【0080】
上記のことから、本発明は、工業的な環境において改善された水銀蒸気検知を可能にする特徴的なセンサー表面を提供することがわかる。
【0081】
当業者であれば、本発明は、説明されたもの以外のその他の実施態様で本発明の教示の本質から逸脱することなく実施することが可能であることを理解するであろう。