特許第5694315号(P5694315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5694315ゼデロン又はゼデロン類縁物質を有効成分として含む美白用の食品及び経口投与剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694315
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】ゼデロン又はゼデロン類縁物質を有効成分として含む美白用の食品及び経口投与剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/343 20060101AFI20150312BHJP
   A61K 31/34 20060101ALI20150312BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20150312BHJP
   A23L 1/30 20060101ALI20150312BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20150312BHJP
   A23L 2/38 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   A61K31/343
   A61K31/34
   A61P17/00
   A23L1/30 Z
   A23L2/00 F
   A23L2/38 C
【請求項の数】6
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2012-520196(P2012-520196)
(86)(22)【出願日】2010年6月15日
(86)【国際出願番号】JP2010060134
(87)【国際公開番号】WO2011158334
(87)【国際公開日】20111222
【審査請求日】2013年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】末次 一博
(72)【発明者】
【氏名】森田 哲史
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰弘
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−246752(JP,A)
【文献】 特開2007−269705(JP,A)
【文献】 特開2004−256485(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/071051(WO,A1)
【文献】 H.Matsuda, et al., Chemical & Pharmaceutical Bulletin, 2001, 49(12), pp1558-1566
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/343
A23L 1/30
A23L 2/38
A23L 2/52
A61K 31/34
A61P 17/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
{式中、
はH又はC1−3アルキルであり、
及びRは、独立して、H、OH又はC1−3アルキルであり、
あるいはRとRは一緒になって=Oになり、
はH又はC1−3アルキルであり、
X及びYは、式(2):
【化2】
[式中、
記号:
【化3】
は単結合又は二重結合を表し;
はH又はC1−3アルキルであり、
はH、OH又はC1−3アルキルであり、
及びRは、独立して、H又はC1−3アルキルであり、又は結合(1)が二重結合である場合はRとR又はRのいずれか一方とは存在せず、あるいはRとRは一緒になって−O−を形成し、
はH又はC1−3アルキルであり、
10はH又はC1−3アルキルであり、又は結合(2)が二重結合である場合はR10は存在しない]で表される二価の基、
又は式(3):
【化4】
[式中、
11は直鎖若しくは分岐鎖のC1−5アルキル又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−5アルケニルであり、
12は直鎖若しくは分岐鎖のC1−5アルキル又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−5アルケニルであり、
13はH又はC1−3アルキルである]で表される二価の基
を形成する}
で表される1種又2種以上の単離された物質を有効成分として含む美白用の経口投与剤。
【請求項2】
該物質が、式(1):
【化5】
{式中、
はメチルであり、
及びRは、独立して、H又はOHであるか、又はRとRは一緒になって=Oになり、
はHであり、
X及びYは、式(2):
【化6】
[式中、記号:
【化7】
は単結合又は二重結合を表し;
はHであるか、又は存在せず、
はH又はOHであり、
及びRは、独立して、H又はメチルであり、又は結合(1)が二重結合である場合はRとR又はRのいずれか一方とは存在せず、あるいはRとRは一緒になって−O−を形成し、
はメチルであり、
10はHであるか、又は結合(2)が二重結合である場合はR10は存在しない]で示される二価の基、
又は式(3):
【化8】
[式中、
11はイソプロペニルであり、
12はエテニルであり、
13はメチルである]で示される二価の基
を形成する}
で表される1種又2種以上の物質である請求項1記載の美白用の経口投与剤。
【請求項3】
該物質が、式(4):
【化9】
で表されるゼデロン、式(5):
【化10】
で表されるフラノジエノン、式(6):
【化11】
で表されるクルゼレノン、式(7):
【化12】
で表される水添ゼデロン、及び式(8):
【化13】

で表される水添フラノジエノン
よりなる群から選択される1種又は2種以上の物質である請求項1記載の美白用の経口投与剤。
【請求項4】
1種又は2種以上の物質の合計量として剤全体に対して0.1〜30質量%の該物質を有効成分として含む請求項1ないし3のいずれか1項に記載の美白用の経口投与剤。
【請求項5】
1種又は2種以上の物質の合計投与量として2mg〜100mg/日の日用量で投与される請求項1ないし4のいずれか1項に記載の美白用の経口投与剤
【請求項6】
液剤、ゼリー剤、グミ剤、シロップ剤、ドライシロップ、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、チュアブル製剤、口腔内崩壊型散剤、口腔内崩壊型顆粒、口腔内崩壊型細粒又は口腔内崩壊錠よりなる群から選択される剤型である請求項1ないしのいずれか1項に記載の美白用の経口投与剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゼデロン又はゼデロン類縁物質を有効成分として含む、美白効果を奏する食品、及び経口内服液などの経口投与剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、皮膚の色黒やシミ、ソバカス等を改善する各種の美白用外用剤が提供されてきた。美白剤の有効成分として配合される美白成分として、アルブチンやコウジ酸、アスコルビン酸及びこれらの誘導体、グルタチオン、コロイドイオウなどが周知の物質として用いられており、近年では、4−MSK(4−メトキシサリチル酸カリウム塩)やルシノール(登録商標)、マグノリグナン(登録商標)、エラグ酸やリノール酸などが市販されている美白用外用剤の有効成分として用いられている。
【0003】
こうした化合物以外にも、ウワウルシ抽出物やガジュツ抽出物、カミツレ抽出物、桑白皮抽出物、プラセンタ抽出物などの各種動植物抽出物、海藻抽出物も美白用外用剤の有効成分として用いられている。
【0004】
しかしながら、これらの動植物等の抽出物に含まれている成分のなかでどの成分が美白効果を奏するのか特定されているものは少ない。これまでのところ、ウワウルシ抽出物中のアルブチンが美白作用を有することが知られているにすぎず、近年においても、美白作用が公知であるジャトバ抽出物から特定構造の縮合型タンニン型物質が美白作用を有することが開示されているのみである(特許文献1参照)。一方、美白効果が知られていない植物抽出物からも種々の美白成分が見いだされているのも事実である(例えば特許文献2参照)。
【0005】
下記の構造式で示されるゼデロン(zederone)は、ガジュツ(我朮、Curcuma zedoaria Roscoe (Zingiberaceae):別名紫ウコン)中にその存在が確認されて以来(非特許文献1)、ガジュツのみならずその類縁植物であるウコン属の植物、例えば、C. phaeocaulisや日本で言われるウコン(Curcuma longa 〔syn. C. domestica〕:別名秋ウコン)、春ウコン(Curcuma aromatica Salisb)、センリョウ科チャラン属のフタリシズカ(Chloranthus serratus (Chloranthaceae))などに存在していることが数多く報告されている(例えば非特許文献2〜4参照)。
【0006】
【化1】
【0007】
ガジュツ抽出物やウコン抽出物が美白作用の他に抗アレルギー作用を有すること(特許文献3〜6参照)や痩身作用を有すること(特許文献7参照)、発毛促進作用を有すること(特許文献8参照)、血行促進作用を有すること(特許文献9参照)、皮膚の老化やシワ防止作用を有すること(特許文献10参照)など種々の薬理作用を示すことについては多くの報告がある。
【0008】
しかしながら、ウコン属の植物である秋ウコンについては美白作用がないことが本願出願人によって確認されており(特許文献11参照)、同じくゼデロンを含有する植物抽出物であってもそれぞれ美白作用を発揮するとは限られず、ゼデロンが美白成分の本質であるとは考えられなかった。
【0009】
さらに、美白作用のメカニズムについては種々の研究が行われ、様々な作用機序が見いだされている。例えば、メラニンの生成にはc−kit遺伝子が関与することが見いだされ、前記特許文献11には、ガジュツの50%(v/v)エタノール抽出物がc−kit遺伝子の発現を抑制することにより美白作用が発揮されることが開示されている。しかしながら、このようにガジュツ抽出物の作用機序としてc−kit遺伝子の発現抑制が見いだされたとしても、上記のようにガジュツ抽出物中に含まれるいかなる物質がc−kit遺伝子の発現抑制に関与しているかどうかは不明である。
【0010】
また、ガジュツ抽出物は苦味が強く、それを食品や経口内服液などの経口投与剤として投与することに対して抵抗があった。
【0011】
一方、物質としてのゼデロンについて言及するならば、ゼデロンが抗菌活性を有すること(非特許文献5参照)、D-GalN/LPSで誘導される肝障害を防ぐ作用があること(非特許文献6参照)が知られているにすぎない。また、前記特許文献3にはゼデロンを含むガジュツ抽出物が皮膚活性化促進を図ることが、前記特許文献11にはゼデロンを含むガジュツの精油成分が肝臓の解毒機能促進作用や利尿作用、強心作用、抗菌作用、血中コレステロールの抑制作用を示すことが、前記特許文献12にはゼデロン等のテルペン類が抗生活習慣病作用を示すことがそれぞれ記載されているが、いずれの特許文献においてもゼデロンが直接これらの作用を示すことについては明確にされていない。
【0012】
また、抗炎症活性を有する物質としてガジュツに含まれるフラノジエノンが知られており(非特許文献7参照)、ガジュツから単離される成分にストレス性潰瘍を抑える作用があり、抗潰瘍活性を有する物質としてフラノジエノンが知られている(非特許文献8参照)。
【0013】
また、抗微生物作用、抗菌、抗ウィルス効果を有する物質としてゼデロン類縁物質であるフラノジエノン及びクルゼレノンが知られている(特許文献13参照)。
【0014】
このように、これまでのところゼデロン又はゼデロン類縁物質が美白作用を有することについての報告は見あたらず、ガジュツ抽出物中の美白成分についてはほとんど知られていないのが実情である。
【0015】
このような技術背景の下、本発明者らはこれまでとは異なる経口投与し得る美白成分を求めていた。すなわち、アスコルビン酸は酸化されやすく不安定であり、種々の誘導体が用いられているが、人の肌に触れる化粧料の成分としては天然物由来の成分が好ましいという事情がある。グルタチオンやコロイドイオウは特有の異臭や沈殿を生じるという欠点を有する。動植物抽出物や海藻抽出物は効果が不十分であったり、品質が一定しないといった問題点がある。コウジ酸やフェノール基を有するアルブチンやエラグ酸はアルカリ下や金属イオンの存在で着色を起こす虞があるので、その安定性の維持に配慮しなければならないという製剤上の問題を有していた。また、前記特許文献2に記載のセスキテルペンラクトン類は特有の匂いを有することが多く、オイル状である化合物は安定性がよくないことが知られており、製品への安定配合が困難であった。さらに、ガジュツ抽出物は苦味が強く、有効な量を経口摂取するのは困難であった。このように、これまでの美白成分はそれぞれある種の欠点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第3650245号公報
【特許文献2】特開2005−2050号公報
【特許文献3】特開平2−209804号公報
【特許文献4】特開昭61−291524号公報
【特許文献5】特開昭62−108822号公報
【特許文献6】特開平09−208480号公報
【特許文献7】特開平11−193240号公報
【特許文献8】特開2002−20242号公報
【特許文献9】特開2002−249435号公報
【特許文献10】特開2005-194246号公報
【特許文献11】特開2006−246752号公報
【特許文献12】特開2007−129920号公報
【特許文献13】特開2000−119188号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Hiroshi Hikino et al., Chemical Pharmaceutical Bulletin (1968), 16(6), 1081-1087.
【非特許文献2】Yu-Chi Hou et al., Chinese Pharmaceutical Journal (Taipei) (1997), 49(2), 119-125.
【非特許文献3】Jun Kawabata et. al., Agricultural and Biological Chemistry (1985), 49(5), 1479-1485.
【非特許文献4】Minh Giang Phan et al., Tap Chi Hoa Hoc (2000), 38(4), 96-99.
【非特許文献5】Minh Giang Phan et al., Tap Chi Hoa Hoc (2000), 38(1), 91-94.
【非特許文献6】Hisashi Matsuda, Chemical Pharmaceutical Bulletin (2001), 49(12), 1558-1566.
【非特許文献7】H. Makabe et al., Natural Product Research, Part B: Bioactive Natural Products (2006), 20(7), 680-685.
【非特許文献8】Kazuo Watanabe et al., Yakugaku Zasshi (1986), 106(12), 1137-1142.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は高い美白効果を奏し、容易に摂取し得る美白用の食品及び経口投与剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは上記の背景技術の下、鋭意努力したところ、ガジュツ抽出物を出発点として、一群の物質が優れた美白効果を有することを見いだし、また、その物質自体には苦味がなく、経口摂取するのに好適なことを見出し本願発明を完成するに至った。すなわち、本発明は
[1]
式(1):
【化2】
{式中、
はH又はC1−3アルキルであり、
及びRは、独立して、H、OH又はC1−3アルキルであり、
あるいはRとRは一緒になって=Oになり、
はH又はC1−3アルキルであり、
X及びYは、式(2):
【化3】
[式中、
記号:
【化4】
は単結合又は二重結合を表し;
はH又はC1−3アルキルであり、
はH、OH又はC1−3アルキルであり、
及びRは、独立して、H又はC1−3アルキルであり、又は結合(1)が二重結合である場合はRとR又はRのいずれか一方とは存在せず、あるいはRとRは一緒になって−O−を形成し、
はH又はC1−3アルキルであり、
10はH又はC1−3アルキルであり、又は結合(2)が二重結合である場合はR10は存在しない]で表される二価の基、
又は式(3):
【化5】
[式中、
11は直鎖若しくは分岐鎖のC1−5アルキル又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−5アルケニルであり、
12は直鎖若しくは分岐鎖のC1−5アルキル又は直鎖若しくは分岐鎖のC1−5アルケニルであり、
13はH又はC1−3アルキルである]で表される二価の基
を形成する}
で表される1種又2種以上の単離された物質を有効成分として含む美白用の食品及び経口投与剤;
[2]
該物質が、式(1):
【化6】
{式中、
はメチルであり、
及びRは、独立して、H又はOHであるか、又はRとRは一緒になって=Oになり、
はHであり、
X及びYは、式(2):
【化7】
[式中、記号:
【化8】
は単結合又は二重結合を表し;
はHであるか、又は存在せず、
はH又はOHであり、
及びRは、独立して、H又はメチルであり、又は結合(1)が二重結合である場合はRとR又はRのいずれか一方とは存在せず、あるいはRとRは一緒になって−O−を形成し、
はメチルであり、
10はHであるか、又は結合(2)が二重結合である場合はR10は存在しない]で示される二価の基、
又は式(3):
【化9】
[式中、
11はイソプロペニルであり、
12はエテニルであり、
13はメチルである]で示される二価の基
を形成する}
で表される1種又2種以上の物質である前記[1]記載の美白用の食品及び経口投与剤;
[3]
該物質が、式(4):
【化10】
で表されるゼデロン、式(5):
【化11】
で表されるフラノジエノン、式(6):
【化12】
で表されるクルゼレノン、式(7):
【化13】
で表される水添ゼデロン、及び式(8):
【化14】

で表される水添フラノジエノン
よりなる群から選択される1種又は2種以上の物質である前記[1]記載の美白用の食品及び経口投与剤;
[4]
1種又は2種以上の物質の合計量として剤全体に対して約0.1〜30質量%の該物質を有効成分として含む前記[1]ないし[3]のいずれか1に記載の美白用の食品及び経口投与剤;
[5]
1種又は2種以上の物質の合計投与量として約2mg〜100mg/日の日用量で投与される前記[1]ないし[4]のいずれか1に記載の美白用の食品及び経口投与剤;
[6]
ゼデロン、フラノジエノン及びクルゼレノンよりなる群から選択される1種又は2種以上の物質を有効成分として含み、ゼデロン、フラノジエノン及びクルゼレノンよりなる群から選択される1種又は2種以上を含む天然物抽出物を含まない前記[1]ないし[5]のいずれか1に記載の美白用の食品及び経口投与剤;
[7]
液剤、ゼリー剤、グミ剤、シロップ剤、ドライシロップ、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、チュアブル製剤、口腔内崩壊型散剤、口腔内崩壊型顆粒、口腔内崩壊型細粒又は口腔内崩壊錠よりなる群から選択される剤型である前記[1]ないし[6]のいずれか1に記載の美白用の食品及び経口投与剤
を提供するものである;
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、高い美白効果を奏し、経口摂取が容易な食品及び経口内服用の剤が提供される。したがって、従来は効果を高めるためにガジュツ抽出物を高濃度で配合することが求められていたにもかかわらずその苦味に起因して一定濃度以上で配合できなかったが、本発明によるとその苦味に影響されることなく有効量の有効成分を経口摂取することができる食品及び経口内服用の剤が提供される。
【0021】
なお、本発明において美白効果が確認された上記の物質以外にも、水添クルゼレノンや以下の化合物が公知であるが、本発明によれば、これらの化合物も経口投与により美白効果が期待される。
【化15】
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ガジュツエキス末(A)から液々分配による分画を示すフロー図である。
図2】ガジュツエキス末(A)の液々分配物によるメラニン生成抑制効果を示す写真であって、(a)はコントロール、(b)はアルブチン、(c)はガジュツエキス末(A)、(d)はヘキサン画分(B)、(e)は酢酸エチル画分(C)、(f)は水画分(D)の結果である。
図3】分取薄層クロマトグラフィーによるクロマトグラムである。
図4】分取薄層クロマトグラフィーにより得られた各画分のクロマトグラムである。
図5】分取薄層クロマトグラフィーにより得られた画分のメラニン生成抑制効果を示す写真であって、(a)はコントロール、(b)はアルブチン、(c)はガジュツエキス末(A)、(d)はヘキサン画分(B)、(e)は試料B−1(バンドS1)、(f)は試料B−2(バンドS2)、(g)は試料B−3(バンドS3〜S5)、(h)は試料B−4(バンドS6〜S8)の結果である。
図6】精製されたメラニン生成抑制物質(ゼデロン)の紫外部吸収スペクトルである。
図7】精製されたメラニン生成抑制物質(ゼデロン)のIRによるチャートである。
図8】精製されたメラニン生成抑制物質(ゼデロン)のマススペクトルである。
図9】精製されたメラニン生成抑制物質(ゼデロン)のH−NMRスペクトルである。
図10】精製されたメラニン生成抑制物質(ゼデロン)の13C−NMRスペクトルである。
図11】ガジュツエキス末(A)のヘキサン−酢酸エチル(8:2)溶出画分のHPLCチャートである。
図12】精製されたメラニン生成抑制物質(フラノジエノン)の紫外部吸収スペクトルである。
図13】精製されたメラニン生成抑制物質(フラノジエノン)のIRによるチャートである。
図14】精製されたメラニン生成抑制物質(クルゼレノン)の紫外部吸収スペクトルである。
図15】精製されたメラニン生成抑制物質(クルゼレノン)のIRによるチャートである。
図16】生成したメラニン生成抑制物質(水添ゼデロン)の紫外部吸収スペクトルである。
図17】生成したメラニン生成抑制物質(水添フラノジエノン)の紫外部吸収スペクトルである。
図18】製造例1の製造物によるメラニン生成抑制効果を示す写真であって、(a)はコントロール、(b)はアルブチン、(c)はガジュツエキス末(A)、(d)は製造例1の結果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、ゼデロン又はゼデロン類縁物質を有効成分として含む美白用の食品及び経口投与剤を提供する。
本発明の食品及び経口投与剤は、ゲルマクロン様骨格を有する一群の物質を有効成分とする。本発明で用いるこれらの有効成分は、上記のように、ガジュツを始めとして、その多くはショウガ科に属する植物に含まれる成分として知られている。また、本発明で有効成分として用いる物質には、ショウガ科に属する植物から単離される天然成分を水素添加して生成したものも含まれる。
【0024】
本発明の経口投与剤に含まれる物質は、下記の実施例に示すように、苦味がなくて摂取し易く、高い美白効果を示す。
【0025】
本発明の食品及び経口投与剤に有効成分として含まれる一群の物質は、ガジュツ(Curcuma zedoaria Roscoe (Zingiberaceae):別名紫ウコン)の根や茎、葉などの各部位又は全草、好ましくはその根茎から各種有機溶媒にて抽出され、活性炭、スチレン−ジビニルベンゼン系合成吸着剤(例えば、三菱化成社:HP−20)、オクタデシルシリル化シリカゲルやシリカゲルを用いて精製を行うことによって得ることができる。このとき、抽出溶媒としては、水やメタノール、エタノールなどの炭素数1〜4程度の低級アルコール又はそれらの水溶液、アセトンやメチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸メチルや酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、n−ペンタンやn−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなど直鎖、分岐を問わず各種の飽和、不飽和炭化水素などより選択される1種又は2種以上の溶媒を用いることができる。そして、これら溶媒を適宜使い分け、例えば、植物からの抽出には非極性溶媒よりは極性溶媒を用いるのが好ましく、その後、極性を低めることにより分画することができる。また、得られた化合物を公知の方法に従って水素化することによって、本発明の食品及び経口投与剤に有効成分として含まれる水添物を得ることができる。
【0026】
もっとも、本発明に有効成分として用いる物質は、必ずしも単一の純粋な物質にまで精製する必要もなく、下記実施例において述べるように、各種の溶媒を用いた抽出、吸着、液々分配、結晶化、クロマトグラフィー分画などの操作によって比較的高濃度の、例えば、60%(w/w)以上、65%以上、70%以上、75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、最も好ましくは99.5%以上の純度の物質を含む粗精製物として入手することも可能である。
【0027】
本発明の経口投与剤に有効成分として含まれる一群の物質には、式(4):
【化16】
で表されるゼデロン、式(5):
【0028】
【化17】
で表されるフラノジエノン、式(6):
【0029】
【化18】
で表されるクルゼレノン、式(7):
【0030】
【化19】
で表される水添ゼデロン、式(8):
【0031】
【化20】
で表される水添フラノジエノンなどが含まれ、好ましい化合物はゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノンであり、最も好ましくはゼデロンである。
これらの物質は、本明細書中に記載する方法のほか、公知の方法により合成したものや、市販されているものを用いることも可能である。
【0032】
1つの形態において、本発明の食品及び経口投与剤に有効成分として含まれる一群の物質は、
(1)ガジュツ(Curcuma zedoaria)の乾燥物を溶媒に浸漬してガジュツ抽出液を調製し、
(2)ガジュツ抽出液の溶媒を減圧下にて留去し、
(3)生成した結晶分を少量の溶媒で洗浄し、ついで
(4)得られた結晶分を溶媒から再結晶化する
工程を含む製造方法により得ることができる。
【0033】
また、別の形態において、本発明の食品及び経口投与剤に有効成分として含まれる一群の物質は、
(1)ガジュツの乾燥物を溶媒に浸漬してガジュツ抽出液を調製し、
(2)ガジュツ抽出液の溶媒を減圧下にて留去し、
(3)得られた乾固物を溶媒に溶解して、シリカゲルを充填剤とするカラムクロマトグラフィーによる分画を行い、ついで
(4)画分の溶媒留去物を溶媒から結晶化する
工程を含む製造方法により得ることができる。
【0034】
また、別の形態において、本発明の食品及び経口投与剤に有効成分として含まれる一群の物質は、
(1)ガジュツの乾燥物を溶媒に浸漬してガジュツ抽出液を調製し、
(2)ガジュツ抽出液に活性炭を加えて攪拌し、
(3)混合物を濾過し、残渣を溶媒で洗浄し、ついで
(4)洗浄した残渣からメラニン生成抑制剤を溶媒で抽出する
工程を含む製造方法により得ることができる。
【0035】
さらに、別の形態において、本発明の食品及び経口投与剤に有効成分として含まれる一群の物質は、
(1)ガジュツの乾燥物を溶媒に浸漬してガジュツ抽出液を調製し、
(2)非水性溶媒−親水性溶媒間の液々分配に付し、
(3)非水性溶媒層をカラムクロマトグラフィーに付し、目的の画分の溶媒を減圧下にて乾固させ、ついで
(4)非水性溶媒から再結晶化させる
工程を含む製造方法により得ることができる。
【0036】
好ましい形態において、一群の物質は、約1:50〜約1:3(容量比)、好ましくは約1:10〜約1:4(容量比)のガジュツ乾燥物:溶媒の浴比で、約10℃ないし抽出溶媒の沸点まで、好ましくは室温ないし溶媒の沸点より約10℃低い温度にて約2時間〜約14日間、好ましくは約7日間、攪拌、ソックスレー抽出又は静置して行う。
【0037】
好ましい形態において、抽出、吸着、液々分配、結晶化、クロマトグラフィーの移動相などの操作に用いる溶媒は、水、メタノール、エタノール、30〜95%(v/v)のメタノール水溶液若しくはエタノール水溶液、ヘキサン又は酢酸エチルであり、これらの溶媒は1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0038】
好ましい形態において、クロマトグラフィーの条件は以下のとおりである。
カラム:Chemcobond 5-ODS-W(6.0×150(6A))(株式会社ケムコ社)
移動相:75%(v/v)メタノール水溶液
カラム温度:55℃
流速:1.0mL/min
注入量:10μL
モニター:UV 280nm 吸光度
【0039】
好ましい形態において、本発明の食品及び経口投与剤に有効成分として含まれるゼデロンは、
(1)ガジュツの根茎乾燥物を酢酸エチルに浸漬して室温下で放置して抽出し、
(2)抽出液をフィルター(ADVANTEC No.131)にて濾過し、濾液を減圧下にて溶媒を留去し、
(3)乾固物を移動相をヘキサンと酢酸エチルの混液(容量比7:3)を用いて、シリカゲルを充填剤とするカラムクロマトグラフィー(上記分析条件と同じ)に付して波長210nmによる紫外部吸収を指標として分画を行い、
(4)吸収が認められた画分を収集して減圧下にて溶媒を留去し、
(5)留去物をヘキサンを用いて再結晶化し、ついで
(6)1%程度の濃度で50%エタノール水溶液に加熱溶解した後、室温下で再結晶化してゼデロンを得る
工程を含む製法により得ることができる。
【0040】
好ましい形態において、本発明の食品及び経口投与剤に有効成分として含まれるフラノジエノンは、
(1)ガジュツの根茎乾燥物をヘキサンで還流して濃縮し、
(2)収集した抽出液を減圧下にて留去した乾固物を少量のヘキサンに溶解し、
(3)シリカカラムに付して、ヘキサン、ヘキサン:酢酸エチル(容量比9:1)、ヘキサン:酢酸エチル(容量比8:2)で順次溶出し、
(4)ヘキサン:酢酸エチル(容量比8:2)溶出画分を収集し、ついで
(5)少量の75%(v/v)メタノール水溶液に溶解して、ODSカラムに付し、特定の画分を分取してフラノジエノンを得る
工程を含む製法により得ることができる。
【0041】
好ましい形態において、本発明の食品及び経口投与剤に有効成分として含まれるクルゼレノンは、
(1)ガジュツの根茎乾燥物をヘキサンで還流して濃縮し、
(2)収集した抽出液を減圧下にて留去した乾固物を少量のヘキサンに溶解し、
(3)シリカカラムに付して、ヘキサン、ヘキサン:酢酸エチル(容量比9:1)、ヘキサン:酢酸エチル(容量比8:2)で順次溶出し、
(4)ヘキサン:酢酸エチル(容量比8:2)溶出画分を収集し、ついで
(5)少量の75%(v/v)メタノール水溶液に溶解して、ODSカラムに付し、特定の画分を分取してクルゼレノンを得る
工程を含む製法により得ることができる。
【0042】
好ましい形態において、本発明の食品及び経口投与剤に有効成分として含まれる水添ゼデロンは、
(1)上記の製法などにより得られたゼデロンを99.5%(v/v)エタノールに溶解し、
(2)5%Pd−アルミナを加えて水素バッグを用いて水添反応を行い、ついで
(3)反応終了後に濾過を行い、濾液の溶媒を減圧下にて留去して水添ゼデロンを得る
工程を含む製法により得ることができる。
【0043】
好ましい形態において、本発明の食品及び経口投与剤に有効成分として含まれる水添フラノジエノンは、
(1)上記の製法などにより得られたフラノジエノンを99.5%(v/v)エタノールに溶解し、
(2)5%Pd−アルミナを加えて水素バッグを用いて水添反応を行い、ついで
(3)反応終了後に濾過を行い、濾液の溶媒を減圧下にて留去して水添フラノジエノンを得る
工程を含む製法により得ることができる。
【0044】
好ましい形態において、本発明の食品及び経口投与剤に有効成分として含まれる水添クルゼレノンは、
(1)上記の製法などにより得られたクルゼレノンを99.5%(v/v)エタノールに溶解し、
(2)5%Pd−アルミナを加えて水素バッグを用いて水添反応を行い、ついで
(3)反応終了後に濾過を行い、濾液の溶媒を減圧下にて留去して水添クルゼレノンを得る
工程を含む製法により得ることができる。
【0045】
本発明の美白用の食品及び経口投与剤には、1種又は2種以上の物質の合計量として、剤全体に対して約0.1〜30質量%、好ましくは約0.2〜20質量%、約0.2〜15質量%、より好ましくは約0.3〜10質量%の上記の物質が有効成分として含まれる。
【0046】
また、本発明の美白用の食品及び経口投与剤は、1種又は2種以上の物質の合計投与量として、好ましくは約2〜100mg/日、約3〜100mg/日、約5〜100mg/日、約7〜100mg/日、約10〜100mg/日、より好ましくは約3〜80mg/日、約5〜80mg/日、約7〜80mg/日、約10〜80mg/日、約3〜70mg/日、約5〜70mg/日、約7〜70mg/日、約10〜70mg/日、約3〜60mg/日、約5〜60mg/日、約7〜60mg/日、約10〜60mg/日、最も好ましくは約8〜50mg/日、約9〜50mg/日、約10〜50mg/日の日用量で投与される。
【0047】
本発明の美白用の食品には、薬事法上に規定される医薬部外品又は医薬品に分類されるもの以外の、すべての飲食物が含まれる。
一方、本発明の美白用の経口投与剤は、薬事法上に規定される医薬部外品又は医薬品に分類される経口投与できる剤型であれば特に限定されないが、液剤、ゼリー剤、グミ剤、シロップ剤、ドライシロップ、錠剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、チュアブル製剤、口腔内崩壊型散剤、口腔内崩壊型顆粒、口腔内崩壊型細粒又は口腔内崩壊錠などの剤型にすることができる。また、液剤には懸濁液剤や内服液が包含される。より好ましくは、服用時に水を必要としないことから時間や場所に影響されず投与できる液剤、ゼリー剤、グミ剤、チュアブル製剤、口腔内崩壊型散剤、口腔内崩壊型顆粒、口腔内崩壊型細粒又は口腔内崩壊錠が挙げられる。患者に合わせた用量の調整が可能な観点からは、液剤、シロップ剤、ドライシロップ、散剤、顆粒剤、細粒剤、口腔内崩壊型散剤、口腔内崩壊型顆粒、口腔内崩壊型細粒などが好ましい。また、嚥下困難な患者、高齢者、小児にも投与がし易いという観点からは、液剤、シロップ剤、ゼリー剤、グミ剤、ドライシロップ、散剤、顆粒剤、細粒剤、チュアブル製剤、口腔内崩壊型散剤、口腔内崩壊型顆粒、口腔内崩壊型細粒、口腔内崩壊錠などが好ましい。
【0048】
本発明の食品及び経口投与剤においては、上記した以外にも、食品または製薬分野において通常使用される無毒性かつ不活性な添加剤を添加することもできる。これらの添加剤としては、実質的に本発明の効果に影響を与えず、一般的に食品や医薬品などに添加剤として添加されるものが挙げられる。例えば、D−マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、還元澱粉糖化物、還元パラチノース、タルク、カオリン、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、結晶セルロースなどの賦形剤、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウムなどの滑沢剤、軽質無水ケイ酸などの流動化剤、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシメチルセルロースなどの崩壊剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、ゼラチン、メチルセルロース、アラビアゴム末、ポリビニルアルコール、アルキルヒドロキシエチルセルロースなどの結合剤、黄色三二酸化鉄などの着色剤、甘味剤、矯味剤、吸着剤、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、帯電防止剤、pH調節剤、ポリソルベート類(例えば、ポリソルベート80)などの界面活性剤、トウモロコシデンプンなどのデンプン、水などの溶剤、懸濁化剤などが挙げられる。特に、ドライシロップ、口腔内崩壊型散剤、口腔内崩壊型顆粒、口腔内崩壊型細粒、口腔内崩壊錠など、水なしで服用可能な経口固形剤の場合には水溶性賦形剤の添加により口腔内での崩壊性、溶解性が向上し、投与がより容易になる。
【0049】
水溶性賦形剤の例としてはソルビトール、D−マンニトール、マルチトール、還元澱粉糖化物、キシリトール、還元パラチノース又はエリスリトールなどが挙げられ、これらはその1種又は2種以上を適宜の割合で混合して用いることができる。好ましい水溶性賦形剤としてはD−マンニトール、キシリトール又はエリスリトールが挙げられ、さらに好ましくはD−マンニトール又はエリスリトールが挙げられる。
【0050】
本発明の食品及び経口投与剤における水溶性賦形剤の配合量としては、特に限定されないが、通常15〜75%(w/w)、好ましくは25〜50%(w/w)とし得る。
上記した水溶性賦形剤以外の添加剤の配合量は、特に限定されるものではなく、剤型に応じて、自体公知の量を適宜選択することができる。
【0051】
本発明の食品及び経口投与剤の製造方法としては、特に限定されず、公知の方法が挙げられるが、固形製剤の場合は例えば、造粒方法として、押し出し造粒法、破砕造粒法、乾式圧密造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、転動流動層造粒法、高速撹拌造粒法、練合造粒法などが挙げられ、口腔内崩壊錠の場合には湿式顆粒圧縮法、直接圧縮法などが挙げられる。
【0052】
次に、下記実施例に基づいて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の内容に制限されるものではない。なお、特に断らない限り、配合量は質量%を表す。
【実施例】
【0053】
〔ガジュツからの抽出・分画精製〕
ガジュツからの本発明に係るメラニン生成抑制剤の抽出、精製に当たり、まず図1に示す方法により分画操作を行い、各画分について美白作用を調べた。美白作用は下記に示すようにメラニンの生成抑制作用を調べることによって行った。なお、ガジュツは新和物産株式会社より入手したものを用いた。
【0054】
300gのガジュツ(Curcuma zedoaria Roscoe (Zingiberaceae))の根茎乾燥物に50%(v/v)エタノール水溶液1800mLを加え、室温で5日間放置した。その後、濾過して1600mLの抽出液を得た。抽出液を減圧濃縮し乾固物7.5gを得た(ガジュツエキス末(A))。その乾固物1gを少量の50%(v/v)エタノール水溶液に溶解した上で分液漏斗へ投入し、更に、水とヘキサン(容量比で1:1)を加えてよく振り混ぜ、静置した。下層の水層を取り出し、上層のヘキサン層を別のフラスコに分取した。取り出した水層を再び分液漏斗に戻し、水層とほぼ同容量のヘキサンを加え、同様の操作をさらに2回繰り返した。次いで、水層を再び、分液漏斗に戻し、水層とほぼ同容量の酢酸エチルを加えて分液操作を行った。上層の酢酸エチル層を集め、取り出した水層を再び分液漏斗に戻し、再び水層とほぼ同容量の酢酸エチルを加え、同様の操作をさらに2回繰り返した。集めたヘキサン層、酢酸エチル層及び残部の水層は減圧下、濃縮を行い、メラニン生成抑制試験の試料とした(試料(A)〜(D))。
【0055】
(メラニン生成抑制試験)
メラニン生成抑制試験として、三次元培養皮膚モデルによる試験とその際に生成されたメラニン量及びタンパク量を指標にした試験を行った。
メラニン生成抑制試験は、市販されている三次元培養皮膚モデル(MEL-300キットAsian donor:クラボウ社)を用いて行った。キットの使用方法に従い、MEL-300皮膚モデルカップを6ウエルプレートの各ウエルにセットし、37℃インキュベーターで温めたキット用維持培地(EPI−100:培地添加時にSCFを最終濃度10ng/mLになるように添加した)を皮膚モデルカップに無菌的に5mLずつ入れた。皮膚モデルカップの内部に直接的に各試料の溶液を100μLずつ加え、皮膚モデルカップの入った6ウエルプレートをインキュベーター(37℃、5%CO、加湿状態)に入れ、14日間培養した。2日毎に新しい培地と培地交換を行い、交換の都度、各試料の溶液100μLを皮膚モデルカップに加えた。なお、各試料の溶液の調製には細胞培養用のPBS(−)を用いた。
【0056】
培養後、MEL-300皮膚モデルカップをPBS(−)で3回洗浄後、細胞部分を剥離して1.5mLエッペンドルフチューブに入れ、0.5mLの2mol/L−NaOHを添加し、室温下で一晩放置した。15分間煮沸後、各サンプル250μLを96ウエルプレートに移し、405nmでメラニンを定量した。
【0057】
さらに、上記煮沸後のメラニン定量用サンプル40μLを96ウエルプレートに移し、タンパク定量用のBCA試薬(商品名:タカラバイオ(株)社)200μLを各ウエルに入れて、37℃で30分間インキュベートした後、540nmの吸光度を測定した。
【0058】
また、コントロールとしてPBS(−)と、陽性対照としてアルブチン−PBS(−)溶液(2.0%(w/v))を用いて同様の試験を行い、コントロールを100としたときのメラニン量(相対比)及びタンパク量(相対比)を算出し、メラニン生成抑制度を調べた。その結果を表1に示す。また、そのときの三次元培養皮膚モデルの結果を示す写真を図2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
(TLCによる分画精製)
表1及び図2の結果から、図1の(B)に示されるヘキサン抽出画分が最も強いメラニン生成抑制度を示すことが分かった(図2の(d))。そこで、この画分をさらに分取TLC(分取薄層クロマトグラフィー)を用いて精製を進めた。
【0061】
ヘキサン抽出層から溶媒を留去した後、その濃縮物を少量のヘキサンに溶解し、分取用薄層プレート(シリカゲル60・F254、メルク社、厚さ2mm)にて、ヘキサン及び酢酸エチルの混液(容量比7:3)を展開溶媒として分画を行った。検出は目視及び波長254/366nmのUVランプにより行った。その結果を図3に示す。図3に示すように、明確な3つのバンド(S1〜S3)とうっすらと観察された2つのバンド(S5、S7)並びに原点からテーリングした1つのバンド(S8)が観察された。そこで、図に示すように8つのバンド(バンドS1〜バンドS8)に分画した。分画された各バンド部分をかき取って酢酸エチルにて抽出した後、酢酸エチルを留去し、各分画成分を得た。
【0062】
次に上記分画成分について分画状況をTLCにより確認した。各分画濃縮物の少量を再び少量のヘキサンに溶解した後、薄層プレート(シリカゲル60・F254、厚さ0.2mm(メルク社))を用いて上記の展開溶媒による展開を行った。この結果を図4に示す。左側から順にバンドS1、S2、S3、・・S7、S8のヘキサン溶液をスポットしたレーンを示す。この結果、バンドS2では単一のスポットが検出された(ヨウ素による検出)。
【0063】
(メラニン生成抑制試験)
次に分画された試料についてメラニン生成抑制試験を行った。試験に際し、このTLCの結果に基づいて、バンドS1、S2については各バンドをそれぞれ試料(試料B−1、試料B−2)として用い、バンドS3〜バンドS5、バンドS6〜S8については前記バンドをまとめたものをそれぞれ試料(試料B−3、試料B−4)として用いた。メラニン量及びタンパク量から求めたメラニン生成抑制度の結果を表2に示す。また、参考として、ガジュツエキス末(A)及びヘキサン層の濃縮物(B)についても試験を行った。この結果、単一スポットが得られた試料B−2の画分が最も強いメラニン生成抑制度を示した。また、このときの三次元培養皮膚モデルの結果を示す写真を図5に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
〔メラニン生成抑制物質の構造決定〕
表2に示すとおり、バンドS2の画分が最も強いメラニン生成抑制度を示し、また紫外部吸収による検出、ヨウ素による検出においても単一のスポットが確認できたので、この画分に存在するメラニン生成抑制物質の構造決定を行った。構造決定は、紫外部吸収スペクトルによる分析(溶媒:ヘキサン)、赤外吸収分析(IR)、質量分析、H−NMR(溶媒:CDCl3)及び13C−NMR(溶媒:CDCl3)に基づき行った。その結果は次のとおりであり、各分析によるチャートを図6図10に示す。また、NMRによる帰属を表3に示した。これらの結果から、生成されたメラニン生成抑制物質は、ゼデロンであると同定された。この物質のメラニン生成抑制度は、表2から理解されるように、これまで美白効果があるとされてきたアルブチンと対比して、アルブチン濃度の約1/400の濃度でほぼ同等の効果を示し、その作用はアルブチンの約400倍の強さがあると言える。
【0066】
性状:白色の結晶性固体
紫外部吸収:極大吸収波長(λmax)281nm
質量分析:246(m/e)
赤外吸収スペクトル(cm-1):1662,1523,1427,1400,1232,1066,1020,929,881,863.
【0067】
【表3】
【0068】
【化21】
【0069】
〔安定性の確認〕
上記方法で得たゼデロン100mgを50%(v/v)エタノール水溶液200mLに溶解した液を高温(60℃)下で、また、この液に0.5mol/L−NaOHを加え終濃度0.125mol/L−NaOHとした液並びに0.5mol/L−HClを加え終濃度0.125mol/L−HClとした液を室温下で、それぞれ保存し、安定性の確認を行った。また、コントロールには同上のエタノール溶液を4℃で保管したものを使用した。安定性は、下記条件による高速液体クロマトグラフィーを行い、ピーク面積による百分率から残存率を求めることにより測定した。なお、アルカリ保存、酸保存したサンプル溶液はそれぞれ中和後に測定を行った。
【0070】
(分析条件)
カラム:Chemcobond 5-ODS-W(6.0×150(6A))(株式会社ケムコ社)
移動相:メタノール
カラム温度:55℃
流速:1.0mL/min
注入量:10μL
モニター:UV 280nm 吸光度
【0071】
その結果を表4に示した。アルブチンやエラグ酸などフェノール性の化合物はアルカリ域で褐変することはよく知られているが、ゼデロンに変化は認められなかった。また、酸性域では若干の低下が見られるもののアルカリ域及び高温条件下でも安定であることが判明し、ゼデロンは様々な物理的条件の組成物に配合することができ、また、様々な条件下で使用し得ることが明らかになった。
【0072】
【表4】
[実施例2]
【0073】
次に、下記製造法に従い本発明の食品及び経口投与剤に含まれる一群の物質を調製した。
〔製造例1〕ゼデロン
ガジュツ(Curcuma zedoaria)の根茎乾燥物1kgをヘキサン6Lに浸漬し、室温下で7日間放置して抽出した。その抽出液をフィルター(ADVANTEC No.131)にて濾過し、濾液を減圧下にて溶媒を留去した後、冷暗所で放置した。生成してきた結晶分を分取し、これを少量のヘキサンで洗浄した。更に、得た結晶分をヘキサンで再結晶を行い、ゼデロン300mg(純度約95%)を得た。純度は、上記液体クロマトグラフィーの条件で操作して求めた。実施例1で得られたゼデロンを標準品として用い、検出波長220nmにおけるピーク高さ比からゼデロンの定量を行った(製造例2においても同じ)。
【0074】
〔製造例2〕ゼデロン
ガジュツの根茎乾燥物1kgを酢酸エチル6Lに浸漬し、室温下で4日間放置して抽出した。その抽出液をフィルター(ADVANTEC No.131)にて濾過し、濾液を減圧下にて溶媒を留去した後、移動層をヘキサンと酢酸エチルの混液(容量比7:3)を用いて、シリカゲルを充填剤とするカラムクロマトグラフィー(上記分析条件と同じ)による精製を行った。分画はフラクションコレクターにより行い、各フラクション毎に測定した波長280nmによる紫外部吸収を指標として分画を行った。吸収が見られた画分の溶媒留去物をヘキサンを用いて再結晶し、白色結晶2200mg(ゼデロン含量2000mg)を得た。
【0075】
〔製造例3〕フラノジエノン
ガジュツの根茎乾燥物350gをヘキサン1750mLで3時間還流した。溶媒を濾別し、濃縮を行った。残渣にヘキサン1750mLを加えて還流し、同操作を繰り返した。集めた抽出液を減圧下にて留去し、3.12gの乾固物を得た。それを少量のヘキサン(約20mL)に溶解し、不溶分を濾過後、シリカカラム(BW300(富士シリシア社)、φ=20mm、h=200mm)に付し、ヘキサン、ヘキサン:酢酸エチル(容量比9:1)、ヘキサン:酢酸エチル(容量比8:2)各100mLで順次溶出した。ヘキサン:酢酸エチル(容量比8:2)溶出画分を収集し、溶媒を留去して収量0.484gを得た。次いで、それを少量の75%(v/v)メタノール水溶液に溶解し、下記条件のカラムに付した。フラクションコレクターで分取し、それぞれの画分について液体クロマトグラフィーを用いて下記条件で分析を行い、図11のチャートにある*1にあたる部分ピークのみを持つ画分を集め、溶媒を留去後、0.10g(収率0.028%)の白色の結晶性固体を得た。この画分に存在するメラニン生成抑制物質の構造決定を行った。構造決定は、紫外部吸収スペクトルによる分析(溶媒:ヘキサン)、赤外吸収分析(IR)、H−NMR(溶媒:CDCl3)に基づき行い、以下の物性値が得られた。紫外部吸収及び赤外吸収分析によるチャートを図12及び図13に示す。
これらの物性値から得られたメラニン生成抑制物質がフラノジエノンであることが判明した。
【0076】
カラム:Chemcobond 5-ODS-W(6.0×150(6A))(株式会社ケムコ社)
移動相:メタノール:水=75:25(v:v)
カラム温度:55℃
流速:1.0mL/min
注入量:10μL
検出波長:280nm
【0077】
紫外部吸収:極大吸収波長(λmax):なし
赤外吸収スペクトル(cm-1):1644,1523,1375,1270,1240,1105,1020,931
1H-NMRスペクトル:1.30(3H,s),1.99(3H,s),2.13(3H,s),1.85-2.49(4H,m),3.70(2H,m),5.17(1H,m),5.81(1H,s),7.07(1H,s).
【0078】
〔製造例4〕クルゼレノン
また、図11のチャートにある*2にあたる部分ピークのみを持つ画分を集め、溶媒を留去後、0.07g(収率0.02%)の透明油状液体を得た。この画分に存在するメラニン生成抑制物質の構造決定を行った。構造決定は、紫外部吸収スペクトルによる分析(溶媒:ヘキサン)、赤外吸収分析(IR)、H−NMR(溶媒:CDCl3)に基づき行い、以下の物性値が得られた。紫外部吸収及び赤外吸収分析によるチャートを図14及び図15に示す。
これらの物性値から得られたメラニン生成抑制物質がクルゼレノンであることが判明した。
【0079】
紫外部吸収:極大吸収波長(λmax):272nm
赤外吸収スペクトル(cm-1):1675,1562,1427,1257,1070,997
1H−NMRスペクトル:1.222(3H),1.658(3H),2.97(1H,q),2.262(3H),3.166(1H,d),3.249(1H,d),3.104(1H),5.028(1H,d),5.029(1H,d),5.039(1H,d),5.126(1H,d),5.729(1H,d),7.068(1H).
【0080】
〔製造例5〕水添ゼデロン
製造例2で得たゼデロン500mgを99.5%(v/v)エタノール100mLに溶解し、5%Pd−アルミナ100mgを加え、水素バッグを用いて水添反応を行った。反応は室温下にて15時間行った。反応終了後に濾過を行い、濾液の溶媒を減圧下にて留去し、500mgの白色の結晶性固体を得た。この画分に存在するメラニン生成抑制物質の構造決定を行った。構造決定は、紫外部吸収スペクトルによる分析(溶媒:ヘキサン)及びH−NMR(溶媒:CDCl3)に基づき行い、以下の物性値が得られた。紫外部吸収分析によるチャートを図16に示す。
これらの物性値から得られたメラニン生成抑制物質が水添ゼデロンであることが判明した。
【0081】
紫外部吸収:極大吸収波長(λmax):287nm
1H−NMRスペクトル:2.180(3H,m),1.008(3H,d),1.059(3H,d),7.093(1H),1.434(1H,d),1.604(1H,d),1.434(1H,d),1.653(1H,d),1.343(1H,d),1.474(1H,d),2.995(1H,d),2.454(1H,d),1.743(1H,d),1.657(1H,d),2.113(1H,d),1.776(1H,d),4.199(1H,d).
【0082】
〔製造例6〕水添フラノジエノン
製造例3で得たフラノジエノン500mgを99.5%エタノール100mLに溶解し、5%Pd−アルミナ100mgを加え、水素バッグを用いて水添反応を行った。反応は室温下にて15時間行った。反応終了後に濾過を行い、濾液の溶媒を減圧下にて留去し、500mgの白色の結晶性固体を得た。この画分に存在するメラニン生成抑制物質の構造決定を行った。構造決定は、紫外部吸収スペクトルによる分析(溶媒:ヘキサン)及びH−NMR(溶媒:CDCl3)に基づき行い、以下の物性値が得られた。紫外部吸収分析によるチャートを図17に示す。
これらの物性値から得られたメラニン生成抑制物質が水添フラノジエノンであることが判明した。
【0083】
紫外部吸収:極大吸収波長(λmax):なし
1H−NMRスペクトル:2.167(3H,m),0.467(3H,d),0.909(3H,d),6.594(1H),1.440(1H,d),1.579(1H,d),1.400(1H,d),1.779(1H,d),1.601(1H,d),1.366(1H,d),2.808(1H,d),2.676(1H,d),2.212(1H,d),1.884(1H,d),4.774(1H,d),3.665(1H,d).
【0084】
〔ヒト・メラノサイトを用いたメラニン生成抑制試験〕
(ヒト・メラノサイトの培養)
ヒト・メラノサイト(NHEM(Moderately)、クラボウ社)を、Medium254培地(成長因子HMGS−2含有)1000μLを入れた12ウエルプレートに1ウエルあたり2.5×10個ずつ播き、翌日、培地に幹細胞増殖因子(SCF、最終濃度10ng/mL)、そして4時間後に被検試料を添加した。それを37℃でインキュベートし、3日後に培地を交換して、SCF(最終濃度10ng/mL)を再添加後、4時間後に被検試料を添加し、37℃にて7日間インキュベートした。その後、以下の方法に従ってメラニン量及びタンパク量を測定した。
【0085】
(メラニンの定量)
ウエル中の培地を取り除き、PBS(−)500μLで細胞を3回洗浄した後にPBS(−)を完全に取り除いた。洗浄した細胞に2mol/L−NaOH 400μLを加えて細胞を溶解し、シェ−カーで30分間振動させて細胞溶解物を調製した。各細胞溶解物を1.5mLエッペンドルフチューブに移して10分間沸騰湯で加熱し、Voltexミキサーで激しく攪拌した。その350μLを96ウエルに移し、405nmで吸光度を測定した。
【0086】
(タンパクの定量)
上記で得た細胞溶解物40μLをBCA溶液200μLと混合して、37℃にて30分間インキュベートした後、540nmで吸光度を測定した。
【0087】
〔製造例1〕及び〔製造例3〕〜〔製造例6〕で得られたゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン及び水添フラノジエノンについて、上述したメラニン及びタンパクの定量を指標としたメラニン生成抑制試験を行った。各成分によるメラニン及びタンパク量を表5に示す。〔製造例1〕及び〔製造例3〕〜〔製造例6〕で得られたゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン及び水添フラノジエノンは、薄層クロマトグラフィーにより単離されたゼデロンとほぼ同程度ないしそれを超えるメラニン生成抑制効果が認められた。
【0088】
【表5】
【0089】
ゼデロン、フラノジエノン、クルゼレノン、水添ゼデロン及び水添フラノジエノンはすべて、美白効果を持つことで知られているアルブチンと比較して、細胞に対する毒性は弱く、極めて低い濃度で美白効果を示すことが確認された。
【0090】
また、上述した(メラニン生成抑制試験)と同様に、三次元皮膚培養モデルを用いて〔製造例1〕で得られたゼデロンについてメラニン生成抑制試験を行った。その結果を表6及び図18に示す。〔製造例1〕で得られたゼデロンには、薄層クロマトグラフィーにより単離されたゼデロンとほぼ同程度のメラニン生成抑制効果が認められた。
【0091】
【表6】
【0092】
〔経口投与剤による美白効果試験〕
ゼデロンの調製
ガジュツ(Curcuma zedoaria)の根茎乾燥物10kgをヘキサン60Lに浸漬し、室温下で7日間放置して抽出した。その抽出液をフィルター(ADVANTEC No.131)にて濾過し、濾液を減圧下にて溶媒を留去した後、冷暗所で放置した。生成してきた結晶分を分取し、これを少量のヘキサンで洗浄した。更に、得られた結晶分をヘキサンで再結晶を行い、ゼデロン3gを得た。ヘキサンによる再結晶により得た結晶3gを50%エタノール溶液200mLに加え、加熱溶解後、不溶分をフィルター(ADVANTEC No.131)にて濾過した。濾液を室温下で放置し、再結晶を行い2.1gの結晶を得、これを経口投与剤の有効成分として用いた。
【0093】
美白用の経口投与剤の調製
得られたゼデロン2gをデキストリン98gに均等に分散し、経口投与剤を調製した。調製した経口投与剤を市販のセルロースカプセルに250mgずつ分配し、2個当たり10mg投与群用として試験に用いた。
また、ゼデロン0.2gをデキストリン98.8gに均等に分散し、経口投与剤を調製した。調製した経口投与剤を市販のセルロースカプセルに250mgずつ分配し、2個当たり1mg投与群用として試験に用いた。
【0094】
美白効果試験
健康な男女18名を、ゼデロン10mg/日摂取群、従来の健康食品に配合されるガジュツ抽出物としての摂取量に相当するゼデロン1mg/日摂取群、及びゼデロンを含有しないプラセボ摂取群の3群に分け、それぞれ1日1回内服させた。試験は、ダブルブラインドで実施した。なお、従来の摂取量に相当するゼデロン1mg/日は、ゼデロンを含有する食品として最も含有量が多いものとして、ガジュツ粉末そのものを服用する食品が考えられ、その平均的なゼデロン含有量は約0.01〜0.03%で、ガジュツ粉末3g/日摂取によるゼデロン摂取量は約0.3〜1mg/日となり、最大でも約1mg/日に相当するとして設定した。
美白効果(皮膚明度の上昇)の評価は、1及び2ヶ月経過後に行った。
測定項目は、皮膚状態に関するアンケート及び露光部(頬部)及び非露光部(上腕 内側及び外側)の色差を測定した。色差の測定は、温度20℃、湿度30%の環境下で、15分間馴化したあと測定を行い、同一部位の近辺6箇所を測定し、数値の最大、最小を除いた平均値を結果とした。その結果を表7に示す。
【0095】
【表7】
【0096】
表7から明らかなように、プラセボ摂取群やゼデロン1mg/日摂取群においては2ヶ月後に顕著な皮膚明度の上昇は認められなかったのに対し、ゼデロン10mg/日摂取群においては顕著な皮膚明度の上昇が認められた。
したがって、従来のガジュツ抽出物を含む食品に含まれるゼデロンの摂取量では美白効果が奏されないのに対し、ゼデロン10mg/日摂取となる本発明の美白用の食品及び経口投与剤によれば美白効果が奏されることが明らかとなった。
なお、皮膚明度の上昇が認められたゼデロン10mg/日を従来のガジュツ抽出物を配合した粉末食品で摂取するためには30g/日という大量の粉末を摂取する必要があり実質的に日常的な摂取が困難である。
【0097】
〔経口投与剤の味覚試験〕
市販されているガジュツ末は、3g(約小さじ1杯、ゼデロン含量約1mg)/日の日用量を目安として、お湯を注いでお茶として、又は牛乳、各種健康茶若しくはジュースなどと一緒に摂取されるものである。そこで、ガジュツ末3gをお湯に分散したものを比較例1、牛乳に分散したものを比較例2とし、ゼデロン10mgをデキストリン3gに均一に分散し、お湯に分散したものを実施例1、牛乳に分散したものを実施例2とし、男女10名に飲用してもらい、味覚の評価を行った。その結果を表8に示す。
【0098】
【表8】
【0099】
表8から明らかなように、未精製のガジュツ抽出物(比較例1及び2)が苦味などの味覚に対する評価がよくなかったのに対し、ガジュツ抽出物から精製したゼデロンは未精製のガジュツ抽出物中に含まれるゼデロン含量より多いにもかかわらず、味覚への影響はなかった。したがって、ガジュツ抽出物からゼデロンを精製することにより、苦味がなく、多量の有効成分を容易に摂取し得る食品及び経口投与剤への配合が可能になることが示された。
【0100】
製剤例1 錠剤健康食品
精製ゼデロン2g、デキストリン70g、粉糖90g及びグリセリン脂肪酸エステル10gを混合・撹拌して均一に調製し、打錠し、1錠200mgである錠剤として健康食品を得た。
【0101】
製剤例2 飲料用顆粒
精製ゼデロン1g、オリゴ糖40g、砂糖50g及びデキストリン380gを混合・攪拌して均一に調製し、流動層造粒機による顆粒を行い、一包5gである飲料用顆粒を得た。
【0102】
製剤例3 ドリンク剤
精製ゼデロン10mg、ソルビトール3000mg、オリゴ糖4500mg、サイクロデキストリン500mg及びアスコルビン酸100mgを適量の精製水に混合、溶解させて50mLとし、ドリンク剤を得た。
【0103】
製剤例4 カプセル用粉末
精製ゼデロン5g、オリゴ糖40g及びデキストリン200gを混合・攪拌して均一に調製し、1カプセル当たり250mgであるカプセル用粉末を得た。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、高い美白効果を発揮し、苦味がなく容易に投与することができる美白用の食品(健康食品など)及び経口投与剤(医薬部外品及び医薬品など)の分野に関する。
図1
図3
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図6
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