特許第5694420号(P5694420)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カトウ工機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5694420-コレットチャック 図000002
  • 特許5694420-コレットチャック 図000003
  • 特許5694420-コレットチャック 図000004
  • 特許5694420-コレットチャック 図000005
  • 特許5694420-コレットチャック 図000006
  • 特許5694420-コレットチャック 図000007
  • 特許5694420-コレットチャック 図000008
  • 特許5694420-コレットチャック 図000009
  • 特許5694420-コレットチャック 図000010
  • 特許5694420-コレットチャック 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694420
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】コレットチャック
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/20 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
   B23B31/20 F
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-88240(P2013-88240)
(22)【出願日】2013年4月19日
(65)【公開番号】特開2014-210323(P2014-210323A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2014年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】390027764
【氏名又は名称】カトウ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北 原 寛 巳
【審査官】 足立 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開平5−63710(JP,U)
【文献】 特表平10−503974(JP,A)
【文献】 特表平10−503717(JP,A)
【文献】 米国特許第6520508(US,B1)
【文献】 米国特許第2746758(US,A)
【文献】 米国特許第5160150(US,A)
【文献】 英国特許出願公開第1295827(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00−31/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーパー孔を備えるチャックと、
前記チャックのテーパー孔に挿入され、前記テーパー孔に嵌合するテーパー部(14)と複数の割り溝とを有するコレットと、
前記チャックにネジ着され、前記コレットを前記テーパー孔に押し込み、前記コレットを前記チャックに嵌合させるナットと、
前記割り溝に挿入され、前記テーパー孔に嵌合するテーパー部(13)を有して、工具の周囲を支える複数のブレードと、
前記ナットに取り付けられ、すり鉢形くぼみに前記ブレードの傾斜端が係合され、前記ブレードを軸方向に押し込む押え金具と、
前記ナットに前記押え金具を留めるスナップリングと、
前記ナットと前記押え金具の間に設けられるバネと、が備えられることを特徴とするコレットチャック。
【請求項2】
前記ブレードは、工具と接触する側の肉厚が薄く、先端に幅の小さな平面を有する鋭角的な断面を有することを特徴とする請求項1に記載のコレットチャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コレットチャックに係り、より詳しくは、小径の工具や線材などを潰れないように把持することができるコレットチャックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コレットチャックは、工具を把持するコレットと、コレットが嵌め込まれるチャックからなる。コレットチャックはホルダなどを形成し介して工作機械等の主軸に取り付けられる。
【0003】
特許文献1にはコレットチャックが示される。コレットには複数の割り溝が設けられており、工具をコレットに挿入してコレットをチャックに取り付け、ナットを締め付けると、コレットのテーパー部がチャックのテーパー孔に押し込まれて固定される。その時、複数の割り溝が縮むことで工具(符号Tで示される)は、コレットに固定される。しかし、コレットは複数の割り溝が縮むことで得られる内径寸法の変化は一般的に0.5mm程度であり、最小径は1mm程度である為、1mmより小径の工具を把持する場合は、サイズに応じた複数のコレットを準備する必要があった。
【0004】
コレットチャックは、工具に限らず、放電加工機(EDM:electrical discharge machining)の電極などの線材を把持することにも使用できる。細穴放電加工機の電極の軸径は、例えば0.1〜1mmである。金属の細くて中空の軸を把持することも要求される。工具や線材の材質も金属に限らず樹脂などの場合もある。そのため、このような小径(具体的には1mm以下)の工具に従来のコレットチャックを適用した場合、工具がナットで強く締め付けられて潰れや変形する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平06−58124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、金属又は樹脂からなるパイプなどの潰れやすく変形しやすい1ミリ以下の工具や線材を、1種類のコレットで把持することができるコレットチャックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるコレットチャックは、テーパー孔を備えるチャックと、前記チャックのテーパー孔に挿入され、前記テーパー孔に嵌合するテーパー部(14)と複数の割り溝とを有するコレットと、前記チャックにネジ着され、前記コレットを前記テーパー孔に押し込み、前記コレットを前記チャックに嵌合させるナットと、前記割り溝に挿入され、前記テーパー孔に嵌合するテーパー部(13)を有して、工具の周囲を支える複数のブレードと、前記ナットに取り付けられ、すり鉢形くぼみに前記ブレードの傾斜端が係合され、前記ブレードを軸方向に押し込む押え金具と、前記ナットに前記押え金具を留めるスナップリングと、前記ナットと前記押え金具の間に設けられるバネと、が備えられることを特徴とする。
【0008】
前記ブレードは、工具と接触する側の肉厚が薄く、先端に幅の小さな平面を有する鋭角的な断面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコレットチャックによれば、(1)コレットの割り溝に複数のブレードを挿入し、複数のブレードで工具を支えるようにしたので、ナットをチャックにネジ着して締め付けても、割り溝が縮んでブレードの両側を締め付けるだけで、工具を潰す方向には力が働かないようにできる。つまり小径の潰れやすい工具などを軽荷重の加工に耐える程度に軽く把持することができる。(2)ブレードの傾斜端が、押え金具のすり鉢形くぼみに係合するようにしたので、押え金具で上方向に押せば、傾斜端がすり鉢形くぼみを滑り、ブレードを中心軸方向へ位置合わせでき、同時にブレードのテーパー部がチャックのテーパー孔に沿ってブレードを中心軸方向へ位置合わせする為、ブレードは工具などを平行に軽く把持することができる。また、ブレードの径方向の移動量はチャックのテーパー孔に沿って上下に移動する寸法により決まるため、0.1〜1mmの範囲の異なる寸法の工具などを、1種類のコレットにより把持できる。(4)ナットに押え金具を留めるバネとスナップリングを設けたので、押え金具とナットを一体化でき、ナットをチャックにネジ着する操作が容易である。(5)バネは、ブレードを常に一定な力により上方向に押し付けることができる。
【0010】
ブレードは、工具と接触する側の肉厚が薄く、先端に幅の小さな平面を有する鋭角的な断面を有するので、工具の外周面を面ではなく、軸方向に沿った線で支えることができる。工具の外周面の形状に依存しないで支えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明によるコレットチャックの断面図である。
図2図1のA−A矢視図(ナットは除く)である。
図3図1で使用されるナットの斜視図である。
図4図1で使用されるブレードの正面図(A)と右側面図(B)である。
図5図1で使用されるコレットの正面図である。
図6図5のコレットのB−B断面図である。
図7図5のコレットの平面図である。
図8図1で使用される押え金具の斜視図である。
図9図1で使用されるスナップリングの平面図である。
図10図1で使用されるバネの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のコレットチャックについて、図面を参照して詳しく説明する。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明によるコレットチャック100の断面図である。コレットチャック100は、上からチャック30、コレット1、ブレード2、押え金具4、バネ5、スナップリング10、ナット3を備える。工具20はコレット1に挿入され、ブレード2で支えられて把持される。チャック30には、既存のテーパコレットチャックに合わせた角度(本図の場合は8°)のテーパー孔9が設けられ、外側面に同様の角度のテーパー部14を有するコレット1が嵌合される。ナット3は、チャック30の外側にネジ着され、ナット3を回すとバネ5を介して押え金具4がブレードを上方向に押す。同時にコレット1が、チャック30のテーパー孔9に押し込まれる。
【0014】
図2は、図1のA−A矢視図(ナットは除く)である。図2に示すようにコレット1の周囲には、120°に離れた3つの割り溝6が設けられ、割り溝6にブレード2が挿入される。工具20は、3個のブレード2で支えられる。ナット3を装着方向に回すと、コレット1が上方向に押し込まれる。チャック30のテーパー孔9は、上に行くほど狭いので、コレット1には、外径が小さくなるような荷重がかかる。この荷重は、図2に示す矢印のように、ブレード2を両側から挟み込むものとなる。ブレード2は、ナット装着方向に回す事により直接的に中心軸方向には押されないので、工具20を潰すことがない。
【0015】
図3は、図1で使用されるナットの斜視図である。ナット3は筒状で、内側にチャック30の外周に螺合するネジが切られている。ナット3は、押え金具4がバネ5と共に取り付けられ、スナップリング10で留めている。
【0016】
図4は、図1で使用されるブレード2の正面図(A)と右側面図(B)である。ブレード2には、傾斜端12とテーパー部13を有する。テーパー部13はチャック30のテーパー孔9に嵌合する。ブレード2は、工具20と接触する側の肉厚が薄く先端に幅の小さな平面を有する鋭角的な断面を有する鋭角な断面を有する。そのため、図2に示されるように、工具20の外周面を軸方向に沿った線で支えることができる。工具20の外面の形状に合わせた面を形成するのではないから、複数の径の工具をサポートできる。
【0017】
図5は、図1で使用されるコレット1の正面図である。コレット1には、ブレード2が挿入される3つの割り溝6が120の角度をあけて設けられる。中央の貫通孔は、工具20の外径より大きな径とし、割り溝6が縮んでも工具20に接触しない内径とした。割り溝6の数は3つに限らず、5つなどとしてもよい。
【0018】
図6は、図5のコレット1のB−B断面図である。コレット1の一側には、押え金具係合孔8が設けられる。ここに押え金具4の大径部が係合する。コレット1のテーパー部14が、チャック30のテーパー孔9に嵌合する。
【0019】
図7は、図5のコレット1の平面図である。割り溝6の長さは、ブレード2の長さより長くしている。
【0020】
図8は、図1で使用される押え金具4の斜視図である。押え金具4は、大径部と筒部からなる。大径部にはすり鉢形くぼみ11が設けられる。このすり鉢形くぼみ11にブレード2(図4参照)の傾斜端12が係合する。押え金具4は、図1に示すように、大径部が上で筒部が下となるように使用されるので、ブレード2の傾斜端12が、すり鉢形くぼみ11を自重で滑ることにより、ブレード2の刃が工具20外周に接することができる。溝7には、スナップリング10が嵌め込まれる。
【0021】
図9は、図1で使用されるスナップリング10の平面図であり、図10はバネ5の斜視図である。バネ5を図8の押え金具4の小径部に装着し、押え金具4を図1に示すようにナット3に取り付け、スナップリング10を押え金具4の溝7に装着することで、ナット3と押え金具4を一体のものとして組み立てることができる。この状態では、バネ5が、押え金具4をナット3から抜けないようにスナップリング10に付勢している。バネ5は、ナット3がチャック30に装着された状態では、ブレード2のテーパー部13がテーパー孔9で押され、ブレード2が下方向に移動するような場合があっても、バネ5が縮むことで、ブレード2の工具20にかかる荷重を吸収するようにしている。
【0022】
コレットチャック100の使い方を図1で説明する。まず、ブレード2を押え金具4で上方向に押すように嵌め込む。これにより、ブレード2の下端の傾斜端が押え金具4のすり鉢形くぼみ11を滑り、ブレード2の刃が工具20を均等に3方向から支える。この状態でナット3を締めると、コレット1のテーパー部がチャック30のテーパー孔9に嵌合され、割り溝6が狭められる。ただし、ブレード2の両側が締め付けられるのみで、工具20が締め付けることはない。また、ブレード2のテーパー部13がテーパー孔9で押され、下方向に移動してもバネ5が縮むことで、ブレード2が工具20に荷重がかからないようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、パイプなどの潰れやすい小径の工具を把持するコレットチャックとして好適である。
【符号の説明】
【0024】
1 コレット
2 ブレード
3 ナット
4 押え金具
5 バネ
6 割り溝
7 溝
8 押え金具係合孔
9 テーパー孔
10 スナップリング
11 すり鉢形くぼみ
12 傾斜端
13 ブレードのテーパー部
14 コレットのテーパー部
20 工具
30 チャック
100 コレットチャック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10