特許第5694468号(P5694468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5694468桁式サポート装置を使用した解体方法及び桁式サポート装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694468
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】桁式サポート装置を使用した解体方法及び桁式サポート装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/08 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
   E04G23/08 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-178890(P2013-178890)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-48586(P2015-48586A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2014年7月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513219762
【氏名又は名称】株式会社伸光リース
(73)【特許権者】
【識別番号】513219706
【氏名又は名称】株式会社ヴァン‐キャトル
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】小澤 英雄
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−021371(JP,A)
【文献】 特開2002−371713(JP,A)
【文献】 特開2003−206639(JP,A)
【文献】 特開2003−253893(JP,A)
【文献】 特開2009−179946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の梁の上相互に架け渡し、解体工事用のショベル機を載せる桁式サポート装置にショベル機を載せて移動しながら解体工事を行う桁式サポート装置を使用した解体方法において、
桁式サポート装置の一端部に上層階の梁の上に係止する係止部と傾斜板とを設け、該傾斜板によって係止部の強度を高めると共に、傾斜板から上層階にショベル機が移動するように構成し
下層階のスラブ上に配置したショベル機にて上層階のスラブ下面からショベル機移動用の移動開口部を形成する工程と、
下層階から上層階の移動開口部の梁の位置に桁式サポート装置を斜めに架け渡しショベル機が桁式サポート装置を伝って移動開口部から上層階に移動する工程と、
上層階のスラブの梁相互間に架け渡した桁式サポート装置を伝って自由に移動する工程とを有し、ショベル機を屋上まで移動させることを特徴とする桁式サポート装置を使用した解体方法。
【請求項2】
建物の梁の上相互に架け渡し、解体工事用のショベル機を載せる桁式サポート装置にショベル機を載せて移動しながら解体工事を行う解体方法に使用する桁式サポート装置において、
H形鋼のウェブ片面を載置面とし、該H形鋼のフランジ端部に、上層階の梁上面に係止せしめる係止部と、該係止部の強度を高めると共に、上層階にショベル機が移動するように形成した傾斜板とを備えた桁フレームと、
該桁フレームの長手中央部位の裏側に、長手方向に沿って複数本固着されるH形鋼の補助フレームと、
該補助フレームの長手両端部に固着された一対の固定平鋼を貫通し、固定ナットで固定するタイロッド棒と、を備え、
該タイロッド棒を緊締して桁フレーム及び補助フレームに張力を発生させるように構成したことを特徴とする桁式サポート装置。
【請求項3】
前記タイロッド棒は前記補助フレームの間に配設され、前記補助フレームの下面全体を被覆する補強プレートが補助フレームに固着された請求項2記載の桁式サポート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベル機を使用してコンクリート造の建物を解体する際に、ショベル機の重量を梁の上に架け渡した桁式サポート装置で分散させながら建物を解体する桁式サポート装置を使用した解体方法及び桁式サポート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
RC造やSRC造等の建物の解体工事には、屋上にクレーンでショベル機を吊り上げ、上層階から下層階に至る解体作業を行う屋上解体方法が一般的に行われている。この際、解体施工に使用するショベル機の重量が、各階のスラブ等に加わると、スラブ等の強度が耐え切れず抜け落ちる危険性がある。そのため、ショベル機の荷重からスラブが抜け落ちないように各フロアのスラブを下からサポート補強して解体する工事が行われている。
【0003】
この解体工事では、スラブが抜け落ちないように鉄板を敷き詰め、下層階のスラブと上層階のスラブ間にサポート装置や強化ポスト等を設置し、スラブを補強してから上層階のスラブにショベル機を荷揚げするものである。ところが、この方法では、各階のスラブ間に大量のサポートを設置するため、工事期間と経費負担が増大する不都合がある。またサポート装置や強化ポスト等の配置位置が正確でないとショベル機の作業中に発生する振動等でサポート装置が緩んだり外れてしまったりするおそれもあった。
【0004】
特許文献1は、このようなサポート装置を使用する代わりに、解体用ショベル機の重量を、梁の上に分散させる桁式サポート装置を提案したものである。この桁式サポート装置によると、スラブより比較的強度が高い梁の上に、H形鋼を利用した桁式サポート装置を架け渡し、この桁式サポート装置にショベル機を載せて移動しながら解体工事を行うように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−371713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来のサポート装置や桁式サポート装置を使用する解体工事は、いずれも、屋上にクレーンでショベル機を吊り上げ、上層から下層の順で解体作業を行うものであるから、建物の周囲にショベル機を吊り上げるクレーンの設置スペースがない場合には解体工事が行えないという不都合があった。
【0007】
また、従来の桁式サポート装置は、H形鋼のウェブの片面を載置面とし、このウェブの両端部に補強装置を溶接し、この補強装置を連結する長ボルトで補強装置を締め付けることでウェブに張力を発生させ、桁式サポート装置の支持強度を高めるものであった。
【0008】
この張力により、桁フレームの強度を高めることは可能になったが、桁フレームの長手中央部の強度は長手両端部の強度に比べて低くなり、位置によって強度にばらつきが生じるものであった。そのため、この桁フレームにショベル機を載せた際に、桁フレームが長手中央部から撓み、補強装置が外れるおそれがあるなどという安全性の課題があった。
【0009】
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、建物の周囲にクレーンを使用するスペースがない場合でも屋上から解体工事を行うことができ、しかもショベル機を載せても桁式サポート装置に変形が少なく、安全な施工ができる桁式サポート装置を使用した解体方法及び桁式サポート装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、建物の梁Pの上相互に架け渡し、解体工事用のショベル機Sを載せる桁式サポート装置に100にショベル機Sを載せて移動しながら解体工事を行う桁式サポート装置100を使用した解体方法において、
桁式サポート装置100の一端部に上層階の梁Pの上に係止する係止部11と傾斜板12とを設け、該傾斜板12によって係止部11の強度を高めると共に、傾斜板12から上層階にショベル機Sが移動するように構成し
下層階のスラブQ上に配置したショベル機Sにて上層階のスラブQ下面からショベル機S移動用の移動開口部Rを形成する工程と、
下層階から上層階の移動開口部Rの梁Pの位置に桁式サポート装置100を斜めに架け渡しショベル機Sが桁式サポート装置100を伝って移動開口部Rから上層階に移動する工程と、
上層階のスラブQの梁P相互間に架け渡した桁式サポート装置100を伝って自由に移動する工程とを有し、ショベル機Sを屋上まで移動させる解体方法にある。
【0011】
第2の手段は、建物の梁Pの上相互に架け渡し、解体工事用のショベル機Sを載せる桁式サポート装置に100にショベル機Sを載せて移動しながら解体工事を行う解体方法に使用する桁式サポート装置100において、
H形鋼のウェブ片面を載置面とし、該H形鋼のフランジ端部に、上層階の梁P上面に係止せしめる係止部11と、該係止部11の強度を高めると共に、上層階にショベル機Sが移動するように形成した傾斜板12とを備えた桁フレーム10と、
該桁フレーム10の長手中央部位の裏側に、長手方向に沿って複数本固着されるH形鋼の補助フレーム20と、
該補助フレーム20の長手両端部に固着された一対の固定平鋼31を貫通し、固定ナット32で固定するタイロッド棒30と、を備え、
該タイロッド棒30を緊締して桁フレーム10及び補助フレーム20に張力を発生させるように構成した桁式サポート装置にある。
【0012】
第3の手段において、前記タイロッド棒30は前記補助フレーム20の間に配設され、前記補助フレーム20の下面全体を被覆する補強プレート40が補助フレーム20に固着された桁式サポート装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1によると、上層階移動工程にて屋上まで移動させたショベル機Sにて解体工事を行う解体方法により、建物の周囲にクレーンを使用するスペースがない場合でも屋上から解体工事を行うことができる。しかも、上層階の梁P上面に係止せしめる係止部11や、該係止部11の強度を高めると共に、上層階にショベル機Sが移動するように形成した傾斜板12とを形成したので、スラブQの梁P上に桁フレーム10を確実に係止することができるので、ショベル機Sの移動を安全に行うことができる。
【0015】
請求項2のごとく、タイロッド棒30を緊締し桁フレーム10及び補助フレーム20に張力を発生させるように構成したことで、ショベル機を載せても変形が少なく、安全な施工ができる桁式サポート装置を提供することに成功した。
【0016】
請求項3のように、タイロッド棒30は前記補助フレーム20の長手方向に沿った相互間に配設され、前記補助フレーム20の各下面を被覆するように補強プレート40を固着することで、タイロッド棒30が剥き出しにならずに済み、解体工事のような荒い作業に使用してもタイロッド棒30の破損や脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明方法において、ショベル機が上層階に移動する工程を示す概略側面図である。
図2】本発明方法において、ショベル機がスラブ上を移動する状態を示す概略平面図である。
図3】本発明方法において、ショベル機が屋上まで移動する経路を示す概略図である。
図4】本発明装置の一実施例を示す分解斜視図である。
図5】本発明装置の一実施例を示す一部切欠側面図である。
図6】本発明装置の一実施例を示す底面図である。
図7】本発明装置のタイロッド棒と補強プレートを示す要部側断面図である。
図8】本発明装置の補助フレームとタイロッド棒を示す横断面図である。
図9】本発明装置の係合突起と傾斜板を示す要部側断面図である。
図10】本発明装置の補強板を示す要部側断面図である。
図11】本発明装置の桁フレームにショベル機を載置した状態を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明によると、建物の周囲にクレーンを使用するスペースがない場合でも屋上から解体工事を行うことができ、しかも、ショベル機を載せても桁式サポート装置に変形が少なく、安全な施工ができるなどといった当初の目的を達成した。
【0020】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明解体方法は、桁式サポート装置100を使用する解体方法である(図1図3参照)。この桁式サポート装置100の基本構成は、H形鋼のウェブ片面を載置面とするもので、建物の梁Pの上相互間に桁式サポート装置100を架け渡し、この桁式サポート装置100にショベル機Sを載せて移動しながら解体工事を行う解体方法である(図2参照)。
【0021】
桁式サポート装置を使用する従来の解体方法では、クレーンにて屋上までショベル機Sや桁式サポート装置を搬送していたが、本発明では、従来の解体方法を改良し、ショベル機Sが屋上まで自走で移動できるようにしている。
【0022】
すなわち、ショベル機Sは最下層のスラブQ上に配置する(図1参照)。この場合、ショベル機Sの搬入口(図示せず)をショベル機Sにて開口し、自走でスラブQ上に移動する。そして、移動したショベル機Sにて、上層階のスラブQにショベル機S移動用の移動開口部Rを形成する(図3参照)。
【0023】
この移動開口部Rは、ショベル機Sが移動可能な大きさに開口するもので、この移動開口部Rの上面に桁式サポート装置100を下層階から斜めに架け渡す(図1参照)。この際、スラブQ中でも比較的強度の高い梁Pの位置に桁式サポート装置100を架け渡すものである。
【0024】
次に、この桁式サポート装置100を渡ってショベル機Sを移動開口部Rから上層階に移動させる(図1参照)。このように上層階のスラブQに到達したショベル機Sは、梁P相互間に架け渡した桁式サポート装置100を伝って自由に移動することができるようになる(図2参照)。
【0025】
そして、下層階から上層階のスラブQに移動開口部Rを開口し、ショベル機Sが移動する工程を繰り返すことで、最終的に屋上までショベル機Sを移動させることができる(図3参照)。この後は、従来の屋上解体方法にて順次解体工事が進められるものである。
【0026】
次に、本発明で使用する桁式サポート装置100の基本構成は、桁フレーム10、補助フレーム20、タイロッド棒30、補強プレート40にて構成されている(図4図10参照)。
【0027】
桁フレーム10はH形鋼を使用するもので、H形鋼のウェブ片面を載置面としており、梁Pの上に架け渡した桁フレーム10上にショベル機Sを載置するものである(図11参照)。この載置面には、多数の棒鋼14を溶接してあり、ショベル機Sの移動を確実にしている(図4参照)。ただ、このH形鋼のみでは、ショベル機Sを支持する強度が足りないので、補助フレーム20、タイロッド棒30、補強プレート40にて、桁フレーム10の支持強度を高めている。
【0028】
補助フレーム20は、複数本のH形鋼を使用する。この補助フレーム20は、桁フレーム10の長手中央部位の裏側に、長手方向に沿って固着されるものである(図6参照)。図示例では、3本の補助フレーム20を桁フレーム10に溶接している。
【0029】
一方、タイロッド棒30は、桁フレーム10及び補助フレーム20に張力を発生させる部材である。すなわち、補助フレーム20の長手両端部に固定平鋼31を固着しておく(図6参照)。そして、この固定平鋼31にタイロッド棒30を貫通させ、固定ナット32で固定する(図5参照)。
【0030】
この固定ナット32を締め付けるほど、タイロッド棒30は固定平鋼31の相互間で緊締され、この緊締力が桁フレーム10や補助フレーム20に張力を与えるものである。図示のタイロッド棒30は、補助フレーム20の間に2本配置している(図8参照)。但し、この補助フレーム20やタイロッド棒30の数や長さは図示例に限定されるものではない。
【0031】
補強プレート40は、補助フレーム20の各下面を被覆するように固着した鋼板である(図6参照)。この補強プレート40の両端部にはガイド板41が設けられており、前述のタイロッド棒30を挿通支持している。この補強プレート40を補助フレーム20に固着することで、補助フレーム20とタイロッド棒30とを桁フレーム10に一体化することができるものである(図7図8参照)。
【0032】
桁フレーム10を上層階のスラブQに開口した移動開口部Rに係止するために、桁フレーム10の一端部に係止部11を設けている(図9参照)。この係止部11は、桁フレーム10を構成するH形鋼のフランジ端部に形成した部位で、切欠状に形成している。そして、スラブQの中でも強度の高い梁Pの上に係止するものである。この係止部11は、傾斜板12によって強度を高めると共に、ショベル機Sはこの傾斜板12をから上層階に移動する。
【0033】
一方、桁フレーム10の他端部には、補強板13が設けられている(図10参照)。この補強板13は、下層階のスラブQに設置する桁フレーム10の端部を強化するものである。
【0034】
尚、桁フレーム10、補助フレーム20、タイロッド棒30、補強プレート40等の構成は図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更する構成でなければ他の形状に変更することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
P 梁
Q スラブ
R 移動開口部
S ショベル機
10 桁フレーム
11 係止部
12 傾斜板
13 補強板
14 棒鋼
20 補助フレーム
30 タイロッド棒
31 固定平鋼
32 固定ナット
40 補強プレート
41 ガイド板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11