(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光学部に一対の支持部が突出形成された眼内レンズがセットされる略筒状の器具本体と、該器具本体に対して軸方向の後方から挿し入れられて該器具本体に組み付けられる押出部材とを含んで構成されていると共に、該器具本体の軸方向中間部分には該眼内レンズがセットされるステージが設けられて、該ステージより軸方向先端側に向かって先細形状の挿入筒部が形成されており、該ステージにセットされた該眼内レンズを該押出部材で該器具本体の軸方向前方に移動させて該挿入筒部を通じて小さく変成せしめて押し出すことにより眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具において、
前記ステージには、前記眼内レンズが平置状態で且つ前記一対の支持部が前記押出部材による移動方向の前後に向かって延び出した状態でセットされるようになっていると共に、
前記挿入筒部には、前記押出部材によって移動せしめられる前記眼内レンズの移動方向の前方に向かって延び出した前記支持部に干渉して該支持部に対して移動方向と反対側の後方への外力を及ぼすことで該支持部を前記光学部への接近側に湾曲変形させる干渉作用部を設けており、更に、
前記挿入筒部における前記干渉作用部が、該挿入筒部における幅方向の少なくとも一方の側に形成されて該挿入筒部内を移動せしめられる前記眼内レンズの前記支持部に対して係合する係合部によって構成されており、且つ、
前記係合部が、前記挿入筒部における幅方向の少なくとも一方の側において内面に開口する凹部であり、
前記挿入筒部の中空内部には、該挿入筒部内を移動せしめられる前記眼内レンズに干渉して該挿入筒部内での移動に伴って該眼内レンズの前記光学部を、その移動方向に延びる稜線又は谷線をもって上方及び下方の何れか一方に凸となる山形又は谷形に折畳み変形させる変形ガイド手段が設けられている一方、
該挿入筒部に設けられた前記干渉作用部における前記支持部の干渉面には、該眼内レンズの移動方向の前方に行くに従って、該変形ガイド手段によって変形される該光学部における凸側と反対の凹側に向かって次第に傾斜する傾斜が付されており、該干渉面に付された該傾斜の案内作用により、折畳み変形される該眼内レンズの該光学部の凹側に向かって該支持部が入り込むように変形案内されるようになっている
ことを特徴とする眼内レンズ挿入器具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、眼内レンズの前後面をより確実に且つ容易に正規方向に向けて、眼内レンズを眼内に挿入施術することを可能と為し得る、新規な構造の眼内レンズの挿入器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者は、眼内レンズ反転の原因が、嚢内での支持部先端を拘束中心とした眼内レンズの展張作用にあるとの認識を得た。
【0009】
すなわち、従来の眼内レンズ挿入器具では、挿入筒部内で小さく折り曲げられる眼内レンズにおいて、光学部から突出する一対の支持部が送り出し方向の前後方向に延び出すようにされる。これは、光学部と一対の支持部が折り重なることを避けることで、より小さな断面の挿入筒部から押し出すことが出来、眼の切開創も小さくて済むからである。更に、光学部の前後方向に延び出す一対の支持部は、積極的に前後方向に延ばされた状態で押し出すようにされる。これは、支持部が鋭角的に折れてしまうと、残留応力やクレージング現象(微細ひび入)によって、嚢内での展張復元に支障がでるおそれがあるからである。
【0010】
而して、このように眼内への挿入時に光学部から押出方向の前方に延び出した一方の支持部は、挿入筒部の先端開口から、光学部よりも先に嚢内に送り込まれて突出し、光学部が嚢内に送り込まれる段階では、既に嚢内面に接触している。一方、嚢内に送り込まれる眼内レンズは、例えば特許文献1にも記載されているように挿入筒部内で小さく丸められている。それ故、光学部の外周部分から延び出した支持部は、反転した状態で挿入器具から押し出されて、正規位置から反転した状態で嚢内面に接触することが多かった。そして、先に送り出された支持部の嚢内面への接触点を拘束中心として光学部が展張することによって、反転状態で嚢内面に接触せしめられた支持部に倣って、光学部が反転して嚢内で展張してしまうものとの予想を得るに至った。そこで、本発明者は、かかる新たな知見に基づいて、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明の第一の態様は、光学部に一対の支持部が突出形成された眼内レンズがセットされる略筒状の器具本体と、該器具本体に対して軸方向の後方から挿し入れられて該器具本体に組み付けられる押出部材とを含んで構成されていると共に、該器具本体の軸方向中間部分には該眼内レンズがセットされるステージが設けられて、該ステージより軸方向先端側に向かって先細形状の挿入筒部が形成されており、該ステージにセットされた該眼内レンズを該押出部材で該器具本体の軸方向前方に移動させて該挿入筒部を通じて小さく変成せしめて押し出すことにより眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具において、前記ステージには、前記眼内レンズが平置状態で且つ前記一対の支持部が前記押出部材による移動方向の前後に向かって延び出した状態でセットされるようになっていると共に、前記挿入筒部には、前記押出部材によって移動せしめられる前記眼内レンズの移動方向の前方に向かって延び出した前記支持部に干渉して該支持部に対して移動方向と反対側の後方への外力を及ぼすことで該支持部を前記光学部への接近側に湾曲変形させる干渉作用部を設けており、更に、前記挿入筒部における前記干渉作用部が、該挿入筒部における幅方向の少なくとも一方の側に形成されて該挿入筒部内を移動せしめられる前記眼内レンズの前記支持部に対して係合する係合部によって構成されており、且つ、前記係合部が、前記挿入筒部における幅方向の少なくとも一方の側において内面に開口する凹部であ
り、前記挿入筒部の中空内部には、該挿入筒部内を移動せしめられる前記眼内レンズに干渉して該挿入筒部内での移動に伴って該眼内レンズの前記光学部を、その移動方向に延びる稜線又は谷線をもって上方及び下方の何れか一方に凸となる山形又は谷形に折畳み変形させる変形ガイド手段が設けられている一方、該挿入筒部に設けられた前記干渉作用部における前記支持部の干渉面には、該眼内レンズの移動方向の前方に行くに従って、該変形ガイド手段によって変形される該光学部における凸側と反対の凹側に向かって次第に傾斜する傾斜が付されており、該干渉面に付された該傾斜の案内作用により、折畳み変形される該眼内レンズの該光学部の凹側に向かって該支持部が入り込むように変形案内されるようになっていることを、特徴とする。
【0012】
本態様の眼内レンズ挿入器具では、ステージにセットされた眼内レンズを押出部材で器具本体の前方に移動させる際、光学部から前方に延び出した一方の支持部が、干渉作用部への干渉作用で光学部側に積極的に湾曲変形される。それ故、器具本体の挿入筒部の先端開口部から眼内レンズが押し出される際、前方の支持部が光学部から前方に延び出して大きく突出されることが抑えられ、光学部からの支持部の前方への突出量が小さくされる。これにより、挿入筒部から押し出されて嚢内で光学部が展開変形する際に、光学部の展開に先立って支持部が嚢内面に押し付けられることが回避され、或いは光学部の展開に先立って嚢内面に押し付けられる支持部の当接力が小さくされる。従って、光学部の展開に際して、支持部の嚢内面への押付点を中心とした光学部の回転を回避することが出来るのであり、その結果、眼内挿入時における眼内レンズの光学部反転が効果的に防止されるのである。
【0013】
そして、このように眼内挿入時の光学部反転が防止されることから、施術に際して眼内レンズ挿入器具を回転させる等の高度な熟練操作が必要なくなり、施術作業が容易となって、施術者の負担軽減や操作ミスの低減が達成される。また、患者にとっても、手術を受けるに際しての創口への侵襲軽減や危険負担の軽減が達成される。
【0014】
また、本態様の眼内レンズ挿入器具では、挿入筒部の幅方向の中央部分を避けて、幅方向の端部側に、干渉作用部としての係合部が形成される。それ故、ステージに載置される眼内レンズが挿入筒部で小さく変形されて押し出される際にも、眼内レンズの光学部が通過することが予想される挿入筒部の中央部分を避けて係合部が形成されることとなり、係合部による光学部への悪影響が回避される。なお、本態様において好適には、ステージから繋がる挿入筒部の入口側における断面漸変縮小部分がステージの幅方向に広がる扁平断面形状とされる。そして、この扁平断面形状とされた断面漸変縮小部分における幅方向の少なくとも一方の側に係合部が設けられる。
【0015】
また、本態様における係合部は、好適には、挿入筒部における幅方向の両側に形成される。これにより、例えば光学部から周方向一方の側に湾曲して「し」字形状で延び出す一対の支持部が形成されている場合、即ち光学部の両側に延び出す一対の支持部が全体として「S」字形状とされている場合に、光学部から延び出す支持部の方向が何れの場合でも同様に作用し得る係合部が実現可能となる。
【0016】
更にまた、本態様の眼内レンズ挿入器具では、挿入筒部の内面に開口する凹部を設けることにより、この凹部の開口縁部を利用して、眼内レンズの支持部に対して係合する係合部を構成することが出来る。このように、凹部の開口縁部を利用することで、挿入筒部の内周面への突出を回避し又は小さく抑えつつ、干渉作用部としての係合部を設けることが可能となることから、挿入筒部の断面積の減少を回避又は軽減して光学部の通過への悪影響を回避し得る係合部が実現可能となる。
上記本発明の第一の態様に係る眼内レンズ挿入器具においては、前記挿入筒部の中空内部には、該挿入筒部内を移動せしめられる前記眼内レンズに干渉して該挿入筒部内での移動に伴って該眼内レンズの前記光学部を、その移動方向に延びる稜線又は谷線をもって上方及び下方の何れか一方に凸となる山形又は谷形に折畳み変形させる変形ガイド手段が設けられている一方、該挿入筒部に設けられた前記干渉作用部における前記支持部の干渉面には、該眼内レンズの移動方向の前方に行くに従って、該変形ガイド手段によって変形される該光学部における凸側と反対の凹側に向かって次第に傾斜する傾斜が付されており、該干渉面に付された該傾斜の案内作用により、折畳み変形される該眼内レンズの該光学部の凹側に向かって該支持部が入り込むように変形案内されるようにした構成が採用されている。
本態様によれば、干渉作用部の干渉面に特定方向への傾斜が付されているから、この干渉面に対して後方から押し付けられる支持部が、干渉面の傾斜に沿って、変形される光学部の凹側となる一方の面側に向かって押されつつ、光学部に向かって接近する方向に湾曲変形せしめられる。その結果、前方に延び出した支持部が光学部に接近して重なり合った場合でも、湾曲変形された光学部の凸側の上に支持部が乗ってしまって、挿入筒部の内周面と光学部の凸側の面との間で支持部が強く挟まれることに起因して、眼内レンズの押し出し抵抗が大きくなり過ぎてしまう等の不具合が効果的に防止される。要するに、湾曲変形された光学部の凹側には、凸側に比して隙間が出来易く、この隙間に対して支持部を巧く入り込ませて、支持部を湾曲状態に保持させつつ、眼内レンズの押出抵抗を小さく抑えることが可能となるのである。
特に、支持部の先端を、湾曲変形された光学部の凹側に存在する隙間に入り込ませることで、光学部を利用して支持部を湾曲状態に抱き込むように保持させるタッキングが実現可能となる。そして、このようなタッキングを積極的に生ぜしめさせることで、挿入筒部の先端開口部から嚢内に押し出された眼内レンズにおいて、光学部が展張開始するまで、支持部を湾曲状態に一層確実に保持させておくことが出来、光学部に先立つ支持部の突出に起因すると考えられる嚢内での光学部の反転をより効果的に抑えることが可能となる。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る眼内レンズ挿入器具において、前記ステージにセットされる前記眼内レンズが、前記光学部に対して前記一対の支持部が一体成形されたワンピース構造とされているようにしたものである。
すなわち、本発明は、光学部とは別体形成された支持部を光学部に対して後固着したスリーピース構造等の眼内レンズの挿入器具にも適用可能であることは勿論であるが、特に、本態様のとおり、ワンピース構造の眼内レンズを挿入施術するのに用いられる眼内レンズ挿入器具に対して、好ましく適用される。蓋し、ワンピース構造の眼内レンズでは、光学部と同じ軟質材料で支持部が形成されることから、光学部より硬質の材料で支持部が形成されることが多いスリーピース構造の眼内レンズに比して、支持部の弾性復元力が小さく、且つ支持部の断面積が大きくされている。それ故、支持部の断面積、特に支持部の厚さ寸法が光学部の外周縁部の厚さ寸法よりも大きくされているワンピース構造の眼内レンズでは、支持部に対して係合して湾曲外力を及ぼし得る干渉作用部を、光学部への引っ掛かり等の悪影響を回避しつつ、容易に形成することが出来る。しかも、挿入筒部から押し出された眼内レンズにおける支持部の復元(展張)速度も抑えられることから、支持部の湾曲量をそれ程大きくしなくても、光学部の展張に先立つ支持部の嚢内への押し付けを軽減乃至は回避して、光学部の嚢内での反転を回避することが可能となるのである。
【0017】
本発明の第
一の
参考態様は、光学部に一対の支持部が突出形成された眼内レンズがセットされる略筒状の器具本体と、該器具本体に対して軸方向の後方から挿し入れられて該器具本体に組み付けられる押出部材とを含んで構成されていると共に、該器具本体の軸方向中間部分には該眼内レンズがセットされるステージが設けられて、該ステージより軸方向先端側に向かって先細形状の挿入筒部が形成されており、該ステージにセットされた該眼内レンズを該押出部材で該器具本体の軸方向前方に移動させて該挿入筒部を通じて小さく変成せしめて押し出すことにより眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具において、前記ステージには、前記眼内レンズが平置状態で且つ前記一対の支持部が前記押出部材による移動方向の前後に向かって延び出した状態でセットされるようになっていると共に、前記挿入筒部には、前記押出部材によって移動せしめられる前記眼内レンズの移動方向の前方に向かって延び出した前記支持部に干渉して該支持部に対して移動方向と反対側の後方への外力を及ぼすことで該支持部を前記光学部への接近側に湾曲変形させる干渉作用部を設けており、更に、前記挿入筒部における前記干渉作用部が、該挿入筒部における幅方向の少なくとも一方の側に形成されて該挿入筒部内を移動せしめられる前記眼内レンズの前記支持部に対して係合する係合部によって構成されており、且つ、前記係合部が、前記挿入筒部における幅方向の少なくとも一方の側において内面上に突出する凸部であると共に、前記挿入筒部における前記ステージ側への開口部分には、該ステージから延び出す略平坦な底面が設けられており、該底面の幅方向の少なくとも一方の側で該底面から上方に離れた位置に前記凸部が形成されて、該凸部よりも該底面側に隙間が設けられていることを、特徴とする。
【0018】
本発明の第
一の
参考態様では、上記[0012]〜[0014]に記載の効果に加えて、次の効果が発揮され得る。
すなわち、第
一の
参考態様によれば、ステージから眼内レンズが送られてくる挿入筒部の底面において、その幅方向端部近くに形成される凸部が底面から上方に離れて形成されており、当該凸部の形成位置でも、挿入筒部の底面の幅方向寸法が大きく確保される。それ故、かかる挿入筒部の底面の幅方向両側縁部では、底面上を滑らされて送られて来た眼内レンズの光学部の外周縁部が、凸部の下側に設けられた隙間を通るようにして逃がされ、凸部に対する光学部の引っ掛かり等の不具合が軽減又は回避される。
【0019】
また、本態様における係合部は、好適には、挿入筒部における幅方向の両側に形成される。これにより、例えば光学部から周方向一方の側に湾曲して「し」字形状で延び出す一対の支持部が形成されている場合、即ち光学部の両側に延び出す一対の支持部が全体として「S」字形状とされている場合に、光学部から延び出す支持部の方向が何れの場合でも同様に作用し得る係合部が実現可能となる。
【0020】
また、本発明の第
一の
参考態様においては、前記凸部を、前記挿入筒部の内面上への突出方向とは反対に該挿入筒部の内面上への突出高さが小さくなる方向へ変形可能な可撓性係止片によって構成した態様が好適に採用され得る。これにより、挿入筒部を通じて眼内レンズが押し出される場合に、容積が大きい光学部の通過に際して、可撓性係止片が光学部で押されて変形することで、挿入筒部の内面上への可撓性係止片の突出高さが小さく変化する。従って、光学部より容積が小さい前方の支持部に対しては有効な係合作用を発揮して支持部を後方に向けて湾曲させる一方、光学部に対しては挿入筒部内で逃げるように変形して、光学部に対する可撓性係止片の引っ掛かり等の不具合を防止し、光学部が挿入筒部を通り易くすることが可能となる。
【0021】
本発明の第
二の
参考態様は、光学部に一対の支持部が突出形成された眼内レンズがセットされる略筒状の器具本体と、該器具本体に対して軸方向の後方から挿し入れられて該器具本体に組み付けられる押出部材とを含んで構成されていると共に、該器具本体の軸方向中間部分には該眼内レンズがセットされるステージが設けられて、該ステージより軸方向先端側に向かって先細形状の挿入筒部が形成されており、該ステージにセットされた該眼内レンズを該押出部材で該器具本体の軸方向前方に移動させて該挿入筒部を通じて小さく変成せしめて押し出すことにより眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具において、前記ステージには、前記眼内レンズが平置状態で且つ前記一対の支持部が前記押出部材による移動方向の前後に向かって延び出した状態でセットされるようになっていると共に、前記挿入筒部には、前記押出部材によって移動せしめられる前記眼内レンズの移動方向の前方に向かって延び出した前記支持部に干渉して該支持部に対して移動方向と反対側の後方への外力を及ぼすことで該支持部を前記光学部への接近側に湾曲変形させる干渉作用部を設けており、更に、前記挿入筒部における前記干渉作用部が、該挿入筒部の内面において、該挿入筒部内を移動せしめられる前記眼内レンズの前記支持部が接触する領域に設けられた粗面部によって構成されていることを、特徴とする。
【0022】
本発明の第
二の
参考態様では、上記[0012]および[0013]に記載の効果に加えて、次の効果が発揮され得る。
すなわち、本態様によれば、眼内レンズが挿入筒部内を前方に移動する際、支持部に対する摩擦抵抗が粗面部によって大きくされて、かかる摩擦抵抗に基づいて支持部が後方に湾曲されて光学部側に向かって変形せしめられる。このように粗面部による摩擦抵抗を利用することにより、干渉作用部の突出量を抑えつつ、場合によっては干渉作用部を挿入筒部の内周面から突出させることなく、支持部に対して後方への外力を及ぼし得る干渉作用部が実現可能となる。そして、挿入筒部内周面への干渉作用部の突出量を小さくすることで、挿入筒部を通じて押し出される光学部への干渉作用部の引っ掛かり等の不具合を回避することが出来る。
【0023】
本発明の第
三の
参考態様は、光学部に一対の支持部が突出形成された眼内レンズがセットされる略筒状の器具本体と、該器具本体に対して軸方向の後方から挿し入れられて該器具本体に組み付けられる押出部材とを含んで構成されていると共に、該器具本体の軸方向中間部分には該眼内レンズがセットされるステージが設けられて、該ステージより軸方向先端側に向かって先細形状の挿入筒部が形成されており、該ステージにセットされた該眼内レンズを該押出部材で該器具本体の軸方向前方に移動させて該挿入筒部を通じて小さく変成せしめて押し出すことにより眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具において、前記ステージには、前記眼内レンズが平置状態で且つ前記一対の支持部が前記押出部材による移動方向の前後に向かって延び出した状態でセットされるようになっていると共に、前記挿入筒部には、前記押出部材によって移動せしめられる前記眼内レンズの移動方向の前方に向かって延び出した前記支持部に干渉して該支持部に対して移動方向と反対側の後方への外力を及ぼすことで該支持部を前記光学部への接近側に湾曲変形させる干渉作用部を設けており、更に、前記挿入筒部における前記干渉作用部が、該挿入筒部における高さ方向の少なくとも一方の側に形成されて該挿入筒部内を移動せしめられる前記眼内レンズの前記支持部に対して係合し、且つ係合後の変形によって該挿入筒部内への突出量が小さくされて、該眼内レンズの前記光学部の通過を許容する可撓性突状によって構成されていることを、特徴とする。
【0024】
本発明の第
三の
参考態様では、上記[0012]および[0013]に記載の効果に加えて、次の効果が発揮され得る。
すなわち、本態様を構成する可撓性突状は、支持部が係合する際には挿入筒部内に大きく突出して支持部の係合を確実とする一方、光学部が通過する際には挿入筒部内への突出量を小さくして光学部の移動を支障なく許容することが可能となる。特に、かかる可撓性突状は、支持部の当接で押されて変形することから、変形状態においても支持部が効果的に係合することとなり、支持部を光学部に向けて一層確実に湾曲変形させることが可能となる。
【0025】
本発明の第
四の
参考態様は、光学部に一対の支持部が突出形成された眼内レンズがセットされる略筒状の器具本体と、該器具本体に対して軸方向の後方から挿し入れられて該器具本体に組み付けられる押出部材とを含んで構成されていると共に、該器具本体の軸方向中間部分には該眼内レンズがセットされるステージが設けられて、該ステージより軸方向先端側に向かって先細形状の挿入筒部が形成されており、該ステージにセットされた該眼内レンズを該押出部材で該器具本体の軸方向前方に移動させて該挿入筒部を通じて小さく変成せしめて押し出すことにより眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具において、前記ステージには、前記眼内レンズが平置状態で且つ前記一対の支持部が前記押出部材による移動方向の前後に向かって延び出した状態でセットされるようになっていると共に、前記挿入筒部には、前記押出部材によって移動せしめられる前記眼内レンズの移動方向の前方に向かって延び出した前記支持部に干渉して該支持部に対して移動方向と反対側の後方への外力を及ぼすことで該支持部を前記光学部への接近側に湾曲変形させる干渉作用部を設けており、更に、前記挿入筒部の中空内部に突入させられて、該挿入筒部内を移動せしめられる前記眼内レンズの前記支持部に対して当接せしめられると共に、該支持部への当接で該支持部が変形せしめられた後に該挿入筒部の中空内部への突入量を小さくされて、該挿入筒部を通じての該眼内レンズの移動を許容する突入当接部材によって、前記挿入筒部における前記干渉作用部が構成されていることを、特徴とする。
【0026】
本発明の第
四の
参考態様では、上記[0012]および[0013]に記載の効果に加えて、次の効果が発揮され得る。
すなわち、本態様を構成する突入当接部材は、支持部に干渉して支持部を湾曲させる際に挿入筒部内に大きく突出させる一方、当該突出部位を光学部が通過する際に挿入筒部内への突出高さを小さくして光学部の通過をスムーズに許容させるようにすることが出来る。特に、挿入筒部内への突出高さを調節出来ることから、使用する眼内レンズや潤滑剤等の性状に応じて、目的とする支持部への干渉作用と光学部の通過許容とが両立して実現されるように適宜に調節することが可能となる。また、光学部の通過時には、突入当接部材を挿入筒部から抜き取ったり、突入当接部材の先端面を挿入筒部の内面と面一とすることにより、光学部の通過に対する突入当接部材の悪影響を完全に回避することも可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、眼内レンズが挿入筒部内を前方に移動する際、干渉作用部が支持部に干渉して、支持部が光学部への接近側に湾曲変形させられ、挿入筒部から眼内に押し出される際の支持部の光学部からの突出量を小さく抑えることができる。これにより、挿入筒部から眼内レンズが押し出されて展張するに先立って、支持部が突出して眼内組織に押し付けられることを軽減乃至は回避することが出来る。その結果、支持部の眼内組織への押付点を中心として発生すると考えられる光学部の眼内での展張時における反転を防止することが可能となるのである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0035】
図1及び
図2には、本発明の第一の実施形態としての眼内レンズ挿入器具10が示されている。眼内レンズ挿入器具10は、後述する眼内レンズ12がセットされる略筒状の器具本体14に対して、押出部材16が挿し入れられて組み付けられた構造とされている。なお、以下の説明では、
図1の左方向を眼内レンズ挿入器具10の軸方向の前方とし、
図1の右方向を軸方向の後方とする。また、
図2の上下方向を高さ方向とすると共に、
図1の上下方向を幅方向とする。
【0036】
より詳細には、眼内レンズ12は、従来から公知の眼内レンズ12であり、
図3及び
図4に示されているように、光学部18に対して一対の支持部20a,20bが一体形成されたワンピース構造とされている。光学部18は、光学特性を与えるものであり、図示のものは、水晶体嚢内に配された状態で嚢内の角膜側に位置する光学部前面22と硝子体側に位置する光学部後面24とが互いに異なる曲率で形成されている。
【0037】
一対の支持部20a,20bは、光学部18の径方向で対向する外周部分から、光学部18を挟んで互いに略反対方向となる外周側に向かって突出している。また、一対の支持部20a,20bの突出先端部分は、光学部18の周方向で互いに同じ方向に向かって湾曲して延びている。なお、本実施形態では、支持部20a,20bの厚さ寸法(光学部18の光軸方向の寸法):Hが、光学部18の外周縁部の厚さ寸法:Tよりも大きくされている。
【0038】
このような眼内レンズ12がセットされる器具本体14は、光透過性を有する硬質の合成樹脂材料で形成されており、略矩形断面形状で軸方向にストレートに延びる中心孔26が形成された本体筒部28を備えている。本体筒部28よりも軸方向前方には、ステージ30が設けられている。
【0039】
ステージ30には、上方に開口して軸方向に延びる凹状溝32が本体筒部28の中心孔26と連通状態で形成されている。即ち、ステージ30は、本体筒部28の断面における一つの長辺部分を取り除いた形状で、軸方向前方に向かって延長させたような形状とされている。そして、凹状溝32の底面が、レンズ載置面34とされており、このレンズ載置面34は、眼内レンズ12の光学部18の外径寸法よりも僅かに大きな幅寸法で広がる平坦面とされている。また、レンズ載置面34の長さ寸法(軸方向の寸法)は、眼内レンズ12の支持部20a,20bを含む最大長寸法(
図3の左右方向寸法)よりもやや大きくされている。これにより、レンズ載置面34の略中央部分において、眼内レンズ12が、凹状溝32の両側壁に当たることなく、自由状態で平置きされるようになっている。また、かかる平置き状態で、眼内レンズ12が光学部18の中心軸回りで回転しようとすると、支持部20a,20bが凹状溝32の両側壁に当たって回転を阻止されるようになっている。
【0040】
また、ステージ30には、レンズ載置面34と反対の外周面から担持部材35が取り外し可能に組み付けられている(
図10,11も参照)。担持部材35は、レンズ載置面34を形成する凹状溝32の底壁部の外面に重ね合わされるベース板部35aを備えており、このベース板部35aには、凹状溝32の底壁部への重ね合わせ面上に突出する複数の作用突部36a,36a,36b,36bが形成されている。また、ベース板部35aには、凹状溝32の底壁部への重ね合わせ面と反対の外方に向かって延び出して広がる操作片35bが一体形成されている。
【0041】
そして、担持部材35は、そのベース板部35aがステージ30の凹状溝32の底壁部に対して外側から重ね合わされるようにして、本体筒部28に組み付けられている。また、担持部材35が組み付けられるステージ30の底壁部には、複数の貫通孔37a,37a,37b,37bが形成されている。そして、本体筒部28に組み付けられた担持部材35に突設された複数の作用突部36a,36a,36b,36bが、これらの貫通孔37a,37a,37b,37bを通じて、ステージ30の底壁部の内面に突出されている。
【0042】
なお、作用突部36の数や形状、形成位置は、特に限定されるものでない。好適には、ステージ30にセットされる眼内レンズ12の形状や大きさ等を考慮して、眼内レンズ12をステージ30の底壁部から浮いた状態で持ち上げて支持したり、眼内レンズ12をステージ30内で位置決めしたり、或いはまた本体筒部28に対する押出部材16の押込方向への変位を阻止したりするのに適当なように設定され得る。そして、それら複数の作用突部36の各位置及び各形状に対応して、ステージ30における複数の貫通孔37の各位置及び各形状が設定される。特に本実施形態では、眼内レンズ12を持ち上げて支持する二つの作用突部36a,36aと、眼内レンズ12を位置決めする二つの作用突部36b,36bが設けられている。
【0043】
また、担持部材35は、本体筒部28への組付状態に安定して保持されるように、解除可能な係止機構等が設けられることが望ましい。即ち、作用突部36を貫通孔37へ圧入させて両者間の摩擦力で担持部材35を本体筒部28への組付状態に保持させること等も可能であるが、例えば作用突部36に爪部を設けて、この爪部を貫通孔37に係止させること等により、担持部材35を本体筒部28への組付状態に保持する係止機構を構成することが望ましい。
【0044】
一方、ステージ30の幅方向一方側(
図1の上方側)には、ヒンジ部38でステージ30と連結された蓋体40が設けられており、凹状溝32の上側開口が蓋体40で覆蓋出来るようになっている。蓋体40には、凹状溝32の上側開口を覆蓋した状態で、レンズ載置面34に向かって突出して軸方向に延びる一対の左右案内板部42,42が設けられている。また、蓋体40には、一対の左右案内板部42,42の間において、左右案内板部42,42と同じ方向に突出して左右案内板部42,42と平行に延びる中央案内板部44が設けられている。これにより、蓋体40が閉じられた状態で、眼内レンズ12の上方への過大な変位が制限されて、眼内レンズ12を後述するノズル部46へ滑らかに案内することが出来るようになっている。
【0045】
器具本体14においてステージ30よりも軸方向前方には、ノズル部46が設けられている。ノズル部46は、
図5〜7に示されているように、ステージ30側から順に基端部48,中間部50,先端部52とされており、全体として基端側から先端側へ行くに従って先細となる外形形状を呈している。基端部48と先端部52は、略一定の断面形状で軸方向にストレートに延びている。一方、中間部50は、軸方向前方へ行くに従って次第に断面形状が小さくなる先細形状の断面漸変縮小部分とされている。
【0046】
ノズル部46には、軸方向の全長に亘って延びる通孔54が凹状溝32と連通状態で形成されており、通孔54の基端側開口部56の幅寸法は、凹状溝32の溝幅寸法(レンズ載置面34の幅寸法)と略同じ大きさとされている。また、通孔54は、基端側開口部56において半月形状又は鏡餅形状の開口断面を有しているが、先端側開口部58へ行くに従って次第に略オーバル形状の開口断面に変形している。これにより、眼内レンズ12は、非変形の自由状態で中間部50を移動することが困難となっており、中間部50に送り込まれた段階で光学部18が湾曲変形されるようになっている。なお、ノズル部46の通孔54は、
図7に示されているとおり、ステージ30の幅方向と同じ
図5中の上下方向を幅方向とし、
図6中の上下方向を高さ方向とする、横広がりの扁平な断面形状とされている。そして、その扁平率(扁平度)は、先端側開口部58より基端側開口部56の方が大きくされており、中間部50において次第に変化している。
【0047】
また、通孔54には、レンズ載置面34から段差無く連続する底面60と、底面60の上方に位置する天面62が形成されている。底面60には、軸方向前方へ行くに従って次第に上る傾斜面64が基端部48と中間部50に跨って形成されている。底面60は、傾斜面64を挟んだ軸方向両側部分が何れも平坦面とされている。一方、天面62は、軸方向の全長に亘って段差の無い平坦面とされている。
【0048】
基端部48の底面60の幅方向中央部分には、天面62に向けて突出する一対のガイドレール66,66が形成されている。ガイドレール66,66は、所定寸法に亘って軸方向に直線状に延びる突条とされており、その先端部分(軸方向の前方側端部)が傾斜面64の先端(軸方向の前方端)に位置している。なお、ガイドレール66,66の先端部分は、傾斜面64が軸方向前方へ行くに従って次第に上っていることにより、先端へ行くに従って底面60に次第に吸い込まれるようにして、底面60と同じ高さ位置となっている。一方、ガイドレール66,66の後端部分は、基端部48の後端を越えてレンズ載置面34にまで延び出している。このようなガイドレール66,66は、底面60の幅方向中心を挟んで幅方向に所定距離を隔てて互いに略平行に形成されている。
【0049】
基端部48の天面62における幅方向の両端部には、それぞれ、底面60に向けて突出するサイドレール68が形成されている。サイドレール68は、所定寸法に亘って軸方向に直線状に延びる突条とされており、その先端部分(軸方向の前方側端部)がガイドレール66,66の先端部分と略同じ軸方向位置にある。なお、サイドレール68の先端部分は、先端(軸方向の前方)へ行くに従ってノズル部46の内面に次第に吸い込まれるようにして、ノズル部46の内面と等しくされている。一方、サイドレール68の後端部分は、基端部48の後端となる基端側開口部56に位置している。このようなサイドレール68は互いに略平行に形成されている。
【0050】
中間部50の天面62における幅方向の両端部には、それぞれ、干渉作用部(係合部)としての凸部70が傾斜面64よりも軸方向前方に位置する平坦な底面60に向けて突出形成されている。即ち、本実施形態では、中間部50を含んで構成されたノズル部46によって、挿入筒部が構成されている。
【0051】
凸部70は、所定寸法に亘って軸方向に直線状に延びる突条とされており、中間部50と一体形成されている。なお、凸部70は中間部50と一体形成されている必要はなく、中間部50と別体形成された部材が中間部50の天面62に対して接着剤等で後固着されたものであっても良い。
【0052】
凸部70の先端部分(軸方向の前方側端部)は、先端(軸方向の前方)へ行くに従って中間部50の天面62に次第に吸い込まれるようにして、中間部50の天面62と等しくされている。これにより、凸部70の天面62からの突出高さは、軸方向後方側が最も大きくされており、軸方向後方から前方へ行くに従って次第に小さくなっている。
【0053】
凸部70は、底面60からの高さが略同じ位置において、互いに略平行に形成されており、これら凸部70における器具本体14の幅方向での離隔距離は、凸部70の全長に亘って略一定とされている。なお、一対の凸部70,70における器具本体14の幅方向での離隔距離は、先端部52における通孔54の幅寸法よりは大きくされている。
【0054】
凸部70には、軸方向後方端において、後述の如くノズル部46内を移動する眼内レンズ12の移動方向前方側の支持部20aと干渉する干渉面72が形成されている。干渉面72は、軸方向前方へ行くに従って次第に底面60へ近づく傾斜面とされており、凸部70の高さ方向の略全長に亘って形成されている。
【0055】
凸部70は、中間部50の底面60から上方に離れた位置にあり、凸部70と中間部50の底面60との間には、所定の隙間74が形成されている。この隙間74の寸法:Sは、眼内レンズ12における光学部18の外周縁部の厚さ寸法:Tよりも大きくされている。
【0056】
このような器具本体14の軸方向後方から、押出部材16が中心孔26に挿し入れられて、器具本体14に組み付けられる。押出部材16は、
図8及び
図9に示されているように、略ロッド形状を呈しており、軸方向前方側に位置する作用部76と、作用部76よりも軸方向後方側に位置する挿通部78を備えている。
【0057】
作用部76は、略オーバル形状の一定の断面形状をもって軸方向にストレートに延びる棒形状とされており、その先端面は、軸直角方向に広がるレンズ押圧面80とされている。なお、作用部76の幅方向両側には、薄板状の補強リブ82が設けられている。一方、挿通部78は、全体としてH字状断面でストレートに延びる棒形状とされており、その後端には、押出部材16を押し込む際に押込力を加える押圧板84が軸直角方向に広がって一体形成されている。
【0058】
このような押出部材16は、作用部76側から本体筒部28に挿入されることで、器具本体14に組み付けられる。これにより、眼内レンズ挿入器具10が得られる。なお、押出部材16を器具本体14に組み付けた際、挿通部78に設けられた係止爪86が本体筒部28に形成された係止孔88に係止されることで、器具本体14に対する押出部材16の初期位置が設定されている。この押出部材16は、係止爪86の係止孔88への係止作用により、本体筒部28から抜出不能とされており、且つ本体筒部28への押込方向には所定の抵抗力をもって変位可能とされている。
【0059】
また、上述の如く押出部材16が器具本体14に対して初期位置に組み付けられた眼内レンズ挿入器具10には、眼内レンズ12がセットされている。
【0060】
具体的には、器具本体14において蓋体40が開けられて開口されたステージ30の凹状溝32に対して、眼内レンズ12を収容することで、眼内レンズ12がステージ30に配されている。特に本実施形態では、眼内レンズ12は、光学部後面24を下側にして、凹状溝32に収容されており、ステージ30に組み付けられた担持部材35の作用突部36a,36a,36b,36bによって支持及び位置決めされてセットされている。そして、二つの作用突部36a,36aの上端面に対して、眼内レンズ12の支持部20a,20bの基端部分が載置されて、眼内レンズ12の実質的に全体が凹状溝32の底面から持ち上げられ、底面に対する当接応力の光学部18への作用が可及的に回避された状態でセットされている。
【0061】
また、二つの作用突部36a,36aで支持された眼内レンズ12は、光学部18への作用応力や歪が軽減された自由状態に保持されており、一対の支持部20a,20bが、器具本体14の軸方向両側(前後方向)に向かって延び出している。そして、二つの作用突部36b,36bは、眼内レンズ12の光学部18と支持部20a,20bの間に位置しており、作用突部36b,36bと光学部18又は支持部20a,20bとの係合作用によって、眼内レンズ12が軸方向(凹状溝32の溝方向)に位置決めされている。また、光学部18よりも軸方向後方に位置する支持部20bは、初期位置にある押出部材16のレンズ押圧面80から押出方向の前方に僅かに離隔して位置している。
【0062】
このようにして眼内レンズ12がステージ30の凹状溝32内に収容された後、蓋体40が閉じられることにより、凹状溝32の上側開口が蓋体40で覆蓋される。これにより、
図10及び
図11に示されているように、眼内レンズ12が器具本体14内に収容状態でセットされる。蓋体40が閉じられた状態では、蓋体40に設けられた係合片90がステージ30に設けられた係合切欠92に係合されており、蓋体40が閉状態に維持されている。
【0063】
なお、押出部材16は、眼内レンズ12をステージ30の凹状溝32内に収容する前に器具本体14に挿入されて初期位置にセットされていても良いが、眼内レンズ12を凹状溝32内に収容した後や、更に蓋体40を閉じた後に押出部材16を器具本体14に挿入しても良い。
【0064】
その後、眼内レンズ12をセットした眼内レンズ挿入器具10は、密封ケース等によって梱包されて保管および出荷されて提供される。その際、密封ケースへの梱包の前や後の工程、或いは梱包の前後の両方の工程において、適当な殺菌処理等が施される。
【0065】
因みに、このようにして提供された眼内レンズ挿入器具10を用いて眼内レンズ12を眼内に挿入するに際しては、先ず、施術現場で梱包から取り出した眼内レンズ挿入器具10において、担持部材35をステージ30の下方に引き抜き、器具本体14から取り外す。これにより、器具本体14のステージ30の底面であるレンズ載置面34上に、眼内レンズ12が、自由な展張状態で直接に載置される。要するに、担持部材35に形成された複数の作用突部36a,36a,36b,36bによる眼内レンズ12に対する支持及び位置決めが解除されて、ステージ30のレンズ載置面34上で移動可能とされる。かかる状態下、眼内レンズ12の光学部後面24の中央部分は、ガイドレール66,66に接触して、載置されている。
【0066】
なお、蓋体40に形成された注入孔94を通じて、適当な潤滑剤をステージ30やノズル部46の内部に注入しても良い。これにより、後述の如く移動方向前方側に位置する支持部20aが湾曲された状態を、支持部20aの周囲に存在する潤滑剤の粘性や表面張力等を利用して一層効果的に維持することも可能となる。
【0067】
担持部材35を器具本体14から取り外したら、ノズル部46の先端側開口部58を眼組織に設けた切開創に挿入する。そして、切開創へのノズル部46の挿入状態を維持しつつ、押出部材16を器具本体14に押し込む。これにより、眼内レンズ12の軸方向後方(移動方向後方)に位置する支持部20bに押出部材16のレンズ押圧面80が当接されて、眼内レンズ12が押出部材16で押されながらノズル部46に向けて移動する。
【0068】
基端部48に送り込まれた眼内レンズ12は、
図12(a)に示されているように、光学部後面24の中央部分がガイドレール66,66に接触していると共に、光学部前面22において押出方向に直交する方向の両側端部にサイドレール68,68が接触している。これにより、光学部後面24の中央部分には天面62に向かう外力が及ぼされる一方、光学部前面22において押出方向に直交する方向の両側端部には、底面60に向かう外力が及ぼされる。その結果、眼内レンズ12の光学部18は、光学部前面22が天面62に向けて凸となると共に稜線が眼内レンズ12の移動方向に延びる山折状態に変形される。なお、
図12では、眼内レンズ12の光学部18が山折状態に変形される様子をモデル的に示しており、支持部20a,20bの図示は省略してある。
【0069】
基端部48で山折状態の初期変形が及ぼされた眼内レンズ12は、
図12(b)に示されているように、中間部50を通じてより小さく変形されつつ、ノズル部46の先端側開口部58に向けて送り出される。その際、光学部18は通孔54の内面形状に沿って変形され、山折状態が更に進められて、光学部前面22が天面62に当接した状態で丸められる。そして、先端部52に行くに従って次第に略オーバル形状とされた通孔54により、光学部18は、
図12(c)に示されているように、ノズル部46の先端部52において、略オーバル形状に小さく丸められる。
【0070】
すなわち、本実施形態では、一対のガイドレール66,66と、一対のサイドレール68,68と、ノズル部46に形成された特定形状の通孔54を含んで変形ガイド手段構成されている。
【0071】
なお、変形ガイド手段は、本実施形態に示した各一対のガイドレール66,66及びサイドレール68,68と通孔54とによって構成されたものに限定されない。例えば、ガイドレール66やサイドレール68を備えていない通孔54でも、その断面形状や押出方向の変化態様などを適当に設定することにより、眼内レンズ12を山形に折り畳み変形させる変形ガイド手段を構成することも可能であるし、通孔54内に部分的な凸部や凹部を形成して変形ガイド手段を構成すること等も可能である。
【0072】
また、変形ガイド手段は、上述の如く光学部18を山折状態に変形するものだけでなく、光学部後面24が底面60に向けて凸とされて谷線が眼内レンズ12の移動方向に延びる谷折状態に光学部18を変形させるものであっても良い。谷折状態を実現する変形ガイド手段としては、例えば、
図13に示されているように、上記実施形態の通孔54が上下逆になった断面形状の通孔等が採用され得る。また、かかる変形ガイド手段では、
図14に示されているように、凸部70の干渉面72を、軸方向前方へ行くに従って次第に天面62側へ近づく傾斜面とすることが望ましい。
【0073】
而して、基端部48に送り込まれた眼内レンズ12は、
図15や
図16、更には、
図17(a)に示されているように、軸方向前方(移動方向前方)に位置する支持部20aの先端部分が幅方向他方側の凸部70に接触する。その際、支持部20aの先端部分は、
図18に示されているように、凸部70に形成された干渉面72に接触している。これにより、支持部20aの先端部分は、眼内レンズ12の先端側開口部58への移動に伴って、干渉面72上を底面60に向かって摺動する。その結果、支持部20aの先端部分が光学部18の凹側へ移動する。
【0074】
移動方向前方に位置する支持部20aの先端部分が凸部70に接触し始めた状態から眼内レンズ12が更に押し込まれると、
図17(b)や
図19に示されているように、支持部20aの先端部分が光学部18の外周縁部に接触する。その際、支持部20aの基端部分は、他方の凸部70と接触している。なお、移動方向後方側の支持部20bは、山折状態に変形された光学部18の下側(凹側)に潜り込み始める。
【0075】
この状態から眼内レンズ12が更に押し込まれると、
図17(c)に示されているように、先端部分が光学部18の外周縁部に接触している移動方向前方側の支持部20aが先端側開口部58に向かって凸となるように湾曲される。その際、
図12(b)に示されているように、山折状態に変形している光学部18の外周縁部は、凸部70と底面60の間に形成された隙間74を通過するようになっている。なお、移動方向後方側の支持部20bは、山折状態に変形された光学部18の凹側に潜り込んでおり、先端側開口部58に向かって延び出している。
【0076】
そして、眼内レンズ12は、
図17(d)に示されているように、移動方向前方に位置する支持部20aの先端部分が光学部18の外周縁部に接触するまで支持部20aが湾曲変形された状態で、ノズル部46内を先端側開口部58まで移動する。
【0077】
なお、支持部20aの湾曲変形は、図示の如く先端部分が光学部18の外周縁部に接触する態様に限定されない。例えば、支持部20aの先端部分が光学部18に接触しない程度に変形量が抑えられていても良いし、反対に、支持部20aが山折状態に変形された光学部18の凹側内に入り込む程にまで大きな変形量とされても良い。支持部20aが山折状態に変形された光学部18の凹側内に入り込んで係止されるタッキング状態となる程に大きく湾曲変形させることにより、嚢内に挿入された眼内レンズ12における支持部20aの前方への延び出しを一層遅くすることが出来る。即ち、支持部20aの湾曲変形の程度は、眼内レンズ12の材質等による支持部20aの性状や使用する潤滑剤の特性等に応じて適宜に設定され得る。
【0078】
ノズル部46の先端側開口部58から押し出された眼内レンズ12は、嚢内で光学部18が展開変形する。その際、眼内レンズ12の移動方向前方に位置する支持部20aも展開変形する。これにより、光学部18の展開変形に先だって支持部20aが嚢内面に押し付けられることが回避されて、支持部20aの嚢内面への押付点を中心とした光学部18の回転を伴う展開変形が防止される。その結果、眼内レンズ12の眼内挿入時における施術者の好まない光学部18の反転が効果的に防止される。
【0079】
従って、上述の如き眼内レンズ挿入器具10を用いれば、眼内レンズ12の前後面22,24をより確実に正規方向に配することが可能となる。
【0080】
また、凸部70が中間部50の幅方向両側端部に設けられているから、眼内レンズ12を表裏反転させて(光学部前面22側を下にして)レンズ載置面34にセットした場合、支持部20aの先端部分は他方の凸部70(
図1の上方に位置する凸部70)に係合する。即ち、光学部18を表裏反転させてレンズ載置面34にセットしても、前述の如く、支持部20aに対する凸部70の干渉作用が効果的に発揮され得るのである。尤も、かかる凸部70は、中間部50の幅方向両側端部に設けられている必要はなく、例えば、レンズ載置面34にセットされる眼内レンズ12の表裏が特定されて支持部20aの延出方向が決まっているような場合には、
図20に示されているように、中間部50の幅方向の一方の端部側だけに設けられていても良い。
【0081】
また、凸部70と底面60の間に隙間74が形成されており、この隙間74に対して山折状態に変形された光学部18の外周縁部が入り込むことを許容されつつ、眼内レンズ12が前方に移動せしめられることになる。それ故、眼内レンズ12がノズル部46内を移動する際に、光学部18の外周縁部が凸部70に引っ掛かる不具合の発生が軽減乃至は回避されて、眼内レンズ12の移動抵抗力が軽減され得る。
【0082】
特に、ワンピース構造の眼内レンズ12は、一般に、光学部18と同様に軟質材料で形成された支持部20a,20bの強度等を確保するために、光学部18の外周縁部よりも支持部20a,20bの方が、光学部18の光軸方向に厚肉とされている。それ故、眼内レンズ12の移動に際して、支持部20aは、隙間74の存在下でも凸部70に対して引っ掛かって光学部18側に湾曲し易くされる一方、光学部18の外周縁部は隙間74の存在により、隙間74に入り込むことで凸部70の形成部分を通り抜け易くされる。
【0083】
さらに、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10では、眼内レンズ12が、外力による変形が及ぼされていない自由状態で且つ平置状態でセットされており、眼内挿入するために押出部材16で押し出されることに伴うノズル部46内の移動途上で、支持部20aに湾曲変形が及ぼされる。それ故、光学部18や支持部20aにおける変形状態への保持時間が短くされ得、光学部18や支持部20aに残留する応力や変形を可及的に抑えることが可能となる。しかも、光学部18を小さく変形させたり支持部20aを湾曲させたりするための特別な作業工程が必要でなく、施術者の作業労力の負担が小さい。
【0084】
次に、本発明の第二の実施形態としての眼内レンズ挿入器具96について、
図21及び
図22を参照しつつ、説明する。なお、以下に記載の第二の実施形態や後述する第三〜第八の実施形態において、第一の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位については、図中に、第一の実施形態と同一の符号を付すことにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0085】
本実施形態の眼内レンズ挿入器具96は、第一の実施形態の眼内レンズ挿入器具(10)に比して、凸部(70)の代わりに、干渉作用部(係合部)としての可撓性係止片98が設けられている。
【0086】
可撓性係止片98は、合成樹脂材料やゴム材料等の弾性変形可能な材料で形成されており、全体として帯板形状を呈している。可撓性係止片98には、長手方向一端において厚さ方向一方の側に突出する取付片100が設けられていると共に、長手方向他端において厚さ方向他方の側に突出する係合片102が設けられている。なお、係合片102は、その突出端側において、可撓性係止片98の板幅方向一方の側に延び出しており、この延出部分によって、干渉部104が構成されている。
【0087】
このような可撓性係止片98は、取付片100が基端部48の天面62の幅方向他端部分に埋め込まれることで、ノズル部46内を基端側から先端側へ延び出して配設されている。これにより、係合片102は中間部50の天面62の幅方向他端部から幅方向一方の側へ突出している。また、係合片102は、幅方向他方側で底面60の上方に位置しており、その突出端に設けられた干渉部104は、底面60へ向かって延びている。なお、干渉部104の延出寸法は、底面60に到達しない大きさとされている。これにより、干渉部104と底面60の間には、所定の隙間74が形成されている。また、干渉部104の軸方向後方側には、軸方向前方へ行くに従って底面60側へ近づく傾斜が付された干渉面106が形成されている。
【0088】
このような干渉部104に対して、ノズル部46内を移動する眼内レンズ12の移動方向前方側の支持部20aが接するようになっている。そして、干渉部104に接触した支持部20aは、干渉部104から眼内レンズ12の移動方向後方へ外力が及ぼされることで、光学部18に接近する方向へ湾曲変形される。その際、支持部20aは干渉面106上を底面60側へ摺動する。
【0089】
また、光学部18が干渉部104に接触すると、係合片102が軸方向前方側へ押されて倒れるように変形する。これにより、係合片102の天面62からの突出高さが小さくなる。その結果、係合片102を設けたことによる光学部18の引っ掛かりを効果的に回避することが出来る。なお、このことから明らかなように、本実施形態では、ノズル部46によって挿入筒部が構成されている。
【0090】
続いて、本発明の第三の実施形態としての眼内レンズ挿入器具108について、
図23及び
図24に基づいて説明する。本実施形態の眼内レンズ挿入器具108は、第一の実施形態の眼内レンズ挿入器具(10)に比して、凸部(70)の代わりに、干渉作用部(係合部)としての可撓性係止片110が設けられている。
【0091】
可撓性係止片110は、合成樹脂材料やゴム材料等の弾性変形可能な材料で形成されており、全体として帯板形状を呈している。可撓性係止片110には、長手方向一端において厚さ方向一方の側に突出する取付片112が設けられている。また、可撓性係止片110は、長手方向中間部分から他端部分に亘って、厚さ方向他方側へ湾曲されている。また、可撓性係止片110の長手方向他端部には、板幅方向一方に突出する係合片114が設けられている。
【0092】
このような可撓性係止片110は、取付片112が基端部48の天面62の幅方向一端部分に埋め込まれることで、ノズル部46内を基端側から先端側へ延び出して配設されている。係合片114は、中間部50の幅方向一方側から他方側へ湾曲しながら延び出している可撓性係止片110の長手方向他端部分の先端に設けられており、上述の如き可撓性係止片110の配設状態で、通孔54の幅方向の略中央に位置している。また、係合片114は、底面60の上方に位置しており、係合片114と底面60の間には、所定の隙間74が形成されている。また、係合片114の軸方向後方側には、軸方向前方側へ行くに従って底面60へ近づく傾斜が付された干渉面115が形成されている。
【0093】
このような係合片114に対して、ノズル部46内を移動する眼内レンズ12の移動方向前方側の支持部20aが接触するようになっている。これにより、支持部20aに移動方向後方側へ外力が及ぼされて、支持部20aが光学部18に接近する方向へ湾曲変形される。その際、支持部20aは、干渉面115上を底面60側へ摺動する。なお、このことから明らかなように、本実施形態では、ノズル部46によって挿入筒部が構成されている。
【0094】
また、光学部18が係合片114に接触すると、係合片114は光学部18に押されて中間部50の幅方向一方側へ移動する。それ故、係合片114が中間部50の幅方向中央に位置していても、光学部18の通過の妨げになることはない。
【0095】
続いて、本発明の第四の実施形態としての眼内レンズ挿入器具116について、
図25及び
図26に基づいて説明する。本実施形態の眼内レンズ挿入器具116は、第一の実施形態の眼内レンズ挿入器具(10)に比して、凸部(70)の代わりに、干渉作用部(係合部)としての凹部118が設けられている。
【0096】
凹部118は、中間部50の天面62の幅方向他端部において天面62に開口して形成されており、底面60よりも上方に位置している。凹部118は、軸方向に延びる案内面120と、案内面120よりも軸方向前方に位置して軸方向に対する傾斜方向へ延びる干渉面124を備えている。干渉面124には、軸方向前方へ行くに従って底面60へ近づく傾斜が付されている。なお、凹部118は、中間部50の天面62の幅方向両端部に形成されていても良い。
【0097】
このような凹部118に対して、ノズル部46内を移動する眼内レンズ12の移動方向前方側の支持部20aが入り込む。そして、支持部20aが干渉面124に接触すると、移動方向後方への外力が支持部20aに及ぼされて、支持部20aが光学部18に接近する方向へ湾曲変形される。その際、支持部20aは、干渉面124上を底面60側へ摺動する。なお、本実施形態では、ノズル部46によって挿入筒部が構成されている。また、支持部20aは、凹部118に入り込む際、案内面120上を摺動しても良いし、摺動しなくても良い。
【0098】
このような眼内レンズ挿入器具116においては、移動方向前方側の支持部20aと接する干渉面124が中間部50の天面62に開口する凹部118内に形成されている。それ故、光学部18の干渉面124への接触を回避することが出来る。
【0099】
続いて、本発明の第五の実施形態としての眼内レンズ挿入器具126について、
図27及び
図28に基づいて説明する。本実施形態の眼内レンズ挿入器具126は、第一の実施形態の眼内レンズ挿入器具(10)に比して、凸部(70)の代わりに、干渉作用部としての粗面部128が設けられている。
【0100】
粗面部128は、中間部50の天面62の幅方向他端部に形成されている。粗面部128は、天面62において光学部18が接触する部分(例えば、天面62の幅方向中央部分)よりも粗面とされている。これにより、粗面部128は、天面62において光学部18が接触する部分よりも接触抵抗が大きくされている。また、通孔54の断面形状が変化している途中の中間部50の天面62に粗面部128が設けられているから、粗面部128には、軸方向前方へ行くに従って底面60へ近づく傾斜が付されている。
【0101】
このような粗面部128に対して、ノズル部46内を移動する眼内レンズ12の移動方向前方側の支持部20aが接触するようになっている。そして、支持部20aと粗面部128の間での摩擦力により、支持部20aが光学部18側へ接近変位する。その際、支持部20aは粗面部128上を底面60側へ摺動する。なお、このことから明らかなように、本実施形態では、粗面部128が設けられたノズル部46によって挿入筒部が構成されている。
【0102】
このような眼内レンズ挿入器具126においては、粗面部128と天面62における光学部18の接触部分との接触抵抗の違いを利用して、移動方向前方側の支持部20aを光学部18側へ接近させるようにした。それ故、通孔54内に大きく突出して光学部18と接触する突起等が存在しない。その結果、光学部18の突起等への引っ掛かりを回避することが出来る。
【0103】
続いて、本発明の第六の実施形態としての眼内レンズ挿入器具130について、
図29及び
図30に基づいて説明する。本実施形態の眼内レンズ挿入器具130は、第一の実施形態の眼内レンズ挿入器具(10)に比して、凸部(70)の代わりに、干渉作用部としての可撓性突状132が設けられている。
【0104】
可撓性突状132は、合成樹脂材料やゴム材料等で形成されており、全体として平板形状を呈している。また、可撓性突状132は、蓋体40の軸方向前方端縁部に設けられており、蓋体40が閉じられた状態で、レンズ載置面34に向かって突出している。可撓性突状132の突出高さは、蓋体40が閉じられた状態で、レンズ載置面34に到達しない程度の大きさとされている。これにより、蓋体40が閉じられた状態で、可撓性突状132の突出端とレンズ載置面34の間には、所定の隙間74が形成されるようになっている。なお、可撓性突状132は、蓋体40と一体形成されていても良いし、蓋体40と別体形成されたものを接着剤等で後固着したものであっても良い。可撓性突状132の軸方向後端には、蓋体40が閉じられた状態で軸方向前方へ行くに従って底面60へ近づく傾斜が付された干渉面134が設けられている。
【0105】
このような可撓性突状132の干渉面134に対して、ノズル部46内を移動する眼内レンズ12の移動方向前方側の支持部20aが接触するようになっている。これにより、支持部20aに移動方向後方への外力が及ぼされて、支持部20aが光学部18に接近する方向へ湾曲変形される。その際、支持部20aは、干渉面134上を底面60側へ摺動する。また、支持部20aが干渉面134上を摺動する際、可撓性突状132は、それ自身が有する弾性によって、移動方向前方側へ湾曲変形される。そして、可撓性突状132が移動方向前方側へ湾曲変形した状態で、眼内レンズ12がノズル部46内を移動する。なお、可撓性突状132は、移動方向前方側の支持部20aと接触した状態で折れ曲がって元の形状に戻らなくても良い。また、ノズル部46内に適当な潤滑剤を入れておけば、可撓性突状132と接触しなくなっても、潤滑剤の干渉作用によって、移動方向前方側の支持部20aが光学部18に接近した状態を維持し易くなる。上述の説明から明らかなように、本実施形態では、ノズル部46だけでなく、器具本体14においてレンズ載置面34に載置された眼内レンズ12よりも前方に位置する部分(ステージ30と蓋体40の軸方向前方側端部)によって、挿入筒部が構成されている。
【0106】
なお、可撓性突状132は、上方へ向かって突出していても良い。例えば、
図31に示されているように、レンズ載置面34から上方に向かって突出形成された可撓性突状132を採用することも可能である。この場合、器具本体14と別体形成された可撓性突状132をレンズ載置面34に接着固定することにより、可撓性突状132をレンズ載置面34に突設することが出来る。また、可撓性突状132は、レンズ載置面34に突設されている必要はなく、例えば、基端部48の底面60に突設されていても良い。なお、理解を容易にするために、
図31に示した可撓性突状132には、本実施形態と同一の符号を付してある。
【0107】
続いて、本発明の第七の実施形態としての眼内レンズ挿入器具136について、
図32及び
図33に基づいて説明する。本実施形態の眼内レンズ挿入器具136は、第一の実施形態の眼内レンズ挿入器具(10)に比して、凸部(70)が設けられておらず、その代わりに、干渉作用部としての突入当接部材138が組み付けられている。
【0108】
突入当接部材138は、合成樹脂材料やゴム材料等で形成されており、U字状又はV字状に湾曲された挟持部140を備えている。なお、挟持部140は、ノズル部46に被せられるキャップ状であっても良い。また、挟持部140の谷底部分には、挟持部140の開口側に向かって突出する突入軸部142が設けられている。
【0109】
このような突入当接部材138は、突入軸部142がノズル部46の先端側開口部58から通孔54に挿し入れられた状態で、挟持部140がノズル部46を幅方向に挟み込むことにより、ノズル部46に装着される。この状態で、通孔54内に位置する突入軸部142は、通孔54の幅方向中央部分において、底面60よりも上方に位置している。これにより、底面60と突入軸部142の間には、所定の隙間74が形成されている。また、突入軸部142の先端には、ノズル部46の軸方向前方(突入軸部142の基端側)へ行くに従って次第に底面60へ近づく傾斜が付された干渉面144が形成されている。
【0110】
このような突入軸部142の干渉面144に対して、ノズル部46内を移動する眼内レンズ12の移動方向前方側の支持部20aが接触するようになっている。これにより、支持部20aに移動方向後方への外力が及ぼされて、支持部20aが光学部18に接近する方向へ湾曲変形される。そして、支持部20aが突入軸部142の干渉面144によって光学部18側へ接近変位された後、突入当接部材138をノズル部46から取り外す。その後、眼内レンズ12は、支持部20aが光学部18側へ接近した状態で、ノズル部46から押し出される。このことから明らかなように、本実施形態では、突入当接部材138が組み付けられるノズル部46によって挿入筒部が構成されている。なお、ノズル部46内に適当な潤滑剤を入れておけば、突入当接部材138をノズル部46から取り外した後であっても、潤滑剤の干渉作用によって、支持部20aが光学部18に接近した状態を維持し易くなる。
【0111】
このような眼内レンズ挿入器具136においては、干渉作用部をノズル部46に設ける必要がないので、眼内レンズ挿入器具136そのものの製造が容易になる。
【0112】
続いて、本発明の第八の実施形態としての眼内レンズ挿入器具146について、
図34及び
図35に基づいて説明する。本実施形態の眼内レンズ挿入器具146は、第一の実施形態の眼内レンズ挿入器具(10)に比して、凸部(70)が設けられておらず、その代わりに、干渉作用部としての突入当接部材148が設けられている。
【0113】
突入当接部材148は、合成樹脂材料やゴム材料等で形成されており、厚肉の平板形状を呈する把持部150の厚さ方向一方に突入軸部152が設けられた構造とされている。このような突入当接部材148は、中間部50の周壁部分をノズル部46の幅方向に貫通して天面62に開口形成された貫通孔154に突入軸部152が挿通された状態で、ノズル部46に組み付けられる。ノズル部46に組み付けられた状態で、突入軸部152は、天面62の幅方向他端部から幅方向一方の側へ突出している。この状態で、突入軸部152は底面60よりも上方に位置している。これにより、突入軸部152と底面60の間には、所定の隙間74が形成されている。また、突入軸部152の外周面には、ノズル部46の軸方向前方へ行くに従って底面60へ近づく傾斜が付された干渉面156が形成されている。
【0114】
上述の如く突入当接部材148がノズル部46に組み付けられた状態で、ノズル部46内を移動する眼内レンズ12の移動方向前方側の支持部20aが突入軸部152の干渉面156に接触する。これにより、支持部20aに移動方向後方への外力が及ぼされて、支持部20aが光学部18側へ接近変位される。その際、支持部20aは干渉面156上を底面60側へ摺動する。支持部20aが光学部18側へ接近変位したら、突入軸部152をノズル部46の天面62から突出しない位置まで引っ込める。その後、眼内レンズ12は、支持部20aが光学部18側へ接近した状態で、ノズル部46から押し出される。このことから明らかなように、本実施形態では、突入当接部材148が組み付けられるノズル部46によって挿入筒部が構成されている。
【0115】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。
【0116】
例えば、前記実施形態では、器具本体14のステージ30に対して担持部材35が取り外し可能に組み付けられており、この担持部材35の作用突部36a,36a,36b,36bで、眼内レンズ12が持ち上げられて光学部18への接触を可及的に回避させた状態でセットされるようになっていたが、このような担持部材35は、本発明において必須ではない。具体的には、器具本体14のステージ30に貫通孔37a,37a,37b,37bを設けることなく、担持部材35を採用しないで、ステージ30のレンズ載置面34上に、眼内レンズ12を直接に載置してセットするようにしても良い。
【0117】
また、かかる担持部材35を採用しない場合には、予め眼内レンズ12をセットした状態で梱包して提供するのではなく、施術に際して、眼内レンズ挿入器具10とは別途に梱包して提供した眼内レンズ12を開梱して、眼内レンズ挿入器具10のステージ30のレンズ載置面34上に収容セットすることが望ましい。これにより、眼内レンズ12の光学部18に対してレンズ載置面34が、保存や流通の過程で長期間に亘って直接に接触して応力を及ぼすことに起因する問題を回避することが出来る。
【0118】
また、担持部材35を採用する場合でも、例えば眼内レンズ12の光学部18や、支持部20a,20bの延出方向の中間部分や先端部分等に当接してそれらを支持する位置に作用突部を形成すること等も可能である。
【0119】
なお、眼内レンズの光学部の変形態様を決定する器具本体14のステージ30や挿入筒部(ノズル部46)等の形状や構造は、眼内レンズを眼内に挿入する際に変形させる目的形状に応じて、適宜に設定されるものであり、例えばガイドレール66,66やサイドレール68,68等の採否を含めて、実施形態の記載に限定されるものでない。即ち、眼内レンズを挿入する際に小さく変形させる態様は、前述の如き山折状態や谷折状態に限定されず、従来公知のように多様であり、具体的には巻き取るように丸める変形等も採用可能であって、そのような目的とする変形形状に応じて、従来公知の各種の構造が、本発明の眼内レンズ挿入器具においても採用可能である。