(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694505
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】電力半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 29/739 20060101AFI20150312BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
H01L29/78 655F
H01L29/78 653A
H01L29/78 652K
H01L29/78 652N
H01L29/78 652E
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 655G
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-500488(P2013-500488)
(86)(22)【出願日】2011年3月23日
(65)【公表番号】特表2013-522924(P2013-522924A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】EP2011054423
(87)【国際公開番号】WO2011117285
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2014年2月4日
(31)【優先権主張番号】10157392.1
(32)【優先日】2010年3月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505063441
【氏名又は名称】アーベーベー・テヒノロギー・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(72)【発明者】
【氏名】ラヒモ、ムナフ
(72)【発明者】
【氏名】コプタ、アルノスト
(72)【発明者】
【氏名】フォン・アルクス、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】アンデンナ、マクシ
【審査官】
大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−207476(JP,A)
【文献】
特開2009−170480(JP,A)
【文献】
特開2007−134625(JP,A)
【文献】
特開2008−227238(JP,A)
【文献】
特開2007−095874(JP,A)
【文献】
特開平06−275818(JP,A)
【文献】
米国特許第05689144(US,A)
【文献】
米国特許第06303410(US,B1)
【文献】
特開2003−258253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/739
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる導電性タイプのレイヤを備えた電力半導体デバイス(1)であって、これらのレイヤは、エミッタ側(11)のエミッタ電極(2)と、エミッタ側(11)の反対側に配置されたコレクタ側(15)のコレクタ電極(25)との間に配置され、
前記電力半導体デバイス(1)は、
− 第一の導電性タイプのドリフト・レイヤ(6)を有し、このドリフト・レイヤは、エミッタ側(11)とコレクタ側(15)との間に配置され、
− 第二の導電性タイプの第一のベース・レイヤ(4)を有し、この第一のベース・レイヤは、ドリフト・レイヤ(6)とエミッタ電極(2)との間に配置され、且つ、この第一のベース・レイヤ(4)は、エミッタ電極(2)と直接接触しており、
− 第一の導電性タイプの第一のソース領域(5)を有し、この第一のソース領域は、第一のベース・レイヤ(4)の中に埋め込まれてエミッタ側(11)に配置され、エミッタ電極(2)と接触し、且つ、この第一のソース領域(5)は、ドリフト・レイヤ(6)と比べて高いドーピング濃度を有し、
− 複数の第一のゲート電極(3)を有し、これらの第一のゲート電極の各々は、第一の絶縁レイヤ(31)により、第一のベース・レイヤ(4)、第一のソース領域(5)及びドリフト・レイヤ(6)から電気的に絶縁され、且つ、これらの第一のゲート電極(3)の各々は、第一のベース・レイヤ(4)と同一の平面の中に且つそれに対して横方向に配置され、ドリフト・レイヤ(6)の中に、第一のベース・レイヤ(4)と比べて深く伸び、チャネルが、エミッタ電極(2)、第一のソース領域(5)、第一のベース・レイヤ(4)と、ドリフト・レイヤ(6)との間に、形成可能であり、
− 当該電力半導体デバイスは、更に、第二の導電性タイプの第二のベース・レイヤ(45)、第一の導電性タイプの第二のソース領域(55)、及び第二のゲート電極(35)を有していて、
ここで、第二のゲート電極(35)は、二つの第一のゲート電極(3)間において、エミッタ側(11)の上面に配置され、且つ、第二のゲート電極(35)は、第二の絶縁レイヤ(36)により、第二のベース・レイヤ(45)、第二のソース領域(55)及びドリフト・レイヤ(6)から電気的に絶縁され、
第二のソース領域(55)は、第二のベース・レイヤ(45)の中に埋め込まれてエミッタ側(11)に配置され、第二のゲート電極(35)の下側の領域の中に伸び、且つ、この第二のソース領域(55)は、ドリフト・レイヤ(6)と比べて高いドーピング濃度を有し、
第二のベース・レイヤ(45)は、第一のベース・レイヤ(4)と同一の平面の中に且つそれに対して横方向に配置され、
第二のソース領域(55)は、エミッタ電極(2)に対して直接接触せず、それによって、電荷キャリアが、エミッタ電極(2)から、第二のソース領域(55)、第二のベース・レイヤ(45)の中を通って、ドリフト・レイヤ(6)へ、その中を通って直接流れることが可能であるところのチャネルが、形成可能でないようになっており、
当該電力半導体デバイスは、複数の第一のゲート電極(3)を有していること、及び、
第一のソース領域(5)と第二のソース領域(55)は、接続ソース領域(58)により互い対して接続され、この接続ソース領域は、そのような二つの第一のゲート電極(3)の間に配置され、それにより、これら二つの第一のゲート電極(3)を分離すること、
を特徴とする電力半導体デバイス(1)。
【請求項2】
第一のゲート電極(3)と第二のゲート電極(35)は、電気的に接続されている、請求項1に記載の電力半導体デバイス(1)。
【請求項3】
ドリフト・レイヤ(6)と比べて高いドーピング濃度を備えた、第一の導電性タイプのバッファ・レイヤ(8)は、ドリフト・レイヤ(6)とコレクタ電極(25)との間に配置されている、請求項1または2に記載の電力半導体デバイス(1)。
【請求項4】
当該電力半導体デバイスは、ドリフト・レイヤ(6)とコレクタ電極(25)との間で、コレクタ側(15)に配置された、第二の導電性タイプのコレクタ・レイヤ(7)を更に有し、または、
当該電力半導体デバイスは、ドリフト・レイヤ(6)と比べて高いドーピング濃度を備えた第一の導電性タイプのバッファ・レイヤ(8)、及び第二の導電性タイプのコレクタ・レイヤ(7)を更に有していて、このバッファ・レイヤ(8)は、ドリフト・レイヤ(6)とコレクタ電極(25)との間で、コレクタ側(15)に配置され、このコレクタ・レイヤは、バッファ・レイヤ(8)とコレクタ電極(25)との間で、コレクタ側(15)に配置されている、請求項1または2に記載の電力半導体デバイス(1)。
【請求項5】
第二のソース領域(55)は、第一の絶縁レイヤ(31)まで伸びている、請求項1から4の何れか1項に記載の電力半導体デバイス(1)。
【請求項6】
第二のソース領域(55)は、第二のベース・レイヤ(45)により、第一の絶縁レイヤ(31)から分離されている、請求項1から4の何れか1項に記載の電力半導体デバイス(1)。
【請求項7】
第二のソース領域(55)は、エミッタ電極(2)に対して電気的に接続されている、請求項1から6の何れか1項に記載の電力半導体デバイス(1)。
【請求項8】
第二のソース領域(55)は、エミッタ電極(2)から分離されている、請求項1から6の何れか1項に記載の電力半導体デバイス(1)。
【請求項9】
当該電力半導体デバイスは、第一の導電性タイプの第一の領域(75)を更に有していて、この第一の領域は、コレクタ・レイヤ(7)に対して横方向にコレクタ側(5)に配置され、且つ、この第一の領域(75)は、ドリフト・レイヤ(6)と比べて高いドーピング濃度を有している、請求項1から8の何れか1項に記載の電力半導体デバイス(1)。
【請求項10】
当該電力半導体デバイスは、第一の導電性タイプのエンハンスメント・レイヤ(9,9’)を更に有していて、このエンハンスメント・レイヤは、ドリフト・レイヤ(6)と、第一及び第二のベース・レイヤ(4,45)の内の少なくとも一方または両方との間に配置され、それにより、それらを分離する、請求項1から9の何れか1項に記載の電力半導体デバイス(1)。
【請求項11】
当該電力半導体デバイスは、第二の導電性タイプの第三のベース・レイヤ(49,49’)を更に有していて、この第三のベース・レイヤは、ドリフト・レイヤ(6)と、第一のベース・レイヤ(4)の下側のエンハンスメント・レイヤ(9)、第二のベース・レイヤ(45)、または、第一及び第二のベース・レイヤ(4,45)の両方との間に配置され、それにより、それらを分離する、請求項10に記載の電力半導体デバイス(1)。
【請求項12】
当該電力半導体デバイスは、複数の第一のゲート電極(3)を有し、且つ、
第一のベース・レイヤ(4)と第二のベース・レイヤ(45)は、接続ベース・レイヤ(48)により互いに接続され、この接続ベース・レイヤは、そのような二つの第一のゲート電極(3)の間に配置され、それにより、前記二つの第一のゲート電極(3)を分離する、請求項1から11の何れか1項に記載の電力半導体デバイス(1)。
【請求項13】
当該電力半導体デバイスは、第一のベース・レイヤ(4)及び第二のベース・レイヤ(45)と比べて高いドーピング濃度を備えた、第二の導電性タイプのバー(47)を更に有していて、このバー(47)は、エミッタ側(11)に配置され、且つ、このバー(47)で、第一のソース領域(5)及び第二のソース領域(55)、ベース・レイヤ(4,45)及び第一のゲート電極(3)を終結する、請求項1から12の何れか1項に記載の電力半導体デバイス(1)。
【請求項14】
前記バー(47)は、第二のゲート電極(35)により、少なくとも部分的にまたは完全に覆われている、請求項13に記載の電力半導体デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力半導体デバイスの分野に係る。本発明は、請求項1の前置き部分に基づく、異なる導電性タイプのレイヤを備えた電力半導体デバイスに係る。
【背景技術】
【0002】
図1に、プレーナー・ゲート電極を備えた従来技術のIGBTを示す。このIGBTは、四層構造を備えたデバイスであって、これらの四層は、エミッタ側11のエミッタ電極2と、エミッタ側11の反対側に配置されたコレクタ側15のコレクタ電極25との間に、配置されている。(n−)ドープされたドリフト・レイヤ6が、エミッタ側11とコレクタ側15との間に配置されている。pドープされたプレーナー・ベース・レイヤ405が、ドリフト・レイヤ6とエミッタ電極2との間に配置され、このプレーナー・ベース・レイヤ405は、エミッタ電極2と電気的に直接接触する状態にある。プレーナー型のnドープされたソース領域505が、プレーナー・ベース・レイヤ405の中に埋め込まれたエミッタ側11に配置され、エミッタ電極2と接触する。
【0003】
プレーナー・ゲート電極305が、エミッタ側11の上面に配置されている。このプレーナー・ゲート電極305は、プレーナー絶縁レイヤ306により、プレーナー・ベース・レイヤ405、プレーナー・ソース領域505及びドリフト・レイヤ6から電気的に絶縁されている。更なる絶縁レイヤ309が、プレーナー・ゲート電極305とエミッタ電極2との間に配置されている。
【0004】
用語“プレーナー”または“トレンチ”ベース・レイヤ及び“プレーナー”または“トレンチ”ソース領域は、異なるデバイス・タイプに対して、レイヤを互いから識別するために使用されていて、特殊なデザインまたは更なる技術的な意味を意味するものではない。
【0005】
そのようなプレーナーMOSのセル・デザインは、BiMOSタイプのスイッチのコンセプトに適用されたときに、多数の弱点を有している。このデバイスは、複数の効果に起因して、高いオン状態の損失を有している。このプレーナー・デザインは、横方向のMOSチャネルをもたらし、それは、セルの近傍での電荷拡大(charge spreading)(JFET効果とも呼ばれている)の影響を受ける。それ故に、プレーナー・セルは、低いキャリア・エンハンスメントを示す。更にまた、横方向のチャネル・デザインに起因して、プレーナー・デザインは、MOSチャネルからの悪い電子の広がり(electron spreading)のために、ホール・ドレイン効果(hole drain effect)(PNP効果)の影響も受ける。セルの間の領域は、PiNダイオード部分のために、 強い電荷エンハンスメントをもたらす。このPiN効果は、しかしながら、低いセル充填密度(領域の中のセルの数が少ない)を備えた高電圧デバイスにおいては、ポジティブな影響のみを示すことが可能である。チャネル抵抗の減少を実現するために、プレーナー・デバイスは、より少ないセル充填密度で作られ、それは、狭いピッチ(二つのセルの間の距離)により補償されることのみが可能であり、それ故に、PiN効果を減少させることになる。
【0006】
ブロッキング容量に関して、プレーナー・デザインは、セルでの及びセルの間での、低いピーク電場に起因して、良好なブロッキング容量をもたらす。
【0007】
プレーナー・デザインは、ゲート電極の下側の大きなMOS蓄積領域、及び大きな関係するキャパシタンスを有することが可能である。それにも拘わらず、このデバイスは、ミラー・キャパシタンスの減少のために、セルの間のフィールド・オキサイド・タイプのレイヤの適用に起因して、良好な制御性を示す。それ故に、良好な制御性及び低いスイッチング損失が、プレーナー・デザインに対して実現されることが可能である。
【0008】
更にまた、プレーナー・デザインにおけるセル密度は、要求される短絡電流に対して容易に調整されることが可能である。
【0009】
その結果として、上述の全ての効果を考慮に入れると、先行技術のプレーナー・セルは、フィールド・オキサイド・レイヤを用いて、非常に狭いセル及び広いピッチを適用する。
【0010】
プレーナー・デザインの代わりに、
図2の中に示されているようなトレンチMOSセル・デザインが導入されている。このデザインにおいて、トレンチ・ゲート電極300が、トレンチ絶縁レイヤ301により、トレンチ・ベース・レイヤ400、トレンチ・ソース領域500及びドリフト・レイヤ6から電気的に絶縁されている。トレンチ・ゲート電極300は、トレンチ・ベース・レイヤ400と同一の平面の中に且つそれに対して横方向に配置され、ドリフト・レイヤ6の中に、トレンチ・ベース・レイヤ400と比べて深く伸びている。
【0011】
そのようなトレンチ・ゲート電極のデザインでは、オン状態の損失がより低くなる。その理由は、トレンチ・デザインが、縦方向のMOSチャネルをもたらすからであり、この縦方向のMOSチャネルは、縦方向への、電子の強化された注入をもたらし、セルの近傍での電荷拡大(いわゆるJFET効果)からの欠点の影響を受けない。それ故に、トレンチ・セルは、より低い損失のために、大幅に改善されたキャリア・エンハンスメントを示す。縦方向のチャネル・デザインに起因して、トレンチはまた、より少ないホール・ドレイン効果(PNP効果)をもたらし、それは、MOSチャネルからの改善された電子の広がりに起因している。トレンチの底部に、蓄積レイヤがあり、この蓄積レイヤは、PINダイオード部分のために、強い電荷エンハンスメントをもたらす。それ故に、広いおよび/または深いトレンチは、最適な性能を示す。
【0012】
トレンチ・デザインは、減少されたチャネル抵抗のために、大きなセル充填密度をもたらす。トレンチ・デザインは、しかしながら、高いピーク電場に起因して、トレンチ底部の隅の近傍での、より低いブロッキング容量の影響を受ける。トレンチ・デザインは、大きなMOS蓄積領域及びそれに伴うキャパシタンスを有していて、ミラー・キャパシタンスの減少のために、トレンチの中にフィールド・オキサイド・タイプのレイヤを付けることは、困難である。それ故に、このデバイスは、悪い制御性及び高いスイッチング損失をもたらす。更にまた、トレンチ・デザインにおける高いセル密度は、高い短絡電流をもたらすことになる。
【0013】
“Trench emitter IGBT with lateral and vertical MOS channels”(Proc. 23-rd Internat. Conf. on Microelectronics (MIEL 2002), 163-166)(“横方向の及び縦方向のMOSチャネルを備えたトレンチ・エミッタIGBT”)”の中に、IGBTが説明されていて、このIGBTは、一つのデバイスの中に、トレンチ・ゲート電極及びプレーナー・ゲート電極を有している。しかしながら、プレーナー及びトレンチ・ゲートのデザインの完全な適用に起因して、即ち、チャネルが、トレンチ・ゲート電極で並びにプレーナー・ゲート電極で、エミッタ電極とドリフト・レイヤとの間に形成可能であるために、プレーナー及びトレンチ・ゲート・デザインの弱点が、結合されたデザインのデバイスにおいても、依然として存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】“Trench emitter IGBT with lateral and vertical MOS channels”(Proc. 23-rd Internat. Conf. on Microelectronics (MIEL 2002), 163-166)
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、減少されたオン状態の損失、改善されたブロッキング容量、低いホールのドレナージ(drainage of holes)、及び良好な制御性を備えた、電力半導体デバイスを提供することにある。
【0016】
この問題は、請求項1の特徴を備えた半導体デバイスにより解決される。
【0017】
本発明の電力半導体デバイスは、異なる導電性タイプのレイヤを有していて、これらのレイヤは、エミッタ側のエミッタ電極と、エミッタ側の反対側に配置されたコレクタ側のコレクタ電極との間に配置され、これらのレイヤは、
− 第一の異なる導電性タイプのドリフト・レイヤを有し、
− エミッタ側とコレクタ側との間に配置され第一の異なる導電性タイプのドリフト・レイヤを有し、
− 第二の異なる導電性タイプの第一のベース・レイヤを有し、この第一のベース・レイヤは、ドリフト・レイヤとエミッタ電極との間に配置され、且つ、この第一のベース・レイヤは、エミッタ電極と電気的に直接接触する状態にあり、
− 第一の異なる導電性タイプの第一のソース領域を有し、この第一のソース領域は、第一のベース・レイヤの中に埋め込まれたエミッタ側に配置されて、エミッタ電極と接触し、且つ、この第一のソース領域は、ドリフト・レイヤと比べて高いドーピング濃度を有し、
− 第一のゲート電極を有し、この第一のゲート電極は、第一の絶縁レイヤにより、第一のベース・レイヤ、第一のソース領域及びドリフト・レイヤから電気的に絶縁され、且つ、この第一のゲート電極は、第一のベース・レイヤと同一の平面の中に且つそれに対して横方向に配置され、且つ、ドリフト・レイヤの中に、第一のベース・レイヤと比べて深く伸び、チャネルが、エミッタ電極、第一のソース領域、第一のベース・レイヤと、ドリフト・レイヤとの間に、形成可能であり、
− 第二の異なる導電性タイプの第二のベース・レイヤを有し、
− 第一の異なる導電性タイプの第二のソース領域を有し、
− 第二のゲート電極を有し、この第二のゲート電極は、エミッタ側の上面に配置され、且つ、第二のゲート電極は、第二の絶縁レイヤにより、第二のベース・レイヤ、第二のソース領域及びドリフト・レイヤから絶縁され、
第二のソース領域は、第二のベース・レイヤの中に埋め込まれたエミッタ側に配置され、且つ、第二のゲート電極の下側の領域の中に伸び、この第二のソース領域は、ドリフト・レイヤと比べて高いドーピング濃度を有し、
ここで、第二のベース・レイヤは、第一のベース・レイヤと同一の平面の中に且つそれに対して横方向に配置され、
第二のソース領域は、エミッタ電極に対して直接接続されておらず、それによって、電荷キャリアが、エミッタ電極から、第二のソース領域、第二のベース・レイヤの中を通って、ドリフト・レイヤへ、その中を通って直接流れることが可能であるところのチャネルが、形成可能でないようになっている。
【0018】
本発明の半導体デバイスは、プレーナー及びトレンチMOSセルの両方を、減少されたオン状態の損失、改善されたブロッキング及び良好な制御性に関して、両方のデザインの優位性を得るために、単一の構造の中に統合する。
【0019】
プレーナー・ゲート・デザイン(セルの間の領域)及びトレンチ・デザイン(セル自身)の優位性が、本発明の半導体デバイスの中で結合されることが可能であり、これに対して、高い損失、JFET効果、PNP及びPiN効果、トレンチ・セルの間の中間スペースなどのような、プレーナー・セル領域の弱点が、取り除かれる。プレーナー・セルの間の領域の中で、良好な電荷エンハンスメントが確保されることが可能である。この効果は、もし、プレーナー強化されたレイヤが存在する場合には、更に顕著になる。プレーナー・ゲート構造に起因して、ターンオフの間の電荷抽出のために良好な電場拡大、及びターンオンの間の良好な制御性がもたらされる。他方、トレンチ・セル・デザインは、良好な電子注入プロファイル、及び低いホール・ドレイン効果を備えた拡大をもたらす。
【0020】
稠密に充填されたセル・チャネル密度が、半分のセル当り三つのチャネルまでの、得られることが可能である。それにも拘わらず、密度は、セルの間のピッチを介して、または、ソース領域に構造を与えることにより、または、MOSチャネルのパラメータを調整することにより、または、トレンチの内の一つまたはプレーナー・チャネルの内の一つを取り除くことにより、コントロールされることが可能である。
【0021】
ソース領域は、直接に、またはMOSチャネルを介して、またはプレーナー・セル部分自身の中でも、第三の次元において接続されることが可能である。ベース・レイヤは、プレーナー・セルにおいてラッチアップを回避するため、第三の次元の中でまたは直接に、同様なやり方で接続されることもまた可能である。
【0022】
更にまた、この電力半導体デバイスは、容易に製造することが可能であり、その理由は、本発明のデザインは、自己整列プロセスに基づいて製造されることが可能であり、それは、強化されたレイヤ構造を適用することの可能性、及び、エミッタ・スイッチド・サイリスタ構造(emitter switched structures)、及び多数の可能である組み合わせの中での逆伝導デザインなどのような、複数の異なるデバイス・タイプに本発明の構造を適用することの可能性を有している。この電力半導体デバイスはまた、トレンチ及びプレーナー・チャネルのために、異なるMOSチャネル・パラメータ(閾値電圧(Vth)、ピンチ・オフ電圧(Vp)及びゲート−エミッタ・コンダクタンス(gfs))を提供し、従って、それらのパラメータを別個に最適化する可能性をもたらす。本発明のデザインは、完全なまたは部分的なストライプに対して適切であるが、しかし、セル状のデザインにおいても実現されることが可能である。
【0023】
本願発明に基づく更なる優位性は、従属請求項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、従来技術に基づくプレーナー・ゲート電極を備えたIGBTを示している。
【
図2】
図2は、従来技術に基づくトレンチ・ゲート電極〜を備えたIGBTを示している。
【
図3】
図3は、本発明に基づく非パンチスルーIGBTの第一の代表的な実施形態を示している。
【
図4】
図4は、本発明に基づくパンチスルーIGBTの他の代表的な実施形態を示している。
【
図5】
図5は、本発明に基づく逆伝導IGBTの他の代表的な実施形態を示している。
【
図6】
図6は、本発明の半導体デバイスの他の代表的な実施形態の詳細を示している。
【
図7】
図7は、本発明の半導体デバイスの他の代表的な実施形態の詳細を示している。
【
図8】
図8は、本発明の半導体デバイスの他の代表的な実施形態の詳細を示している。
【
図9】
図9は、本発明の半導体デバイスの他の代表的な実施形態の詳細を示している。
【
図10】
図10は、本発明の半導体デバイスの他の代表的な実施形態の詳細を示している。
【
図11】
図11は、本発明の半導体デバイスの他の代表的な実施形態の詳細を示している。
【
図12】
図12は、本発明の半導体デバイスの他の代表的な実施形態の詳細を示している。
【
図13】
図13は、本発明の半導体デバイスの他の代表的な実施形態の詳細を示している。
【
図14】
図14は、本発明の半導体デバイスの他の代表的な実施形態の詳細を示している。
【
図15】
図15は、本発明の半導体デバイスの他の代表的な実施形態のエミッタ側の上面図を示している。
【
図16】
図16は、エミッタ電極及び第二のゲート電極を含む、本発明の半導体デバイスの他の代表的な実施形態のエミッタ側の上面図を示している。
【
図17】
図17は、
図15に基づく半導体デバイス代表的な実施形態に対する、切断線A−Aに沿う断面図を示している。
【
図18】
図18は、
図15に基づく半導体デバイスの異なる代表的な実施形態に対する、切断線B−Bに沿う断面図を示している。
【
図19】
図19は、
図15に基づく半導体デバイスの異なる代表的な実施形態に対する、切断線B−Bに沿う断面図を示している。
【
図20】
図20は、
図15に基づく半導体デバイスの異なる代表的な実施形態に対する、切断線C−Cに沿う断面図を示している。
【
図21】図び21は、
図15に基づく半導体デバイスの異なる代表的な実施形態に対する、切断線C−Cに沿う断面図を示している。
【
図22】
図22は、半導体デバイスの他の代表的な実施形態の断面の上面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の主題は、以下のテキストにおいて、添付図面を参照しながら、より詳細に説明される。
【0026】
図面の中で使用されている参照符号及びそれらの意味は、参照符号のリストの中にまとめられている。一般的に、同様なまたは同様に機能する部分には、同一の参照符号が与えられている。説明された実施形態は、例として意図されていて、本発明を限定するものではない。
【0027】
図3は、四層構造を備えた(pnpn)絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)の形態の、本発明の電力半導体デバイス1の第一の実施形態を示している。複数のレイヤが、エミッタ側11のエミッタ電極2と、エミッタ側11の反対側に配置されたコレクタ側15のコレクタ電極3との間に配置されている。このIGBTは、以下のレイヤを有している:
− (n−)ドープされたドリフト・レイヤ6、このドリフト・レイヤは、エミッタ側11とコレクタ側15との間に配置されている;
− Pドープされた第一のベース・レイヤ4、この第一のベース・レイヤは、ドリフト・レイヤ6とエミッタ電極2の間に配置され、且つ、この第一のベース・レイヤ4は、エミッタ電極2と電気的に直接接触する状態にある;
− nドープされた第一のソース領域5、この第一のソース領域は、第一のベース・レイヤ4の中に埋め込まれたエミッタ側11に配置され、エミッタ電極2と接触し、且つ、この第一のソース領域5は、ドリフト・レイヤ6と比べて高いドーピング濃度を有している;
− 第一のゲート電極3、この第一のゲート電極は、第一の絶縁レイヤ31により、第一のベース・レイヤ4、第一のソース領域5及びドリフト・レイヤ6から電気的に絶縁され、且つ、この第一のゲート電極3は、第一のベース・レイヤ4と同一の平面の中に且つそれに対して横方向に配置され、ドリフト・レイヤ6の中に、第一のベース・レイヤ4と比べて深く伸び、チャネルが、エミッタ電極2、第一のソース領域5、第一のベース・レイヤ4と、ドリフト・レイヤ6との間に、形成可能である;
− 第二のnドープされたソース領域55;
− 第二のゲート電極35、この第二のゲート電極は、エミッタ側11の上面に配置され、ここで、エミッタ側は、第二の絶縁レイヤ36により、第二のベース・レイヤ45、第二のソース領域55及びドリフト・レイヤ6から電気的に絶縁されている;
第二のソース領域55は、第二のベース・レイヤ45の中に埋め込まれたエミッタ側11に配置され、第二のゲート電極の下側の領域35の中に伸び、且つ、この第二のソース領域55は、ドリフト・レイヤ6と比べて高いドーピング濃度を有している;
このIGBTの特徴は、
第二のベース・レイヤ45が、第一のベース・レイヤ4と同一の平面の中に且つそれに対して横方向に配置されていること、及び、
第二のソース領域55が、エミッタ電極2に対して直接接続されておらず、それによって、電荷キャリアが、エミッタ電極2から、第二のソース領域55、第二のベース・レイヤ45の中を通って、ドリフト・レイヤ6へ、その中を通って直接流れることが可能であるところのチャネルが形成可能でないようになっている、と言うことである。
【0028】
第一のゲート電極3(トレンチ・ゲート電極)でのチャネルは、エミッタ電極2、第一のソース領域5、第一のベース・レイヤ4と、ドリフト・レイヤ6との間に、形成可能であって、電力半導体デバイスの運転の間に形成される。第二のゲート電極35(プレーナー・ゲート電極)で、そのようなチャネルは形成されない。その理由は、エミッタ電極2が、第二のソース領域55に取り付けられていないからである。
【0029】
第一のゲート電極3及び第二のベース・レイヤ45のために、先に言及した平面は、エミッタ側11に対して平行に伸びる平面である。もし、第二のソース領域55が、第一の絶縁レイヤ31まで伸びている場合には、第一のゲート電極3は、当然にまた、第二のベース・レイヤ45から、及び第二のソース領域55から、電気的に絶縁される。
【0030】
図1の中に示されているように、電力半導体デバイスがIGBTである場合には、Pドープされたコレクタ・レイヤ7は、ドリフト・レイヤ6とコレクタ電極25との間で、コレクタ側15に配置される。
【0031】
当然に、本発明のデバイスが、第二のゲート電極と異なる数の第一のゲート電極を有していると言うこともまた、可能である。本発明は、少なくとも一つの第一のトレンチ・ゲート電極3及び少なくとも一つの第二のプレーナー・ゲート電極35を有しているデバイスに向けられている。
【0032】
典型的に、第三の絶縁レイヤ39が第二のゲート電極35の上側に配置され、この第三の絶縁レイヤ39により、ゲート電極35が覆われ、そしてそれにより、エミッタ電極2から電気的に絶縁される。第一のゲート電極3もまた、典型的に、第三の絶縁レイヤによりエミッタ側11で覆われる。
【0033】
図4の中に示されているように、このデバイス1は、ドリフト・レイヤ6と比べて高いドーピング濃度を備えたnドープされたバッファ・レイヤ8を更に有していても良く、このバッファ・レイヤは、ドリフト・レイヤ6とコレクタ電極25との間に配置されている。
図4の中のデバイスなどのような、コレクタ・レイヤ7を備えたIGBTのために、バッファ・レイヤ8は、(n−)ドープされたドリフト・レイヤ6と、Pドープされたコレクタ・レイヤ7との間に配置される。
【0034】
本発明のゲート電極のデザインは、
図5の中に示されているように、逆伝導IGBTなどのような、複数の異なる半導体のタイプに適用されることが可能であって、その中で、第一のnドープされた領域75は、コレクタ・レイヤ7に対して横方向に且つそれと同一の平面の中で、コレクタ側15に配置され。ここで、“同一の平面”とは、コレクタ側15に対して平行な平面として理解されるべきである。第一の領域75は、ドリフト・レイヤ6と比べて高いドーピング濃度を有している。それは、MOSFETに適用されることもまた可能であり、即ち、ドリフト・レイヤ6と、オプションとしてバッファ・レイヤ8と、それから、コレクタ電極25と、を備えた(即ち、コレクタ・レイヤを有していないデバイス)に、適用されることもまた可能である。
【0035】
本発明の半導体デバイスは、一つのプレーナー・ゲート電極及び複数のトレンチ・ゲート電極を備えた、ゲート電極のデザインを有していても良い。そのようなデバイスは、
図4及び6の中に示されていて、一般的に、プレーナー・ゲート電極と比べて、多数のトレンチ・ゲート電極を備えている。セル充填密度(領域の中のセルの数)は、複数のトレンチ・ゲート電極を加えることにより、大幅に増大されることが可能であり、そして、プレーナー・ゲート電極の存在のポジティブな効果、例えば、良好なブロッキング容量、制御性及び低いスイッチング損失などが、依然として維持されることが可能である。第二のベース・レイヤをエミッタ電極に接続することないことにより、トレンチ・チャネルがプレーナー・チャネルから電荷を流出させることが回避される。
【0036】
図6から14は、本発明の半導体デバイスのエミッタ側11をより詳細に示している。図の簡潔性を確保するために、エミッタ電極2は図面の中に示されていない。
【0037】
図7から9は、他の代表的な実施形態を示していて、それらの中で、本発明のデバイスは、nドープされたエンハンスメント・レイヤ9,9’を更に有していて、このは、ドリフト・レイヤ6と比べて高いドーピング濃度を有している。エンハンスメント・レイヤ9,9’は、ドリフト・レイヤ6と、第一のベース・レイヤ4(
図9の中に示されたエンハンスメント・レイヤ9)、第二のベース・レイヤ45(
図8の中に示されたエンハンスメント・レイヤ9’)、または第一のベース・レイヤ4並びに第二のベース・レイヤ45(
図7の中に示されたエンハンスメント・レイヤ9及び9’)の何れかとの間に配置され、それによりそれらを分離する。
【0038】
そのようなエンハンスメント・レイヤ9,9’に加えて、このデバイスは、Pドープされた第三のベース・レイヤ49,49’を更に有していても良く、この第三のベース・レイヤは、ドリフト・レイヤ6と、第一のベース・レイヤ4の下側のエンハンスメント・レイヤ9、第二のベース・レイヤ45、または、第一及び第二のベース・レイヤ4,45の両方との間に配置され、それによりそれらを分離する。
図10の中に示されているように、エンハンスメント・レイヤ9,9’並びに第三のベース・レイヤ49,49’は、ドリフト・レイヤ6と、第一のベース・レイヤ4並びに第二のベース・レイヤ45との間に配置されでも良い。
【0039】
その代わりに、
図11の中に示されているように、エンハンスメント・レイヤ9のみが、第一のベース・レイヤ4の下側に配置され、これに対して、エンハンスメント・レイヤ9’並びに第三のベース・レイヤ49’は、第二のベース・レイヤ45の下側に配置される。
【0040】
他の代替形態において、
図12の中に示されているように、エンハンスメント・レイヤ9’のみが、第二のベース・レイヤ45の下側に配置されても良く、これに対して、エンハンスメント・レイヤ9並びに第三のベース・レイヤ49は、第一のベース・レイヤ4の下側に配置される。
【0041】
図13の中に示されているように、エンハンスメント・レイヤ9’及び第三のベース・レイヤ49’の何れもが、第二のベース・レイヤ45の下側に配置されないこともまた、可能であり、これに対して、第一のベース・レイヤ4の下側に、エンハンスメント・レイヤ9並びに第三のベース・レイヤ49が配置される。当然に、第一のベース・レイヤ4の下側にレイヤ9、49を有さずに、第二のベース・レイヤ45の下側に両方レイヤ9’,49’を有する、他の可能性もまた、実現されることが可能である。
【0042】
更に他の代表的な実施形態において、
図14の中に示されているように、第二のソース領域55は、第二のベース・レイヤ45により第一の絶縁レイヤ31から分離され、それによって、このデバイスは、半分のセル当り二つの導電性のチャネルを有するようになり、これに対して、例えば、
図3または6の中に示されているようなデバイスにおいては、半分のセルが、半分のセル当り三つのチャネルを有している。それらのチャネルは、
図3の中に、“電子”によりマークされた矢印により示されている。一個半のセルは、三つの右方向の矢印を有している。
【0043】
同様に、プレーナー・チャネルが、ハーフ・セルの中で取り除かれることが可能であり、それは、例えば、ソース領域をプレーナー・ゲート電極の下側の領域まで引き伸ばすことなく、ソース領域をエミッタ電極までを接続することなく、または、プレーナー・ゲート電極へのチャネルに対して使用可能なソース領域を完全に省略することにより、実現される。
【0044】
図15は、上面に第二のゲート電極またはエミッタ電極が無い、エミッタ側11の上面図を示している(
図6の切断線D−Dに沿う図)。
【0045】
図16の中にも、同様な図が示されているが、エミッタ電極2及び第二のゲート電極35が示されている。図の簡潔性を確保するため、第二及び第三の絶縁レイヤ36,39は、これらの図面の中に含まれていない。
【0046】
図17から21は、
図16の切断線A−A,B−B及びC−Cに沿う、断面を示している。
図17は、第一及び第二のソース領域5,55がその中で接続ソース領域58により接続される断面を示している。接続ソース領域58の領域の中に、第一のゲート電極が存在していない。それ故に、トレンチ・ゲート電極は、複数の第一のゲート電極3に分割される。複数の第一のゲート電極3は、第一のベース・レイヤ4と第二のベース・レイヤ45との間で、一直線上に配置されても良く、そして、第一及び第二のソース領域5,55は、接続ソース領域58により互い対して接続され、それらの接続ソース領域は、そのような二つの第一のゲート電極3の間に配置され、それにより前記二つの第一のゲート電極3を分離する。第一のゲート電極の他の何れかの配置もまた、可能である。
【0047】
第一及び第二のベース・レイヤ4,45もまた、同様なやり方で、この実施形態において接続されることが可能である。複数の第一のゲート電極3は、第一のベース・レイヤ4と第二のベース・レイヤ45との間に、一直線上に配置されることが可能であり(あるいは他の何れかの配置)、そして、第一及び第二のベース・レイヤ4,45は、接続ベース・レイヤ48により互い対して接続され、これらの接続ベース・レイヤは、そのような二つの第一のゲート電極3の間に配置され、そしてそれにより前記二つの第一のゲート電極3を分割する。
【0048】
図18は、
図16の線b−bに沿う断面を示している。第二のソース領域55は、デバイスの運転の間に導電性のチャネルが形成されることが可能であるように、第一の絶縁レイヤ31並びに第二の絶縁レイヤ36まで伸びている。
【0049】
その代わりに、
図19の中に示されているように、第一のソース領域3が、第一のゲート電極の側に配置され、この第一のゲート電極は、更なるエミッタ電極2’に対して電気的に接続される。第二のソース領域55は、エミッタ電極2から分離され、典型的には、第二のソース領域55を覆う第三の絶縁レイヤにより、及び第二のベース・レイヤ45により分離され、この第二のベース・レイヤは、エミッタ側11の平面の中で、第二のソース領域55とエミッタ電極2’との間に配置され、且つこの第二のベース・レイヤに対してエミッタ電極2’が接続される。これは、エミッタ電極2’からプレーナー・ゲート電極35の下側に、チャネルが形成可能でないと言うことを確保する。
【0050】
切断線C−Cに沿って、第一及び第二のゲート電極3,35は、互いに対して電気的に接続されても良いと言うことが、
図20の中に示されている。そのような接続は、例えば、第二のゲート電極35を、切断線C−Cの領域の中で、第一のゲート電極3の上方の領域まで伸ばすことにより、作られることが可能であり、それによって、第二のゲート電極は、第一のゲート電極3の上方に突出し、そしてそれにより、第一のゲート電極3と接触するようになる。他の実施形態において、この領域の中の第一のゲート電極3の幅が、ゲート電極3,35が接触状態にあるように、伸ばされることもまた可能である。当然に、ゲート電極3,35の接触領域の中で電気的な接触を実現するために、絶縁レイヤ31,36は、この領域の中で、ゲート電極3,35の間に配置されることがない。
【0051】
第一及び第二のゲート電極3,35、ソース領域5,55及びベース・レイヤ4,45は、必ずしも互い対して接続される必要は無い。第一及び第二のゲート電極3,35が互い対して接続される場合には、その接続は、先に詳しく説明したように、デバイスの中に作られることが可能であるが、その接続は、例えば配線により、電気的な接続としてデバイスの外側に作られることもまた可能である。
【0052】
これらの図面の中の実施形態は、接続を実現するための、そしてそれにより、第一及び第二のゲート電極3,35、ソース領域5,55と、ベース・レイヤ4,45との間の電気的な接触を実現するための、例としてのみ理解されるべきである。本発明は、これらの例により限定されるべきでなく、そして、そのような電気的な接触を実現するため何れかのやり方は、含まれるべきである。
【0053】
図22は、更なる実施形態を示していて、その中で、半導体デバイス1は、第一及び第二のベース・レイヤ4,45と比べて高いドーピング濃度を備えた、pドープされたバー(47)を有している。バー(47)は、エミッタ側11に配置され、このバー(47)で、第一及び第二のソース領域5,55、ベース・レイヤ4,45及び第一のゲート電極3が終結する。バー(47)は、第二のゲート電極35により、少なくとも部分的にまたは完全に覆われていても良いが、他の実施形態において、第二のゲート電極35は、それがバー(47)の上方に突出しないように、終結されても良い。この実施形態において、エミッタ及びゲート電極は、先に述べた種類の内の何れかに基づく、ベース・レイヤ及びソース領域に対して形成されることが可能である。エミッタ電極2及びゲート電極35は、平面の中の破線により、
図22の中に示されていて、この破線に沿って、デバイスが、断面図に対して切断される。
【0054】
他の実施形態において、異なる導電性タイプが入れ替えられ、即ち、第一の異なる導電性タイプの全てのレイヤは、pタイプ(例えば、ドリフト・レイヤ6、第一及び第二のソース領域5,55)であり、第二の異なる導電性タイプの全てのレイヤは、nタイプ(例えば、第一及び第二のベース・レイヤ4,45)である。
【0055】
ここで留意すべきことは、“〜を有する(comprising)”との用語は、他の要素またはステップを排除しないと言うこと、また、不定冠詞“a”または“an”は、複数を排除しないと言うことである。また、異なる実施形態に関係して説明された要素が、結合されても良い。また、ここで留意すべきことは、請求項の中の参照符号は、請求項の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないと言うことである。
以下に、本願出願時の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]異なる導電性タイプのレイヤを備えた電力半導体デバイス(1)であって、これらのレイヤは、エミッタ側(11)のエミッタ電極(2)と、エミッタ側(11)の反対側に配置されたコレクタ側(15)のコレクタ電極(25)との間に配置され、
− 第一の異なる導電性タイプのドリフト・レイヤ(6)を有し、このドリフト・レイヤは、エミッタ側(11)とコレクタ側(15)との間に配置され、
− 第二の異なる導電性タイプの第一のベース・レイヤ(4)を有し、この第一のベース・レイヤは、ドリフト・レイヤ(6)とエミッタ電極(2)との間に配置され、且つ、この第一のベース・レイヤ(4)は、エミッタ電極(2)と電気的に直接接触する状態にあり、
− 第一の異なる導電性タイプの第一のソース領域(5)を有し、この第一のソース領域は、第一のベース・レイヤ(4)の中に埋め込まれたエミッタ側(11)に配置され、エミッタ電極(2)と接触し、且つ、この第一のソース領域(5)は、ドリフト・レイヤ(6)と比べて高いドーピング濃度を有し、
− 第一のゲート電極(3)を有し、この第一のゲート電極は、第一の絶縁レイヤ(31)により、第一のベース・レイヤ(4)、第一のソース領域(5)及びドリフト・レイヤ(6)から電気的に絶縁され、且つ、この第一のゲート電極(3)は、第一のベース・レイヤ(4)と同一の平面の中に且つそれに対して横方向に配置され、ドリフト・レイヤ(6)の中に、第一のベース・レイヤ(4)と比べて深く伸び、チャネルが、エミッタ電極(2)、第一のソース領域(5)、第一のベース・レイヤ(4)と、ドリフト・レイヤ(6)との間に、形成可能であり、
− 当該電力半導体デバイスは、更に、第二の異なる導電性タイプの第二のベース・レイヤ(45)、第一の異なる導電性タイプの第二のソース領域(55)、及び第二のゲート電極(35)を有していて、
ここで、第二のゲート電極(35)は、エミッタ側(11)の上面に配置され、且つ、第二のゲート電極(35)は、第二の絶縁レイヤ(36)により、第二のベース・レイヤ(45)、第二のソース領域(55)及びドリフト・レイヤ(6)から電気的に絶縁され、
第二のソース領域(55)は、第二のベース・レイヤ(45)の中に埋め込まれたエミッタ側(11)に配置され、第二のゲート電極(35)の下側の領域の中に伸び、且つ、この第二のソース領域(55)は、ドリフト・レイヤ(6)と比べて高いドーピング濃度を有している、
電力半導体デバイス(1)において、
第二のベース・レイヤ(45)は、第一のベース・レイヤ(4)と同一の平面の中に且つそれに対して横方向に配置されていること、及び、
第二のソース領域(55)は、エミッタ電極(2)に対して直接接続されておらず、それによって、電荷キャリアが、エミッタ電極(2)から、第二のソース領域(55)、第二のベース・レイヤ(45)の中を通って、ドリフト・レイヤ(6)へ、その中を通って直接流れることが可能であるところのチャネルが、形成可能でないようになっていること、
を特徴とする電力半導体デバイス(1)。
[2]下記特徴を有する前記[1]に記載の電力半導体デバイス(1)、
第一のゲート電極(3)と第二のゲート電極(35)は、電気的に接続されている。
[3]下記特徴を有する前記[1]または[2]に記載の電力半導体デバイス(1)、
ドリフト・レイヤ(6)と比べて高いドーピング濃度を備えた、第一の異なる導電性タイプのバッファ・レイヤ(8)は、ドリフト・レイヤ(6)とコレクタ電極(25)との間に配置されている。
[4]下記特徴を有する前記[1]または[2]に記載の電力半導体デバイス(1)、
当該電力半導体デバイスは、ドリフト・レイヤ(6)とコレクタ電極(25)との間で、コレクタ側(15)に配置された、第二の異なる導電性タイプのコレクタ・レイヤ(7)を更に有し、または、
当該電力半導体デバイスは、ドリフト・レイヤ(6)と比べて高いドーピング濃度を備えた第一の異なる導電性タイプのバッファ・レイヤ(8)、及び第二の異なる導電性タイプのコレクタ・レイヤ(7)を更に有していて、このバッファ・レイヤ(8)は、ドリフト・レイヤ(6)とコレクタ電極(25)との間で、コレクタ側(15)に配置され、このコレクタ・レイヤは、バッファ・レイヤ(8)とコレクタ電極(25)との間で、コレクタ側(15)に配置されている。
[5]下記特徴を有する前記[1]から[4]の何れか1つに記載の電力半導体デバイス(1)、
第二のソース領域(55)は、第一の絶縁レイヤ(31)まで伸びている。
[6]下記特徴を有する前記[1]から[4]の何れか1つに記載の電力半導体デバイス(1)、
第二のソース領域(55)は、第二のベース・レイヤ(45)により、第一の絶縁レイヤ(31)から分離されている。
[7]下記特徴を有する前記[1]から[6]の何れか1つに記載の電力半導体デバイス(1)、
第二のソース領域(55)は、エミッタ電極(2)に対して電気的に接続されている。
[8]下記特徴を有する前記[1]から[6]の何れか1つに記載の電力半導体デバイス(1)、
第二のソース領域(55)は、エミッタ電極(2)から電気的に絶縁されている。
[9]下記特徴を有する前記[1]から[8]の何れか1つに記載の電力半導体デバイス(1)、
当該電力半導体デバイスは、第一の異なる導電性タイプの第一の領域(75)を更に有していて、この第一の領域は、コレクタ・レイヤ(7)に対して横方向にコレクタ側(15)に配置され、且つ、この第一の領域(75)は、ドリフト・レイヤ(6)と比べて高いドーピング濃度を有している。
[10]下記特徴を有する前記[1]から[9]の何れか1つに記載の電力半導体デバイス(1)、
当該電力半導体デバイスは、第一の異なる導電性タイプのエンハンスメント・レイヤ(9,9’)を更に有していて、このエンハンスメント・レイヤは、ドリフト・レイヤ(6)と、第一及び第二のベース・レイヤ(4,45)の内の少なくとも一方または両方との間に配置され、それにより、それらを分離する。
[11]下記特徴を有する前記[10]に記載の電力半導体デバイス(1)、
当該電力半導体デバイスは、第二の異なる導電性タイプの第三のベース・レイヤ(49,49’)を更に有していて、この第三のベース・レイヤは、ドリフト・レイヤ(6)と、第一のベース・レイヤ(4)の下側のエンハンスメント・レイヤ(9)、第二のベース・レイヤ(45)、または、第一及び第二のベース・レイヤ(4,45)の両方との間に配置され、それにより、それらを分離する。
[12]下記特徴を有する前記[1]から[11]の何れか1つに記載の電力半導体デバイス(1)、
当該電力半導体デバイスは、複数の第一のゲート電極(3)を有し、且つ、
第一のソース領域(5)と第二のソース領域(55)は、接続ソース領域(58)により互い対して接続され、この接続ソース領域は、そのような二つの第一のゲート電極(3)の間に配置され、それにより、これら二つの第一のゲート電極(3)を分離する。
[13]下記特徴を有する前記[1]から[12]の何れか1つに記載の電力半導体デバイス(1)、
当該電力半導体デバイスは、複数の第一のゲート電極(3)を有し、且つ、
第一のベース・レイヤ(4)と第二のベース・レイヤ(45)は、接続ベース・レイヤ(48)により互い対して接続され、この接続ベース・レイヤは、そのような二つの第一のゲート電極(3)の間に配置され、それにより、前記二つの第一のゲート電極(3)を分離する。
[14]下記特徴を有する前記[1]から[13]の何れか1つに記載の電力半導体デバイス(1)、
当該電力半導体デバイスは、第一のベース・レイヤ(4)及び第二のベース・レイヤ(45)と比べて高いドーピング濃度を備えた、第二の異なる導電性タイプのバー(47)を更に有していて、このバー(47)は、エミッタ側(11)に配置され、且つ、このバー(47)で、第一のソース領域(5)及び第二のソース領域(55)、ベース・レイヤ(4,45)及び第一のゲート電極(3)を終結する。
[15]下記特徴を有する前記[14]に記載の電力半導体デバイス(1)、
前記バー(47)は、第二のゲート電極(35)により、少なくとも部分的にまたは完全に覆われている。
【符号の説明】
【0056】
1・・・電力半導体デバイス、11・・・エミッタ側、15・・・コレクタ側、2・・・エミッタ電極、25・・・コレクタ電極、3・・・第一のゲート電極、31・・・第一の絶縁レイヤ、35・・・第二のゲート電極、36・・・第二の絶縁レイヤ、39・・・第三の絶縁レイヤ、300・・・トレンチ・ゲート電極、301・・・トレンチ絶縁レイヤ、305・・・プレーナー・ゲート電極、306・・・プレーナー絶縁レイヤ、309・・・更なる絶縁レイヤ、4・・・第一のベース・レイヤ、45・・・第二のベース・レイヤ、47・・・Pドープされたバー、48・・・接続ベース・レイヤ、49,49’・・・第三のベース・レイヤ、400・・・トレンチ・ベース・レイヤ、405・・・プレーナー・ベース・レイヤ、5・・・第一のソース領域、55・・・第二のソース領域、58・・・接続ソース領域、500・・・トレンチ・ソース領域、505・・・プレーナー・ソース領域、6・・・ドリフト・レイヤ、7・・・コレクタ・レイヤ、75・・・第一の領域、8・・・バッファ・レイヤ、9,9’・・・エンハンスメント・レイヤ。