特許第5694513号(P5694513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5694513アルカリ性濾液の再使用による冷苛性ソーダ抽出を用いてパルプを加工する方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694513
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】アルカリ性濾液の再使用による冷苛性ソーダ抽出を用いてパルプを加工する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   D21C 3/02 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
   D21C3/02
【請求項の数】40
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-508565(P2013-508565)
(86)(22)【出願日】2010年8月18日
(65)【公表番号】特表2013-528715(P2013-528715A)
(43)【公表日】2013年7月11日
(86)【国際出願番号】IB2010002244
(87)【国際公開番号】WO2011138633
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2013年8月6日
(31)【優先権主張番号】12/789,265
(32)【優先日】2010年5月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512285236
【氏名又は名称】バイーア スペシャルティ セルロース ソシエダッド アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100082924
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 修一
(72)【発明者】
【氏名】レイチ,マルセロ モレイラ
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0020854(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0312536(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0203291(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00〜 1/38
D21C 1/00〜11/14
D21D 1/00〜99/00
D21F 1/00〜13/12
D21G 1/00〜 9/00
D21H11/00〜27/42
D21J 1/00〜 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解パルプを製造するための冷苛性ソーダ抽出を用いてパルプを製造する方法であって、
有機材料を蒸解釜内で脱リグニンするとともに、得られる褐色紙料を処理して、溶解パルプの製造に用いられる半精製パルプを得る、脱リグニンするとともに処理する工程と、
冷苛性ソーダ抽出工程の間、前記半精製パルプを苛性溶液で抽出して、精製パルプ及びヘミセルロース含有溶液を得る、抽出工程と、
前記精製パルプを洗浄するとともに、前記ヘミセルロース含有溶液と前記精製パルプとを分離し、この洗浄で生じる使用済洗浄液を収集する工程と、
前記使用済洗浄液と前記ヘミセルロース含有溶液を混合して、アルカリ性濾液を得る工程と、
前記使用済洗浄液と前記ヘミセルロース含有溶液を含む前記アルカリ性濾液を濃縮して、濃縮アルカリ性濾液を得る、濃縮工程と、
溶解パルプの製造の際に、前記濃縮アルカリ性濾液の少なくとも一部分を前記蒸解釜内で利用する工程と、
を含む、冷苛性ソーダ抽出を用いてパルプを製造する方法。
【請求項2】
前記アルカリ性濾液の濃縮を蒸発プロセスによって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記蒸発プロセスを連続的に接続された複数のエフェクト内で行う、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記蒸発プロセスを50℃〜60℃の温度範囲で行う、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記蒸発プロセスを−0.5バール〜−0.84バールの圧力で行う、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記濃縮アルカリ性濾液が、1リットル当たり95グラム〜125グラムのNaOHという有効アルカリ濃度を有するまで前記蒸発プロセスを行う、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記濃縮アルカリ性濾液が、1リットル当たり100グラム〜110グラムのNaOHという有効アルカリ濃度を有するまで前記蒸発プロセスを行う、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記蒸解釜内で使用される前記濃縮アルカリ性濾液に白液を添加することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
白液と濃縮アルカリ性濾液との比率が、1:1.5〜1:2.5である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記苛性溶液がNaOH及びNaSを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
クラフトプロセスにおいて冷苛性ソーダ抽出を用いてパルプを製造する方法であって、
有機材料の第1のバッチを蒸解釜内で蒸解して、褐色紙料を生成する、蒸解工程と、
前記褐色紙料を洗浄するとともにスクリーニングして、半精製パルプを得る、洗浄及びスクリーニング工程と、
前記半精製パルプを、冷苛性ソーダ抽出を用いて抽出して、精製パルプ及びヘミセルロース含有溶液を得る、抽出工程と、
前記精製パルプを洗浄するとともに、冷苛性ソーダ抽出により生成した前記ヘミセルロース含有溶液と前記精製パルプとを分離し、この洗浄で生じる使用済洗浄液を収集する工程と、
前記使用済洗浄液と前記ヘミセルロース含有溶液を混合して、アルカリ性濾液を得る工程と、
前記使用済洗浄液と前記ヘミセルロース含有溶液を含む前記アルカリ性濾液を制御環境で蒸発させて、濃縮苛性溶液を得る、蒸発させる工程と、
溶解パルプの製造の際に、前記濃縮苛性溶液の少なくとも一部分を少なくとも1つの蒸解液として使用して、有機材料の第2のバッチを蒸解する、使用する工程と、
を含む、クラフトプロセスにおいて冷苛性ソーダ抽出を用いてパルプを製造する方法。
【請求項12】
前記濃縮アルカリ性濾液の第2の部分を異なるパルプ加工製造ラインに使用する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記蒸発プロセスを連続的に結合した複数のエフェクト内で行う、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記蒸発させる工程を50℃〜60℃の温度範囲で行う、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記蒸発させる工程を−0.5バール〜−0.84バールの圧力で行う、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記濃縮アルカリ性濾液が、1リットル当たり95グラム〜125グラムのNaOHという有効アルカリ濃度を有するまで前記蒸発させる工程を行う、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記濃縮アルカリ性濾液が、1リットル当たり100グラム〜110グラムのNaOHという有効アルカリ濃度を有するまで前記蒸発させる工程を行う、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記蒸解釜内で使用される前記濃縮アルカリ性濾液に白液を添加することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
白液と濃縮アルカリ性濾液との比率が、1:1.5〜1:2.5である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
冷苛性ソーダ抽出に用いられる前記苛性溶液がNaOH及びNaSを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記蒸解釜内での有機材料の第2のバッチを蒸解することによって第2の褐色紙料を生成する工程と、
前記第2の褐色紙料を洗浄するとともにスクリーニングして、半精製パルプを得る、洗浄するとともにスクリーニングする工程と、
前記第2の褐色紙料に由来する前記半精製パルプを、冷苛性ソーダ抽出を用いて抽出して、第2の精製パルプ及び第2のヘミセルロース含有溶液を得る、抽出工程と、
を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の褐色紙料が、冷苛性ソーダ抽出の前に3.0%を超えないS18溶解度を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の褐色紙料が、冷苛性ソーダ抽出の前に10.0未満のカッパー価を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の褐色紙料が、冷苛性ソーダ抽出の前に1グラム当たり1000ミリリットルの粘度を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の褐色紙料が、冷苛性ソーダ抽出の前に100以上の粘度対カッパー価比を示す、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
有機材料を蒸解釜内で蒸解して、褐色紙料を生成する、蒸解工程と、該褐色紙料を洗浄するとともにスクリーニングして、粗パルプを得る、洗浄及びスクリーニング工程と、該粗パルプを、冷苛性ソーダ抽出を用いて抽出して、精製パルプ及びヘミセルロース含有溶液を得る、抽出工程とを含む、溶解パルプを得るためにクラフトプロセスにおいて冷苛性ソーダ抽出を用いてパルプを製造する改善された方法であって、該改善が、
冷苛性ソーダ抽出により生成した前記ヘミセルロース含有溶液と前記精製パルプとを分離しながら、前記精製パルプを洗浄するとともにそこから使用済洗浄液を収集する、洗浄工程と、
前記使用済洗浄液と前記ヘミセルロース含有溶液を混合して、アルカリ性濾液を得る工程と、
前記使用済洗浄液と前記ヘミセルロース含有溶液を含む前記アルカリ性濾液を濃縮して、濃縮アルカリ性濾液を得る工程と、
溶解パルプを得るために、前記濃縮アルカリ性濾液の少なくとも一部分を、前記蒸解釜内で更なる有機材料の中和又は蒸解に利用する工程と、
を含む、溶解パルプを得るためにクラフトプロセスにおいて冷苛性ソーダ抽出を用いてパルプを製造する改善された方法。
【請求項27】
溶解パルプを得るために、クラフトプロセスにおいて冷苛性ソーダ抽出を用いてパルプを製造する方法であって、
下流の冷苛性ソーダ抽出段階に由来する濃縮苛性溶液の少なくとも一部分を用いて、有機材料を複数のバッチ蒸解釜内で蒸解し、それにより褐色紙料を生成する、蒸解工程と、
前記褐色紙料を洗浄するとともにスクリーニングして、半精製パルプを得る、洗浄するとともにスクリーニングする工程と、
前記半精製パルプを、冷苛性ソーダ抽出を用いて抽出して、精製パルプ及びヘミセルロース含有溶液を得る、抽出工程と、
冷苛性ソーダ抽出により生成した前記ヘミセルロース含有溶液と前記精製パルプとを分離しながら、前記精製パルプを洗浄するとともに、そこから使用済洗浄液を収集する工程と、
前記使用済洗浄液と前記ヘミセルロース含有溶液を混合して、アルカリ性濾液を得る工程と、
前記使用済洗浄液と前記ヘミセルロース含有溶液を含む前記アルカリ性濾液を制御環境で蒸発させて、濃縮苛性溶液を得る、蒸発させる工程と、
溶解パルプを得るために、前記濃縮苛性溶液の少なくとも一部分を、少なくとも1つの蒸解液として前記バッチ蒸解釜の少なくとも1つに戻す工程と、
を含む、溶解パルプを得るためにクラフトプロセスにおいて冷苛性ソーダ抽出を用いてパルプを製造する方法。
【請求項28】
前記蒸発プロセスを第1のエフェクトで−0.84バールの圧力でおこない、前記第1のエフェクトの下流にある第2のエフェクトでは−0.5バールの圧力で行う、請求項3に記載の方法。
【請求項29】
前記蒸発プロセスを第1のエフェクトで−0.84バールの圧力でおこない、前記第1のエフェクトの下流にある第2のエフェクトでは−0.5バールの圧力で行う、請求項13に記載の方法。
【請求項30】
溶解パルプを得るためにクラフトプロセスにおいてパルプを製造する方法であって、
有機材料の第1のバッチを、白液の一部とそれに続く、別の第2の溶液を含む中和液を用いて中和する工程と、
有機材料の第1のバッチを蒸解釜内で蒸解し、それにより褐色紙料を生成する、蒸解工程と
前記褐色紙料を洗浄するとともにスクリーニングして、半精製パルプを得る工程と、
前記半精製パルプを、冷苛性ソーダ抽出を用いて抽出して、精製パルプ及びヘミセルロース含有溶液を得る工程と、
冷苛性ソーダ抽出により生成した前記ヘミセルロース含有溶液と前記精製パルプとを分離しながら、前記精製パルプを洗浄するとともに、この洗浄で生じる使用済洗浄液を収集する工程と、
前記使用済洗浄液と冷苛性ソーダ抽出により生成した前記ヘミセルロース含有溶液を混合する工程と、
前記使用済洗浄液と前記ヘミセルロース含有溶液を含む前記アルカリ性濾液を制御環境で蒸発させて、濃縮苛性溶液を得る、蒸発させる工程と、
前記苛性溶液の少なくとも一部分を、少なくとも1つの中和液または蒸解液として、有機材料の第2のバッチを処理して溶解パルプを得るために使用する工程と、
を含む方法。
【請求項31】
前記有機材料の前記第2のバッチの処理に用いられる前記中和液は白液の第2の部分とそれに続く濃縮苛性溶液を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記蒸発させる工程を、連続的に結合した複数のエフェクト内で行う、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記蒸発させる工程を50℃〜60℃の温度範囲で行う、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記蒸発させる工程を第1のエフェクトでは−0.84バールの圧力で行い、前記第1のエフェクトの下流の第2のエフェクトでは、第1のエフェクトよりも低い圧力で行う、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記濃縮アルカリ性濾液が、1リットル当たり100グラム〜110グラムのNaOHという有効アルカリ濃度を有するまで前記蒸発させる工程を行う、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記有機材料の第2のバッチを蒸解するために使用される前記濃縮アルカリ性濾液に白液を添加することを更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項37】
前記濃縮アルカリ性濾液は、60%〜75%の濃縮アルカリ性濾液と、白液とで形成される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記蒸解釜内での有機材料の第2のバッチを蒸解することによって第2の褐色紙料を生成する工程と、
前記第2の褐色紙料を洗浄するとともにスクリーニングして、半精製パルプを得る、洗浄するとともにスクリーニングする工程と、
前記第2の褐色紙料に由来する前記半精製パルプを、冷苛性ソーダ抽出を用いて抽出して、第2の精製パルプ及び第2のヘミセルロース含有溶液を得る、抽出工程と、
を更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前記第1のバッチの有機材料の中和に用いられる前記第2の溶液が黒液を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
前記白液が、1リットル当たり95グラム〜125グラムの有効アルカリ濃度を有し、前記第2の溶液が、1リットル当たり30グラム〜35グラムの有効アルカリ濃度を有する、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は包括的にはパルプの加工に関し、より具体的には、クラフト化学パルプ化プロセスと関連する冷苛性ソーダ抽出からの廃液を処理する改善された方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
木材及び植物材料によるパルプは数多くの商業用途を有する。最も一般的な用途の一つは製紙における用途であるが、パルプはレーヨン及び他の合成材料、並びに、例えばフィルタートウ、布地、包装フィルム及び爆薬の製造に使用される酢酸セルロース及びセルロースエステルを含む多数の他の製品を製造するためにも使用することができる。
【0003】
パルプ及び紙を製造するために木材及び植物材料を加工する多数の化学的方法及び機械的方法が存在する。基本的な加工工程は、原材料を準備すること(例えば剥皮及びチップ化)と、木質繊維のセルロースからリグニン及び抽出物を分離するために、木質繊維を機械的手段又は化学的手段(例えば粉砕、叩解又は蒸解)によって分離することと、漂白によって着色物質を除去することと、得られる加工パルプを紙又は他の製品に成形することとを含む。製紙工場は一般的には、パルプ及び紙の製造に加えて、またそれと関連して、化学物質を生産及び再生する設備、副産物を収集及び加工してエネルギーを生産する設備、並びに廃棄物を除去及び処理して環境影響を最小限に抑える設備も有する。
【0004】
「パルプ化」とは一般に、繊維分離を達成するプロセスを指す。木材及び他の植物材料はセルロース、ヘミセルロース、リグニン及び他の微量成分を含む。リグニンは個々の繊維の間に散在する高分子のネットワークであり、個々の木質繊維を結び付ける細胞間接着分子として機能する。パルプ化プロセスの間にリグニン巨大分子は断片化し、それにより個々のセルロース系繊維が遊離し、紙又は他の最終製品の変色及びその後の崩壊を引き起こし得る不純物が溶解する。
【0005】
クラフトプロセスは、一般的に用いられるパルプ化プロセスである。クラフトパルプ化プロセスにより製造された紙は、例えば包装産業において使用される漂白板紙及びライナーボードを作製するために使用することができる。従来のクラフトプロセスでは、「白液」として知られる水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムとの水性混合物を用いて木材を処理する。この処理によってリグニンとセルロースとの間の結合が破壊され、リグニンの大部分及びヘミセルロース巨大分子の一部分が、強塩基性溶液に可溶性の断片にまで分解される。リグニンを周囲のセルロースから遊離させるこのプロセスは、脱リグニンとして知られている。その後、可溶性部分をセルロースパルプから分離する。
【0006】
図1は従来のクラフトプロセス100のフロー図を示す。プロセス100は、木材チップ(又は他の有機パルプ含有原材料)118及びアルカリ性溶液を、蒸解釜と呼ばれる高圧反応槽に供給して脱リグニンを行うことを伴い、これは「蒸解」段階121と称される。木材チップを、下流のプロセスにより生成することができるか又は別個の供給源から供給することができる白液111と合わせる。脱リグニンは数時間かかる場合があり、脱リグニンの程度は無単位の「Hファクター」で表され、これは100℃で1時間の蒸解が1のHファクターに等しいものとして一般に定義される。高温のために、反応槽は多くの場合、蒸気の導入によって加圧される。蒸解工程の終盤に、反応槽を大気圧まで減圧させることにより、蒸気及び揮発性物質が放出される。
【0007】
蒸解に使用される白液は例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)及び硫化ナトリウム(NaS)を含有する苛性溶液であり得る。白液の特性は、有効アルカリ(「EA」)及び硫化度で表されることが多い。有効アルカリ濃度は、水酸化ナトリウムの重量に硫化ナトリウムの重量の2分の1を加えたものとして計算することができ、液体1リットル当たりの水酸化ナトリウムの当量に相当し、1リットル当たりのグラム数で表される。水酸化ナトリウムとしての有効アルカリ添加量は、木材の炉乾燥重量当たりの水酸化ナトリウムの当量に相当し、百分率で表される。硫化度は、水酸化ナトリウムの重量と硫化ナトリウムの重量の2分の1との総和に対する硫化ナトリウムの重量の2分の1の比率であり、百分率で表される。
【0008】
蒸解後、「褐色紙料」としても知られる褐色の固体セルロース系パルプを、蒸解段階121で使用される蒸解釜から放出し、その後、洗浄及びスクリーニングプロセス122においてスクリーニング及び洗浄する。スクリーニングによって、パルプと、結束繊維(木質繊維の束)、ノット(未蒸解のチップ)、夾雑物及び他の残渣とが分離される。パルプから分離された物質を「リジェクト」、パルプを「アクセプト」と称する場合もある。アクセプト流中で高い純度を維持しながらリジェクト流中のセルロース系繊維の量を減少させるために、多段カスケード操作が利用されることが多い。更なる繊維の回収は、下流のリファイナを用いて、又は蒸解釜内の結束繊維及びノットの再処理によって達成することができる。
【0009】
次いで、褐色紙料を幾つかの連続した洗浄段階に供し、使用済み蒸解液及び溶解物質をセルロース繊維から分離することができる。蒸解段階121に用いられた蒸解釜からの使用済み蒸解液112と、洗浄及びスクリーニングプロセス122から収集された液体113とは一般的に、その色合いのためにどちらも「黒液」と称される。黒液は一般にリグニン断片、断片化したヘミセルロースに由来する炭水化物、及び無機物を含有する。例えば図1において洗浄及びスクリーニングプロセス122で生じた黒液113を表す矢印によって示されるように、蒸解工程において白液に加えて黒液を使用し、蒸解段階121に移行することができる。適切なアルカリ濃度を達成する必要に応じて、又は他の類似の目的のために、アキュムレータータンク(図1には示さない)からの黒液135を、蒸解段階121の一環として蒸解釜に供給してもよい。
【0010】
次いで、洗浄及びスクリーニングプロセス122により除塵した褐色紙料パルプ131を白液114とブレンドし、反応槽に供給して、ヘミセルロース等の溶解物質及び低分子量セルロースを更に除去することができる。例示的な分離方法はいわゆる冷苛性ソーダ抽出(「CCE」)法であり、図1にはCCE反応段階123で表されている。抽出を行う温度は様々とすることができるが、典型的な範囲は60℃未満である。
【0011】
次いで、CCE反応段階123で使用される反応装置からの精製パルプ132を、使用済み冷苛性溶液及び溶解したヘミセルロースから分離し、CCE洗浄段階124において第2の洗浄及び分離ユニット内で数回洗浄する。比較的高いアルファセルロース含量を有するが、依然としてリグニンを幾らか含有する、得られる精製褐色パルプ133を、更なる脱リグニンのために下流の漂白ユニットに進ませる。一部のパルプ製造プロセスでは、漂白はCCE反応段階123及びCCE洗浄段階124の前に行われる。
【0012】
合成材料又は医薬品の製造等の多数の用途において、純度又は品質の非常に高いパルプを得ることが望ましい。パルプ品質は幾つかのパラメーターによって評価することができる。例えば、アルファセルロースの含有率は加工パルプの相対純度を表す。脱リグニン及びセルロース分解の程度は、それぞれカッパー価(「KN」)及びパルプ粘度によって測定される。より高いパルプ粘度は、より長いセルロース鎖長及びより少ない分解を示す。18wt%の水酸化ナトリウム水溶液におけるパルプ溶解度(「S18」)から、残留ヘミセルロースの量が推定される。10wt%の水酸化ナトリウム水溶液におけるパルプ溶解度(「S10」)は、ヘミセルロースと分解したセルロースとの総和を含む、塩基性溶液中の可溶物の総量に関する指標を与える。最終的に、S10とS18との差から、分解されたセルロースの量が求められる。
【0013】
従来のプロセスでは、CCEアルカリ性濾液とも称される、CCE洗浄及び分離段階124からの濾液116は、洗浄及び分離段階124からの使用済み冷苛性溶液及び使用済み洗浄液の両方を含む。この濾液116は多くの場合、相当量の高分子ヘミセルロースを含有する。ヘミセルロース含量の高い濾液を、蒸解段階121の蒸解釜内で蒸解液の一部として使用すると、ヘミセルロースが溶液から析出し、セルロース系繊維へと沈殿する可能性がある。これは高品質パルプの達成を妨げる場合がある。一方、或る特定の用途、例えば高品質糸又は合成織物、液晶ディスプレイ用の材料、アセテート誘導体から作られる製品、ビスコース製品(タイヤコード及び特殊繊維等)、タバコに使用されるフィルタートウ部分、並びに或る特定の食品用途及び製薬学的用途では、最小量の再沈殿ヘミセルロースしか含有せず、アルファセルロース含量の高いパルプが必要とされる。
【0014】
CCEアルカリ性濾液116の一部分を蒸解段階121において再使用することができ、残りの部分は、蒸解段階121におけるヘミセルロースの再沈殿のリスクを抑えるために回収領域134に送られる。回収領域134では、分流させたCCEアルカリ性濾液116を過剰の黒液と合わせ、濃縮し、かつ、回収ボイラー内で燃焼させて、有機物を消費するとともに無機塩を回収することができ、そうでなければCCEアルカリ性濾液116は別のパルプ化ラインまで運ばれているか、又はそれらの組合せである。蒸解段階121において適当なアルカリバランスを維持するために、その後、新たなアルカリ供給源が、回収領域134に送られたCCE濾液及び黒液を補充するのに必要とされる場合がある。回収プロセスと新たなアルカリ供給源の準備とにより、製造コストの増大が生じる傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
アルファセルロース含量の非常に高い溶解パルプをもたらす、パルプを加工する方法及びシステムが必要とされている。蒸解時のヘミセルロースの沈殿を最小限に抑えながら、効率の増大をもたらし、CCE濾液の有効利用を可能にする、パルプを加工する方法及びシステムが更に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一態様では、パルプ製造のための改善された方法及びシステムが特に、冷苛性ソーダ抽出プロセスから得られる精製パルプを洗浄することと、それにより得られるアルカリ性濾液を収集することと、アルカリ性濾液を、例えば蒸発によって濃縮することと、濃縮アルカリ性濾液の少なくとも一部分を上流の蒸解プロセスに利用することとを伴う。
【0017】
1つ又は複数の実施の形態によると、クラフトプロセスと併せて冷苛性ソーダ抽出を用いるパルプ製造のための方法及びシステムが、有機パルプ含有材料を蒸解釜内で脱リグニンする工程と、得られる褐色紙料を処理して、半精製パルプを得る、処理する工程と、半精製パルプを苛性溶液で抽出して、精製パルプ及びヘミセルロース含有溶液を得る、抽出する工程と、ヘミセルロース含有溶液と精製パルプとを分離する工程と、精製パルプを洗浄するとともに、それにより得られるアルカリ性濾液を収集する工程と、アルカリ性濾液を濃縮する工程と、濃縮アルカリ性濾液の少なくとも一部分を蒸解釜内で利用する工程とを含む。濃縮アルカリ性濾液によって、蒸解プロセスを開始するために初めに使用される異なる蒸解液を徐々に置き換えることができ、それにより効率が増大することになる。
【0018】
或る特定の実施の形態では、アルカリ性濾液を濃縮して、例えば水酸化ナトリウムとして1リットル当たり90グラム以上の有効アルカリを含有する溶液を得る。濃縮アルカリ性濾液を蒸解液の一部として利用することによって、褐色紙料の純度及び得られる精製パルプの純度を高めることができる。
【0019】
更なる実施形態、代替形態及び変形形態もまた本明細書中に記載されるか、又は添付の図面において示される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】当該技術分野で知られる、パルプ製造と関連して用いられる従来の前加水分解クラフトパルプ化プロセスの一般的なプロセスフロー図である。
図2】本明細書中に開示される一実施形態に従うパルプ製造プロセスのプロセスフロー図である。
図3図2に示される一般的な原理に従う冷苛性ソーダ抽出後の蒸発のためのシステム及び関連プロセスの概念図である。
図4】特に冷苛性ソーダ抽出と関連して使用することのできる従来の蒸発システム及び蒸発プロセスを示す図である。
図5図2及び図3に示される一般的な原理に従う冷苛性ソーダ抽出による濾液の蒸発のためのシステム及び関連プロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1つ又は複数の実施形態によると、パルプ加工のための方法及びシステムは、白液等の第1の苛性溶液を、原料パルプを含有する或る量の木材又は他の有機材料と、適切なタンク又は反応槽(蒸解釜)内で合わせ、例えば130℃〜180℃の好適な温度で蒸解して褐色紙料を得ることを伴う。褐色紙料の洗浄及びスクリーニングにより、半精製パルプと、蒸解釜に戻される派生物(黒液等)とが生じる。半精製パルプを別の苛性溶液(同様に白液であってもよい)によって、例えば60℃未満の好適な温度で抽出して精製パルプを得ることができる。更なる洗浄によって、ヘミセルロース含有溶液を精製パルプから分離することで、別個に収集及び貯蔵することのできるアルカリ性濾液の形態の別の苛性溶液を得ることができる。このアルカリ性濾液を、例えば蒸発又は他の手段によって濃縮し、単独で又は蒸解釜内の第1の苛性溶液と合わせて用いて有機材料を処理して、サイクルを再開することができる。
【0022】
1つ又は複数の実施形態の一態様によると、木材チップ又は他のパルプ含有有機物を、反応槽内で苛性溶液と反応させる。反応が終わると、反応混合物は遊離セルロース系繊維を含有する。これらの繊維を、第2の苛性溶液で更に抽出してヘミセルロースを溶解する。使用済み苛性溶液を溶解されたヘミセルロースとともに、抽出したパルプから分離し、パルプを更なる洗浄に供して、残留苛性溶液及びヘミセルロースを除去する。ヘミセルロースを含有する洗浄液及び使用済み苛性溶液を合わせ、濃縮して濃縮CCE濾液を得る。次いで、濃縮されたCCE濾液を単独で又は別の苛性溶液と合わせて用いて、反応槽内の木材を処理することができる。
【0023】
上記で概説した全ての工程は、従来の設備で行うことができる。本明細書により上記で概説した工程に従うことによって、蒸解に一般に使用される白液の有効アルカリ濃度と同程度の有効アルカリ濃度を有する濃縮CCE濾液を得ることができる。
【0024】
一実施形態によるプロセスが図2に示される。プロセス200は蒸解段階221から始まり、従来のクラフトプロセスと同様に、木材チップ又は他のパルプ含有有機材料218が、高圧に耐えることが可能な蒸解釜に供給される。蒸解釜は任意の好適な容量、例えばおよそ360立方メートルであり得る。典型的な工業的状況では、複数の蒸解釜を並行して稼働させ、種々の蒸解釜をパルプ製造プロセスの種々の段階で操作することができる。
【0025】
蒸解釜において用いられる木材のタイプ又は他の植物材料若しくは有機材料の特定の選択は、所望の最終製品に応じて決まり得る。例えば、マツ、モミ及びトウヒ等のソフトウッドは一部の誘導体化プロセスに使用され、セルロースエーテル(例えば食品、塗料、油回収流体又は油回収泥、紙、化粧品、医薬品、接着剤、印刷製品、農業製品、陶磁器、織物、洗剤及び建材中に添加物として使用することができる)のような、高い粘度を有する製品を得ることができる。ユーカリ及びアカシア等のハードウッドは、非常に高い粘度を有するパルプを必要としない用途に好適であり得る。
【0026】
一実施形態では、蒸解釜を蒸解段階221の間、蒸気又は他の適切な手段を用いて第1の所定の温度まで加熱する。この所定の温度は、110℃〜130℃、より具体的には例えば120℃とすることができる。この特定の例での加熱は15分間〜60分間(例えば30分間)の期間にわたって行われるが、設備の詳細及び加熱する有機材料の性質に応じて他の加熱時間を用いてもよい。
【0027】
次いで、好ましくは蒸解釜を蒸気又は他の手段によって、前加水分解段階の第1の所定の温度を上回る第2の温度まで更に加熱する。この第2の前加水分解温度は好ましくは165℃前後であるが、この場合も正確な温度は設備及び有機材料を含む多数の変動要素に応じて決まり得る。前加水分解の加熱は30分間〜120分間(例えば60分間)にわたって行うことができるが、この場合も加熱時間は必要に応じて様々であり得る。前加水分解温度に到達した後、蒸解釜を好適な期間、例えば35分間〜45分間、又は前加水分解を完了するのに十分な任意の他の時間にわたってその温度に保持する。
【0028】
好ましい実施形態では、蒸解段階221の一環として中和溶液210を蒸解釜に添加する。中和溶液210は新たに調製した白液とそれに続く黒液とからなるものとすることができるか、又はCCE濾液とそれに続く黒液とからなるものとすることができる。白液は、例えば水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムとの混合物の形態をとることができる。好ましい実施形態では、白液は、水酸化ナトリウム(NaOH)として1リットル当たり85グラム〜150グラムの有効アルカリ、より好ましくは1リットル当たり95グラム〜125グラムの水酸化ナトリウムという有効アルカリ、最も好ましくは1リットル当たり100グラム〜110グラムの水酸化ナトリウムという有効アルカリを有する。白液の硫化度は、10%〜40%、好ましくは15%〜35%、最も好ましくは20%〜30%の範囲を有し得る。
【0029】
黒液中の有効NaOH濃度は、1リットル当たり10グラム〜50グラムであるものとすることができるが、特定のプロセスに応じて様々であり得る。一実施形態では、中和溶液210は白液及び黒液の両方を含み、白液についての有効アルカリ濃度は1リットル当たり85グラム〜150グラムの水酸化ナトリウムであり、黒液についての有効アルカリ濃度は1リットル当たり20グラム〜50グラムの水酸化ナトリウムである。好ましい実施形態では、白液及び黒液の両方を含む中和溶液210は、それぞれ1リットル当たり95グラム〜125グラム及び1リットル当たり30グラム〜35グラムの有効アルカリ濃度を有し、より好ましくはそれぞれ1リットル当たり100グラム〜110グラム及び1リットル当たり38グラム〜45グラムの有効アルカリ濃度を有する。中和溶液210は、合わせた液体について1リットル当たり38グラム〜48グラムのNaOHという有効アルカリ濃度を有し得る。
【0030】
中和溶液210は蒸解釜に一度に添加してもよく、そうでなければ蒸解釜に数回に分けて添加してもよい。一実施形態では、白液及び黒液の両方を含む中和溶液210を、2回に分けて添加し、それにより白液を初めに蒸解釜に供給し、続いて黒液を添加する。一実施形態では、中和溶液210を130℃〜160℃、より好ましくは140℃〜150℃の温度で添加する。添加は15分間〜60分間、好ましくは30分間にわたって行うことができる。好ましい実施形態では、中和溶液210は、各々15分間にわたって140℃〜150℃の温度で2回に分けて添加される。
【0031】
次いで、第1の苛性溶液211で中和溶液210を置き換えることができ、この第1の苛性溶液211を用いて蒸解釜内で木材を蒸解することができる。第1の苛性溶液211は中和溶液210の組成と同じ組成を有していても、又は異なる組成を有していてもよい。第1の苛性溶液211中の水酸化ナトリウム及び硫化ナトリウムの範囲及び好ましい範囲は中和溶液210の場合と同じであり、当業者に既知である。
【0032】
蒸解釜は蒸気又は他の手段を用いて蒸解温度まで加熱することができる。蒸解温度は140℃〜180℃の範囲とすることができ、好ましくは145℃〜160℃の範囲である。加熱は10分間〜30分間又は他の好適な期間にわたるものとすることができる。蒸解釜を蒸解プロセスに好適な期間、例えば15分間〜120分間にわたって蒸解温度に保持する。温度範囲及び蒸解時間は、好ましくは130〜250の範囲である目標とするHファクターで選ばれる。
【0033】
中和及び蒸解するための好ましい技法が、本発明の譲受人に譲渡され、本明細書中に完全に記載されているかのように、参照により本明細書中に援用される、同時出願された「高アルファ溶解パルプの生産のための方法及びシステム(Method and System for High Alpha Dissolving Pulp Production)」と題する同時係属中の米国特許出願第12/789,307号(代理人整理番号161551−0003)に記載されている。
【0034】
蒸解段階221の結果として、褐色紙料212が得られる。褐色紙料212を従来のクラフト手順と同様に、洗浄及びスクリーニングプロセス222に供給し、そこで褐色紙料212を種々のタイプの篩又はスクリーンを用いてスクリーニングし、遠心除塵する。次いで、褐色紙料212をスクリーニング及び洗浄プロセス222において洗浄機で洗浄する。洗浄機は市販の任意のタイプ、例えば水平ベルト洗浄機、回転式ドラム洗浄機、真空フィルター、洗浄プレス、圧縮バッフルフィルター、大気圧ディフューザー及び圧力ディフューザーであり得る。洗浄ユニットは、パルプが洗浄水と逆方向に移動するように段階間で向流を用いることができる。一実施形態では、加圧水を用いて褐色紙料212を洗浄する。別の実施形態では、希釈苛性溶液を使用して褐色紙料212を洗浄する。希釈苛性溶液は、例えば1リットル当たり5グラム未満のNaOH、より好ましくは1リットル当たり1グラム未満のNaOHという有効アルカリ濃度を有し得る。使用済み洗浄液を収集して、プロセス200の他の部分で黒液213として使用する。一実施形態では、黒液213は、蒸解段階221において蒸解釜に供給される蒸解液又は他の苛性溶液211の一部として使用される。
【0035】
次いで、洗浄及びスクリーニングプロセス222による半精製パルプを、この場合も従来の方法と同様に、冷苛性ソーダ抽出(「CCE」)段階223に用いられる反応装置にスラリーとして圧送し、そこで第2の苛性溶液214(第1の苛性溶液211と同じであっても、又は異なっていてもよい)と混合して、所望のセルロース系繊維からのヘミセルロースの更なる分離を行う。冷苛性ソーダ抽出は当該技術分野で既知のプロセスである。冷苛性ソーダ処理システムの例は、例えばAli et al.の米国特許出願公開第2004/0020854号、及びSvenson et al.の米国特許出願公開第2005/0203291号(どちらも本明細書中に完全に記載されているかのように、参照により本明細書中に援用される)により詳細に記載されている。
【0036】
CCE抽出プロセス223におけるヘミセルロース抽出は好適な温度、一般的には15℃〜50℃、好ましくは30℃前後で行われる。パルプスラリーのpHは一般的には13超であり、有効アルカリは1リットル当たり60グラム〜90グラムのNaOHである。パルプを冷苛性溶液214中に十分な時間浸漬して、ヘミセルロースを溶液中に所望の程度拡散させる。30℃、pH13での抽出についての例示的な滞留時間は30分である。冷苛性ソーダ抽出は一般に、アルファセルロース含量が92パーセント〜96パーセントの範囲内の精製パルプをもたらすことができるが、特に他の望ましい特性(粘度レベル等)を維持しながら、その規模の上限の純度又はそれを超える純度に到達することは歴史的に極めて困難であった。高いプロセス効率を維持しながら高い純度に到達することも困難であった。
【0037】
CCE抽出プロセス223のブレンド手順及び抽出手順に使用される苛性溶液214は、新たに調製した水酸化ナトリウム溶液、下流のプロセスからの回収物、又はパルプ工場若しくは製紙工場の操作における副産物、例えば半苛性白液、酸化白液等を含み得る。水酸化アンモニウム及び水酸化カリウム等の他の塩基性溶液を用いてもよい。
【0038】
CCE抽出プロセス223において使用される苛性溶液214は、好適な水酸化物濃度を有し得る。例えば、苛性溶液214は3重量%〜50重量%の水酸化物濃度、より好ましくは6重量%〜18重量%の水酸化物濃度を有し得る。抽出は、任意の好適なパルプ粘稠度、例えば約2重量%〜50重量%、好ましくは約5重量%〜10重量%で行うことができる。この場合の「粘稠度」という用語は、抽出混合物中のセルロース系繊維の濃度を指す。
【0039】
所望の滞留時間の後、パルプは次の洗浄プロセス224において使用済み冷苛性溶液から分離される。使用済み冷苛性溶液は抽出されたヘミセルロースを含有する。パルプはCCE洗浄ユニット内で洗浄される。例示的な洗浄機としては、水平ベルト洗浄機、回転式ドラム洗浄機、真空フィルター、洗浄プレス、圧縮バッフルフィルター、大気圧ディフューザー及び圧力ディフューザーが挙げられる。洗浄液は例えば純水、又は例えば1リットル当たり1グラム以下のNaOHという有効アルカリ濃度を有する希釈苛性溶液を含み得る。使用済み洗浄液を従来の方法で収集し、使用済み冷苛性溶液と合わせて別の苛性溶液216を得ることができ、この苛性溶液216は一態様では洗浄プロセス224から得られるアルカリ性濾液を含む。抽出及び洗浄されたパルプ233はその間、次の漂白段階へ移動する。
【0040】
第3の苛性溶液216は濃縮プロセス225に供給することが好ましく、例えば濃縮のための蒸発システムに供給することができる。典型的な蒸発システムは、連続して設置された幾つかのユニット又はエフェクトを有し得る。液体は各々のエフェクトを通って移動し、エフェクトの出口で更に濃縮される。真空を適用して、溶液の蒸発及び濃縮を促進してもよい。
【0041】
濃縮プロセス225に関連して、薄い黒液243を、例えば連続配置の1つ又は複数のエフェクトを用いて蒸発させることで薄い黒液243の濃度をプロセス中漸増させることによって、濃い黒液244へと濃縮することもできる。濃い黒液244を蓄積タンク内に貯蔵し、回収エリア(回収ボイラー)において又は他の目的で使用し、それにより生じる副産物の再使用又は再循環の効率を増大させることができる。
【0042】
蒸発に使用されるエフェクトの数は、所望の濃縮レベル、プラントの容量、及び他の要因に一部依存する。一実施形態では、濃縮段階225のための蒸発設備は、例えば1時間当たり740トンの液体を加工することが可能な6つのエフェクトを備える。エフェクトは、蒸解段階221からの黒液の濃縮に使用されるものと同じタイプであってもよいが、その必要はない。例えば、一連のエフェクトを使用して、蒸解段階から残った薄い黒液を濃縮し、それを保持タンク内に貯蔵することが一般的であり、この場合、黒液を蒸解プロセスに使用するために再循環させるか、そうでなければ異なる目的で他のプロセスに送ることができる。一般に、過剰の黒液が生じ、この過剰の黒液を発電のために焼却炉内で燃焼させる。
【0043】
好ましい実施形態(図3に示される)では、CCE洗浄段階224からのアルカリ性抽出溶液316の濃縮は、6つのエフェクトのうち2つ(この例では、第5のエフェクト327及び第6のエフェクト328)において減圧下で行い、濃縮溶液330、すなわち濃縮CCEアルカリ性濾液が得られる。蒸解段階221からの薄い黒液の濃縮黒液への濃縮は、6つのエフェクトのうち4つにおいてより高圧で行う。この例では、薄い黒液313を1つのエフェクト(この例では、第4のエフェクト326)に導入し、予備濃縮の後、更なる濃縮のために他の下流のエフェクト329に圧送する。使用済み洗浄液314と使用済み冷苛性溶液315との組合せとすることができる、CCE洗浄段階224からのアルカリ性抽出溶液316の濃縮は、第5のエフェクト327及び第6のエフェクト328において、一例では1リットル当たり約85グラム〜110グラムのNaOH、より好ましくは1リットル当たり95グラム〜105グラムのNaOHの範囲内である所望の濃度に達するのに十分な期間、好適な圧力で行うことができる。一実施形態では、アルカリ性抽出溶液316は、第5のエフェクト327内ではおよそ−0.84バール(g)の負圧下、第6のエフェクト328内ではおよそ−0.50バール(g)の負圧下で留まり、例えば1リットル当たりおよそ95グラム〜105グラムのNaOHという有効アルカリ濃度を有する濃縮溶液330が得られる。
【0044】
有利には、加工プラントは、設備の追加費用がほとんど必要とされることなく、本発明のプロセスを用いるように構成することができる。プラントが、例えば蒸解段階から残った薄い黒液を濃縮させるのに6つのエフェクトを使用するものである場合、エフェクトのうち2つを、CCE洗浄プロセスにおいて生成するアルカリ性濾液の濃縮に使用するために再配置することができる。黒液の濃縮に利用可能なエフェクトの数の減少は、黒液蒸発能力をおよそ20%〜30%低下させるが、黒液の品質(最終固形物濃度)を維持することができ、4つのエフェクトから得られる黒液を、大きな影響を何ら及ぼすことなく回収ボイラーにおいて燃焼させることが可能であるため、問題ではない。しかしながら、本明細書に記載の本発明の技法に従って、エフェクトのうち2つをアルカリ性濾液の濃縮及び再循環に使用することは、プラントの効率に重大な影響を及ぼす可能性がある。同じ数のエフェクトを2つの異なるプロセスに使用することができるため、操作者が全てのエフェクトにおいて薄い黒液の蒸発に従来のプロセスを使用することを選択することができるように、又は、さほど悪影響を伴わずにエフェクトのうち幾つかをアルカリ性濾液の濃縮に割り当て、効率面での改善を得ることができるようにプラントを構成することができる。
【0045】
図2に戻ると、濃縮アルカリ性濾液溶液217は、中和溶液210として及び/又は蒸解液211の一部として、全体的に又は部分的に再使用することができる。一実施形態では、中和溶液210は全て濃縮アルカリ性濾液溶液217からなる。別の実施形態では、中和溶液210は濃縮アルカリ性濾液溶液217と、最初に蒸解釜に添加することができるとともに任意に濃縮アルカリ性濾液溶液217を強化するのに使用することもできる白液との両方を含む。第3の実施形態では、濃縮アルカリ性濾液溶液217は蒸解液211として使用される。第4の実施形態では、濃縮アルカリ性濾液溶液117は、蒸解液211として使用するために白液と合わせられる。
【0046】
蒸解段階221において再使用しない濃縮アルカリ性濾液溶液217は、他の目的に使用することができる。例えば、濃縮アルカリ性濾液溶液217を、任意に他の目的、例えば図2の例において矢印251によって示されるように隣接する製造ラインで(白液として)使用するために分流させることができる。同時に濃縮アルカリ性濾液溶液217は、蒸解段階221におけるより高い液体濃度の使用を可能にし、それにより繊維へのヘミセルロースの再沈殿を防ぐこともできる。
【0047】
図4及び図5は、冷苛性ソーダ抽出と関連する蒸発プロセスのための従来のシステムと、本明細書中に開示される1つの可能な実施形態とを示し、それらを比較するものである。図4は特に冷苛性ソーダ抽出とともに使用することのできる蒸発プロセスを示す、従来のシステム400の図である。図4に示されるように、システム400は多数のエフェクト461A〜461D及び462〜466を含む。蒸解プロセスからの薄い黒液413は、エフェクトの1つ、この場合は第4のエフェクト464に受け取られ、そこで蒸発プロセスが開始する。パイプ441及び442は、それぞれ第4のエフェクト464を第5のエフェクト465に、第5のエフェクト465を第6のエフェクト466に接続する。第6のエフェクト466内での加工の後、半濃縮黒液を中間熱交換器450及び452に移動させる。半濃縮黒液を熱交換器452から第3のエフェクト463に供給し、そこからの産物を別の中間熱交換器454に移動させる。
【0048】
次いで、半濃縮黒液を熱交換器454から第2のエフェクト462(1つの本体が2つの液体循環ユニット「A」及び「B」に分かれている)に供給する。第2のエフェクト462内での蒸発の後、黒液の一部を第1のエフェクト(濃縮器)へと直接圧送し、他の部分を蒸発器459内で大気圧下でのフラッシュ蒸発に供し、灰混合へと圧送する(432)。第1のエフェクトは物理的に4つの蒸発器461A〜461Dからなることができる。蒸発器は円筒多管式の流下膜式蒸発器であり得る。蒸発器461A〜461Dの4つ全てを同時に操作することができ、これによって、より高濃度の黒液の生成を可能にすることができる。灰を含有する液体を、灰混合タンクから蒸発器461Dへと圧送する。蒸発器461D内での蒸発の後、濃縮重黒液をフラッシュ蒸発器459においてフラッシュし、加圧重液タンク(図4には示さない)内に貯蔵する。
【0049】
蒸発システム400の産出物には、重(濃い)黒液430、及び洗浄液貯蔵部に送られる凝縮物431がある。濃い黒液430は、本明細書で先に記載した目的に使用することができる。凝縮物タンク440Aでは、第2のエフェクト462、第3のエフェクト463及び第4のエフェクト464からの蒸気凝縮物を合わせて清浄凝縮物(「A凝縮物」)を得て、第6のエフェクト466の蒸気入口圧力と同様の圧力を受けるまで幾つかの段階を経てフラッシュすることができる。A凝縮物を清浄凝縮物タンク(凝縮物タンク440のタンクA)に収集し、他の部分、例えば繊維ラインに使用することができる。
【0050】
第4のエフェクト464及び第5のエフェクト465の清浄側からの凝縮物は、中間凝縮物(「B凝縮物」)を形成し、これを第6のエフェクト466の蒸気入口圧力と同様の圧力を受けるまで幾つかの段階を経てフラッシュするか又は減圧する。フラッシュしたB凝縮物を、蒸発システムの他の部分、例えば第6のエフェクト466の清浄側である、分離された表面凝縮器470の主要なセクションからの処理された若しくは未処理の凝縮物、及び/又はストリップ塔からの処理された凝縮物と合わせる。この合わせた凝縮物は概して、A凝縮物よりも多くの不純物を含有し得る。B凝縮物を中間凝縮物タンク(凝縮物タンク440のタンクB)に収集し、パルプ製造プロセスの他の部分、例えば苛性化プラントに使用することができる。
【0051】
概してA凝縮物又はB凝縮物よりも多くの不純物を含有する汚染凝縮物(「C凝縮物」)を、第5のエフェクト465及び第6のエフェクト466の汚染側、分離された表面凝縮器の副次的なセクション、並びに真空システムから収集することができる。C凝縮物は汚染凝縮物タンク(凝縮物タンク440のタンクC)内に貯蔵する。
【0052】
図5は、図2及び図3に示される一般的な原理に従う冷苛性ソーダ抽出による濾液の蒸発のプロセスを示す、システム500の図である。この例では、システム500は、図4のシステム400と同じ基本的設備構成及び同じ数のエフェクトを用いるが、他の実施形態ではそうである必要はない。図5の点線は、CCE濾液濃縮の更なる機能性を達成するために、図4の設備に追加することのできる更なる接続(パイプ及びバルブを含む)を示す。図5では、システム500は同様に複数のエフェクト561A〜561D及び562〜566を有する。エフェクト561A〜561D、562及び563は、図4の対応するエフェクト461A〜461D、462及び463と同じ一般用途に適う。しかしながら、図5に示すシステム500では、薄い黒液513は、初めに第4のエフェクト564において濃縮された後、バイパスパイプ537(追加のバルブ536によって制御される)を介して(その他の点では図4の熱交換器450と同様である)熱交換器550に供給される。このようにして、薄い黒液の濃縮プロセスは第5のエフェクト565及び第6のエフェクト566を迂回する。
【0053】
図4のシステム400とは異なり、図5のシステム500では、CCE洗浄工程からの冷苛性ソーダ抽出(CCE)濾液516は、コネクタパイプ541を介して第5のエフェクト565に供給され、そこで濃縮プロセスの最初の部分を受ける。CCE濾液516からの第4のエフェクト564の隔離を可能にする新たなバルブ538が、図4に追加されている。例えばより少ない量の濃縮が望まれる場合に、CCE濾液516を第6のエフェクト566に直接供給するという選択肢を与えるために、任意の分岐コネクタパイプ539を追加してCCE濾液516を第6のエフェクト566に結び付けることができる。そうでなければ、第5のエフェクト565内での蒸発の後、半濃縮CCE濾液はコネクタパイプ542を介して第6のエフェクト566に供給され、そこで所望の程度の蒸発によって更なる濃縮を受ける。
【0054】
濃縮CCE濾液560を、ライン591を介して凝縮物タンク540のタンクCへと、又はライン592を介して凝縮物タンク540のタンクBへと方向付けることができる。先に記載のクラフト加工工程に関連して、濃縮CCE濾液560を蒸解段階の一環として白液、黒液又は他の溶液と混合することができる。必要に応じて、半濃縮CCE濾液を、バルブ534によって制御される別の追加のコネクタパイプ535を介して、第5のエフェクト565から熱交換器550に送ってもよい。コネクタパイプ535はまた、薄い黒液の濃縮に5つのエフェクトを使用するとともにCCE濾液の濃縮に単一のエフェクト(第6のエフェクト)のみ使用するという選択肢を与える。この構成は特に、蒸解溶液及び洗浄溶液の様々な混合及び濃縮に関して顕著な柔軟性をもたらす。CCE濾液が第5のエフェクト565及び第6のエフェクト566において濃縮される本実施形態では、凝縮物の流れをバルブのスイッチによって変更することができる。例えば、第4のエフェクト564の汚染側からの凝縮物を汚染凝縮物(C凝縮物)の一部とすることができ、第6のエフェクト466の汚染側からの凝縮物を中間凝縮物(B凝縮物)の一部とすることができ、分離された表面凝縮器の主要セクションからの凝縮物を清浄凝縮物(A凝縮物)の一部とすることができる。
【実施例】
【0055】
本発明の実施形態のプロセスを以下の実施例において実証する。実施例に記載の分析結果は、以下の方法を用いて得られる。
【0056】
25℃でのパルプのS10溶解度及びS18溶解度を測定するのに使用される方法は、TAPPI規格T235 cm−00(本明細書中に完全に記載されているかのように、参照により本明細書中に援用される)に基づく。パルプを10%及び18%の水酸化ナトリウム(NaOH)溶液でそれぞれ抽出する。炭水化物の溶解を、重クロム酸カリウムでの酸化によって決定する。ヘミセルロース及び分解セルロース等の低分子量炭水化物は、水酸化ナトリウム溶液を用いてパルプから抽出することができる。このため、アルカリにおけるパルプの溶解度は、パルプ化プロセス及び漂白プロセスにおけるセルロースの分解及びヘミセルロースの喪失又は保持についての情報を与える。S10溶解度の測定のための典型的な手順では、10グラムの炉乾燥パルプサンプルをビーカーに入れ、75mLの10wt%NaOH溶液をパルプに添加する。混合物をパルプが完全に分散するまで十分な時間にわたって分散装置で撹拌する。分散装置の一例は、変速モーターと、シェルを有するステンレス撹拌棒とを有し得る。モーターの速度及びブレードの角度は、撹拌の際にパルプ懸濁液中に空気を取り込まないように調節する。パルプが完全に分散した後、更に25mLの10%NaOHを混合物に添加して、全てのパルプ繊維が確実にアルカリ溶液に覆われるようにする。混合物を含有するビーカーを25±0.2℃の水浴内に、NaOH試薬の最初の添加の時点から60分間保持する。この時間後、約50mlの濾液を清浄な乾燥した濾過フラスコ内に収集する。10.0mLアリコートの濾液を、250mL容フラスコ内で10.0mLの0.5N重クロム酸カリウム溶液と混合する。これに30mLの濃硫酸を撹拌しながら添加すると、溶液は化学反応のために熱くなる。溶液を熱い状態のまま15分間撹拌する。次いで、50mLの水を混合物に添加し、混合物を室温まで冷却する。2滴〜4滴のフェロイン指示薬を混合物に添加し、混合物を0.1N硫酸第一鉄アンモニウム溶液で滴定する。10mLの10%NaOH溶液を用いて滴定を繰り返す。以下の式を用いてS10溶解度を計算する:
S(%)=[(V−V)×N×6.85×10]/(A×W)
(式中、V(単位はミリリットル)は濾液の滴定に使用される硫酸第一鉄アンモニウム溶液の体積であり、V(同様にミリリットル)は純粋な10%NaOH溶液の滴定に使用される硫酸アンモニウム溶液の体積であり、Nは硫酸第一鉄アンモニウム溶液の規定度であり、A(単位はミリリットル)は酸化に使用されるパルプ濾液の体積であり、Wはパルプサンプルの炉乾燥重量(グラム)である。
【0057】
上記に使用される10%NaOH溶液を18%NaOH溶液で置き換える以外は、S18溶解度の決定についても手順は同じである。
【0058】
カプリエチレンジアミン(CED)溶液におけるパルプ粘度を、SCAN規格CM 15−99(本明細書中に完全に記載されているかのように、参照により本明細書中に援用される)に基づく方法を用いて決定する。この方法によって、希釈CED溶液におけるパルプの極限粘度数が決定される。典型的な手順では、パルプのサンプルをCED溶液に溶解する。パルプの量を、予測される極限粘度数に関して選択する。秤量したパルプサンプルをポリエチレンボトル(容量およそ52mL)に入れ、ボトルを押し潰すことによって残気を追い出す。5本〜10本の銅線及び25mLの脱イオン水をパルプに添加し、パルプが完全に離解するまで混合物を適切な振盪機で振盪する。離解までの典型的な時間間隔は10分〜30分である。更に25.0mLのCED溶液を混合物に添加する。残気を追い出した後、ボトルを密閉し、およそ30分間又はパルプサンプルが完全に溶解するまで再度振盪する。試験溶液及び粘度計の温度を25℃に調節する。試験溶液の一部を吸引によって試験粘度計に引き入れる。流出時間、すなわちメニスカスが粘度計の上標線から下標線まで下降するのにかかる時間を測定する。相対粘度は以下の方程式を用いて計算する:
(ηrel)=(F/Tced)×T
(式中、Fは粘度計の校正係数であり、Tced(秒)は50%CED溶液についての流出時間であり、T(同様に秒)は試験溶液についての流出時間である)。当量(η×c)値は、SCAN規格に添付の表に見ることができ、ここで、ηはパルプの極限粘度数(単位はmL/g)であり、cはパルプの乾燥重量を試験溶液の体積で除したものとして計算される試験溶液の濃度であり、本例では50MLである。
【0059】
カッパー価(KN)は、TAPPI規格T236 om−99の方法と類似の方法を用いて測定する。KNは、1グラムの炉乾燥パルプを酸化するのに使用される0.1N過マンガン酸カリウム溶液の体積(mL)に相当する。典型的な手順では、パルプサンプルをおよそ300mlの蒸留水中で離解又は溶解させる。離解又は溶解したパルプ試料をビーカーに移し、十分な水をパルプ混合物に添加して、混合物の全体積を約795mLにする。100mLの0.1N過マンガン酸カリウム溶液及び100mLの4N硫酸4Nを別のビーカー内で混合し、混合物を素早く25℃に調節する。酸性化した過マンガン酸カリウム溶液を即座に試験パルプに添加する。添加の後、混合物の全体積はおよそ1000±5mLである。混合物を10分間反応させ、その後20mLの1Nヨウ化カリウム溶液を添加して、反応をクエンチする。その直後に、混合物の遊離ヨウ素含量を、パルプ混合物をチオ硫酸ナトリウムの0.2N溶液で滴定することによって決定する。滴定の終点は、デンプン指示薬を反応の終わり頃に添加することによって示される。滴定はパルプ繊維を除去することなく行う。別の滴定を、パルプを含まないブランク溶液を用いて行う。KNは以下の式を用いて計算する:
KN=(p×f)/w
(式中、pは試験試料によって消費される0.1N過マンガン酸カリウムの量(ミリリットル)であり、fは50%の過マンガン酸塩体積とするための補正係数であり、Tappi規格に見ることができる「p」に依存し、wはパルプサンプルの炉乾燥重量であり、「p」は以下のようにして求められる:
p=[(b−a)×N]/0.1
(式中、bはブランク溶液の滴定において消費されるチオ硫酸塩の量(ミリリットル)であり、aはパルプサンプルの滴定において消費されるチオ硫酸塩の量であり、Nはチオ硫酸塩の規定度である)。
【0060】
実施例1
CCE濾液の濃縮
第1の実施例によると、1リットル当たり5.6グラムのNaOHという有効アルカリ濃度の非常に希釈された苛性溶液のストリームを、図3に示す第5のエフェクト327に導入して、プラントの稼働を開始するとともに、種々のアルカリ濃度レベルによるその挙動を観察する。−0.73バールの減圧、51.5℃〜56.8℃の温度で溶液から水を除去する。4時間30分後、粗CCE濾液と同様に、1リットル当たり約50グラムのNaOHという有効アルカリ濃度を有する苛性溶液を第5のエフェクトに供給し、1リットル当たり約50グラムのNaOHという入口濾液濃度から第6のエフェクトの出口濃度を達成する。時間の関数としての流量、温度、有効アルカリ濃度及び真空レベルを表Iに挙げる。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例2
従来のクラフトプロセス
第2の実施例によると、工業的加工をシミュレートするベンチスケール蒸解釜(およそ20リットル容)において実験的クラフトプロセスを行う。20リットル容のベンチスケール蒸解釜を、30分間にわたって蒸気で120℃に予熱する。好適な量(例えば炉乾燥量基準で4.7kg)のユーカリ木材チップを蒸解釜に添加する。蒸解釜を60分間にわたって165℃に加熱し、165℃で更に40分間保持して、前加水分解段階を完了させる。従来のクラフトプロセス(CCEからの濾液を使用しない)については、1リットル当たり124.7gのNaOHという有効アルカリ濃度を有する4.51リットルの第1の白液(「WL1」)を、152℃の温度で15分かけて蒸解釜に添加する。中和についての典型的なアルカリ添加量は、乾燥チップ重量に対してNaOHとして約12%の有効アルカリ(EA)である。次いで、140℃の温度で15分かけて添加される、1リットル当たり25.3gのNaOHという有効アルカリ濃度を有する10.8リットルの熱黒液(「HBL1」)を蒸解釜に充填して、中和工程を完了させる。同じ濃度の10リットルの第2の熱黒液(「HBL2」)を蒸解釜に添加して、146℃の温度で23分間にわたって中和された液体を置換し、続いて1.0リットルの熱黒液(「HBL2」)と、1リットル当たり124.7gのNaOHという有効アルカリ濃度を有する4.16リットルの第2の白液(「WL2」)との混合物からなる蒸解液を、10バール及び152℃で12分間にわたって添加する。蒸解相についての典型的なアルカリ添加量は、乾燥チップ重量に対してNaOHとして約11%の有効アルカリ(EA)である。蒸解液を1分間当たり3リットルの速度で3分間、9.1バールの圧力下で循環させる。次いで、蒸解釜を14分間にわたって160℃に加熱し、160℃で更に23分間保持する。次いで、蒸解釜を冷却し、反応混合物を希釈苛性溶液で2回洗浄する。各洗浄に、溶液1リットル当たりおよそ0.2gのNaOHを含有する15リットルの水溶液を使用する。得られる褐色紙料は、10.3のカッパー価、988ml/gの粘度、3.6%のS10溶解度及び2.7%のS18溶解度を示す。反応は39.3%の収率を有する。混合物は、スクリーニングすると0.13%の棄却率を有し、39.1%のスクリーニング収率をもたらす。
【0063】
実施例3
中和溶液及び蒸解溶液としての薄い濃縮CCE濾液の使用
第3の実施例によれば、中和段階及び蒸解段階のための白液を、1リットル当たり54gのNaOHというEAを有するCCE工程からの濾液(「CCE54」)に置き換える以外は、実施例2に記載されているのと同じパルプ化プロセスを繰り返す。中和物は11.0のpHを有し、蒸解混合物は1リットル当たり18.5gのNaOHというEoCを有する。前加水分解のPファクターは297であり、蒸解反応のHファクターは419である。本実施例では、木材に対する全等価有効アルカリ添加量はそれぞれ、中和相についてはNaOHとして12%のEA、蒸解相についてはNaOHとして11%のEAである。
【0064】
得られる褐色紙料は、10.8のカッパー価、1118ml/gの粘度、4.5%のS10溶解度及び3.6%のS18溶解度を示す。反応は40.4%の収率を有する。混合物は、スクリーニングすると0.09%の棄却率を有し、40.3%のスクリーニング収率をもたらす。
【0065】
実施例4
中和溶液及び蒸解溶液としての高度に濃縮されたCCE濾液の使用
第4の実施例によれば、WL1及びWL2の3分の2を、1リットル当たり110gのNaOHという有効アルカリ濃度を有する濃縮CCE濾液に置き換える以外は、実施例2に記載されているのと同じパルプ化プロセスを繰り返す。得られる褐色紙料は、9.5のカッパー価、990ml/gの粘度、4.1%のS10溶解度及び3.0%のS18溶解度を示す。反応は39.5%の収率を有する。混合物は、スクリーニングすると0.10%の棄却率を有し、39.43%のスクリーニング収率をもたらす。
【0066】
従来のクラフトプロセスと比較すると、白液の3分の2を濃縮CCE濾液に置き換えるプロセスでは、従来のクラフトプロセスの粘度及びカッパー価と同様の粘度(本実施例では約990mg/l)及びカッパー価のパルプが製造される。例えば60%〜75%の白液を濃縮CCE濾液に置き換えるという類似の技法が、より広い範囲にわたって奏功し得ることが予測される。濃縮CCE濾液によって僅かに低いカッパー価が達成されることから、白液を濃縮CCE濾液に置き換えることが脱リグニンに悪影響を及ぼさないことが示唆される。粘度対カッパー価比(蒸解工程における選択性の尺度)は、濃縮CCE濾液を用いるプロセスの場合により高く(従来のプロセスにおける96に対して104)、このことは、濃縮CCE濾液を用いる場合に蒸解選択性がより良好であることを示す。
【0067】
濃縮CCE濾液で白液の一部を置き換えた場合に、S18溶解度が2.7%から3.0%に増大するとともに、S10溶解度が3.6%から約4.1%に増大し、このことは、幾らかのヘミセルロースの再沈殿が生じることを示す。所望であれば、S18溶解度レベルを他の手段によって更に制御することができる。
【0068】
同じカッパー価(10.8前後)及びより高い粘度を達成するために蒸解温度を僅かに低下させることによって、プロセスを更に最適化することが可能であるはずである。様々な実験に基づくと、得られる褐色紙料の品質を潜在的に望ましい範囲に維持しつつ、本明細書に記載の原理及び技法に基づく日常的な計算又は最適化から決定することのできる、例えばアルカリ度、白液及び濃縮CCE濾液の相対量、蒸解温度及び蒸解時間の僅かな変更をプロセスに加えることができることが期待される。例えば、得られる褐色紙料は10.0未満のカッパー価、1000ml/g未満の粘度、3.0%を超えないS18溶解度、及び/又は100を超える粘度対カッパー価比をもたらすことができることが期待される。
【0069】
本明細書中に開示される或る特定の実施形態によると、濃縮CCE濾液を使用して、新たな白液のみを使用する従来のクラフトプロセスと同じ又は同様の粘度及びカッパー価レベルで蒸解し、それにより効率の増大をもたらすことが可能である。
【0070】
本発明の好ましい実施形態を本明細書中に記載したが、依然として本発明の概念及び範囲に含まれる多くの変形形態が可能である。かかる変形形態は、本明細書及び図面を検討した後で当業者に明らかとなろう。したがって、本発明はいずれもの添付の請求項の精神及び範囲を除き、限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5