特許第5694519号(P5694519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5694519アニオン性ポリマー含有セルロース系バリア組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694519
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】アニオン性ポリマー含有セルロース系バリア組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20150312BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20150312BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20150312BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20150312BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20150312BHJP
   C08L 3/00 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   C08L29/04 A
   C08L1/00
   B32B5/24
   C08K3/00
   C08L29/04 S
   C08L101/02
   C08L3/00
【請求項の数】27
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-511650(P2013-511650)
(86)(22)【出願日】2011年5月24日
(65)【公表番号】特表2013-528239(P2013-528239A)
(43)【公表日】2013年7月8日
(86)【国際出願番号】EP2011058461
(87)【国際公開番号】WO2011147823
(87)【国際公開日】20111201
【審査請求日】2013年1月18日
(31)【優先権主張番号】61/348,836
(32)【優先日】2010年5月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10164093.6
(32)【優先日】2010年5月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】マルムボルグ,カースティン
(72)【発明者】
【氏名】ヘイネッソン−ホルテン,アネット モニカ
(72)【発明者】
【氏名】サンドストーム,ジョン
【審査官】 阪野 誠司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−076434(JP,A)
【文献】 特表2010−513741(JP,A)
【文献】 特開平07−018089(JP,A)
【文献】 特表2000−503704(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/118520(WO,A1)
【文献】 特表2013−533899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)数平均長さが0.001〜0.5mmであり比表面積が〜100m/gであるセルロース繊維、
b)少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマー、及び
c)少なくとも1種のアニオン性ポリマー
を含む、組成物。
【請求項2】
組成物中のa)及びb)の乾燥重量を基準として、40〜80重量%のa)及び20〜60重量%のb)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物中のa)及びb)の乾燥重量を基準として、55〜65重量%のa)及び35〜45重量%のb)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
組成物中のa)、b)及びc)の乾燥重量を基準として、0.01〜9重量%のc)を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中のa)、b)及びc)の乾燥重量を基準として、0.01〜2重量%のc)を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物中のa)及びb)の乾燥重量を基準として55〜65重量%のa)及び35〜45重量%のb)、並びに組成物中のa)、b)及びc)の前記乾燥重量を基準として0.1〜3重量%のc)を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
d)ナノ粒子又はミクロ粒子を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
数平均長さが0.001〜0.5mmであり比表面積が〜100m/gである前記セルロース繊維が、ミクロフィブリル状セルロース繊維を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマーが少なくとも90%の加水分解度を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマーが、少なくとも90%の加水分解度を有するポリビニルアルコールである、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記アニオン性ポリマーが多糖を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記多糖がアニオン性多糖ガムを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記アニオン性ポリマーがキサンタンガムである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物の総重量を基準として50〜99.9重量%の水を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の組成物から生じるフィルムを支持表面上に形成する工程、
前記組成物から少なくとも一部の水を除去する工程、及び
形成された自立性フィルムを前記支持表面から除去する工程
を含む、自立性フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記形成された自立性フィルムが50重量%以下の水を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物を含む、又は請求項14若しくは15に記載の前記方法によって得られる、自立性フィルム。
【請求項18】
厚さが1〜1000μmである、請求項17に記載の自立性フィルム。
【請求項19】
50重量%以下の水分である、請求項17又は18に記載の自立性フィルム。
【請求項20】
基材、及び請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物又は前記基材の少なくとも一表面上に配置された請求項17〜19のいずれか一項に記載の自立性フィルムを含む、多層化物品。
【請求項21】
前記基材が紙又は板紙シートである、請求項20に記載の多層化物品。
【請求項22】
基材を提供する工程、並びに
(i) 請求項17〜19のいずれか一項に記載の自立性フィルムを提供する工程及び
前記自立性フィルムを前記基材上に配置する工程、又は
(ii)請求項14に記載の組成物を提供する工程及び
前記組成物の層を前記基材の少なくとも一表面上に適用する工程
を含む、多層化物品の製造方法。
【請求項23】
前記基材が紙又は板紙シートである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
工程(ii)がさらに、前記基材に塗布された前記組成物から少なくとも一部の水を除去して、その後に前記層が50重量%以下の水分を含む工程を含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記50重量%以下の水分を含む層が、1〜20μmの厚さである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
材に対するバリアを提供するための、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項17〜19のいずれか一項に記載の自立性フィルムの使用。
【請求項27】
記基材が紙又は板紙シートである、請求項26に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維、少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマー及びアニオン性ポリマーを含む組成物、このような組成物から形成された自立性フィルム、そのような自立性フィルムを作製する方法、このような組成物又は自立性フィルムを基材上に配置してなる多層化物品、このような多層化物品の製造方法、並びに基材このような組成物又は自立性フィルムを使用して浸透性基材に対するバリアを提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バリアは広範な用途での利用を満足させることができる。例えば、多くの食品包装の用途においては、食品の品質及び/又は風味を低下させる恐れのある食品成分の酸化を防止するため、食品を酸素から防護する必要性が存在している。この酸化防止は、慣例的に酸素バリアと呼ばれる、酸素に対する透過性が低い材料を使用することによって実施できる。
【0003】
食品及び他の物品を包装する利用を満たし得る他のバリア特性は、当業者にとって明白である。これらのバリア特性には、液体、蒸気、芳香、油脂、微生物、その他に対するバリアが含まれる。
【0004】
バリアに対するニーズが存在していると同時に、再生可能原料からの材料を主原料としたバリアの供給に対する要望も存在している。
【0005】
セルロース繊維(例えば、ミクロフィブリル繊維及び/又は高度に精製されたセルロース繊維)対しては、以前からバリアの用途等に関する調査がなされてきた。
【0006】
国際公開第00/05310号パンフレットは、高度に精製されたセルロース繊維を微小繊維へと分解する方法及び材料、生物分解可能でありさらには食用できる組成物、フィルム、コーティング及び固体材料に更に加工するためのさらなる方法に関する。
【0007】
国際公開第2009/123560号パンフレットは、ミクロフィブリル化セルロースと1種又はそれ以上の多糖類親水コロイドとを含む組成物、及びそのような組成物の使用(とりわけ、紙面上にバリアを施すこと等)に関する。
【0008】
国際公開第2006/056737号パンフレットは、セルロース断片、5〜55重量%の親水性結合剤及び5〜65重量%の疎水結合剤を含むバイオ複合材料、並びに水分非透過性の高強度材料としてのこのような材料の使用に関する。
【0009】
米国特許第6,183,696号明細書は、ミクロフィブリル化セルロースを含むコーティング材料でコーティングされた紙に関するものであり、0.1〜10重量%のスーパーミクロフィブリル化セルロースを含み、かつ従来公知のコーティング材料に添加される表面サイズ処理コーティング材料について記述している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第00/05310号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2009/123560号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2006/056737号パンフレット
【特許文献4】米国特許第6,183,696号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、物理的及び機械的特性、例えば、浸透性、引張強度、剛性及び折り目性能(creasability)に関して性能が向上しているバリア材料の提供に対するニーズが依然として存在している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一目的は、当分野におけるニーズを少なくとも部分的に満たすこと、及び再生可能原料からの有意量の材料をベースとした良好なバリア特性を有するバリアを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、再生可能原料由来の材料を主成分としかつ良好な物性(特に、機械的強度)を提示するバリアを提供することにある。
【0014】
本発明者らは、セルロース繊維、少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマー、及び少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含む特定の組成物から層(例えば、自立性フィルム及びコーティング層)を形成することによって、意外なことに、上記の目的などを満たし得ることを発見した。
【0015】
自立性フィルム又はコーティング層は、このような組成物から形成されたものであれば、再生可能原料由来の材料を主原料としつつ、優れた機械的特性及びバリア特性を提示することが示されている。
【0016】
従って、第1の態様において本発明は、a)数平均長さが0.001〜0.5mmで比表面積が1〜100m/gであるセルロース繊維、b)少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマー、及びc)少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含む組成物に関する。
【0017】
第2の態様において本発明は、支持表面上に組成物からフィルムを形成する工程、該組成物から少なくとも一部の水を除去する工程、及び形成された自立性フィルムを該支持表面から取り外す工程を含む、自立性フィルムの製造方法に関する。
【0018】
第3の態様において本発明は、上記に規定した組成物から形成される自立性フィルムに関する。
【0019】
第4の態様において本発明は、基材、及び該基材の少なくとも一表面上に配置される上記の組成物又は自立性フィルムの層を含む、多層化物品に関する。
【0020】
第5の態様において本発明は、浸透性基材に対するバリアを提供するための、上記の組成物又は自立性フィルムの使用に関する。
以下、本発明に係る前述及び他の態様について更に詳細に記述する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る組成物は、水に加えて、少なくとも次の成分を含む。
a)数平均長さが0.001〜0.5mmで比表面積が1〜100m/gであるセルロース繊維、
b)少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマー、及び
c)少なくとも1種のアニオン性ポリマー。
【0022】
本発明の組成物中のセルロース繊維a)の量は、組成物中のa)及びb)の乾燥重量を基準として典型的には、約40重量%以上、好ましくは約50重量%以上、より好ましくは約55以上であって約80重量%以下、好ましくは約70重量%以下、より好ましくは約65重量%以下であり得る。
【0023】
本発明の組成物中の少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマーb)の量は、組成物中のa)及びb)の乾燥重量を基準として典型的には、約20重量%以上、好ましくは約30重量%以上、より好ましくは約35以上であって約60重量%以下、好ましくは約50重量%以下、より好ましくは約45重量%以下であり得る。
【0024】
本発明の組成物中の少なくとも1種のアニオン性ポリマーc)の量は、組成物中のa)、b)及びc)の乾燥重量を基準として好ましくは約0.01重量%以上、より好ましくは約0.1重量%以上、更により好ましくは約0.3重量%以上、最も好ましくは約0.5以上であって約9重量%以下、より好ましくは約5重量%以下、更により好ましくは約3重量%以下、最も好ましくは約2重量%以下であり得る。
【0025】
好適な実施態様において本発明の組成物は、組成物中のa)及びb)の乾燥重量を基準として55〜65重量%のa)数平均長さが0.001〜0.5mmであるセルロース繊維、35〜45重量%のb)少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマー、並びに組成物中のa)、b)及びc)の乾燥重量を基準として0.1〜3重量%のc)少なくとも1種のアニオン性ポリマーを含む。
【0026】
好ましくはa)、b)及びc)は共に、本発明に係る調合物の乾燥重量の少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%を占め、更に場合により100重量%を占めることさえある。
【0027】
本発明の組成物は、好ましくは疎水結合剤を含まないか、又は組成物の乾燥重量を基準として5重量%未満含む。このような疎水結合剤の例としては、エポキシ類(例えば、ビスフェノールA型又は変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、ポリウレタン類、フェノール樹脂類、疎水アクリル類及びシロキサン類を含む、疎水ポリマーが挙げられる。
【0028】
本発明における成分a)として用いるのに適すると考えられるセルロース繊維は、数平均長さが約0.005mm以上、好ましくは約0.01mm以上、より好ましくは0.02以上であって約0.5mm以下、好ましくは約0.2mm以下、より好ましくは約0.1mm以下であり、かつ比表面積が(Micromeritics ASAP 2010計器を用いBET法に従って177KにおけるNの吸着によって測定される場合)約1m/g以上、好ましくは約1.5m/g以上、最も好ましくは約3m/g以上であって約100m/g以下、好ましくは約15m/g以下、最も好ましくは約10m/g以下である。
【0029】
セルロース繊維の数平均幅は、(L&Wファイバーテスターで測定される場合)好ましくは約5μm以上、より好ましくは約10μm以上、最も好ましくは約20μm以上であって約100μm以下、より好ましくは約60μm以下、最も好ましくは約40μm以下である。
【0030】
本明細書において数平均長さ及び数平均幅に用いられている「数平均」という用語は、例えば繊維の長さの文脈において、例えばn本の繊維の長さを測定し、合計してnで除算して決定される、個々の繊維の算術平均又は中間を意味する。
【0031】
本発明における使用のためのセルロース材料としては、例えば堅木又は軟木に由来する木質繊維(例えば化学パルプ、機械パルプ、熱機械パルプ、化学薬品で処理された機械パルプ、再利用の繊維、若しくは新聞紙に由来とするもの)、種子繊維(例えば綿由来)、種子皮繊維(例えば大豆外皮、エンドウ外皮、コーン外皮由来)、鞘皮繊維(例えばアマ、アサ、ジュート、ラミー、ケナフ由来)、葉繊維(例えばマニラアサ、サイザルアサ由来)、茎繊維又は麦藁繊維(例えばバガス、コーン、小麦由来)、草繊維(例えば竹由来)、藻(例えばベロニア)由来のセルロース繊維、細菌又は真菌、並びに実質細胞(例えば野菜及び果物由来)が挙げられるが、それらに限定されない。セルロースの原料は限定されるものではなく、合成セルロースまたはセルロース類似物を含む任意の原料を使用できる。
【0032】
本発明の実施形態において、セルロース繊維はミクロフィブリル状セルロース繊維を含む。
【0033】
本発明の目的に適合するミクロフィブリル状セルロースは、小径でかつ長さ対直径比が大きい下部構造を指し、それらの寸法は天然に在るセルロースミクロフィブリルと同等である。
【0034】
一実施形態によれば、ミクロフィブリル状セルロースは、グラフト化、架橋結合、化学的酸化(例えば過酸化水素、フェントン反応、及び/又はTEMPOを用いた酸化)、物理的修飾(例えば、化学物質の吸着等の吸着)、及び酵素性修飾等によって修飾される。複数の技術を組み合わせて用いることによりミクロフィブリル状セルロースを修飾することも可能である。
【0035】
自然界のセルロースは、組織及び配向のいくつかの階層レベルにおいて見出し得る。セルロース繊維は、その内部にマクロフィブリルが配置された層状二次壁構造を備える。
【0036】
マクロフィブリルは、複数のミクロフィブリルを含み、これらのミクロフィブリルは更に結晶質及び非晶質領域に配置されたセルロース分子を含んでいる。セルロースミクロフィブリルは、植物の種に応じて直径約5〜約100ナノメートルの範囲にあり、最も典型的には直径約25〜約35ナノメートルの範囲にある。ミクロフィブリルは、非晶質ヘミセルロース(特にキシログルカン)、ペクチン質多糖、リグニン、及びヒドロキシプロリンに富んだ糖蛋白質(エクステンシンを含む)のマトリクス内部に平行に延びる束の形で存在する。ミクロフィブリルは、約3〜4nmの間隔を空けて離れており、その間隔は上記のマトリクス化合物で占有されている。マトリクス材料の特定の配置及び位置、並びにそれらのマトリクス材料とセルロースマイクロフィブリルとの相互作用のしくみは未だ完全には解明されていない。
【0037】
ミクロフィブリル状セルロースは典型的には、小断片へと離層された天然セルロース繊維から作製され、繊維の壁のマイクロフィブリルは大部分が被覆されていない。
【0038】
離層は、セルロースから繊維を離層するのに好適な種々の器具で行うことができる。繊維を処理するための前提条件は、繊維が繊維壁から外される手法において器具が能力があるか又は制御されることである。これは、繊維を互いに対して、壁に対して、又は離層が起こる装置の他の部分に対して摩擦することによって達成できる。1実施形態よれば、離層は、ポンプ操作、混合、加熱、蒸気破裂、加圧−減圧サイクル、衝撃磨砕、超音波、マイクロ波破裂、粉砕、及びこれらの組み合わせによって達成される。本明細書に開示される機械的操作のいずれにおいても、ミクロフィブリル状セルロース繊維をもたらすために充分なエネルギーを適用することが重要である。一実施形態において、酸化剤及び少なくとも1種の遷移金属を含有する水性懸濁液中で天然セルロースを処理し、天然セルロース繊維をミクロフィブリル状セルロース繊維へと機械的に離層させることによって、ミクロフィブリル状セルロース繊維を調製する。
【0039】
本発明の用途に好適なミクロフィブリル状セルロース繊維の作製方法としては、国際公開第2004/055268号パンフレット、国際公開第2007/001229号パンフレット、及び国際公開第2008/076056号パンフレットに記述されているものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0040】
離層されていないセルロース繊維は、繊維長さが通常約0.7〜約2mmの範囲であり、比表面積が通常約0.5〜1.5m/gであるため、ミクロフィブリル状繊維とは異なる。
【0041】
本明細書で用いられている「少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマー」という用語は、アセテート基の少なくとも一部がヒドロキシル基に加水分解されている任意の酢酸ビニルポリマー(酢酸ビニルのホモポリマー、及び酢酸ビニルと少なくとも別のモノマーとから化成されたコポリマーを含む)を指す。好適とされるのはホモポリマーである。少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマーにおいて、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも98%のアセテート基がヒドロキシル基へと加水分解される。
【0042】
少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマーの例、特に本発明における使用について期待されるものは、加水分解度が好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも98%のポリビニルアルコールである。
【0043】
少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマーは、重量平均分子量が好ましくは約5,000Da、より好ましくは約25,000Da、最も好ましくは約75,000Da以上であり、約500,000Da以下、より好ましくは約250,000Da以下、最も好ましくは約150,000Da以下である。
【0044】
本発明における使用について期待されるアニオン性ポリマーは、合成のものであってもよいし、又は天然起源のものであってもよい。天然起源のものである場合、化学修飾を施すことが可能である。本発明の目的のために、アニオン性ポリマーc)は、b)少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマーとも、a)数平均長さが0.001〜0.5mmで比表面積が1〜100m/gであるセルロース繊維とも異なることを理解すべきである。
【0045】
アニオン性ポリマーの電荷密度は、(Muetek PCD03製の粒子電荷検出器を用いてpH7の水性ポリマー溶液で測定する場合)約0.1meq/g以上、より好ましくは約0.2meq/g以上、最も好ましくは約1meq/g以上であり約10meq/g以下、より好ましくは約8meq/g以下、最も好ましくは約5meq/gである。
【0046】
アニオン性ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは約10Da以上、より好ましくは約10以上であり約10Da以下、より好ましくは約10Da以下である。
【0047】
本発明における使用について期待されるアニオン性ポリマーの例としては、天然の又は修飾したアニオン性多糖(例えば、澱粉、アニオン性セルロース誘導体、アニオン性セルロースナノ繊維、及びアニオン性多糖ガム)、並びにアクリル酸系合成ポリマー(例えば、ポリアクリル酸)が挙げられる。本発明の好適な実施態様において、アニオン性ポリマーはアニオン性多糖を含有する。アニオン性多糖は、より好ましくは、本発明の組成物中のアニオン性ポリマーc)の少なくとも50重量%、例えば少なくとも75重量%、例えば少なくとも95重量%を占め、100重量%を占めることさえある
【0048】
本明細書で用いられているセルロースナノ繊維は、数平均長さが約100〜500nmで、かつ幅が典型的には1〜20nm(例えば、2〜10nm)であるセルロースフィブリルに関する。セルロースナノ繊維の作製方法としては、国際公開第2009/069641号パンフレットに記述されているものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0049】
アニオン性澱粉の例としては、NaClO及び触媒量のTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)を用いて酸化された澱粉が挙げられるが、これに限定されない。
【0050】
アニオン性セルロース誘導体の例としては、セルロースが1種又はそれ以上の非イオン性置換基で置換されている、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、スルホエチルカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース等、好ましくはカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0051】
アニオン性多糖ガムの例としては、元からアニオン性の多糖ガム、及びアニオン性実効電荷を有するように化学修飾された元から非カチオン性又はカチオン性の多糖ガムが挙げられる。
【0052】
本発明における使用について期待される多糖ガムとしては、寒天、アルギン酸、βグルカン、カラゲナン、チクルガム、ダンマルガム、ゲランゴム、グルコマンナン、グアーガム、アラビアゴム、ガッチガム、トラガカントゴム、カラヤゴム、ローカストビーンガム、マスチックガム、オオバコ種子外皮、アルギン酸ナトリウム、スプルースガム、タラガム、及びキサンタンガム、必要に応じてアニオン性実効電荷を有するように化学修飾された多糖ガムが挙げられるが、それらに限定されない。
【0053】
キサンタンガムは、本発明における使用のために本明細書中で好適とされている元からアニオン性の多糖ガムである。
【0054】
本発明に係る組成物は、前述の成分a)、b)及びc)とは別に、1種又はそれ以上の更なる成分、例えばd)ミクロ粒子、ナノ粒子、好ましくは無機ミクロ粒子又は無機ナノ粒子を含み得るが、それらに限定されない。
【0055】
本明細書において用いられる「ミクロ粒子」は、少なくとも1つの寸法が100μm未満のサイズを有し、かつ1mm超のサイズのいずれの寸法も有しない、固体粒子又は非晶粒子を指す。
【0056】
本明細書において用いられる「ナノ粒子」は、少なくとも1つの寸法が100nm未満のサイズを有し、かつ1μm超のサイズのいずれの寸法も有しない、固体粒子又は非晶粒子を指す。本発明の文脈においてナノ粒子は、ミクロ粒子の下位群を形成することに留意されたい。
【0057】
本発明における使用について期待される無機ミクロ粒子又はナノ粒子の例としては、ケイ酸又はケイ酸塩ベースの粒子(コロイドシリカ若しくはケイ酸粒子、又はその凝集物を含む)、粘土、及び金属炭酸塩粒子が挙げられる。
【0058】
本発明において使用できるスメクタイト粘土としては、例えば、モンモリロナイト/ベントナイト、ヘクトライト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、及びそれらの混合物が挙げられる。一実施形態によればスメクタイト粘土は、ラポナイト及び/又はベントナイトである。
【0059】
一実施形態によれば、スメクタイト粘土は、例えば、カチオン又はカチオン性基(例えば、第四アンモニウム基、若しくはリチウム等のアルカリ金属)を導入することによって修飾できる。
【0060】
一実施形態によれば、スメクタイト粘土は、リチウムで修飾された合成ヘクトライト粘土である。この粘土としては、例えばロックウッド(Rockwood)社からラポナイト(Laponite(登録商標))、又はEka Chemicals AB製のEka Soft F40として販売されている粘土がある。この種の粘土の例、及びこの種の粘土の製造の例としては、国際公開第2004/000729号パンフレットに開示されているものが挙げられる。本発明に従って用いられるスメクタイト粘土は、比表面積が約50〜約1500m/g(例えば、約200〜約1200m/g、又は約300〜約1000m/g)であり得る。
【0061】
好適な製品としては、例えば、Sud−Chemie、BASF及びClayton製ベントナイト、Southern Clay Products製Bentolite(ベントナイト)、並びにAkzo Nobel製Hydrotalciteが挙げられる。
【0062】
本発明の組成物中において、好ましくは無機ミクロ粒子又は無機ナノ粒子の濃度は、存在する場合、全組成物の乾燥重量を基準として好ましくは5重量%未満、例えば約0.1重量%以上、好ましくは約0.3重量%以上であり約5重量%以下、好ましくは約2重量%以下である。
【0063】
本発明の組成物は、前述の成分に加えて、更なる成分を含み得る。
【0064】
一実施形態において本発明の組成物は、流体組成物、好ましくは懸濁液である。本発明の流体組成物は、組成物の総重量を基準として典型的には約50重量%以上、好ましくは60重量%以上、最も好ましくは70重量%以上であり約99.9重量%以下、好ましくは約95重量%以下の水を含む。本発明の流体組成物は、例えば、後述するように、基材上にコーティングを形成するため、又は自立性フィルムへと加工するために使用できる。
【0065】
別の実施形態において本発明に係る組成物は、固体組成物又は非流体組成物であり、組成物の総重量を基準として典型的には50重量%以下、好ましくは20重量%以下の水を含む。
【0066】
下記の実験の節で示すように、本発明の組成物から形成される層、好ましくは本質的にコヒーレントな層(例えば、自立性フィルム)又は基材上のコーティング層は、良好なバリア特性及び機械的強度を提示する。
【0067】
本発明の自立性フィルムは、典型的には、本発明に係る流体組成物の層を支持表面上に形成し、組成物から少なくとも一部の水を除去して、形成された自立性フィルムを支持表面から取り外すことによって生成される。水を組成物から除去し、何らかの従来の手段(例えば、加熱、周囲大気の減圧、又は加圧)によって自立性フィルムを形成できる。
【0068】
支持表面は、その上部に層を形成することが可能であり、かつ少なくとも一部の水を除去して自立性フィルムを形成できる任意の表面(例えば、平坦面、ドラム、エンドレスベルト、金網等)であってよい。
【0069】
したがって、本発明の自立性フィルムは、a)数平均長さが0.001〜0.5mmであり比表面積が約1〜約100m/gであるセルロース繊維、b)少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマー、c)少なくとも1種のアニオンポリマー、及び任意選択で更なる成分を含む。
【0070】
自立性フィルム中の成分の詳細及び濃度は、本発明の組成物と関連して先に説明した通りである。
【0071】
本明細書において用いられている「自立性フィルム」は、構造的完全性を維持するために支持体を必要としないフィルム状の物品、好ましくは固体材料のフィルム状物品である。
【0072】
したがって、本発明に係る自立性フィルムは、典型的には、そのフィルムを形成する組成物と同じ構成成分を有する。しかしながら、本発明の自立性フィルム中の含水率は、本発明の流体組成物と比較すると有意に減らされている。含水率は、少なくとも自立性フィルムが形成される程度まで減らされる。自立性フィルムから水分を実質的に除去してもよい。それにより、フィルム中に存在する水分の量が、周囲大気と平衡状態にある量と一致する。
【0073】
本発明の自立性フィルムの厚さは、一方では自立性フィルムを作製するのに必要とされる最小厚さ、及び/又は所望のバリア特性を得るのに必要とされる最小厚さによって制限され、他方ではフィルムを容易に取り扱ったり製造できる最大厚さによって制限される。自立性フィルムの厚さは、好ましくは約1μm以上、より好ましくは約5μm以上、最も好ましくは約10μm以上であり約1000μm以下、より好ましくは約200μm以下、最も好ましくは約100μm以下の範囲である。特に期待されるフィルムの厚さは約20〜約50μmである。
【0074】
自立性フィルムは、そのまま単独で使用してもよいし、又は多層構造体中の別個の層として使用してもよい。
【0075】
本発明の多層構造は、基材及びバリア材料の層(好ましくはコヒーレントな層又は本質的にコヒーレントな層)を含むものであってその基材の少なくとも一表面上に配置されている、a)数平均長さが0.001〜0.5mmであり比表面積が約1〜約100m/gであるセルロース繊維、b)少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマー、c)少なくとも1種のアニオン性ポリマー、及び任意選択で更なる成分を含む。
【0076】
バリア材料は、基材上に配置された本発明の自立性フィルムから生じてもよいし、又は本発明の流体組成物の層で基材をコーティングし、好ましくは次いでその流体組成物から少なくとも一部の水を除去して、その基材上にバリアコーティングを作製することから生じてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態においては、結合剤(例えば、接着剤又は熱可塑性物質)を用いて、自立性フィルムを基材に結合させる。
【0078】
バリア材料を配置する基材は、バリア材料のバリア特性による利益を享受し得る任意の基材、即ちバリア材料がバリアを形成する対象の実体(例えば、気体、蒸気、湿気、油、微生物等)に対して浸透性である任意の基材であってもよい。このような基材の例としては、プラスチック材料、金属材料又はセルロース材料のシート及びフィルム、例えばプラスチックフィルム、金属箔、及び紙又は板紙のシート)が挙げられるが、それらに限定されない。基材の材料としては、紙及び板紙が好適である。
【0079】
多層物品は、上記のバリア材料及び基材に加えて、多層物品の少なくとも一表面上又はバリア材料及び基材の間に配置されている、異なる材料の追加層を含んでもよい。このような追加層の例としては、プラスチック材料及び金属材料の層が挙げられるが、それらに限定されない。
【0080】
本発明に係る多層物品上のバリア材料の厚さは、一方では所望のバリア特性を得るのに必要とされる最小厚さによって制限され、他方では層の作製が可能な最大厚さによって制限される。バリア材料が上記のように自立性フィルムに由来する場合、このようなフィルム厚さの制限が該当する。バリア材料が流体組成物で基材をコーティングすることから得られる場合、バリア材料の厚さは、好ましくは約1μm以上、より好ましくは約2μm以上であり約20μm以下、好ましくは約10μm以下である。
【0081】
本発明の自立性フィルム又は多層構造体は、多くの用途に役立ち得る。例えば、包装用途では、気体、湿気、油脂又は微生物を包装物の中で保持すること、又は気体、湿気、油脂又は微生物が包装物の内部に侵入することを妨げることのいずれかが有利である。
【0082】
以下、下記の非限定的な実施例によって、本発明について更に例示する。
【実施例】
【0083】
実施例1(参考)
A)フィルム(1A)を、巻線ロッド(供給元:ドイツのBYK−Gardner GmbH社)を用い、100%のミクロフィブリル状セルロース(MFC)から作製した。湿潤時のフィルム厚さが200μmでフィルム幅が200mmであった。このフィルムをポリマーフィルム上に形成させた後、室温で24時間で静置して乾燥させた。このMFCは、1%繊維懸濁液をパールミル(Drais PMC25TEX)(酸化ジルコニウムパール、65%の充填グレード、ローター速度1200回転/分、及び流速100L/h)に通して、フェントン反応剤(40ppmのFe2+、1%のH、pH4、70℃、10%のパルプ濃度、1時間)で前処理した漂白した亜硫酸パルプ(Domsjo pulp製)から作製したものである。このMFCの特性は以下のとおりである:繊維長さ:0.08mm、幅:27.2μm(L&Wファイバーテスター)、比面積:約4m/g(BET法、Micromeritics ASAP 2010計器を使用)、安定度:100%(0.5%のパルプ懸濁液)、保水率(WRV):3.8(g/g)(SCAN:−C62:00)。
特に明記しない限り、実施例中のパーセンテージは全て、フィルムの乾燥重量を基準とする重量%として計算されている。
B)フィルム(1B)を、80%のMFC及び20%のポリビニルアルコール(Aldrich製PVA28−99(Mw:145.000、DP:3300))を使用したことを除き、A)と同様の方法で作製した。
C)フィルム(1C)を、60%のMFC及び40%のポリビニルアルコールを使用したことを除き、A)と同様の方法で作製した。
D)フィルム(1D)を、40%のMFC及び60%のポリビニルアルコールを使用したことを除き、A)と同様の方法で作製した。
E)フィルム(1E)を、100%のポリビニルアルコールを原料としたことを除き、A)と同様の方法で作製した。
乾燥後、これらのフィルムをポリマーフィルムからフィルムを取り外し、気候室(23℃、50%RH)で24時間保管した。その後、それらのフィルムの坪量、厚さ、強度特性(ISO 536:1995、ISO 534:1988、ISO 1924−2)、収縮率、水蒸気透過率(WVTR)(ASDTM E96−90)、及び酸素透過率(OTR)(ASTM F1307−90)について分析した。
【0084】
収縮率は、乾燥前及び乾燥後のフィルムのフィルム面積を比較して測定した。収縮率値0は、収縮を観察できなかったことを示す。
【表1】
【0085】
上記の表1の結果から、フィルム材料1A及び1Eは乾燥時に収縮するため、使用には適さないと結論できる。また、それ以外に、フィルム1Eが相対湿度に応じた固有の形状をとることも観測された。フィルム材料1B、1C、及び1Dは形状が安定であり収縮傾向を示さない。これらのフィルムはまた1A及び特に1Eよりもはるかに高い強度特性も有している。強度特性に関していえば、総合的に最良のフィルム材料は1Cである。
【0086】
実施例2
A)フィルム(2A)を、組成物の総重量を基準として60%のMFC、39.9%のポリビニルアルコール、及び0.1%のキサンタンガム(食品グレード、電荷密度1.25meq/g(Vendico Chemical AB製Particle Charge Detector、Mutek PCD 03で測定)を使用したことを除き、実施例1のフィルム1Aと同様の方法で作製した。
B)フィルム(2B)を、60%のMFC、39.75%のポリビニルアルコール、及び0.25%のキサンタンガムを使用したことを除き、フィルム2Aと同様の方法で作製した。
C)フィルム(2C)を、60%のMFC、39.5%のポリビニルアルコール、及び0.5%のキサンタンガムを使用したことを除き、フィルム2Aと同様の方法で作製した。
D)フィルム(2D)を、60%のMFC、39.25%のポリビニルアルコール、及び0.75%のキサンタンガムを使用したことを除き、フィルム2Aと同様の方法で作製した。
E)フィルム(2E)を、60%のMFC、39%のポリビニルアルコール、及び1%のキサンタンガムを使用したことを除き、フィルム2Aと同様の方法で作製した。
F)フィルム(2F)を、60%のMFC、38.5%のポリビニルアルコール、及び1.5%のキサンタンガムを使用したことを除き、フィルム2Aと同様の方法で作製した。
G)フィルム(2G)を、60%のMFC、38%のポリビニルアルコール、及び2%のキサンタンガムを使用したことを除き、フィルム2Aと同様の方法で作製した。
H)フィルム(2H)を、60%のMFC、37%のポリビニルアルコール、及び3%のキサンタンガムを使用したことを除き、フィルム2Aと同様の方法で作製した。
I)フィルム(2I)を、60%のMFC、35%のポリビニルアルコール、及び5%のキサンタンガムを使用したことを除き、フィルム2Aと同様の方法で作製した。
J)フィルム(2J)を、実施例1のフィルム1Cと同様の方法で作製した。
【0087】
実施例1に記載されている方法でフィルムの分析を行った。
【表2】
【0088】
上記の表2の結果から、強度特性及び剛性に関していえば、フィルム材料2Dは他のフィルム材料よりも有意に良好であると結論できる。フィルム2Eは極めて良好なバリア特性を示す。OTRレベル約0.2は、現在最良の熱プラスチック材料(EVOH:エチレン−ビニルアルコール共重合体)と同じ範囲内にあることに留意されたい(「Foods and Packaging Materials-Chemical Interactions」、ISBN 0-85404-720-4)。
【0089】
キサンタンガムを内容物として含むフィルム(2A〜2I)は(フィルム中に亀裂を形成せずに)折り重ねることができた。フィルム2A〜2Iは、フィルム2Jよりも脆弱性がより低くかつ可撓性がより高いと考えられる。フィルム上に水滴を塗布しフィルムの完全性に対する影響を観測して試験した結果から、フィルム2A〜2Iは、フィルム2Jよりも耐水性が高いと考えられる。
【0090】
また、キサンタンガムを添加したことによって、例えばフィルムの光沢度がより高まる等、フィルム形成特性が向上した。
【0091】
実施例3
A)フィルム(3A)を、キサンタンガムを1%のCMC(AkzoNobel製Gambrosa PA247、電荷密度2.2meq/g)で代用したことを除き、実施例2のフィルム2Eと同様の方法で作製した。
B)フィルム(3B)を、キサンタンガムを1%のアニオン性澱粉(Lyckeby Staerkelse製Glucapol2030、電荷密度1.4meq/g)で代用したことを除き、実施例2のフィルム2Eと同様の方法で作製した。
C)フィルム(3C)を、キサンタンガムを1%のポリアクリル酸(Mw:100.000)(Aldrich製、電荷密度3.2meq/g)で代用したことを除き、実施例2のフィルム2Eと同様の方法で作製した。
D)フィルム(3D)を、キサンタンガムを1%のEka NP 442(Eka Chemicals AB製、電荷密度1.0meq/g)で代用したことを除き、実施例2のフィルム2Eと同様の方法で作製した。
E)フィルム(3E)を、キサンタンガムを1%のEka BSC20(Eka Chemicals AB製、電荷密度0.7meq/g)で代用したことを除き、実施例2のフィルム2Eと同様の方法で作製した。
F)フィルム(3F)を、キサンタンガムを1%のグアーガム(Danisco製、MEYPRO GUAR CSAAM−20)で代用したことを除き、フィルム2Eと同様の方法で作製した。
G)フィルム(3G)を、実施例1のフィルム1Cと同様の方法で作製した。
【0092】
実施例1に記載されている方法でフィルムの分析を行った。
【表3】
【0093】
上記の表3の結果から、いくつかの種類のアニオン性ポリマー/生成物が添加剤として用いられているフィルム材料同士は、強度特性が幾分同等であると結論できる。それ以外に、非イオン性グアーガムを添加剤(3F)として用いるとフィルムの強度特性が劣化することも観察されている。
【0094】
実施例4
(本実施例4は参考例である。)
A)フィルム(4A)を、60%のMFC、39.5%のポリビニルアルコール、及び
竹繊維をTEMPO媒介性酸化して作製した電荷密度0.8meq/gの0.5%のナノ
繊維を使用したことを除き、実施例1のフィルム1Aと同様の方法で作製した。
B)フィルム(4B)を、60%のMFC、39%のポリビニルアルコール、及び1%
のナノ繊維を使用したことを除き、実施例1のフィルム1Aと同様の方法で作製した。
C)フィルム(4C)を、60%のMFC、38.5%のポリビニルアルコール、及び
1.5%のナノ繊維を使用したことを除き、実施例1のフィルム1Aと同様の方法で作製
した。
D)フィルム(4D)を、60%のMFC、38%のポリビニルアルコール、及び2%
のナノ繊維を使用したことを除き、実施例1のフィルム1Aと同様の方法で作製した。
E)フィルム(4E)を、60%のMFC、37.5%のポリビニルアルコール、及び
2.5%のナノ繊維を使用したことを除き、実施例1のフィルム1Aと同様の方法で作製
した。
F)フィルム(4F)を、60%のMFC、37%のポリビニルアルコール、及び3%
のナノ繊維を使用したことを除き、実施例1のフィルム1Aと同様の方法で作製した。
G)フィルム(4G)を、60%のMFC、36%のポリビニルアルコール、及び4%
のナノ繊維を使用したことを除き、実施例1のフィルム1Aと同様の方法で作製した。
H)フィルム(4H)を、60%のMFC、35%のポリビニルアルコール、及び5%
のナノ繊維を使用したことを除き、実施例1のフィルム1Aと同様の方法で作製した。
I)フィルム(4I)を、実施例1のフィルム1Cと同様の方法で作製した。
【0095】
実施例1に記載されている方法でフィルムの分析を行った。
【表4】
【0096】
上記の表4の結果から、強度特性はどのフィルム材料も等しいが、OTRに関していえば他の材料よりも材料4Fが有意に良好であると結論できる。
【0097】
実施例5
A)フィルム(5A)を、58%のMFC、40%のポリビニルアルコール、1%のキ
サンタンガム、及びRDS−Laponite(Rockwood製)/Eka NP
320(Eka Chemicals製)の1:1(w/w)の調合物1%から作製した
ことを除き、実施例1のフィルム1Aと同様の方法で作製した。
B)フィルム(5B)を、58%のMFC、40%のポリビニルアルコール、1%のキ
サンタンガム、及びRDS−Laponit/Eka NP 2180の1:1(w/w
)の調合物1%から作製したことを除き、フィルム5Aと同様の方法で作製した。
C)フィルム(5C)を、58%のMFC、40%のポリビニルアルコール、1%のキ
サンタンガム、及び1%のEka NP 2180から作製したことを除き、フィルム5
Aと同様の方法で作製した。
D)フィルム(5D)を、58%のMFC、40%のポリビニルアルコール、1%のキ
サンタンガム、及び1%のRDS-Laponiteから作製したことを除き、フィルム
5Aと同様の方法で作製した。
E)実施例1のフィルム1Cと同様の方法でフィルム(5E)を作製した。
【0098】
実施例1に記載されている方法でフィルムの分析を行った。
【表5】
【0099】
上記の表5の結果から、強度特性に関してフィルム材料5Aは他のフィルム材料よりも有意に良好であると結論できる。フィルム5B及び5Cは、優れたOTR特性を示す。
上記の開示によって提供される本願発明の具体例として、以下の発明が挙げられる。
[1] a)数平均長さが0.001〜0.5mmであり比表面積が1〜100m/gであるセルロース繊維、
b)少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマー、及び
c)少なくとも1種のアニオン性ポリマー
を含む、組成物。
[2] 組成物中のa)及びb)の乾燥重量を基準として、40〜80重量%のa)及び
20〜60重量%のb)を含む、[1]に記載の組成物。
[3] 組成物中のa)、b)及びc)の乾燥重量を基準として、0.01〜9重量%のc)を含む、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] 組成物中のa)及びb)の乾燥重量を基準として55〜65重量%のa)及び35〜45重量%のb)、並びに組成物中のa)、b)及びc)の前記乾燥重量を基準として0.1〜3重量%のc)を含む、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の組成物。
[5] d)ナノ粒子又はミクロ粒子を更に含む、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の組成物。
[6] 数平均長さが0.001〜0.5mmであり比表面積が1〜100m/gである前記セルロース繊維が、ミクロフィブリル状セルロース繊維を含む、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[7] 前記少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマーが少なくとも90%の加水分解度を有する、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の組成物。
[8] 前記少なくとも部分的に加水分解された酢酸ビニルポリマーが、少なくとも90%の加水分解度を有するポリビニルアルコールである、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の組成物。
[9] 前記アニオン性ポリマーが多糖を含む、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の組成物。
[10] 前記多糖がアニオン性多糖ガムを含む、[9]に記載の組成物。
[11] 前記組成物の総重量を基準として50〜99.9重量%の水を含む、[1]から[10]のいずれか一項に記載の組成物。
[12] [11]に記載の組成物から生じるフィルムを支持表面上に形成する工程、
前記組成物から少なくとも一部の水を除去する工程、及び
形成された自立性フィルムを前記支持表面から除去する工程
を含む、自立性フィルムの製造方法。
[13] 前記形成された自立性フィルムが50重量%以下、好ましくは20重量%以下の水を含む、[12]に記載の方法。
[14] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の組成物を含む、又は[11]若しくは[12]に記載の前記方法によって得られる、自立性フィルム。
[15] 厚さが1〜1000μm、好ましくは10〜100μmである、[14]に記載の自立性フィルム。
[16] 50重量%以下、好ましくは20重量%以下の水分である、[14]又は[15]に記載の自立性フィルム。
[17] 基材、及び[1]〜[10]のいずれか一項に記載の組成物又は前記基材の少なくとも一表面上に配置された[14]〜[16]のいずれか一項に記載の自立性フィルムを含む、多層化物品。
[18] 前記基材が紙又は板紙シートである、[17]に記載の多層化物品。
[19] 基材を提供する工程、並びに
(i) [14]〜[16]のいずれか一項に記載の自立性フィルムを提供する工程及び
前記自立性フィルムを前記基材上に配置する工程、又は
(ii)[11]に記載の組成物を提供する工程及び
前記組成物の層を前記基材の少なくとも一表面上に適用する工程
を含む、多層化物品の製造方法。
[20] 前記基材が紙又は板紙シートである、[19]に記載の方法。
[21] 工程(ii)がさらに、前記基材に塗布された前記組成物から少なくとも一部の水を除去して、その後に前記層が50重量%以下、好ましくは20重量%以下の水分を含む工程を含む、[19]又は[20]に記載の方法。
[22] 前記50重量%以下、好ましくは20重量%以下の水分を含む層が、1〜20μm、好ましくは2〜10μmの厚さである、[21]に記載の方法。
[23] 浸透性基材に対するバリアを提供するための、[1]〜[11]のいずれか一項に記載の組成物、又は[13]〜[16]のいずれか一項に記載の自立性フィルムの使用。
[24] 前記浸透性基材が紙又は板紙シートである、[23]に記載の使用。