(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも部分的に加水分解されたビニルアセテートポリマーが少なくとも90%の加水分解度を有するポリビニルアルコールである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
基材、及び前記基材の少なくとも一表面上に配置される請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物または請求項11〜14のいずれか一項に記載の自立性フィルムを含む多層物品。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の組成物は、水に加えて、少なくとも下記の成分を含む。
a)0.001〜0.5mmの数平均長と1〜100m
2/gの比表面積とを有するセルロース繊維;
b)少なくとも部分的に加水分解されたビニルアセテートポリマー;及び任意で
c)少なくとも1つのアニオン性ポリマー。
【0022】
本発明の組成物におけるセルロース繊維a)の量は、通常、組成物のa)及びb)の乾燥重量に基づいて、約40重量%以上、好ましくは約50重量%以上、より好ましくは約55重量%以上であって約80重量%以下、好ましくは約70重量%以下、より好ましくは約65重量%以下であり得る。
【0023】
本発明の組成物における少なくとも部分的に加水分解されたビニルアセテートポリマーb)の量は、通常、組成物のa)及びb)の乾燥重量に基づいて、約20重量%以上、好ましくは約30重量%以上、より好ましくは約35重量%以上であって約60重量%以下、好ましくは約50重量%以下、より好ましくは約45重量%以下であり得る。
【0024】
本発明の組成物における少なくとも1つのアニオン性ポリマーc)の量は、アニオン性ポリマーが存在する場合、組成物のa)、b)及びc)の乾燥重量のうちの好ましくは約0.01重量%以上、より好ましくは約0.1重量%以上、さらにより好ましくは約0.3重量%以上、最も好ましくは約0.5重量%以上であって約9重量%以下、より好ましくは約5重量%以下、さらにより好ましくは約3重量%以下、及び最も好ましくは約2重量%以下であり得る。
【0025】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、組成物のa)及びb)の乾燥重量に基づいて、55〜65重量%のa)0.001〜0.5mmの数平均長を有するセルロース繊維、及び35〜45重量%のb)少なくとも部分的に加水分解されたビニルアセテートポリマー、並びに任意で、組成物のa)、b)及びc)の乾燥重量に基づいて0.1〜3重量%のc)少なくとも1つのアニオン性ポリマーを含む。
【0026】
一実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも1つのアニオン性ポリマーc)を本質的に含まないか、または少なくとも1つのアニオン性ポリマーc)を組成物のa)、b)及びc)の乾燥重量に基づいて0.1重量%未満含む。
【0027】
好ましくは、a)及びb)、並びに存在する場合はc)が一緒になって本発明の配合物の乾燥重量の少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%、場合によってはさらに100重量%を占める。
【0028】
本発明の組成物は、好ましくは疎水性結合剤を含まないか、又は疎水性結合剤を組成物の乾燥重量に基づいて、5重量%未満の該結合剤を含む。このような疎水性結合剤の例には、エポキシド(例えば、ビスフェノールAエポキシドまたは修飾ビスフェノールAエポキシド)、ポリウレタン、フェノール樹脂、疎水性アクリル樹脂及びシロキサンを含む疎水性ポリマーが挙げられる。
【0029】
本発明の成分a)としての使用が意図されるセルロース繊維は、約0.005mm以上、好ましくは約0.01mm以上、より好ましくは0.02mm以上であって約0.5mm以下、好ましくは約0.2mm以下、より好ましくは約0.1mm以下の数平均長、及び約1m
2/g以上、好ましくは約1.5m
2/g以上、最も好ましくは約3m
2/g以上であって約100m
2/g以下、好ましくは約15m
2/g以下、最も好ましくは約10m
2/g以下の比表面積(Micromeritics ASAP 2010機器を使用するBET法に従って177 KにおけるN
2の吸着を測定する)を有する。
【0030】
セルロース繊維の数平均幅は、好ましくは約5μm以上、より好ましくは約10μm以上、最も好ましくは約20μm以上であって約100μm以下、より好ましくは約60μm以下、最も好ましくは約40μm以下ある(L&W Fiber Testerで測定する)。
【0031】
本明細書で使用するように、「数平均」という用語は、数平均長及び数平均幅で用いるように、例えば繊維長に照らして、個々の繊維の長さの算術平均又は中央を指し、例えばn繊維の長さを測定し、この長さを合計してnで割ることにより決定する。
【0032】
本発明で用いるセルロースの供給源としては、下記が挙げられるがこれらに限定されない:例えば硬材もしくは軟材に由来する木質繊維、例えば化学パルプ、機械パルプ、熱機械パルプ、化学処理した機械パルプ、再生繊維もしくは新聞用紙由来;種子繊維、例えば綿由来;種子全繊維(seed full fibre)、例えば大豆外皮、エンドウ外皮、トウモロコシ外皮由来;鞘皮繊維、例えば亜麻、大麻、黄麻、ラミー、ケナフ由来;葉繊維、例えばマニラ麻、サイザル麻由来;茎またはわらの繊維、例えばバガス、トウモロコシ、コムギ由来;草繊維、例えば竹由来;藻類からのセルロース繊維、例えばベロニア(velonia);細菌及び菌類;並びに柔組織細胞、例えば野菜及び果実。セルロースの供給源は限定されず、任意の供給源を使用してもよく、合成セルロースまたはセルロース類似体を含む。
【0033】
本発明の実施形態において、セルロース繊維は微小繊維セルロース繊維を含む。
【0034】
本発明の目的上、微小繊維セルロースは、直径が小さく、長さ対直径の比が高い部分構造であり、天然に存在するセルロース微小繊維のそれらと同程度の寸法である。
【0035】
一実施形態に従って、微小繊維セルロースは、例えばグラフト化、架橋化、化学酸化(例えば過酸化水素、フェントン反応、及び/又はTEMPOを用いる);吸着などの物理的改変、例えば化学物質の吸着;並びに酵素性修飾によって修飾される。複合技術も微小繊維セルロースを修飾するために使用してもよい。
【0036】
セルロースは天然において組織及び配向の幾つかの階層レベルで見出される。セルロース繊維は、マクロフィブリルが配列する層状二次壁構造を含む。
【0037】
マクロフィブリルは、結晶領域及び非晶質領域に配列するセルロース分子をさらに含む複数の微小繊維を含む。セルロース微小繊維は、異なる植物種で直径約5〜約100ナノメートルに及び、最も典型的には直径約25〜約35ナノメートルの範囲にある。微小繊維は、非晶質ヘミセルロース(特にキシログルカン)、ペクチン多糖、リグニン、及びヒドロキシプロリンに富む糖タンパク質(エクステンシンを含む)のマトリクス内に平行して走る束に存在する。微小繊維は、約3〜4nm間隔を空けており配列する、その空間が上に挙げたマトリクス化合物で占められている。マトリクス物質の明確な配置及び位置、並びにどのようにセルロース微小繊維と相互作用するのかはまだ十分に分かっていない。
【0038】
微小繊維セルロースは、小断片に剥離された天然セルロース繊維から典型的には作製され、この断片は繊維壁の微小繊維の大部分が覆われていない。
【0039】
剥離はセルロースの繊維の剥離に適した種々の装置で実施できる。繊維の加工の必要条件は、装置が小繊維が繊維壁から放出されるような方法で制御できることである。これは、この繊維を剥離が起きる装置の壁又は他の部分と互いに擦り合うことにより遂行してもよい。一実施形態に従って、剥離は、ポンピング(pumping)、混合、熱、蒸気破裂、加圧−減圧循環、衝撃粉砕、超音波、マイクロ波破裂、ミリング(milling)、及びこれらの組み合わせにより遂行される。本明細書に開示する機械的操作のいずれにおいても、微小繊維セルロース繊維を提供するために十分なエネルギーを加えることが重要である。一実施形態において、微小繊維セルロース繊維は、天然セルロースを酸化剤及び少なくとも1つの遷移金属を含む水性懸濁液で処理し、天然セルロース繊維を微小繊維セルロース繊維へと機械的に剥離することにより作製される。
【0040】
本発明での使用に適した微小繊維セルロース繊維の作製方法としては、国際公開第2004/055268号、国際公開第2007/001229号および国際公開第2008/076056号に記載される方法が挙げられるがこれらに限定されない。
【0041】
剥離されていないセルロース繊維の繊維長は通常約0.7〜約2mmに及び、これらの比表面積は通常約0.5〜1.5m
2/gであるため、剥離されていないセルロース繊維は微小繊維とは異なっている。
【0042】
本明細書で用いるように、「少なくとも部分的に加水分解されたビニルアセテートポリマー」という用語は、任意のビニルアセテートポリマーを指し、ビニルアセテートのホモポリマー、及びビニルアセテートと少なくとも他のモノマーとから形成されるコポリマーを含み、アセテート基の少なくとも一部はヒドロキシル基に加水分解される。ホモポリマーが好ましい。少なくとも部分的に加水分解されたビニルアセテートポリマーにおいて、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも98%のアセテート基がヒドロキシル基に加水分解されている。
【0043】
好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも98%の加水分解度をもつポリビニルアルコールは、とりわけ本発明での使用が意図される少なくとも部分的に加水分解されたビニルアセテートポリマーの一例である。
【0044】
少なくとも部分的に加水分解されたビニルアセテートポリマーは、好ましくは約5000Da以上、より好ましくは約25,000Da以上、最も好ましくは約75,000Da以上であり約500,000Da以下、より好ましくは約250,000Da以下および最も好ましくは約150,000Da以下の重量平均分子量を有する。
【0045】
本発明での使用が意図されるアニオン性ポリマーは、合成又は天然起源であり、天然起源の場合、化学的に修飾されていてもよい。本発明の目的上、アニオン性ポリマーc)は、b)少なくとも部分的に加水分解されたポリビニルアセテートポリマーとも、a)0.001〜0.5mmの数平均長と1〜100m
2/gの比表面積とを有するセルロース繊維とも相違する。
【0046】
好ましくは、アニオン性ポリマーの電荷密度は、約0.1meq/g以上、より好ましくは約0.2meq/g以上、最も好ましくは約1meq/g以上であり約10meq/g以下、より好ましくは約8meq/g以下、最も好ましくは約5meq/g以下(pH7の水性ポリマー溶液についてParticle Charge Detector,Muetek PCD03を用いて測定する)である。
【0047】
好ましくは、アニオン性ポリマーの重量平均分子量は、約10
4Da以上、より好ましくは約10
5Daを超えて、約10
8Da以下、より好ましくは約10
7Da以下である。
【0048】
本発明での使用が意図されるアニオン性ポリマーの例には、天然または修飾アニオン性多糖類、例えばデンプン、アニオン性セルロース誘導体、セルロースナノ繊維および多糖ガム;ならびにアクリル酸系合成ポリマー、例えばポリ(アクリル酸)が挙げられる。
【0049】
本明細書で用いるように、セルロースナノ繊維は、約100〜500nmの数平均長、典型的には1〜20nm、例えば2〜10nmの幅を有するセルロース小繊維に関する。セルロースナノ繊維の作製方法としては、国際公開第2009/069641号に記載される方法が挙げられるがこれらに限定されない。
【0050】
アニオン性デンプンの例には、NaClOおよび触媒量のTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)で酸化させたデンプンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0051】
アニオン性セルロース誘導体の例には、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、スルホエチルカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースなどが挙げられ、このセルロースは、1つまたはそれ以上の非イオン性置換基で置換され、好ましくはカルボキシメチルセルロースである。
【0052】
アニオン性多糖ガムの例には、天然アニオン性の多糖ガム、およびアニオン性の正味荷電を有するように化学修飾された天然の非アニオン性またはカチオン性の多糖ガムが挙げられる。
【0053】
本発明での使用が意図される多糖ガムとしては、寒天、アルギン酸、β−グルカン、カラギナン、チクルガム、ダンマルガム、ジェランガム、グルコマンナン、グアーガム、アラビアガム、ガッティガム(Gum ghatti)、トラガカントガム、カラヤガム、ローカスト・ビーン・ガム、マスティックガム(Mastic gum)、オオバコ種子殻、アルギン酸ナトリウム、トウヒガム、タラガム、及びキサンタンガム、必要である場合、アニオン性正味荷電を有するように化学修飾された多糖ガムが挙げられるがこれらに限定されない。
【0054】
キサンタンガムは本発明での使用に現時点で好ましい天然のアニオン性多糖ガムである。
【0055】
上記の成分a)、b)及び任意成分c)以外に、本発明の組成物は1つまたはそれ以上のさらなる成分を含んでもよく、例えばd)マイクロ粒子又はナノ粒子、好ましくは無機のマイクロ粒子又はナノ粒子であるが、これらに限定されない。
【0056】
本明細書で用いられるように、「マイクロ粒子」とは、少なくとも1つの寸法において100μmより小さなサイズを有し且つ1mmより大きなサイズの寸法はない固体または非晶質の粒子を指す。
【0057】
本明細書で用いられるように、「ナノ粒子」とは、少なくとも1つの寸法において100nmより小さなサイズを有し且つ1μmより大きなサイズの寸法はない固体または非晶質の粒子を指す。本発明に照らして、ナノ粒子はマイクロ粒子の下位群を形成することが分かる。
【0058】
本発明での使用が意図される無機のマイクロ又はナノ粒子の例には、シリカもしくはケイ酸塩系の粒子を含み、コロイド状シリカもしくはケイ酸塩粒子又はこれらの凝集体、粘土及び金属炭酸塩粒子を含む。
【0059】
本発明で使用できるスメクタイト粘土としては、例えばモンモリロナイト/ベントナイト、ヘクトライト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、及びこれらの混合物が挙げられる。一実施形態に従って、スメクタイト粘土はラポナイト及び/又はベントナイトである。
【0060】
一実施形態に従って、スメクタイト粘土は、例えばカチオン又はカチオン性基、例えば第4級アンモニウム基又はアルカリ金属、例えばリチウムの導入により修飾できる。
【0061】
一実施形態に従って、スメクタイト粘土はリチウムで修飾される合成ヘクトライト粘土である。この粘土は、例えばRockwoodからの「Laponite(登録商標)」またはEka Chemicals ABからの「Eka Soft F40」という名前で販売されている。このような粘土、及びこのような粘土の製造の例には、「国際公開第2004/000729号」に開示されるものを含む。本発明に従って使用されるスメクタイト粘土は、約50〜約1500m
2/g、例えば約200〜約1200m
2/g、又は約300〜約1000m
2/gの比表面積を有し得る。
【0062】
適切な製品は、例えばSued−ChemieのBentonite、BASF及びClayton;Southern Clay ProductsのBentolite(Bentonite);並びにAkzoNobelのHydrotalciteであってもよい。
【0063】
本発明の組成物において好ましくは無機のマイクロ粒子又はナノ粒子の濃度は、存在する場合、全組成物の乾燥重量に基づいて、好ましくは5重量%未満、例えば約0.1重量%以上、好ましくは約0.3重量%以上であり約5重量%以下、好ましくは約2重量%以下である。
【0064】
本発明の組成物は、上記の成分に加えてさらなる成分、例えば非カチオン性又はカチオン性ポリマー、例えばカチオン性多糖類を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0065】
一実施形態において、本発明の組成物は流体組成物であり、好ましくは懸濁液である。本発明の流体組成物は、典型的には、組成物の全重量に基づいて、約50重量%以上、好ましくは60重量%以上、最も好ましくは70重量%以上であり約99.9重量%以下、好ましくは約95重量%以下の水を含む。本発明の流体組成物は、下記のように、例えば基材上にコーティングを形成するため、または自立性フィルムに加工するために使用してもよい。
【0066】
他の実施形態において、本発明の組成物は、固体、又は非流体、組成物であり、組成物の全重量に基づいて、典型的には最大50重量%、好ましくは最大20重量%の水を含む。
【0067】
以下に実験の項で示すように、本発明の組成物から形成される層、好ましくは本質的にコヒーレント層、例えば自立性フィルム、または基材上のコーティング層は、良好なバリア特性および機械的強度を示す。
【0068】
本発明の自立性フィルムは、典型的には、本発明の流体組成物の層を支持表面上に形成し、少なくとも一部の水を組成物から除去し、このように形成した自立性フィルムを支持表面から剥がすことにより製造する。水は、任意の在来法により、例えば加熱により、大気の減圧により、または加圧により、該組成物から除去して自立性フィルムを形成できる。
【0069】
支持表面は、層を形成し、少なくとも一部の水を除去して自立性フィルムを形成することが可能な任意の表面であり、例えば平面、ドラム、エンドレスベルト、金網などであり得る。
【0070】
本従って、発明の自立性フィルムは、a)約0.001〜0.5mmの数平均長と約1〜約100m
2/gの比表面積とを有するセルロース繊維;b)少なくとも部分的に加水分解されたビニルアセテートポリマー;及び任意でc)少なくとも1つのアニオン性ポリマー;並びに任意の追加成分を含む。
【0071】
自立性フィルムの成分の詳細および濃度は、本発明の組成物に関して先述した通りである。
【0072】
本明細書で用いるように、「自立性フィルム」とは、好ましくは固体材料のフィルム様の物品を指し、その構造的完全性を維持するための支持物を必要としない。
【0073】
従って、本発明の自立性フィルムは典型的にはこのフィルムが形成される組成物と同じ構成要素を有する。しかしながら、本発明の自立性フィルムにおいて、本発明の流体組成物と比較する場合、含水量は有意に減少する。含水量は少なくとも自立性フィルムが形成する程度まで取り除かれる。水は本質的に自立性フィルムから除去され、それによりフィルムに存在する水の量は大気と平衡した量に相当する。
【0074】
本発明の自立性フィルムの厚さは、一方では自立性フィルムを生産するのに必要な最小厚及び/又は所望のバリア特性を得るのに必要な最小厚によって、他方ではフィルムが容易に処理され生産できる最小厚によって制限される。好ましくは、自立性フィルムの厚さは、約1μm以上、より好ましくは約5μm以上、最も好ましくは約10μm以上であり約1000μm以下、より好ましくは約200μm以下、最も好ましくは約100μm以下の範囲である。約20〜約50μmのフィルム厚さが特に意図される。
【0075】
自立性フィルムは、それ自体単独で使用してもよく、又は多層構造中の独立層として使用してもよい。
【0076】
本発明の多層構造は、基材、並びに基材の少なくとも一側面上に配置される層、好ましくはa)0.001〜0.5mmの数平均長と約1〜約100m
2/gの比表面積とを有するセルロース繊維;b)少なくとも部分的に加水分解されたビニルアセテートポリマー;及び任意でc)少なくとも1つのアニオン性ポリマー;並びに任意で追加成分を含むバリア材料のコヒーレント層又は本質的にコヒーレントな層を含む。
【0077】
バリア材料は、基材上に配置される本発明の自立性フィルムから生じてもよいし、又は基材を本発明の流体組成物の層でコーティングし、好ましくは続いて流体組成物から少なくとも一部の水を除去して基材上にバリアコーティングを生成することから生じてもよい。
【0078】
実施形態において、結合剤、例えば接着剤又は熱可塑性物質は、自立性フィルムを基材に結合するために使用してもよい。
【0079】
バリア材料が配置される基材は、バリア材料のバリア特性の利益を受ける任意の基材であり、即ち、実体(例えば、気体、蒸気、水蒸気、油脂、微生物など)に浸透性であり、これら実体に対してバリア材料はバリアを形成する。このような基材の例は、プラスチック、金属またはセルロース材料のシート及びフィルム、例えばプラスチックフィルム、金属フィルムおよび紙または板紙のシートが挙げられるがこれらに限定されない。紙及び板紙は基材について好ましい材料である。
【0080】
上記のバリア材料および基材に加えて、多層物品は、この多層物品の少なくとも一側面上又はバリア材料と基材との間に配置される異なる材料の追加層を含んでもよい。このような追加層の例には、プラスチック及び金属材料の層が挙げられるがこれらに限定されない。
【0081】
本発明の多層物品上のバリア材料の厚さは、一方では所望のバリア特性を得るために必要な最小厚によって、他方では層が生成し得る最大厚によって制限される。バリア材料が上記の自立性フィルムに由来する場合、このようなフィルムの厚さ制限が該当する。バリア材料が基材を流体組成物でコーティングすることから得られる場合、バリア材料の厚さは好ましくは約1μm以上、より好ましくは約2μm以上であり約20μm以下、好ましくは約10μm以下である。
【0082】
本発明の自立性フィルム又は多層構造は多くの用途に有用であり、例えば包装用途においては包装中に気体、水分、油脂もしくは微生物を保持し、あるいは気体、水分、油脂もしくは微生物の包装物内への侵入を防ぐのに有利である。
【0083】
本発明は下記の非限定的実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0084】
実施例1
A)フィルム(1A)を、100%微小繊維セルロース(MFC)から、BYK−Gardner GmbH(ドイツ)から提供される巻き線型ロッド(rod)を用いて、200μmの湿潤フィルム厚および200mmのフィルム幅で製造した。このフィルムをポリマーフィルム上で形成し、その後室温で24時間乾燥させた。MFCは、フェントン前処理(40ppm Fe
2+、1% H
2O
2、pH4,70℃、10%パルプ濃度、1時間)したDomsjoeパルプの漂白亜硫酸パルプから1%の繊維懸濁液をパールミル(pearl−mill)(Drais PMC 25TEX)(酸化ジルコニウム・パール、65%充填度、回転速度1200回転/分および流速100L/時間)を通過させることにより作製した。MFCの特徴は下記の通りであった;繊維長:0.08mmおよび幅:27.2μm(L&W Fiber Tester)、約4m
2/gの比面積(Micromeritics ASAP 2010機器を用いたBET法)、安定性:100%(0.5% パルプ懸濁液)、保水値(WRV):3.8(g/g)(SCAN:−C 62:00)。
他に明記しない限り、実施例の全ての百分率はフィルムの乾燥重量に基づいて重量%として算出する。
B)フィルム(1B)をA)のように作製したが、80% MFCおよび20% ポリビニルアルコール、Aldrichから提供されるPVA 28−99(Mw:145.000,DP:3300)を用いた。
C)フィルム(1C)はA)のように作製したが、60% MFCおよび40% ポリビニルアルコールを用いた。
D)フィルム(1D)はA)のように作製したが、40% MFCおよび60% ポリビニルアルコールを用いた。
E)フィルム(1E)はA)のように作製したが、100% ポリビニルアルコールを用いた。
【0085】
乾燥後、これらのフィルムをポリマーフィルムから剥がし、気候室(23℃および50% RH)で24時間保存し、その後、坪量、厚さ、強度特性(ISO 536:1995、ISO 534:1988、ISO 1924−2)、収縮、水蒸気透過速度、WVTR(ASDTM E96−90)及び酸素透過速度、OTR(ASTM F1307−90)について分析した。
【0086】
収縮は乾燥の前後にフィルムのフィルム面積を比較することにより測定した。0の収縮値は収縮が観察できなかったことを示す。
【表1】
【0087】
上の表1の結果から、フィルム材料1A及び1Eは乾燥時に収縮するため使用に適さないと結論付けられる。他にフィルム1Eが相対湿度に依存して適切な形状を有することも観察される。フィルム材料1B、1C及び1Dは形状安定性であり、収縮特質を示さない。これらのフィルムは1A及びとりわけ1Eよりはるかに高い強度特性も有する。強度特性についていえば全体的に最良のフィルム材料は1Cである。
【0088】
実施例2
A)フィルム(2A)を、実施例1のフィルム1Aのように作製したが、60% MFC、39.9% ポリビニルアルコール及び1.25meq/g(Particle Charge Detector,Muetek PCD 03)の電荷密度をもつVendico Chemical ABの0.1% キサンタンガム食品等級を用いた(フィルムの全重量に基づく)。
B)フィルム(2B)をフィルム2Aのように作製したが、60% MFC、39.75% ポリビニルアルコール及び0.25% キサンタンガムを用いた。
C)フィルム(2C)をフィルム2Aのように作製したが、60% MFC、39.5% ポリビニルアルコール及び0.5% キサンタンガムを用いた。
D)フィルム(2D)をフィルム2Aのように作製したが、60% MFC、39.25% ポリビニルアルコール及び0.75% キサンタンガムを用いた。
E)フィルム(2E)をフィルム2Aのように作製したが、60% MFC、39% ポリビニルアルコール及び1% キサンタンガムを用いた。
F)フィルム(2F)をフィルム2Aのように作製したが、60% MFC、38.5% ポリビニルアルコール及び1.5% キサンタンガムを用いた。
G)フィルム(2G)をフィルム2Aのように作製したが、60% MFC、38% ポリビニルアルコール及び2% キサンタンガムを用いた。
H)フィルム(2H)をフィルム2Aのように作製したが、60% MFC、37% ポリビニルアルコール及び3% キサンタンガムを用いた。
I)フィルム(2I)をフィルム2Aのように作製したが、60% MFC、35% ポリビニルアルコール及び5% キサンタンガムを用いた。
J)フィルム(2J)を実施例1のフィルム1Cのように作製した。
【0089】
これらのフィルムの分析を実施例1に記載したように実施した。
【表2】
【0090】
上の表2の結果から、キサンタンガムの追加は引張強度および剛性を向上し得ると結論付けられる。
【0091】
実施例3
A)フィルム(3A)を実施例2のフィルム2Eのように作製したが、キサンタンガムを2.2meq/gの電荷密度をもつAkzoNobelの1% CMC、Gambrosa PA 247と交換した。
B)フィルム(3B)を実施例2のフィルム2Eのように作製したが、キサンタンガムを1.4meq/gの電荷密度をもつLyckeby Staerkelseの1% アニオン性デンプン、Glucapol 2030と交換した。
C)フィルム(3C)を実施例2のフィルム2Eのように作製したが、キサンタンガムを3.2meq/gの電荷密度をもちAldrichから供給される1% ポリアクリル酸(Mw:100.000)と交換した。
D)フィルム(3D)を実施例2のフィルム2Eのように作製したが、キサンタンガムを1.0meq/gの電荷密度をももつEka Chemicals ABの1% Eka NP 442と交換した。
E)フィルム(3E)を実施例2のフィルム2Eのように作製したが、キサンタンガムを0.7meq/gの電荷密度をもつEka Chemicals ABの1% Eka BSC20と交換した。
F)フィルム(3F)をフィルム2Eのように作製したが、キサンタンガムをDaniscoの1% グアーガムMEYPRO GUAR CSAAM−20と交換した。
G)フィルム(3G)を実施例1のフィルム1Cのように作製した。
【0092】
これらのフィルムの分析を実施例1に記載したように実施した。
【表3】
【0093】
上の表3の結果から、異なる種類のアニオン性ポリマー/製品が添加剤として使用されるフィルム材料は強度特性がかなり均等であると結論付けられる。
【0094】
実施例4
A)フィルム(4A)を実施例1のフィルム1Aのように作製したが、60% MFC、39.5% ポリビニルアルコール及び0.8meq/gの電荷密度をもち竹繊維のTEMPO媒介性酸化により作製されるナノ繊維0.5%を用いた。
B)フィルム(4B)を、実施例1のフィルム1Aのように作製したが、60% MFC、39% ポリビニルアルコール及び1%のナノ繊維を用いた。
C)フィルム(4C)を、実施例1のフィルム1Aのように作製したが、60% MFC、38.5% ポリビニルアルコール及び1.5%のナノ繊維を用いた。
D)フィルム(4E)を、実施例1のフィルム1Aのように作製したが、60% MFC、38% ポリビニルアルコール及び2%のナノ繊維を用いた。
E)フィルム(4E)を、実施例1のフィルム1Aのように作製したが、60% MFC、37.5% ポリビニルアルコール及び2.5%のナノ繊維を用いた。
F)フィルム(4F)を、実施例1のフィルム1Aのように作製したが、60% MFC、37% ポリビニルアルコール及び3%のナノ繊維を用いた。
G)フィルム(4G)を、実施例1のフィルム1Aのように作製したが、60% MFC、36% ポリビニルアルコール及び4%のナノ繊維を用いた。
H)フィルム(4H)を、実施例1のフィルム1Aのように作製したが、60% MFC、35% ポリビニルアルコール及び5%のナノ繊維を用いた。
I)フィルム(4I)を実施例1のフィルム1Cのように作製した。
【0095】
これらのフィルムの分析を実施例1に記載したように実施した。
【表4】
【0096】
上の表4の結果から、全てのフィルム材料は強度特性では同等であるが、材料4FはOTRについていえば他の材料より有意に良好であると結論付けられる。
【0097】
実施例5
A)フィルム(5A)を実施例1のフィルム1Aのように作製したが、58% MFC
、40% ポリビニルアルコール、1% キサンタンガム及び1%の1:1(w/w)RD
S−Laponite(Rockwoodより)/Eka NP 320(Eka Ch
emicalsより)配合物から作製した。
B)フィルム(5B)をフィルム5Aのように作製したが、58% MFC、40% ポ
リビニルアルコール、1% キサンタンガム及び1%の1:1(w/w)RDS−Lap
onite/Eka NP 2180配合物から作製した。
C)フィルム(5C)をフィルム5Aのように作製したが、58% MFC、40% ポ
リビニルアルコール、1% キサンタンガム及び1% Eka NP 2180から作製し
た。
D)フィルム(5D)をフィルム5Aのように作製したが、58% MFC、40% ポ
リビニルアルコール、1% キサンタンガム及び1% RDS−Laponiteから作製
した。
E)フィルム(
5E)を実施例1のフィルム1Cのように作製した。
【0098】
これらのフィルムの分析を、実施例1に記載したように実施した。
【表5】
【0099】
上の表5の結果から、フィルム材料5Aは強度特性に関して他のフィルム材料よりも有意に良好であると結論付けられる。フィルム5B、5C及び5Eは優れたOTR特性を示す。