【文献】
P.Beasley et.al.,A New Life for High Voltage Electrostatic Accelerators,Proceedings of IPAC'10,日本,International Particle Accelerator Conference,MOPD018,pp.711-713,2010年3月23-28日開催
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キャパシタスタックが、前記第一の電極(37)と前記第二の電極(39)との間に同心状に配置された一つ以上の中間電極(33)を備え、スイッチングデバイス(35)が設けられていて、前記スイッチングデバイス(35)に前記キャパシタスタックの電極(33、37、39)が接続されていて、前記スイッチングデバイス(35)が、前記スイッチングデバイス(35)の動作時に、互いに同心状に配置されている前記キャパシタスタックの電極(33、37、39)が配置順に増大していく電位レベルに設定されるように設計されている、請求項4に記載の加速器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、原子反応を引き起こすためのエネルギー効率的な配置を有する加速器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本課題は、独立項の特徴によって達成される。本発明の改良は、従属項の特徴に見いだされる。
【0006】
荷電粒子の二つのビームを加速させて、二つのビームの間に衝突を生じさせるための本発明に係る加速器は、
‐ 荷電粒子の二つのビームが静電場によって加速又は減速可能であるように構成された静電ポテンシャル場を発生させるためのポテンシャル場デバイスと、
‐ 二つの荷電粒子ビームの衝突が生じる反応領域と、
‐ 反応領域に向けられたポテンシャル場内の第一のビーム用の第一の加速チャネル(経路)と、
‐ 反応領域に向けられたポテンシャル場内の第二のビーム用の第二の加速チャネルとを有する。
【0007】
反応領域は、ポテンシャル場と第一及び第二の加速チャネルとに関して幾何学的に配置されて、二つのビームの粒子が、加速器の動作中に、第一の加速チャネル及び第二の加速チャネルに沿って反応領域に向けて加速されるようになっている。反応領域で相互作用してポテンシャル場内の反応領域を通過した後、互いに衝突しなかった粒子が再び減速されて、反応領域に向けて二つのビームを加速するためにポテンシャル場デバイスによって印加されたエネルギーを、減速によって少なくとも部分的に回収することができる。
【0008】
従って、提案される構成では、静電加速場を用いて、少なくとも二つのイオンビームを反応相手として加速させる。反応ビームが加速されて相互作用領域を通過した後、荷電粒子は、静電場において低速に減速される。このようにして、互いに反応しなかった粒子の運動エネルギーを実質的に大部分回収することができる。
【0009】
このようにすると、より小さな反応断面積を許容することもできる。特に、反応ゾーン(例えば、所謂ビームダンプ)を通過した後にビームを破壊する構成では、より大きなエネルギー損失が生じ得ることがわかっている。例えば、原子核融合反応のための反応物の極度に小さな反応断面積の場合、これによって、実際の融合反応における高エネルギー収量にもかかわらず、エネルギー収量が全体として負であるという結果になり得る。
【0010】
この負の正味のエネルギー収量は、固体ターゲットの使用において負の影響も有し得る。何故ならば、運動エネルギーがこの場合回収されないからである。
【0011】
提案される構成では、この問題が解決される。何故ならば、粒子の加速用に印加されたエネルギーの大部分が、静電ポテンシャル場、ビームの延長及び反応ゾーンの相互の幾何学的構成によって回収されるからである。
【0012】
粒子の一部が実施的な影響無く、反応領域を通過するので、ポテンシャル場内の幾何学的構成を介して、粒子ビームの加速用に印加されたエネルギーの60%、特に70%、最大80%更には90%を回収することができる。
【0013】
従って、所定のエネルギー消費で、強力な粒子ビームを適用して高い反応率を得ることができる。プラズマ反応器とは対照的に、反応領域内の電子の存在が最小化されて、例えば、放射及び運動量移動による損失が最小化される。
【0014】
また、加速器は、ポテンシャル場内の第一のビーム用の第一の減速チャネルを有し得て、その第一の減速チャネルは反応領域から離れるように向けられる。加速器は、第二のビーム用のポテンシャル場内の第二の減速チャネルも有し得て、その第二の減速チャネルは反応領域から離れるように向けられる。加速器は、各ビーム用の減速チャネルを有しなければならないわけではない。例えば、部分的なエネルギーの回収のためには、反応領域を通過した後に二つのビームのうち一方を減速させるだけで十分となり得る。
【0015】
加速器は、第一のビーム用の荷電粒子を提供して第一の加速チャネルに供給するための第一の源を追加的に備え得る。また、加速器は、第二のビーム用の荷電粒子を提供して第二の加速チャネルに供給するための第二の源も備え得る。
【0016】
加速器は、第一のビームの減速粒子用の第一の捕獲器を追加で備え得て、その第一の捕獲器は、第一のビームチャネルの端に配置され、特に負に帯電している。加速器は、第二のビームの減速粒子用の第二の捕獲器も備え得て、その第二の捕獲器は、第二のビームチャネルの端に配置され、特に負に帯電している。捕獲電極は減速粒子を収集する。捕獲電極が設定される電位は、捕獲電極が減速粒子を捕獲するように選択される。捕獲電極の電位は典型的には、その捕獲電極が配置されるポテンシャル場の位置に適合される。
【0017】
第一のビームの粒子はプロトンであり得る。第二のビームの粒子は
11ホウ素イオンであり得る。ポテンシャル場デバイスは、特に600keV以上の衝突エネルギーが発生ポテンシャル場によって達成可能であるように設計され得る。このようにして、加速器を、プロトン‐
11ホウ素核融合反応用に用いることができる。
【0018】
ポテンシャル場デバイスは、互いに同心状に配置された複数の電極で形成されたキャパシタスタックを備え得て、そのキャパシタスタックは、第一の電位に設定可能な第一の電極と、第一の電極周りに同心状に配置されて第一の電位とは異なる第二の電位に設定可能な第二の電極とを有して、加速ポテンシャルが第一の電極と第二の電極との間に形成されるようになっていて、反応領域が、第一の電極の内部に配置される。第一の電極は、負に帯電した高電圧電極となり得る。
【0019】
ポテンシャル場デバイスは、第一の電極と第二の電極との間に同心状に配置された一つ以上の中間電極を備え得る。スイッチングデバイスが設けられ得て、そのスイッチングデバイスに、キャパシタスタックの電極が接続されて、また、そのスイッチングデバイスは、スイッチングデバイスの動作中に、互いに同心状に配置されたキャパシタスタックの電極がその配置順に従って増大していく電位レベルに設定可能であるように設計される。高電圧電極は、同心状の配置の最内側の電極となり得て、最外側の電極は例えば接地電極となり得る。
【0020】
電子管を有するスイッチングデバイスによって、キャパシタスタックの電極を、ポンプAC電圧で帯電させることができる。ポンプAC電圧の振幅は、達成可能なDC高電圧に対して比較的小さくなり得る。ポテンシャル場デバイスのこの構造は、より大きな加速を小型構造で提供することを可能にする。
【0021】
同心状の配置は全体として小型の構成を可能にする。絶縁ボリューム、つまり内側電極と外側電極との間のボリュームを有効に使うことによって、一つ以上の同心状中間電極が適切な電位に設定される。電位レベルは連続的に増大して、絶縁ボリューム全体の内側において実質的に均一な電場強度をもたらすように選択可能である。
【0022】
高真空が絶縁ボリューム内に存在し得る。絶縁体の使用は、その物質がDC電場による歪みに対して内部電荷を凝集させる傾向(特に加速器の動作中の電離放射によって誘起される)があるという欠点を有する。凝集された伝播電荷は全ての物理的絶縁体内において強力な非一様電場を誘起して、局所的に超過した絶縁破壊限界に繋がり、従って、スパークチャネルの形成につながる。高真空によって電極スタックの電極を互いに絶縁することはこのような不利な点を回避する。従って、安定動作中に使用可能な電場強度を増大させることができる。この結果として、その構成は、実質的に絶縁体の無いものとなる(例えば電極マウント等の少数の部品を除く)。従って、効率、つまり、高電圧電極の空間の節約及びロバストな絶縁が達成可能とされる。
【0023】
中間電極の導入は絶縁破壊電場強度限界を追加的に増大させて、中間電極が無い場合よりも高いDC電圧を発生させることができる。これは、真空中の絶縁破壊強度が電極間隔の平方根に略逆比例するからである。中間電極の導入によって、DC高電圧源内の電場がより均一になるのと同時に、達成可能な電場強度を有利に増大させることに寄与する。
【0024】
このようなDC高電圧源をポテンシャル場デバイスとして用いると、MV範囲の粒子エネルギーを小型設計において得ることができる。
【0025】
有利な一実施形態では、スイッチングデバイスは、高電圧カスケード、特にグライナッヘルカスケード又はコッククロフト‐ウォルトンカスケードを備える。このようなデバイスを用いて、比較的低いAC電圧でDC電圧を発生させるように、第一の電極、第二の電極及び中間電極を帯電させることができる。
【0026】
本実施形態は、例えばグライナッヘル整流カスケードによって可能とされる高電圧発生のアイディアに基づいている。加速器において用いられると、電位エネルギーは、粒子源と加速チャネル端との間に印加される高電位において粒子の運動エネルギーを変換する機能を果たす。
【0027】
一変形例では、キャパシタスタックは、電極を通って延伸するギャップによって二つの別々のキャパシタ鎖に分割される。キャパシタスタックの同心状電極を二つの別々のキャパシタ鎖に分離することによって、グライナッヘルカスケードやコッククロフト‐ウォルトンカスケード等のカスケードスイッチングデバイスを形成するために、二つのキャパシタ鎖を有利に用いることができる。ここで、各キャパシタ鎖は、互いに同心状に配置された(部分的)電極構成を表す。
【0028】
球殻スタックとして電極スタックを設計すると、分離が、例えば赤道に沿ったカットによってなされ得て、二つの半球スタックがもたらされる。
【0029】
このような回路において、キャパシタ鎖の各キャパシタを、高電圧源を充電するのに用いられる一次入力AC電圧のピーク間電圧に充電することができて、上述のポテンシャル平衡、一様な電場分布、絶縁間隔の最適な利用が単純な方法で達成される。
【0030】
有利な方法では、高電圧カスケードを備えたスイッチングデバイスが、二つの別々のキャパシタ鎖を相互接続することができて、また、特にギャップ内に配置される。高電圧カスケード用の入力AC電圧は、キャパシタ鎖の二つの最も外側の電極間に印加可能であり、例えば、これらの電極は外部からアクセス可能である。整流回路のダイオード鎖を、赤道ギャップに適用することができて、空間が節約される。
【0031】
キャパシタスタックの電極は、楕円体、特に球又はシリンダーの表面上に位置するように形成可能である。これらの形状は物理的に有利である。中空球の場合の電極形状の選択や、球形キャパシタが特に有利である。例えばシリンダーの場合のような形状も考えられるが、一般的には比較的非一様な電場分布を有する。
【0032】
殻状電位の電極の低いインダクタンスは、高い動作周波数の印加を可能にして、個々のキャパシタの比較的低いキャパシタンスにも関わらず、電流ドレイン中の電圧の減少が、制限されたままとなる。
【0033】
一実施形態では、スイッチングデバイスはダイオードを備え、そのダイオードは特に電子管として設計可能である。これは、半導体ダイオードと比較して有利である。何故ならば、絶縁破壊の危険性を伴う電極スタック間の物理的接続が存在しなくなり、また、真空ダイオードは、電流を制限する効果を有して、電流過負荷又は電圧過負荷に対してロバストであるからである。
【0034】
整流鎖のダイオードは、別途の真空容器を有さない真空電子管として設計可能である。この場合、電子管の動作に必要な真空は、真空絶縁の真空によって形成される。
【0035】
カソードは、例えば赤道ギャップを介する放射熱を有する熱電子エミッタとして、又は、フォトカソードとして設計可能である。フォトカソードでは、露出(例えばレーザ放射による)を調整することによって、各ダイオードの電流を制御することを可能にして、従って充電電流を制御して、高電圧を間接的に制御することを可能にする。
【0036】
加速チャネル又は減速チャネルは、キャパシタスタックの電極内の開口によって形成可能である。粒子の加速又は減速は電極によって行われる。
【0037】
加速器では、絶縁表面を少なくとも一部に有する別個のビーム管を提供する必要がないという点において、真空の使用が更に有利である。加速チャネルが絶縁表面を有する必要がなくなるので、これは、壁の放電という致命的な問題が絶縁表面に沿って生じることも防止する。
【0038】
本発明の例示的な実施形態を、図面に基づいてより詳細に説明するが、これに限定される訳ではない。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図面においては、同じ部分には、同じ参照符号が付されている。
【0041】
図1は、荷電粒子の二つのビーム71、73を加速して、二つのビームの間の衝突を生じさせるための本発明に係る加速器29の概略図を示す。機能原理について、この図に基づいて説明する。
【0042】
加速器29は、静的ポテンシャル場を発生させるデバイスを有する。図示されている例示的な実施形態では、そのデバイスは、負に帯電した第一の中心電極37を備え、その中心電極は例えばシリンダー状又は球状であり得る。中心電極37は開口を有し、その開口を通って、加速粒子ビーム71、73が入ったり出たりすることができる。外側電極39は接地され得て、中心電極37に対応する開口を備える。
【0043】
粒子ビーム71、73を加速又は減速するのに用いられる静的ポテンシャル場は、中心電極37と外側電極39との間に形成される。
【0044】
二つの粒子ビーム71、73が互いに相互作用する相互作用領域75は、中心電極37の内部に位置する。
【0045】
第一のイオン源77は、外側電極39の外側に配置されて、第一のイオン種(例えば、プロトンH
+)を提供する。第二のイオン源79も、外側電極39の外側に配置されて、第二のイオン種(例えば
11B
5+イオン)を提供する。
【0046】
イオンは、第一の粒子ビーム71、第二の粒子ビーム73に成形されて、デバイスが発生させるポテンシャル場によって加速される。二つの粒子ビーム71、73が相互作用領域75を通過した後、二つの粒子ビーム71、73が再び減速されて、加速用に印加されたエネルギーの大部分を回収することができる。減速チャネルの端に、減速粒子を捕獲するための捕獲電極83、85が配置される。捕獲電極83、85は、その機能を保証するように、低い負電位に設定される。
【0047】
グライナッヘル結線として構成された高電圧カスケード9の原理を、
図2の回路図を用いて説明する。この原理を用いると、特に有利であり
図3に基づいて後述されるようなポテンシャル場デバイスを得ることができる。
【0048】
AC電圧Uを入力11に印加する。第一の半波長が、ダイオード13を介してキャパシタ15を電圧Uに充電する。AC電圧の後続の半波長において、キャパシタ13からの電圧Uが、入力11において電圧Uと共に加えられて、キャパシタ17が、ダイオード19を介して電圧2Uに充電される。このプロセスを、後続のダイオード及びキャパシタにおいて繰り返し、
図2に示される回路の場合には、全体として電圧6Uが出力21において得られる。
図2は、図示される回路において、第一の組のキャパシタ23がそれぞれ第一のキャパシタ鎖(列)を形成し、第二の組のキャパシタ25がそれぞれ第二のキャパシタ鎖を形成する様子も明確に示している。
【0049】
図3は、高電圧カスケード35によって相互接続された中心電極37と、外側電極39と、中間電極33の列とを備えた高電圧源31の概略的な断面を示し、その原理は、
図2において説明されており、高電圧カスケード35によって充電可能なものである。高電圧源は、ポテンシャル場を発生させるためのデバイスとして用いられる。源及び捕獲電極は、明確性のため
図3には示されていないが、
図1と同様の箇所に配置される。
【0050】
電極39、37、33は、中空球として設計されていて、互いに同心状に配置される。印加可能な最大電場強度は、電極の曲率に比例する。従って、球殻の幾何学的形状が特に望ましい。
【0051】
高電圧電極37が中心に位置して、最外側の電極39は接地電極となり得る。赤道上のカット(切断部)47によって、電極37、39、33は、ギャップによって互いに分離された二つの別々の半球スタックに分割される。第一の半球スタックは、第一のキャパシタ鎖41を形成し、第二の半球スタックは第二のキャパシタ鎖43を形成する。
【0052】
AC電圧源45の電圧Uが最外側の電極殻の半分39’、39”のそれぞれに印加される。回路を形成するためのダイオード49は、中空球の半分の大円の領域、つまり、個々の中空球の赤道カット47に配置される。ダイオード49は、
図2の二つの組23、25のキャパシタに対応する二つのキャパシタ鎖41、43の間の交差接続を形成する。
【0053】
図示されている高電圧源31の場合には、第一の加速又は減速チャネル51及び第二の加速又は減速チャネル52が、電極殻の開口を通って形成されている。
【0054】
高電圧電極37を絶縁するため、電極の構成全体を真空絶縁によって絶縁する。高電圧電極37の特に高い電圧を発生させることができて、特に高い高粒子エネルギーがもたらされる。しかしながら、原理的には、固体又は液体の絶縁を用いた高電圧電極の絶縁も可能である。
【0055】
絶縁体としての真空の使用、及び1cmの大きさの中間電極の間隔の使用は、20MV/m以上の値の電場強度を達成することを可能にする。更に、真空の使用は、絶縁体の場合に問題を生じさせる可能性がある加速中に生じる放射のために加速器を動作中に低負荷で動作させる必要がないという利点を有する。これは、より小型の設計及びより小型の機械を可能にする。
【0056】
高電圧源の一実施形態では、中心電極が−10MVの電位に設定される。
【0057】
高電圧源は、N=50のレベル、つまり全部で100個のダイオード及びキャパシタを有することができる。r=0.05mの内半径及び20MV/mの破壊電場強度の真空絶縁の場合、外半径は0.55mである。各半球内には、隣接する球殻間の1cmの間隔で50個の中間空間が存在する。
【0058】
より少ない数のレベルは、充電サイクルの数及び、有効内部源インピーダンスを減少させるが、ポンプチャージ電圧に対する要求を上げる。
【0059】
赤道上のギャップに配置されたダイオードは、二つの半球スタックを互いに接続し、例えば、螺旋状のパターンに配置され得る。式(3.4)によると、全キャパシタンスは74pFとなり得て、蓄えられるエネルギーは3.7kJとなり得る。2mAのチャージ電流は、略100kHzの動作周波数を要する。
【0060】
図4は、中空シリンダー状の電極33、37、39が互いに同心状に配置されている電極の形状を示す。ギャップによって、電極スタックが二つの別々のキャパシタ鎖に分けられて、これらは、
図2のものと同様の構成のスイッチングデバイスを用いて相互接続可能である。加速又は減速チャネル(図示せず)は、キャパシタスタックの電極の開口を通って形成される。
【0061】
図5は、
図2に示される高電圧源の改良81を示し、電極39、37、33の間隔が中心に向けて減少している。後述のように、このような実施形態では、中心に向けて外側電極39に印加されるポンプAC電圧を補償することができて、実質的に等しい電場強度が、隣接する電極対の間に保たれるようになる。従って、実質的に一定の電場強度が、加速チャネル51、52に沿って達成され得る。
【0062】
図6は、スイッチングデバイスのダイオードの実施形態を示す。同心状に配置された半球殻状の電極39、37、33のみが、明確性のために図示されている。
【0063】
この場合、ダイオードは、カソード65と、その反対側のアノード67とを備えた電子管63として示されている。スイッチングデバイスが真空絶縁内に配置されているので、電子を作動させるのに必要な電子管の真空容器を、免除することができる。カソードは、熱電子エミッタ(例えば赤道上のギャップを介する放射加熱を有する)として、又はフォトカソードとして構成可能である。後者は、各ダイオードにおいて、露出(例えばレーザ放射による)を調整することによって電流を制御することができる。これによって、チャージ電流を制御することができ、従って、間接的に高電圧を制御することができる。
【0064】
以下、高電圧源の構成要素、粒子加速器に関するより詳細な説明を与える。
【0065】
[球状キャパシタ]
その構成は、高電圧電極を加速器の内部に配置し、同心状接地電極を加速器の外側に配置する
図1に示される原理に従う。
【0066】
内半径r及び外半径Rの球状キャパシタは、
【数1】
によって与えられるキャパシタンスを有する。
【0067】
半径ρにおける電場強度は、
【数2】
によって与えられる。
【0068】
この電場強度は、半径の二乗に依存して、内側電極に向けて強力に増大していく。内側電極表面ρ=Rにおいて、最大値
【数3】
が得られる。これは、破壊強度の観点からは不利である。
【0069】
一様な電場を有する仮想的な球状キャパシタは以下のキャパシタンスを有する:
【数4】
【0070】
グライナッヘルカスケードのキャパシタの電極が、中間電極としてカスケード加速器内に明確な電位において組み込まれていることの結果として、電場強度分布は、半径に対して線形にフィッティングされる。何故ならば、薄壁の中空球体に対して、電場強度は、最小の最大電場強度を有する平坦な場合
【数5】
と略等しいからである。
【0071】
二つの隣接する中間電極間のキャパシタンスは、
【数6】
によって与えられる。
【0072】
半球電極、及び、等しい電極間隔d=(R−r)/Nは、r
k=r+kd、及び、以下の電極キャパシタンスを与える:
【数7】
【0073】
[整流器]
最近のアバランシェ半導体ダイオード(ソフトアバランシェ半導体ダイオード)は非常に低い寄生キャパシタンスを有し、また、短い回復時間を有する。直列回路は、電位を平衡にするための抵抗を必要としない。動作周波数は、二つのグライナッヘルキャパシタスタックの相対的に小さな電極間キャパシタンスを用いるために、比較的高く選択可能である。
【0074】
グライナッヘルカスケードを充電するためのポンプ電圧の場合、U
in≒100kV、つまり70kV
effの電圧を使用することができる。ダイオードは、200kVの電圧に耐えられなくてはならない。これは、ダイオードの鎖を低い許容範囲で使用することによって達成可能である。例えば、十個の20kVダイオードが使用可能である。例えば、ダイオードは、PhilipsのBY724ダイオード、EDALのBR757‐200Aダイオード、又はFujiのESJA5320Aダイオードであり得る。
【0075】
高速の逆回復時間(例えば、BY724に対してt
rr≒100ns)は損失を最少化する。2.5mm×12.5mmのBY724ダイオードの寸法は、球状高電圧源に対して、単一の赤道面に、スイッチングデバイス用の1000個のダイオード全てを収容することを可能にする。
【0076】
固体ダイオードに代えて、電子放出が整流に用いられる電子管を使用することもできる。ダイオードの鎖を、電子管の多数の電極(互いにメッシュ状に配置されている)によって形成することができ、これら多数の電極は半球殻に接続される。各電極は、一方ではカソードとして機能して、他方ではアノードとして機能する。
【0077】
[個別キャパシタスタック]
基本的なアイディアは、連続して同心状に配置された電極を赤道面上において切断することである。結果としての二つの電極スタックがカスケードキャパシタを構成する。必要なのは、切断面にわたって、ダイオードの鎖を反対側の電極に接続することだけである。整流器は、連続的に配置された電極の電位差を略2U
inに自動的に安定化させることに留意されたい(一定の電極間隔として)。駆動電圧は、二つの外側半球の間に印加される。
【0078】
〈理想キャパシタンス分布〉
回路が
図3のキャパシタンスのみを含む場合、定常動作は、動作周波数f、キャパシタC
0を介する負荷において全波毎に電荷
【数8】
を与える。従って、キャパシタ対C
2k及びC
2k+1の各々は、電荷(k+1)Qを伝える。
【0079】
電荷ポンプは、発生器‐源のインピーダンス
【数9】
を表す。
【0080】
結果として、負荷電流I
outが、
【数10】
としてDC出力電圧を低下させる。
【0081】
負荷電流は、
【数11】
のピーク間の値で、DC出力において残留ACリップルを生じさせる。
【0082】
全てのキャパシタが等しい場合(C
k=C)、有効源インピーダンスは、
【数12】
であり、ACリップルのピーク間の値は
【数13】
となる。
【0083】
整流器内の所定の全エネルギー貯蔵に対して、低電圧部に好ましいキャパシタンスの不同は、同一のキャパシタの従来の選択と比較して、R
GとR
Rの値を僅かに低下させる。
【0084】
図7は、ポンプサイクルの数に対してプロットしたN=50個の同心状半球の充電していなかったカスケードの充電を示す。
【0085】
〈浮遊キャパシタンス〉
二つのコラム間の電荷交換は、例えば、ダイオードD
jによる浮遊キャパシタンスc
j及び逆回復電荷損失q
jの結果として、乗算回路の効率を低下させる(
図1を参照)。
【0086】
ピーク駆動電圧Uの正及び負の極値におけるキャパシタの電圧Uk
±に対する基本方程式は、ダイオードの順電圧降下を無視して、添え字2N−2までは:
【数14】
であり、また
【数15】
である。
【0087】
この体系を用いると、DC出力電圧の平均振幅は、
【数16】
である。
【0088】
DC電圧におけるリップルのピーク間値は、
【数17】
である。
【0089】
ダイオードD
iに平行な浮遊キャパシタンスc
iに対して、変数に対する基本方程式は、u
−1=0、U
2N=2Uであり、方程式の三重対角システムは、
【数18】
である。
【0090】
〈逆回復電荷〉
区切られたダイオードの有限逆回復時間t
rrは
【数19】
の電荷消失を生じさせ、ここで、η=ft
rrであり、Q
Dは、順方向の全波毎の電荷である。そうすると、式(3.22)は以下のようになる:
【数20】
【0091】
[連続的キャパシタスタック]
〈容量性伝送線〉
グライナッヘルカスケードでは、整流ダイオードが、実質的にAC電圧を吸収して、DC電圧に変換し、高DC出力電力まで蓄積する。AC電圧は、二つのキャパシタコラムによって高電圧電極に通されて、整流電流と、二つのコラムの間の浮遊キャパシタンスとによって減衰される。
【0092】
大きな数Nのステップに対して、この離散的な構造を、連続的な伝送線構造と近似することができる。
【0093】
AC電圧に対して、キャパシタ構造は、長さ指定インピーダンス
【数21】
の縦方向インピーダンスを構成する。二つのコラム間の浮遊キャパシタンスは、長さ指定シャントアドミッタンス
【数22】
を導入する。整流ダイオードの電圧スタッキングは、追加の特定電流負荷
【数23】
を生じさせて、これは、DC負荷電流I
outと、伝送線に沿ったタップの密度に比例する。
【0094】
コラム間のAC電圧U(x)及びAC長手方向電流I(x)に対する基本方程式は
【数24】
である。
【0095】
一般方程式は、拡張電信方程式である:
【数25】
【0096】
一般的に、DC出力におけるピーク間リップルは、伝送線の両端におけるAC電圧振幅の差に等しい
【数26】
【0097】
二つの境界条件が、この二次の微分方程式の一意の解に必要とされる。
【0098】
境界条件の一つは、U(x
0)=U
inであり得て、二つのコラムのDC低電圧端の間のAC駆動電圧によって与えられる。他の自然な境界条件は、DC高電圧端x=x
1におけるAC電流を決める。コラム間の集中末端ACインピーダンスZ
1に対する境界条件は以下の通りである:
【数27】
【0099】
無負荷状態Z
1=∞では、境界条件はU’(x
1)=0である。
【0100】
〈一定の電極間隔〉
一定の電極間隔tに対して、特定負荷電流は
【数28】
であり、AC電圧の分布は、
【数29】
によって規定される。
【0101】
そして、平均DC出力電圧は
【数30】
であり、DC電圧のDCピーク間リップルは
【数31】
である。
【0102】
〈最適な電極間隔〉
最適な電極間隔は、計画的DC負荷電流の場合に一定の直流電場強度2Eを保証する。伝送線に沿った特定AC負荷電流は、位置に依存して、
【数32】
となる。
【0103】
AC電圧は、
【数33】
から得られる。
【0104】
電極間隔は、局所的なAC電圧振幅から得られる t(x)=U(x)/E。
【0105】
計画的DC負荷電流の場合のDC出力電圧はU
out=2Edである。負荷の低下は常に、電極間の電圧を増大させるので、負荷のほとんど又は全く無い動作は、整流コラムの許容E及び最大の伝達容量を超え得る。従って、無負荷動作に対して設計を最適化することが推奨され得る。
【0106】
計画的DC負荷電流に対する構成におけるものとは異なる所定の電極分布に対して、伝送線に沿ったAC電圧、従ってDC出力電圧は式(3.27)によって規定される。
【0107】
〈線形カスケード〉
幅w、高さh、コラム間の間隔sの平坦な電極を有する線形カスケードの場合、伝送線インピーダンスは
【数34】
である。
【0108】
〈線形カスケード‐一定の電極間隔〉
非一様な電信方程式は
【数35】
である。
【0109】
x=0からx=d=Ntまで延伸してU
in=U(0)で動作する線と、γ
2=2/(h×s)の伝播定数を仮定すると、解は
【数36】
となる。
【0110】
ダイオードが実質的に、AC電圧をタップして、整流して、伝送線に沿って蓄積する。従って、平均DC出力電圧は、
【数37】
であり、又は明示的に、
【数38】
である。
【0111】
γdでの三次までの級数展開で
【数39】
及び
【数40】
が得られる。
【0112】
負荷電流依存性効果は式(3.12)及び(3.13)に対応する。
【0113】
〈線形カスケード‐最適な電極間隔〉
この場合、基本方程式は
【数41】
である。
【0114】
この微分方程式は閉じた解析解を有さないように考えられる。U’(0)=0を満たす陰的解は
【数42】
である。
【0115】
〈放射状カスケード〉
図4に示されるように半径に依存しない高さhと、コラム間の軸方向ギャップsとを有する同心状のシリンダー電極のスタックを仮定すると、半径指定インピーダンスは
【数43】
である。
【0116】
〈放射状カスケード‐一定の電極間隔〉
等間隔の半径方向電極間隔t=(R−r)/Nに対して、基本方程式
【数44】
は、一般解
【数45】
を有し、γ
2=2/(h×s)である。K
0及びI
0は、ゼロ次の変形ベッセル関数であり、L
0は、ゼロ次の変形シュトルーベ関数である。
【0117】
内半径rにおけるU’(r)=0と、外半径RにおけるU(R)=U
inの境界条件は、二つの定数
【数46】
を決定し、
【数47】
となる。
【0118】
K
1及びI
1は変形ベッセル関数であり、L
1は変形シュトルーベ関数L
1=L’
0−2/πであり、全て一次である。
【0119】
DC出力電圧は
【数48】
である。
【0120】
〈放射状カスケード‐最適な電極間隔〉
最適な局所的電極間隔はt(ρ)=U(ρ)/Eであり、基本方程式は
【数49】
となる。
【0121】
この微分方程式は閉じた解析解を有さないように考えられるが、数値的に解くことができる。
【0122】
[電極の形状]
〈等電位面〉
小型機器は、電気絶縁破壊電場強度を最大にすることを要する。一般的に、小さな曲率の平滑な面がキャパシタ電極用に選択されることが望ましい。粗い近似として、絶縁破壊強度Eは、電極間隔の逆平方根とスケーリングして、小さな電圧差を有する多数の密集した等電位面が、大きな電圧差を有する少数の大きな距離よりも好ましい。
【0123】
〈最小電場の電極の縁〉
等間隔及び線形な電圧分布を有する実質的に平坦な電極設計に対して、最適な縁の形状は、キルヒホッフ型(以下を参照)として知られていて、
【数50】
であり、パラメータ
【数51】
の関数である。電極の形状は
図8に示されている。電極は、1に正規化された距離を有し、縁から最大の距離において漸近的厚さ1−Aを有し、縁は、端面において、高さ
【数52】
を有する垂直な縁へと先細(テーパ状)になっている。
【0124】
パラメータ0<A<1は、電極の存在の結果としての逆電場オーバーシュートも表す。電極の厚さは、顕著な電場の歪みを導入せずに、任意の小ささとなり得る。
【0125】
(例えばビーム経路に沿った開口における)負の曲率は、電場の振幅を更に低下させる。
【0126】
この肯定的な結果は、電極が既に存在している電場において局所的な干渉しか生じさせない点によるものである。
【0127】
自立高電圧電極に対する最適な形状は、ロゴスキー(Rogowski)型及びボルダ(Borda)型であり、歪んでいな電場強度の二倍の電場振幅においてピーク値を有する。
【0128】
[駆動電圧発生器]
駆動電圧発生器は高周波において高AC電圧を提供しなければならない。通常の手順は、高度に絶縁された出力変換器によって中程度のAC電圧を増幅することである。
【0129】
干渉内部共振(不可避な巻き線キャパシタンス及び浮遊インダクタンスによって生じる)は、このような変換器の設計を困難なものにする。
【0130】
代替案は電荷ポンプであり、つまり、周期的に動作する半導体マルクス(Marx)発生器である。このような回路は、接地と単極性の高電圧との間を交互する出力電圧を供給し、キャパシタ鎖の第一のキャパシタを効率的に充電する。
【0131】
[真空中の絶縁破壊強度]
〈d
−0.5則〉
d≒10
−3m以上の電極間隔に対して、絶縁破壊電圧が間隔の平方根に略比例することについては多数の指摘(最終的な説明ではない)が存在する。従って、絶縁破壊電場は、電極の物質の関数として(下記を参照)、Aが一定で
【数53】
としてスケーリングする。現状で利用可能な電極表面の物質は、E≒20MV/mの電場に対してd≦10
−2mの電極間隔を要すると考えられる。
【0132】
〈表面物質〉
真空中の電極間のフラッシュオーバーは、物質表面に大きく依存する。CLICの研究結果(非特許文献1)は以下の破壊係数を示している。
【0134】
〈電極面積に対する依存性〉
電極の面積が破壊電場強度に対して実質的な影響を有することが指摘されている。従って、
【数54】
が、銅の電極表面及び2×10
−2mmの電極領域に当てはまる。以下の式は、10
−3mの間隔を有するステンレス鋼製の平坦な電極に当てはまる:
【数55】
【0135】
〈静電場の形状〉
〈誘電利用率〉
一様電場が最大の電圧を許容することが一般的に受け入れられている。シュバイガー(Schwaiger)の誘電利用率係数ηは、電場の非一様性の結果としての局所的な電場のオーバーシュートの逆数として定義され、つまり、同じ参照電圧及び距離を考慮した場合の、理想的に平坦な電極の構成における電場と、その幾何学的形状のピーク表面電場の比である。
【0136】
これは、電場の振幅に対する誘電利用を表す。小さな距離d<6×10
−3mに対して、非一様な電場は、破壊電圧を増大させると考えられる。
【0137】
〈電極表面の曲率〉
電場の非一様性の最大は、電極表面において生じ、電極形状に関係する基準は、平均曲率H=(k1+k2)/2である。
【0138】
大きな面積に対して局所的な平均曲率を消滅させる理想を満たす表面は複数存在する。例えば、H=0のカテナリー回転表面が挙げられる。
【0139】
ηやH等の純粋に幾何学的な基準は、実際の破壊挙動に対する近似を表すことしかできない。局所的な電場の非一様性は、破壊限界に対して非局所的な影響を有し、全般的な電場強度を改善し得る。
【0140】
〈一定電場の電極表面〉
図8は、垂直電場に対するA=0.6の場合のキルヒホッフ電極の縁を示す。電極スタック内の電場のオーバーシュートは、
【数56】
である。端面は平坦である。
【0141】
電極表面は、流動液体の自由表面に類似した電場の等電位線を表す。電圧フリーの電極は、流れ場線に従う。複素空間座標z=x+iyのあらゆる解析関数w(z)は、ポアソン方程式を満たす。自由流れ領域に対する境界条件は、可能な関数wの(共役)導関数vの一定の大きさに等しい
【数57】
【0142】
流速
【数58】
又はホドグラフ面に対するあらゆる可能な関数
【数59】
は、面のz写像を生じさせる
【数60】
【0143】
一般性を失わずに、電極表面に対する導関数の大きさを1に正規化することができて、高さDEを、AFと比較したAとして示すことができる(
図6を参照)。
【数61】
平面では、曲線CDは、単位円上の弧i→1に対して写像する。
【0144】
図8では、点A及びFが1/Aに対応し、Bが原点に対応し、Cがiに対応し、D及びEが1に対応する。完全な流れパターンは、単位円の第一像限内に写像される。流線のソースは1/Aであり、ドレインは1である。
【0145】
単位円及び虚軸上の二つの鏡映はこの流れパターンを、複素
【数62】
平面全体に拡張する。従って、ポテンシャル関数wは、
【数63】
位置 + A、−A、1/A、−1/Aにおける四つのソースと、±1における強度2の二つのドレインによって定義される
【数64】
【0146】
その導関数は、
【数65】
であり、
【数66】
となる。
【0147】
自由境界CDにおいて、流速は
【数67】
であり、従って、
【数68】
であり、また、
【数69】
であり、点Cにおいて、z
0=ibである。解析的な積分は式(3.54)を与える。