(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694524
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】同心多軸アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20150312BHJP
H02K 16/00 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
H02K7/116
H02K16/00
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-514850(P2013-514850)
(86)(22)【出願日】2011年5月16日
(86)【国際出願番号】JP2011002718
(87)【国際公開番号】WO2012157020
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2014年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】横山 晃啓
【審査官】
松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平6−000791(JP,A)
【文献】
国際公開第2003/050428(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
H02K 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
多段クロスローラベアリング(2)と、前記多段クロスローラベアリング(2)の後側に同軸状態に配置した前段アクチュエータ(3)と、前記前段アクチュエータ(3)の後側に同軸状態に配置した後段アクチュエータ(4)とを有し、
前記前段アクチュエータ(3)はその中心を軸線(1a)の方向に貫通して延びている前段中空部(5)を備え、
前記後段アクチュエータ(4)は、前記前段中空部(5)を貫通して前方に延びている後段回転出力軸(6)を備え、
前記多段クロスローラベアリング(2)は、外輪(11)と、この内側に同心状態に配置されている中間輪(12)と、この内側に同心状態に配置されている内輪(13)と、前記外輪(11)および前記中間輪(12)の間に形成した矩形断面をした円環状の外側軌道(14)と、この外側軌道(14)内に転動自在の状態で挿入されている複数個の外側ローラ(15)と、前記中間輪(12)および前記内輪(13)の間に形成した矩形断面をした円環状の内側軌道(16)と、この内側軌道(16)内に転動自在の状態で挿入されている複数個の内側ローラ(17)とを備え、
前記中間輪(12)は前記前段アクチュエータ(3)によって回転駆動される前段回転出力部材であり、
前記内輪(13)は前記後段回転出力軸(6)に連結固定された後段回転出力部材であり、
前記前段アクチュエータ(3)は前段モータ(31)と前段波動歯車減速機(32)を備え、
前記前段波動歯車減速機(32)は、前段減速機ハウジング(34)と、この内側に同軸状態に固定した前段剛性内歯歯車(35)と、この内側に同軸状態に配置されているシルクハット形状の前段可撓性外歯歯車(36)と、この内側に嵌め込まれている前段波動発生器(37)とを備え、当該前段波動発生器(37)には中心貫通孔(37a)が形成されており、
前記前段減速機ハウジング(34)には前記外輪(11)が固定され、前記前段可撓性外歯歯車(36)は前記中間輪(12)に固定され、前記前段波動発生器(37)は当該前段波動発生器の前記中心貫通孔(37a)を貫通して延びている前記前段モータ(31)の中空モータ軸(31a)に固定されており、
前記後段アクチュエータ(4)は、後段モータ(41)と後段波動歯車減速機(42)を備え、
前記後段波動歯車減速機(42)は、後段減速機ハウジング(44)と、この内側に同軸状態に固定した後段剛性内歯歯車(45)と、この内側に同軸状態に配置されているシルクハット形状の後段可撓性外歯歯車(46)と、この内側に嵌め込まれている後段波動発生器(47)とを備え、当該後段波動発生器(47)には中心貫通孔(47a)が形成されており、
前記後段減速機ハウジング(44)は前記前段モータ(31)のモータハウジング(43)に固定され、前記後段可撓性外歯歯車(46)は前記後段回転出力軸(6)の後端に固定され、前記後段波動発生器(47)は当該後段波動発生器の前記中心貫通孔(47a)を貫通して延びている前記後段モータ(41)のモータ軸(41a)に固定されていることを特徴とする同心多軸アクチュエータ(1)。
【請求項4】
請求項3において、
前記内側ローラ(17)のローラサイズは、前記外側ローラ(15)のローラサイズよりも小さく、
前記内側ローラ(17)のローラ中心(L2)は、前記外側ローラ(15)のローラ中心(L1)に対して、前記軸線(1a)に沿った方向にオフセットした位置にあることを特徴とする同心多軸アクチュエータ(1)。
【請求項5】
請求項4において、
前記内側ローラ(17)のローラ中心(L2)の前記外側ローラ(15)のローラ中心(L1)に対するオフセット量(Δ)は、前記内側軌道(16)の軌道幅の1/2から、当該軌道幅と前記外側軌道(14)の軌道幅との加算値の1/2までの範囲内の値であることを特徴とする同心多軸アクチュエータ(1)。
【請求項6】
請求項5において、
前記オフセット量(Δ)は、前記外側軌道(14)の軌道幅の1/2であることを特徴とする同心多軸アクチュエータ(1)。
【請求項7】
請求項4において、
前記中間輪(12)における円形内周面から円形外周面までの間の半径方向の厚さは、少なくとも、前記外輪(11)の円形内周面から円形外周面までの間の半径方向の厚さの2倍であることを特徴とする同心多軸アクチュエータ(1)。
【請求項8】
請求項4ないし7のうちのいずれかの項において、
前記外側軌道(14)および前記内側軌道(16)は、前記外輪(11)、前記中間輪(12)および前記内輪(13)において、それらの一方の端面に近い位置に形成されており、
前記中間輪(12)および前記内輪(13)における前記端面には、それぞれ、ローラ挿入用の挿入孔(12f、13f)が形成され、これらの挿入孔が栓(18、19)によって封鎖されていることを特徴とする同心多軸アクチュエータ(1)。
【請求項10】
請求項3ないし8のうちのいずれかの項において、
前記後段アクチュエータ(4)はその中心を軸線方向に貫通して延びている後段中空部(7)を備えており、前記後段回転出力軸(6)は中空軸であり、前記内輪(13)には中心貫通孔が形成されており、
前記後段中空部(7)、前記後段回転出力軸(6)の中空部および前記内輪(13)の中心貫通孔によって、軸線(1a)の方向に貫通して延びる中空部が形成されていることを特徴とする同心多軸アクチュエータ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンデムに配列されている複数のアクチュエータの出力回転を、同一の側から出力可能な同心多軸アクチュエータに関し、特に、各アクチュエータから面振れ(軸振れ)なく回転出力を取り出すことができ、十分なモーメント剛性を備えた同心多軸アクチュエータに関する。
【0002】
産業用ロボット、例えば、基板などのワークを搬送するための搬送用ロボットの回転駆動機構として同心多軸アクチュエータが用いられている。例えば、同心2軸アクチュエータでは、タンデムに2台のアクチュエータが連結されており、前段側のアクチュエータは中空型のものであり、後段側のアクチュエータの回転出力軸が前段側のアクチュエータの中空部を貫通して前段側のアクチュエータの中空出力軸から前方に突出している。同心状の回転出力軸および中空出力軸のそれぞれに連結固定されたロボットアームなどの部材を個別に駆動することができる。このような構成の同心多軸アクチュエータは特許文献1〜8に開示されている。なお、特許文献9には本発明に関連する多段クロスローラベアリングが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献3】特開平6−791号公報
【特許文献4】特開平5−329785号公報
【特許文献5】特開平5−4178号公報
【特許文献6】特許第2703291号公報
【特許文献7】米国特許第6485250号公報
【特許文献8】米国特許第5720590号公報
【特許文献9】WO2003/050428号のパンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同心多軸アクチュエータでは、後段側のアクチュエータの回転出力軸が前段側のアクチュエータの中空部を貫通してその前側に突出しているので、後段側の回転出力軸の軸長が長くなる。軸長が長いと回転出力軸の同軸度が低下し、軸振れ(面振れ)が大きくなってしまう。また、回転出力軸が長くなるとモーメント剛性も低下してしまう。軸振れを抑制し、モーメント剛性を高めるために、軸受などを追加して回転出力軸を支持すると、追加部品の設置スペースを確保するために回転出力軸の軸長を更に長くしなければならない場合もある。
【0005】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、軸振れを防止あるいは抑制でき、しかも、モーメント剛性の高い同心多軸アクチュエータを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の同心多軸アクチュエータは、
多段クロスローラベアリングと、前記多段クロスローラベアリングの後側に同軸状態に配置した前段アクチュエータと、前記前段アクチュエータの後側に同軸状態に配置した後段アクチュエータとを有し、
前記前段アクチュエータはその中心を軸線方向に貫通して延びている前段中空部を備え、
前記後段アクチュエータは、前記前段中空部を貫通して前方に延びている後段回転出力軸を備え、
前記多段クロスローラベアリングは、外輪と、この内側に同心状態に配置されている中間輪と、この内側に同心状態に配置されている内輪と、前記外輪および前記中間輪の間に形成した矩形断面をした円環状の外側軌道と、この外側軌道内に転動自在の状態で挿入されている複数個の外側ローラと、前記中間輪および前記内輪の間に形成した矩形断面をした円環状の内側軌道と、この内側軌道内に転動自在の状態で挿入されている複数個の内側ローラとを備え、
前記中間輪は前記前段アクチュエータによって回転駆動される前段回転出力部材であり、
前記内輪は前記後段回転出力軸に連結固定された後段回転出力部材であることを特徴としている。
【0007】
ここで、後段アクチュエータを中空型のものとすれば、同心多段アクチュエータの中心を貫通して延びる中空部が形成されるので、当該中空部を配線スペースなどとして利用することができる。また、後段アクチュエータの後側に更にアクチュエータを連結し、当該アクチュエータの回転出力軸を中空部を介して前方に突出させることにより、同心3軸アクチュエータを実現できる。同様にして、中空型の同心2軸アクチュエータは、同心多軸アクチュエータにおける前側2段分のアクチュエータ部分として用いることができる。
【0008】
また、前段アクチュエータ、後段アクチュエータとしては、モータと波動歯車減速機からなるアクチュエータを用いることができる。この場合には、波動歯車減速機として、大きな中空部を確保するのに適したシルクハット型と呼ばれる波動歯車減速機を用いることが望ましい。
【0009】
この場合、本発明の同心多軸アクチュエータは次のように構成することができる。すなわち、前記前段アクチュエータは前段モータと前段波動歯車減速機を備え、前記前段波動歯車減速機は、前段減速機ハウジングと、この内側に同軸状態に固定した前段剛性内歯歯車と、この内側に同軸状態に配置されているシルクハット形状の前段可撓性外歯歯車と、この内側に嵌め込まれている前段波動発生器とを備え、前記前段波動発生器には中心貫通孔が形成されており、前記前段ハウジングは前記外輪に固定され、前記前段可撓性外歯歯車は前記中間輪に固定され、前記前段波動発生器は当該前段波動発生器の前記中心貫通孔を貫通して延びている前記前段モータの中空モータ軸に固定される。
【0010】
また、前記後段アクチュエータは、後段モータと後段波動歯車減速機を備え、前記後段波動歯車減速機は、後段減速機ハウジングと、この内側に同軸状態に固定した後段剛性内歯歯車と、この内側に同軸状態に配置されているシルクハット形状の後段可撓性外歯歯車と、この内側に嵌め込まれている後段波動発生器とを備え、前記後段波動発生器には中心貫通孔が形成されており、前記後段ハウジングは前記前段モータのモータハウジングに固定され、前記後段可撓性外歯歯車は前記後段回転出力軸の後端に固定され、前記後段波動発生器は当該後段波動発生器の前記中心貫通孔を貫通して延びている前記後段モータのモータ軸に固定される。
【0011】
ここで、本発明において使用する多段クロスローラベアリングは、
前記内側ローラのローラサイズが前記外側ローラのローラサイズよりも小さく、
前記内側ローラのローラ中心が、前記外側ローラのローラ中心に対して、前記軸線に沿った方向にオフセットした位置にあることを特徴としている。
【0012】
このオフセット量は、前記内側軌道の軌道幅の1/2から、当該軌道幅と前記外側軌道の軌道幅との加算値の1/2までの範囲内の値であることが望ましい。さらには、オフセット量は、前記外側軌道の軌道幅の1/2であることが望ましい。
【0013】
また、前記中間輪における円形内周面から円形外周面までの間の半径方向の厚さは、少なくとも、前記外輪の円形内周面から円形外周面までの間の半径方向の厚さの2倍であることが望ましい。
【0014】
さらに、前記外側軌道および前記内側軌道は、前記外輪、前記中間輪および前記内輪において、それらの一方の端面に近い位置に形成されていることが望ましい。
【0015】
次に、本発明を適用した同心3軸アクチュエータでは、外輪、第1中間輪、第2中間輪および内輪が同心状に配置された3段クロスローラベアリングが用いられる。この場合、本発明の同心多軸アクチュエータでは、前記前段アクチュエータと前記後段アクチュエータの間に同軸状態で中段アクチュエータが配置される。前記中段アクチュエータはその中心を軸線方向に貫通して延びている中段中空部と、前記前段中空部を貫通して前方に延びている中空型の中段回転出力軸とを備えている。前記後段アクチュエータの前記後段回転出力軸は、前記中段中空部、前記中段回転出力軸および前記前段中空部を貫通して前方に延びている。また、前記多段クロスローラベアリングは、前記中間輪として、第1中間輪と、この内側に同心状に配置した第2中間輪を備え、前記第1中間輪と前記第2中間輪の間には矩形断面をした円環状の中間軌道が形成され、当該中間軌道には転動自在の状態で複数個の中間ローラが挿入されている。そして、前記第1中間輪が前記前段アクチュエータによって回転駆動される前段回転出力部材となり、前記第2中間輪が前記中段回転出力軸に連結固定された中段回転出力部材になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の同心多軸アクチュエータでは、多段クロスローラベアリングと、前段アクチュエータと、後段アクチュエータがタンデムに連結され、前段アクチュエータの中空部を貫通して前方に突出している後段アクチュエータの後段回転出力軸の前端部が多段クロスローラベアリングの内輪に連結固定されており、内輪が後段回転出力部材として機能する。前段アクチュエータの回転出力側は多段クロスローラベアリングの中間輪に連結されており、中間輪が前段回転出力部材として機能する。多段クロスローラベアリングによって各段の回転出力要素が支持されているので、各段の回転出力部材の面振れを抑制でき、それらのモーメント剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明を適用した同心2軸アクチュエータを示す縦断面図である。
【
図2】
図1の2段クロスローラベアリングを示す端面図および縦断面図である。
【
図3】本発明を適用した同心3軸アクチュエータを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本発明を適用した同心多軸アクチュエータの実施の形態を説明する。
【0019】
図1を参照して本発明の実施の形態に係る同心2軸アクチュエータを説明する。同心2軸アクチュエータ1は、その軸線1aに沿って、前端に、多段クロスローラベアリングとして2段クロスローラベアリング2が配置され、その後側に同軸状態に前段アクチュエータ3が連結され、その後側に同軸状態に後段アクチュエータ4が連結されている。前段アクチュエータ3はその中心を軸線1aの方向に貫通して延びている円形断面の前段中空部5を備えており、後段アクチュエータ4は、前段中空部5を同軸状態で貫通して前方に延びている中空型の後段回転出力軸6を備えている。また、本例の後段アクチュエータ4はその中心を軸線1aの方向に貫通して延びている円形断面の後段中空部7を備えている。
【0020】
同心2軸アクチュエータ1の前端に位置している2段クロスローラベアリング2は、外輪11と、この内側に同心状態に配置されている中間輪12と、この内側に同心状態に配置されている内輪13を備えている。外輪11と中間輪12の間には、矩形断面をした円環状の外側軌道14が形成されており、ここには、中心軸線が交互に直交する状態で複数個の外側ローラ15が転動自在の状態で挿入されている。同様に、中間輪12と内輪13の間には矩形断面をした円環状の内側軌道16が形成されており、ここには、中心軸線が交互に直交する状態で複数個の内側ローラ17が挿入されている。したがって、外輪11、中間輪12、外側軌道14および外側ローラ15によって、外側クロスローラベアリングが構成されており、中間輪12、内輪13、内側軌道16および内側ローラ17によって、内側クロスローラベアリングが構成されている。
【0021】
2段クロスローラベアリングの中間輪12は前段アクチュエータ3によって回転駆動される前段回転出力部材として機能し、内輪13は後段回転出力軸6によって回転駆動される後段回転出力部材として機能する。また、内輪13の中心貫通孔と、後段回転出力軸6の中空部と、後段中空部7によって、同心2軸アクチュエータ1には、軸線1aの方向に貫通して延びる中空部が形成されている。
【0022】
次に、各部分の構造を具体的に説明する。前段アクチュエータ3は、前段モータ31と、この前段モータ31の出力回転を減速して
中間輪12に伝達する前段波動歯車減速機32を備えている。前段波動歯車減速機32は、前段アクチュエータ3のモータハウジング
33の前端側に連結されている筒状の前段減速機ハウジング34を備えており、この内周側の部位には、同軸状態に前段剛性内歯歯車35が締結固定されている。この内側には同軸状態にシルクハット形状の前段可撓性外歯歯車36が配置されており、この内側には前段波動発生器37が同軸状態に嵌め込まれている。
【0023】
前段可撓性外歯歯車36は、半径方向に撓み可能な円筒状胴部36aと、この円筒状胴部36aにおける2段クロスローラベアリング2の側の端から半径方向の外方に広がっているダイヤフラム36bと、この外周縁に形成されている剛性の円環状のボス36cとを備えている。円筒状胴部36aにおける反対側の開口端の外周面部分には外歯36dが形成されており、外歯36dが形成されている円筒状胴部36aの内側に楕円形輪郭の前段波動発生器37が嵌め込まれ、これによって、楕円形に変形した外歯形成部分の長軸方向の両端部分に位置する外歯36dの部分が前段剛性内歯歯車35の内歯35dの部分に噛み合っている。
【0024】
ここで、前段減速機ハウジング34の前端面に2段クロスローラベアリング2の外輪11が締結固定されている。前段可撓性外歯歯車36の円環状のボス36cは2段クロスローラベアリング2の中間輪12の円環状端面に締結固定されている。前段波動発生器37は中心貫通孔37aを備えており、ここを貫通して、前段モータ31の中空モータ軸31aが前方に延びている。この中空モータ軸31aの外周に前段波動発生器37が締結固定されている。したがって、前段モータ31の中空モータ軸31aによって高速回転する前段波動発生器37によって、両歯車35、36の噛み合い位置が周方向に移動し、これによって、両歯車の歯数差に起因する相対回転が両歯車35、36の間に発生する。前段剛性内歯歯車35は回転しないように固定されているので、前段可撓性外歯歯車36から大幅に減速された減速回転が取り出されて、ここに連結されている中間輪12から出力される。
【0025】
次に、後段アクチュエータ4は、後段モータ41と、この後段モータ41の出力回転を減速して後段回転出力軸6を介して内輪13に伝達する後段波動歯車減速機42を備えている。後段波動歯車減速機42は、後段アクチュエータ4のモータハウジング43の前端側の部分を形成している筒状の後段減速機ハウジング44を備えており、この内周側の部位には、同軸状態に後段剛性内歯歯車45が締結固定されている。この内側には同軸状態にシルクハット形状の後段可撓性外歯歯車46が配置されており、この内側には後段波動発生器47が同軸状態に嵌め込まれている。
【0026】
後段可撓性外歯歯車46は、前段可撓性外歯歯車36と同一構成であり、半径方向に撓み可能な円筒状胴部46aと、この円筒状胴部46aにおける前段アクチュエータ3の側の端から半径方向の外方に広がっているダイヤフラム46bと、この外周縁に形成されている剛性の円環状のボス46cとを備えている。円筒状胴部46aにおける反対側の開口端の外周面部分には外歯46dが形成されており、外歯46dが形成されている円筒状胴部46aの内側に楕円形輪郭の後段波動発生器47が嵌め込まれ、これによって、楕円形に変形した外歯形成部分の長軸方向の両端部分に位置する外歯46dの部分が後段剛性内歯歯車45の内歯45dの部分に噛み合っている。
【0027】
ここで、後段減速機ハウジング44の前端面は前段アクチュエータ3の筒状ハウジング33の後端面に締結固定されている。これらの締結固定部分の内側には、中心貫通孔48aを備えた連結用円盤48が配置されている。連結用円盤48の中心側の部分には前方に突出した円環状フランジ48bが形成されており、この前端部には、前段アクチュエータ3の筒状ハウジング33の後側端板部分33aの中心貫通孔から後方に突出している後段回転出力軸6の後端部が締結固定されている。また、連結用円盤48は、ボールベアリング49を介して、筒状ハウジング33の後側端板部分33aによって回転自在の状態で支持されている。さらに、連結用円盤48の後端側の端面には、後段可撓性外歯歯車46の円環状のボス46cが締結固定されている。
【0028】
次に、後段波動発生器47は中心貫通孔47aを備えており、ここを貫通して、後段モータ41の中空モータ軸41aが前方に延びている。この中空モータ軸41aの外周に後段波動発生器47が締結固定されている。したがって、後段モータ41の中空モータ軸41aによって高速回転する後段波動発生器47によって、両歯車45、46の噛み合い位置が周方向に移動し、これによって、両歯車の歯数差に起因する相対回転が両歯車45、46の間に発生する。後段剛性内歯歯車45は回転しないように固定されているので、後段可撓性外歯歯車46から大幅に減速された減速回転が取り出されて、ここに連結されている連結用円盤48および後段回転出力軸6を介して、2段クロスローラベアリング2の内輪13から出力される。
【0029】
一方、クロスローラベアリングを同心状に多段に配置した構造の多段クロスローラベアリングにおいては、外側のクロスローラベアリングの内輪および内側のクロスローラベアリングの外輪として機能する中間輪に予圧変形が生じ、内側および外側のクロスローラベアリングの円滑な回転を確保することが困難になるという問題がある。しかしながら、本例の2段クロスローラベアリング2は以下に述べるように構成されているので、このような問題を解消することができる。
【0030】
図2を参照して説明すると、2段クロスローラベアリング2では、内側クロスローラベアリング部分のローラサイズ、すなわち、内側ローラ17のサイズが、外側クロスローラベアリング部分のローラサイズ、すなわち、外側ローラ15のサイズよりも小さい。また、内側ローラ17のローラ中心L2は、外側ローラ15のローラ中心L1に対して、軸線1aに沿った方向にオフセットした位置にある。
【0031】
このように、2段クロスローラベアリング2では、小径の内側クロスローラベアリング部分のローラサイズが小さく、大径の外側クロスローラベアリング部分のローラサイズが大きいので、2段クロスローラベアリング2を組み立てた状態において、中間輪12に対して内側および外側から作用する予圧応力の均衡化を図ることができる。また、外側クロスローラベアリングのローラ中心L1と内側クロスローラベアリングのローラ中心L2を、それらの軸線1aの方向にオフセットさせた位置としてあるので、これらが半径方向において同一平面状に位置する場合に比べて、中間輪12に生ずる予圧変形を小さくすることができる。この結果、2段クロスローラベアリング2を組み立てた状態における中間輪12の予圧変形を抑制でき、各クロスローラベアリング部分の円滑な回転を確保できる。
【0032】
ここで、内側ローラ17のローラ中心L2の外側ローラ15のローラ中心L1に対するオフセット量Δは、内側軌道16の軌道幅w(16)の1/2から、当該軌道幅w(16)と外側軌道14の軌道幅w(14)の加算値の1/2までの範囲内の値としておくことが望ましい。この範囲内の値よりもオフセット量が少ないと、中間輪の予圧変形を十分に抑制できないのでクロスローラベアリングの円滑な回転を確保できないおそれがある。また、この範囲内の値よりもオフセット量を多くしても、オフセットさせることによる中間輪の予圧変形抑制効果の更なる改善が得られず、2段クロスローラベアリングの中心軸線の方向の幅寸法が大きくなり、2段クロスローラベアリングの偏平化にとって望ましくない。
w(16)/2<Δ<{w(16)+w(14)}/2
【0033】
本例では、中間輪12の予圧変形を効果的に抑制しつつ、2段クロスローラベアリング2を偏平にするために、オフセット量Δが、外側軌道14の軌道幅w(14)の1/2になっており、ローラ中心L1に対してローラ中心L2が円環状端面12aの側に片寄った位置となっている。
【0034】
また、本例では、中間輪12の予圧変形を確実に防止するために、当該中間輪12における円形内周面12dから円形外周面12eまでの間の半径方向の厚さt(12)が、外輪11の円形内周面11dから円形外周面11eまでの間の半径方向の厚さt(11)の2倍以上に設定されている。
【0035】
さらに、本例では、外輪11、中間輪12および内輪13における内側の円環状端面がほぼ同一面上に位置しており、外側軌道14が外輪11、中間輪12における内側の端面に近い側にあり、内側軌道16も、中間輪12および内輪13における内側の端面に近い側にある。そして、中間輪12および内輪13における内側の端面にローラ挿入用の挿入孔12f、13fが形成され、これらが栓18、19によって封鎖されている。このように、外側軌道14、内側軌道16を、ベアリング中心軸線1aの方向において、ローラ挿入側の端面に近い側に寄せてある。したがって、2段クロスローラベアリング2の組立性を向上させることができる。
【0036】
(その他の実施の形態)
上記の例は本発明を同心2軸アクチュエータに適用したものであるが、本発明は、アクチュエータを3段以上にタンデムに連結して、同一側から各段の回転を出力する同心多軸アクチュエータにも同様に適用できる。例えば、
図3に示すように、同心3軸アクチュエータの場合には、3段クロスローラベアリングを前端に配置し、この後側に、前段アクチェエータ、中段アクチュエータおよび後段アクチュエータを同軸状態に連結すればよい。
【0037】
図3を参照して説明すると、同心3軸アクチュエータ51は、3段クロスローラベアリング52と、3段クロスローラベアリング52の後側に同軸状態に配置した前段アクチュエータ53と、前段アクチュエータ53の後側に同軸状態に配置した中段アクチュエータ54と、中段アクチュエータ54の後側に同軸状態に配置した後段アクチュエータ55とを有している。前段アクチュエータ53はその中心を軸線51aの方向に貫通して延びている前段中空部56を備えている。中段アクチュエータ54もその中心を軸線51aの方向に貫通して延びている中段中空部57を備えており、当該中段アクチュエータ54からは、前段中空部56を貫通して前方に中空型の中段回転出力軸58が延びている。後段アクチュエータ55は後段回転出力軸59を備えており、この後段回転出力軸59は中段中空部57および中段回転出力軸58の中空部を貫通して前方に延びている。
【0038】
3段クロスローラベアリング52は、外輪61と、この内側に同心状態に配置されている第1中間輪62と、この内側に同心状態に配置されている第2中間輪63と、この内側に同心状態に配置されている内輪64を備えている。また、外輪61と第1中間輪62の間には、矩形断面をした円環状の外側軌道65が形成され、この外側軌道65内には転動自在の状態で中心軸線が交互に直交する状態で複数個の外側ローラ66が挿入されている。第1、第2中間輪62、63の間にも矩形断面をした円環状の中間軌道67が形成され、ここには、転動自在の状態で中心軸線が交互に直交する状態で複数個の中間ローラ68が挿入されている。同様に、第2中間輪63と内輪64の間には矩形断面をした円環状の内側軌道69が形成され、ここには、転動自在の状態で中心軸線が交互に直交する状態で複数個の内側ローラ70が挿入されている。
【0039】
第1中間輪62は、前段アクチュエータ53によって回転駆動される前段回転出力部材であり、第2中間輪63は中段回転出力軸58に連結固定された中段回転出力部材であり、内輪64は後段回転出力軸59に連結固定された後段回転出力部材である。
【0040】
なお、前段アクチュエータ53は
図1の前段アクチュエータ3と同様な構成のものを用いることができ、中段アクチュエータ54は
図1の後段アクチュエータ4と同様な構成のものを用いることができる。また、後段アクチュエータ55は
図1の後段アクチュエータ4においてモータ軸41aを中実の軸とし、後段中空部7を省略した構成のものを用いることができる。
【0041】
一方、後段アクチュエータ55を
図1の後段アクチュエータ4と同様な中空型のものとし、後段回転出力軸59を中空軸とすることも可能である。このようにすれば、同心3軸アクチュエータ51の中心を貫通する中空部が形成されるので、ここを配線引き回し部分などとして利用することができる。