特許第5694552号(P5694552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694552
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】波動歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
   F16H1/32 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-538753(P2013-538753)
(86)(22)【出願日】2013年1月9日
(86)【国際出願番号】JP2013000032
(87)【国際公開番号】WO2014108932
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2013年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 優
(72)【発明者】
【氏名】本多 由季
【審査官】 広瀬 功次
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−102746(JP,U)
【文献】 特開平05−248502(JP,A)
【文献】 特開昭60−057058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性内歯歯車と、
非円形に撓み可能な円筒状胴部、前記円筒状胴部の後側開口端から半径方向の内方に延びるダイヤフラム、および前記ダイヤフラムの内周縁に形成した円盤状あるいは円環状のボスを備えたカップ形状の可撓性外歯歯車と、
前記円筒状胴部の前側開口端の側の外歯形成部分の内側に装着されており、前記円筒状胴部を非円形に撓めて、前記可撓性外歯歯車を前記剛性内歯歯車に対して部分的に噛み合わせると共に、これら両歯車の噛み合い位置を円周方向に移動させる波動発生器と、
前記可撓性外歯歯車と一体となって回転し、前記円筒状胴部の内部空間を、前記波動発生器の側の前側内部空間および前記ダイヤフラムの側の後側内部空間に仕切る仕切り機構と、
出力フランジと、
押さえ部材と、
前記押さえ部材と前記出力フランジの間に前記ボスを挟んだ状態で、これら三部材を締結固定する締結ボルトと、
を有し、
前記仕切り機構は、円盤形状の支持部材と、当該支持部材の外周面に沿って形成した円形溝に装着され、前記円筒状胴部に追従して弾性変形可能な弾性体とを備え、
前記弾性体は、前記波動発生器と前記ダイヤフラムの間の部位において、全周に亘って前記円筒状胴部の内周面との接触状態を維持し、
前記支持部材は、前記押さえ部材にネジ止めされているか、あるいは、当該押さえ部材に一体形成されていることを特徴とする波動歯車装置。
【請求項2】
前記押さえ部材は、円筒部分と、この円筒部分の開口端から半径方向の外方に広がっている円盤状部分とを備え、
前記円筒部分は、前記ボスおよび前記出力フランジのそれぞれに形成した中空穴に嵌め込まれて、前記ボスと前記出力フランジを同軸となるように位置決めしており、
前記円盤状部分と前記出力フランジの間に、前記ボスを挟んだ状態で、前記締結ボルトによって、これら三部材が締結固定されている請求項1に記載の波動歯車装置。
【請求項3】
前記支持部材は、前記押さえ部材の前記円盤部分に一体形成されている請求項2に記載の波動歯車装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記波動発生器に対峙する端面を備え、
前記端面は、前記波動発生器の中心軸線上に中心が位置する円錐状の凹面である請求項1ないし3のうちのいずれか一つの項に記載の波動歯車装置。
【請求項5】
前記支持部分は、鋼、非鉄金属、または、プラスチックから形成されている請求項1ないし4のうちのいずれか一つの項に記載の波動歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ形状あるいはシルクハット形状の可撓性外歯歯車を備えた波動歯車装置に関する。特に、可撓性外歯歯車の内部の潤滑剤充填体積が大幅に低減された波動歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
波動歯車装置としては、カップ形状の可撓性外歯歯車を備えたカップ型波動歯車装置、およびシルクハット形状の可撓性外歯歯車を備えたシルクハット型波動歯車装置が知られている。カップ形状の可撓性外歯歯車では、非円形に撓み可能な円筒状胴部の前側開口端の側の部位の外周面部分に外歯が形成され、その後側開口端には、半径方向の内方に延びるダイヤフラムが形成され、ダイヤフラムの内周縁には、円盤状あるいは円環状のボスが形成されている。ダイヤフラムおよびボスが、カップ形状の底の部分に該当する。可撓性外歯歯車は、ボスを介して、負荷側部材などの部材に締結固定される。シルクハット形状の可撓性外歯歯車では、円筒状胴部の前側開口端の外周面部分に外歯が形成され、その後側開口端には、半径方向の外方に延びるダイヤフラムが形成され、ダイヤフラムの外周縁には円環状のボスが形成されている。ダイヤフラムおよびボスが、シルクハット形状の庇の部分に該当する。
【0003】
カップ型波動歯車装置あるいはシルクハット型波動歯車装置においては、その可撓性外歯歯車の内部空間に充填した潤滑剤によって、潤滑対象の各接触部が潤滑される。特許文献1には、可撓性外歯歯車の内部に、オイルタンクを配置する方法が提案されている。オイルタンクの外周面等には微細な孔が形成されている。オイルタンクが可撓性外歯歯車と共に回転すると、タンク内部に貯留されているオイルが孔から可撓性外歯歯車の内部空間に吐出する。内部空間に吐出した潤滑剤によって各部が潤滑される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−064304号公報
【特許文献2】特開平09−250611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カップ形状あるいはシルクハット形状の可撓性外歯歯車の内側には、大きな内部空間が形成されている。すなわち、可撓性外歯歯車の円筒状胴部の内側は、波動発生器が装着されている部分を除き、大きな内部空間として残っている。運転姿勢の如何に拘わりなく、波動歯車装置の各接触部に潤滑できるように、潤滑剤(オイル、グリース)を、この大きな内部空間を埋めるように充填する必要がある。このため、潤滑剤の充填量が多くなり、また、潤滑剤が外部に漏れ出る危険性も高い。
【0006】
可撓性外歯歯車の内部空間にオイルタンクを配置する場合には、内部空間に潤滑剤を充填する場合に比べて、潤滑剤の充填量が少なくて済む。しかし、オイルタンクに充填されている潤滑剤は、可撓性外歯歯車の内部空間に吐出され、内部空間を介して各潤滑対象部分に供給される。オイルタンクが内部空間に比べて小さい場合には、オイルタンクから吐出した潤滑剤は内部空間において拡散してしまうので、各潤滑対象部分に十分な潤滑剤を供給できないことがある。
【0007】
したがって、オイルタンクを使用する場合にも、内部空間に対応した大きなオイルタンクを使用することが望ましい。これにより、オイルタンクから吐出した潤滑剤を、各潤滑対象部分に確実に供給できるが、潤滑剤の充填量が多くなってしまう。また、可撓性外歯歯車に、多量の潤滑剤が充填されたオイルタンクが連結されていると、可撓性外歯歯車の回転負荷が増加し、波動歯車装置の特性を低下させるおそれもある。
【0008】
本発明の課題は、カップ形状あるいはシルクハット形状の可撓性外歯歯車の内部空間に充填する潤滑剤が少なくて済み、運転姿勢に拘わらず、各潤滑対象部分に潤滑剤を確実に供給できる波動歯車装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の波動歯車装置は、
剛性内歯歯車と、
非円形に撓み可能な円筒状胴部、前記円筒状胴部の後側開口端から半径方向の内方あるいは外方に延びるダイヤフラム、および前記ダイヤフラムの内周縁あるいは外周縁に形成した円盤状あるいは円環状のボスを備えた可撓性外歯歯車と、
前記円筒状胴部の前側開口端の側の外歯形成部分の内側に装着されており、前記円筒状胴部を非円形に撓めて、前記可撓性外歯歯車を前記剛性内歯歯車に対して部分的に噛み合わせると共に、これら両歯車の噛み合い位置を円周方向に移動させる波動発生器と、
前記可撓性外歯歯車と一体となって回転し、前記円筒状胴部の内部空間を、前記波動発生器の側の前側内部空間および前記ダイヤフラムの側の後側内部空間に仕切る仕切り機構と、
を有していることを特徴としている。
【0010】
可撓性外歯歯車の内部空間、すなわち、その円筒状胴部の内部空間は、仕切り機構によって前側内部空間と後側内部空間に仕切られる。潤滑剤は、潤滑が必要とされる波動発生器の側の後側内部空間に充填される。必要な容量の潤滑剤を充填できるように、後側内部空間の容量が設定される。可撓性外歯歯車の内部空間を満たすように潤滑剤を充填する場合に比べて、潤滑剤の充填量を低減できる。
【0011】
後側内部空間に充填した潤滑剤は、潤滑対象部分(波動発生器の各接触部、波動発生器と可撓性外歯歯車の内周面との間の接触部等)に直接、接触した状態になる。したがって、各潤滑対象部分に対して確実に潤滑剤を供給できる。
【0012】
仕切り機構は可撓性外歯歯車と一緒に回転する。仕切り機構を設けても、可撓性外歯歯車には、回転による抵抗の増加が実質的に発生しない。よって、仕切り機構を設けたことによる波動歯車装置の効率低下を回避できる。
【0013】
本発明の波動歯車装置において、前記仕切り機構は、前記円筒状胴部に追従して弾性変形可能な弾性体を備えていることが望ましい。この場合、弾性体は、前記波動発生器と前記ダイヤフラムの間の部位において、全周に亘って前記円筒状胴部の内周面と接触状態を維持する。
【0014】
弾性体によって、前側内部空間と後側内部空間の間が確実にシールされる。よって、後側内部空間に充填した潤滑剤が前側内部空間の側に漏れ出ることがない。
【0015】
可撓性外歯歯車の円筒状胴部の各部は繰り返し半径方向に撓められる振動部分である。この円筒状胴部の内周面に常に接触している弾性体によって、円筒状胴部に発生する高次振動の発生が抑制される。また、弾性体によって可撓性外歯歯車の固有振動数をずらして共振の発生を抑制することもできる。
【0016】
前記仕切り機構を、前記弾性体と、当該弾性体を支持する支持部材とを備えた構成とすることができる。この場合には、前記支持部材の外周面に、当該外周面に沿って円形溝が形成され、前記円形溝に前記弾性体が装着される。
【0017】
前記支持部材における前記波動発生器に対峙する端面は、前側内部空間に充填される潤滑剤にせん断力の勾配をつける形状とすることが望ましい。例えば、前記波動発生器の中心軸線に直交する平坦面、あるいは前記中心軸線上の位置を中心とする円錐状の凹面とすればよい。
【0018】
前記支持部材は、可撓性外歯歯車と同期回転するので大きな力が作用しない。したがって、支持部材の材質として、鋼、アルミニウム等の非鉄金属、プラスチックを用いることができる。
【0019】
可撓性外歯歯車は、そのボスを介して、出力フランジに締結固定される場合がある。この場合、カップ形状の可撓性外歯歯車は、押さえ部材と出力フランジの間にボスを挟んだ状態で、これらの三部材が同軸状態で締結ボルトによって締結固定される。前記支持部材を、前記押さえ部材に取り付けておくことができる。または、前記支持部材を、前記押さえ部材に一体形成しておくことができる(換言すると、前記支持部材と前記押さえ部材を単一部材とすることができる)。
【0020】
シルクハット形状の可撓性外歯歯車の場合には、そのボスが、円盤状の出力フランジの外周部分に同軸に締結固定される。したがって、支持部材を、ネジ締結あるいはボルト締結によって、出力フランジの中心部分に、同軸に締結固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態1のカップ型波動歯車装置を示す縦断面図である。
図2図1の変形例を示す縦断面図である。
図3図1の変形例を示す縦断面図である。
図4図1の変形例を示す縦断面図である。
図5】本発明の実施の形態2のシルクハット型波動歯車装置を示す縦断面図である。
図6図5の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した各実施の形態の波動歯車装置を説明する。
【0023】
[実施の形態1]
図1は、本発明を適用したカップ型波動歯車装置を示す縦断面図である。カップ型波動歯車装置1は、筒状の装置ハウジング2を有している。装置ハウジング2の後側(図面における下側)には、クロスローラーベアリング3を介して、円盤状の出力フランジ4が回転自在の状態で取り付けられている。
【0024】
装置ハウジング2の外周部には取付けフランジ2aが形成されており、ここには、円周方向に所定のピッチでボルト穴2bが形成されている。装置ハウジング2の前端部の円形内周面には内歯5aが形成されている。この前端部が、剛性内歯歯車5として機能する。換言すると、装置ハウジング2に剛性内歯歯車5が一体形成されている。装置ハウジング2の内部には、カップ形状の可撓性外歯歯車6が同軸に配置されている。可撓性外歯歯車6の内側には波動発生器7が同軸に装着されている。波動発生器7は可撓性外歯歯車6を非円形、例えば楕円状に撓めて、剛性内歯歯車5に対して部分的に噛み合わせる。
【0025】
波動発生器7は、入力軸連結用の軸穴8aを備えた剛性のプラグ8と、このプラグ8の楕円状の外周面に装着したウエーブベアリング9とを備えている。ウエーブベアリング9は半径方向に撓み可能な軌道輪を備えたベアリングであり、プラグ8に装着された状態では、その外輪外周面が楕円状に撓められている。プラグ8の軸穴8aに挿入される入力軸10は、締結ボルト11等によってプラグ8に同軸に締結固定される。入力軸10を介してモーター等からの出力回転が波動発生器7に入力される。
【0026】
可撓性外歯歯車6は、非円形に撓み可能な円筒状胴部6aを備えている。この円筒状胴部6aの前側開口端6bの側の外周面部分には、外歯6cが形成されている。円筒状胴部6aにおける外歯6cが形成されている部分を外歯形成部分6dと呼ぶ。円筒状胴部6aの後側開口端6eからは、半径方向の内方にダイヤフラム6fが延びている。ダイヤフラム6fの内周縁に連続して、円環状のボス6gが形成されている。
【0027】
可撓性外歯歯車6における円筒状胴部6aの外歯形成部分6dの内側に、波動発生器7が装着されている。外歯形成部分6dは波動発生器7によって楕円形状に撓められ、楕円形状の長軸の両端に位置する外歯6cが剛性内歯歯車5の内歯5aに噛み合っている。
【0028】
可撓性外歯歯車6のボス6gは、円環状の押さえ部材12と出力フランジ4の間に挟まれた状態で、複数本の締結ボルト13によって、出力フランジ4に対して同軸に締結固定されている。押さえ部材12には、円筒部分12aと、この円筒部分12aの前側開口端から半径方向の外方に広がっている円盤状部分12bとが形成されている。円筒部分12aは、ボス6gの前側から、その中空穴および出力フランジ4の中空穴に嵌め込まれ、ボス6gと出力フランジ4を同軸となるように位置決めしている。円盤状部分12bと出力フランジ4の間にボス6gを挟んだ状態で、締結ボルト13によって、これらの三部材が締結固定されている。
【0029】
ここで、カップ形状の可撓性外歯歯車6の内側には、仕切り機構15が組み込まれている。可撓性外歯歯車6の円筒状胴部6aの内部空間14は、仕切り機構15によって、波動発生器7の側の前側内部空間14aとダイヤフラム6fの側の後側内部空間14bに仕切られている。仕切り機構15は、支持部材16および弾性体17を備えている。支持部材16は、全体として円盤形状をしており、押さえ部材12に対して、同軸にネジ止めされている。弾性体17は円形断面をした弾性リングであり、支持部材16の円形外周面16aに形成した矩形断面の円形溝16bに装着されている。
【0030】
更に詳しく説明すると、支持部材16の後側端面16cには、同軸状態で後方に突出した小径軸部16dが形成されている。小径軸部16dは、押さえ部材12の円筒部分12aの中空部に嵌め込まれている。これにより、支持部材16は、押さえ部材12に対して同軸となるように、位置決めされている。支持部材16の前側端面16eは、波動発生器7に対峙する側の端面であり、装置中心軸線1aに直交する平坦な円形端面である。この前側端面16eの中心部には締結ボルト11の頭部に干渉しないように、円形凹部16fが形成されている。
【0031】
弾性体17は、可撓性外歯歯車6の円筒状胴部6aの内周面6hに対して、ダイヤフラム6fと波動発生器7の間の部位において接触している。すなわち、円筒状胴部6aの内周面6hに対して、外歯形成部分6dと後側開口端6eの間の部位において接触している。弾性体17は、その円形断面が所定量だけ直径方向に押し潰された状態で、内周面6hの全周に亘って接触している。したがって、円筒状胴部6aが波動発生器7によって楕円状に撓められた状態においても、弾性体17における円周方向の各部は、円筒状胴部6aの撓みに追従して弾性変形して、内周面6hに対する接触状態が維持される。
【0032】
支持部材16は、可撓性外歯歯車6と一体回転するので、動作時に大きな応力は作用しない。したがって、支持部材16の材質は、鋼、アルミニウム等の非鉄金属、プラスチックのいずれでもよい。弾性体17はゴム素材から形成でき、円形断面の弾性リング、リップ形状の弾性リングなどを用いることができる。弾性体17は円筒状胴部6aに追従して半径方向に弾性変形して内周面6hに対して全周に亘って接触した状態が形成できればよいので、全体として半径方向に撓み可能なリング状の部材でもよい。
【0033】
この構成のカップ型波動歯車装置1では、入力軸10を介して波動発生器7にモータ(図示せず)等から回転が入力される。波動発生器7が回転すると、剛性内歯歯車5と可撓性外歯歯車6の噛み合い位置が円周方向に移動する。外歯6cの歯数は内歯5aよりも2n枚(n:正の整数)少ない。通常は2枚少ない。よって、両歯車5、6の間に相対回転が発生する。剛性内歯歯車5が回転しないように固定されている場合には、可撓性外歯歯車6が、波動発生器7に入力された入力回転数に比べて大幅に減速された回転数で回転し、この減速回転が、出力フランジ4から出力される。
【0034】
可撓性外歯歯車6の内部空間14は、仕切り機構15によって前側内部空間14aと後側内部空間14bに仕切られている。前側内部空間14aには潤滑剤(オイル、グリース)が充填されている。この潤滑剤によって、波動発生器7の各接触部、波動発生器7と可撓性外歯歯車6の間の接触部等への潤滑が行われる。
【0035】
可撓性外歯歯車6の円筒状胴部6aの各部は、波動発生器7の回転に伴って、繰り返し半径方向の内外に撓められる。仕切り機構15の弾性体17は、その円周方向の各部が押し潰された状態で円筒状胴部6aの内周面6hに接触している。したがって、円筒状胴部6aの円周方向の各部が半径方向の内外に撓められると、それに追従して、弾性体17の円周方向の各部が直径方向に弾性変形する。よって、弾性体17は、円筒状胴部6aの内周面6hに対して、全周に亘って、接触した状態が維持される。すなわち、前側内部空間14aと後側内部空間14bの間がシール状態に保持され、潤滑剤が後側内部空間14bに漏れ出ることが防止される。
【0036】
また、支持部材16の前側端面16eは平坦面であり、波動発生器7のプラグ8における平坦な後端面8bに対して後側から所定の間隔で対峙している。これらの部材16、8は異なる速度で回転し、これらの間に充填されている潤滑剤によって前側内部空間14aの外周側の各接触部に対する潤滑が行われる。すなわち、前側端面16eは、オイル潤滑においては、リフトコーンとして機能し、グリース潤滑においては、潤滑対象の接触部近傍に位置するグリース保持壁として機能する。
【0037】
(仕切り機構の変形例1)
図2は、上記のカップ型波動歯車装置1の仕切り機構15の変形例1を示す縦断面図である。図2に示す仕切り機構15Aでは、その支持部材16Aが押さえ部材12に一体形成されている。換言すると、押さえ部材12と支持部材16Aは、単一の部品から形成されており、押さえ部材12には支持部材16Aとして機能する部分(支持部分)が形成されている。この場合には、支持部材16Aを押さえ部材12に固定するためのネジ等の締結具が不要である。
【0038】
(仕切り機構の変形例2)
図3は、上記のカップ型波動歯車装置の仕切り機構15の変形例2を示す縦断面図である。図3に示す仕切り機構15Bでは、その支持部材16Bの前側端面16eは、装置中心軸線1aを中心とする凹状の円錐面によって規定されている。これ以外の仕切り機構15Bの構成は、前述の仕切り機構15と同一である。
【0039】
(仕切り機構の変形例3)
図4は、上記のカップ型波動歯車装置の仕切り機構15の変形例3を示す縦断面図である。図4に示す仕切り機構15Cでは、その支持部材16Cが押さえ部材12に一体形成されている。また、支持部材16Cの前側端面16eは、装置中心軸線1aを中心とする凹状の円錐面によって規定されている。これ以外の仕切り機構15Cの構成は、前述の仕切り機構15Bと同一である。
【0040】
[実施の形態2]
図5は、本発明を適用したシルクハット型波動歯車装置を示す縦断面図である。シルクハット型波動歯車装置100は、前方(図においては上方)に開口した装置ハウジング102を備えている。装置ハウジング102は、円形内周面に内歯105aが形成されている円環状の剛性内歯歯車105と、クロスローラーベアリング103とによって構成されている。剛性内歯歯車105は、クロスローラーベアリング103の内輪103aの前側端面に、同軸に締結固定されている。クロスローラーベアリング103の外輪103bの後側端面には、円盤状の出力フランジ104が同軸に締結固定されている。
【0041】
装置ハウジング102の内部には、シルクハット形状の可撓性外歯歯車106が同軸に配置されている。可撓性外歯歯車106の内側には波動発生器107が同軸に装着されている。波動発生器107は可撓性外歯歯車106を例えば楕円状に撓めて、剛性内歯歯車105に対して部分的に噛み合わせている。
【0042】
波動発生器107は、入力軸連結用の軸穴108aを備えた剛性のプラグ108と、このプラグ108の楕円状の外周面に装着したウエーブベアリング109とを備えている。ウエーブベアリング109は半径方向に撓み可能な軌道輪を備えたベアリングであり、プラグ108に装着された状態では、その外輪外周面が楕円状に撓められている。プラグ108の軸穴108aに挿入される入力軸110は、締結ボルト111等によってプラグ108に同軸に締結固定される。入力軸110を介してモーター等からの出力回転が波動発生器107に入力される。
【0043】
可撓性外歯歯車106は、非円形に撓み可能な円筒状胴部106aを備えている。この円筒状胴部106aの前側開口端106bの側の外周面部分には、外歯106cが形成されている。円筒状胴部106aにおける外歯106cが形成されている部分を外歯形成部分106dと呼ぶ。円筒状胴部106aの後側開口端106eからは、半径方向の外方にダイヤフラム106fが延びている。ダイヤフラム106fの外周縁に連続して、円環状のボス106gが形成されている。
【0044】
可撓性外歯歯車106における円筒状胴部106aの外歯形成部分106dの内側に、波動発生器107が装着されている。外歯形成部分106dは波動発生器107によって楕円形状に撓められ、楕円形状の長軸の両端に位置する外歯106cが剛性内歯歯車105の内歯105aに噛み合っている。
【0045】
可撓性外歯歯車106のボス106gは、出力フランジ104の前側端面104aの外周側部分とクロスローラーベアリング103の外輪103bの後側端面103cとの間に挟まれている。この状態で、複数本の締結ボルト113によって、三部材が同軸に締結固定されている。
【0046】
シルクハット形状の可撓性外歯歯車106の内側には、仕切り機構115が組み込まれている。可撓性外歯歯車106の円筒状胴部106aの内部空間114は、仕切り機構115によって、波動発生器107の側の前側内部空間114aとダイヤフラム106fの側の後側内部空間114bに仕切られている。仕切り機構115は、支持部材116および弾性体117を備えている。支持部材116は、全体として円盤形状をしており、出力フランジ104に対して、同軸に締結固定されている。弾性体117は円形断面をした弾性リングであり、支持部材116の円形外周面116aに形成した矩形断面の円形溝116bに装着されている。
【0047】
更に詳しく説明すると、支持部材116の後側端面116cには、その中心部に、同軸状態で後方に突出した小径軸部116dが形成されている。小径軸部116dの外周面には雄ネジ116gが切られている。出力フランジ104の中心部には、円形断面の凹部104bが形成されており、この円形内周面には、雄ネジ116gをねじ込み可能な雌ねじ104cが切られている。支持部材116を出力フランジ104にねじ込むことにより、支持部材116は出力フランジ104に締結固定されている。支持部材116における前側端面116eは、波動発生器107に対峙する側の端面であり、装置中心軸線101aに直交する平坦な円形端面である。この前側端面116eの中心部には締結ボルト111の頭部に干渉しないように、円形凹部116fが形成されている。
【0048】
弾性体117は、可撓性外歯歯車106の円筒状胴部106aの内周面106hに対して、ダイヤフラム106fと波動発生器107の間の部位において接触している。すなわち、円筒状胴部106aの内周面106hに対して、外歯形成部分106dと後側開口端106eの間の部位において接触している。弾性体117は、その円形断面が所定量だけ直径方向に押し潰された状態で、内周面106hの全周に亘って接触している。したがって、円筒状胴部106aが波動発生器107によって楕円状に撓められた状態においても、弾性体117における円周方向の各部は、円筒状胴部106aの撓みに追従して弾性変形して、内周面106hに対する接触状態が維持される。
【0049】
支持部材116は、可撓性外歯歯車106と一体回転するので、動作時に大きな応力は作用しない。したがって、支持部材116の材質は、鋼、アルミニウム等の非鉄金属、プラスチックのいずれでもよい。弾性体117はゴム素材から形成でき、円形断面の弾性リング、リップ形状の弾性リングなどを用いることができる。弾性体117は円筒状胴部106aに追従して半径方向に弾性変形して内周面106hに対して全周に亘って接触した状態が形成できればよいので、全体として半径方向に撓み可能なリング状の部材でもよい。
【0050】
この構成のシルクハット型波動歯車装置100では、入力軸110を介して波動発生器107にモータ(図示せず)等から回転が入力される。波動発生器107が回転すると、剛性内歯歯車105と可撓性外歯歯車106の噛み合い位置が円周方向に移動する。外歯106cの歯数は内歯105aよりも2n枚(n:正の整数)少ない。通常は2枚少ない。よって、両歯車105、106の間に相対回転が発生する。剛性内歯歯車105が回転しないように固定されている場合には、可撓性外歯歯車106が、波動発生器107に入力された入力回転数に比べて大幅に減速された回転数で回転し、この減速回転が、出力フランジ104から出力される。
【0051】
可撓性外歯歯車106の内部空間114は、仕切り機構115によって前側内部空間114aと後側内部空間114bに仕切られている。前側内部空間114aには潤滑剤(オイル、グリース)が充填されている。この潤滑剤によって、波動発生器107の各接触部、波動発生器107と可撓性外歯歯車106の間の接触部等への潤滑が行われる。
【0052】
可撓性外歯歯車106の円筒状胴部106aの各部は、波動発生器107の回転に伴って、繰り返し半径方向の内外に撓められる。仕切り機構115の弾性体117は、その円周方向の各部が押し潰された状態で円筒状胴部106aの内周面106hに接触している。したがって、円筒状胴部106aの円周方向の各部が半径方向の内外に撓められると、それに追従して、弾性体117の円周方向の各部が直径方向に弾性変形する。よって、弾性体117は、円筒状胴部106aの内周面106hに対して、全周に亘って、接触した状態が維持される。すなわち、前側内部空間114aと後側内部空間114bの間がシール状態に保持され、潤滑剤が後側内部空間114bに漏れ出ることが防止される。
【0053】
また、支持部材116の前側端面116eは平坦面であり、波動発生器107のプラグ108における平坦な後端面108bに対して後側から所定の間隔で対峙している。これらの部材116、108は異なる速度で回転し、これらの間に充填されている潤滑剤によって前側内部空間114aの外周側の各接触部に対する潤滑が行われる。すなわち、前側端面116eは、オイル潤滑においては、リフトコーンとして機能し、グリース潤滑においては、潤滑対象の接触部近傍に位置するグリース保持壁として機能する。
【0054】
(仕切り機構の変形例)
図6は、上記のシルクハット型波動歯車装置100の仕切り機構115の変形例を示す縦断面図である。図6に示す仕切り機構115Aでは、その支持部材116Aが、同心円上に配置された複数本の締結ボルト119によって、出力フランジ104Aに同軸に締結固定されている。したがって、小径軸部、雄ネジ、円形凹部、雌ネジは形成されていない。この代わりに、支持部材116Aおよび出力フランジ104Aに、同心円上に位置するように複数のボルト穴が形成されている。これ以外の仕切り機構115Aの構成は、前述の仕切り機構115と同一である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6