【文献】
Henry J. Castejon, et al.,Effect of fluorine substitution on the carbon acidity of methane, methyl isocyanide, acetonitrile, acetaldehyde, and nitromethane,The Journal of Organic Chemistry,1998年,vol.63 no.12,p.3937-3942
【文献】
Gabriele Cazzoli, et al.,Microwave, high-resolution infrared, and quantum chemical investigations of CHBrF2: Ground and v4=1 states,Journal of Physical Chemistry A,2010年12月21日,vol.115 no.4,p.453-459
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ジフルオロ酢酸のエステルが、酸性媒体中での及びアルコールの存在下での、得られた前記ジフルオロアセトニトリルの加水分解によって製造されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の方法に関与する出発基質は、次式:
HXCF
2 (I)
(前記式中、Xは塩素、臭素又はヨウ素原子を表す)
に相当する。
【0007】
式(I)中、Xは好ましくは塩素又は臭素原子を表す。
【0008】
さらにより好ましくは、式(I)の相当する化合物は、大規模に製造されているので選り抜きの原材料である、クロロジフルオロメタン(又はR22)であるから、Xは塩素原子を表す。
【0009】
この化合物は、ガス形態で周囲温度及び大気圧で入手可能である。
【0010】
表現「シアニドアニオン源」は、CN
-アニオンを提供する塩を意味すると理解される。
【0011】
本発明の方法に好適な塩の例として、アルカリ若しくはアルカリ土類金属の塩が挙げられる。
【0012】
表現「アルカリ金属」及び「アルカリ土類金属」は、元素の周期表の族(IA)及び(IIA)からの元素を意味する。
【0013】
この本文では、Bulletin de la Societe Chimique de France,no.1(1966年)に公表された元素の周期表に言及される。
【0014】
明らかな経済的理由で、シアン化ナトリウム及びシアン化カリウムがより具体的には選ばれる。しかし、本発明は、いかなる他のシアニドアニオン源も排除しない。
【0015】
CN
-として表されるシアニド源の濃度は、水の重量の5%〜40%を表してもよい。
【0016】
導入されるシアニド源の量は、CN
-として表されるシアニド源のモル数とハロジフルオロメタンのモル数との比が0.8〜2.0、好ましくは0.9〜1.0で変わるように好ましくは選ばれる。
【0017】
本発明の方法に従って、シアン化反応は、塩基の存在下で実施される。
【0018】
塩基の特性は、それが、少なくとも10以上、好ましくは10〜14のpK
aを有することである。
【0019】
pK
aは、水が溶媒として使用されるときの、酸/塩基ペアのイオン解離定数であると定義される。
【0020】
本発明によって定義されるようなpK
aを有する塩基の選択のために、とりわけ、Handbook of Chemistry and Physics,66th edition,p.D−161及びD−162に言及されてもよい。
【0021】
本発明の方法によれば、シアン化反応は、塩基性試剤、より具体的にはその中にナトリウム、カリウム若しくはリチウム水酸化物及び重晶石;ナトリウム若しくはカリウムメチラート、エチラート、イソプロロピラート及びt−ブチラートなどのアルカリ金属アルコラート;ナトリウム若しくはカリウム炭酸塩若しくは重炭酸塩、及び一般にアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属塩基と弱酸との塩が挙げられる、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属塩基を、溶液中に含有する水性媒体中で実施される。
【0022】
経済的理由で、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムが使用される。
【0023】
有利には、一般に5重量%〜50重量%の濃度を有するアルカリ金属水酸化物の水溶液が使用される。出発溶液の濃度は、決定的に重要であるわけではない。しかし、30重量%〜50重量%で変わる濃度を有するより濃厚な溶液を使用することが好ましい。
【0024】
固体形態の塩基及び水を別々に加えることもまた可能である。
【0025】
好ましくは使用される塩基の量は、OH
-として表される塩基のモル数とクロロジフルオロメタンのモル数との比が好ましくは0.05〜0.5、より好ましくは0.05〜0.2で変わるようなものである。
【0026】
本発明の方法に従って、反応は、反応溶媒が排除されるわけではないが、水性媒体中で好ましくは実施される。
【0027】
水は、塩基性溶液によって一般に提供される。
【0028】
シアン化反応の温度は、反応が実施されることを可能にするのに十分であるように選ばれる。
【0029】
反応の温度は、好ましくは20℃〜150℃、より好ましくは50℃〜120℃であるように選ばれる。
【0030】
それは、反応剤及び生成物の自生圧力下で一般に行われ;圧力は一般に10〜150バール(絶対)にある。
【0031】
窒素又は希ガス、好ましくはアルゴンであってもよい不活性ガスの雰囲気下に好ましくは反応を実施することが任意選択的に可能であり:特にそのコストの減少を考慮して、窒素が好ましい。
【0032】
実用的な観点から、本発明による方法は、実施するのが簡単である。
【0033】
シアニド源、塩基性溶液(又は塩基+水)が混合され、次にハロジフルオロメタンがこの反応媒体へ導入される。
【0034】
全体混合物は次に、前述の範囲内から選ばれる反応温度にされ、その温度は、例えば2〜8時間維持される。
【0035】
反応の終わりに、ジフルオロアセトニトリルを含む2相媒体が得られる。
【0036】
より具体的には、周囲温度(15℃〜25℃)で、水相は、水溶液中に塩基及び任意選択的に過剰のシアニド源を含み、有機相は、ジフルオロアセトニトリル及び任意選択的に過剰のハロジフルオロメタンを含む。
【0037】
ジフルオロアセトニトリルは、例えば、デカンテーションにより水相と有機相とを分離すること、そして有機相の従来型蒸留、こうしてジフルオロアセトニトリルを得ることを可能にすることによって回収される。
【0038】
ジフルオロアセトニトリルの別の分離方法は、先ずデカンテーションを実施することなく反応から生じる媒体の蒸留を実施することにある。
【0039】
蒸留工程は、
− 蒸留ボトムとして、水、塩基及び任意選択的に過剰のシアニドアニオン源と
− 蒸留オーバーヘッドとして、第1に過剰のハロジフルオロメタン、次に予定のジフルオロアセトニトリルを含む気相と
を得るために設計される。
【0040】
蒸留は、塔のトップで、ジフルオロアセトニトリルの沸点を得るのに十分であるように選ばれるボイラーの温度で実施される。
【0041】
蒸留は好ましくは大気圧下で実施される。しかし、大気圧よりも僅かに低い又は高い圧力もまた可能である。
【0042】
蒸留は、従来型蒸留塔を用いて行われる。
【0043】
塔のトップでの温度が、大気圧で20℃〜22℃であるとき、ジフルオロアセトニトリルから構成される気相が塔のトップで回収される。
【0044】
この気相は冷却され、例えば、−10℃〜15℃、好ましくは0℃〜10℃の温度に冷却することによって液体形態に変換される。
【0045】
この操作は、従来型装置、例えば、選ばれる冷却温度よりも低い、一般に5℃〜10℃低い温度に維持される水を又は流体を供給される管状の熱交換器である、凝縮器を通過させることによって実施される。
【0046】
凝縮した流れはジフルオロアセトニトリルからなり、この流れのある画分は、塔の還流を確実にするために、蒸留塔のトップで側面にそって、導入されてもよい。
【0047】
本発明の別の主題は、前もって製造されたジフルオロアセトニトリルを製造中間体として使用することにある。
【0048】
従って、本発明はまた、前に記載された方法に従ってハロジフルオロメタンからジフルオロアセトニトリルを製造する第1工程、引き続く加水分解操作を含むことを特徴とする、ジフルオロ酢酸、及びその塩、エステル又はアミドの製造方法に関する。
【0049】
本発明の方法はそれ故、次式:
HCF
2−COOR
1 (II)
(前記式中:
− R
1は、
・水素原子、
・アルキル又はシクロアルキル基であってもよい、置換若しくは非置換炭化水素ベースの基、
・金属カチオン、
・アミノ基
を表す)
に相当する誘導体を製造することを可能にする。
【0050】
本発明の第1変形によれば、R
1が水素原子を表す式(II)に相当する、ジフルオロ酢酸が製造される。
【0051】
ジフルオロ酢酸の製造方法は、酸性媒体中での、得られたジフルオロアセトニトリルの加水分解を含む。
【0052】
この加水分解工程に使用される水の量は一般に、水のモル数とジフルオロアセトニトリルのモル数との比が2〜5であるようなものである。
【0053】
酸性化は、2以下のpK
aを有する強酸を使用して実施される。
【0054】
pK
aは、水が溶媒として使用されるときの、酸/塩基ペアのイオン解離定数であると定義される。
【0055】
有利には酸化性を持たない強酸が選ばれる。従って、硝酸は好ましくない。硫酸、塩酸又はリン酸がより好ましくは使用される。
【0057】
強酸の濃厚溶液が有利には使用される。
【0058】
より具体的には、商業形態の酸が使用される。
【0059】
95重量%又は98重量%硫酸の、37重量%塩酸の、及び95〜100重量%リン酸の溶液が特に挙げられてもよい。
【0060】
使用される強酸の量は、H
+イオンとして表される酸のモル数とジフルオロアセトニトリルのモル数との比が1〜5、好ましくは1〜2で変わるようなものである。
【0061】
加水分解操作は、100℃〜150℃の温度で有利には実施される。
【0062】
それは、反応剤及び生成物の自生圧力下で一般に行われる。
【0063】
不活性雰囲気、好ましくは窒素雰囲気を確立することもまた可能である。
【0064】
本発明の実用的な一実施形態によれば、ジフルオロアセトニトリルと酸溶液とが混合される。
【0065】
反応混合物は、選ばれた加水分解温度にされ、この温度は、例えば、8〜12時間で変わる継続時間の間維持される。
【0066】
加水分解の終わりに、温度は、例えば20℃〜80℃に下げられる。
【0067】
ジフルオロ酢酸、水及びそのアニオンが使用された酸のそれに相当するアンモニウム塩を含む媒体が得られる。
【0068】
加水分解は硫酸の水溶液を使用して好ましくは実施されるので、形成される硫酸アンモニウムが従って水相中に見いだされる。
【0069】
ジフルオロ酢酸は、任意の常法によって、例えば蒸留によって回収される。
【0070】
本発明の第2変形によれば、R
1が金属カチオンを表す式(II)に相当する、ジフルオロ酢酸塩が製造される。
【0071】
より具体的には、好ましくは、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属カチオンが挙げられる。
【0072】
カチオンのより具体的な例として、アルカリ金属カチオン、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウム又はセシウムカチオン;及びアルカリ土類金属カチオン、好ましくはマグネシウム、カルシウム又はバリウムカチオンが挙げられる。
【0073】
前述のリストの中で、好ましい金属カチオンは、ナトリウム若しくはカリウムカチオンである。
【0074】
ジフルオロ酢酸塩の製造方法は、塩基性媒体中での、得られたジフルオロアセトニトリルの加水分解を含む。
【0075】
この加水分解工程に使用される水の量は一般に、水のモル数とジフルオロアセトニトリルのモル数との比が2〜5であるようなものである。
【0076】
カチオンR
1を提供する塩基が選ばれ、より具体的にはアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。
【0077】
好ましくは、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムが選ばれる。
【0078】
30重量%〜50重量%で変わる濃度を有する水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム溶液がとりわけ使用される。
【0079】
好ましくは使用される塩基の量は、OH
-イオンとして表される塩基のモル数とジフルオロアセトニトリルの数との比が1〜10、好ましくは2〜5で変わるようなものである。
【0080】
加水分解操作は、100℃〜130℃の温度で、例えば、4〜12時間、好ましくは6〜10時間で変わる継続時間の間有利には実施される。
【0081】
それは大気圧で、しかし自生圧力下で一般に行われる。
【0082】
不活性雰囲気、好ましくは窒素雰囲気を確立することもまた可能である。
【0083】
本発明の実用的な一実施形態によれば、ジフルオロアセトニトリルと塩基性溶液とが混合される。
【0084】
反応混合物は選ばれた加水分解温度にされ、この温度は、例えば、8〜12時間で変わる継続時間の間維持される。
【0085】
加水分解の終わりに、圧力は大気圧に下げられる。
【0086】
得られた媒体は、溶液中にジフルオロ酢酸塩及びアンモニアを含み、後者が空気若しくは窒素同伴によって特に除外されることが可能である。
【0087】
国際公開第2010/03986号パンフレットに記載されている分離技法によって特に反応混合物からジフルオロ酢酸塩を回収することが可能である。
【0088】
ジフルオロ酢酸の塩の別の製造方法は、シアン化反応及び加水分解反応を両方とも実施するために必要な量の塩基の存在下での、ハロジフルオロメタンの及びシアニドアニオン源の反応を含む。
【0089】
使用される反応剤は、ジフルオロアセトニトリル製造工程において前に記載された通りである。
【0090】
導入されるシアニド源の量は、CN
-として表されるシアニド源のモル数とハロジフルオロメタンとのモル数との比が0.8〜2.0、好ましくは0.9〜1.0で変わるように好ましくは選ばれる。
【0091】
好ましくは使用される塩基の量は、OH
-として表される塩基のモル数とクロロジフルオロメタンのモル数との比が2〜5で変わり、より好ましくは2の近くにあるようなものである。
【0092】
反応は、水性媒体中で有利には実施され、水は塩基性溶液によって一般に提供される。
【0093】
反応の温度は、100℃〜120℃であるように好ましくは選ばれる。
【0094】
それは、反応剤及び生成物の自生圧力下で一般に行われ;圧力は一般に、10〜150バール(絶対)にある。
【0095】
反応を不活性ガス雰囲気下に実施することが任意選択的に可能である。
【0096】
実用的な観点から、本発明による方法は、実施するのが簡単である。
【0097】
オートクレーブは、シアニド源及び塩基性溶液(又は塩基+水)を装入される。オートクレーブは閉じられ、ハロジフルオロメタンが導入される。
【0098】
全体混合物は次に、120℃〜130℃であるように選ばれる、反応温度にされ、その温度は、例えば10〜20時間維持される。
【0099】
反応の終わりに、圧力は大気圧に、温度は周囲温度に戻される。
【0100】
ジフルオロ酢酸塩は、水相中に回収される。
【0101】
本発明の第3変形によれば、R
1が、アルキル、シクロアルキル又はアラルキル基であってもよい置換若しくは非置換炭化水素ベースの基を表す式(II)に相当する、ジフルオロ酢酸エステルが製造される。
【0102】
本発明の脈絡の中で、用語「アルキル」は、1〜15個の炭素原子、好ましくは1若しくは2〜10個の炭素原子を有する線状若しくは分岐の炭化水素ベースの鎖を意味すると理解される。
【0103】
好ましいアルキル基の例は、とりわけメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル及びt−ブチルである。
【0104】
用語「シクロアルキル」は、3〜8個の炭素原子を含む単環式炭化水素ベースの基、好ましくはシクロペンチル又はシクロヘキシル基を意味すると理解される。
【0105】
用語「アラルキル」は、C
7〜C
12単環式芳香環、好ましくはベンジル環、1又は2個の炭素原子を含む脂肪族鎖を有する線状若しくは分岐の炭化水素ベースの基を意味すると理解される。
【0106】
これらの基において、1個以上の水素原子が置換基(例えば、ハロゲン)で置換されてもよいことが指摘されるべきである。
【0107】
具体的には、炭化水素ベースの鎖は、1個以上のフッ素原子を好ましくは有してもよい。
【0108】
従って、R
1は、1〜10個の炭素原子及び1〜21個のフッ素原子、好ましくは3〜21個のフッ素原子を含むフルオロアルキル若しくはパーフルオロアルキル基を表してもよい。
【0109】
ジフルオロ酢酸エステルの製造方法は、酸性媒体中で及びアルコールR
1−OHの存在下での、得られたジフルオロアセトニトリルの加水分解を含む。
【0110】
この加水分解工程に使用される水の量は一般に、水のモル数とジフルオロアセトニトリルのモル数との比が1〜5であるようなものである。
【0111】
使用されるアルコールの量は、アルコールのモル数とジフルオロアセトニトリルのモル数との比が1〜3、好ましくは1〜2で変わるように好ましくは選ばれる。
【0112】
酸性化は、2以下のpK
aを有する強酸を使用して実施される。
【0113】
pK
aは、水が溶媒として使用されるときの、酸/塩基ペアのイオン解離定数であると定義される。
【0114】
有利には酸化性を持たない強酸が選ばれる。従って、硝酸は好ましくない。硫酸、塩酸又はリン酸がより好ましくは使用される。
【0116】
強酸の濃厚溶液が有利には使用される。
【0117】
より具体的には、商業形態の酸が使用される。
【0118】
95重量%又は98重量%硫酸の、37重量%塩酸の、及び95〜100重量%リン酸の溶液が特に挙げられてもよい。
【0119】
使用される強酸の量は、H
+イオンとして表される酸のモル数とジフルオロアセトニトリルの数との比が1〜5、好ましくは1〜2で変わるようなものである。
【0120】
加水分解操作は、100℃〜150℃の温度で有利には実施される。
【0121】
それは大気圧で、しかし反応剤の自生圧力下で一般に行われる。
【0122】
不活性雰囲気、好ましくは窒素雰囲気を確立することもまた可能である。
【0123】
本発明の実用的な一実施形態によれば、ジフルオロアセトニトリルと、酸溶液とアルコールとが混合される。
【0124】
反応混合物は、選ばれた加水分解温度にされ、この温度は、例えば、8〜12時間で変わる継続時間の間維持される。
【0125】
加水分解の終わりに、温度は、例えば20℃〜80℃に下げられる。
【0126】
相当するイミノエステルが得られ、それは加水分解操作にかけられる。
【0127】
この加水分解工程に使用される水の量は一般に、水のモル数とジフルオロアセトニトリルのモル数との比が1〜5、好ましくは1〜3であるようなものである。
【0128】
加水分解は、50℃〜100℃の温度で有利には実施される。
【0129】
ジフルオロ酢酸エステルからなる有機相と水及びそのアニオンが使用された酸のそれに相当する、アンモニウム塩を含む水相とを含む2相媒体が得られる。
【0130】
加水分解は塩酸の水溶液を使用して好ましくは実施されるので、形成される塩化アンモニウムが従って水相中に見いだされる。
【0131】
水相と有機相とは、従来の液/液分離技法、例えばデカンテーション又は遠心分離により分離される。
【0132】
有機相を構成するジフルオロ酢酸エステルが回収される。
【0133】
本発明の第4変形によれば、R
1がアミノ基を表す式(II)に相当する、ジフルオロアセトアミドが製造される。
【0134】
ジフルオロアセトアミドの製造方法は、酸性媒体中での、得られたジフルオロアセトニトリルの制御加水分解を含む。
【0135】
この加水分解工程に使用される水の量は一般に、水のモル数とジフルオロアセトニトリルのモル数との比が1〜5であるようなものである。
【0136】
酸性化は、2以下のpK
aを有する強酸を使用して実施される。
【0137】
pK
aは、水が溶媒として使用されるときの、酸/塩基ペアのイオン解離定数であると定義される。
【0138】
有利には酸化性を持たない強酸が選ばれる。従って、硝酸は好ましくない。硫酸、塩酸又はリン酸がより好ましくは使用される。
【0140】
強酸の濃厚溶液が有利には使用される。
【0141】
より具体的には、商業形態の酸が使用される。
【0142】
95重量%又は98重量%硫酸の、37重量%塩酸の、及び95〜100重量%リン酸の溶液が特に挙げられてもよい。
【0143】
使用される強酸の量は、H
+イオンとして表される酸のモル数とジフルオロアセトニトリルの数との比が0.05〜1、好ましくは0.05〜0.2で変わるようなものである。
【0144】
加水分解操作は、100℃〜150℃の温度で有利には実施される。
【0145】
それは、反応剤の自生圧力下で一般に行われる。
【0146】
不活性雰囲気、好ましくは窒素雰囲気を確立することもまた可能である。
【0147】
本発明の実用的な一実施形態によれば、ジフルオロアセトニトリルと酸溶液とが混合される。
【0148】
反応混合物は、選ばれた加水分解温度にされ、この温度は、例えば、1〜2時間で変わる継続時間の間維持される。
【0149】
加水分解の終わりに、温度は、例えば20℃〜80℃に下げられる。
【0150】
過剰の水及び導入された酸を含む水相と主としてジフルオロアセトアミドからなる固体とを含む2相媒体が得られる。
【0151】
ジフルオロアセトアミドは、従来の固/液分離技法により、好ましくは濾過によって分離される。
【0152】
それは、再結晶又は抽出などのお決まりの技法により任意選択的に精製されてもよい。
【0153】
本発明の方法は、反応媒体の浸食に耐えることができる装置で有利には実施される。
【0154】
この目的のために、HASTELLOY(登録商標)銘柄で販売される、モリブデン、クロム、コバルト、鉄、銅、マンガン、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、カーボン及びタングステンをベースとする合金、又は銅及び/又はモリブデンが添加され、名称INCONEL(登録商標)で販売されるニッケル、クロム、鉄及びマンガンの合金、より具体的にはHASTELLOY C 276又はINCONEL 600、625若しくは718合金などの、耐腐食性である材料が、反応媒体と接触する部品のために選ばれる。
【0155】
オーステナイト鋼[Robert H.Perryら,Perry’s Chemical Engineers’ Handbook,Sixth Edition(1984年),ページ23−44]、より具体的には304、304L、316又は316Lステンレス鋼などの、ステンレス鋼がまた選ばれてもよい。多くとも22重量%の、好ましくは6%〜20%の、より好ましくは8%〜14%のニッケル含有率を有する鋼が使用される。
【0156】
304及び304L鋼は、8%〜12%で変わるニッケル含有率を有し、316及び316L鋼は、10%〜14%で変わるニッケル含有率を有する。
【0158】
反応媒体の浸食に耐えるポリマー化合物から構成された又はポリマー化合物でコートされた装置がまた使用されてもよい。PTFE(ポリテトラフルオロエチレン若しくはTeflon)又はPFA(パーフルオロアルキル樹脂)又は高密度ポリエチレンなどの材料がとりわけ挙げられてもよい。等価の材料を使用することは、本発明の範囲外ではないであろう。
【0159】
反応媒体と接触するために好適であり得る他の材料として、ガラス内張り鋼及び黒鉛の誘導体がまた挙げられてもよい。
【0160】
本発明の方法は、連続的に又は回分モードで実施されてもよい。
【0161】
それは共通の反応剤を使用する、そしてジフルオロ酢酸、及びその塩、エステル又はアミドを得ることを可能にする簡単な方法であるから、それは特に有利である。
【0162】
本発明の例示的な実施形態は、本明細書で下に与えられる。これらの実施例は、例示の目的でそして非限定的に与えられる。
【0163】
実施例において、得られる収率は明示される。
【0164】
反応収率(RY)は、形成される生成物のモル数と用いられる基質のモル数との比に相当する。
【実施例】
【0165】
実施例1
ジフルオロアセトニトリルの製造
Rushton型攪拌機を備えた200mlの容積を有するオートクレーブ中で、シアン化ナトリウム(2.57g、52.4ミリモル)及び水酸化ナトリウム(0.4g、10.5ミリモル)を22mlの水に溶解させる。
【0166】
オートクレーブを閉じ、クロロジフルオロメタン(9g、105ミリモル)を圧力下で加える。
【0167】
周囲温度で得られる圧力は、12.8バール相対圧力である。
【0168】
温度を次に2時間の継続時間の間95℃にし、次に40℃の温度に戻す。
【0169】
オートクレーブを大気圧に戻す。
【0170】
ガスを集め、次にガスクロマトグラフィーによって分析する。
【0171】
クロロジフルオロメタン(3.6g)及びジフルオロアセトニトリル(2.7g)からなる、6.3gの総質量が得られる。
【0172】
収率は67%である。
【0173】
実施例2
ジフルオロ酢酸ナトリウムの製造
ジフルオロアセトニトリルを、30gの30%(230ミリモル)水酸化ナトリウム溶液を含有する、Rushton型攪拌機を備えた100mlのオートクレーブに入れる。
【0174】
温度を5℃に下げ、ジフルオロアセトニトリル(m=9.8g、0.127モル)をこの温度で注ぐ。
【0175】
媒体の温度を、13時間の継続時間の間115℃にし、次に周囲温度に戻す。
【0176】
オートクレーブを大気圧に戻す。
【0177】
得られた水溶液中のジフルオロ酢酸ナトリウムの濃度は、11.6重量%(
19F NMRによる分析)であり、それは、2.63gの質量のジフルオロ酢酸ナトリウム、すなわち理論値の87%に相当する。
【0178】
実施例3
ジフルオロ酢酸ナトリウムの製造
Rushton型攪拌機を備えた200mlの容積を有するオートクレーブ中で、シアン化ナトリウム(2.6g、0.053ミリモル)及び水酸化ナトリウム(4.2g、0.13モル)を25mlの水に溶解させる。
【0179】
オートクレーブを閉じ、クロロジフルオロメタン(9g、105ミリモル)を圧力下で導入する。
【0180】
温度を次に17時間の継続時間の間117℃にし、次に周囲温度に戻す。
【0181】
オートクレーブを大気圧に戻す。
【0182】
得られた水溶液(29g)は、12.5重量%のジフルオロ酢酸ナトリウムを含有し、それは、3.64gの純ジフルオロ酢酸ナトリウム、すなわち理論値の54%に等価である。
【0183】
実施例4
ジフルオロ酢酸エチルの製造
98%硫酸(25.5g、0.259モル)と、水(9.35g、0.52モル)とエタノール(9g;0.19モル)との混合物を、攪拌機を備えたガラス反応器へ導入する。
【0184】
温度を10℃に下げ、ジフルオロアセトニトリル(10g、0.13モル)をこの温度で導入する。
【0185】
温度を次に、14時間の継続時間の間120℃にし、次に周囲温度に戻す。
【0186】
媒体をデカンテーションし、上相を回収する。
【0187】
純度87重量%である10.5gのジフルオロ酢酸エチルが得られ、それは、9.2gの質量の純ジフルオロ酢酸エチルに相当する(収率は57%である)。
【0188】
得られた粗ジフルオロ酢酸エチルを大気圧での蒸留によって精製する。
【0189】
75℃〜77℃の沸点を有する留分を集める。
【0190】
98重量%超のガスクロマトグラフィーによって測定される純度の、5.5gのジフルオロ酢酸エチルが得られる。