特許第5694592号(P5694592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5694592吸引カテーテル、及び吸引カテーテルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5694592
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】吸引カテーテル、及び吸引カテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20150312BHJP
   A61B 17/22 20060101ALI20150312BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   A61B17/00 320
   A61B17/22
   A61M25/00 540
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-132363(P2014-132363)
(22)【出願日】2014年6月27日
【審査請求日】2014年8月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594185835
【氏名又は名称】田熊 規方
(74)【代理人】
【識別番号】100087550
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 莞爾
(72)【発明者】
【氏名】田熊 規方
【審査官】 堀川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4267055(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
A61F 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に管腔を有する可撓性の長尺体からなるカテーテル本体と、該カテーテル本体の先端部に位置し、異物を回収する開口部を有する先端ケース部と、該先端ケース部の開口部より一部が露呈し、前記先端ケース部内において軸方向に可動する異物切削手段と、から構成され、
前記カテーテル本体の先端側を前記先端ケース部と共に血管内に挿入すると共に、該カテーテル本体の基端部を吸引装置に接続し、該吸引装置によって管腔内に負圧を発生させることで、前記異物切削手段を動作させて前記先端ケース部の開口部において血管内壁に付着する異物を切削すると共に、該異物を前記開口部よりカテーテル本体内に吸引して回収する療法に用いられる吸引カテーテルであって、
前記異物切削手段は、
前記軸方向に対して略直交する向きに配された切削領域を複数列備え、隣接する該切削領域の間隔が変化することに対して復元する弾性力を有する切削部と、
外部より動力の付与を受けて軸方向に可動する動力受付部と、
前記切削部と前記動力受付部とを連結し、該動力受付部が受けた動力を該切削部に伝達する動力伝達杆と、
を有し、
前記切削部は、一端が前記先端ケース部の先端側において前記動力伝達杆と接続され、他端が前記先端ケース部の基端側において内壁面に固定されている、
ことを特徴とする吸引カテーテル。
【請求項2】
前記切削部は、線状部材を幾重にも巻回して形成した螺旋状体であることを特徴とする請求項1に記載の吸引カテーテル。
【請求項3】
前記線状部材は、少なくとも切削領域の表面が非平坦であることを特徴とする請求項2に記載の吸引カテーテル。
【請求項4】
前記線状部材は、断面形状が多角形であることを特徴とする請求項2に記載の吸引カテーテル。
【請求項5】
前記切削部は、面状部材又は筒状部材に山折り部と谷折り部とを繰り返し形成した蛇腹状体であることを特徴とする請求項1に記載の吸引カテーテル。
【請求項6】
前記切削部は、先端側から基端側へ向かうに従って徐々に幅広もしくは径大となることを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の吸引カテーテル。
【請求項7】
前記先端ケース部は、前記異物切削手段のカテーテル本体の基端部側への移動を制限する係止部を内壁面に備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の吸引カテーテル。
【請求項8】
前記先端ケース部又は前記異物切削手段の少なくとも一部は、金属部材により形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の吸引カテーテル。
【請求項9】
前記開口部は、先端部が斜めに形成された先端ケース部の先端斜面に設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の吸引カテーテル。
【請求項10】
前記開口部は、先端ケース部の先端側周胴面に設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の吸引カテーテル。
【請求項11】
前記動力受付部は、磁性体からなり、
前記先端ケース部は、前記動力受付部に動力を付与する磁力発生手段を内壁面に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の吸引カテーテル。
【請求項12】
前記カテーテル本体及び/又は前記先端ケース部は、ガイドワイヤを挿通するガイドワイヤ腔を外面に備えることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の吸引カテーテル。
【請求項13】
前記請求項1乃至12のいずれか1項に記載の吸引カテーテルと、
前記吸引カテーテルにおける前記異物切削手段に動力を付与する駆動手段と、
から構成されることを特徴とする吸引カテーテルシステム。
【請求項14】
前記駆動手段は、前記異物切削手段に付与する動力強度の調整が可能であることを特徴とする請求項13に記載の吸引カテーテルシステム。
【請求項15】
前記異物切削手段は、前記駆動手段の動力強度の変化に応じて複動を可能とする伸縮部を備え、
前記駆動手段は、吸引力によって前記異物切削手段を引きつける吸引装置である、
ことを特徴とする請求項13又は14に記載の吸引カテーテルシステム。
【請求項16】
前記異物切削手段は、その一部又は全部が磁性体からなり、
前記駆動手段は、磁力によって前記異物切削手段を引きつける又は反発する磁力装置である、
ことを特徴とする請求項13又は14に記載の吸引カテーテルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内に挿入して血栓等の異物を吸引して除去する療法に用いられる吸引カテーテルに係り、詳しくは、脳梗塞や心筋梗塞といった血管系に異物による閉塞状態が生じたとき、異物を下流側へ流してしまうことなく、血管内よりその異物を容易にかつ円滑に回収除去するようにした技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血管の閉塞として知られている疾患は多く、たとえば、脳梗塞や心筋梗塞はそれぞれ臓器の動脈系が閉塞する疾患であり、エコノミークラス症候群は下肢の静脈血栓が肺血管の閉塞を起こして死に至る確立が高い疾患である。
【0003】
このような血管の内部に生じた血栓を、血管内を通した装置により除去しようとする手段として、今まで主に、吸引カテーテルの先端開口部を直接血栓等の異物に当てて吸引除去する方法と、血栓を破壊して血栓屑を吸引カテーテルで吸引しようとする方法とが知られている。
【0004】
たとえば、血管に挿入されるカテーテル本体と、カテーテル本体を振動させる振動部とからなり、振動しているカテーテル本体を血栓に当接させることにより、振動によって血栓を表面部分から徐々に崩壊させ、血管を傷つけることなく血栓を迅速に除去するようにした技術が提案されている(特許文献1参照)。
また、カテーテル先端付近にアクチュエータを設置し、アクチュエータを振動させることでカテーテル先端を振動させ、カテーテル先端またはその先端に設けた凹凸面により環境を削りとるようにした技術が提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、カテーテル本体の先端部に、先細りテーパ形状でかつ少なくとも1巻き以上のコイル状片を有する巻回部を設け、内部に配置した異物破砕用カテーテルが液体ジェット流を噴射して破砕した血管内の異物(血栓)を、この先端部から吸引し、外部に取り出すようにした技術が提案されている(特許文献3参照)。
また、被溶解部材を溶解するために被溶解部材に向けて溶解剤を吐出するための吐出口と、溶けずに残存している細かな被溶解部材を吸引するための吸引口とを備える管体に、被溶解部材を粉砕する機械的振動付与手段を設け、溶けずに残る細かな血栓を吸引口から吸い取るようにした技術が提案されている(特許文献4参照)。
さらに、カテーテルにバイブレータを取り付け、先端部外周面に形成した凹凸部分を振動させることにより、動脈硬化を起こしている狭窄部のアテロームを凹凸部分で削り、先端部の吸口部より体外に吸い出すようにした技術が提案されている(特許文献5参照)。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の手段では、何れも血栓を取り除く力が不十分であり、血栓を容易にかつ円滑に取り除くことができない。
また、上記特許文献3乃至5に記載の手段は、何れも血栓を破壊等する位置と血栓を回収する位置とが離れているため、血流方向によっては血栓屑が下流に流れてしまう虞がある。すなわち、たとえば頭部における血管内の血栓を取り除く場合、血液の流れに対し上流側よりカテーテルを挿入することとなるため、破壊等と略同時に血栓を回収しないと、血栓屑は容易に下流に流れてしまう。その結果、下流に流れてしまった血栓屑は、動脈系の場合、末梢の毛細血管において新たな血栓を作り出してしまう一因となってしまう。
【0007】
したがって、血管の内部に生じた血栓等の異物を吸引除去する吸引カテーテルにおいて要求される点としては、以下のようなことが挙げられる。
1)血栓を十分に取り除くことができること。
2)血栓屑を下流に流さないこと。
3)安全に行えること。
4)血管の複雑な屈曲に追随できること。
【0008】
ところが、上記した要求を全て満たした吸引カテーテルは、現在のところ何ら提案されていない。ゆえに、血管の内部に生じた血栓等の異物を下流側へ流してしまうことなく、血管内よりその異物を容易にかつ円滑に回収除去するようにした吸引カテーテルの提案が望まれている。
【0009】
そこで、図17に示すように、カテーテル本体101の先端部に、軸方向に可動する異物切削手段103を設け、カテーテル本体101の基端部を吸引装置に接続してカテーテル本体101の管腔111内に負圧を発生させることで異物切削手段103を動作させ、血管内壁に付着する異物を切削すると共に、切削後の異物を直ちに吸引して回収するようにした吸引カテーテル100が、本発明者によって既に提案されている(特許文献6参照)。
【0010】
具体的には、この吸引カテーテル100は、内部に管腔111を有する可撓性の長尺体からなるカテーテル本体101と、カテーテル本体101の先端部に位置し、異物を回収する開口部104を有する先端ケース部102と、この開口部104より一部が露呈し、先端ケース部102内において軸方向に可動する異物切削手段103とから構成されている。また、異物切削手段103は、開口部より露呈する切削部131と、外部より動力の付与を受けて切削部131を従動させる動力受付部132とを有する。
【0011】
しかしながら、本発明者において提案された上記吸引カテーテル100は、切削部131の一端131aが先端ケース部102の先端内面102aに固定され、切削部131の他端131bが先端ケース部102の基端側において動力受付部132と連結されているため、切削部131の構造や素材の性質によっては、先端側と基端側とで可動距離に差が生じてしまうことがある。
【0012】
すなわち、図18(A)において矢印で示すように、管腔111内が負圧になることによって動力受付部132が基端側へ移動すると、これに従動して図中の点線矢印で示すように切削部131が可動するが、このとき切削部131が他端131b側より引っ張られるため、他端131b側の切削領域の間隔が大きく、一端131a側の切削領域の間隔が小さいものとなってしまうことある。図18(B)において、一端131a側より他端131b側へ向かうにしたがって切削領域の間隔をd1、d2、d3、d4、d5、d6、d7とすると、切削領域の間隔の大きさは、d1<d2<d3<d4<d5<d6<d7になるものとして示されている。
【0013】
ゆえに、本発明者において提案された上記吸引カテーテル100では、血管の内部に生じた血栓等の異物を下流側へ流してしまうことなく、血管内よりその異物を容易にかつ円滑に回収除去することができるが、切削部131の構造や素材の性質によっては、切削部131の一端131a側の切削領域の間隔が小さいため、吸引カテーテル100の先端側において効果的に異物を切削することが困難となることがある。すなわち、血管内の異物と接触するのは吸引カテーテル100の先端部であるので、先端側での異物の切削動作が効果的に行われることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−95410号公報
【特許文献2】特開平9−192230号公報
【特許文献3】特開2006−271693号公報
【特許文献4】特開2006−263125号公報
【特許文献5】特開2000−279525号公報
【特許文献6】特許第4267055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、吸引カテーテルの先端側において血管の内部に生じた血栓等の異物を効果的に切削することができ、この異物を下流側へ流してしまうことなく、血管内より容易にかつ円滑に回収除去するようにした吸引カテーテルと、この吸引カテーテルを効率良く動作可能とした吸引カテーテルシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するため、本発明の吸引カテーテルは、内部に管腔を有する可撓性の長尺体からなるカテーテル本体と、該カテーテル本体の先端部に位置し、異物を回収する開口部を有する先端ケース部と、該先端ケース部の開口部より一部が露呈し、前記先端ケース部内において軸方向に可動する異物切削手段と、から構成され、前記カテーテル本体の先端側を前記先端ケース部と共に血管内に挿入すると共に、該カテーテル本体の基端部を吸引装置に接続し、該吸引装置によって管腔内に負圧を発生させることで、前記異物切削手段を動作させて前記先端ケース部の開口部において血管内壁に付着する異物を切削すると共に、該異物を前記開口部よりカテーテル本体内に吸引して回収する療法に用いられる吸引カテーテルであって、前記異物切削手段は、前記軸方向に対して略直交する向きに配された切削領域を複数列備え、隣接する該切削領域の間隔が変化することに対して復元する弾性力を有する切削部と、外部より動力の付与を受けて軸方向に可動する動力受付部と、前記切削部と前記動力受付部とを連結し、該動力受付部が受けた動力を該切削部に伝達する動力伝達杆と、を有し、前記切削部は、一端が前記先端ケース部の先端側において前記動力伝達杆と接続され、他端が前記先端ケース部の基端側において内壁面に固定されている、ことを特徴とする。
【0017】
また、本発明の吸引カテーテルは、前記吸引カテーテルにおいて、切削部は、線状部材を幾重にも巻回して形成した螺旋状体であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の吸引カテーテルは、切削部が線状部材から形成された螺旋状体である前記吸引カテーテルにおいて、線状部材は、少なくとも切削領域の表面に凹凸を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の吸引カテーテルは、切削部が線状部材から形成された螺旋状体である前記吸引カテーテルにおいて、線状部材は、断面形状が多角形であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の吸引カテーテルは、前記吸引カテーテルにおいて、切削部は、面状部材又は筒状部材に山折り部と谷折り部とを繰り返し形成した蛇腹状体であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の吸引カテーテルは、前記各吸引カテーテルにおいて、切削部は、先端側から基端側へ向かうに従って徐々に幅広もしくは径大となることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の吸引カテーテルは、前記各吸引カテーテルにおいて、前記先端ケース部は、前記異物切削手段のカテーテル本体の基端部側への移動を制限する係止部を内壁面に備えることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の吸引カテーテルは、前記各吸引カテーテルにおいて、前記先端ケース部又は前記異物切削手段の少なくとも一部は、金属部材により形成されていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の吸引カテーテルは、前記各吸引カテーテルにおいて、前記開口部は、先端部が斜めに形成された先端ケース部の先端斜面に設けられていることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の吸引カテーテルは、前記各吸引カテーテルにおいて、前記開口部は、先端ケース部の先端側周胴面に設けられていることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の吸引カテーテルは、前記各吸引カテーテルにおいて、前記動力受付部は、磁性体からなり、前記先端ケース部は、前記動力受付部に動力を付与する磁力発生手段を内壁面に備えることを特徴とする。
【0027】
さらに、本発明の吸引カテーテルは、前記各吸引カテーテルにおいて、前記カテーテル本体及び/又は前記先端ケース部は、ガイドワイヤを挿通するガイドワイヤ腔を外面に備えることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の吸引カテーテルシステムは、上述したいずれかの吸引カテーテルと、この吸引カテーテルにおける前記異物切削手段に動力を付与する駆動手段と、から構成されることを特徴とする
【0029】
また、本発明の吸引カテーテルシステムは、前記吸引カテーテルシステムにおいて、前記駆動手段は、前記異物切削手段に付与する動力強度の調整が可能であることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の吸引カテーテルシステムは、前記各吸引カテーテルシステムにおいて、前記異物切削手段は、前記駆動手段の動力強度の変化に応じて複動を可能とする伸縮部を備え、前記駆動手段は、吸引力によって前記異物切削手段を引きつける吸引装置であることを特徴とする。
【0031】
さらに、本発明の吸引カテーテルシステムは、前記各吸引カテーテルシステムにおいて、前記異物切削手段は、その一部又は全部が磁性体からなり、前記駆動手段は、磁力によって前記異物切削手段を引きつける又は反発する磁力装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明において吸引カテーテルは、内部に管腔を有する可撓性の長尺体からなるカテーテル本体の先端部に配された先端ケース部内において可動する異物切削手段が、隣接する切削領域の間隔が変化する切削部と、外部より動力の付与を受けて軸方向に可動する動力受付部と、動力受付部が受けた動力を該切削部に伝達する動力伝達杆とを有し、切削部は、一端が先端ケース部の先端側において動力伝達杆と接続され、他端が先端ケース部の基端側において内壁面に固定されたものとなっている。
【0033】
ゆえに、動力受付部からの動力の伝達を吸引カテーテルの先端側に位置する切削部の一端側において受け、切削領域の間隔が、該一端側より優先的に変化し、かつ、大きく変化するように異物切削手段が動作し、切削部の構造や素材の性質によって先端側における切削領域の間隔変化が小さいものとなってしまうことがなくなる。
【0034】
したがって、吸引カテーテルの先端側において血管の内部に生じた血栓等の異物を効果的に切削することができ、この異物を下流側へ流してしまうことなく、血管内より容易にかつ円滑に回収除去するようにした吸引カテーテルと、この吸引カテーテルを効率良く動作可能とした吸引カテーテルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係る吸引カテーテルを示す図であり、(A)は切削動作前を示す断面模式図、(B)は切削動作後を示す断面模式図、(C)は(B)中において一点鎖線で囲まれた符号A部分(切削部)を示す拡大平面模式図である。
図2】本発明に係る吸引カテーテルにおける異物切削手段の動作を順次説明する図であり、(A)は吸引力の付与前を示す断面模式図、(B)は強い吸引力を付与した状態を示す断面模式図、(C)は弱い吸引力を付与した状態を示す断面模式図である。
図3】吸引力に強弱を付与する手段の一例を示す図であり、(A)は強い吸引力を付与した状態を示す概略模式図、(B)は弱い吸引力へ変更した状態を示す概略模式図である。
図4】本発明に係る吸引カテーテルを用いて異物(血栓)を切削除去する工程を順次説明する断面模式図であり、(A)は血管内へ吸引カテーテルを挿入した状態を示す断面模式図、(B)は血栓に吸引カテーテルの先端面を当接した状態を示す断面模式図、(C)は異物切削手段によって血栓を切削して血栓屑を回収する状態を示す断面模式図である。
図5】本発明に係る吸引カテーテルにおける異物(血栓)の回収路を説明する図であり、(A)は回収路が全開した状態を示す断面模式図、(B)は回収路が異物切削手段の動力受付部によって部分的に閉塞された状態を示す断面模式図である。
図6】本発明に係る吸引カテーテルの他の例を示す断面模式図である。
図7】本発明に係る吸引カテーテルの他の例を示す断面模式図である。
図8】本発明に係る吸引カテーテルの他の例を示す断面模式図である。
図9図8に示す本発明の吸引カテーテルを用いて異物(血栓)を切削除去する状態を示す断面模式図である。
図10】本発明に係る吸引カテーテルの他の例を示す断面模式図である。
図11図10に示す本発明の吸引カテーテルを用いて異物(血栓)を切削除去する状態を示す断面模式図である。
図12】本発明で用いる切削部の断面形状の一例を示す図であり、(A)は表面に半球状凸部を有する切削部の拡大断面模式図、(B)は表面に錘状凸部を有する切削部の拡大断面模式図、(C)は表面に半球状凹部を有する切削部の拡大断面模式図、(D)は表面に波線状凹部を有する切削部の拡大断面模式図である。
図13】本発明で用いる切削部の断面形状の一例を示す図であり、(A)は上向き三角形状をした切削部の拡大断面模式図、(B)は下向き三角形状をした切削部の拡大断面模式図、(C)はひし形(ダイヤ形)をした切削部の拡大断面模式図、(D)は星型正多角形(星型正八角形)をした切削部の拡大断面模式図である。
図14】本発明で用いる切削部の他の例を示す図であり、(A)は面状部材に山折り部と谷折り部とを繰り返し形成した蛇腹状体を示す模式図、(B)は面状部材に山折り部と谷折り部とを繰り返し形成し、先端側から基端側へ向かうに従って徐々に幅広(径大)となる蛇腹状体を示す模式図である。
図15】本発明で用いる切削部の他の例を示す図であり、筒状部材に山折り部と谷折り部とを繰り返し形成した蛇腹状体を示す模式図である。
図16】本発明で用いる切削部の他の例を示す図であり、(A)は蛇腹状体を構成する板ばね部材の正面図、(B)は同板ばね部材の側面図、(C)は板ばね部材の向きを変えて交互に接続することで形成した蛇腹状体を示す模式図である。
図17】従来の吸引カテーテルを示す断面模式図である。
図18】従来の吸引カテーテルを示す図であり、(A)は切削部が基端側に可動した状態を示す図であり、(B)は(A)中における切削部を示す拡大平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明における実施の形態の一例について、図面を参照して説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるため技術的に種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0037】
本発明で意図する吸引カテーテルは、先端側を血管内に挿入すると共に、基端部を吸引装置に接続し、この吸引装置によって管腔内に負圧を発生させることで血管内の異物を吸引して回収する療法に用いられるものである。
すなわち、本発明の吸引カテーテルは、吸引手段(吸引装置)と組み合わせて用いられ、脳梗塞や心筋梗塞といった血管系に異物による閉塞状態が生じたとき、吸引カテーテルを病変まで深く挿入して血管を閉塞している血栓等の異物(以下、単に「血栓」という。)を直接吸引し、体外に除去するものである。なお、吸引装置は、上記療法において一般的に用いられている通常の装置であり、ここでの説明は省略する。
【0038】
<第1の実施の形態>
図1に示すように、本実施の形態における吸引カテーテル10は、カテーテル本体1と、このカテーテル本体1の先端部1aに位置する先端ケース部2と、この先端ケース部2内に設置された異物切削手段3と、を備える。
【0039】
カテーテル本体1は、内部に管腔11を有する可撓性の長尺体からなる。したがって、カテーテル本体1は、血管の屈曲に十分追従することができる。
このカテーテル本体1に用いられる材料としては、たとえば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂等の各種熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー等の熱可塑性エラストマー、各種ゴム等を挙げることができる。
【0040】
また、カテーテル本体1の外径は特に限定されないが、毛細血管における血栓除去を可能とするため、その外径はできるだけ細くすると良く、たとえば、1mm程度とすることが望ましい。
【0041】
先端ケース部2は、血栓を回収する開口部4を有する。また、この開口部4は、カテーテル本体1の管腔11内に負圧を発生させることで血栓を吸引する入口でもある。したがって、開口部4は、血管内壁に付着する血栓に臨むように設けられている。
【0042】
図1において、開口部4は、先端部が斜めに形成された先端ケース部2の先端斜面21の一部に設けられていることが示されている。
この先端ケース部2は、カテーテル本体1と一体成形したものであっても良いし、別体成形したものであっても良い。
【0043】
異物切削手段3は、先端ケース部2内において軸方向に可動する。ここで、軸方向とは、カテーテル本体1の長手軸方向と同方向をいう。
この異物切削手段3は、開口部4より一部が切削領域として露呈する切削部31と、外部より動力の付与を受けて軸方向に可動する動力受付部32と、切削部31と動力受付部32とを連結し、動力受付部32が受けた動力を切削部31に伝達する動力伝達杆33とを有する。
【0044】
切削部31は、異物切削手段3が可動する軸方向に対して略直交する向きに掛け渡すように設けられた切削領域を備える。ここで、異物切削手段3の可動方向に対して略直交する向きとは、異物切削手段3の動作に伴って移動することで、切削領域が面軌跡を描く方向をいう。また、切削領域とは、異物と接触する部分をいう。
【0045】
また、切削部31は、切削した血栓を直ちに先端ケース部2内に取り入れる回収口を有するように形成されている。回収口を有するように構成した切削部31としては、たとえば線状部材による切削領域が1つだけ形成されたアーチ状体や、隙間を設けながら線状部材を幾重にも巻回して切削領域を複数形成した螺旋状体とすることができる。
【0046】
このように切削部31をアーチ状体とすることで、異物切削手段3が可動する軸方向に対して略直交する向きに掛け渡すように設けられた線状部材部分の形状が血管の内壁形状に近似する弧状となり、血栓を効率良く除去し易いものとすることができる。
【0047】
また、切削部31は、切削領域が軸方向に沿って直列に複数列備えられた螺旋状体とすることが望ましく、切削部31は、隣接する切削領域どうしの間隔が変化する(狭まる)ことに対して復元する(元の状態に戻ろうとする)弾性力を有する。
このように切削部31を、幾重にも配された複数の切削領域を有する螺旋状体とすることで、バネ弾性を確保しながら、線状部材の一部が切削領域となり、血管内壁に付着する異物を効率良く複数同時に切削することができる。
【0048】
図1において、切削部31は螺旋状体(弦巻ばね形)として示され、切削部31の一端31aは、先端ケース部2の先端側において動力伝達杆33と接続され、この動力伝達杆33を介して動力受付部32と接続したものとして示されている。
一方、切削部31の他端31bは、先端ケース部4の基端側において内壁面2bに固定されたものとして示されている。すなわち、切削部31の他端31bは、切削部31の一端31aと動力伝達杆33とが接続された位置よりも基端側であって、先端ケース部2の開口部4より基端側の内壁面2bに固定されている。
【0049】
ゆえに、本発明の吸引カテーテル10を用いるためには、異物切削手段3の動力受付部32に動力を付与する駆動手段を要し、本発明においては、吸引カテーテル10と駆動手段(不図示)とによって吸引カテーテルシステムを構成する。
【0050】
動力受付部32を従動させる外部からの動力としては、たとえば動力受付部32を引きつける吸引力とすることができる。このように吸引力を、異物切削手段3を可動させるための動力とすることで、カテーテル本体1の管腔11内に負圧を発生させ、血栓を吸引して回収するのに用いる吸引装置(不図示)を併用することができる。
この場合、動力付与のために別途駆動手段を設けることなく、経済的、設計的、操作的に効率良く実施することができる。
【0051】
また、動力受付部32を引きつける動力を吸引力とした場合、動力受付部32は、動力伝達杆33を介して螺旋状体とした切削部31の一端31aに取り付けた、たとえば球状に形成された膨大部とすることができる。
【0052】
動力伝達杆33は、動力受付部32が受けた動力を切削部31に伝達し、動力受付部32の動きに伴って切削領域の間隔が変化するように切削部31を軸方向に伸縮動させる。
【0053】
図1(A)に示された本実施の形態の吸引カテーテル10において、吸引装置(不図示)によってカテーテル本体1の管腔11内に負圧を発生させると、図1(B)において白抜き矢印で示すように吸引力が生じ、動力受付部32に動力が付与されて、動力受付部32は実線矢印方向に移動する。さらに、動力受付部32の移動に追従して、切削部31を構成する線状部材の間隔が狭まるように切削部31が点線矢印方向に縮むことになる。
【0054】
このとき切削部31は、一端31aより基端側へ引っ張られるが、他端31bが固定されているので切削領域の基端側が大きく後退することがない。ゆえに、切削部31は、一端31a側より優先的に切削領域の間隔が変化すると共に、その変化が大きなものとなるが、切削部31に均一に動力が伝達されることで、切削領域の間隔の変化が全体的に略等しいものとなる。
図1(C)において、一端31a側より他端31b側へ向かうにしたがって切削領域の間隔をD1、D2、D3、D4、D5、D6、D7とすると、切削領域の間隔の大きさは、D1=D2=D3=D4=D5=D6=D7になるものとして示されている。
【0055】
また、本実施の形態では、切削部31を螺旋状体とした場合、図2に示すように、異物切削手段3は、切削部31のばね弾性により複動することができる。図2は、吸引カテーテル10における異物切削手段3の動作を順次説明する図である。
異物切削手段3の複動は、動力受付部32に動力を付与する駆動手段における動力強度の調整を行うことで実施できる。本実施の形態の場合、吸引圧の強弱によって動力強度の調整を行う。
【0056】
すなわち、吸引カテーテル10は、駆動手段(不図示)を用いない状態では、図2(A)に示すように、異物切削手段3(切削部31)は先端ケース部2の先端部に向かって伸長した状態となっている。
また、駆動手段によって管腔11内に負圧を発生させ、強い吸引力を動力受付部32に付与すると、図2(B)に示すように、動力受付部32はカテーテル本体1基端部側へ引っ張られ、これに伴って切削部31はばね付勢力(弾性力)に抗して収縮するものとなる。
そして、駆動手段を停止又はその吸引力を弱めると、図2(C)に示すように、動力受付部32は切削部31が備えるばね付勢力によって先端ケース部2の先端部側に解き放たれたように戻る状態となる。
【0057】
なお、本実施の形態では、螺旋状体とした切削部31が備えるばね弾性力が異物切削手段3の復動を可能としているが、異物切削手段3において伸縮機能を有していない場合、別途伸縮部を備える必要がある。
【0058】
また、本実施の形態において先端ケース部2は、図1及び図2に示すように、動力受付部32のカテーテル本体1基端部側への移動を制限する係止部5,5を内壁面に備える。この係止部5,5によって動力受付部32が必要以上に引っ張られることなく、異物切削手段3の複動動作を効率良く円滑に行うことができる。
なお、係止部5,5は、先端ケース部2と一体成形したものであっても良いし、別体成形したものを取り付けるようにしたものであっても良い。
【0059】
ここで、吸引圧に強弱の変化を付与する手段としては、たとえば、カテーテル本体1の管腔の大きさ(径)を変化させることを挙げることができる。すなわち、カテーテル本体1の途中を圧迫して吸引経路となる管径を狭めることで吸引力を弱めたり、逆に、圧迫を解除して管径を拡げる(元の管径の大きさに戻す)ことで吸引力を強めたりすることができる。
【0060】
具体的には、たとえば、異物切削手段と吸引装置との間におけるカテーテル本体1の途中に、押圧することで変形可能な管径可変領域を形成すると共に、この管径可変領域を適度に押圧する部材を設けるものとする。
【0061】
図3において、管径可変領域は、異物切削手段3と吸引装置との間におけるカテーテル本体1の途中に配されたゴム製チューブ等の弾性管8として示され、押圧する部材は、回転軸Oを中心に偏芯回転することで弾性管8を外部より適度に押圧する側面視略扇状をした圧迫子9として示されている。なお、圧迫子9は、たとえばモータにより自動的に高速で連続回転するものとすることができる。
具体的には、図3(A)において、圧迫子9が弾性管8を押圧することなく、異物切削手段に強い吸引力を付与する状態が示され、図3(B)において、圧迫子9が弾性管8を押圧して異物切削手段へ付与される吸引力を弱めた状態が示されている。
【0062】
これにより、本発明の吸引カテーテル10では、動力伝達杆33を介して動力受付部32からの動力の伝達を切削部31の一端31a側において受け、この一端31a側より効率良く優先的に切削領域の間隔が狭まるように異物切削手段3が動作するものとし、血管内壁に付着する異物を切削すると共に、この異物を開口部4よりカテーテル本体1内に吸引して回収することができる。また、吸引装置による吸引力に強弱をつけることで、切削部31が軸方向に往復動することになり、連続して効率良く異物を切削することができる。
【0063】
ゆえに、本発明の吸引カテーテル10は、特に、切削部31の素材や形状等により、一端31a側と他端31b側とで切削領域の間隔変化に相違がある場合、すなわち、一端31a側と他端31b側における切削領域の間隔の変化が不均一である場合に有効である。
【0064】
次に、このように構成した吸引カテーテル10を用いて血管内の血栓を切削除去する場合を説明する。図4は、吸引カテーテルを用いて血栓を切削除去する工程を順次説明する断面模式図である。
まず、図4(A)に示すように、吸引カテーテル10を血管BV内に挿入し、その先端側10aを血栓BCまで到達させる。この際、吸引カテーテル10の基端部は吸引装置に接続されている。
【0065】
次いで、図4(B)に示すように、先端ケース部2の開口部4より露呈する異物切削手段3の切削部31を血栓BCに当接する。
そして、図4(C)に示すように、この吸引装置によって管腔11内に負圧を発生させ、異物切削手段3を可動させることで、切削部31によって血管内の血栓を切削すると共に、血栓屑を確実に吸引捕捉して回収する。
図4において、血栓BCより切削された5つの血栓屑bc1、bc2,bc3,bc4,bc5が吸引回収されることが示されている。
【0066】
また、係止部5,5は、図5(A)に示すように、先端ケース部2の内壁面に部分的に突出するように設けられ、先端ケース部2におけるその他の部分は血栓屑を吸引回収する回収路6となっている。すなわち、係止部5が先端ケース部2の内壁面において均一の高さ(厚さ)に設けられていると、カテーテル本体1の基端部側へ引っ張られた動力受付部32が、係止部5に当接することで回収路6が閉塞してしまう虞がある。
そこで、先端ケース部2の内壁面に部分的に突出するように係止部5を設けることで、図5(B)に示すように、カテーテル本体1の基端部側へ引っ張られた動力受付部32が係止部5に当接しても、動力受付部32の外側において回収路6が塞がれることがない。したがって、吸引回収された血栓屑は、回収路6を通って確実に吸引回収されることになる。
【0067】
また、本実施の形態においては、先端ケース部2又は異物切削手段3の少なくとも一部を金属部材により形成すると望ましい。こうすることで、カテーテル本体1の先端位置がX線映像において確認することが可能となる。
【0068】
以上のように本実施の形態においては、先端ケース部2に設けられた開口部4より露呈する異物切削手段3の切削部31によって血栓BCを切削する。これにより、最初に開口部4を血栓BCに当接すると、管腔11内に発生する負圧によって血栓BCは開口部4より先端ケース部2内に引っ張られ状態となる。また、動力受付部32も管腔11内に発生する負圧によってカテーテル本体1の基端部側へ引っ張られ、切削部31が引き伸ばされることになる。そして、切削部31が引き伸ばされることによって血栓BCが切削されると、切削された血栓屑は管腔11内に発生する負圧によって直ちに、開口部4を介して切削部31の隙間である回収口より先端ケース部2内に吸引されるものとなる。
【0069】
したがって、切削した血栓屑を流してしまうことなく、全て先端ケース部2内に吸引しつつ血管内より血栓を容易にかつ円滑に回収除去することができる。しかも、開口部4より露呈する異物切削手段3の切削部31によってその部分の血栓BCだけを切削するので、これ以外の血管内壁といった部分を傷つけてしまう虞が無く、安全に行なうことができる。
【0070】
また、本実施の形態においては、駆動手段における吸引力を調整することによって異物切削手段3(切削部31)が複動する。これにより、管腔11内に発生する負圧を強から弱めると、切削部31が有するばね弾性の復元力によって切削部31は縮まって元の長さに戻ることになる。そして、切削部31が元の長さに戻る際も血栓BCが切削されることとなり、切削された血栓屑は管腔11内に発生する負圧によって直ちに、開口部4を介して切削部31の隙間である回収口より先端ケース部2内に吸引されるものとなる。
【0071】
したがって、切削部31が引き伸ばされる動作と、切削部31が縮まって元の長さに戻る動作とが繰り返される複動によって、効率良く血栓BCを切削除去することができる。しかも、先端部が斜めに形成された先端ケース部の先端斜面21に開口部4が設けられていることで、吸引カテーテルの周胴部が血栓と対向するように挿入することができない場合であっても、端部より血栓を徐々に切削除去することができる。
【0072】
<第2の実施の形態>
また、本発明の吸引カテーテルは、血管内への挿入を効率良く行い、容易に患部(血栓)までたどり着けるようにすることもできる。すなわち、上述した第1の実施の形態とは、吸引カテーテル挿入補助手段を備える点で異なる。
なお、以下に述べる他の各実施の形態では、上述した第1の実施の形態と異なる部分を中心に説明する。したがって、第1の実施の形態と同様の構成部分は同じ符号を付してその説明は省略し、特に説明しない限り同じであるものとする。
【0073】
図6に示すように、本実施の形態における吸引カテーテル20は、カテーテル本体1と、このカテーテル本体1の先端部1aに位置する先端ケース部2と、この先端ケース部2内に設置された異物切削手段3と、を備えると共に、カテーテル本体1及び/又は先端ケース部2の外面に、ガイドワイヤWを挿通するガイドワイヤ腔7を備える。すなわち、吸引カテーテル20は、吸引カテーテル挿入補助手段としてのガイドワイヤ腔7を、長手軸方向外面に備えている。
【0074】
以上のように本実施の形態においては、予め血管内に挿入されたガイドワイヤWをガイドワイヤ腔7に挿通し、このガイドワイヤWに沿って吸引カテーテル20を挿入することで、ガイドワイヤ腔7を吸引カテーテル挿入補助手段として用い、効率良く血管内への挿入を行うことができる。
【0075】
<第3の実施の形態>
また、本発明の吸引カテーテルは、吸引力以外の駆動手段によって異物切削手段に対して動力を付与するようにすることもできる。すなわち、上述した第1の実施の形態とは、吸引装置とは別個に駆動手段を備える点で異なる。
【0076】
図7に示すように、本実施の形態における吸引カテーテル30は、カテーテル本体1と、このカテーテル本体1の先端部1aに位置する先端ケース部2と、この先端ケース部2内に設置された異物切削手段13とを備える。
【0077】
異物切削手段13は、その一部又は全部が磁性体からなり、たとえば開口部4より露呈する切削部31と、外部より磁力を受けて切削部31を従動させる動力受付部34と、切削部31と動力受付部34とを連結し、動力受付部34が受けた動力を切削部31に伝達する動力伝達杆33とを有する。
図7において、切削部31は螺旋状体(弦巻ばね形)として示され、一端31aが先端ケース部2の先端側において動力伝達杆33と接続され、この動力伝達杆33を介して動力受付部34と接続したものとして示されている。 一方、切削部31の他端31bは、先端ケース部4の基端側において内壁面2bに固定されたものとして示されている。
【0078】
動力受付部34としては、たとえば永久磁石とすることができる。この永久磁石は、フェライト磁石でも希土類磁石でも良く、特に種類は選ばない。
【0079】
また、本実施の形態における駆動手段は、磁力によって動力受付部34を引きつけたり、又は反発させたりする磁力装置である。
磁力装置としては、たとえば先端ケース部2の内壁面に設けた電磁石35と、この電磁石35へ電線36を介して電力を供給する電力供給源を有する。この電磁石35は、通電することによって一時的に磁力を発生させることや、電流の向きを変えることによって磁石の極を反対にすることができる。
【0080】
以上のように本実施の形態においては、電磁石35への通電によって発生させた磁力(引力磁場)による動力受付部34の引き合いと、電磁石35への通電を停止した磁力解消により、切削部31が備えるばね付勢力に基づく先端ケース部2の先端内面2a側への引き合いによって、異物切削手段13に対して動力を付与することができる。また、電磁石35へ通電する電流の向きを変えた極の反転による動力受付部34の引き合い(引力磁場)又は反発(斥力磁場)によって、異物切削手段13に対して動力を付与することもできる。
しがたって、血栓屑を回収する吸引力を弱めることなく、異物切削手段の複動を可能とすることができる。
【0081】
<第4の実施の形態>
また、本発明の吸引カテーテルは、血栓に当接する開口部の向きを変更することもできる。すなわち、上述した第1の実施の形態とは、開口部が設けられた位置が異なる。
【0082】
図8に示すように、本実施の形態における吸引カテーテル40は、カテーテル本体1と、このカテーテル本体1の先端部1aに位置する先端ケース部12と、この先端ケース部12内に設置された異物切削手段3とを備える。
【0083】
先端ケース部12は、血栓を回収する複数の開口部14,14を有する。この開口部14は、カテーテル本体1の管腔11内に負圧を発生させることで血栓を吸引する入口でもある。したがって、開口部14は、血管内壁に付着する血栓に臨むように設けられている。
【0084】
図8において、開口部14は、先端へ行くにしたがって徐々に径が小さくなるように形成された先端ケース部12の先端円錐面12Aに設けられていることが示されている。なお、ここでの円錐面とは、先端ケース部12の先端へ行くにしたがって均等に径が小さくなる場合のほか、先端ケース部12の先端へ行くにしたがって小さくなる径の程度が大きくなる弧状の場合をも含む。
この先端ケース部2は、カテーテル本体1と一体成形したものであっても良いし、別体成形したものであっても良い。
【0085】
異物切削手段3は、それぞれの開口部14,14よりそれぞれ一部が露呈し、先端ケース部12内において軸方向に可動する。
この異物切削手段3は、たとえば開口部14より露呈する切削部31と、外部より動力を受けて切削部31を従動させる動力受付部32と、切削部31と動力受付部32とを連結し、動力受付部32が受けた動力を切削部31に伝達する動力伝達杆33とを有する。
図8において、切削部31は螺旋状体(弦巻ばね形)として示され、一端31aが先端ケース部12の先端側において動力伝達杆33と接続され、この動力伝達杆33を介して動力受付部32と接続したものとして示されている。 一方、切削部31の他端31bは、先端ケース部14の基端側において内壁面12bに固定されたものとして示されている。
【0086】
次に、このように構成した吸引カテーテル40を用いて血管内の血栓を切削除去する場合を説明する。図9は、吸引カテーテルを用いて血栓を切削除去する方法を説明する断面模式図である。
まず、図9に示すように、吸引カテーテル40を血管BV内に挿入し、その先端側40aを血栓BCまで到達させて先端ケース部12の開口部14より露呈する異物切削手段3の切削部31を血栓BCに当接する。この際、吸引カテーテル40の基端部は吸引装置に接続されている。そして、吸引装置によって管腔11内に負圧を発生させ、異物切削手段3を複動させることで、切削部31によって血管内の血栓を切削し、血栓屑を吸引して回収することができる。
【0087】
以上のように本実施の形態においては、先端へ行くにしたがって徐々に径が小さくなるように形成された先端ケース部12の円錐面12Aに複数の開口部14,14が設けられていることで、血管内のあらゆる方向に形成付着した血栓と対向するように吸引カテーテルを挿入することができる。したがって、血管内で吸引カテーテルを回転させることにより血管内を損傷させる虞なく、血管内のあらゆる方向に形成付着した血栓を切削除去することができる。
【0088】
<第5の実施の形態>
また、本発明の吸引カテーテルは、血栓に当接する開口部の向きをさらに他の向きに変更することもできる。すなわち、上述した第1の実施の形態や第4の実施の形態とは、開口部が設けられた位置が何れも異なる。
【0089】
図10に示すように、本実施の形態における吸引カテーテル50は、カテーテル本体1と、このカテーテル本体1の先端部1aに位置する先端ケース部22と、この先端ケース部22内に設置された異物切削手段3とを備える。
【0090】
先端ケース部22は、血栓を回収する開口部24を有する。この開口部24は、カテーテル本体1の管腔11内に負圧を発生させることで血栓を吸引する入口でもある。したがって、開口部24は、血管内壁に付着する血栓に臨むように設けられている。
【0091】
図10において、開口部24は、円筒形をした先端ケース部22の先端側周胴面22Aに設けられていることが示されている。
この先端ケース部22は、カテーテル本体1と一体成形したものであっても良いし、別体成形したものであっても良い。
【0092】
異物切削手段3は、この開口部24より一部が露呈し、先端ケース部22内において軸方向に可動する。
この異物切削手段3は、たとえば開口部24より露呈する切削部31と、外部より動力を受けて切削部31を従動させる動力受付部32と、切削部31と動力受付部32とを連結し、動力受付部32が受けた動力を切削部31に伝達する動力伝達杆33とを有する。
図10において、切削部31は螺旋状体(弦巻ばね形)として示され、一端31aが先端ケース部22の先端側において動力伝達杆33と接続され、この動力伝達杆33を介して動力受付部32と接続したものとして示されている。 一方、切削部31の他端31bは、先端ケース部22の基端側において内壁面22bに固定されたものとして示されている。
【0093】
次に、このように構成した吸引カテーテル50を用いて血管内の血栓を切削除去する場合を説明する。図11は、吸引カテーテルを用いて血栓を切削除去する方法を説明する断面模式図である。
まず、図11に示すように、吸引カテーテル50を血管BV内に挿入し、その先端側50aを血栓BCまで到達させて先端ケース部22の開口部24より露呈する異物切削手段3の切削部31を血栓BCに当接する。この際、吸引カテーテル50の基端部は吸引装置に接続されている。そして、吸引装置によって管腔11内に負圧を発生させ、異物切削手段3を複動させることで、切削部31によって血管内の血栓を切削し、血栓屑を吸引して回収することができる。
【0094】
以上のように本実施の形態においては、円筒形をした先端ケース部22の先端側周胴面51に開口部24が設けられていることで、血管の壁面に向かって略平行に吸引カテーテルを挿入することができる。したがって、血管の内側より壁面に向かって血栓を切削除去することができる。
【0095】
<第6の実施の形態>
また、本発明の吸引カテーテルは、上述した第1乃至第5の実施の形態において、螺旋状体(弦巻ばね形)からなる切削部31を、少なくとも切削領域の表面が非平坦である線状部材により構成したものとすることができる。たとえば、図12に示すように、線状部材からなる切削部の表面に半球状や錘状、等の凸部を形成したり、半球状の窪みや線状の線状凹部(溝部)を形成したりして、表面が凹凸状となるものとすると良い。
【0096】
具体的には、図12(A)において、線状部材の表面に半球状凸部37aを複数有する切削部31Aが示され、図12(B)において、線状部材の表面に錘状凸部37bを複数有する切削部31Bが示され、図12(C)において、線状部材の表面に半球状凹部38aを複数有する切削部31Cが示され、図12(D)において、線状部材の表面に波線状凹部38bを複数有する切削部31Dが示されている。
【0097】
また、線状部材の表面を非平坦とする他の手段としては、たとえば、図13に示すように、線状部材からなる切削部の断面形状が多角形となるものとしても良い。
【0098】
具体的には、図13(A)において、線状部材の断面形状が上向き三角形状をした切削部41Aが示され、図13(B)において、線状部材の断面形状が下向き三角形状をした切削部41Bが示され、図13(C)において、線状部材の断面形状がひし形(ダイヤ形)をした切削部41Cが示され、図13(D)において、線状部材の断面形状が星型正多角形(星型正八角形)をした切削部41Dが示されている。
【0099】
このように切削領域の表面に凸部や凹部を設けた線状部材により切削部を構成することで、異物が凸部や凹部に引っ掛かり、効果的に異物を切削することができる。また、切削領域の断面形状が多角形状となる線状部材により切削部を構成することで、異物が角部に引っ掛かり、効果的に異物を切削することができる。
なお、図示しないが、線状部材の表面に細かな凹凸が多数設けられた梨肌面状に加工するものとしても、異物が梨肌面に接することで擦れて効果的に異物を切削するができる。
【0100】
なお、本発明において線状部材は、その表面を全体的に非平坦なものとしても良いが、上述のように少なくとも線状部材の切削領域となる部分の表面のみが非平坦であり、それ以外は平坦なものであっても差し支えない。
【0101】
<第7の実施の形態>
また、本発明の吸引カテーテルは、上述した第1乃至第5の実施の形態における螺旋状体(弦巻ばね形)からなる切削部に換えて、蛇腹状体からなる切削部とすることもできる。すなわち、上述した第1乃至第5の実施の形態とは、切削部の構造が異なる。
【0102】
本実施の形態における切削部は、山折り部と谷折り部とを繰り返し形成した蛇腹状体とすることができる。たとえば、図14に示すように、面状部材を曲折して山折り部と谷折り部とを繰り返し形成した蛇腹状板体や、図15もしくは図16に示すように、断面形状が円形又は多角形に形成された筒状部材に山折り部と谷折り部とを繰り返し形成した蛇腹状円筒体もしくは蛇腹状角筒体とすると良い。
【0103】
具体的には、図14(A)において、面状部材に山折り部52と谷折り部53とを繰り返し形成した蛇腹状板体からなる切削部51Aが示され、図14(B)において、面状部材に山折り部52と谷折り部53とを繰り返し形成し、一端51a側から他端51b側へ向かうに従って徐々に幅広・径大となる蛇腹状板体からなる切削部51Bが示されている。
【0104】
この切削部51A,51Bは、山折り部52が異物を切削する領域となり、吸引カテーテルにおける先端ケース部の開口部より山折り部52が露呈し、先端ケース部内において軸方向に可動するように配される。
また、切削部51A,51Bは、上述した第1乃至第5の実施の形態における異物切削手段と同様に、外部より動力を受けて切削部51A,51Bを従動させる動力受付部と、切削部51A,51Bと動力受付部とを連結し、動力受付部が受けた動力を切削部51A,51Bに伝達する動力伝達杆33と共に異物切削手段を構成し、一端51aが、動力伝達杆33と連絡されると共に、他端51bが、先端ケース部の基端側において内壁面に固定されたものとなっている。
なお、蛇腹状板体は、面状部材の折り返し面毎の略中央に、動力伝達杆33を挿通するための孔部55を備える。ゆえに、蛇腹状板体は、孔部55を介して可動する動力伝達杆33に従動して伸縮するものとなる。
【0105】
このような蛇腹状板体からなる切削部51A,51Bでは、山折り部52及び谷折り部53が共にバネ弾性を有し、面状部材の折り返し面同士の間隔を狭めると、元の状態に戻ろうとして折り返し面同士の間隔を拡げるように作用する。また、山折り部52が切削領域となり、血管内壁に付着する異物を容易に切削することができる。
【0106】
また、図15において、筒状部材に山折り部62と谷折り部63とを繰り返し形成した蛇腹状円筒体からなる切削部61が示されている。
この切削部61は、山折り部62が異物を切削する領域となり、吸引カテーテルにおける先端ケース部の開口部より山折り部62が露呈し、先端ケース部内において軸方向に可動するように配される。
【0107】
また、切削部61は、上述した第1乃至第5の実施の形態における異物切削手段と同様に、外部より動力を受けて切削部61を従動させる動力受付部と、切削部61と動力受付部とを連結し、動力受付部が受けた動力を切削部61に伝達する動力伝達杆33と共に異物切削手段を構成し、一端61aが、動力伝達杆33と連絡されると共に、他端61bが、先端ケース部の基端側において内壁面に固定されたものとなっている。
なお、蛇腹状筒体は、内部が中空となっており、この内部を介して可動する動力伝達杆33に従動して伸縮するものとなる。
【0108】
また、図示しないが、このような蛇腹状円筒体からなる切削部61では、一端61a側から他端61b側へ向かうに従って全体の外径が徐々に大きくなる蛇腹状円錐体もしくは蛇腹状角錐体とすることもできる。
【0109】
ゆえに、蛇腹状円筒体もしくは蛇腹状角筒体とした場合でも、蛇腹状板体からなる切削部と同様に、山折り部62及び谷折り部63が共にバネ弾性を有し、蛇腹状筒体の折り返し面同士の間隔を狭めると、元の状態に戻ろうとして折り返し面同士の間隔を拡げるように作用する。また、山折り部62が切削領域となり、血管内壁に付着する異物を容易に切削することができる。
【0110】
また、蛇腹状円錐体もしくは蛇腹状角錐体とした場合、外径の小さい一端側と外径の大きい他端側とで切削領域となる山折り部同士の間隔変化の相違が顕著であるが、吸引カテーテルの先端部となる一端側において動力受付部からの動力の伝達を受けることで、一端側の切削領域の間隔を効率良く優先的に変化させ、血管内壁に付着する異物を切削することができる。
【0111】
また、図16において、板ばね部材72を複数用いた蛇腹状体からなる切削部71が示されている。
図16(A)及び(B)に示すように、板ばね部材72は、平面部材が前後に湾曲した側面視弓形状をしており、正面視中央付近に、動力伝達杆を挿通するための孔部75を備える。すなわち、板ばね部材72は側面視直線状に近づくように伸張させた場合、元の湾曲した側面視弓形状に戻ろうとするバネ弾性を有している。
【0112】
また、図16(C)に示すように、切削部71は、板ばね部材72がその向きを表裏交互に変えながら複数重ねて配されると共に、その接縁部を接合することにより構成したものとして示されている。すなわち、切削部71は、接合された複数の板ばね部材72が湾曲する大きさの変化に応じてバネ弾性が生じるものとなっている。具体的には、二つの板ばね部材72同士の間隔を狭めると、湾曲する板ばね部材72は側面視直線状に近づくように伸張するものなるが、板ばね部材72は元の湾曲した状態に戻ろうとして二つの板ばね部材72同士の間隔を拡げるように作用するバネ弾性を有する。
【0113】
この切削部71は、二つの板ばね部材72が接続された上縁72a部分が異物の切削領域となり、吸引カテーテルにおける先端ケース部の開口部より上縁72aが露呈し、先端ケース部内において軸方向に可動するように配される。
また、切削部71は、上述した第1乃至第5の実施の形態における異物切削手段と同様に、外部より動力を受けて切削部71を従動させる動力受付部と、切削部71と動力受付部とを連結し、動力受付部が受けた動力を切削部71に伝達する動力伝達杆33と共に異物切削手段を構成し、一端71aが、動力伝達杆33と連絡されると共に、他端71bが、先端ケース部の基端側において内壁面に固定されたものとなっている。
【0114】
ゆえに、このような板ばね部材72を複数用いて蛇腹状体とした切削部は、板ばね部材72によってバネ弾性を確保しながら、上縁部が切削領域となり、血管内壁に付着する異物を容易に切削することができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、血管内に挿入して血栓等の異物を吸引して除去する療法に用いられる吸引カテーテルを扱う業種において産業上有用であり、特に、脳や心臓の動脈、四肢の動脈と静脈における血栓を対象として吸引除去する吸引カテーテルにおける市場において有用である。
【符号の説明】
【0116】
BV 血管、BC 異物(血栓)、1 カテーテル本体、2 先端ケース部、2a 先端内面、3 異物切削手段(螺旋状体)、4 開口部、5 係止部、6 回収路、7 ガイドワイヤ腔、8 弾性管(ゴム製チューブ)、9 圧迫子、10 吸引カテーテル、11 管腔、21 先端斜面、31 切削部、31a 一端、31b 他端、32 動力受付部、33 動力伝達杆。
【要約】      (修正有)
【課題】吸引カテーテルの先端側において血管の内部に生じた血栓等の異物を効果的に切削することができ、切削後の異物を直ちに吸引して回収する。
【解決手段】内部に管腔11を有する可撓性の長尺体からなるカテーテル本体1と、カテーテル本体1の先端部1aに位置し、異物を回収する開口部4を有する先端ケース部2と、この開口部4より一部が露呈し、先端ケース部2内において軸方向に可動する異物切削手段3から構成されている吸引カテーテル10において、異物切削手段3の切削部31は、一端31aが先端ケース部2の先端側において動力伝達杆33と接続され、他端が先端ケース部2の基端側において内壁面に固定されている。ゆえに、動力受付部32が受けた動力は、動力伝達杆33を介して切削部31の一端側に効率良く優先的に伝達され、吸引カテーテル10の先端側において異物を効果的に切削することができる。
【選択図】図1
図1
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図5
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図18