(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体伝動装置(10)のロックアップクラッチ(12)であって、流体伝動装置(10)は、主軸(X−X)の周りに少なくとも一つの第1要素(44,46)を含み、少なくとも一つの第1要素(44,46)は、第2要素(14A,36)の第2摩擦表面(S2)と選択的に協働するように構成される第1摩擦表面(S1)を有し、関節接合手段(50)は一方において、そしてシール手段(56)は他方において、第1要素(44,46)の近位支持面(52)と隣接要素(36,14A)の遠位支持面(54)との間に軸方向にそれぞれ配置され、主軸(X−X)に直交して環状に延びる第1要素(44,46)及び隣接要素(36,14A)は、トルクを前記要素(44,46,14A,36)の間で伝達するようになっている連結手段(60)を介して回転可能に連結され、
回転連結手段は弾性舌部(60)から成り、第1要素(44,46)と隣接要素(36,14A)との間で環状に延びる弾性舌部(60)は、第1要素(44,46)に連結される少なくとも一つの第1接合部分と、隣接要素(36,14A)に連結される少なくとも一つの第2接合部分とを含み、前記舌部(60)は、軸方向に弾性変形して、第1要素(44,46)が隣接要素(36,14A)に対して関節接合手段(50)を周って移動することができるようになっており、
弾性舌部(60)から軸方向に弾性戻り力が作用し、この弾性戻り力は、該戻り力によって、次の要素:前記第1要素(44,46)または前記隣接要素(36,14A)のうちの一方の要素によって支持される関節接合手段(50)と、上に挙げた要素:第1要素(44,46)または隣接要素(36,14A)のうちの他方の要素の支持面(52,54)との間の恒久的な接触が確保されるようになっていることを特徴とする、ロックアップクラッチ。
関節接合手段(50)は、環状隆起部により形成され、この環状隆起部は、次の面のうちの一方の面に対して軸方向に突出し、一方の面は、第1要素(44,46)の近位支持面(52)または隣接要素(36,14A)の遠位支持面(54)のいずれかであり、該環状隆起部の頂部は、上に挙げた面のうちの他方の面と協働し、他方の面は、隣接要素(36,14A)の軸方向対向遠位支持面(54)、または第1要素(44,46)の近位支持面(52)のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載のロックアップクラッチ。
シール手段(56)は、第1要素(44,46)と隣接要素(36,14A)との間で作用する関節接合手段(50)により形成されていることを特徴とする、請求項2に記載のロックアップクラッチ。
シール手段(56)は、少なくとも軸方向に弾性変形可能であり、前記シール手段(56)は、漸進的作用手段を形成していることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載のロックアップクラッチ。
各弾性舌部(60)は、該舌部の端部(61,63)の間を直線分布または曲線分布に従って、周方向に延びていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のロックアップクラッチ。
弾性舌部(60)は、これらの舌部によって回転可能に連結される要素(44,46)から分離されていることを特徴とし、各舌部(60)の端部(61,63)のうちの一方の端部(61)は、第1要素(44,46)に第1固定手段(62)を介して固定される第1接合部分を形成し、端部(61,63)のうちの他方の端部(63)は、隣接要素(36,14A)に第2固定手段(64)を介して固定されている第2接合部分を形成していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のロックアップクラッチ。
弾性舌部(60)は、各一体化構造舌部(60)が少なくとも一つの接合部分を介して連結された連結先の第1要素(44,46)または隣接要素(36,14A)との一体品であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載のロックアップクラッチ。
第1要素(44,46)は、サポートディスク(44)及び/又は摩擦フェーシング(46)により形成されており、第1要素(44,46)に回転可能に連結される隣接要素(36,14A)は、ピストン(36)により、または装置(10)のケーシング(14)の前方シェル(14A)により形成されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載のロックアップクラッチ。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、本発明に関連する関節接合手段、及びシール手段が配設されたこのようなロックアップクラッチの一つの実施形態を含む流体伝動装置が記載されている。
【0004】
特許文献1では、ロックアップクラッチは、サポートディスクと呼ばれ、かつ第1摩擦表面を有するディスクにより形成される第1要素を含み、このディスクに固定されている摩擦フェーシングの一部である第1摩擦表面は、作動位置(クラッチ係合状態)で、第2要素の第2摩擦表面と
協働している。
【0005】
第1摩擦表面と軸方向に対向する第2摩擦表面は、環状第1摩擦表面に対し、全体として平行である。
【0006】
「片側」タイプのクラッチの場合(
図1及び2)、第2要素は、ケーシングの複数のシェルのうちの一つのシェルであり、このシェルの壁の環状部分は、第2摩擦表面を形成している。
【0007】
「両側」タイプのロックアップクラッチの場合(
図3)、第2要素は摩擦ディスクであり、摩擦ディスクは、第1要素とケーシングのシェルとの間に軸方向に配置され、かつ2つの摩擦フェーシングを有する。
【0008】
従って、これらの摩擦フェーシングのうちの一方の摩擦フェーシングの環状面は、第2摩擦表面を形成し、この第2摩擦表面は、第1要素の第1摩擦表面と
協働するように構成されるのに対し、他方の摩擦フェーシングの環状面は、第3摩擦表面を形成し、この第3摩擦表面は、ケーシングのシェルの壁の環状部分により形成されている第4摩擦表面と
協働するようになっている。
【0009】
上述のタイプの各ロックアップクラッチでは、第1要素を形成するサポートディスクは、ピストンにより形成されている隣接要素に、回転可能に連結されている。
【0010】
サポートディスクは、近位支持面を有し、この近位支持面は、摩擦フェーシングを支持する面とは軸方向の反対側に位置し、かつピストンの遠位支持フェーシング面に、全体として平行に環状に延びている。
【0011】
サポートディスクは関節接合手段を有し、この関節接合手段は、近位支持面から軸方向に突出し、かつピストンの遠位支持面と
協働することにより関節接合部を形成し、この関節接合部は、サポートディスクとピストンとの間の相対移動を可能にするようになっている。
【0012】
リップ状シール部材の形態のシール手段が、サポートディスクの近位面とピストンの遠位面との間に配置され、ピストンをその静止位置(クラッチ解放状態)から、その作動位置(クラッチ係合状態)へ軸方向に移動させるために必要な密閉状態を形成している。
【0013】
上の特許文献1では、第1要素を形成するサポートディスクは、隣接要素を形成するピストンに噛合連結手段を介して回転可能に連結されている。もっと正確に表現すると、サポートディスクは、ピストンを貫通して軸方向に延びる突起部を有し、ピストンは、この突起部を受け入れるために、駆動突起部が貫通する突起部収納用ハウジングを有している。
【0014】
しかし、このような連結手段は、以下に説明する種々の理由により、完全に満足しうるものではない。
【0015】
このような噛合回転連結手段を用いる場合、突起部とハウジングとの間の形状嵌合接続は、ある程度の半径方向の遊び、及び/又は軸方向の遊びを有する状態で必ず行なわれ、サポートディスクがピストンに対して関節接合手段を介して移動することができる状態を保持するようになっている。
【0016】
従って、サポートディスクがピストンに対して移動することにより、大きな摩擦が、突起部及びハウジングにより形成される連結手段に発生し、そのため、摩耗の問題が生じる。
【0017】
更に、このような噛合連結手段は、突起部及びハウジングを形成するための作業が必要になるため、また、例えばこれらの部品の硬度を、高めるための処理を、後に施すために、製造コストが非常に高く付く。
【発明を実施するための形態】
【0038】
便宜上、前後はそれぞれ、
図1の主回転軸X−Xにおける左方及び右方を言い、この回転軸X−Xは、「半径方向の」向きとは異なる「軸方向の」向きを定め、「半径方向の」向きは、「軸方向の」向きと直交し、かつ三次元(L、V、T)的に延びている。
【0039】
「exterior/external」及び「interior/internal」という用語は、半径方向の向きが垂直方向に対応するときの、従って主軸X−Xを基準にしたときの別の要素に対する一つの要素の位置を定義するために使用され、軸X−Xに近い要素は、半径方向最外側に位置するexternal element(外側要素)とは反対に、内側(internal)に位置すると見なされる。
【0040】
図1は、ロックアップクラッチ12を含む流体伝動装置10、特に自動車用の流体伝動装置10を示している。
【0041】
図1に示すロックアップクラッチ12は、「片面」クラッチであるが、このように呼ばれるのは、このクラッチが、2つ以上の摩擦面を有するために、両面または多面クラッチと呼ばれるものとは異なり、摩擦フェーシングを1つしか備えていからである。
【0042】
従って、流体伝動装置10の「片面」タイプのロックアップクラッチ12は、本発明の1つの可能な、かつ非制限的な実施例を示しているのに過ぎない。
【0043】
流体伝動装置10は、主回転軸X−Xを有し、この回転軸の周りに、種々の構成部品が配置されている。
【0044】
流体伝動装置10は、後方側の第1シェル14B、及び前方側の第2シェル14Aにより形成される密閉ケーシング14を有している。前記シェルは、溶接で組み付けることが好ましい。
【0045】
ケーシングの後方シェル14B及び前方シェル14Aは、トルクコンバータ18、ロックアップクラッチ12、及びダンパー装置20を含む装置10の内部容積16を画定している。
【0046】
トルクコンバータ18は、リアホイールまたはインペラホイール22と、フロントホイールまたはタービンホイール24と、そして好ましくは、中央ホイールまたはリアクションホイール26とを備えている。
【0047】
インペラホイール22は、複数のベーン22aを有し、これらのベーン22aは、ケーシング14の後方シェルまたは第1シェル14Bで支持され、シェルは、ケーシング14の前方シェルまたは第2シェル14Aと共に回転するようになっている。
【0048】
前方シェルまたは第2シェル14Aは、回転可能に駆動シャフト(図示せず)に、特に連結手段を介して連結され、連結手段は、一方では、ナットを構成する連結手段15を、そして他方では、センタリング部材17を有している。
【0049】
連結手段15は、例えば前方第2シェル14Aの前方ラジアル面に溶接され、装置10を、エンジンの可撓性フランジまたはフライホイール(図示せず)に固定するネジを受け入れるように構成されている。
【0050】
後方シェルまたは第1シェル14Bと共に回転するようになっている前方シェルまたは第2シェル14Aは、駆動シャフトとコンバータのインペラホイール22との間の連結部となっている。
【0051】
タービンホイール24は、インペラホイール22のベーン22aと軸方向に対向するベーン24aを有し、インペラホイール22がタービンホイール24の回転を、ケーシング14の容積16に含まれる流体、普通はオイルがベーン22aと24aとの間を循環することにより駆動するようになる。
【0052】
タービンホイール24は、装置10の主軸X−Xと同軸である被駆動シャフトA2に回転可能に連結されている。前記回転可能な連結は、少なくとも一つの中間部品によって可能になる遊びなしの連結であり、これらの中間部品は、被駆動シャフトA2及びタービンホイール24のそれぞれに回転可能に連結されるように適合させると有利である。
【0053】
前記中間部品は、タービンハブ28であることが好ましく、このタービンハブ28は、タービンホイール24を被駆動シャフトA2に回転可能に連結する。
【0054】
自動車用の場合、駆動シャフトは、車両の内燃機関のクランクシャフトから成り、そして被駆動シャフトA2は、ギアを変える手段に従来方法で連結されている車両のトランスミッションの入力シャフトである。
【0055】
タービンハブ28と被駆動シャフトA2との間の回転駆動は、従来の方法で、軸方向スプラインと、一方及び/又は他方にそれぞれ形成されている溝との形状嵌合接続により可能になる。
【0056】
被駆動シャフトA2は、その前端部に、面取り部を有すると有利であり、この面取り部は、タービンハブ28とシャフトA2との間に半径方向に配置されるシール手段を、溝及びスプラインが噛み合う部分の前方で軸方向に取り付ける作業を容易にするように構成される。
【0057】
流体伝動装置10は更に、トルクコンバータ18とロックアップクラッチ12との間に軸方向に配置されるダンパー装置またはダンパー20を含むと有利である。このようなダンパー20の構造、及び当該ダンパーの取り付けは、用途によって変わる。
【0058】
しかしながら、ダンパーの構造とは関係なく、このようなダンパー20は基本的には、入力要素30及び出力要素32を含み、これらの要素の間に、円周方向付勢バネ手段34が配置される。
【0059】
ダンパー20の入力要素30及び出力要素32は普通、ガイドワッシャー(群)及びシェル、または逆に、シェル及びガイドワッシャー(群)とそれぞれ表記される部品から成っている。
【0060】
図1に示す実施形態では、ダンパー20は環状方向の出力要素32を含み、この出力要素32には、当該要素の外側端部に、曲げることにより形成される軸方向突起部33が付設され、この出力要素32は、円周方向付勢バネ部材34と
協働するように構成され、この出力要素32の内端部は、タービンホイール24とハブ28に、回転可能に連結されている。
【0061】
出力要素32は、タービンホイール24のシェルの内側端部に圧着されることが好ましい。
【0062】
軸方向断面では、タービンハブ28は全体としてL字形であり、環状部品及び軸方向部品を含む。
【0063】
ダンパー20の出力要素32の半径方向内側端部は、ハブ28の環状部品に溶接接続されて、タービンハブ28、及びタービンホイール24のシェルは、回転可能にダンパー20の出力要素32を介して連結されるようになり、この出力要素32は、これらの部品の間に軸方向に配置され、かつこれらの部品の各部品に固定される。
【0064】
円周方向付勢バネ手段34は、コイルバネ、例えば適宜予め屈曲させたコイルバネにより形成され、ダンパーの入力要素30と出力要素32との間に配置される。
【0065】
入力要素30は、ロックアップクラッチ12のピストン36に、例えばピストン36にリベット留めされるフラットリング状の第1半径方向内側部分を介して回転可能に連結される。
【0066】
入力要素30は、全体として半ドーナツ形をした第2半径方向外側部分を含み、第2半径方向外側部分のほとんどは、ピストン36で画成される空間の内部に位置する。
【0067】
軸方向断面では、入力要素30の第2部分は、後方に向かってタービンホイール24の方向に軸方向に開放される凹部を画成し、かつ円周方向付勢バネ手段34を収容する周方向溝を形成するC字形状を有する。従って、バネ手段34は周方向に案内され、かつ軸方向に入力要素30によって保持される。
【0068】
図1から分かるように、入力要素30の第2部分は、タービンホイール24のシェル、及びタービンハブ28に連結される出力要素32の突起部33が軸方向に通過する開口を含む。
【0069】
バネ部材34は、一方における出力要素32の突起部33と、他方における入力要素30のC字形第2部分に、この技術分野で公知の方法で、切断及び/又は加圧プロセスによって形成される駆動突起部31との間に配置される。
【0070】
出力要素32の突起部33は、バネ部材34と接触する領域に、センタリングスタッド及び保持スタッドを含むと有利であり、これらのスタッドは、各バネ部材34の最終巻回部を貫通する。
【0071】
ロックアップクラッチ12のピストン36は、静止位置(クラッチ解放状態)と作動位置(クラッチ係合状態)との間を軸方向に移動するように取り付けられ、そしてケーシング14の前方シェルまたは第2シェル14Aを被駆動シャフトA2に解除可能に連結するようになっている。
【0072】
流体伝動装置10の動作には、「変換段階」と呼ばれる第1段階、及び「連結段階」と呼ばれる第2段階が含まれる。
【0073】
変換段階では、駆動シャフトトルクは、ケーシング14を介して、インペラホイール22に伝達され、インペラホイール22は、オイルをベーン22aと24aとの間で循環させることにより、タービンホイール24を駆動する。
【0074】
この変換段階では、ダンパー20は、装置10を含むエンジン(図示せず)の非周期性により主として発生する、ねじれ振動またはねじれ揺動の減衰にほとんど全くと言ってよいほど寄与することがない。
【0075】
ねじれ振動またはねじれ揺動は、コンバータ18内のオイルによって抑制されるが、その理由は、エンジントルクがコンバータ18内のオイルの運動エネルギーを介して伝達されるからである。
【0076】
図1の実施形態では、トルクは、タービンホイール24から被駆動シャフトA2にダンパー20及びタービンハブ28を介して直接伝達される。
【0077】
連結段階では、ピストン36の両面のオイル圧差によって、ピストン36は軸方向に後方から前方に向かって移動し、摩擦表面S1、S2を軸方向に一体に固定する。
【0078】
インペラホイール22とタービンホイール24との間で、滑りが生じることにより生じる効率損失を回避するために、ロックアップクラッチ12は普通、車両を始動した後に、かつ駆動シャフトと被駆動シャフトA2との油圧結合を行なった後に作動させる。
【0079】
ピストン36は、タービンハブ28の軸方向部分に対して軸方向に移動し、当該部分は、出力要素32に、かつタービンホイール24のシェルに固定されているタービンハブの他の環状部分の前方で軸方向に延びる。
【0080】
ピストン36は、当該ピストンの内側周囲に、ハブ28の形状と同様のL字形第1部分を有し、当該L字形第1部分の軸方向を向く部分は、バレル37を構成し、このバレル37は、前方に向かって軸方向に延び、かつセグメントまたはシールのような密閉ハブ38と
協働する。
【0081】
シール手段38は、ブッシュ37により形成されるピストン36の内側摺動面と、ハブ28のフェーシング表面との間に配置されることにより、制御チャンバと呼ばれる第1チャンバ40と、タービンチャンバと呼ばれる第2チャンバ42との間の密閉を可能にする。
【0082】
シール手段38は、ハブ28によって支持され、別の構成として、ピストン36によって支持され、かつハブ28の環状溝に収容され、この環状溝は好ましくは、端部に面取り部を有し、シール手段38の取り付けを、この手段を溝の巣に収容することにより、容易にしている。
【0083】
ピストン36は、外側に、かつ第1部分を超えて環状中間第2部分、この場合はC字形第2部分を有し、この第2部分は、ケーシングの前方シェル、または第2シェル14Aの形状にほぼ従った形状を有し、かつダンパー20を収容する空間を画成し、さらに環状直線第3部分で終端する。
【0084】
ピストン36は、選択的に移動して結合するように指示され、すなわちピストン36が、当該ピストンの作動位置に移動するように指示されるようになっており、この作動位置では、当該ピストンは、第1要素の少なくとも第1摩擦表面S1を、第2要素の関連する第2摩擦表面S2に対して軸方向に押し付ける。
【0085】
図1に示す第1の実施形態では、前記第1要素は、サポートディスク44であり、このサポートディスク44は環状前面を有し、この前面には、前記第1摩擦表面S1を形成する前面を有する摩擦フェーシング46が、接着により取り付けられている。
【0086】
第2要素は、前方シェルまたは第2シェル14Aから成り、第2シェル14Aの後方環状面または壁48は、第1摩擦表面S1と選択的に
協働するようになっている第2摩擦表面S2を形成している。
【0087】
ロックアップクラッチ12は関節接合手段50を含み、この関節接合手段50は、サポートディスク44により形成される第1要素の近位支持面52と、ピストン36により形成される隣接要素の遠位支持面54との間に軸方向に配置されている。
【0088】
近位支持面52は、サポートディスク44の環状後面により形成され、この後面は、摩擦フェーシング46を支持する環状前面とは軸方向に反対側に位置するのに対し、遠位支持面54は、ピストン36の外側第3部分の環状前面により形成されている。
【0089】
ロックアップクラッチ12は更にシール手段56を含み、このシール手段56は、第1要素を形成するサポートディスク44の近位支持面52と、隣接要素を形成するピストン36の遠位支持面54との間に軸方向にそれぞれ配置されている。
【0090】
シール手段56は、例えば環状シールであるのが有利であり、ピストン36によって支持されるこの環状シールは、ピストン36の溝58に取り付けられ、かつピストン36とサポートディスク44との間の軸方向空間の中を軸方向に延びて、ディスク44の近位支持面52と
協働している。
【0091】
この場合、軸方向断面では、シール56は、全体として円形の断面またはO字形の断面を有するか、X字形断面またはY字形断面を有するリップ状のものである。
【0092】
シール手段56は、エラストマー材料により形成されていることが好ましい。従って、シール手段56は弾性変形可能であり、この性質は、サポートディスク44がピストン36に対して、関節接合部50を周るように回転する場合に特に有利である。
【0093】
シール手段56は、ピストン36を結合させると軸方向に圧縮され易い。
【0094】
シール手段56は、特定の剛性を有し、かつ密閉作用及び漸進的作用の2重機能を提供すると有利である。
【0095】
ロックアップクラッチ12は、摩擦フェーシング46とサポートディスク44との間に、またはサポートディスク44とピストン36との間に、すなわち近位支持面52と遠位支持面54との間に軸方向に配置される漸進的作用手段を含むことが好ましい。
【0096】
サポートディスク44及びピストン36は、主軸X−Xを中心として環状に、すなわち主軸X−Xと直交する方向に延びている。
【0097】
第1要素を形成するサポートディスク44、及び隣接要素を形成するピストン36は、連結手段60を介して回転可能に連結され、この連結手段60は、トルクを前記要素44と36との間で伝達するようになっている。
【0098】
本発明によれば、回転連結手段は複数の弾性舌部60から成り、この弾性舌部60は、サポートディスク44とピストン36との間で環状に延び、軸方向に弾性変形して、サポートディスク44により形成される第1要素の関節接合手段50を回って、隣接要素を形成するピストン36に対して相対移動することができるようになっている。
【0099】
弾性舌部60は、全体として環状平面(V,T)で延び、サポートディスク44とピストン36とを軸方向に連結し、サポートディスク44とピストン36との間に、これらの舌部60が配置されている。
【0100】
この弾性舌部60は、摩擦面46により支持される第1摩擦表面S1の下の第1要素44の半径方向内側周辺部に配置されている。
【0101】
別の構成として、これらの弾性舌部60は、第1要素44または隣接要素36の半径方向外側周辺部に配置される。すなわち、例えば摩擦フェーシング46により支持される摩擦表面S1の半径方向上方に配置されている。
【0102】
第1の実施形態では、
図3に示すように、これらの弾性舌部60は、ディスク44及びピストン36とは別体であり、周方向に一定の間隔で分布されている。
【0103】
偶数個の弾性舌部60、例えばこの場合は8個の舌部、別の構成として2,4,または6個の舌部を設けると有利であり、これらの舌部はペアで配置され、1ペアとして設けられる舌部は、主軸X−Xの反対側に直径方向に対向配置されている。
【0104】
別の構成として、奇数個の弾性舌部60、例えば周方向に等間隔に位置する3個または5個の舌部を設ける。
【0105】
これらの弾性舌部60の各舌部は、一括して連結されて単体アセンブリを形成する少なくとも2つの舌部のアセンブリから成ることが好ましい。
【0106】
これらの弾性舌部60の各舌部は、サポートディスク44により形成される第1要素に連結されている少なくとも一つの第1接合部分と、ピストン36により形成される隣接要素に連結される一つの第2接合部分とを含んでいる。
【0107】
第1の実施形態では、第1及び第2連結部分は、各舌部60の周方向端部61及び63である。従って、舌部60の端部61は、サポートディスク44に第1固定手段62を介して固定されるのに対し、他方の端部63は、ピストン36に第2固定手段64を介して固定されている。
【0108】
第1固定手段62及び第2固定手段64は、リベットであるのがよい。
【0109】
別の構成として、リベット64は、押し出し成形リベットであり、そしてピストン36に挿入することができるように形成され、前記リベットはピストン36の第2固定手段64を形成し、そして第2連結部分は、これらの舌部60の各舌部の端部63により形成されている。
【0110】
別の構成では、各舌部60のいずれかの接合部、または両方の接合部の固定手段は、他の適当な手段、例えば圧着手段または溶接手段とされる。
【0111】
舌部60の端部61を固定するために、サポートディスク44は突起部66を有し、この突起部66には、リベット62が貫通する中心開口が設けられ、突起部は、ディスクの内側円形稜線から内側に半径方向に延びている。
【0112】
舌部60の固定突起部66は、周方向に一定の間隔で分布してあることが好ましい。
【0113】
舌部60の端部63を固定するために、ピストン36には、リベット64を挿通するための軸方向孔68が設けられている。
【0114】
弾性舌部60は、屈曲させることにより、舌部60の端部61及び63が、自由な状態において、かつこれらの端部が固定される前に、同じ環状平面に配置されるということがないようにすると有利である。
【0115】
それぞれの舌部60をサポートディスク44及びピストン36に固定した後、サポートディスク44に固定される第1接合部分は、全体として、第1要素を形成するディスク44により画成される第1環状平面に配置され、ピストン36に固定される第2接合部分は、ほぼ第2環状平面に配置され、隣接要素を形成するピストン36により画成される第2環状平面は、第1平面に全体として平行であり、かつ第1平面に対して軸方向にずれている。
【0116】
関節接合手段50は、ピストン36の遠位支持面54に対して軸方向に突出する環状隆起部、及び当該遠位支持面に軸方向に対向するサポートディスク44の近位支持面52と
協働する頂部により形成すると有利であり、前記隆起部50は周方向に連続している。
【0117】
別の構成として、関節接合手段50をサポートディスク44に固定し、サポートディスク44の近位支持面52から隆起部50が、当該近位支持面が
協働するピストン36の遠位支持面54の方向に軸方向に突出している。
【0118】
従って、関節接合手段50は、要素44,36のうちの一方または他方の要素によって支持され、これらの要素の間に、関節接合手段が軸方向に配置されている。
【0119】
隆起部50は、ピストン36との一体化部材とすると有利である。
【0120】
環状隆起部50は、特に隆起部の頂部を機械加工して、関節接合部を形成する接触表面に関して高い精度が得られるように形成することが好ましい。
【0121】
環状隆起部50を機械加工することにより、隆起部50がシール機能を果たす場合には、良好な表面状態を正確に得ることができるという利点も得られる。
【0122】
別の構成として、関節接合手段50を、サポートディスク44またはピストン36に固定されるリングのような部材から成るものとすることもある。
【0123】
図示しない別の構成では、第1要素44と隣接要素36との間で作用するシール手段56は、関節接合手段50を形成する環状隆起部から成り、この隆起部の頂部に対して、サポートディスク44の近位支持面52が弾性舌部60を介して押し付けられている。
【0124】
弾性舌部60は、軸方向に弾性戻り力をディスク44とピストン36との間に発生させるので有利である。
【0125】
各弾性舌部60は、少なくとも一つの舌部、または舌部群により形成されることが好ましく、また各弾性舌部60は、当該舌部60bの端部61と63との間を周方向に、全体として曲線状に延びていることが好ましい。
【0126】
別の構成として、各弾性舌部60は、当該舌部60bの端部61と63との間を周方向に、全体として直線的に、または直線状に延びていてもよい。
【0127】
各直線状舌部60は、サポートディスク44の内側円形稜線の接線方向に延びていることが好ましい。
【0128】
勿論、第1要素をサポートディスク44により形成し、かつ隣接要素をピストン36により形成した本発明の第1の実施形態は、単に本発明の一つの非制限的な例である。
【0129】
ロックアップクラッチ12が「片側」タイプである場合の図示しない別の構成では、第1要素がサポートディスク44により形成され、このサポートディスク44は、弾性舌部60を介して、ケーシングの前方シェルまたは第2シェル14Aにより形成される隣接要素に回転可能に連結されている。
【0130】
このような変形例では、遠位支持面54は、ケーシングの前方第2シェル14Aの壁48であり、第1摩擦表面S1は、第2要素を構成するピストン36の前方環状面である第2摩擦表面S2と
協働するようになっている。
【0131】
少なくとも第1摩擦表面S1は、例えば接着により、サポートディスク44の後方環状面に固定される摩擦フェーシング46に属し、サポートディスク44の前方環状面は、近位支持面52を形成しているのが好ましい。
【0132】
用途によって変わるが、摩擦フェーシング46は溝を含み、溝の形状は変えることができ、かつ溝によって、特に第2摩擦表面S2の近傍の冷却効率が高くなり、かつ滑りを抑制した状態での動作が可能になる。
【0133】
別の構成として、摩擦フェーシング46を設けることなく、第1摩擦表面S1を、サポートディスク44のうち、近位支持面52を形成しない方の環状面に直接形成することもある。
【0134】
次に、
図4に示す第2の実施形態について説明し、これを第1の実施形態と比較する。
【0135】
この第2の実施形態では、関節接合手段50は、ピストン36を加工成形することにより、非常に簡単かつ経済的に形成される。
【0136】
関節接合手段は、環状隆起部50により形成され、この環状隆起部50は、周方向に連続し、かつピストン36の遠位面54に固定されている。
【0137】
別の構成として、クラッチ12が個別のシール手段56及び関節接合手段50を含む場合、隆起部50は、周方向に不連続の、例えば複数の円弧部分により形成されている。
【0138】
サポートディスク44は、段部39を含むと有利であり、この段部39は、例えば当該ディスクの外側環状端部を曲げることにより形成され、後方に向かって軸方向に延び、ピストン36と一緒になってケージを画成し、このケージには、シール手段56が取り付けられている。
【0139】
シールのようなシール手段56がこのようにして収容されて、一方では、ディスク44の裾39の下側軸方向面と環状隆起部50との間で半径方向に当接し、他方では、サポートディスク44の近位支持面52、及びピストン36の遠位支持面54と軸方向にそれぞれ当接している。
【0140】
このようなシール手段56は、軸方向及び/又は半径方向に弾性変形するようになっている漸進的作用手段を構成していると有利である。
【0141】
シール手段56の変形、特にねじれ変形は、サポートディスク44とピストン36との「回転」運動を助長することにより、関節接合手段50の動作の向上に寄与する。
【0142】
サポートディスク44及びピストン36の回転連結手段を形成する弾性舌部60は、以下に説明する
図5及び6に示す実施形態のいずれかにおけるように、サポートディスク44との一体品として形成されることが好ましい。
【0143】
別の構成として、サポートディスク44及びピストン36の回転連結手段を形成する弾性舌部60を別体とし、かつ第1の実施形態に関して説明した舌部に類似するものとする。
【0144】
リベット64は、押し出し成形リベットとし、かつピストン36に挿入することができるように形成されると有利であり、前記リベットは、ピストン36、及びこれらの舌部60の各舌部の端部63により形成される第2連結部分を固定する第2固定手段64を形成する。
【0145】
本発明の弾性舌部60の異なる実施形態の詳細を、
図5に基いて説明する。
【0146】
この変形例について、弾性舌部60が個別の舌部であり、かつサポートディスク44及びピストン36により形成される要素とは別体である構成の第1及び第2の実施形態と比較しながら、次に説明する。
【0147】
この弾性舌部60は、一体品である各舌部60を、少なくとも一つの接合部分を介して連結するときに連結先となる第1要素または隣接要素との一体品として形成すると有利である。
【0148】
この弾性舌部60は、各舌部60を、当該舌部の周方向端部のうちの一方の端部61により形成される接合部分を介して連結するときに連結先となるサポートディスク44との一体品として形成することが好ましい。
【0149】
第2接合部分は、舌部60の他方の端部63により形成されると有利であり、他方の端部63は自由端であり、この自由端は、これらの前記要素のうち、隣接要素を形成するピストン36の近傍に位置する他方の要素に固定手段を介して回転可能に連結されるようになっている。
【0150】
固定手段は、適当な手段、好ましくは押し出し、または他の方法により形成されるリベットから成っている。
【0151】
弾性舌部60は、サポートディスク44の内側環状周辺部に切り込みを入れることにより形成されると有利であり、この場合、スロット70は、各舌部60とディスク44との間を周方向に延びて、サポートディスク44の軸方向の移動を可能にしている。
【0152】
図6は、前の実施形態において、第1要素または隣接要素との一体品として形成されている構成の弾性舌部60の別の例を示している。
【0153】
弾性舌部60は、第1要素を形成するサポートディスク44との一体品として、好ましくは切断プロセスによって形成されている。
【0154】
この変形例では、サポートディスク44との各弾性舌部60の第1接合部分は、この舌部の周方向端部61及び63により形成されている。
【0155】
ピストン36との各弾性舌部60の第2接合部分は、当該舌部60の中心部分65により、好ましくは、サポートディスク44との第1接合部分を形成する端部61及び63からほぼ等距離の位置に形成されている。
【0156】
各舌部60の中心部分65は、固定手段を介して、隣接要素を形成するピストン36に回転可能に連結されていることが好ましい。
【0157】
各舌部60の中心部分65の固定手段は、第1及び第2の実施形態におけるように、押出し成形、または他の方法により形成されたリベットとすると有利である。
【0158】
図示しない実施形態では、弾性舌部60は、摩擦フェーシング46との一体品であり、この摩擦フェーシング46は、サポートディスク44を設けなくても済む場合には、第1摩擦表面S1及び近位支持面52を含む第1要素を形成する。
【0159】
第1要素を形成するこのような摩擦フェーシング46は、一体品である舌部60を介して、ピストン36により形成されているか、またはケーシングの前方シェルまたは第2シェル14Aにより形成されている隣接要素に、回転可能に連結されている。
【0160】
弾性舌部60との一体品として形成されている摩擦フェーシング46は、ウーブンフェーシング(クラッチ板に張るために織って作った摩擦接触用表面材)、特に炭素繊維を織り込んで形成したフェーシングであることが好ましい。
【0161】
次に、装置10のロックアップクラッチ12の作用について、本発明の弾性舌部60の利点に関連させて、更に詳細に説明する。
【0162】
以下の記述では、第1及び第2の実施形態におけるように、弾性舌部60は、前記第1要素を形成する摩擦ディスク44と、前記隣接要素を形成するピストン36との回転連結部となる。
【0163】
作動時、駆動シャフトと被駆動シャフトA2の連結は、コンバータ18のインペラホイール22及びタービンホイール24を介して、変換段階における最初に行なわれ、その後、連結段階において、ロックアップクラッチ12を介して行なわれる。このロックアップクラッチ12は、作動することにより、インペラホイール22にケーシング14を介して連結される駆動シャフトが、ダンパー20、及びダンパーをタービンホイール24に連結するタービンハブ28を介して、被駆動シャフトA2に連結される。
【0164】
被駆動シャフトA2は、その前方自由端が開口する軸方向の中心孔を備えている。この孔は、制御チャンバ40と連通し、制御チャンバ40は、ケーシングの壁56、及びピストン36により軸方向に区切られ、制御チャンバ40には、前記ボアに接続された油圧回路から、オイルが圧送される。
【0165】
ロックアップクラッチ12のピストン36は、ピストン36のいずれかの側に加わる圧力、すなわち制御チャンバ40とタービンチャンバ42との間に加わる圧力を変えることにより制御され、ピストン36は、前方に向かって軸方向に、その静止位置からその作動位置へ移動して、第1摩擦表面S1を支持するピストン36と、第2摩擦表面S2を形成するケーシング14の壁56とを連結するようになる。
【0166】
油圧によって前方に向かって移動したピストン36が、摩擦フェーシング46を壁48に押し付けると、トルクが、ダンパー20を介して、駆動シャフトに連結されているケーシング14の前方シェルまたは第2シェル14Aの壁48から、被駆動シャフトA2に連結されるタービンホイール24に伝達される。
【0167】
ロックアップクラッチの最適な作動に対して、快適な、かつ楽しい運転体験に起こるのと同じ程度に有害な所定の現象が発生するのは、厳密に、第1摩擦表面S1及び第2摩擦表面S2が互いに対して接触して連結が行なわれる(クラッチ係合状態)ときである。
【0168】
主要な問題は、これらの摩擦表面のうちの一方の摩擦表面を支持するピストンが、当該ピストンに加わる圧力により、様々変形することに関連しており、これが、摩擦表面が作動範囲内の全ての圧力に亘って同一平面にならない理由である。
【0169】
この問題は「コーニング(coning)」として知られ、かつ摩擦表面S1とS2との接触圧が変化する際に現われる。具体的には、ピストン44が支持する摩擦フェーシング46の第1摩擦表面S1は、第2摩擦表面S2と平面対平面の接触構造をとることにより
協働するということがない。
【0170】
圧力が、例えば0.5〜2.5バール(bar)である場合、圧力は半径方向に摩擦フェーシングの全面に亘って一様に分布するということがなく、圧力のほとんどが、または圧力が局所的にさえ、摩擦フェーシングの半径方向内側周辺部に作用する。
【0171】
圧力は、半径方向に均一に分布するということがなく、そして摩擦によるトルク伝達は、摩擦フェーシングの半径方向内側周辺部を介して行なわれ、摩擦表面の全体を介して行なわれることがない。
【0172】
このような圧力では、摩擦フェーシング46及びピストン36は、後方斜めに傾き易い、すなわち摩擦フェーシング46の半径方向外側周辺部が、第2摩擦表面S2とほぼ
協働する半径方向内側周辺部よりも、軸方向の後ろ側になる。
【0173】
これとは異なり、加わる圧力が最大圧力である場合、例えばほぼ6.5バールである場合、この場合も同じように、圧力の半径方向分布が均一ではなく、かつ相対的に高い圧力が、摩擦フェーシングの半径方向内側周辺部に作用し、前のように内側周辺部に作用することがないことが判明している。
【0174】
従って、摩擦フェーシング46及びピストン36は、前方斜めに傾き易い、すなわち摩擦フェーシング46の半径方向外側周辺部が、第2摩擦表面S2とほぼ
協働する半径方向内側周辺部よりも、軸方向の前側になる。
【0175】
その結果、作動範囲の全体に亘って、摩擦表面S1及びS2は、作動範囲のうちの極めて限られた数の圧力値を除く圧力、例えば5.5バールを除く圧力、普通は、最大トルクが伝達される所定圧力を除く圧力に対してのみ、ほぼ同一平面になる。
【0176】
摩擦表面S1,S2でのこれらの接触面積変化及び不均一な圧力分布によって、これらの摩擦表面の局部加熱及び劣化が不規則で、大きな摩耗が生じる。
【0177】
加熱及び早期摩耗のこれらの現象は、摩擦フェーシング46の正常な作用、及び寿命に影響する。
【0178】
このような現象は多くの場合、エンジン速度またはギアチェンジによって変わる、クラッチ係合時(連結時)、及びクラッチ解放時のクラッチ12のスナッチングまたは振動の問題の原因となる。
【0179】
更に、これらの現象によって多くの場合、ケーシング内の油圧作動油は劣化する。
【0180】
従って、摩擦の不均一さは、ロックアップクラッチに対する正常な制御に全体的に影響し、そして多くの場合、音響的な不快さ、または振動の不快さの原因であるねじれ振動を発生させる。
【0181】
関節接合手段50及び弾性舌部60を組み合わせることによって、第1要素を形成するサポートディスク44は、隣接要素、例えばピストン36に対して、当該ピストンの位置に関係なく自由に動く。
【0182】
従って、ディスク44によって支持される摩擦フェーシング46は、環状隆起部50の上で回転し、従って動作中に、摩擦表面S1及びS2の摩擦
協働に影響する現象を補正して、これらの摩擦表面が圧力に関係なく、ほぼ同一の平面となるようにすると有利である。
【0183】
装置10のロックアップクラッチ12は、少なくとも軸方向に弾性変形することができ、かつエラストマーシールのようなシール手段56により形成されている漸進的作用手段を含んでいると有利である。
【0184】
漸進的作用によって特に、これらの摩擦表面が互いに対して接触するようになるときの、すなわち摩擦フェーシング46がケーシングのシェル14Aの壁48と連結するときのスナッチング(ギクシャクした振動)が少なくなる。
【0185】
従って、漸進的作用手段は、摩擦表面S1,S2での圧力の半径方向分布を更に向上させるように作用するので、当該分布が最適化され、そして均一になる。
【0186】
勿論、本発明は、決して、片側ロックアップクラッチに制限されることはなく、例えば両側ロックアップクラッチに適用することができる。
【0187】
両側ロックアップクラッチ(図示せず)の場合、第1要素はサポートディスク44により形成され、このサポートディスク44は、ピストン36により形成される隣接要素に回転可能に連結されるか、または別の構成として、ケーシングの前方シェルまたは第2シェル14Aに回転可能に連結される。
【0188】
第2要素は、隣接要素がピストン36により形成される場合のサポートディスク44により形成される第1要素と、ケーシングの前方シェルまたは第2シェル14Aとの間に軸方向に配置される摩擦ディスクから成り、前記摩擦ディスクは、2つの摩擦フェーシング46を備えている。
【0189】
従って、これらの後方側摩擦フェーシング46のうちの一方の摩擦フェーシングの円環面が、第1要素44の第1摩擦表面S1と
協働するように構成される第2摩擦表面S2を形成するのに対し、これらの前方側摩擦フェーシング46のうちの他方の摩擦フェーシングの円環面が、ケーシングの前方シェル、または第2シェル14Aの壁48の環状部により形成される第4摩擦表面と
協働するようになっている第3摩擦表面を形成する。
【0190】
サポートディスク44は近位支持面52を有し、近位支持面52は、摩擦ディスクの摩擦フェーシング46と
協働する円環面とは軸方向の反対側に位置し、かつピストン36の対向遠位支持面54と、全体として平行に円環状に延びている。
【0191】
隣接要素が、ケーシングの前方シェルまたは第2シェル14Aにより形成される構成の両側ロックアップクラッチの前述の実施形態では、第2要素を形成し、かつ好ましくは、2つの摩擦フェーシング46を含む摩擦ディスクは、隣接要素がケーシングの前方シェルまたは第2シェル14Aにより形成される場合のサポートディスク44により形成される第1要素とピストン36との間に軸方向に配置されている。
【0192】
この後方側摩擦フェーシング46のうちの一方の摩擦フェーシングの円環面は、第1要素44の第1摩擦表面S1と
協働するように構成される第2摩擦表面S2を形成し、この前方側摩擦フェーシング46のうちの他方の摩擦フェーシングの円環面は、ピストン36の環状部分により形成される第4摩擦表面と
協働するように構成された第3摩擦表面を形成している。
【0193】
サポートディスク44は近位支持面52を有し、近位支持面52は、摩擦ディスクのこれらの摩擦フェーシング46のうちの一方の摩擦フェーシングと
協働する円環面とは反対側に軸方向に位置し、かつケーシングの前方シェルまたは第2シェル14Aの壁48により形成された対向遠位支持面54と、全体として平行に円環状に延びている。
【0194】
異なる実施形態では、両側ロックアップクラッチ12は、2つの「第1要素」を含んでいる。すなわち、弾性舌部60を介して、ピストンに回転可能に連結された第1サポートディスク、及びケーシングの前方シェルまたは第2シェル14Aの壁48に回転可能に連結される第2サポートディスクを含んでいる。
【0195】
次に、軸方向関節接合手段50が、一方では、第1サポートディスク44の近位支持面とピストン36との間に、そして他方では、第2サポートディスクの近位支持面と壁48との間に配置されて、第1摩擦表面及び第4摩擦表面が関節接続サポートディスクにより支持されるようになる。