(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
流動層炉100に投入される廃棄物は、活発な流動層の中に取り込まれて燃焼若しくはガス化するが、廃棄物が間欠的に投入される度に廃棄物中の可燃物が急激に燃えることにより、発生する可燃性ガスの発生量や濃度等の急激な変動が繰り返される。このガス化反応は廃棄物の供給の定量性に大きく依存するため、廃棄物供給の変動やごみ質に変化がある場合、可燃性ガスを安定して発生させることができない。特に、廃棄物に紙やシート状のプラスチック等の燃え易いゴミが多く含まれる場合には、発生する可燃性ガスの変動がより大きくなり、その安定化が求められる。
【0007】
例えば、発生させた可燃性ガスをガスエンジンに用いて発電を行うような場合、可燃性ガスの変動が大きいと安定したエネルギーを得ることができないため、流動層炉において得られる可燃性ガスの安定化がより求められる。
【0008】
そこで、燃え易いゴミを含む廃棄物であっても可燃性ガスを安定して得ることができる流動層炉、及び廃棄物処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明は、廃棄物を加熱して当該廃棄物から可燃性ガスを取り出す流動層炉であって、廃棄物を加熱するための流動層を構成する流動粒子と、前記流動粒子を下方から支持する底壁およびこの底壁から立上がる側壁を有し、前記底壁においてその中心位置から特定方向に偏った位置に前記廃棄物中の不燃物及び前記廃棄物の加熱により生じた炭化物を前記流動粒子と共に排出するための混合物排出口が設けられ、この混合物排出口に向かって前記底壁の上面上を前記流動粒子を降下させるように当該底壁の上面が前記混合物排出口に向かって低くなるように傾斜する炉本体と、前記炉本体の底壁から前記流動粒子に向かって流動化ガスを吹き込むことにより当該流動粒子を流動化させるガス供給部と、前記側壁のうち前記底壁の中心位置に対して前記混合物排出口と同じ側に位置する供給側側壁から前記流動層上における当該供給側側壁に隣接する領域に前記廃棄物を供給し、これにより前記流動層上の廃棄物を前記側壁のうち前記底壁の中心位置を挟んで前記混合物排出口と反対側に位置する反対側側壁の側に移動させる廃棄物供給部と、を備える。そして、前記ガス供給部は、前記混合物排出口の周囲から前記流動化ガスを吹き込むことにより前記流動粒子の上側に廃棄物が滞留することが可能な程度の流動化度合いをもつ第1の流動領域を形成すると共に、この第1の流動領域と前記反対側側壁との間に前記第1の流動領域での流動化ガスの吹き込みの流速よりも高い流速で流動化ガスを吹き込むことにより、前記第1の流動領域よりも前記流動粒子の流動化の度合いが高く、これにより前記流動粒子が対流して前記廃棄物と混合することにより当該廃棄物をガス化させる第2の流動領域を形成し、前記廃棄物供給部は、前記第1の流動領域上に前記廃棄物が滞留し、且つ、その滞留した廃棄物が順次前記第2の流動領域内に進入するように、前記供給側側壁から前記流動層に対して廃棄物の供給を行うことを特徴とする。
【0010】
この流動層炉によれば、流動層に混合物排出口の周囲の第1の領域とこの第1の領域よりも流動化の度合いの高い第2の流動領域とが形成される一方、廃棄物が前記第1の流動領域上に滞留し、この第1の流動領域上に滞留した廃棄物が順に第2の流動領域側に送られるように廃棄物供給部が流動層上における供給側側壁に隣接する領域に廃棄物を供給することにより、流動層炉から回収される可燃性ガスの急激な変動を抑えながら廃棄物のガス化を十分に行い、これにより、廃棄物から可燃性ガスを安定して発生させることができる。
【0011】
具体的に、第1の流動領域では、その上面に廃棄物が滞留可能となるよう流動が抑えられているので、廃棄物が流動粒子と混合されずに第1の流動領域上に滞留しながら廃棄物中の燃え易いゴミがゆっくりガス化する。そのため、第1の流動領域では、廃棄物の急激な燃焼が抑えられ、これにより、廃棄物の急激なガス化による可燃性ガスの発生も抑えられる。この第1の流動領域上に滞留する廃棄物は、廃棄物供給部により炉本体内に新たな廃棄物が供給されることによって順に第2の領域に進入する。そうすると、この第2の流動領域では、流動が活発で且つ廃棄物の燃焼により高温であるため、第1の流動領域上から進入してきた廃棄物が流動粒子と十分に混合され、これにより、廃棄物が十分にガス化されて可燃性ガスが発生する。その結果、可燃性ガスの間欠的且つ急激な発生を抑え、当該ガスの発生を安定させることができる。
【0012】
また、混合物排出口の上方に第1の流動領域を形成してその上側に廃棄物を供給することで、この第1の流動領域上に滞留させて廃棄物中の燃え易いゴミをゆっくりガス化している間に前記廃棄物中の不燃物や前記廃棄物の加熱により生じた炭化物が炉底まで沈んでも、これらを炉本体から容易に排出することができる。しかも、廃棄物が第1の流動領域から第2の流動領域に進入してから不燃物や炭化物が底壁に沈んでも、混合物排出口に向って低くなるよう傾斜している底壁上面に沿って不燃物や炭化物が降下するため、これら不燃物及び炭化物を容易に排出することができる。
【0013】
また、底壁の上面が混合物排出口に向かって低くなるように傾斜(即ち、第2の領域から第1の領域に向って低くなるように傾斜)しているため、第2の流動領域の高温の流動粒子が底壁の上面上を第1の流動領域側に降下し、これにより、第1の流動領域に熱を供給することができる。
【0014】
前記廃棄物供給部は、前記第1の流動領域上に滞留する廃棄物に向けて前記供給側側壁から新たな廃棄物を横向きに押込み、これにより、前記第1の流動領域上に滞留する廃棄物を順次前記第2の流動領域内に進入させること、が好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、新たな廃棄物が第1の流動領域上に滞留する廃棄物に向けて横向きに押し込まれるため、この廃棄物に押されて第1の流動領域上に滞留する廃棄物を確実に第2の流動領域内に進入させることができる。
【0016】
流動層炉は、前記混合物排出口から排出された前記不燃物、前記炭化物、及び前記流動粒子の混合物から炭化物を分離して前記反対側側壁の側から前記流動層に戻す炭化物挿入装置を備えること、が好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、炭化物挿入装置が混合物排出口から流動粒子及び不燃物と共に排出された炭化物を流動が活発で且つ高温の第2の流動領域に戻すことにより、当該炭化物から可燃性ガスを得ることができる。その結果、廃棄物から効率よく可燃性ガスが得られる。また、炭化物がガス化されるときの熱によって第2の流動領域の温度を高温に維持することができる。
【0018】
尚、本発明に係る流動層炉において、前記流動粒子を流動化するための前記流動化ガスの吹き込みの最小流速である最小流動化速度をU
mf、当該流動化ガスの平均断面流速をU
0とすると、前記空気供給部は、前記第1の流動領域ではU
0/U
mfが1以上2未満となる流速で前記流動化ガスの吹き込みを行い、前記第2の流動領域ではU
0/U
mfが2以上5未満となる流速で前記流動化ガスの吹き込みを行うこと、が好ましい。このような流速での流動化ガスの吹き込みにより、好ましい第1の流動領域と第2の流動領域とを形成することができる。その結果、廃棄物の急激な燃焼を抑えながら当該廃棄物のガス化を好適に行うことができ、廃棄物から可燃性ガスを安定して得ることができる。
【0019】
前記混合物排出口から排出された前記混合物から前記流動粒子を分離し、この分離した流動粒子を前記炉本体内に戻す砂循環装置を備えること、が好ましい。
【0020】
このように、砂循環装置が混合物排出口から排出された混合物から高温の流動粒子を分離して炉本体内に戻すことにより、流動層を構成する流動粒子の量が維持されると共に流動層の温度が維持し易くなる。
【0021】
この場合、前記砂循環装置は、前記混合物から分離した流動粒子を前記第1の流動領域上に滞留する廃棄物の上に戻すこと、がより好ましい。
【0022】
このように、砂循環装置が混合物排出口から排出された高温の流動粒子を第1の流動領域上に滞留する廃棄物上に戻すことにより、この高温の流動粒子を着火源として廃棄物中の燃え易いゴミを安定燃焼(ガス化)させることができる。
【0023】
前記炉本体は、前記廃棄物供給部による前記廃棄物の押込み方向と直交する方向である幅方向の寸法が当該押込み方向について均一な平面形状を有すること、が好ましい。
【0024】
かかる構成によれば、第1の流動領域上の廃棄物が廃棄物供給部から新たに供給された廃棄物に押されて第2の流動領域側に進入するときに、炉本体のこの移動方向と直交する幅方向の寸法が均一であるため、前記廃棄物の移動が安定する。
【0025】
前記廃棄物供給部は、前記幅方向に延びる押込み面を有するプッシャと、このプッシャの押込み面が当該押込み面の幅方向全域にわたって同時に廃棄物を前記流動層上に押し込むように当該プッシャを前記押込み方向と平行な方向に往復動作させる駆動部とを有することが好ましい。
【0026】
かかる構成によれば、幅方向に均一に廃棄物を押し込むことができるため、第1の流動領域から第2の流動領域側への廃棄物の移動が幅方向において略均一となり、炉内の一部に廃棄物が集中することを防ぐことができる。
【0027】
また、上記課題を解消すべく、本発明は、廃棄物を加熱して当該廃棄物から可燃性ガスを取り出すための廃棄物処理方法であって、前記廃棄物を加熱するための流動層を構成する流動粒子と、この流動粒子を下方から支持する底壁およびこの底壁から立上がる側壁を有し、前記底壁においてその中心位置から特定方向に偏った位置に前記廃棄物中の不燃物及び前記廃棄物の加熱により生じた炭化物を前記流動粒子と共に排出するための混合物排出口が設けられ、この混合物排出口に向かって前記底壁の上面上を前記流動粒子が降下するように当該底壁の上面が前記混合物排出口に向かって低くなるように傾斜する炉本体とを有する流動層炉を用意する工程と、前記炉本体の底壁のうち前記混合物排出口の周囲の領域から前記流動粒子に向けて流動化ガスを吹き込むことにより前記流動粒子の上側に廃棄物が滞留することが可能な程度の流動化度合いをもつ第1の流動領域を形成すると共に、この第1の流動領域と前記側壁のうち前記底壁の中心位置を挟んで前記混合物排出口と反対側に位置する反対側側壁との間に前記第1の流動領域での流動化ガスの吹き込みの流速よりも高い流速で流動化ガスを吹き込むことにより当該第1の流動領域よりも前記流動粒子の流動化の度合いが高い第2の流動領域を形成する工程と、前記側壁のうち前記底壁の中心位置に対して前記混合物排出口と同じ側に位置する供給側側壁から前記流動層上における当該供給側側壁に隣接する領域に前記廃棄物を供給し、これにより、前記第1の流動領域上に前記廃棄物を滞留させ、且つ、その滞留した廃棄物を順次前記第2の流動領域内に進入させてガス化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0028】
この廃棄物処理方法によれば、流動層に混合物排出口の周囲の第1の領域とこの第1の領域よりも流動化の度合いの高い第2の流動領域とが形成される一方、廃棄物が前記第1の流動領域上に滞留し且つこの第1の流動領域上に滞留した廃棄物が順に第2の流動領域側に進入することにより、流動層炉から回収される可燃性ガスの急激な変動を抑えながら廃棄物のガス化を十分に行い、これにより、廃棄物から可燃性ガスを安定して発生させることができる。
【0029】
また、混合物排出口の上方に第1の流動領域を形成してその上面に廃棄物を供給することにより、この第1の流動領域上に滞留させて廃棄物中の燃え易いゴミをゆっくりガス化している間に前記廃棄物中の不燃物や前記廃棄物の加熱により生じた炭化物が炉底まで沈んでも、これらを炉本体から容易に確実に排出することができる。しかも、廃棄物が第1の流動領域から第2の流動領域に進入してから不燃物や炭化物が底壁に沈んでも、混合物排出口に向って低くなるよう傾斜している底壁上面に沿って不燃物や炭化物が降下するため、これら不燃物及び炭化物を容易に排出することができる。
【0030】
また、底壁の上面が混合物排出口に向かって低くなるように傾斜(即ち、第2の領域から第1の領域に向って低くなるように傾斜)しているため、第2の流動領域の高温の流動粒子が底壁の上面上を第1の流動領域側に降下し、これにより、第1の流動領域に熱を供給することができる。
【0031】
前記ガス化する工程では、前記第1の流動領域上に滞留する廃棄物に向けて前記供給側側壁から新たな廃棄物を横向きに押込み、これにより、前記第1の流動領域上に滞留する廃棄物を順次前記第2の流動領域内に進入させてガス化すること、が好ましい。
【0032】
かかる構成によれば、新たな廃棄物が第1の流動領域上に滞留する廃棄物に向けて横向きに押し込まれるため、この廃棄物に押されて第1の流動領域上に滞留する廃棄物を確実に第2の流動領域内に進入させてガス化することができる。
【0033】
当該廃棄物処理方法は、前記混合物排出口から排出される前記不燃物、前記炭化物、及び前記流動粒子の混合物から炭化物を分離して前記反対側側壁の側から前記流動層に戻す工程を備えること、が好ましい。
【0034】
かかる構成によれば、混合物排出口から流動粒子及び不燃物と共に排出された炭化物を分離して流動が活発で且つ高温の第2の流動領域に戻すことにより、この炭化物を確実にガス化することができる。また、炭化物をガス化したときの熱によって第2の流動領域の温度を高温に維持することが容易になる。
【0035】
尚、この廃棄物処理方法において、前記流動粒子を流動化するための前記流動化ガスの吹き込みの最小流速である最小流動化速度をU
mf、当該流動化ガスの平均断面流速をU
0とすると、前記第1の流動領域ではU
0/U
mfが1以上2未満となる流速で前記流動化ガスが吹込まれ、前記第2の流動領域ではU
0/U
mfが2以上5未満となる流速で前記流動化ガスが吹込まれること、が好ましい。このような流速での流動化ガスの吹き込みにより、好ましい第1の流動領域と第2の流動領域とを形成することができる。その結果、廃棄物の急激な燃焼を抑えながら当該廃棄物のガス化を好適に行うことができ、廃棄物から可燃性ガスを安定して得ることができる。
【発明の効果】
【0036】
以上より、本発明によれば、燃え易いゴミを含む廃棄物であっても可燃性ガスを安定して得ることができる流動層炉、及び廃棄物処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0039】
本実施形態に係る流動層炉は、高温の流動粒子によって廃棄物を加熱することにより、廃棄物から可燃性ガスを取り出す炉である。この流動層炉は、
図1に示されるように、流動粒子12と、炉本体20と、ガス供給部30と、廃棄物供給部40と、砂循環装置50と、炭化物挿入装置60と、を備える。
【0040】
流動粒子12は、炉本体20の内部において流動層14を構成し、廃棄物18を加熱するための粒子である。即ち、廃棄物18の一部の燃焼により加熱されて高温になった流動粒子12が廃棄物18と混合されることにより、廃棄物18がガス化されて可燃性ガスが発生する。本実施形態では、流動粒子12として珪砂等が用いられる。
【0041】
炉本体20は、流動粒子12を内部に有し、高温の流動粒子12により廃棄物18から可燃性ガスを取り出す部位である。炉本体20は、流動粒子12を下方から支持する底壁21と、この底壁21から立上がる側壁22と、側壁22上端に設けられた可燃性ガス排出部23とを有する。
【0042】
側壁22は、上下に延びる角筒形状を有する。具体的に、側壁22は、
図2にも示されるように、前後(
図2において左右)に間隔をおいて対向する前壁(供給側側壁)24及び後壁(反対側側壁)25と、これら前壁24と後壁25との端部同士をそれぞれ接続する横壁26,26と、を有する。横壁26,26同士は互いに平行である。即ち、炉本体20は、横壁26,26同士の間隔である幅方向の寸法が前後方向について均一な平面形状を有する。
【0043】
この側壁22のうち底壁21の中心位置に対して混合物排出口29と同じ側に位置する側壁(前壁)24には、流動粒子12を炉本体20内へ挿入するための砂挿入部27と、炉本体20内へ廃棄物18を挿入するための廃棄物挿入口28と、が設けられる。また、側壁22のうち底壁21の中心位置を挟んで混合物排出口29と反対側に位置する側壁(後壁)25には、廃棄物18の加熱により生じた炭化物(例えば、チャー等)を挿入するための炭化物挿入部63が設けられる。
【0044】
砂挿入部27は、炉本体20内の前壁24側の幅方向の中央部に流動粒子を挿入できるように(
図2参照)、前壁24の下部の幅方向中央部に設けられる。この砂挿入部27は、炉本体20の底壁21に支持される流動粒子12(流動層14)の上方から流動層14(詳しくは、当該流動層14上に供給されて滞留する廃棄物18)に向けて流動粒子12を投入できる高さ位置に設けられている。砂挿入部27がこのような位置に設けられることにより、流動層14上に滞留する廃棄物18の上に流動粒子12を投入することができ、これにより当該流動粒子12を着火源として、廃棄物18中の燃え易いごみのみを先に安定燃焼(ガス化)させることができる。尚、流動粒子12を投入する箇所は、前壁24に限定されず、後壁25や横壁26に設けられてもよい。
【0045】
炭化物挿入部63は、炉本体20内の後壁25側の幅方向の中央部に炭化物を挿入できるように(
図2参照)、後壁25の下部の幅方向中央部に設けられる。この炭化物挿入部63は、炉本体20内の流動層14の上方から当該流動層14に向けて炭化物を投入できる高さ位置に設けられている。尚、炭化物挿入部63は、上下方向における流動層14の中間の高さ位置に設けられてもよい。このような位置に設けられれば、炭化物を直接流動層14内に挿入できるため、流動層14の上部から投入した場合に流動層14上に滞留して流動粒子12と十分に混合され難い軽い炭化物であっても、流動層14内に確実に挿入して確実にガス化させることができる。
【0046】
廃棄物挿入口28は、前壁24の下部において幅方向の略全域に設けられている。この廃棄物挿入口28は、炉本体20の底壁21が支持する流動粒子12(流動層14)の上面上に廃棄物18を横向きに押し込むことができる高さ位置、即ち、流動層14の上面よりも僅かに高い位置に廃棄物挿入口28の下端が位置するように設けられている。
【0047】
可燃性ガス排出部23は、炉本体20内で発生した可燃性ガスを排出する部位である。この可燃性ガス排出部23は、炉本体20で得られた可燃性ガスを後段の例えば発電プロセスのガスエンジン等に供給するためのダクト等を接続できるよう、側壁22よりも外径が絞られている。
【0048】
底壁21には、その中心位置から特定の方向に偏った位置に廃棄物18中の不燃物及び廃棄物18の加熱により生じた炭化物を流動粒子12と共に排出するための混合物排出口29が設けられる。この混合物排出口29は、底壁21において幅方向全域に開口している。底壁21の上面21aは、当該上面21a上を流動粒子12が降下するように混合物排出口29に向って低くなるように傾斜する。本実施形態の底壁21では、前方側に偏った位置に混合物排出口29が設けられ、底壁21の上面21aは、前方へ向かって(
図1において左から右に向って)一定の下り勾配となる傾斜面である。具体的に、底壁21の上面21aは、水平面に対して15°〜25°の傾斜面である。このような位置に混合物排出口29が設けられることによって、前壁24に設けられた廃棄物挿入口28から流動層14上の前壁24に隣接する領域に挿入された廃棄物18から沈降する不燃物や炭化物を効率よく炉本体20の外へ排出することができる。また、流動層14上で後壁24側に拡散した廃棄物18から流動層14を沈降する不燃物や炭化物も、底壁21の上面21aの傾斜に沿って混合物排出口29まで降下するため、これらの不燃物や炭化物も炉本体20の外へ容易に排出することができる。
【0049】
また、底壁21の上面21aが混合物排出口29に向かって低くなるように傾斜することにより、当該流動層炉10の操業時において、流動層14の上面21aに隣接する領域では後壁25から前壁24に向って流動粒子12が移動する。
【0050】
ガス供給部30は、底壁21から流動粒子12に向って流動化ガスを吹き込むことにより当該流動粒子12を流動化させる。このガス供給部30は、流動化ガスを吹き出すための複数のノズル31と、各ノズル31に流動化ガスを供給する風箱32と、風箱32へ流動化ガスを送風する送風部33と、を有する。
【0051】
複数のノズル31は、底壁21において幅方向及び前後方向に間隔をおいた格子状に配設される。各ノズル31は、底壁21を貫通するように底壁21に取付けられている。本実施形態では、
図3にも示されるように、底壁21を後側領域21bと前側領域21cとに分け、後側領域21bに設けられたノズル31の数の方が前側領域21cに設けられたノズル31の数よりも多くなるように各領域21b,21cにノズル31が配設される。尚、領域21b,21c間のノズル31の数の大小は限定されず、前側領域21cのノズル31の数と後側領域21bのノズル31の数とが同じでもよい。また、前側領域21cのノズル31の数の方が後側領域21bのノズル31の数より大きくてもよい。
【0052】
風箱32は、幅方向に延びる箱形状を有し、底壁21において幅方向に並ぶ各ノズル31に流動化ガスを分配するヘッダーとして働くものであり、幅方向に並ぶ各ノズル31から吹き出される流動化ガスの流量を均一にする機能をもつ。本実施形態では、複数の風箱32が底壁21の下面側において前後方向に並ぶ。従って、各風箱32に対応するノズル31毎に、そのノズル31から吹き出す流動化ガスの流量を変更することが可能である。本実施形態では、5個の風箱32a,32b,32c,32d,32eが前後方向に並んでいる。詳しくは、混合物排出口29よりも後壁25側に4個の風箱32a,32b,32c,32dが配置され、混合物排出口29よりも前壁24側に1個の風箱32eが配置されている。
【0053】
送風部33は、各風箱32に流動化ガスを送風(供給)するための部位であり、風箱32毎に異なる流量で流動化ガスを送風することができる。本実施形態の送風部33は、前後方向に隣り合う風箱32,32に対し、前側の風箱32に送風する流動化ガスの流量よりも後側の風箱32に送風する流動化ガスの流量が大きくなるように流動化ガスを送風する。送風部33は、各風箱32に流動化ガスとして空気を送風するが、この空気に加えて窒素等の不活性ガスも送風することができる。
【0054】
詳しくは、流動層炉10の通常の操業時、即ち、廃棄物18を炉本体20内に挿入してこの廃棄物18から可燃性ガスを発生させるときに、送風部33は、混合物排出口29の周囲から流動化ガスを吹き込ませ、流動粒子12の上側に廃棄物18が滞留することが可能な程度の流動化度合いをもつ第1の流動領域15を形成させると共に、この第1の流動領域15と後壁25との間に第1の流動領域15での流動化ガスの吹き込みの流速よりも高い流速で流動化ガスを吹き込ませることにより、第1の流動領域15よりも流動粒子12の流動化の度合いが高い第2の流動領域16を形成させる。即ち、送風部33は、前記のように、前後方向に隣り合う風箱32に対して前側の風箱(例えば、32c)に送風する流動化ガスの流量よりも後側の風箱(例えば、32b)に送風する流動化ガスの流量を大きくすることにより、流動層14において混合物排出口29の周囲に流動状態が抑えられた第1の流動領域15を形成すると共にこの第1の流動領域15と後壁25とに間に流動が活発な第2の流動領域16を形成する。また、送風部33は、前壁24側の風箱32c,32d,32eへ供給する流動化ガスの流量を一定にしてこの流量よりも後壁25側の風箱32a,32bへ供給する流動化ガスの流量を多くすることにより、流動層14において前壁24側の風箱32c,32d,32eに対応する領域に流動が抑えられた第1の流動領域15を形成すると共に後壁25側の風箱32a,32bに対応する領域に流動が活発な第2の流動領域16を形成してもよい。
【0055】
具体的に、送風部33は、第1の流動領域15では、U
o/U
mfが1以上2未満となる流速で流動化ガスを吹き込ませ、第2の流動領域16では、U
o/U
mfが2以上5未満となる流速で流動化ガスを吹き込ませる。ここで、U
mfは、流動粒子12を流動化するための流動化ガスの吹き込みの最小流速である最小流動化速度であり、U
oは、流動化ガスの平均断面流速である。
【0056】
一方、流動層炉10の停止時、即ち、炉本体20内への廃棄物18の挿入を停止したときには、送風部33は、各風箱32へ供給する流動化ガスとして空気に不活性ガスを混ぜたものを送風する。そして、送風部33は、流動化ガスにおける空気と不活性ガスとの比率を不活性ガスが徐々に多くなるようにして炉本体20内に残っている廃棄物18が激しく燃えるのを抑制し、炉本体20内の温度上昇を抑える。
【0057】
詳しくは、炉本体20内では、通常の操業時には、酸素濃度が廃棄物18の燃焼に適した値よりも低い状態で廃棄物18の燃焼及びガス化等が行われている。この状態で廃棄物18の炉本体20内への挿入が停止されると、炉本体20内における可燃物の量が減少するが、炉本体20内へは流動層14を維持するために所定の流量で流動化ガス(空気)が供給されているため炉本体20内の酸素濃度が高くなる。炉本体20内の酸素濃度が炉本体20内に残っている廃棄物18の燃焼に適した値となると、この廃棄物18が激しく燃焼して炉本体20内の温度が通常の操業時よりも上昇する。炉本体20内がこのような高温状態になると、この熱により流動層14を形成する流動粒子12が固まる。このように流動粒子12が固まると、次に流動層14を形成しようと流動粒子12に流動化ガスを吹き込んでも当該流動粒子12が流動化しない。そこで、送風部33は、廃棄物18の炉本体20内への挿入が停止されたときには、炉本体20内に吹き込ませる空気に不活性ガスを混ぜ、この不活性ガスの比率を徐々に増やす。これにより、炉本体20内の酸素濃度が廃棄物18の燃焼に適した値よりも低く保たれ、その結果、炉本体20内に残っている廃棄物18が激しく燃焼することが抑えられる。
【0058】
さらに、送風部33は、風箱32に送風する流動化ガスの温度を調整することができる。送風部33は、流動層炉10の運転を開始するときに、高温の流動化ガスを第2の流動領域16に対応する部位から流動粒子12に向けて吹き込ませ、廃棄物18の燃焼やガス化が可能な温度になるまで流動粒子12の加熱を行う。この場合、流動粒子12が高温となり廃棄物18の燃焼が始まると、この燃焼により流動粒子12の温度が維持されるため、送風部33は、風箱32に送風する流動化ガスの温度を下げてもよい。
【0059】
廃棄物供給部40は、前壁24から流動層14上における前壁24に隣接する領域に廃棄物18を供給する部位である。本実施形態の廃棄物供給部40は、前壁24(詳しくは、前壁24の廃棄物挿入口28)から流動層14上に廃棄物18を横向きに押し込み、これにより当該廃棄物18を第2の流動領域16側に移動させる部位である。即ち、廃棄物供給部40は、第1の流動領域15上に廃棄物18が滞留し、且つ、その滞留した廃棄物18が順次第2の流動領域16内に進入するように、廃棄物18の押込みを行う。この廃棄物供給部40は、プッシャ41と、このプッシャ41を駆動するための駆動部(図示省略)とを有する。プッシャ41は、幅方向に延びる押込み面42を有する。本実施形態では、押込み面42の幅方向の長さが前壁24の廃棄物挿入口28の幅と同じであり、上下方向の長さが廃棄物挿入口28の開口高さの略半分である。このプッシャ41は、廃棄物挿入口28と同じ高さ位置において前後方向に移動可能に設置されている。駆動部は、モータやシリンダ等の動力源を含み、その動力によりプッシャ41を前後方向に往復移動させる。尚、廃棄物供給部40の具体的構成は限定されない。例えば、本実施形態の廃棄物供給部40では、プッシャ41が廃棄物18を炉内に押し込むが、スクリュー押し込み機等によって廃棄物18が炉内に押し込まれてもよい(
図8(A)参照)。プッシャ41やスクリュー押し込み機を利用することで、紙やプラスチックシートのような嵩比重が小さく、飛散しやすいごみを塊で炉本体20内に供給することができ、従来のように炉の上部から投入する場合に比べ、炉本体20内でこれらのごみが飛散することを抑制することができる。
【0060】
砂循環装置50は、混合物排出口29から排出された不燃物、炭化物、及び流動粒子12の混合物から流動粒子12を分離して炉本体20内に戻すことにより当該流動粒子12を循環させる装置である。このように、砂循環装置50が混合物から高温の流動粒子12を分離して炉本体20内に戻すことにより、炉本体20内において流動層14を構成する流動粒子12の量が維持されると共に流動層14の温度が維持し易くなる。この砂循環装置50は、混合物排出部51と、流動粒子分離部52と、流動粒子搬送部53とを有する。
【0061】
混合物排出部51は、底壁21の混合物排出口29の下方に設けられ、この混合物排出口29から落下してきた不燃物と炭化物と流動粒子12との混合物を流動粒子分離部52へ移動させる。本実施形態の混合物排出部51は、混合物排出口29から落下してきた混合物をスクリュー押し込み機によって流動粒子分離部52まで移動させる。流動粒子分離部52は、混合物排出部51から送られてきた混合物から流動粒子12を分離する。本実施形態の流動粒子分離部52は、ふるいによって混合物から流動粒子12を分離する。この流動粒子分離部52は、流動粒子12を分離した後の混合物を炭化物分離部61に送出する。流動粒子搬送部53は、流動粒子分離部52において分離された流動粒子12を炉本体20の砂挿入部27まで搬送し、当該砂挿入部27から炉本体20内に挿入する。
【0062】
尚、本実施形態の砂循環装置50は、流動層14の上方から当該流動層14の上面に向けて流動粒子12を投入しているが、これに限定されず、流動層14中に直接押し込むようにして流動粒子12を流動層14に戻してもよい。
【0063】
炭化物挿入装置60は、混合物排出口29から排出された混合物から炭化物を分離して後壁25側から炉本体20内に戻す装置である。このように、混合物排出口29から排出された炭化物を第2の流動領域16に戻すことによって、炉本体20外へ不燃物と共に排出された炭化物から可燃性ガスを得ることが可能となる。その結果、当該流動層炉10に供給される廃棄物18から効率よく可燃性ガスが得られる。また、炭化物をガス化するときの熱によって第2の流動領域16の温度を高温に維持することができる。この炭化物挿入装置60は、炭化物分離部61と、炭化物搬送部62とを有する。
【0064】
炭化物分離部61は、流動粒子分離部52から送られてきた混合物から炭化物を分離する。本実施形態の炭化物分離部61は、流動粒子分離部52において流動粒子12が分離された後の混合物から炭化物を分離する。この炭化物分離部61としては、例えば、振動により混合物から炭化物を分離する比重分離器等が用いられる。炭化物搬送部62は、炭化物分離部61において分離された炭化物を炉本体20の炭化物挿入部63まで搬送し、当該炭化物挿入部63から炉本体20内に挿入する。
【0065】
以上のように構成される流動層炉10では、以下のようにして廃棄物18から可燃性ガスが回収される。
【0066】
送風部33が各風箱32に流動化ガスを供給する。これにより、底壁21から流動粒子12に向けて流動化ガスが吹き込まれ、炉本体20内に流動層14が形成される。このとき送風部33は、各風箱32に送風する流動化ガスの流量を調整することにより、流動層14において混合物排出口29側に流動が抑えられた第1の流動領域15を形成すると共に第1の流動領域15と後壁25との間に流動が活発な第2の流動領域16を形成する。また、送風部33は、第2の流動領域16に対応する風箱32(本実施形態では、例えば、風箱32a,32b)には高温の流動化ガスを供給することで第2の流動領域16の流動粒子12を積極的に加熱する。このとき、底壁21の上面21aの傾斜によって生じる流動層14の上面21a近傍の第2の領域16から第1の領域15への流動粒子12の移動により、第1の流動領域15に熱を供給することができる。
【0067】
このようにして、炉本体20内に形成した流動層14の各領域15,16の温度がそれぞれ所定の温度(本実施形態では、第2の流動領域16の温度が600℃〜800℃程度、第1の流動領域15の温度が400℃〜600℃程度)になると、廃棄物供給部40が廃棄物18を廃棄物挿入口28から炉本体20内に押し込み始める。具体的に、駆動部により駆動されたプッシャ41が後壁25側へ向けて横向きに廃棄物18を押し込む。これにより、廃棄物18は、第1の流動領域15上の前壁24と隣接する領域に押し込まれる(
図2参照)。
【0068】
第1の流動領域15では、流動粒子12の流動が抑えられているので、押し込まれた廃棄物18は流動粒子12と積極的には混合されず、その大部分が第1の流動領域15上に滞留し、重たい不燃物及び炭化物の一部が沈降する。このように廃棄物18が滞留することにより、第1の流動領域15では、廃棄物18の急激な燃焼が抑えられ、炉本体20内の熱輻射により廃棄物18中のガス化し易いものがガス化される。即ち、プラスチックや紙等のガス化し易い廃棄物18は第1の流動領域15の表層を移動しながらガス化される。一方、木片などのガス化し難いものは一部がガス化されるものの、大部分がガス化されずに第2の流動領域16に到達する。ガス化し易い廃棄物18が激しい流動層(第2の流動領域16)に到達する前に、第1の流動領域15において穏やかな条件でガス化し易い廃棄物18をガス化させることにより、発生する可燃性ガスの変動が抑制される。また、重たい不燃物については第1の流動領域15で沈降しそのまま混合物排出口29から排出されるため、不燃物が炉床に滞留しにくい。一方で、木片などのガス化しにくい廃棄物の一部も第1の流動領域15内を通過して炭化した状態で混合物排出口29から排出される場合もある。尚、滞留している廃棄物18は、上記の通り炉本体20内の温度(フリーボード部の熱)によって燃焼するが、この炉本体20内の温度が800〜900℃と流動層14を形成する流動粒子12よりも高いものの、空気との接触が良好ではないため、主に廃棄物18に含まれる紙やシート状のプラスチック等の燃え易いゴミがガス化する。このとき、温度が低く且つ第1の流動領域15に供給されている空気(流動化ガス)が少ないので、前記燃え易いゴミであっても、徐々にガス化する。さらに、流動化ガスによる流動粒子12の流動により、滞留する廃棄物18の一部が第1の流動領域15から第2の流動領域16(
図1の右側から左側)へと少しずつ移動し若しくは拡散する。そのため、廃棄物18が塊状で投入され、その内部に燃え易い紙類があった場合でも、拡散時にこれら紙類が前記塊の表面側に出てくることによってガス化される。このように第1の流動領域15では、廃棄物18の急激な燃焼が抑えられ、廃棄物18挿入時の可燃性ガスの急増が防がれる。
【0069】
次に、プッシャ41によって新たな廃棄物18が廃棄物挿入口28から炉本体20内に押し込まれる。これにより、第1の流動領域15上に滞留している廃棄物18は、押し込まれた新たな廃棄物18に押されて順に第2の領域16側に進入する。第2の流動領域16では、流動が活発で且つ廃棄物18の燃焼により高温となるため、第1の流動領域15上から進入してきた廃棄物18が流動粒子12と混合されてガス化が十分に行われ、これにより可燃性ガスが発生する。詳しくは、流動層14では前壁24から後壁25に向って流動状態が徐々に活発となっているので、廃棄物18は、第1の流動領域15上の前壁24と隣接する領域から第2の流動領域16に進むに従って徐々に流動粒子12と混合される。また、第1の流動領域15から第2の流動領域16に進むにしたがって、吹き込まれる空気(流動化ガス)が多くなるため、廃棄物18が燃焼して流動粒子12の温度が高くなる。そして、この高温の第2の流動領域16において、廃棄物18が流動粒子12と十分に混合されることにより、第2の流動領域16において第1の流動領域15で燃え残った廃棄物18のガス化が十分に行われる。
【0070】
一方、プッシャ41によって第1の流動領域15上に新たに押し込まれた廃棄物18は、前記のように流動粒子12と殆ど混合されずに第1の流動領域15上に滞留し、激しい燃焼を抑えられた状態で徐々に燃焼する。
【0071】
このように、流動層14に第1の流動領域15と第2の流動領域16とが形成された状態で廃棄物18がプッシャ41によって次々に押し込まれることにより、可燃性ガスの間欠的且つ急激な発生を抑え、当該ガスの発生を安定させることができる。
【0072】
第1の流動領域15において沈降した不燃物及び炭化物は、第1の流動領域15の下側に設けられた混合物排出口29から流動粒子12と共に排出される。また、第2の流動領域16において沈降した不燃物及び炭化物は、底壁21の上面21aが混合物排出口29に向って下り勾配で傾斜しているため、これに沿って降下して混合物排出口29まで移動し、流動粒子12と共に排出される。そして、砂循環装置50がこの混合物排出口29から排出された混合物から流動粒子12を分離し、これを炉本体20内に挿入すると共に、炭化物挿入装置60がこの混合物排出口29から排出された混合物から炭化物を分離し、これを炉本体20内に挿入する。具体的に、混合物排出部51が炉本体20の混合物排出口29から落下してきた混合物を流動粒子分離部52に送り、当該分離部52において混合物から分離された流動粒子12を流動粒子搬送部53が炉本体20の砂挿入部27まで搬送する。これにより、炉本体20内において、流動層14を形成する流動粒子12の量が維持される。一方、流動粒子分離部52は、流動粒子12が分離された混合物を炭化物分離部61に送出し、炭化物分離部61がこの混合物から炭化物を分離する。そして、炭化物搬送部62が分離された炭化物を炉本体20の炭化物挿入部63まで搬送する。これにより、不燃物と共に炉本体20から排出された炭化物を炉本体20内に戻してガス化させることができ、その結果、当該流動層炉10において廃棄物18から効率よく可燃性ガスを得ることができる。
【0073】
流動層炉10が停止されるときには、先ず、プッシャ41による廃棄物18の炉本体20への押し込みが停止される。廃棄物18の押し込みが停止されると、送風部33は、各風箱32へ供給する流動化ガスとして空気に不活性ガスを混ぜたものを送風する。このとき、送風部33は、時間の経過に伴って流動化ガスにおける空気と不活性ガスとの比率を不活性ガスが徐々に多くなるようにして炉本体20内の酸素濃度を抑え、流動層14内に残っている廃棄物18が激しく燃えるのを抑制する。
【0074】
尚、本実施形態では、流動層炉10の停止時に、流動化ガスにおける不活性ガスの比率を大きくすることによって流動層14に残っている廃棄物18の激しい燃焼を抑制しているが、流動層14に水を散布して残っている廃棄物18の燃焼を防いでもよい。
【0075】
このように、流動層炉10では、廃棄物に燃え易いゴミが多く含まれていても、可燃性ガスの間欠的且つ急激な発生を抑え、当該ガスの発生を安定させることができる。具体的には、流動層14に混合物排出口29の周囲の第1の領域15とこの第1の領域15よりも流動化の度合いの高い第2の流動領域16とが形成された状態で、新たな廃棄物18が第1の流動領域15上に押し込まれ、この新たな廃棄物18が第1の流動領域15上に滞留している廃棄物18を順に第2の流動領域16側に進入させることが繰り返される。これにより、流動層炉10では、得られる可燃性ガスの急激な変動を抑えながら廃棄物18のガス化を十分に行い、廃棄物18から可燃性ガスを安定して発生させることが可能になる。また、廃棄物18が投入直後に活発な流動層14(第2の流動領域16)に曝されないため、軽量のごみが炉本体20内に多量に舞い上がり、フリーボード部で急激に燃焼することを抑制することができる。
【0076】
また、混合物排出口29の上方に第1の流動領域15を形成してその上側に廃棄物18を供給することで、この第1の流動領域15上に滞留させて廃棄物18中の燃え易いゴミをゆっくりガス化している間に不燃物や炭化物が炉底まで沈んでも、これらを炉本体20から容易に排出することができる。しかも、廃棄物18が第1の流動領域15から第2の流動領域16に進入してから不燃物や炭化物が底壁21に沈んでも、混合物排出口29に向って低くなるよう傾斜している底壁上面21aに沿って不燃物や炭化物が降下するため、これら不燃物及び炭化物も容易に排出することができる。さらに、第2の流動領域16では流動化ガスが活発に供給されているため、これによっても不燃物及び炭化物の混合物排出口29に向けての降下が促される。
【0077】
炉本体20は、その幅方向の寸法が廃棄物18の押込み方向について均一な平面形状を有しているから、第1の流動領域15上の廃棄物18が廃棄物供給部40から新たに押し込まれた廃棄物18に押されて第2の流動領域16側に進入するときに、廃棄物18の移動が安定する。
【0078】
廃棄物供給部40では、押込み面42が当該押込み面42の幅方向全域にわたって同時に廃棄物18を流動層14上に押し込むようにプッシャ41が押込み方向(前後方向)と平行な方向に往復動作し、これが幅方向に均一に廃棄物18を押し込む。従って、第1の流動領域15から第2の流動領域16側への廃棄物18の移動が幅方向において略均一となり、炉内の一部に廃棄物18が集中することを防ぐことができる。
【0079】
尚、本発明の流動層炉及び廃棄物処理方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0080】
上記実施形態の側壁22は、底壁21から可燃性ガス排出部23まで真っ直ぐに立上がっているが、これに限定されない。例えば、
図4に示されるように、前壁24Aが所定の高さ位置で第1の流動領域15の上方を覆うように後壁25側に延びる反射部224を具備してもよい。この前壁24Aによれば、第1の流動領域15上に滞留する廃棄物18が反射部224からの輻射熱により加熱され、その結果、第1の流動領域15上に滞留している廃棄物18から可燃性ガスを発生させることができる。即ち、第1の流動領域15上に滞留している廃棄物18のガス化が促進される。この場合、砂挿入部27は、前壁24Aにおける底壁21から垂直に立上がっている部位に設けられてもよく、反射部224に設けられてもよい。
【0081】
また、
図5に示されるように、後壁25Aが所定の高さ位置で第2の流動領域16の上方を覆うように前壁24側に延びる案内部225を具備してもよい。この案内部225は、第2の流動領域16において廃棄物18から発生した高温の可燃性ガスが第1の流動領域15上に滞留する廃棄物18と接するように当該可燃性ガスを案内し、これにより、当該可燃性ガスを前記第1の流動領域15上の廃棄物18の加熱に寄与させる。その結果、特別な加熱手段を付加することなく、当該第1の流動領域15上に滞留している廃棄物18のガス化が促進される。この場合、炭化物挿入部63は、後壁25における底壁21から垂直に立上がっている部位に設けられてもよく、案内部225に設けられてもよい。
【0082】
また、
図6に示されるように、炉本体20は、前壁24Bと後壁25Bとが同じ高さ位置で互いに接近する方向に延びる屋根部324,325をそれぞれ具備してもよい。この前壁24B及び後壁25Bによれば、第1の流動領域15上に滞留する廃棄物18が前壁24Bの屋根部324からの輻射熱によって加熱され、ガス化が促進される。また、炉本体20B上端の可燃性ガス排出部23よりも低い位置において炉本体20Bの前後方向の寸法を小さくすることで、炉本体20Bの小型化を図ることもできる。この場合、砂挿入部27は、前壁24Bにおける底壁21から垂直に立上がっている部位に設けられてもよく、屋根部324に設けられてもよい。また、炭化物挿入部63も、後壁25Bにおける底壁21から垂直に立上がっている部位に設けられてもよく、屋根部325に設けられてもよい。
【0083】
上記実施形態では、炭化物挿入部63から炉本体20内へは炭化物のみを挿入しているが、流動粒子12と共に挿入してもよい。
【0084】
また、上記実施形態の炭化物挿入装置60は、混合物から分離した炭化物をそのまま炭化物挿入部63から炉本体20内へ挿入するが、分離した炭化物を破砕した後に炉本体20内へ挿入してもよい。これにより、混合物排出口29から排出された炭化物が大きな塊状であっても、加熱によりガス化し易い所定の大きさにして炉本体20内に戻すことができる。
【0085】
また、底壁21の上面21aは、後壁25から混合物排出口29に向けて真っ直ぐに傾斜せずに湾曲していてもよい。
【0086】
図7に示されるように、第1の流動領域15の上方に複数の温度計Tが配置されると共に、第1の流動領域15上に空気を供給可能な空気供給部65が設けられてもよい。かかる構成によれば、第1の流動領域15上に滞留する廃棄物18の滞留量を推定してこの滞留量を制御することが可能となる。具体的に、廃棄物18に埋まった温度計Tの指示値が低くなることを利用して、第1の流動領域15上の廃棄物18の滞留量を推定する。滞留量が多い場合、即ち、廃棄物18に埋まる温度計Tが多い場合には、空気供給部65から空気を供給して炉本体20内の温度を上げる。そうすると、第1の流動領域15上に滞留している廃棄物18のガス化が促進され、廃棄物18の滞留量が減少する。尚、別の方法としては指定した温度計Tの温度が閾値以上であれば当該温度計Tの位置にはごみが無いと判断し、閾値未満であれば当該温度計Tの位置にごみがある(ごみに埋まっている)と判断して空気の量を制御してもよい。
【0087】
上記実施形態では、送風部33は、空気や不活性ガスを流動化ガスとして送風するが、炉本体20内の燃焼状態に応じて、水蒸気や酸素を流動化ガスとして送風するように構成されてもよい。また、流動層炉10は、側壁22にガス供給部30とは別に気体供給部を設け、流動層14や廃棄物18の燃焼状況に応じて、前記気体供給部から炉本体20内に空気や酸素、水蒸気等を供給可能に構成されてもよい。
【0088】
また、第1の流動領域15に供給する空気(流動化ガス)として、高温の流動化ガスを供給してもよい。高温の流動化ガスを流すことにより、第2の流動領域16から伝わる熱のみでは第1の流動領域15を必要な温度に保てない場合であっても、流動化ガスの供給量を増加させることなく第1の流動領域15の温度を高く維持することができる。
【0089】
上記実施形態では、廃棄物挿入口28を、流動層14上に滞留する廃棄物18に対して上下方向において一部重なる高さ位置に設けて、廃棄物挿入口28から供給される廃棄物18によって流動層14上面に滞留する廃棄物を積極的に横方向(第1の流動領域15側)に移動させる構成としたが、これに限定されない。即ち、流動層炉10は、流動層14上における前壁24に隣接する領域に廃棄物18を供給できるような構成であればよい。例えば、
図8(A)及び
図8(B)に示されるように、廃棄物挿入口28が、流動層14の上面近傍の高さ位置で、且つ流動層14上に滞留する廃棄物18の上に新たな廃棄物18を載せるように挿入する高さ位置に設けられてもよい。この場合、廃棄物挿入口28は、例えば
図8(A)に示されるように、流動層14上に滞留する廃棄物よりも上方の高さ位置から横向きに新たな廃棄物18を供給可能に設けられてもよく、
図8(B)に示されるように、流動層14上に滞留する廃棄物18の上方から下方向きに新たな廃棄物18を供給可能に設けられてもよい。このように廃棄物18が炉本体20内に供給されても、滞留する廃棄物18上に新たな廃棄物18が供給されることで廃棄物18の山が崩れて拡がることによって第2の流動領域16側に廃棄物18が進入する。これにより、流動層炉10から回収される可燃性ガスの急激な変動を抑えながら廃棄物18のガス化を十分に行い、その結果、廃棄物18から可燃性ガスを安定して発生させることができる。
【0090】
また、上記実施形態において、炉床(底壁21の上面21a)の混合物排出口29付近に不燃物が滞留し外部に排出されない場合には、これを外部へ排出するために一定期間のみ第1の流動領域15でもU
o/U
mfが2以上5未満となる流速で流動化ガスを吹き込ませるようにしてもよい。この場合、第1の流動領域15において均一に流動化ガスを吹き込むのではなく、炉本体20の後壁25側(
図1における左側)から前壁24側(
図1における右側)に向けて順々に風箱32毎に徐々に流動化ガスの供給量を多くすることが好ましい。このような運転により、通常運転時に炉床の混合物排出口29付近に不燃物が滞留したとしても、当該不燃物を炉本体20の外へ確実に排出することができる。尚、上記の運転を行うのはごくわずかな時間であるため、後段の設備への影響も最小限に抑えることができる。