特許第5694705号(P5694705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694705
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】多芯筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/12 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
   B43K24/12
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-179953(P2010-179953)
(22)【出願日】2010年8月11日
(65)【公開番号】特開2012-35584(P2012-35584A)
(43)【公開日】2012年2月23日
【審査請求日】2013年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早川 尚利
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−36536(JP,A)
【文献】 特開2012−911(JP,A)
【文献】 特開平8−156482(JP,A)
【文献】 特開2007−38635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 24/10−24/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に複数の筆記体を前後方向に移動可能に収容し、前記各々の筆記体を弾発体により後方に付勢し、前記各々の筆記体の後端に操作体を連結し、前記軸筒の側壁に前後方向に延びる複数の窓孔を径方向に貫設し、前記各々の窓孔から径方向外方に前記各々の操作体を突出させ、一つの操作体を窓孔に沿って前方にスライドさせることにより、その一つの操作体に連結された筆記体のペン先を軸筒の前端孔から突出させるとともに、先に突出状態にあった他の筆記体のペン先を軸筒内に没入させてなり、前記軸筒の後端に、窓孔を後方に開口させる開閉自在の開口部を設け、前記開口部を介して筆記体及び操作体を、軸筒内から取り外し可能且つ軸筒内に挿入可能に構成し、前記軸筒の後端部に、前記開口部を開閉自在とする蓋部を設け、前記蓋部の一端部が、ヒンジ部により軸筒の後端部側壁に回動自在に接続され、開口部の開閉時、前記蓋部が略前後方向に回動する多芯筆記具であって、
前記開口部を開口させるために前記蓋部を後方に押圧する際に指が係合する係合突起を前記蓋部の他端部に設け、前記開口部の閉鎖時、前記係合突起を、前記複数の窓孔のうちの少なくともひとつの窓孔の軸方向の延長線上に配置し、前記窓孔相互間のヒンジ部以外の軸筒の後端部外縁と、前記蓋部の前端部外縁とを一致させ、軸筒後端と蓋部前面との間に段差が存在しないことを特徴とする多芯筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多芯筆記具に関する。詳細には、軸筒内に複数の筆記体を収容し、前記筆記体を軸筒の後端の開口部より交換可能にした多芯筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軸筒内に複数の筆記体を前後方向に移動可能に収容し、前記各々の筆記体を弾発体により後方に付勢し、前記各々の筆記体の後端に、各々の筆記体に対応した操作体を連結し、軸筒の側壁に前後方向に延びる複数の窓孔を径方向に貫設し、前記各々の窓孔から径方向外方に前記各々の操作体を突出させ、一つの操作体を窓孔に沿って前方にスライドさせることにより、その一つの操作体に連結された筆記体のペン先を軸筒の前端孔から突出させるとともに、先に突出状態にあった他の筆記体のペン先を軸筒内に没入させた多芯筆記具であって、軸筒の後端に、窓孔を後方に開口させる開閉自在の開口部を設け、前記開口部を介して筆記体及び操作体を、軸筒内から取り外し可能且つ軸筒内に挿入可能に構成し、前記軸筒の後端部に、前記開口部を開閉自在な蓋部を設け、前記蓋部の一端部が、ヒンジ部により軸筒の後端部側壁に回動自在に接続された構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−38635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の多芯筆記具は、軸筒の窓孔相互間の側壁の後端より蓋部の外面を径方向外方に突出させ、前記蓋部の突出部分を後方に押圧操作することにより軸筒後端の開口部を開口させる構造である。それにより、軸筒の後端と蓋部前面との間に段差が形成され、軸筒の後端部外縁に対して蓋部の前端部外縁を径方向外方に突出させる必要があり、蓋部の外観デザイン上の自由度が減少する。その上、軸筒後端と蓋部前面との間の段差により、多芯筆記具後端部の外観性が損なわれるおそれがある。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点を解決するものであって、蓋部のデザイン上の自由度が増加し、後端部のスマートな外観を容易に得ることができる多芯筆記具を提供しようとするものである。また、本発明は、後端部のスマートな外観を確実に得ることができる多芯筆記具を提供しようとするものである。
尚、本発明において、「前」とはペン先側を指し、「後」とはその反対側を指す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
願発明は、軸筒2内に複数の筆記体を前後方向に移動可能に収容し、前記各々の筆記体を弾発体7により後方に付勢し、前記各々の筆記体の後端に操作体6を連結し、前記軸筒2の側壁に前後方向に延びる複数の窓孔41を径方向に貫設し、前記各々の窓孔41から径方向外方に前記各々の操作体6を突出させ、一つの操作体6を窓孔41に沿って前方にスライドさせることにより、その一つの操作体6に連結された筆記体のペン先を軸筒2の前端孔31から突出させるとともに、先に突出状態にあった他の筆記体のペン先を軸筒2内に没入させてなり、前記軸筒2の後端に、窓孔41を後方に開口させる開閉自在の開口部42を設け、前記開口部42を介して筆記体及び操作体6を、軸筒2内から取り外し可能且つ軸筒2内に挿入可能に構成し、前記軸筒2の後端部に、前記開口部42を開閉自在とする蓋部5を設け、前記蓋部5の一端部が、ヒンジ部45により軸筒2の後端部側壁に回動自在に接続され、開口部42の開閉時、前記蓋部5が略前後方向に回動する多芯筆記具であって、前記開口部42を開口させるために前記蓋部5を後方に押圧する際に指が係合する係合突起53を前記蓋部5の他端部に設け、前記開口部42の閉鎖時、前記係合突起53を、前記複数の窓孔41のうちの少なくともひとつの窓孔41の軸方向の延長線上に配置し、前記窓孔41相互間のヒンジ部45以外の軸筒2の後端部外縁46と、前記蓋部5の前端部外縁54とを一致させ、軸筒2後端と蓋部5前面との間に段差が存在しないことを要件とする。
【0007】
本願発明の多芯筆記具1は、軸筒2後端と蓋部5前面との間に段差を設けることが不要となり、蓋部5のデザイン上の自由度が増加し、後端部のスマートな外観を容易に得ることができる。
【0008】
【0009】
本願発明の多芯筆記具1は、軸筒2後端と蓋部5前面との間に段差が存在しないため、後端部のスマートな外観を確実に得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多芯筆記具によれば、蓋部のデザイン上の自由度が増加し、後端部のスマートな外観を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態の開口部を閉鎖した状態の軸筒を示す縦断面図である。
図2図1の開口部を開口させた状態を示す縦断面図である。
図3図1の背面図(反クリップ側から見た図)である。
図4図3の要部拡大図である。
図5図1の要部拡大側面図である。
図6図1の軸筒の内部に筆記体及び操作体を収容した状態の要部拡大斜視図である。
図7図1の拡大平面図である。
図8図7のA−A線断面図である。
図9図8の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図9に本発明の実施の形態を示す。
【0013】
本実施の形態の多芯筆記具1は、軸筒2内に複数本(具体的には5本)の筆記体が前後方向に移動可能に収容されている。前記各々の筆記体は、各々の弾発体7(具体的には圧縮コイルスプリング)により、後方に付勢されている。本実施の形態では、軸筒2内に収容する筆記体の本数は、5本であるが、これ以外にも、例えば、2本、3本、4本、6本であってもよい。
【0014】
(軸筒)
前記軸筒2は、先細円筒状の前軸3と、該前軸3の後端に連結される円筒状の後軸4とからなる。
【0015】
(前軸)
前記前軸3は合成樹脂成形体または金属加工体により得られる。前記前軸3の前端には、前端孔31が前後方向に貫設される。前記前軸3の外面は、弾性材料からなる把持部が設けられる
【0016】
(後軸)
前記後軸4は、円筒状の前部材4aと、該前部材4aの後端部に連結される後部材4bとからなる。前記後軸4(即ち前部材4a及び後部材4b)は、合成樹脂成形体または金属加工体により得られる。前記後軸4(即ち後部材4b)の側壁には、前後方向に延びる複数(例えば5本)の窓孔41が径方向に貫設される。前記後軸4(即ち前部材4a)の内壁には、弾発体7の前端を支持する弾発体支持部8が一体に形成される。前記弾発体支持部8は、各々の筆記体が摺動する複数の内孔81を有する。前記弾発体支持部8において、弾発体7の前端が直接的または別部材を介して間接的に支持される。前記後軸4の側壁にはクリップ43が一体に形成される。前記クリップ43の基部にヒンジ部45が形成される。前記ヒンジ部45により蓋部5が回動自在に取り付けられる。
【0017】
(筆記体)
前記各々の筆記体は、ボールペンレフィルであり、前端にボールが回転可能に抱持されたボールペンチップ(即ちペン先)と、該ボールペンチップを前端に備え且つ後端が開口されたインキ収容管とからなる。前記インキ収容管の内部には、剪断減粘性を有する水性ゲルインキ、低粘度の水性インキ、低粘度の油性インキ、または高粘度の油性インキからなるインキが収容される。前記インキが、剪断減粘性を有する水性ゲルインキ、低粘度の水性インキ、または低粘度の油性インキの場合、インキ収容管内のインキの後端には、インキの消費に伴い前進する高粘度流体からなる追従体が充填される。
【0018】
(操作体)
前記各々の筆記体の後端(即ちインキ収容管の後端開口部)には、操作体6が取り付けられる。前記各々の操作体6の操作部61が、前記各々の窓孔41から径方向外方に突出される。前記操作部61を前方に押圧操作することにより、ペン先が突出状態となり、他の筆記体のペン先突出状態が解除される。
【0019】
(蓋部)
図2に示すように、前記各々の窓孔41の後端は、軸筒2の後端(即ち後軸4の後端)より後方に切り欠き状に開口する開口部42が形成される。前記軸筒2の後端には、前記開口部42を開閉自在にする蓋部5が設けられる。前記軸筒2の開口部42を介して、前記筆記具と操作体6とを互いに連結状態で、交換することができる。前記蓋部5の一端部は、ヒンジ部45により軸筒2の後端部側壁に回動自在に取り付けられる。前記蓋部5前面には、当接壁部51が形成される。前記当接壁部51に、ペン先没入状態の筆記体の後端に連結された各々の操作体6の後端が当接される。
【0020】
前記蓋部5の前面には、係合部52(具体的には係合孔)が設けられ、前記後軸4の後端には、前記係合部52と係合可能な被係合部44(具体的には係合突部)が設けられる。前記係合部52と前記被係合部44とは、蓋部5が開口部42を閉鎖した際、互いに係合状態にあり、弾発体7の後方への付勢による操作体6と蓋部5前面の当接壁部51との当接では、その係合状態は解除されず、蓋部5が開くことはない。
【0021】
前記蓋部5の他端部に係合突起53が形成される。前記係合突起53は、前記開口部42を開口させるために前記蓋部5を後方に押圧する際に指が係合する部分である。前記開口部42の閉鎖時、前記係合突起53を、前記複数の窓孔41のうちの少なくともひとつの窓孔41の軸方向の延長線上に配置した。さらに、図8図9に示すように、前記窓孔41相互間のヒンジ部45以外の軸筒2の後端部外縁46と、前記蓋部5の前端部外縁54とを一致させた。
【0022】
(弾発体支持部)
後軸4の内壁(即ち前部材4aの内壁)には、弾発体支持部8が一体に形成される。前記弾発体支持部8には、各々の筆記体が挿通される複数(具体的には5個)の内孔81が軸方向に貫設されている。前記弾発体支持部8の後面と各々の操作体6との間には、弾発体7が配置される。前記各々の弾発体7の内部に各々の筆記体が遊挿される。
【0023】
前記弾発体支持部8に後面には、各々の操作体6との間に配置され、ペン先出没操作に伴って各々の操作体6と係合可能なカム部材9が固定される。前記カム部材9の後端部が、径方向に変位可能なカム部を備える。本実施の形態では、前記各々の弾発体7の前端が弾発体支持部8に係止され、一方、前記各々の弾発体7の後端が操作体6に係止される。
【0024】
本実施の形態の多芯筆記具1は、前記開口部42を開口させるために前記蓋部5を後方に押圧する際、指が係合する係合突起53を前記蓋部5のヒンジ部45と反対側の端部に設け、前記開口部42の閉鎖時、前記係合突起53を、前記複数の窓孔41のうちの少なくともひとつの窓孔41の軸方向の延長線上に配置したことにより、軸筒2後端と蓋部5前面との間に段差を設けることが不要となり、蓋部5のデザイン上の自由度が増加し、後端部のスマートな外観を容易に得ることができる。
【0025】
本実施の形態の多芯筆記具1は、前記窓孔41相互間のヒンジ部45以外の軸筒2の後端部外縁46と、前記蓋部5の前端部外縁54とを一致させたことにより、軸筒2後端と蓋部5前面との間に段差が存在しないため、後端部のスマートな外観を確実に得ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 多芯筆記具
2 軸筒
3 前軸
31 前端孔
4 後軸
41 窓孔
42 開口部
43 クリップ
44 被係合部
45 ヒンジ部
46 後端部外縁
4a 前部材
4b 後部材
5 蓋部
51 当接壁部
52 係合部
53 係合突起
54 前端部外縁
6 操作体
61 操作部
7 弾発体
8 弾発体支持部
81 内孔
9 カム部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9