(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694709
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】サブロック機構付クレセント錠
(51)【国際特許分類】
E05B 65/08 20060101AFI20150312BHJP
E05C 3/04 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
E05B65/08 R
E05C3/04 J
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-183611(P2010-183611)
(22)【出願日】2010年8月19日
(65)【公開番号】特開2012-41725(P2012-41725A)
(43)【公開日】2012年3月1日
【審査請求日】2013年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155207
【氏名又は名称】株式会社明工
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】都築 康宏
【審査官】
佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−316498(JP,A)
【文献】
特開2000−265723(JP,A)
【文献】
特開2002−357036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 65/08
E05C 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内障子の縦框に固定される取付けベースと、この取付けベースに対してクレセント軸を介して回動自在に取り付けられたクレセントと、前記クレセント軸に一体的に固設された操作レバーと、前記取付けベース内において前記クレセント軸に一体的に固設され、周囲に衝合凸部を備えたサブロック用回転子と、前記取付けベースの側壁に上下方向にスライド可能に設けられ、施錠状態において、一端側にスライドさせることにより前記操作レバーが解錠操作されても前記サブロック用回転子の衝合凸部が衝合することにより解錠を阻止するサブロック用ストッパー片とを備えたサブロック機構付クレセント錠において、
前記サブロック用ストッパー片は、前記取付けベースの外側に位置し、直接的に手動操作される操作部と、前記取付けベースの内側に位置し、前記サブロック用回転子が衝合する衝合部とから構成され、前記衝合部に対して段状の引っ掛け部が形成され、前記取付けベースには、前記サブロック用ストッパー片が取り付けられる側壁の内側に、段状の受け部が形成され、
前記段状の引っ掛け部は略逆レ字状を成すように鋭角的に形成され、前記段状の受け部は前記段状の引っ掛け部に整合する略レ字状を成すように鋭角的に形成され、サブロック施錠時に、前記サブロック用ストッパー片に形成した段状の引っ掛け部と前記取付けベースに形成した段状の受け部とが鋭角的に噛み合うように掛止し、サブロック施錠状態から無理に解錠しようとした際、前記サブロック用回転子の衝合凸部がサブロック用ストッパー片に衝突し、サブロック用回転子がサブロック用ストッパー片を押し下げると同時に、外方に押し出すように力を作用させたとしても前記サブロック用ストッパー片の移動を阻止するようにしたことを特徴とするサブロック機構付クレセント錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防犯機能の向上のためにサブロック機構を備えたクレセント錠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、引き違い窓等のサッシ用施錠装置としてクレセント錠が知られている。このクレセント錠は、
図8に示されるように、室内障子の縦框(召合せ框)に取り付けられる取付けベース50と、この取付けベース50に対してクレセント軸51を介して回動自在に取り付けられたクレセント52とからなるもので、このクレセント52に一体的に連結された操作レバー53を掴み、ほぼ180°の範囲で回動させることにより、クレセント52を室外側障子に取り付けられた係止金具(図示せず)に対して係脱させるようにした引き違い障子等のための施錠装置である。
【0003】
近年、この種のクレセント錠においても、同図及び下記特許文献1、2に示されるように、防犯等の配慮から施錠状態において、更にクレセント52の回動を阻止するために上下方向にスライド操作されるサブロック用ストッパー片54を設けた、いわゆるサブロック機構が採用されるようになってきた。
【0004】
上記クレセントにおけるサブロック機構は、クレセントが衝合するストッパー片をスライド可能に取付けベースに対して設けるものであるが、サブロック機構の中には、例えば
図9に示されるように、取付けベース60内においてクレセント軸61に対して一体的に回動可能なように、衝合凸部62aを備えた金属製の回転子62を設け、この回転子62をサブロック用ストッパー片63に衝合させることにより補助施錠を成すようにしたクレセント錠が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−357036号公報
【特許文献2】特開2003−172058号公報
【特許文献3】特開2007−146650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図9に示されるクレセント錠の場合、サブロック施錠状態から無理やりレバーを回動させ解錠させると、回転子62がサブロック用ストッパー片63を押し下げると同時に、外方に押し出すように力が加わり、サブロック用ストッパー片63が破損したり、取り付けベース60から脱落し、解錠されてしまうことがあった。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、サブロック用回転子を有するサブロック機構付クレセント錠において、前記サブロック用回転子からサブロック用ストッパー片が大きな力を受けても、サブロック用ストッパー片の破損や脱落を防止したサブロック機構付クレセント錠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、室内障子の縦框に固定される取付けベースと、この取付けベースに対してクレセント軸を介して回動自在に取り付けられたクレセントと、前記クレセント軸に一体的に固設された操作レバーと、前記取付けベース内において前記クレセント軸に一体的に固設され、周囲に衝合凸部を備えたサブロック用回転子と、前記取付けベースの側壁に上下方向にスライド可能に設けられ、施錠状態において、一端側にスライドさせることにより前記操作レバーが解錠操作されても前記サブロック用回転子の衝合凸部が衝合することにより解錠を阻止するサブロック用ストッパー片とを備えたサブロック機構付クレセント錠において、
前記サブロック用ストッパー片
は、前記取付けベースの外側に位置し、直接的に手動操作される操作部と、前記取付けベースの内側に位置し、前記サブロック用回転子が衝合する衝合部とから構成され、前記衝合部に対して段状の引っ掛け部
が形成
され、前記取付けベースには、前記サブロック用ストッパー片が取り付けられる側壁の内側に、段状の受け部が形成され、
前記段状の引っ掛け部は略逆レ字状を成すように鋭角的に形成され、前記段状の受け部は前記段状の引っ掛け部に整合する略レ字状を成すように鋭角的に形成され、サブロック施錠時に、
前記サブロック用ストッパー片に形成した段状の引っ掛け部と前記取付けベースに形成した段状の受け部
とが鋭角的に噛み合うように掛止
し、サブロック施錠状態から無理に解錠しようとした際、前記サブロック用回転子の衝合凸部がサブロック用ストッパー片に衝突し、サブロック用回転子がサブロック用ストッパー片を押し下げると同時に、外方に押し出すように力を作用させたとしても前記サブロック用ストッパー片の移動を阻止するようにしたことを特徴とするサブロック機構付クレセント錠が提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明においては、サブロック用ストッパー片に段状の引っ掛け部を形成し、サブロック施錠時に、
前記サブロック用ストッパー片に形成した段状の引っ掛け部と前記取付けベースに形成した段状の受け部
とが鋭角的に噛み合うように掛止させるようにしたものである。
【0010】
従って、サブロック施錠状態から無理に解錠しようとした際、前記回転子の衝合凸部がサブロック用ストッパー片に衝突し、回転子がサブロック用ストッパー片を押し下げると同時に、外方に押し出すように力を作用させたとしても、サブロック用ストッパー片に形成した段状の引っ掛け部が前記取付けベースに形成した段状の受け部に対して掛止しているため、移動が阻止され、サブロック用ストッパー片が破損したり、取付けベースから脱落することもなくなる。
【0011】
本発明では、前記引っ掛け部を前記サブロック用回転子の衝合突部が衝突する
衝合部に形成することにより、効果的にサブロック用ストッパー片の破損や脱落を防止することができる。
【0012】
また、前記引っ掛け部と前記受け部と
が鋭角的に噛み合うようにし
たことにより、大きな力が加わっても掛止状態を維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上詳説のとおり本発明によれば、サブロック用回転子を有するサブロック機構付クレセント錠において、前記サブロック用回転子からサブロック用ストッパー片が大きな力を受けても、サブロック用ストッパー片の破損や脱落を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るサブロック機構付クレセント錠1Aを示す、(A)は正面図、(B)は裏面図、(C)は底面図である。
【
図2】(A)はサブロックの解錠状態、(B)はサブロックの施錠状態を示すクレセント錠1の裏面図である。
【
図3】サブロック用ストッパー片7の斜視図である。
【
図5】
参考的形態例に係るサブロック機構付クレセント錠1Bを示す、(A)は側面図、(B)は裏面図である。
【
図6】(A)はサブロックの解錠状態、(B)はサブロックの施錠状態を示すクレセント錠1Bの裏面図である。
【
図7】サブロック用ストッパー片9を示す、(A)は正面図、(B)は裏面からの斜視図である。
【
図8】従来のサブロック機構付クレセント錠50を示す、(A)は裏面図、(B)は右側面図である。
【
図9】従来のサブロック機構付クレセント錠60の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0016】
〔第1形態例〕
前記クレセント錠1Aは、
図1に示されるように、室内障子の縦框に固定される裏面が開口した函体状の取付けベース2と、この取付けベース2に対してクレセント軸3を介して回動自在に取り付けられたクレセント4と、前記クレセント軸3に一体的に固設された操作レバー5と、前記取付けベース2内において前記クレセント軸3に一体的に固設され、周囲に衝合凸部6aを備えたサブロック用回転子6と、前記取付けベース2の側壁に上下方向にスライド可能に設けられ、施錠状態において一端側にスライドさせることにより前記操作レバー5が解錠操作されても前記サブロック用回転子6の衝合凸部6aが衝合することにより解錠を阻止するサブロック用ストッパー片7(以下、単にストッパー片7という。)とを備えたクレセント錠であり、室外障子の召合せ框には前記クレセント4を係脱させるためのクレセント受け金具(図示せず)が設けられる。
【0017】
前記クレセント錠1Aは、前記操作レバー5を摘み、クレセント4をほぼ180度範囲で回動させることにより、クレセント4の周囲に形成された、壁高を漸次テーパー状に変化させた環状周壁4aが前記クレセント受け金具に対して係脱し、窓の施錠または解錠が成されるようになっている。なお、スプリング8は取付けベース2の一端と、サブロック用回転子6とを連結しているバネ部材であり、クレセント4の回動時に操作レバー5が水平の状態から施錠位置および解錠位置に対して付勢させるためのものである。
【0018】
前記ストッパー片7は、直接的に上下方向に手動操作される部材であり、
図2(A)に示されるように、クレセント錠1の施錠状態(操作レバー5が上側に位置)で、スライド範囲内で上側に位置した状態では、前記操作レバー5が解錠操作された場合、前記サブロック用回転子6の衝合凸部6aはストッパー片7に衝合することなく、自由に解錠操作が可能となっている。
【0019】
また、
図2(B)に示されるように、クレセント錠1の施錠状態で、ストッパー片7をスライド範囲内で下側にスライドさせた場合は、前記操作レバー5が解錠操作されても前記サブロック用回転子6の衝合凸部6aが衝合することにより解錠(回動操作)を阻止するようになっている。
【0020】
前記ストッパー片7は、詳細には
図3に示されるように、前記取付けベース2の外側に位置し、直接的に手動操作される操作部7Aと、前記取付けベース2の内側に位置し、前記サブロック用回転子6が衝合する衝合部7Bとから構成されている。本発明では、前記衝合部7Bに対して、段状の引っ掛け部7bが形成されている。
【0021】
一方、前記取付けベース2には、
図4に示されるように、前記ストッパー片7が取り付けられる側壁の内側に、段状の受け部2aが形成され、
図2(B)に示されるように、サブロック施錠時に、前記サブロック用ストッパー片7の引っ掛け部7bが前記取付けベース2に形成した段状の受け部2aに対して掛止するようになっている。ここで、前記引っ掛け部7bは、前記サブロック用回転子6の衝合突部6aが衝突する近傍部位に形成されることが望ましく、かつ前記引っ掛け部7bと前記受け部2aとは図示例のように、鋭角的(
図3においてθ<90°)に噛み合うようにするのが望ましいが、直角(θ=90°)であってもよい。仮に、前記引っ掛け部7bと前記受け部2aとが鈍角的(θ>90°)に噛み合う場合は、前記引っ掛け部7bが前記受け部2aを乗り越えることがあるため好ましくないが、従来のストッパー片との対比では十分に効果を有する。
【0022】
〔
参考的形態例〕
図5〜
図7は
参考的形態例に係るサブロック機構付クレセント錠1Bを示したものである。本クレセント錠1Bは、鍵10を前記取り付けベース2に形成された鍵穴に挿入し、回転操作することによって、前記ストッパー片9が上下方向に移動操作されるスライド部材とされるものである。
【0023】
前記ストッパー片9は、詳細には
図7に示されるように、棒状の部材とされ、上部及び下部にスライドガイド棒9a、9bを備え、下部側にスライド操作のための楕円孔9cを有し、上部側に前記サブロック用回転子6の衝合突部6aが衝突する衝合部9dを有する。この衝合部9dには、上記第1形態例と同様に、段状の引っ掛け部9eが形成されている。
【0024】
前記取付けベース2には、
図5に示されるように、偏心突部11aを備えるとともに、鍵9によって回転操作される回動子11を備え、前記偏心突部11aが前記ストッパー片9の楕円孔9cに係合するように、該ストッパー片9が取付けベース2内に設置され、前記回動子11を回動操作することによりストッパー片9が上下方向にスライド操作されるようになっている。
【0025】
図6(A)に示されるように、クレセント錠1の施錠状態(操作レバー5が上側に位置)で、前記ストッパー片9がスライド範囲内で上側に位置した状態では、前記操作レバー5が解錠操作された場合、前記サブロック用回転子6の衝合凸部6aはストッパー片7に衝合することなく、自由に解錠操作が可能となっている。
【0026】
また、
図6(B)に示されるように、クレセント錠1の施錠状態で、前記ストッパー片9が下側に移動されている場合は、前記操作レバー5が解錠操作されても前記サブロック用回転子6の衝合凸部6aが衝合することにより解錠(回動操作)を阻止するようになっている。
【0027】
前記取付けベース2には、上記第1形態例と同様に、前記ストッパー片9が取り付けられる側壁の内側に、段状の受け部2aが形成されており、
図6(B)に示されるように、サブロック施錠時に、前記サブロック用ストッパー片9の引っ掛け部9eが前記取付けベース2に形成した段状の受け部2aに対して掛止するようになっている。
【符号の説明】
【0028】
1A・1B…サブロック機構付クレセント錠、2…取付けベース、3…クレセント軸、4…クレセント、5…操作レバー、6…サブロック用回転子、7・9…ストッパー片、8…スプリング、7b・9e…引っ掛け部、2a…受け部、11…回動子