特許第5694790号(P5694790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694790
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】跳上げ防止具を備えた引込み装置付吊戸
(51)【国際特許分類】
   E05F 1/16 20060101AFI20150312BHJP
   E05F 7/00 20060101ALI20150312BHJP
   E05D 13/00 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   E05F1/16 B
   E05F7/00 Z
   E05D13/00 Z
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-8679(P2011-8679)
(22)【出願日】2011年1月19日
(65)【公開番号】特開2012-149438(P2012-149438A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2013年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155207
【氏名又は名称】株式会社明工
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】中山 孝
【審査官】 川島 陵司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−261299(JP,A)
【文献】 実開平6−87587(JP,U)
【文献】 特開平10−306650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/16
E05D 13/00
E05F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸の上端部に固定された吊り車型ランナ装置が戸枠の鴨居に固設されたガイドレールに沿って走行案内される吊戸と、前記吊り車型ランナ装置に一体的に設けられ、前記吊戸と共にガイドレール内を移動可能とした引込み装置本体と、前記ガイドレールの天井面から内方側に突出させた状態で設けられた係合ピンとからなる引込み装置付吊戸において、
前記引込み装置本体は、ケース内を引戸の開閉方向に沿ってスライド可能に設けられるとともに、前記ケースに形成されたスライド案内溝に係合する係合突部を有し、且つ上端部が前記ケースから突出状態で設けられ前記係合ピンと係脱する関係にあるスライダーと、ピストン先端が前記スライダーに連結された状態で前記ケース内に設けられるピストン式ダンパーと、一端が前記スライダーに係止されるとともに他端が前記ケースに係止され、前記スライダーに引戸の引込み方向の付勢力を与えるスプリング部材とから構成され、
前記スライド案内溝の引戸端部側には、前記スライド案内溝から連続して屈曲状案内溝からなる仮停止部が形成され、
前記スライダーには、引戸の開操作に伴い前記係合ピンに係合して該スライダーを前記スプリング部材の付勢力に抗して引戸端部側に移動させるとともに、スライド案内溝の引戸端部側においてスライダーの係合突部が前記屈曲状案内溝側に案内されることにより該スライダーを揺動させて仮停止状態とし、これに伴い前記係合ピンとの係合が解除される先端側係合片と、引戸の閉操作に伴い前記係合ピンに係合して前記仮停止状態にあるスライダーを揺動動作させ仮停止状態を解除することにより前記先端側係合片と係合ピンとを係合させる基端側係合片とが備えられ、前記引戸の閉操作時に、前記ピストン式ダンパーによる制動力を受けながら前記スプリング部材の付勢力により引戸を閉まり位置まで引き込むようにした引戸の引込み装置であって、
前記先端側係合片は、前記引戸の閉操作時に前記スライダーが仮停止状態にない場合、前記係合ピンを乗り越えることができるように該先端側係合片の一部を弾性変形させ先端側係合片の上端部が前記ケース内に没入可能とされており、
前記吊り車型ランナ装置と、前記引込み装置本体との間に跳上げ防止具を介在させるとともに、該跳上げ防止具は、ブロック状の本体と、上下方向に移動調整可能とされる隙間調整部材とからなり、前記本体の上面がガイドレールの天井面に近接し、前記隙間調整部材の下面が吊戸の上面に近接するように調整され、
吊戸の閉操作時に、前記引込み装置本体が前記係合ピンに衝突した際、前記ガイドレールと吊戸との間に存在する跳上げ防止具により吊戸が跳上がるのを防止したことを特徴とする跳上げ防止具を備えた引込み装置付吊戸。
【請求項2】
前記本体の下面に凹部が形成され、この凹部に前記隙間調整部材が嵌合されている請求項1記載の跳上げ防止具を備えた引込み装置付吊戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開き状態から所定の位置まで閉めた後、閉まり位置まで自動的に引込んで閉止させる引込み装置付吊戸において、閉操作時に吊戸が跳上がるのを防止する跳上げ防止具を備えた引込み装置付吊戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、引戸の上端部に固定された吊り車型ランナ装置が戸枠の鴨居に固設されたガイドレールに沿って走行案内される吊戸や、引戸の下端部に固定された戸車が戸車用レールに沿って走行案内される引戸などの引戸では、開き状態から所定の位置まで閉めた後は、閉まり位置まで自動的に引込んで閉止させる引戸の引込み装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、引戸の上端面に埋設状態で設置された引込み装置本体と、戸枠に固設された係合ピンとからなり、前記引込み装置本体は、引戸開閉方向に沿って係合ピンの進入案内溝が設けられたケースと、該ケース内に引戸開閉方向に沿ってスライド可能に設けられたスライダーと、前記ケース内に前記スライダーに連結された状態で設けられたピストン式ダンパーと、一端が前記スライダーに係止され、他端が前記ケースに係止されたスプリング部材と、前記スライダーに揺動可能に設けられ、前記ケースに形成されたスライド案内溝に係合する係合突部を有し、かつ引戸開閉に伴って前記係合ピンと係脱する関係にある作動カムとから構成された引戸の引込み装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−278057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に係る引戸の引込み装置においては、引戸の開操作時に前記作動カムが仮停止状態に位置決めされており、引戸を閉操作すると、作動カムが係合ピンに衝突した時の衝突力で仮停止状態が解除されるとともに、作動カムに係合ピンが係合した状態となり、その後はスプリング部材の付勢力によって引戸がピストン式ダンパーの制動力を受けながらゆっくりと閉止位置まで引き込まれるものである。
【0006】
特許文献1の引戸は、引戸下面に戸車を有する引戸であるため、作動カムが係合ピンの衝突した際の反動を受けても引戸が跳ね上がることはないが、引戸が吊戸である場合は、作動カムが係合ピンに衝突した際の反動で吊戸の上端を支点として下端側が跳ね上がってしまう問題があった。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、開き状態から所定の位置まで閉めた後、閉まり位置まで自動的に引込んで閉止させる引込み装置付吊戸において、閉操作時に係合ピンへの衝突によって吊戸が跳上がらないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、戸の上端部に固定された吊り車型ランナ装置が戸枠の鴨居に固設されたガイドレールに沿って走行案内される吊戸と、前記吊り車型ランナ装置に一体的に設けられ、前記吊戸と共にガイドレール内を移動可能とした引込み装置本体と、前記ガイドレールの天井面から内方側に突出させた状態で設けられた係合ピンとからなる引込み装置付吊戸において、
前記引込み装置本体は、ケース内を引戸の開閉方向に沿ってスライド可能に設けられるとともに、前記ケースに形成されたスライド案内溝に係合する係合突部を有し、且つ上端部が前記ケースから突出状態で設けられ前記係合ピンと係脱する関係にあるスライダーと、ピストン先端が前記スライダーに連結された状態で前記ケース内に設けられるピストン式ダンパーと、一端が前記スライダーに係止されるとともに他端が前記ケースに係止され、前記スライダーに引戸の引込み方向の付勢力を与えるスプリング部材とから構成され、
前記スライド案内溝の引戸端部側には、前記スライド案内溝から連続して屈曲状案内溝からなる仮停止部が形成され、
前記スライダーには、引戸の開操作に伴い前記係合ピンに係合して該スライダーを前記スプリング部材の付勢力に抗して引戸端部側に移動させるとともに、スライド案内溝の引戸端部側においてスライダーの係合突部が前記屈曲状案内溝側に案内されることにより該スライダーを揺動させて仮停止状態とし、これに伴い前記係合ピンとの係合が解除される先端側係合片と、引戸の閉操作に伴い前記係合ピンに係合して前記仮停止状態にあるスライダーを揺動動作させ仮停止状態を解除することにより前記先端側係合片と係合ピンとを係合させる基端側係合片とが備えられ、前記引戸の閉操作時に、前記ピストン式ダンパーによる制動力を受けながら前記スプリング部材の付勢力により引戸を閉まり位置まで引き込むようにした引戸の引込み装置であって、
前記先端側係合片は、前記引戸の閉操作時に前記スライダーが仮停止状態にない場合、前記係合ピンを乗り越えることができるように該先端側係合片の一部を弾性変形させ先端側係合片の上端部が前記ケース内に没入可能とされており、
前記吊り車型ランナ装置と、前記引込み装置本体との間に跳上げ防止具を介在させるとともに、該跳上げ防止具は、ブロック状の本体と、上下方向に移動調整可能とされる隙間調整部材とからなり、前記本体の上面がガイドレールの天井面に近接し、前記隙間調整部材の下面が吊戸の上面に近接するように調整され、
吊戸の閉操作時に、前記引込み装置本体が前記係合ピンに衝突した際、前記ガイドレールと吊戸との間に存在する跳上げ防止具により吊戸が跳上がるのを防止したことを特徴とする跳上げ防止具を備えた引込み装置付吊戸が提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明では、前記吊り車型ランナ装置と、前記引込み装置本体との間に跳上げ防止具を介在させるとともに、該跳上げ防止具は、ブロック状の本体と、この本体の下面に形成された凹部に嵌合されるとともに、上下方向に移動調整可能とされる隙間調整部材とからなり、前記本体の上面がガイドレールの天井面に近接し、前記隙間調整部材の下面が吊戸の上面に近接するように調整される。従って、吊戸の閉操作時に、前記引込み装置本体が前記係合ピンに衝突した際、前記ガイドレールと吊戸との間に存在する跳上げ防止具により吊戸が跳上がるのを防止することができる。
【0010】
請求項2に係る本発明として、前記本体の下面に凹部が形成され、この凹部に前記隙間調整部材が嵌合されている請求項1記載の跳上げ防止具を備えた引込み装置付吊戸が提供される。
【0011】
上記請求項2記載の発明は、前記本体と、前記隙間調整部材との組合せ状態を規定したものである。
【発明の効果】
【0012】
以上詳説のとおり本発明によれば、開き状態から所定の位置まで閉めた後、閉まり位置まで自動的に引込んで閉止させる引込み装置付吊戸において、閉操作時に係合ピンへの衝突によって吊戸が跳上がらないように制御できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る引込み装置1を適用した引戸2の正面図である。
図2】(A)は図1のII部拡大図でり、(B)はB-B線矢視図である。
図3】戸車8,跳上げ防止具20及び引込み装置本体10を示す半断面斜視図である。
図4】戸車8,跳上げ防止具20及び引込み装置本体10を示す縦断面図である。
図5】引込み装置本体10を示す斜視図である。
図6】スライダー15を示す、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
図7】スライダー15を示す斜視図である。
図8】(A)、(B)はスライダー15の組立要領を示す斜視図である。
図9】跳上げ防止具20を示す、(A)は上側からの斜視図、(B)は下側からの斜視図である。
図10】跳上げ防止具20の縦断面図である。
図11】(A)〜(C)は引込み装置1の作動要領を示す断面図である。
図12】(A)、(B)は引込み装置1の復帰要領を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0015】
〔引込み装置1の構造〕
図1に示される引戸2は、例えばアルミ等の金属材料からなる上框3A、下框3B、縦框3C、3Dによって構成されたフレーム枠3内にパネル7が嵌め込まれたものであり、鴨居6A、敷居6B及び側枠6C、6Dからなる戸枠6に収容されている。
【0016】
前記引戸2は、図示例では引戸2の上端部に固定された吊り車型ランナ装置8が、戸枠の鴨居6Aに固設された上ガイドレール4に沿って走行案内される吊戸式とされたものである。具体的には、前記鴨居6Aには上ガイドレール4が配設されるとともに、敷居6Bには下ガイドレール5が配設され、引戸2の上端部に固定されている吊り車型ランナ装置8が前記上ガイドレール4に沿って走行案内され、かつ引戸2の下端に固定されている下ランナ9が下ガイドレール5に沿って走行案内されることにより、引戸2が開閉自在となっている。
【0017】
図1図3に示されるように、前記上ガイドレール4内には、前記引戸2の戸元側の吊り車型ランナ装置8に一体的に設けられ、前記吊戸2と共にガイドレール4内を移動可能とした引込み装置本体10と、前記ガイドレール4の天井面から内方側に突出させた状態で設けられた係合ピン11とからなる引込み装置が設けられている。また、前記吊り車型ランナ装置8と、前記引込み装置本体10との間には、閉操作時に吊戸2が跳上がるのを防止するために跳上げ防止具20が介在されている。
【0018】
かかる引戸2は、開状態から閉操作が行われると、引込み装置本体10と係合ピン11との係合によって閉まり位置まで引き込まれるようになっている。
【0019】
先ず、前記引込み装置本体10及び係合ピン11からなる引込み装置1の構造について詳細に説明する。
【0020】
前記引込み装置本体10は、図4及び図5に示されるように、ケース12内を引戸2の開閉方向に沿ってスライド可能に設けられるとともに、前記ケース12に形成されたスライド案内溝13に係合する基端側係合突部14a及び先端側係合突部14bを有し、且つ上端部が前記ケース12から突出状態で設けられることにより前記係合ピン11と係脱する関係にあるスライダー15と、ピストン先端が前記スライダー15に連結された状態で前記ケース12内に設けられるピストン式ダンパー16と、一端が前記スライダー15に係止されるとともに他端が前記ケース12に係止され、前記スライダー15に引戸2の引込み方向の付勢力を与えるスプリング部材17とから主に構成されている。
【0021】
前記ケース12は、同図4及び図5に示されるように、断面略方形状のケース本体12Aと、このケース本体12Aの引戸端部側に一体的に設けられ、前記跳上げ防止具20に対して連結するための係止部12Bとから構成されている。
【0022】
前記ケース本体12Aの引戸中央側の略半分には、上下方向に区画する中間壁12aが設けられ、その上側が部材長手方向に沿って上側に開口する前記ピストン式ダンパー16を収容するためのダンパー収容空間12bとされ、下側が部材長手方向に沿って下側に開口する前記スプリング部材17を収容するためのスプリング収容空間12cとされている。前記スプリング収容空間12cの引戸中央側端部には、前記スプリング部材17の一端を係止するための係止溝12eが設けられている。
【0023】
またケース本体12Aの引戸端部側の略半分には、前記スライダー15がスライド自在に備えられる、部材長手方向に沿って上側に開口するスライダー用空間12dとされている。
【0024】
前記スライダー用空間12dの両側壁にはそれぞれ、前記スライド案内溝13が形成されている。前記スライド案内溝13は、引戸2の開閉方向に沿った直線状案内溝13aと、この直線状案内溝13aの引戸端部側に連続して下方向に屈曲する、図示例では下方向に垂下する壁面が形成される屈曲案内溝13bとからなり、前記屈曲状案内溝13bがスライダー15の仮停止部Kを構成している。
【0025】
前記ケース本体12Aの後部には、ローラ12Cが設けられ、ローラ12Cの回転によりガイドレール4を滑らかに走行できるようになっている。
【0026】
一方、前記スライダー15は、図6及び図7に示されるように、前記ピストン先端が連結されるピストン連結部15aと、その下側に延在し前記スプリング部材17の一端が係止される係止溝15dが形成されたスプリング係止部15bと、前記ピストン連結部15aの上側に延在し上端部が前記ケース12の上端から突出状態で設けられる基端側係合片15cと、前記ピストン連結部15aの引戸端部側に延在するとともに、前記基端側係合片15cと所定の離隔幅を設けて、上端部が前記ケース12の上端から突出状態で設けられる先端側係合片15eとから構成されている。前記基端側係合片15cと先端側係合片15eとは、これらの間に前記係合ピン11が係合可能な程度の離隔幅が設けられている。
【0027】
前記スライダー15のピストン連結部15aには通孔15fが形成され、この通孔15fを貫くとともに、ピストン先端に設けられた通孔(図示せず)を貫く軸部材18(図4及び図5参照)が設けられることにより、ピストン先端とスライダー15とが連結されている。前記軸部材18は、両端がスライダー15の両側に突出した状態で設けられ、この突出した両端部が前記スライド案内溝13に係合する基端側係合突部14a、14aを形成している。
【0028】
また、前記スライダー15の先端側係合片15eの中央部には、両側部に突出する先端側係合突部14b、14bが設けられている。
【0029】
前記先端側係合片15eは、より詳細には、図8(A)に示されるように、スライダー15の先端部から横向きレ字状に折り返された折返し部15gと、さらにその先端から下方側に向けて延在する垂下片15hと、この垂下片15hの先端に水平方向に突出するとともに、スライダー本体に係合する水平係止片15iとを有する。そして、没入側に押し込んで前記水平係止片15iをスライダー本体に係合させて図8(B)の状態とする。従って、引戸2の開閉時に係合ピン11が前記垂下片15hに当接し力が加わったとしても、前記水平係止片15iが抜止め防止材となって、前記垂下片15h及び折返し部15gとが抜け出るように上方向側に変形するのを防止する。
【0030】
前記先端側係合片15eは弾性変形可能な樹脂材によって形成することが好ましい。このようにして形成された先端側係合片15eは、上端部から下方向に押圧が加わると、スライダー先端の折り返し部の弾性変形によって上端部が下方向に移動可能となっている。この上下方向の弾性変形量は、スライダー15を引込み装置本体10に組み込んだ場合に前記係合ピン11を乗り越えることができる程度であって、先端側係合片15eの上端部がケース12内に没入可能な程度とすることが好ましい。
【0031】
前記係合ピン11は、図2に示されるように、略角ブロック状に形成され、中心部に形成された通孔から前記鴨居6Aにビス止めされている。
【0032】
次いで、前記跳上げ防止具20は、図9図10に示されるように、ブロック状の本体21と、この本体の下面に形成された凹部21Cに嵌合されるとともに、上下方向に移動調整可能とされる隙間調整部材22とからなる。
【0033】
前記本体21は、引込み装置10側に段状の連結台座部21Aを有するとともに、雌ネジ孔21aを有し、前記引込み装置本体10の係止部12Bを連結台座部21Aに載せ、雌ネジ孔21aに螺入した連結ボルト30によって引込み装置本体10と連結されるようになっている。また、吊り車型ランナ装置8側の側面には連結孔部21Bが形成ているとともに、この連結孔部21Bの天井壁に雌ネジ孔21bが形成され、吊り車型ランナ装置8の凸部8aが連結孔部21Bに嵌合され、雌ネジ孔21bに螺入された連結ボルト31により吊り車型ランナ装置8と連結されるようになっている(図4参照)。
【0034】
前記本体21の下面には、凸形に凹部21Cが形成されているとともに、この凹部21Cの上面壁には上下方向に貫通する通孔21cが形成されている。さらに、上面には左右一対の起立壁21Dを有する。この起立壁21Dの上面がガイドレール4の天井面に対する当接部となる。
【0035】
一方、隙間調整部材22は、前記本体の凹部21Cに整合する形状の部材である。略中央には上下方向に貫通するように、下側から順に大径孔22a、小径孔22bが直線状に連設されているとともに、前記小径孔22bの中間にナット部材23が埋設されている。前記大径孔22aは調整ネジ24の頭部を嵌合するための孔であり、前記小径孔22bは調整ネジ24のネジ部を貫通するための孔である。前記調整ネジ24は、先端部分にネジを有しない軸部を有する。
【0036】
組立は、前記隙間調整部材22を本体21の凹部21Cに嵌合させた状態で、前記大径孔22から調整ネジ24を挿入し、ナット部材23に螺合させながら先端を突出させ、先端のネジを有しない軸部を本体21の通孔21cに貫通させカシメて固定する。従って、ねじ回しを持ち込み、前記調整ネジ24を軸芯回りに回転させると、ナット部材23の移動に伴って、隙間調整部材22が上下方向に移動調整できるようになっている。
【0037】
前記跳上げ防止具20は、前記本体21の上面がガイドレール4の天井面に近接し、前記隙間調整部材22の下面が吊戸2の上面に近接するように調整される。
【0038】
〔引込み装置1の作動説明〕
(引戸2の開操作時)
図11(A)に示されるように、引戸2が閉まり位置にある場合、スライダー15が引戸中央側に位置され、このスライダー15の基端側係合片15cと先端側係合片15eとの間の離隔部分に係合ピン11が位置している。
【0039】
この閉まり状態にある引戸2の開操作を行うと、同図11(B)に示されるように、係合ピン11と先端側係合片15eとの係合により、スライダー15がスプリング部材17の付勢力に抗して引戸端部側に移動するとともに、スライダー15の先端側係合突部14bが屈曲状案内溝13b側に案内されることによりスライダー15を揺動させて仮停止状態とし、これに伴い先端側係合片15eと係合ピン11との係合が解除される。従って図11(C)に示されるように、引戸2をさらに開操作できるようになる。
【0040】
(引戸2の閉操作時)
次に引戸2の閉操作時の作動状態について説明する。引戸2を開き状態(図11(C))から図11(B)に示される所定の位置まで閉操作を行うと、前記開操作によって仮停止状態とされたスライダー15の基端側係合片15cに係合ピン11が衝突して、スライダー15を揺動動作させ仮停止状態が解除される。これによりスライダー15の基端側係合片15cと先端側係合片15eとの離隔部分に係合ピン11が位置し、先端側係合片15eと係合ピン11とが係合した状態となる。その後、前記ピストン式ダンパー16による制動力を受ながらスプリング部材17の付勢力によって、引戸2が閉まり位置まで引き込まれるようになる(図11(A))。
【0041】
ここで、前記スライダー15の基端側係合片15cが係合ピン11に衝突した際、その反動で吊戸2の上端側を支点として下端側が回転するように上方向に跳ね上がることがあるが、前記跳上げ防止具20の本体21の上面がガイドレール4の天井面に近接し、前記隙間調整部材22の下面が吊戸2の上面に近接するように配置されているため、前記係合ピン11に衝突した際、前記ガイドレール4と吊戸2との間に存在する前記跳上げ防止具20により吊戸2が跳上がるのを防止することができる。
【0042】
(スライダー15が仮停止状態にない場合の引戸2の閉操作時)
図12(A)に示されるように、スライダー15が仮停止状態にない引戸2を建て込む場合や、引戸2の開操作時に何らかの理由でスライダー15の仮停止状態が解除された場合など、スライダー15が仮停止状態にない場合の引戸2の閉操作時の作動状態について説明する。この場合、図12(B)に示されるように、先端側係合片15eは、前記係合ピン11を乗り越えることができるように該先端側係合片15eの一部を弾性変形させ先端側係合片15eの上端部がケース12内に没入可能とされているため、引戸2を閉まり位置まで閉操作することにより、図11(A)に示される通常の閉まり状態に復帰できる。その後、再度開操作を行うことにより、スライダー15を仮停止状態にすることができる。
【符号の説明】
【0043】
1…引込み装置、2…吊戸、3A…上框、3B…下框、3C・3D…縦框、4…上ガイドレール、5…下ガイドレール、6…戸枠、6A…鴨居、6B…敷居、6C・6D…側枠、7…パネル、8…吊り車型ランナ装置、9…下ランナ、10…引込み装置本体、11…係合ピン、12…ケース、13…スライド案内溝、14a…基端側係合突部、14b…先端側係合突部、15…スライダー、15c…基端側係合片、15e…先端側係合片、16…ピストン式ダンパー、17…スプリング部材、K…仮停止部、20…跳上げ防止具、21…本体、22…隙間調整部材、24…調整ネジ
図1
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図5
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図12