【実施例1】
【0013】
図1ないし
図3は、本発明の実施例1による車両のドア構造を説明するための図である。
【0014】
図において、1は車両のサイドパネル4の開口4aを開閉可能に配設されたサイドドアを示している。該サイドドア1は、プレス形成されたインナパネル3とアウタパネル2とを中空状をなすように配置し、該両パネル3,2の周縁部をヘミング加工により結合してなるドア本体1aと、該ドア本体1aの上縁部に一体形成されたサッシ部1bとを有する。前記ドア本体1a内にはドアガラス8及びドアガラス昇降機構(不図示)等が配設されている。なお、
図2の2bは前記アウタパネル2の内面にスポット溶接や接着剤等で貼設され、アウタパネル2の張り剛性を確保するためのリインフォースである。
【0015】
前記アウタパネル2,インナパネル3の上端縁部には、ドアガラス8のシール部材(不図示)を装着するためのフランジ部2a,3aが形成されている。また、前記インナパネル3には、車両内側に張り出す膨出部5が前記フランジ部3aの下縁に沿って前後方向に延びるように形成されている。
【0016】
そして前記フランジ部3aの前部には、脆弱部3b,3cが凹形状に切り欠き形成されている。なお、該脆弱部3b,3cは、前記サイドドア1の内面にドアトリムを装着する際の位置決め用にも併用されている。
【0017】
前記フランジ部3aの、着座した乗員Pの上部、具体的には肩の側方に位置する部分には、凸部3dが車両内側に突出するように折り曲げ形成されている。また、前記膨出部5の、前記乗員Pの肩の側方に位置する部分には、段部5aが車両外側に段落ちするように形成されている。なお、3eはインナパネル3に形成された作業用開口である。
【0018】
このようにして、前記インナパネル3の前記乗員Pの肩の側方に位置する部分には前記フランジ部3aの凸部3d及び膨出部5の段部5aにより略平面状の平面部7が形成されている。詳細には、
図2に示すように前記フランジ3aの前記凸部3dは前記膨出部5の段部5aより僅かに車両外側に位置している。
【0019】
側突時において、前記ドア1に外部から荷重Fが作用すると、前記フランジ3aの脆弱部3b,3cに応力が集中し、また、前記平面部7が剛性断点となるため、
図3に二点鎖線で示すように前記インナパネル3の脆弱部3b,3c付近が折れ曲がるように車内側に変位する。この場合において、前記剛性断点となる平面部7が乗員Pの側方に位置しており、また脆弱部3b,3cが乗員Pより前方に位置しているので、前記変位による頂点aは乗員Pより前方に位置することとなる。また、万が一、前記荷重Fが想定以上となり、前記変位が前記乗員Pに当接するほどの大きさとなった場合、前記平面部7が前記乗員Pと当接することとなる。
【0020】
本実施例では、フランジ部3aの乗員Pより前方部分に脆弱部3b,3cを形成し、凸部3dと段部5aとからなる平面部7を乗員Pの肩の側方に位置するように形成したので、側突時にドア1に、外部から荷重Fが作用すると、乗員Pより前方の前記脆弱部3b,3cに応力が集中し、また乗員Pの側方に位置する前記平面部7が剛性断点となることから、前記インナパネル3は乗員Pより前方に位置する脆弱部3b,3c付近から車内側に折れ変位することとなり、該変位の頂点aが、乗員Pに当接するのを防止でき、前記乗員Pの保護性能を確保することができる。
【0021】
また、前記インナパネル3の、着座した乗員Pの肩の側方に位置する部分に、前記凸部3d及び段部5aから成る平面部7を形成したので、側突時において前記荷重Fが想定以上となり、前記インナパネル3の変位が前記乗員Pに当接する大きさとなった場合でも、前記インナパネル3の平面部7が前記乗員Pに当接することになるため、前記乗員Pに対する障害値を抑制することができる。
【0022】
また、前記インナパネル3の形状の工夫のみで側突時における車両内側への変形をコントロールすることができるため、前記インナパネル3にベルトラインリインフォースを配設していないドアにも適用でき、従ってベルトラインリインフォースを必要とする従来構造と比較して、重量,コストの上昇を回避できる。
【0023】
なお、本発明は、ベルトラインリインフォースが配設されていないドアに特に有用であるが、前記インナパネル3にベルトラインリインフォースを配設したドアにおいても勿論適用可能である。
【0024】
また、本実施例では、前記脆弱部3b,3cを2ヶ所に形成した場合を説明したが、前記脆弱部は1ヶ所のみに形成しても良い。