特許第5694793号(P5694793)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694793
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】車両のドア構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20150312BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   B60J5/00 P
   B60J5/00 Z
   B60J5/04 P
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-12772(P2011-12772)
(22)【出願日】2011年1月25日
(65)【公開番号】特開2012-153209(P2012-153209A)
(43)【公開日】2012年8月16日
【審査請求日】2013年11月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】先田 款
(72)【発明者】
【氏名】池田 光太郎
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−276741(JP,A)
【文献】 実開平03−016514(JP,U)
【文献】 特開平08−011536(JP,A)
【文献】 特開2009−132302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/04,5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナパネルとアウタパネルとにより中空状に形成されたドアが車両側部に配設され、前記インナパネル上端縁部には、ガラスシール部材を配設するためのフランジ部が車両前後方向に延びるように形成され、該フランジ部下方には、車室内側に張り出す膨出部が車両前後方向に延びるように形成された車両のドア構造において、
前記フランジ部の、着座した乗員より前方部分には、脆弱部が形成され、
前記フランジ部の、前記乗員のの側方に位置する部分には、凸部が車両内側に突出するように形成され、
前記膨出部は、前記乗員の肩より前方に形成され、該膨出部の、後端で、かつ前記乗員のの側方に位置する部分には、段部が車両外側に段落ちするように形成され、
前記インナパネルの前記乗員のの側方に位置する部分は、前記フランジ部の凸部及び前記膨出部の段部により、略平面状となっている
ことを特徴とする車両のドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側突時における乗員保護性能を改善した車両のドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両側突時における乗員の保護性能を改善した車両のドア構造として、従来、例えば、特許文献1に開示されたものがある。この従来構造は、ベルトラインリインフォースの乗員より前方部分に分岐凸部からなる剛性断点を形成することにより、車両側突時、ドアを乗員より前方の前記剛性断点を起点として車両内側に変形させ、乗員を保護するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2007−331584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記特許文献1の構造は、ベルトラインリインフォースに剛性断点を設ける構造であり、従ってベルトラインリインフォースが配設されているドアにしか適用できないという問題がある。また、側突時においてドアに想定以上の荷重が入力された場合、ドアインナパネルが乗員に当接してしまい、障害が発生する可能性があるという問題がある。
【0005】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、ベルトラインリインフォースを備えていないドアにも適用でき、乗員の保護性能を向上できる車両のドア構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、インナパネルとアウタパネルとにより中空状に形成されたドアが車両側部に配設され、前記インナパネル上端縁部には、ガラスシール部材を配設するためのフランジ部が車両前後方向に延びるように形成され、該フランジ部下方には、車室内側に張り出す膨出部が車両前後方向に延びるように形成された車両のドア構造において、
前記フランジ部の、着座した乗員より前方部分には、脆弱部が形成され、前記フランジ部の、前記乗員のの側方に位置する部分には、凸部が車両内側に突出するように形成され、前記膨出部は、前記乗員の肩より前方に形成され、該膨出部の、後端で、かつ前記乗員のの側方に位置する部分には、段部が車両外側に段落ちするように形成され、前記インナパネルの前記乗員のの側方に位置する部分は、前記フランジ部の凸部及び前記膨出部の段部により、略平面状となっていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フランジ部の乗員より前方部分に脆弱部を形成し、インナパネルの、乗員の上部の側方に位置する部分を、前記フランジ部に形成された凸部と、膨出部に形成された段部とにより略平面状にした。従って本発明におけるインナパネルでは、前記平面状の部分は、形状の急な変化により外力に対する剛性が他の部分に比べて低下し、いわゆる剛性断点となる。
【0008】
そのため側突時においては、インナパネルは、前記平面状の部分が剛性断点として折れ変形し易く、かつ、前記脆弱部が車両内方側に変位し易い。そのため、ドアは乗員より前方部分にて内方に折れ曲がることとなり、従ってドアの変位部分が乗員に当接するのを防止でき、乗員を保護することができる。
【0009】
また、前記インナパネルの、前記乗員の上部の側方に位置する部分を平面状にしてこれを剛性断点としたので、想定以上の側突荷重により前記インナパネルが乗員の上部に当接する位置まで変位したとしても、前記インナパネルの平面状の部分が乗員に当接することになるため、乗員の障害値を抑制することができる。
【0010】
さらにまた、本発明では、インナパネルの形状の工夫のみで側突時におけるドアの変形をコントロールするようにしているので、ベルトラインリインフォースを備えていないドアにも適用でき、従ってベルトラインリインフォースに凸部を設ける従来構造と比較して、重量,コストの上昇を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1によるドア構造を示す斜視図である。
図2】前記ドア構造の断面側面図(図1のII-II線断面図)である。
図3】側突時における前記インナパネルの変形状態を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1ないし図3は、本発明の実施例1による車両のドア構造を説明するための図である。
【0014】
図において、1は車両のサイドパネル4の開口4aを開閉可能に配設されたサイドドアを示している。該サイドドア1は、プレス形成されたインナパネル3とアウタパネル2とを中空状をなすように配置し、該両パネル3,2の周縁部をヘミング加工により結合してなるドア本体1aと、該ドア本体1aの上縁部に一体形成されたサッシ部1bとを有する。前記ドア本体1a内にはドアガラス8及びドアガラス昇降機構(不図示)等が配設されている。なお、図2の2bは前記アウタパネル2の内面にスポット溶接や接着剤等で貼設され、アウタパネル2の張り剛性を確保するためのリインフォースである。
【0015】
前記アウタパネル2,インナパネル3の上端縁部には、ドアガラス8のシール部材(不図示)を装着するためのフランジ部2a,3aが形成されている。また、前記インナパネル3には、車両内側に張り出す膨出部5が前記フランジ部3aの下縁に沿って前後方向に延びるように形成されている。
【0016】
そして前記フランジ部3aの前部には、脆弱部3b,3cが凹形状に切り欠き形成されている。なお、該脆弱部3b,3cは、前記サイドドア1の内面にドアトリムを装着する際の位置決め用にも併用されている。
【0017】
前記フランジ部3aの、着座した乗員Pの上部、具体的には肩の側方に位置する部分には、凸部3dが車両内側に突出するように折り曲げ形成されている。また、前記膨出部5の、前記乗員Pの肩の側方に位置する部分には、段部5aが車両外側に段落ちするように形成されている。なお、3eはインナパネル3に形成された作業用開口である。
【0018】
このようにして、前記インナパネル3の前記乗員Pの肩の側方に位置する部分には前記フランジ部3aの凸部3d及び膨出部5の段部5aにより略平面状の平面部7が形成されている。詳細には、図2に示すように前記フランジ3aの前記凸部3dは前記膨出部5の段部5aより僅かに車両外側に位置している。
【0019】
側突時において、前記ドア1に外部から荷重Fが作用すると、前記フランジ3aの脆弱部3b,3cに応力が集中し、また、前記平面部7が剛性断点となるため、図3に二点鎖線で示すように前記インナパネル3の脆弱部3b,3c付近が折れ曲がるように車内側に変位する。この場合において、前記剛性断点となる平面部7が乗員Pの側方に位置しており、また脆弱部3b,3cが乗員Pより前方に位置しているので、前記変位による頂点aは乗員Pより前方に位置することとなる。また、万が一、前記荷重Fが想定以上となり、前記変位が前記乗員Pに当接するほどの大きさとなった場合、前記平面部7が前記乗員Pと当接することとなる。
【0020】
本実施例では、フランジ部3aの乗員Pより前方部分に脆弱部3b,3cを形成し、凸部3dと段部5aとからなる平面部7を乗員Pの肩の側方に位置するように形成したので、側突時にドア1に、外部から荷重Fが作用すると、乗員Pより前方の前記脆弱部3b,3cに応力が集中し、また乗員Pの側方に位置する前記平面部7が剛性断点となることから、前記インナパネル3は乗員Pより前方に位置する脆弱部3b,3c付近から車内側に折れ変位することとなり、該変位の頂点aが、乗員Pに当接するのを防止でき、前記乗員Pの保護性能を確保することができる。
【0021】
また、前記インナパネル3の、着座した乗員Pの肩の側方に位置する部分に、前記凸部3d及び段部5aから成る平面部7を形成したので、側突時において前記荷重Fが想定以上となり、前記インナパネル3の変位が前記乗員Pに当接する大きさとなった場合でも、前記インナパネル3の平面部7が前記乗員Pに当接することになるため、前記乗員Pに対する障害値を抑制することができる。
【0022】
また、前記インナパネル3の形状の工夫のみで側突時における車両内側への変形をコントロールすることができるため、前記インナパネル3にベルトラインリインフォースを配設していないドアにも適用でき、従ってベルトラインリインフォースを必要とする従来構造と比較して、重量,コストの上昇を回避できる。
【0023】
なお、本発明は、ベルトラインリインフォースが配設されていないドアに特に有用であるが、前記インナパネル3にベルトラインリインフォースを配設したドアにおいても勿論適用可能である。
【0024】
また、本実施例では、前記脆弱部3b,3cを2ヶ所に形成した場合を説明したが、前記脆弱部は1ヶ所のみに形成しても良い。
【符号の説明】
【0025】
1 サイドドア
2 アウタパネル
3 インナパネル
3a フランジ部
3b,3c 脆弱部
3d 凸部
5 膨出部
5a 段部
7 平面部
P 乗員
図1
図2
図3