(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ノズルとして、外管と、該外管の内側に配置された内管とを有する二重管ノズルを用い、コア−クラッド構造を有する光ファイバーを製造する請求項3に記載の光ファイバーの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の光ファイバー製造装置は、光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによって光ファイバーを製造(紡糸)する、光ファイバー製造装置である。即ち、本発明の光ファイバー製造装置により製造された光ファイバーは、光硬化性組成物の硬化物(樹脂硬化物)より構成された光ファイバーである。
【0020】
[光硬化性組成物]
上記光硬化性組成物は、光を照射することによって硬化して樹脂硬化物を与える組成物である。上記光硬化性組成物としては、例えば、光の照射により速やかに硬化する、公知慣用の光硬化性組成物(ラジカル重合性組成物、カチオン重合性組成物、アニオン重合性組成物等)、あるいは、後述する特定の光硬化性組成物などを用いることができる。中でも、上記光硬化性組成物は、紫外線の照射により硬化する、紫外線硬化性組成物であることが好ましい。
【0021】
上記光硬化性組成物は、室温(約25℃)において液体である。即ち、室温において流動性を有する液状物である。上記光硬化性組成物を光ファイバーの原料として用いることにより、加熱や溶剤の使用により粘度を低下させることなく、室温で紡糸が可能となる。さらに、ろ過によって光硬化性組成物中の不純物を容易に除去することができるため、高品質の光ファイバーを得やすい。一方、室温において固体である組成物(樹脂組成物)を光ファイバーの原料とすると、加熱や溶剤の使用により粘度を低下させない限り、室温における紡糸が困難であり、コスト面で不利となる。また、一般に、室温において固体である組成物(樹脂組成物)は、不純物の除去操作が煩雑である。
【0022】
上記光硬化性組成物の25℃における粘度は、ノズルから吐出させることができればよく、特に限定されないが、10000〜500000cPが好ましく、より好ましくは10000〜100000cP、さらに好ましくは50000〜70000cPである。25℃における粘度が10000cP未満であると、ノズルから吐出させた光硬化性組成物が液滴状となりやすく、紡糸がしにくい傾向にある。一方、25℃における粘度が500000cPを超えると、ノズルから吐出させるために加熱や溶剤の使用により粘度を低下させることが必要となる場合がある。なお、上記の25℃における粘度は、例えば、E型粘度計(商品名「VISCONIC」、(株)トキメック製)を用いて測定することができる(ローター:1°34´×R24、回転数:0.5rpm、測定温度:25℃)。
【0023】
[光ファイバー製造装置]
本発明の光ファイバー製造装置は、光硬化性組成物を吐出するためのノズルと、上記ノズルから吐出された糸状の光硬化性組成物に光を照射するための光照射装置とを備え、さらに、前記ノズルの吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm
2以下にするための制御手段を備えることを特徴としている。以下、本発明の光ファイバー製造装置について、必要に応じて図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の光ファイバー製造装置、及び該製造装置を用いて光ファイバーを製造する一実施形態を示す概略図である。
図1において、本発明の光ファイバー製造装置は、ノズル1と、該ノズル1の先端部分の吐出口11の下方で光を出射するように配置された光照射装置4から構成される。なお、
図1における光照射装置4は、光を出力する光源装置43、該光を伝送するライトガイド42、及び端部(出力端)より光を出射するライトガイド先端部41より構成されている。なお、
図1の右側の光照射装置は、ライトガイドの一部と光源装置を省略して描いているが、左側の光照射装置4と同じものを表し、その他の図面においても同様である。また、
図1における51及び52は、後述の、ノズル1の吐出口11における光の照射強度を0.2mW/cm
2以下にするための制御手段としての遮光部材(51:遮光筒、52:遮光板)を表す。
【0025】
図1の光ファイバー製造装置を用いた光ファイバーの製造に際しては、まず、ノズル1の吐出口11から鉛直方向下方に光硬化性組成物2を吐出し、次いで、ノズル1より垂下した該光硬化性組成物2に対し、光照射装置4により光を照射する。これにより、光硬化性組成物2が硬化し、光ファイバー3が得られる。
【0026】
(ノズル)
本発明の光ファイバー製造装置におけるノズルは、その内側に光硬化性組成物を通液し、吐出口から吐出する役割を担っている。上記ノズルの吐出口から吐出された光硬化性組成物は、通常、細い径を有する糸状(ファイバー状)に形成される。
【0027】
上記ノズルは、筒状(中空の柱状)の形状を有し、その先端(一方の端部)に光硬化性組成物を吐出するための吐出口を有している。上記ノズルの吐出口に対する反対側の端部は、特に限定されないが、通常、必要に応じて適宜な管を介して、光硬化性組成物を貯蔵するタンクや定量ポンプなどに接続される。
【0028】
上記ノズルの形状は、筒状であればよく、特に限定されないが、例えば、円筒状であってもよいし、角筒状であってもよい。中でも、低伝播損失の光ファイバーを作製する観点で、円筒状が好ましい。
【0029】
上記ノズルの材質は、特に限定されず、例えば、SUS、アルミ、樹脂などが挙げられる。中でも、耐久性、強度の観点で、SUSが好ましい。
【0030】
上記ノズルは、特に、光ファイバーのコアとクラッドの中心を合わせる観点で、外管と、該外管の内側に配置された内管とを有する二重管ノズルであることが好ましい。より詳しくは、上記二重管ノズルとは、筒状(特に、円筒状)の外管の内側に、該外管の内径よりも小さな外径を有する筒状(特に、円筒状)の内管が配置された二重管構造を有するノズルである。
図2及び
図3は、二重管ノズルの一例を示す概略図であり、
図2は斜視図を、
図3は
図2におけるA−A断面図を表す。
図2及び
図3において、12は外管を、13は内管を表す。このような二重管ノズルを用いた場合、内管13の内側にコアを形成する光硬化性組成物(「コア剤」と称する場合がある)を通液し、外管12と内管13の間にクラッドを形成する光硬化性組成物(「クラッド剤」と称する場合がある)を通液することにより、コア剤とクラッド剤とを同時にノズルの吐出口11から吐出することができる。次いで、これら光硬化性組成物(コア剤及びクラッド剤)に光を照射し硬化させることによって、一段階でコア−クラッド構造を有する光ファイバー(コアとクラッドの二重(二層)構造の光ファイバー)を製造することができる。
【0031】
上記二重管ノズルにおける外管の径(内径及び外径)、内管の径(内径及び外径)は、製造される光ファイバーのコア径及びクラッド径、光硬化性組成物の粘度や吐出速度等により適宜選択することができ、特に限定されない。具体的には、例えば、上記二重管ノズルにおける外管の内径は、2〜8mmが好ましく、より好ましくは2.4〜5.4mmである。さらに、上記二重管ノズルにおける内管の外径は、例えば、1〜7mmが好ましく、より好ましくは1.5〜4mmであり、上記内管の内径は、例えば、0.6〜6.4mmが好ましく、より好ましくは1.1〜3.4mmである。
【0032】
上記二重管ノズルは、少なくとも吐出口側の先端部分において、外管の軸(中心軸)と内管の軸(中心軸)とが一致していることが好ましい。このような二重管ノズルを用いることにより、コアの中心軸とクラッドの中心軸とが一致した光ファイバーを容易に製造することができる。このように中心軸が一致した光ファイバーは、光ファイバー同士の接続や他のデバイス(例えば、コネクターや光源装置など)との接続に際して、高い信頼性を発揮できる。
【0033】
上記二重管ノズルは、外管の軸と内管の軸とを一致させるために、外管の内側における内管の位置を調整するための調整機構(「位置調整機構」と称する場合がある)を有していることが好ましい。上記位置調整機構は、内管の位置を調整できるものであれば特に限定されないが、例えば、外管を貫通し、先端を内管の外面に接触させるように配置したねじ(調整用ねじ)を、簡便な位置調整機構として利用することができる。
図4は、位置調整機構を備えた二重管ノズルの一例を表す概略図(二重管ノズルの径方向の断面図)である。
図4において、14は調整用ねじを表す。
図4においては、3つの調整用ねじの先端を、内管に対して等間隔に接触させることによって位置調整機構が構成されており、これら調整用ねじのねじ込み具合をそれぞれ調節して、外管の内側における内管の位置を調整できる。但し、用いる調整用ねじの大きさ、数、配置の仕方等は、これに限定されるものではない。
【0034】
なお、本発明の光ファイバー製造装置におけるノズルは、上記の二重管ノズルに限定されず、単管からなるノズルであってもよいし、三重管以上の多重管構造を有するノズルであってもよい。上記ノズルは、製造する光ファイバーの構造や形状に応じて、適宜選択することができる。
【0035】
(光照射装置)
本発明の光ファイバー製造装置における光照射装置は、ノズルから吐出された糸状の光硬化性組成物に光を照射し、硬化させる役割を担う。ノズルの吐出口から伸びた糸状の光硬化性組成物を硬化させることにより、光ファイバーが得られる。
【0036】
上記光照射装置により照射する光は、光硬化性組成物を硬化させることができる光であればよく、特に限定されないが、例えば、紫外線、赤外線、可視光線、電子線などを用いることができる。中でも、一般的な光開始剤を使うことができる観点で、紫外線が好ましい。即ち、本発明の光ファイバー製造装置における光照射装置は、紫外線照射装置であることが好ましい。
【0037】
上記光照射装置は、光硬化性組成物を硬化させることができる光(特に、紫外線)を出射(放射)し、光硬化性組成物に照射することができる、公知慣用の光照射装置を用いることができる。具体的には、例えば、紫外線を出射する光照射装置(紫外線照射装置)としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアーク、メタルハライドランプ、太陽光、LEDランプ、レーザーなどの光源を用いることができる。また、これらの光源と、該光源より出力した光を伝送するためのライトガイドを組み合わせたもの、及びこれらと各種光学系(例えば、レンズやミラーなど)等を組み合わせたもの等を、光照射装置として用いることができる。
【0038】
なお、本明細書においては、上記光照射装置の中で、特に、光を出射する部分のことを「出射部」と称する場合がある。例えば、
図1に示す光照射装置4においては、ライトガイドの先端部分41の端部(出力端)が出射部である。
【0039】
本発明の光ファイバー製造装置においては、上記光照射装置を用いて光硬化性組成物に対して光を照射する方法は特に限定されない。例えば、上記光照射装置の出射部の配置や数は、特に限定されない。特に、光硬化性組成物に対して光を均一に照射できるように光照射装置の出射部を配置することが好ましい。
図5は、本発明の光ファイバー製造装置における光照射装置の一例を示す概略図(平面図)である。
図5における光照射装置は、ノズルの吐出口の下方において3方向から光を出射し、光硬化性組成物に照射する光照射装置である。上記光照射装置は、光硬化性組成物に対して等距離で、互いに等間隔に配置された出射部(ライトガイドの先端部分41の出力端)を有する。
図5において、21は光硬化性組成物が通過する位置を表し、44及び45は、本発明の光ファイバー製造装置において、光照射装置のライトガイドの先端部分41を固定するための土台(支持体)を表す。但し、光照射装置は、これに限定されるものではなく、例えば、
図6に示す光照射装置のように、2方向から光を照射するものであってもよいし、1つの方向のみや、4つ以上の方向から光を照射するもの等であってもよい。また、光照射装置は、ノズルの吐出口の下方において光を出射するものに限らず、ノズルの吐出口よりも上方から光を出射するものであってもよい(例えば、
図13参照)。
【0040】
さらに、上記光照射装置は、光を光硬化性組成物に対して効率的に照射するため、必要に応じて、適宜な光学系と組み合わせて使用してもよい。具体的には、例えば、上記光照射装置からの光を集光レンズ(凸レンズやシリンドリカルレンズなど)で集光して、より強度の高い光を光硬化性組成物に照射したり、いったん光硬化性組成物に照射した光をミラー(反射ミラー)により反射させて、再度光硬化性組成物に照射することも可能である。上記光学系を用いることで、光の有効利用を図ることができ、光ファイバーの生産性を向上させることができる。上記光学系としては、上記に限定されるものではなく、公知慣用の光学機器等において通常用いられる光学系等を利用することができる。
【0041】
(制御手段)
本発明の光ファイバー製造装置は、上述のノズルと光照射装置を備えることに加え、さらに、上記ノズルの吐出口における光の照射強度(以下、単に「吐出口における光の照射強度」と称する場合がある)を0.2mW/cm
2以下にするための制御手段を備える。
【0042】
上記「吐出口における光の照射強度」とは、本発明の光ファイバー製造装置において、光硬化性組成物を送液しないこと以外は光ファイバー製造時と全く同一の装置構成及び条件で光照射装置から光を出射させた時に、ノズルの吐出口において測定される光の照射強度(単位:mW/cm
2)を意味する。上記照射強度の測定方法は、特に限定されないが、例えば、パワーメータ(商品名「紫外線光量計UTI−250」、ウシオ電機(株)製)を用いて測定することができる。
【0043】
上記吐出口における光の照射強度は、0.2mW/cm
2以下に制御されていればよく、特に限定されないが、線径が均一な光ファイバーの取得や製造時の糸切れ防止の観点から、0.1mW/cm
2以下が好ましい。上記吐出口における光の照射強度が0.2mW/cm
2を超えると、ノズルの先端の吐出口において光硬化性組成物の硬化反応(重合反応)が進行し、吐出口付近の光硬化性組成物の粘度が変動したり、詰まりを生じたりしてしまう。その結果、ノズルから吐出される光硬化性組成物の線径が安定せず、線径が一定の光ファイバーが得られなかったり、製造時に糸切れが頻発し光ファイバーの生産性が低下してしまう。
【0044】
上記制御手段は、吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm
2以下に制御できるものであれば、特に限定されない。
【0045】
本発明の光ファイバー製造装置により製造される光ファイバーの原料は、室温において液体である光硬化性組成物であるため、ノズルから吐出された上記光硬化性組成物が糸状(ファイバー状)の形状を保持できる比較的早い段階で光を照射し、硬化させる必要がある。このため、本発明の光ファイバー製造装置は、光硬化性組成物の光が照射される部分とノズルの吐出口との距離をできるだけ近くする必要があり、必然的に、光硬化性組成物に照射する光が吐出口付近に到達しやすい構造を有することになる。このような観点から、上記制御手段としては、例えば、光の広がりを抑制したり、光照射装置の出射部とノズルの吐出口の間に配置して上記吐出口に影を形成することができる、以下の遮光部材を用いることが有効である。
【0046】
図7には、上記遮光部材の一例としての、筒状の遮光部材51(「遮光筒」と称する場合がある)を示す。上記遮光筒51により光照射装置の出射部(ライトガイド先端部分41の出力端)を覆うことによって、出射される光が必要以上に広がることを防止し、ノズルの吐出口への光の伝播を抑制することができる(
図1参照)。上記遮光筒の径や長さ等は、光照射装置の出射部の形状等に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。
【0047】
また、上記遮光部材としては、光照射装置の出射部とノズルの吐出口の間に配置可能な板状の遮光部材(「遮光板」と称する場合がある)を使用できる(
図1参照、
図1における52)。このような遮光板を用いることにより、光照射装置の出射部を遮光筒で覆った場合でもなお漏れ出す弱い光を遮ることができる。このため、上記の遮光板及び遮光筒は組み合わせて使用することが有効である。上記遮光板の形状や大きさは、特に限定されないが、例えば、
図8に示す円板状の遮光板や、
図9に示す円錐状の遮光板などを用いることができる。上記遮光板は、設置のし易さの観点から、光硬化性組成物を通過させるための孔(
図8、
図9における53)を有することが好ましい。
【0048】
上記遮光筒、遮光板などの遮光部材を形成する材質は、特に限定されない。例えば、SUS、アルミ、樹脂、紙などを使用できる。また、上記遮光部材は、特に限定されないが、光の反射を防止する観点で、黒色であることが好ましい。
【0049】
(光の照射角度の制御)
本発明の光ファイバー製造装置においては、均一な線径の光ファイバーの取得、及び糸切れの抑制等の効果をより高度なレベルで得るために、光硬化性組成物に対する光の照射角度が特定範囲に制御されていることが好ましい。具体的には、本発明の光ファイバー製造装置においては、光照射装置から出射された光線のうち照射強度が最大となる光線の方向と、光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面(平面)とがなす角度の最小値θが、下記式(I)の関係を満たすように制御されていることが好ましい。
θ ≧ ψ/2 (I)
上記式(I)中、ψは、光照射装置から出射された光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線同士がなす角度の最大値(「広がり角」と称する場合がある)である。
【0050】
上記光照射装置(光照射装置の出射部)から出射される光線のうち、照射強度が最大となる光線(「最大強度光」と称する場合がある)は、厳密には、出射部から出射される光の光強度分布を測定することにより特定することができる。一般的には、光照射装置の出射部(例えば、ライトガイド先端部分の出力端)の正面に出射される光線が最大強度光である。従って、例えば、ライトガイドの先端部分を、光硬化性組成物の吐出方向に直交する平面(通常は、水平面)に対して角度θだけ光硬化性組成物の吐出方向側(例えば、下方)に傾けることによって、最大強度光の方向と、光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値をθとすることができる(例えば、
図11(a)参照)。
【0051】
上記式(I)中、ψは、光照射装置(光照射装置の出射部)から出射された光線のうち、照射強度が最大値(最大強度光の照射強度)の3%となる光線同士がなす角度の最大値(広がり角)である。但し、光ファイバーを製造する際に、出射部を上述の遮光筒で覆う場合には、上記ψは、遮光筒で覆った状態の出射部から出射された光の広がり角を意味するものとする。なお、上記広がり角が小さい(狭い)ほど、光照射装置から出射される光の指向性が高いことを意味する。
【0052】
図10は、光照射装置から出射された光の広がり角ψを説明する概略図(側面図、遮光筒を用いた場合)である。
図10における61は最大強度光を、62は照射強度が最大強度光の3%となる光線を表す。
図10に示すように、広がり角ψは、照射強度が最大強度光の3%となる光線同士がなす角の最大値63により定義される。なお、出射部を遮光筒で覆うことにより、通常、広がり角ψは小さくなる傾向にある。
【0053】
上記ψは、例えば、出射部から一定距離(例えば1.5cm)における光強度分布を測定することにより、導出することができる。なお、光強度分布は、例えば、紫外線光量計を用い、その受光器を照射光の中心(出射部中心の正面)から周辺部に向かって少しずつ場所を移動することにより測定することができる。
【0054】
本発明の光ファイバー製造装置においては、光照射装置から出射される最大強度光の方向と光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θを、上記式(I)の関係を満たすように制御することにより、線径が均一な光ファイバーの取得、及び製造時の糸切れ抑制等の効果をより高度なレベルで得ることができる。これは、以下の理由によるものである。
図11は、最大強度光の方向と光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θと光の広がり角ψの関係を説明する概略図(側面図)である。
図11の(a)はθ≧ψ/2の場合、即ち、θとψとが上記式(I)の関係を満たす場合の概略図である。この場合、光照射装置から出射される光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線62(ノズル側)と、該光線の光硬化性組成物に対する入射面がなす角Xは、「90°+(θ−ψ/2)」で表される。従って、θ≧ψ/2(即ち、θ−ψ/2≧0)の場合には、Xは90°又は鈍角となり、照射強度が最大値の3%となる光線62(ノズル側)は、光硬化性組成物に対して垂直に、又は吐出方向側に傾いて入射することになる。この場合、照射強度が最大値の3%となる光線62(ノズル側)は、光硬化性組成物中を吐出方向に向かって伝播し、一方でノズル側に伝播し得る光は、照射強度が最大値の3%未満の光線のみである。このため、ノズルの吐出口付近で光硬化性組成物の硬化反応が進行しにくく、線径が均一な光ファイバーの取得、及び糸切れ抑制の効果が得られる。これに対して、θとψとが上記式(I)の関係を満たさないと、Xは鋭角となるため(
図11の(b)参照)、少なくとも照射強度が最大値の3%の光線はノズル方向に伝播し、光ファイバーの製造に悪影響を及ぼす場合がある。
【0055】
本発明の光ファイバー製造装置は、光の照射角度(具体的には、最大強度光の方向と光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θ)を制御する観点から、上記光照射装置による照射角度を調整するための機構(「照射角度調整機構」と称する場合がある)を有することが好ましい。
図12は、本発明の光ファイバー製造装置における、照射角度調整機構を備える光照射装置の一例を示す概略図である。
図12の光照射装置においては、照射角度調整機構としてのねじ46(角度調整用ねじ)を備えることにより、ライトガイドの先端部分の角度を自由に調整することができる。
【0056】
(その他)
本発明の光ファイバー製造装置においては、上記のノズル、光照射装置、制御手段のほか、例えば、ノズルから吐出する光硬化性組成物の量(吐出量)を制御するために、定量ポンプを用いることができる。光硬化性組成物の吐出量を制御することによって、光ファイバーの線径を制御することができる。一般に、吐出量を多くすると、光硬化性組成物(光ファイバー)の線径は太くなる。なお、二重管ノズルを用いる場合には、コア剤とクラッド剤の吐出量をそれぞれ独立に制御することによって、得られる光ファイバーのコアの径とクラッドの径を自在に制御することができる。
【0057】
また、本発明の光ファイバー製造装置においては、製造した光ファイバーを巻き取り、回収するための巻取り装置(巻取り機)を用いることができる。巻取り装置による光ファイバーの巻取り速度を制御することによって、光ファイバーの線径を制御することが可能である。一般に、巻取り速度を速くすると、光硬化性組成物(光ファイバー)の線径は細くなる。
【0058】
さらに、本発明の光ファイバー製造装置は、必要に応じ、その他の機器や装置(例えば、加熱ユニット、冷却ユニット、ファイバー径測定装置、ファイバー張力測定装置など)を備えていてもよい。
【0059】
(光ファイバー製造装置の他の実施形態)
本発明の光ファイバー製造装置には、上述のように、ノズルの吐出口の下方に光照射装置の出射部を配置する実施形態(例えば、
図1参照)のほか、ノズルの吐出口の上方に光照射装置の出射部を配置し、吐出口よりも上方から光を出射する実施形態(当該形態の装置を「落射方式の光ファイバー製造装置」と称する場合がある)も含まれる。
図13は、本発明の光ファイバー製造装置、及び該製造装置を用いて光ファイバーを製造する一実施形態(落射方式の場合)を示す概略図である。
図13における本発明の光ファイバー製造装置は、ノズル1と、該ノズル1の先端部分の吐出口11よりも上方から光を照射するように配置された光照射装置を備える。
図13において、光照射装置は、光を出力する光源装置43、該光を伝送するライトガイド42、及び端部(出力端)より光を出射するライトガイド先端部41に加え、ライトガイド先端部41の出力端より出射した光を下方に反射させる反射ミラー47と、反射した光を集光する集光レンズ48を備えて構成されている。
図13における54はリング状の遮光部材(「遮光リング」と称する場合がある)を示し、このような遮光リングをノズル先端の上方に装着することによって、ノズル1の吐出口11における光の照射強度が0.2mW/cm
2以下に制御されている。
【0060】
本発明の光ファイバー製造装置が、落射方式の光ファイバー製造装置である場合には、
図13に示すように、遮光リング54を用いることによりノズルの吐出口に影を形成しやすく、より効率的にノズルの吐出口における光の照射強度を低くできるというメリットがある。しかしながら、一方で、光硬化性組成物と光照射装置の出射部との距離が比較的遠くなるため、光硬化性組成物に対して高強度の光を照射することが難しく、生産性を向上させにくいデメリットがある。但し、落射方式の場合であっても、必要に応じて、ノズルの吐出口よりも下方に出射部を配置した光照射装置を組み合わせて用いる等により、上記デメリットを解消させることも可能である。
【0061】
[光ファイバーの製造方法]
本発明の光ファイバーの製造方法は、光硬化性組成物に光を照射し硬化させることによって光ファイバーを製造する方法であって、光硬化性組成物をノズルを用いて吐出し、次いで、上記ノズルから吐出された糸状の光硬化性組成物に光照射装置を用いて光を照射する工程を含み、さらに、上記工程では、上記ノズルの吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm
2以下に制御することを特徴としている。
【0062】
上記ノズルとしては、特に限定されないが、例えば、上述の本発明の光ファイバー製造装置の項で例示したものを用いることができる。中でも、本発明の光ファイバーの製造方法は、上記ノズルとして、外管と、該外管の内側に配置された内管とを有する二重管ノズルを用いて、コア−クラッド構造を有する光ファイバーを製造する方法であることが好ましい。上記二重管ノズルとしては、上述の本発明の光ファイバー製造装置の項で例示したものを好ましく用いることができる。このような二重管ノズルを用いることにより、コア剤とクラッド剤とを同時にノズルから吐出することができ、次いで、これら光硬化性組成物(コア剤及びクラッド剤)に光を照射し硬化させることによって、一段階でコア−クラッド構造を有する光ファイバーを製造することができる。
【0063】
上記光照射装置としては、光硬化性組成物を硬化させることができる光を出射できるものであればよく、特に限定されないが、例えば、上述の本発明の光ファイバー製造装置の項で例示したものを用いることができる。
【0064】
本発明の光ファイバーの製造方法においては、まず、上記ノズルの吐出口から光硬化性組成物を(例えば、鉛直方向下方に)吐出する。この際の光硬化性組成物の吐出速度(送り速度)は、特に限定されないが、例えば、0.3〜1mL/分が好ましく、より好ましくは0.375〜0.6mL/分である。光硬化性組成物の吐出速度を制御することにより、光ファイバーの線径を制御することができる。また、ノズルとして上記二重管ノズルを用いた場合には、コア剤とクラッド剤とを同時に吐出することができる。このときのコア剤とクラッド剤の合計の吐出速度は、特に限定されないが、例えば、0.3〜1mL/分が好ましく、より好ましくは0.375〜0.6mL/分である。また、コア剤とクラッド剤の吐出速度をそれぞれ独立に制御することにより、光ファイバーのコア径とクラッド径を独立に制御できる。なお、吐出速度の制御には、例えば、上述の本発明の光ファイバー製造装置の項で例示した定量ポンプなどを用いることができる。
【0065】
次いで、ノズルの吐出口より吐出させた光硬化性組成物に対し、光照射装置を用いて光を照射する。この際の光の照射強度は、特に限定されないが、例えば、光硬化性組成物に対する照射強度として、1000〜5000mW/cm
2が好ましく、より好ましくは1500〜2000mW/cm
2である。また、光の照射の仕方(例えば、光照射装置の出射部の数や配置など)は特に限定されず、本発明の光ファイバー製造装置の項で例示した照射方法等を利用することができる。また、光の照射に際しては、適宜な光学系を利用することもできる。
【0066】
本発明の光ファイバーの製造方法においては、上記工程(光硬化性組成物をノズルより吐出し、該光硬化性組成物に光を照射する工程)にて、上記ノズルの吐出口における光の照射強度を0.2mW/cm
2以下に制御することが重要である。これにより、線径が均一な光ファイバーを取得でき、製造の際に糸切れが起こることなく、高い生産性で光ファイバーを製造できる。上記照射強度を制御するための手段としては、特に限定されないが、例えば、上述の本発明の光ファイバーの製造装置の項で例示した遮光部材(遮光筒、遮光板、遮光リングなど)を用いることが有効である。
【0067】
また、本発明の光ファイバーの製造方法においては、光硬化性組成物に対する光の照射角度を制御することが好ましい。具体的には、本発明の光ファイバーの製造方法においては、光照射装置から出射される光線のうち、照射強度が最大となる光線(最大強度光)の方向と、光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面(平面)とがなす角度の最小値θが下記式(I)の関係を満たすようにして、上記光硬化性組成物に光を照射することが好ましい。
θ ≧ ψ/2 (I)
(式(I)中、ψは、光照射装置から出射される光線のうち、照射強度が最大値の3%となる光線同士がなす角度の最大値(広がり角)である)
【0068】
なお、上記θ(最大強度光の方向と光硬化性組成物の吐出方向に垂直な面とがなす角度の最小値θ)は、上述のように、例えば、光照射装置のライトガイド先端部分を、光硬化性組成物の吐出方向に直交する平面(通常は、水平面)に対して光硬化性組成物の吐出方向側(例えば、下方)に傾ける角度によって制御できる。また、上記ψ(広がり角)は、上述の方法により導出することができる。光の照射角度を上記のように制御することにより、均一な線径の光ファイバーの取得、及び糸切れの抑制等の効果をより高度なレベルで得ることができる。その理由は、本発明の光ファイバー製造装置の項で述べた通りである。
【0069】
本発明の光ファイバーの製造方法において、光硬化性組成物を硬化させることによって得られる光ファイバーは、特に限定されないが、適宜巻き取ることにより回収することができる。この際の巻取り速度は、特に限定されないが、例えば、10〜1000mm/秒が好ましく、より好ましくは100〜500mm/秒である。巻取り速度の制御により、得られる光ファイバーの径を制御することができる。上記巻取り速度は、例えば、上述の巻取り装置などを用いることにより制御することができる。
【0070】
また、本発明の光ファイバーの製造方法においては、上述の本発明の光ファイバー製造装置と同様に、その他の機器や装置(例えば、加熱ユニット、冷却ユニット、ファイバー径測定装置、ファイバー張力測定装置など)を適宜用いることもできる。
【0071】
[光ファイバー]
本発明の光ファイバーは、上述の方法(本発明の光ファイバーの製造方法)により製造された光ファイバーである。本発明の光ファイバーの原料としての光硬化性組成物は、特に限定されないが、耐熱性や機械特性の観点で、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の重合体又は共重合体を必須成分として含むことが好ましい。特に、本発明の光ファイバーは、コアを形成する光硬化性組成物と、クラッドを形成する光硬化性組成物がともに、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の重合体又は共重合体を必須成分として含む光硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
【0072】
より具体的には、上記光硬化性樹脂組成物は、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、若しくはラジカル重合性を有する他の化合物と共にラジカル重合して得られるカチオン重合性樹脂、又は、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、若しくはカチオン重合性を有する他の化合物と共にカチオン重合して得られるラジカル重合性樹脂を、必須成分として含むことが好ましい。
【0073】
特に、低粘度であり加工性に優れる点で、上記光硬化性樹脂組成物は、下記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はラジカル重合性を有する他の化合物と共にラジカル重合して得られるカチオン重合性樹脂を必須成分として含む光硬化性樹脂組成物(カチオン重合性樹脂組成物)であることが好ましい。
【0074】
(オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物)
上記オキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、下記式(1)で表される。
【化1】
式(1)中、R
1、R
2は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、Aは炭素数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示す。
【0075】
式(1)中、R
1、R
2におけるアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの直鎖状のC
1-6(好ましくはC
1-3)アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、s−ペンチル基、t−ペンチル基、イソヘキシル基、s−ヘキシル基、t−ヘキシル基などの分岐鎖状のC
1-6(好ましくはC
1-3)アルキル基などが挙げられる。上記R
1としては、水素原子又はメチル基が好ましく、上記R
2としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0076】
式(1)中、Aは炭素数2〜20の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示す。中でも、優れた耐熱性と柔軟性とを兼ね備えた光ファイバーを形成することができる点で、下記式(a1)で表される直鎖状アルキレン基、又は下記式(a2)で表される分岐鎖状アルキレン基が好ましい。なお、式(a2)の右端はエステル結合を構成する酸素原子と結合する。
【化2】
式(a1)中、n1は2以上の整数を示す。式(a2)中、R
3、R
4、R
7、R
8は同一又は異なって水素原子又はアルキル基を示し、R
5、R
6は同一又は異なってアルキル基を示す。n2は、0以上の整数を示し、n2が2以上の整数の場合、2以上のR
7、R
8はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0077】
式(a1)中のn1は2以上の整数を示し、好ましくは2〜20の整数であり、特に好ましくは2〜10の整数である。n1が1の場合、重合して得られる硬化物の柔軟性が低下する傾向がある。
【0078】
式(a2)中のR
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8におけるアルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの直鎖状のC
1-4(好ましくはC
1-3)アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基;t−ブチル基などの分岐鎖状のC
1-4(好ましくはC
1-3)アルキル基などが挙げられる。上記R
3、R
4としては水素原子が好ましく、上記R
5、R
6としてはメチル基、エチル基が好ましい。
【0079】
式(a2)中のn2は0以上の整数を示し、好ましくは1〜20の整数であり、特に好ましくは1〜10の整数である。
【0080】
式(1)で表されるオキセタン含有(メタ)アクリル酸エステル化合物の代表的な例としては、以下の化合物を挙げることができる。
【化3】
【0081】
式(1)で表されるオキセタン含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、例えば、下記式(2)
【化4】
(式(2)中、R
2は上記に同じ。Xは脱離基を表す)
で表される化合物と、下記式(3)
【化5】
(式(3)中、Aは上記に同じ)
で表される化合物を、塩基性物質存在下、液相一相系で反応させて下記式(4)
【化6】
(式(4)、R
2、Aは上記に同じ)
で表されるオキセタン環含有アルコールを得、得られたオキセタン環含有アルコールを(メタ)アクリル化することにより合成することができる。
【0082】
式(2)中、Xは脱離性基を示し、例えば、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子(中でも、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい);p−トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基;アセチルオキシ基などのカルボニルオキシ基などの脱離性の高い基を挙げることができる。
【0083】
上記塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;水素化ナトリウム、水素化マグネシウム、水素化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水素化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩;有機リチウム試薬(例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等)、有機マグネシウム試薬(グリニャール試薬:例えば、MeMgBr、EtMgBr等)等の有機金属化合物等を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0084】
上記「液相一相系」とは、液相が2相以上あるものではなく1相のみの場合を意味し、液相が一相であれば固体を含んでいてもよい。上記溶媒としては、式(2)で表される化合物と、式(3)で表される化合物の両方を溶解することができればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;THF(テトラヒドロフラン)、IPE(イソプロピルエーテル)などのエーテル;DMSO(ジメチルスルホキシド)等の含硫黄系溶媒;DMF(ジメチルホルムアミド)等の含窒素系溶媒等を挙げることができる。
【0085】
(カチオン重合性樹脂)
上記カチオン重合性樹脂は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はラジカル重合性を有する他の化合物と共にラジカル重合して得られる。なお、上記「ラジカル重合性を有する他の化合物」とは、ラジカル重合性を有し、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とは異なる化合物であり、以下、「他のラジカル重合性化合物」と称する場合がある。
【0086】
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、1分子内にカチオン重合部位であるオキセタン環と、ラジカル重合部位である(メタ)アクリロイル基を有するため、単独でラジカル重合、又は他のラジカル重合性化合物と共にラジカル共重合することにより、下記式で表されるカチオン重合性樹脂を合成することができる。なお、ラジカル共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
【化7】
(式中、R
1、R
2、Aは上記に同じ)
【0087】
上記カチオン重合性樹脂としては、中でも、より柔軟性に優れた硬化物を形成できる点で、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のラジカル重合性化合物をラジカル重合することにより得られる樹脂が好ましく、カチオン重合性樹脂を構成する全モノマーのうち、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物由来のモノマーの占める割合が0.1重量%以上100重量%未満(より好ましくは1〜99重量%、さらに好ましくは10〜80重量%、特に好ましくは10〜50重量%)となる割合で、ラジカル共重合して得られるカチオン重合性樹脂が好ましい。
【0088】
他のラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルエーテル基、ビニルアリール基、ビニルオキシカルボニル基等のラジカル重合性基を1分子内に1つ以上有する化合物等を挙げることができる。
【0089】
(メタ)アクリロイル基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、1−ブテン−3−オン、1−ペンテン−3−オン、1−ヘキセン−3−オン、4−フェニル−1−ブテン−3−オン、5−フェニル−1−ペンテン−3−オン等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0090】
(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2―ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリル酸、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス(アクリロイルオキシ)エチルイソシアネート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0091】
(メタ)アクリロイルアミノ基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、アクリル酸モルホリン−4−イル、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0092】
ビニルエーテル基を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、1−メチル−3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−メチル−2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1−ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,2−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、p−キシレングリコールモノビニルエーテル、m−キシレングリコールモノビニルエーテル、o−キシレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、オリゴエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0093】
ビニルアリール基を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、酢酸4−ビニルフェニル、(4−ビニルフェニル)ジヒドロキシボラン、(4−ビニルフェニル)ボラン酸、(4−ビニルフェニル)ボロン酸、4−エテニルフェニルボロン酸、4−ビニルフェニルボラン酸、4−ビニルフェニルボロン酸、p−ビニルフェニルホウ酸、p−ビニルフェニルボロン酸、N−(4−ビニルフェニル)マレインイミド、N−(p−ビニルフェニル)マレイミド、N−(p−ビニルフェニル)マレインイミド等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0094】
ビニルオキシカルボニル基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、例えば、ギ酸イソプロペニル、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル、酪酸イソプロペニル、イソ酪酸イソプロペニル、カプロン酸イソプロペニル、吉草酸イソプロペニル、イソ吉草酸イソプロペニル、乳酸イソプロペニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ジビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0095】
上記他のラジカル重合性化合物としては、中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた光ファイバーを形成することができる点で、1分子内に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、ビニルオキシカルボニル基から選ばれる官能基を1個のみ有する化合物が好ましく、特に、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子内に1個のみ有する化合物が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0096】
ラジカル重合反応は、加熱処理及び/又は光照射を行うことにより促進することができる。加熱処理を行う場合、その温度としては、反応に供する成分や触媒の種類などに応じて適宜調製することができ、例えば、20〜200℃が好ましく、より好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃程度である。光照射を行う場合、その光源としては、例えば、水銀ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、太陽光、電子線、レーザー光等を使用することができる。また、光照射の後、例えば、50〜180℃程度の温度で加熱処理を施してラジカル重合反応を進行させてもよい。
【0097】
ラジカル重合反応は、通常、溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、1−メトキシ−2−アセトキシプロパン(PGMEA)、ベンゼン、トルエン等を挙げることができる。
【0098】
また、ラジカル重合反応には重合開始剤を使用してもよい。上記重合開始剤としては、公知慣用の熱重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などのラジカル重合を起こし得るものを特に限定されることなく使用することができ、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等を挙げることができる。
【0099】
ラジカル重合反応における重合開始剤の使用量としては、特に限定されないが、ラジカル重合性化合物(式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のラジカル重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、例えば、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0100】
上記カチオン重合性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。カチオン重合性樹脂の重量平均分子量が上記範囲を外れると、カチオン重合性樹脂組成物を硬化して得られた光ファイバーの柔軟性が得られにくくなる傾向がある。
【0101】
上記カチオン重合性樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、100以上(例えば、100〜50万)が好ましく、より好ましくは300〜25万である。カチオン重合性樹脂の数平均分子量が上記範囲を外れると、カチオン重合性樹脂組成物を硬化して得られた光ファイバーの柔軟性が得られにくくなる傾向がある。なお、上記カチオン重合性樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
【0102】
(カチオン重合性樹脂組成物)
上記カチオン重合性樹脂組成物は、上記カチオン重合性樹脂を必須成分として含む。上記カチオン重合性樹脂組成物における上記カチオン重合性樹脂の割合(含有量)は、特に限定されないが、5重量%以上が好ましく、実質的にカチオン重合性樹脂組成物が上記カチオン重合性樹脂のみにより構成されていてもよい。中でも、より柔軟性に優れる光ファイバーを形成できる点で、上記カチオン重合性樹脂の割合は、10〜95重量%が好ましく、より好ましくは40〜95重量%である。上記カチオン重合性樹脂の割合が5重量%を下回ると、カチオン重合により硬化して得られる光ファイバーの柔軟性が低下する傾向にある。
【0103】
上記カチオン重合性樹脂組成物には、上記カチオン重合性樹脂の他に、カチオン重合性を有する化合物であって、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とは異なる化合物(以後、「他のカチオン重合性化合物」と称する場合がある)を含有していてもよい。
【0104】
他のカチオン重合性化合物としては、例えば、オキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基等のカチオン重合性基を1分子内に1個以上有する化合物等を挙げることができる。
【0105】
オキセタン環を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−(クロロメチル)オキセタン、3,3‐ビス(クロルメチル)オキセタン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロヘキシル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]シクロヘキサン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3{〔(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン等を挙げることができる。
【0106】
エポキシ環を1分子内に1個以上有する化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシルレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類等を挙げることができる。
【0107】
ビニルエーテル基を1分子内に1つ以上有する化合物、ビニルアリール基を1分子内に1つ以上有する化合物としては、上記他のラジカル重合性化合物において挙げられた例と同様の例を挙げることができる。
【0108】
上記他のカチオン重合性化合物としては、中でも、光照射により速やかに硬化する点で、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、1,4−ビス{〔(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン等のオキセタン環を1分子内に1つ以上有する化合物が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0109】
上記カチオン重合性樹脂組成物は、より柔軟性に優れる光ファイバーを形成することができる点で、上記カチオン重合性樹脂と共に他のカチオン重合性化合物を含むことが好ましい。カチオン重合性樹脂と他のカチオン重合性化合物の配合比(前者/後者:重量比)としては、特に限定されないが、95/5〜10/90が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは95/5〜45/55である。カチオン重合性樹脂の配合割合が上記範囲を下回ると、得られる光ファイバーの柔軟性が低下する傾向がある。
【0110】
また、上記カチオン重合性樹脂組成物は、必要に応じて重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、公知慣用の光カチオン重合開始剤、光酸発生剤等のカチオン重合を起こし得るものを特に限定されることなく使用することができる。重合開始剤としては、例えば、トリアリルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のスルホニウム塩;ジアリールヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ヨードニウム[4−(4−メチルフェニル−2−メチルプロピル)フェニル]ヘキサフルオロホスフェート等のヨードニウム塩;テトラフルオロホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等のホスホニウム塩;ピリジウム塩等を挙げることができる。
【0111】
本発明においては、光酸発生剤として、商品名「CPI−100P」(サンアプロ(株)製)などの市販品を使用してもよい。
【0112】
カチオン重合反応における重合開始剤の使用量としては、カチオン重合性化合物(カチオン重合性樹脂と他のカチオン重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0113】
さらに、上記カチオン重合性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の添加物を添加してもよい。他の添加物としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、フルオロシラン等の公知慣用の各種添加剤を挙げることができる。
【0114】
本発明の光ファイバーの原料としての光硬化性組成物としては、上記カチオン重合性樹脂組成物の他、上述のように、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はカチオン重合性を有する他の化合物(他のカチオン重合性化合物)と共にカチオン重合して得られるラジカル重合性樹脂を必須成分として含む光硬化性樹脂組成物(ラジカル重合性樹脂組成物)を用いることもできる。上記ラジカル重合性樹脂組成物を用いる場合には、硬化反応を阻害させないために、ラジカルに対して不活性なガスの雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)で光照射を行う必要がある。
【0115】
(ラジカル重合性樹脂)
上記ラジカル重合性樹脂は、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物を単独で、又はカチオン重合性を有する他の化合物(他のカチオン重合性化合物)と共にカチオン重合して得られる。
【0116】
上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物は、1分子内にカチオン重合部位であるオキセタン環と、ラジカル重合部位である(メタ)アクリロイル基を有するため、単独でカチオン重合、又は他のカチオン重合性化合物と共にカチオン共重合することにより、下記式で表されるラジカル重合性樹脂を合成することができる。なお、カチオン共重合には、ブロック共重合、ランダム共重合等が含まれる。
【化8】
(式中、R
1、R
2、Aは上記に同じ)
【0117】
上記ラジカル重合性樹脂としては、中でも、より柔軟性に優れた硬化物(光ファイバー)を形成できる点で、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のカチオン重合性化合物をカチオン共重合することにより得られるラジカル重合性樹脂が好ましい。特に、ラジカル重合性樹脂を構成する全モノマーのうち、式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物由来のモノマーの占める割合が0.1重量%以上(好ましくは1〜99重量%、特に好ましくは10〜80重量%)となる割合で、カチオン共重合して得られる樹脂が好ましい。
【0118】
他のカチオン重合性化合物としては、例えば、上記カチオン重合性樹脂組成物の項で例示した、オキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基等のカチオン重合性基を1分子内に1個以上有する化合物等を挙げることができる。
【0119】
上記他のカチオン重合性化合物としては、中でも、柔軟性及び耐熱性に優れた硬化物を形成することができる点で、1分子内にオキセタン環、エポキシ環、ビニルエーテル基、ビニルアリール基から選ばれる官能基を1個のみ有する化合物が好ましく、特に、トリメチレンオキシド、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3−エチル−3−[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3−エチル−3−(ヘキシロキシメチル)オキセタン等のオキセタン環を1分子内に1個のみ有する化合物、グリシジルメチルエーテル、酪酸(R)−グリシジル等のエポキシ基を1分子内に1個のみ有する化合物等が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0120】
カチオン重合反応は、一般に溶媒の存在下で行われる。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等を挙げることができる。
【0121】
また、カチオン重合反応には重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤としては、例えば、カチオン重合性樹脂組成物の項で例示したカチオン重合開始剤、酸発生剤等を用いることができる。
【0122】
カチオン重合反応における重合開始剤の使用量としては、例えば、カチオン重合性化合物(式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物と他のカチオン重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、例えば、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0123】
また、カチオン重合反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、モノ−t−ブチルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、2,5−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、α−ナフトール、ニトロフェノール等のキノン・フェノール系禁止剤、チオエーテル系禁止剤、亜リン酸エステル系禁止剤等を挙げることができる。
【0124】
上記ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、500以上(例えば、500〜100万程度)が好ましく、より好ましくは3000〜50万である。ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量が上記範囲を下回ると、ラジカル重合して得られる硬化物(光ファイバー)の柔軟性が低下する傾向がある。なお、上記ラジカル重合性樹脂の重量平均分子量は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により、標準ポリスチレン換算の値として測定することができる。
【0125】
(ラジカル重合性樹脂組成物)
上記ラジカル重合性樹脂組成物は、上記ラジカル重合性樹脂を必須成分として含む。上記ラジカル重合性樹脂組成物における上記ラジカル重合性樹脂の割合(含有量)は、特に限定されないが、5重量%以上が好ましく、実質的にラジカル重合性樹脂組成物が上記ラジカル重合性樹脂のみにより構成されていてもよい。中でも、より柔軟性に優れる光ファイバーを形成できる点で、上記ラジカル重合性樹脂の割合は、10重量%以上が好ましく、より好ましくは60〜90重量%である。上記ラジカル重合性樹脂の割合が5重量%を下回ると、カチオン重合により硬化して得られる光ファイバーの柔軟性が低下する傾向にある。
【0126】
上記ラジカル重合性樹脂組成物には、上記ラジカル重合性樹脂の他に、ラジカル重合性を有する化合物であって、上記式(1)で表されるオキセタン環含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とは異なる化合物(他のラジカル重合性化合物)を含有していてもよい。
【0127】
他のラジカル重合性化合物としては、例えば、上記カチオン重合性樹脂の項で例示した、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルアリール基、ビニルエーテル基、ビニルオキシカルボニル基等のラジカル重合性基を1分子内に1つ以上有する化合物等を挙げることができる。
【0128】
上記他のラジカル重合性化合物としては、中でも、より優れた耐熱性を持つ硬化物を形成することができる点で、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上(特に2つ)有する化合物が好ましい。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0129】
上記ラジカル重合性樹脂組成物としては、より優れた耐熱性を持つ光ファイバーを形成できる点で、上記ラジカル重合性樹脂と共に他のラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。上記ラジカル重合性樹脂と他のラジカル重合性化合物の配合比(前者/後者:重量比)としては、例えば、95/5〜5/95が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは95/5〜60/40である。ラジカル重合性樹脂の配合割合が上記範囲を外れると、得られる光ファイバーの柔軟性が低下する傾向がある。
【0130】
また、上記ラジカル重合性樹脂組成物には重合開始剤を添加してもよいし、添加しなくてもよい。重合開始剤としては、公知慣用の光ラジカル重合開始剤などのラジカル重合を起こし得るものを特に限定されることなく使用することができる。
【0131】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノンベンジル、ベンジルジメチルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ジメトキシアセトフェノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ジフェニルジサルファイト等を挙げることができる。これらは単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0132】
重合開始剤には、光吸収エネルギーの重合開始遊離基への転換を強めるための相乗剤を添加してもよい。相乗剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸メチル等のアミン;チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、アセチルアセトン等のケトン等を挙げることができる。
【0133】
上記ラジカル重合性樹脂組成物に重合開始剤を添加する場合、その添加量としては、ラジカル重合性樹脂組成物中のラジカル重合性化合物(ラジカル重合性樹脂と他のラジカル重合性化合物の総重量)(100重量部)に対して、0.01〜50重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部である。
【0134】
さらに、上記ラジカル重合性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて他の添加物を添加してもよい。他の添加物としては、例えば、硬化膨張性モノマー、光増感剤(アントラセン系増感剤等)、樹脂、密着性向上剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、粘度調整剤、溶剤、無機又は有機粒子(ナノスケール粒子等)、フルオロシラン等の公知慣用の各種添加剤を挙げることができる。
【0135】
本発明の光ファイバーが、コア−クラッド構造を有する光ファイバーである場合、コアの直径(コア径)は、特に限定されないが、10〜999μmが好ましく、より好ましくは50〜100μmである。また、本発明の光ファイバーのクラッドの直径(クラッド径)は、特に限定されないが、60〜1000μmが好ましく、より好ましくは100〜500μmである。
【0136】
本発明の光ファイバーは、クラッドの外側に適宜な被覆層を設けて使用することもできる。上記被覆層としては、例えば、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、PTFE、ポリ塩化ビニル等からなる被覆層が挙げられる。
【0137】
本発明の光ファイバーは、本発明の光ファイバーの製造方法により製造される。このため、本発明の光ファイバーは、一定の線径を有し、品質面で優れる。また、生産性も高いため、コスト面で優れる。さらに、本発明の光ファイバーは、室温において液体である光硬化性組成物を原料としているため、該光硬化性組成物中の不純物をろ過により除去しやすく、高品質な光ファイバーとすることが容易である。
【0138】
また、本発明の光ファイバーは、製造の際に光硬化性組成物を吐出するためのノズルとして、上記二重管ノズルを用いた場合には、コアとクラッドの中心軸を正確に一致させることができ、光ファイバー同士の接続や他のデバイスとの接続の際に高い信頼性を発揮できる。さらに、本発明の光ファイバーは、製造の際に光の照射角度を上記式(I)の関係を満たすように制御した場合は、より均一な線径を有し、かつ高い生産性を有する光ファイバーとすることができる。
【0139】
本発明の光ファイバーは、光通信用途や装飾用途等において広く利用される。特に、耐熱性及び柔軟性に優れるため、例えば、携帯機器、FA機器、OA機器、オーディオ機器、車両、LAN等における通信用途、家庭用や工業用の内視鏡等におけるイメージ伝送用途、センサ用途、検査・測定用の照明、美術品等の照明等における光伝送用途、看板、サイン、景観照明等における装飾用途などに特に有用である。
【実施例】
【0140】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0141】
[コア形成用の光硬化性組成物(コア剤)の製造例]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、及び攪拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA 62.07g、下記式で表される3−エチル−3−(3−アクリロイルオキシ−2,2−ジメチルプロピルオキシメチル)オキセタン(EOXTM−NPAL) 10.13g(0.039mol)、及びBA 27.06g(0.195mol)の混合液(モノマー混合液)のうち25%を仕込み、窒素気流下、85±1℃に加熱した。次いで、t−ブチルペロキシピバレート(パーブチルPV:日本油脂(株)製) 0.07gとPGMEA 1.08gの混合液を投入し、撹拌均一化した後、撹拌しながら、上記モノマー混合液の残り75%、AIBN 0.63g、及びPGMEA 6.47gの混合液を送液ポンプで3時間かけて滴下した。滴下終了後、ただちにAIBN 0.21gとPGMEA 2.16gの混合液を投入し、1時間後、AIBN 0.21gとPGMEA 2.21gの混合液を投入した。さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することにより、樹脂組成物を得た。これを5倍量の60重量%メタノール水溶液で再沈精製し、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で60時間保持することにより、無色透明のコアプレポリマー(液状樹脂)を得た。
該コアプレポリマーのポリスチレン換算重量平均分子量は67600、数平均分子量は11800であった。
【化9】
上記コアプレポリマー60重量%に、商品名「OXT−212」(東亞合成(株)製)15重量%、「OXT−DVE」25重量%を混合し、この混合物100重量部に対して、開始剤として商品名「CPI−100P」(サンアプロ(株)製)3重量部を配合し、混合して、コア形成用の光硬化性組成物(光硬化性樹脂組成物)(コア剤;25℃における粘度は15000cP)を作製した。
なお、上記「OXT−212」は、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタンである。
なお、「OXT−DVE」は、3,3−ビス(ビニルオキシメチル)オキセタンである。
また、上記「CPI−100P」は、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスファート、チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)、ビス(ヘキサフルオロホスファート)、プロピレンカーボネート、及びジフェニルサルファイドの混合物である。
【0142】
[クラッド形成用の光硬化性組成物(クラッド剤)の製造例]
モノマー滴下ライン、開始剤滴下ライン、温度計、還流管、及び撹拌翼を装着した5口フラスコに、PGMEA 24.93gを仕込み、窒素気流下、75±1℃に加熱した。次いで、撹拌しながら、PGMEA 43.64g、EOXTM−NPAL20.08g(0.078mol)、BA 50.59g(0.39mol)、及びジメチル−2,2’−アゾビス(2―メチルプロピオネート)(V―601) 0.043gの混合液を送液ポンプで5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに2時間保持した後、40℃以下に冷却することにより、樹脂組成物を得た。これをPGMEA 140.04gで希釈した後、5倍量の60重量%メタノール水溶液で再沈精製し、真空乾燥機中(40℃、フルバキューム)で60時間保持することにより、無色透明のクラッドプレポリマー(液状樹脂)を得た。
該クラッドプレポリマーのポリスチレン換算重量平均分子量は288000、数平均分子量は61200であった。
上記クラッドプレポリマー63重量%に、「OXT−DVE」37重量%を混合し、この混合物100重量部に対して、商品名「セロキサイド 8000」5重量部、開始剤として商品名「CPI−100P」(サンアプロ(株)製)1重量部を配合し、混合して、クラッド形成用の光硬化性組成物(光硬化性樹脂組成物)(クラッド剤;25℃における粘度は70000cP)を作製した。
なお、上記「セロキサイド 8000」は、3,4,3’,4’−ジエポキシビシクロヘキシルである。
【0143】
実施例1
[光ファイバー製造装置]
光ファイバー製造装置としては、
図14に示す製造装置を用いた。
図14の光ファイバー製造装置における1は、二重管ノズルである。二重管ノズル1の外管及び内管の内径は以下に示す通りである。また、
図14の光ファイバー製造装置においては、光照射装置として、光硬化性組成物2に対して3方向から光を照射できる、
図5に示す光照射装置を用いた。該光照射装置は、光硬化性組成物2に対して等距離に、3つのライトガイド(UVライトガイド)の先端部分を、同じ高さで等間隔(光硬化性組成物を中心に120°間隔)に配置したものである(
図5参照)。また、上記光照射装置の光源装置としては、「SPOTCURE SP9−250DB」(ウシオ電機(株)製)を用いた。なお、
図14においては、便宜上、2個のライトガイドの先端部分のみを描いている。
また、ライトガイドの先端部分41には遮光筒51を設置し、さらに、ライトガイドの先端部分41の出力端と二重管ノズル1の吐出口の間には、遮光板52を設置した。
図14に示すように、ライトガイドの先端部分41を二重管ノズル1の吐出口よりも下方に配置し、二重管ノズル1の吐出口からライトガイドの先端部分41の出力端(出力端の中心部)までの高さ(垂直距離)を、20mmとした。また、ライトガイドの先端部分41の出力端(出力端の中心部)と光硬化性組成物2までの距離を、15mmとした。
さらに、ライトガイドの先端部分41は、水平面に対して11°下向きに傾けて設置した。なお、ライトガイドの先端部分41を遮光筒51で覆った状態で出射される光の広がり角ψは、22°である。
[光ファイバーの製造]
まず、定量ポンプ71及び72を用いて、上記コア剤及びクラッド剤を下記送り速度にて送液し、二重管ノズル1の吐出口より同時に鉛直方向下方に吐出させた。なお、二重管ノズル1の内管にはコア剤、外管と内管の間にはクラッド剤を送液した。
次に、光照射装置により、コア剤及びクラッド剤に紫外線を照射し硬化させた。このようにして製造された光ファイバー(プラスチック光ファイバー)を、巻取り装置8にて回収した。
(実験条件)
ノズルの吐出口における光の照射強度:0.13mW/cm
2
コア剤の送り速度:0.3mL/分
クラッド剤の送り速度:0.3mL/分
二重管ノズルの内管の内径(直径):1.6mm
二重管ノズルの外管の内径(直径):3.4mm
UV照射強度:1800mW/cm
2(三方の合計:一方あたり600mW/cm
2)
巻取り速度:400mm/秒
[結果]
製造の際に糸切れを起こすことなく、一定の線径でコア−クラッド構造(コア直径:100μm、クラッド直径:200μm)を有する光ファイバーを150m製造することができた。該光ファイバーの真円度(縦横比)は、コア、クラッド共に1.0であった。
【0144】
実施例2
[光ファイバー製造装置]
実施例1と同様に、
図14に示す光ファイバー製造装置を用いた。
[光ファイバーの製造]
コア剤の送り速度を下記のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして光ファイバーの製造を実施した。
(実験条件)
ノズルの吐出口における光の照射強度:0.13mW/cm
2
コア剤の送り速度:0.075mL/分
クラッド剤の送り速度:0.3mL/分
二重管ノズルの内管の内径(直径):1.6mm
二重管ノズルの外管の内径(直径):3.4mm
UV照射強度:1800mW/cm
2(三方の合計:一方あたり600mW/cm
2)
巻取り速度:400mm/秒
[結果]
製造の際に糸切れを起こすことなく、一定の線径でコア−クラッド構造(コア直径:50μm、クラッド直径:130μm)を有する光ファイバーを150m製造することができた。該光ファイバーの真円度(縦横比)は、コア、クラッド共に1.0であった。また、実施例1に対してコア剤の吐出量を少なくすることによって、糸切れを起こすことなく、光ファイバーのコア−クラッド構造を保持させたまま線径を細くすることができた。このように、吐出量の制御により、任意の線径(コア径とクラッド径の比率)で光ファイバーの製造が可能であることを確認した。
【0145】
比較例1
[光ファイバー製造装置]
光ファイバー製造装置としては、
図15に示す製造装置を用いた。
図15の光ファイバー製造装置における1は、二重管ノズルである。二重管ノズル1の外管及び内管の内径は実施例1及び2で用いた二重管ノズルと同じであり、以下に示す通りである。また、
図15の光ファイバー製造装置においては、光照射装置として、光硬化性組成物2に対して3方向から光を照射できる光照射装置を用いた。該光照射装置は、光硬化性組成物2に対して等距離に、3つのライトガイド(UVライトガイド)の先端部分を同じ高さで等間隔(光硬化性組成物を中心に120°間隔)に配置したものであり、
図5に示す光照射装置から遮光筒51を取り外したものに相当する。また、上記光照射装置の光源装置としては、「SPOTCURE SP9−250DB」(ウシオ電機(株)製)を用いた。なお、
図15においては、便宜上、2個のライトガイドの先端部分のみを描いている。
図15に示すように、ライトガイドの先端部分41を二重管ノズル1の吐出口の下方に配置し、二重管ノズル1の吐出口からライトガイドの先端部分41の出力端(出力端の中心部)までの高さ(垂直距離)を、20mmとした。また、ライトガイドの先端部分41の出力端(出力端の中心部)と光硬化性組成物2までの距離を、15mmとした。
なお、
図15に示す光ファイバー製造装置の、実施例1及び2で用いた光ファイバー製造装置(
図14参照)との違いは、遮光筒及び遮光板(
図14における51と52)を設置しないこと、及び、ライトガイドの先端部分41を水平に設置(ライトガイド先端部分41と水平面のなす角度:0°)したことである。
[光ファイバーの製造]
まず、定量ポンプ71及び72を用いて、上記コア剤及びクラッド剤を下記送り速度にて送液し、二重管ノズル1の吐出口より同時に鉛直方向下方に吐出させた。なお、二重管ノズル1の内管にはコア剤、外管と内管の間にはクラッド剤を送液した。
次に、二重管ノズル1の吐出口の下部に設置した光照射装置(ライトガイドの先端部分41)により、コア剤及びクラッド剤に紫外線を照射し硬化させた。このようにして製造した光ファイバー(プラスチック光ファイバー)を、巻取り装置8にて回収した。
(実験条件)
ノズルの吐出口における光の照射強度:0.28mW/cm
2
コア剤の送り速度:0.3mL/分
クラッド剤の送り速度:0.3mL/分
二重管ノズルの内管の内径(直径):1.6mm
二重管ノズルの外管の内径(直径):3.4mm
UV照射強度:1800mW/cm
2(三方の合計:一方あたり600mW/cm
2)
巻取り速度:400mm/秒
[結果]
上記二重管ノズルより吐出される光硬化性組成物(コア剤及びクラッド剤)の線径が安定せず、光ファイバーの長さが1m以下で糸切れが発生し、連続した紡糸(光ファイバーの製造)を行うことができなかった。