特許第5694802号(P5694802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5694802占有者支持体により誘発される剪断を緩和する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694802
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】占有者支持体により誘発される剪断を緩和する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A47C 20/08 20060101AFI20150312BHJP
   A47C 20/04 20060101ALI20150312BHJP
   A61G 7/00 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   A47C20/08 A
   A47C20/04 B
   A61G7/00
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-27785(P2011-27785)
(22)【出願日】2011年2月10日
(65)【公開番号】特開2011-177502(P2011-177502A)
(43)【公開日】2011年9月15日
【審査請求日】2014年1月10日
(31)【優先権主張番号】12/704,600
(32)【優先日】2010年2月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501453167
【氏名又は名称】ヒル−ロム サービシーズ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ エー.ラッケンブルッチ
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−164169(JP,A)
【文献】 特開2000−197672(JP,A)
【文献】 特開2008−289630(JP,A)
【文献】 特開2000−175774(JP,A)
【文献】 特開平02−279155(JP,A)
【文献】 特表平04−500463(JP,A)
【文献】 特表2008−509793(JP,A)
【文献】 特表2008−509790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 20/08
A47C 20/04
A61G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方向調節可能な部分の方向変化に応じて、位置Aに比較的低い占有者/支持体の接触圧(OSIP)及び位置Bに比較的高いOSIPを与えることと、
続いて前記位置Aに比較的高いOSIP及び前記位置Bに比較的低いOSIPを与えることと
を備える、
占有者支持体の別の部分に対して少なくとも一部が方向調節可能な占有者支持体を操作する方法。
【請求項2】
前記位置AおよびBに比較的低いOSIP及び比較的高いOSIPを与える複数のサイクルを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
比較的低いOSIPを与えることはOSIPを実質的にゼロに低下させることを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記位置AおよびBは縦寸法及び横寸法を有し、前記縦寸法は前記横寸法を上回る、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記位置AおよびBは縦寸法及び横寸法を有し、前記横寸法は前記縦寸法を上回る、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記位置AおよびBは、N>1である横格子寸法N及びM>1である縦格子寸法Mを有する格子として配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記比較的低い及び比較的高いOSIPを与える動作は、前記占有者支持体が方向変更を開始するように命令された以降に開始する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記比較的低い及び比較的高いOSIPを与える動作は、前記占有者支持体が方向変更を中止するように命令された以降に開始する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記比較的低い及び比較的高いOSIPを与える動作は、前記占有者支持体が方向変更を中止するように命令された以降に中止する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記比較的低い及び比較的高いOSIPを与える動作は圧力循環の時間間隔中に発生し、
前記占有者支持体は方向変更の時間間隔中に方向変更の命令をされ、
前記圧力循環の時間間隔と前記方向変化の時間間隔は少なくとも部分的に重なり合う、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記占有者支持体の方向調節可能な部分が方向を変更したか、単一の占有者支持体の方向変化イベント中に少なくとも一定量の方向を変更するように命令された場合にのみ、前記比較的低い及び比較的高いOSIPを与える動作が発生するように予定されている、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記単一の占有者支持体の方向変化イベントは方向変更コマンドの発行および解除を含み、前記方向変更コマンドは、ゼロまたはそれ以上の発行/解除サブイベントによって中断され、前記発行/解除サブイベントは、定義された時間間隔以上の継続時間を有しない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記占有者支持体の方向調節可能な部分の方向に関連した決定は実際の方向の決定に基づき、
前記占有者支持体の方向調節可能な部分の方向変更に関連した決定は実際の方向変更の決定に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも一つの方向調節可能な部分を有するフレームと、
前記フレームによって支持されるマットレスと
を備え、
前記マットレスは少なくとも一つのA空気袋及び少なくとも一つのB空気袋を含み、
前記空気袋は、
a)前記フレーム部の方向を変更する命令の発行、および
b)前記フレーム部の実際の方向変更
の少なくとも一つと連携して互いに逆位相で膨張可能及び収縮可能である、
ベッド。
【請求項15】
前記AおよびBの空気袋は、前記占有者の太腿から首の基部を支えることを目的とする前記マットレスのあるゾーンのみに存在する、請求項14に記載のベッド。
【請求項16】
前記空気袋は縦寸法および横寸法を有し、前記横寸法は前記縦寸法を上回る、請求項14に記載のベッド。
【請求項17】
前記空気袋は縦寸法と横寸法を持ち、前記縦寸法は前記横寸法を上回る、請求項14に記載のベッド。
【請求項18】
前記空気袋は、N>1である横格子寸法N及びM>1である縦格子寸法Mを有する格子として配置される、請求項14に記載のベッド。
【請求項19】
前記空気袋の減圧を促進する弾性要素を含む、請求項14に記載のベッド。
【請求項20】
前記空気袋のアスペクト比は少なくとも約1.5であり、前記アスペクト比は空気袋の垂直寸法と、空気袋の縦寸法と横寸法のうち小さい方との比率である、請求項14に記載のベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に説明される主題は、調節可能な構成要素を備え、該構成要素の調整によって占有者の皮膚や他の軟組織に剪断を与えてしまうことがある占有者支持体に関連する。特に、主題はそのような剪断を緩和する(防止または軽減も含む)方法および装置に関連する。当該方法および装置の一応用例は、方向調節可能なデッキ部を有する病院用ベッドである。
【背景技術】
【0002】
病院用ベッドは、ベースフレーム、ベースフレームに対して高さを調節できる上昇可能フレーム、一つ以上の方向調節可能なデッキ部を備えるデッキ、およびデッキによって支持されるマットレスを有することができる。あるタイプのデッキは、占有者の後頸部や頭に対応する頭部または上半身部、占有者の臀部に対応する座部、占有者の太腿に対応する太腿部、そして占有者のふくらはぎや足に対応するふくらはぎ部を有する。座部を除くすべての部分は、方向調節可能である。調節可能なデッキ部の一つを調節することによって、そのデッキ部上に置いてあるマットレスの一部の方向が変化する。ある既知のタイプのマットレスは、一つ以上の膨張式袋を備えるエアマットレスである。
【0003】
頭部が水平(0°)方向から非水平方向に変化する場合、特に骨格などの占有者の身体の内部部分は、通常マットレスの足側に向けて移動する。しかしながら、占有者/マットレスの接触面における摩擦によって、占有者の皮膚および他の軟組織がそれに対応して移動するのを妨げられる。その結果、軟組織が伸張することとなる。結果的に生じる占有者の皮膚への剪断応力は、特に長期間持続される場合には、例えば、血流妨害、リンパ機能および皮層/表皮層の剪断による皮膚の損傷と関連する。
【0004】
それゆえ、ベッドの頭部またはその他の方向調節可能な構成要素の方向の変化に関連した剪断および組織の伸張を緩和するベッド、マットレスおよび方法を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここに記載された主題には、少なくとも一つの方向調節可能な部分を有するフレーム、フレームによって支持されて少なくとも一つのA空気袋と少なくとも一つのB空気袋を有するマットレスが含まれる。空気袋は、a)フレーム部の方向を変更する命令の発行、およびb)フレーム部の実際の方向変更のうちの少なくとも一つと連携して、互いに逆位相で膨張及び収縮可能である。また、別の部分に対して少なくともその一部は方向調節可能である占有者支持体を操作する方法も記載されている。当該方法は、方向調節可能な部分の方向の変化に応じて、位置Aに比較的低い占有者/支持体の接触圧(OSIP:occupant/support interface pressure)を与え、位置Bに比較的高いOSIPを与えるのに続いて、位置Aに比較的高いOSIPを与え、位置Bに比較的低いOSIPを与えることを備える。
【0006】
ここに記載した方法および装置の多様な実施態様の前述およびその他の特徴は、下記の詳細な説明および添付の図面からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】複数の空気袋を備えるエアマットレスを有する病院用ベッドの斜視図である。
図2】空気袋および非空気圧式(例:発泡体)部を有するマットレスを備えたベッドの右側略正面図であり、さまざまな方向調節を図示し、ベッドの上半身部の方向調節がどのようにしてベッド占有者に剪断や組織の伸張を誘発するかを示している。
図3】空気袋および非空気圧式(例:発泡体)部を有するマットレスを備えたベッドの右側略正面図であり、さまざまな方向調節を図示し、ベッドの上半身部の方向調節がどのようにしてベッド占有者に剪断や組織の伸張を誘発するかを示している。
図4図2に類似した図であり、足を下に向けたベッドを図示し、ベッドは頭が下がる方向に配置できることも示している。
図5】分類された空気袋および該空気袋を圧縮機およびポンプに接続する構造を示すベッドの略平面図である。
図6】空気袋の横寸法が縦寸法を上回る、空気袋の構成の斜視図である。
図7】空気袋の縦寸法が横寸法を上回る、空気袋の構成の斜視図である。
図8】空気袋がM×N寸法のマトリックスまたは格子のセルとして配列された、空気袋の構成の斜視図である。
図9】空気袋が千鳥状にM×N寸法のマトリックスまたは格子のセルとして配列された、空気袋の構成の平面図である。
図10図5に類似した図であり、分類された空気袋および該空気袋を圧縮機およびポンプに接続する別の構造を示す。
図11】マットレスに横たわっている占有者が、ベッドのある部分の方向変化の結果としてどのように剪断や組織の伸張の影響を受けるか、また分類された空気袋が剪断および組織の伸張を緩和するためにどのように使用されるかを示す一連の図である。
図12】マットレスに横たわっている占有者が、ベッドのある部分の方向変化の結果としてどのように剪断や組織の伸張の影響を受けるか、また分類された空気袋が剪断および組織の伸張を緩和するためにどのように使用されるかを示す一連の図である。
図13】マットレスに横たわっている占有者が、ベッドのある部分の方向変化の結果としてどのように剪断や組織の伸張の影響を受けるか、また分類された空気袋が剪断および組織の伸張を緩和するためにどのように使用されるかを示す一連の図である。
図14】マットレスに横たわっている占有者が、ベッドのある部分の方向変化の結果としてどのように剪断や組織の伸張の影響を受けるか、また分類された空気袋が剪断および組織の伸張を緩和するためにどのように使用されるかを示す一連の図である。
図15】マットレスに横たわっている占有者が、ベッドのある部分の方向変化の結果としてどのように剪断や組織の伸張の影響を受けるか、また分類された空気袋が剪断および組織の伸張を緩和するためにどのように使用されるかを示す一連の図である。
図16】ベッドのある部分の方向変化に対する命令に関連して、分類された空気袋の一つ以上の圧力サイクルの時系列の例を示すグラフである。
図17図17A図17Dは空気袋の圧力循環中における分類された空気袋の袋内圧間の位相関係の例を示すグラフである。
図18】ベッドのある部分の方向変更の命令または実際の方向変化に対応した、分類された空気袋の一つ以上の交互圧力サイクルを実行する一つの可能なアルゴリズムを示す流れ図である。
図19】袋内からの排気を加速させる弾性帯によって束縛された空気袋の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、頭側端部22、頭側端部から長手方向に間隔をおいて配置された足側端部24、右側26および右側から横方向に間隔をおいて配置された左側28を有する病院用ベッド20を示す。ベッドは、ベッドフレーム32および上昇可能なフレーム34を含む。頭側端部のキャニスターリフト38、および類似の足側端部のキャニスターリフト(不図示)によって一部分が示されたリフトシステムは、ベースフレームに対して上昇可能なフレームの高さを調節可能にする。また、図4の傾斜角度αで示されるように、リフトシステムはベースフレームを頭を下にした傾斜(トレンデレンブルク)又は足を下にした傾斜(逆トレンデレンブルク)に調節することができる。上昇可能なフレームには、頭部または上半身デッキ部44、座部デッキ部46、太腿デッキ部48およびふくらはぎデッキ部50を備えるデッキが含まれる。頭部、太腿部、およびふくらはぎ部は、図3の角度β、θおよびδで示されるように方向が調節可能である。ユーザーは、キーパッド54などのユーザーインターフェースによって、上昇、傾斜およびデッキ部の方向に対する調節を命令する。
【0009】
エアマットレス58という形式での占有者支持体はデッキ上に載っている。エアマットレスは、図1で透視されている。エアマットレスは、袋内の膨張圧に膨張された空気袋60を含む。図2および図3は、上半身、座部、太腿の各デッキ部の上に覆い被さる空気袋と、ふくらはぎデッキ部に覆い被さる非空気圧式部分(例えば発泡体)を有する別のマットレスを示す。
【0010】
図2および図3は、頭部デッキ部44を水平方向からより高い(非水平)方向に上昇させた結果としてベッド占有者の皮膚に与えられる剪断および組織伸張を示し、また当該剪断および伸張を緩和する(防止又は軽減を含む)ためのマットレス58を示す概略図である。占有者の身体のある位置にかけられた圧力は、占有者/支持体の接触圧と呼ばれ、ここではOSIPと略語表記される。図2は、初期段階において水平(0°)方向にあるデッキ部および占有者の骨格(脊柱64で表示)、皮膚66およびその他の軟組織68を描いた基準である。この図は、脊柱から皮膚へ軟組織を通って伸びるハッシュマークを含む。脊柱および皮膚に対してハッシュマークが垂直なことは、著しい剪断および組織伸張が存在しないことを示す。図3は、方向β1に上昇された頭部デッキ部の結果を示す。頭部の上昇によって、大部分において、占有者はベッドの足側に向けて距離d分移動した。しかしながら、占有者の皮膚がそれに対応して移動するのを占有者/マットレスの接触面における摩擦が阻み、その結果としてハッシュマークが垂直でないことによって示されるように望ましくないことに皮膚や軟組織を伸張させる。占有者の皮膚や軟組織が伸張する傾向は、OSIPの増加に伴い高くなる。
【0011】
図5は、剪断および伸張を防止、軽減または緩和するためのマットレス58を有するベッドの概略図である。マットレスは、少なくとも二つのクラスの空気袋60を含む。マットレスは、各クラスの少なくとも一つの空気袋を有し、望ましくは各クラスの複数の空気袋を有する。図示されたマットレスは正に二つのクラスの空気袋を含み、一つはクラスA、一つはクラスBと指定され、各クラスの複数の空気袋を含む。AおよびBの空気袋はマットレスの長手方向の全長にわたってもよいが、分類された袋が、例えば占有者の太腿から首の基部まで占有者を支持することを目的としたマットレスのあるゾーンなどの、マットレスのより限られた長手方向のゾーンにのみ存在することでも十分である。図示されたベッドにおいて、長手方向に制限されたゾーンは、頭部、座部および太腿部44、46、48を包含する。
【0012】
図6を参照すると、各袋には垂直寸法V、縦寸法DLONG、横寸法DLATおよびアスペクト比がある。アスペクト比は、垂直寸法を縦寸法または横寸法のうちより小さい方で割ったものである。図5および図6のマットレスの縦寸法はその横寸法よりも小さいため、そのアスペクト比はV/DLONGである。
【0013】
図5を再び参照すると、ベッドはまた、圧搾空気を空気袋に供給するブロアまたは圧縮機72、すべてのA空気袋と流体連通するA供給用マニホルド74、およびすべてのB空気袋と流体連通するB供給用マニホルド76を備える。AおよびBの供給弁78、80は、圧縮機からの圧搾空気をA供給用マニホルド、B供給用マニホルドまたはその両方に向ける。また、ベッドは空気袋から空気を抜くためのポンプ86、すべてのA空気袋と流体連通するA排出用マニホルド88、およびすべてのB空気袋と流体連通するB排出用マニホルド90を含む。AおよびB排出弁92、94は、ポンプをA排出用マニホルド、B排出用マニホルド、またはその両方と流体連通させて配置する。また、ベッドは頭部デッキ部44の方向βを探知するセンサー98を含む。制御装置100は、センサーやユーザーキーパッド54からの入力を受信し、制御信号102を圧縮機、ポンプおよび弁に送る。
【0014】
制御装置、圧縮機、ポンプおよび弁によって、例えば、頭部デッキ部44の方向を変更する命令の発行と連携して、または頭部デッキ部の実際の方向変化と連携して、互いに逆位相でAおよびB袋を膨張可能及び収縮可能にさせる。
【0015】
図7は、縦寸法DLONGが横寸法DLATを上回るように空気袋が配置された別の空気袋の構成を示す。従って、縦寸法または横寸法の小さい方で垂直寸法を割って算出されるアスペクト比は、V/DLATである。
【0016】
図8はさらに別の空気袋の構成を示し、MおよびNは両方とも1よりも大きい、M×N寸法のマトリックスまたは格子のセルとして二つのクラスの袋が配列されている。
【0017】
図9は、さらに別の空気袋の構成を示し、MおよびNは両方とも1よりも大きい、M×N寸法のマトリックスまたは格子のセルとして三つのクラスの袋A、BおよびCが配列されている。マットレスの端部に沿って長手方向に分配された袋内領域104は、図の上部により近いマットレスの横側に示されるミニ袋106によってふさがれるか、または別の側に示される空隙108として残すことができる。
【0018】
図10は、袋に圧搾空気を供給するためのブロアまたは圧縮機72、共通供給用マニホルド112、および選択されたAおよび/またはB空気袋と連通する供給用マニホルドとそれに伴って圧縮機を配置する空気袋専用の供給弁VSA1、VSA2、VSA3、・・・VSAnおよびVSB1、VSB2、VSB3、・・・VSBnを有する別の構造を示す。また、当該別の構造は袋から空気を抜くためのポンプ86、共通排出用マニホルド114、及び選択されたAおよび/またはB空気袋と連通する排出用マニホルドとそれに伴ってポンプを配置する空気袋専用の排出弁VDA1、VDA2、VDA3、・・・VDAnおよびVDB1、VDB2、VDB3、・・・VDBnを含む。角度センサー98は、頭部デッキ部44の方向βを感知する。制御装置100は、センサーやキーパッドからの入力を受信し、制御信号102を圧縮機、ポンプおよび弁に発行する。
【0019】
操作において、ユーザーはキーパッド54を用いて、例えば水平(0°)から非水平の方向βへの頭部44の方向変更を命令する。方向を変更する前に、AおよびB空気袋の両方は膨張した状態にある(図11)。方向の変化に伴い、占有者の身体は方向Dに移動し、占有者の組織は既に説明したように伸張される(図12)。図13に見られるように、伸張は、位置A(クラスA空気袋に対応する)に比較的低いOSIPを与えることと、位置B(クラスB空気袋に対応する)に比較的高いOSIPを与えることによって緩和される。「比較的低い」「比較的高い」といった語句は、既存の基準OSIPに対してではなく、互いに関連した位置AおよびBでのOSIPを意味する。図13に見られるように、位置Aでのより低いOSIPによって、これらの位置で伸張した組織が緩和した状態に戻ることが可能となり、その一方で、位置Bで同時に発生する比較的高いOSIPが占有者に継続的な支持を提供する。位置Aでの比較的低いOSIPは、適切な排出弁(図5の弁92、図10の弁VD)を開き、ポンプ86を操作することによって達成される。位置Bでの比較的高いOSIPは、B空気袋を既存の通常の膨張状態に保つだけで達成される。別の方法として、B空気袋は、適切な弁(図5の弁80、図10の弁VS)を開いて圧縮機72を操作することで、必要に応じて一時的に過膨張させることもできる。図13は、実質的にゼロOSIPを達成するために十分に減圧されたクラスA空気袋を示す。
【0020】
その後、図14に見られるように、比較的高いOSIPが位置A(クラスA空気袋に対応する)に与えられ、比較的低いOSIPが位置B(クラスB空気袋に対応する)に与えられる。位置Bでの比較的低いOSIPによって、それらの位置で伸張した占有者の組織は緩和した状態に戻ることが可能となる。位置Aで同時に発生する比較的高いOSIPが、今度は占有者に支持を提供する。位置Bでの比較的低いOSIPは、適切な排出弁(図5の弁94、図10の弁VD)を開いてポンプを操作することで達成される。位置Aでの比較的高いOSIPは、適切な供給弁(図5の弁78、図10の弁VS)を開き、圧縮機を操作してA袋を再加圧することで達成される。図14は、実質的にゼロOSIPを達成するために十分に減圧されたクラスB袋を示す。
【0021】
最終的に、B空気袋は、図15に見られるように通常の膨張圧に再び膨張される。
【0022】
前述の実施例は、比較的低圧の状態であることが望まれる各空気袋(図13の空気袋Aおよび図14の空気袋B)から空気を抜き、比較的高圧の状態であることが望まれる空気袋を既存の通常の膨張状態に保つか、それらの空気袋(図13の空気袋B、図14の袋A)を過膨張させることで、空気袋内の比較的低い圧力および高い圧力を達成している。別の方法として、比較的高圧の状態であることが望まれる各空気袋を過膨張させ、別のクラスの空気袋を既存の通常の膨張状態に保つか、それらの空気袋から空気を抜くことでも、圧力差を達成しうる。実際の空気袋内の圧力は、クラスAとクラスBの空気袋間の圧力差に比べて重要性が低い。言い換えれば、組織の伸張および剪断は、比較的低圧の空気袋が占有者の体重をほとんど支えずに占有者/マットレスの接触面における摩擦を緩和する限り、一つのクラスの空気袋の圧力を低下させるか、または別のクラスの空気袋の圧力を上昇させることで緩和されうる。
【0023】
完全な組織の緩和を確実にするために、OSIPは、図13および図14に示すように実質的にゼロに低下されるべきである。しかしながら、より控えめな減圧が、剪断および組織伸張の完全な又は少なくとも部分的な軽減を達成するのに効果的な場合もある。効果的な剪断の緩和は、OSIPをわずか約20mmHgに低下させることで得られると考えられる。いずれにしても、OSIPを特定の値に低下させることは、空気袋内の膨張圧を同じ値に低下させることを要求しないことが認識されるべきである。
【0024】
一般に、組織は伸縮力Fによって伸張される。単位面積A当たりの伸縮力は、占有者/支持体の接触圧(OSIP)に比例している。

/A=μss * OSIP (1)
ここでμssは占有者の皮膚とマットレス表面との間の摩擦係数であり、Aは占有者とマットレスとの間の接触面積である。復元力Fは、組織をその本来の伸張されていない状態に戻そうとする。単位面積当たりの復元力の大きさは、組織伸張の量に比例している。

/A=k/A * x (2)
ここでkは単位面積当たりの組織のバネ定数であり、xは占有者/マットレスの接触面で組織が移動する距離である。FがFを上回る場合、つまり下記の場合には、復元力は伸縮力を十分克服できる。

/A * x > μss * OSIP (3)
所定量の組織伸張xについて、OSIPは上記の不等式における唯一の変数である。そのため、占有者の組織を緩和させてその本来の伸張されていない状態に戻すために、OSIPを十分に低下させて上記の不等式を満たす必要がある。
【0025】
位置Aに比較的低いOSIP及び位置Bに比較的高いOSIPを与え、その次に位置Aに比較的高いOSIP及び位置Bに比較的低いOSIPを与えるという上述のサイクルは、そのような反復が望ましいと思われる場合には複数回繰り返すことができる。占有者の皮膚が緩和して実質的に伸張されていない状態に戻るのに十分なほどゆっくりとした頻度が適している。実際には、当該頻度は、流れの供給源(例えば圧縮機72およびポンプ86)が必要な空気袋内の圧力振幅を達成できる最大速度に対応する頻度よりも速くない頻度であることが予想される。
【0026】
図16は、頭部デッキ部が方向Δβに変化するようにとの持続的命令に対する上述の交互圧力サイクルの時系列の多数の選択肢を示す図である。
【0027】
図16において、Δβコマンドは、初期時間tから最終時間tに至る方向変化の時間間隔中に存在する。より低いOSIPとより高いOSIPを交互に望ましいサイクルで与える動作(例えば、供給弁および/排出弁の開閉や圧縮機および/またはポンプの操作)が、圧力循環の時間間隔を画定する。サイクル例C1、C2およびC3はすべてt以前に開始し、それぞれt以前か、tと同時か、t後に終了する。サイクルC4、C5およびC6はすべてtと同時に開始し、それぞれt以前か、tと同時か、t後に終了する。サイクルC7はt後に開始し、t前に終了する。サイクルC8、C9およびC10はすべてt後に開始し、それぞれt以前か、tと同時か、t後に終了する。サイクルC11はt時間に開始する。サイクルC12は、tよりも後の時間に開始する。t以前に開始する交互圧力サイクル(サイクルC1、C2、C3)は、添付した特定の請求項の範囲内であるが、tに先行するサイクルの一部分は、剪断および組織伸張が発生する前であっても剪断および組織伸張を緩和させるのに十分低いレベルにOSIPを低下させるサイクルの先制部分である。従って、占有者支持体が方向を変更するよう命令された以降に開始するサイクルは、より効果が高いと考えられる。占有者支持体がその方向の変更を中止するように命令された以降に開始するサイクル(サイクルC11、C12)は効果があると考えられるが、伸張を緩和するための動作を取る前に最大の組織伸張を発生させてしまうという不利益の可能性を抱える。一時的な剪断および組織伸張は持続された剪断および組織伸張よりも問題となる可能性が低いため、この不利益は些少なものと考えられる。占有者支持体がその方向の変更を中止するように命令を受けた以降に止まるサイクル(サイクルC2、C3、C5、C6、C9、C10、C11、及びC12)は、少なくとも方向変更が止まるまで交互圧力サイクルが持続するという利点を持つ。占有者支持体がその方向変化を中止するように命令された時間tを超えて一時的に延長されるサイクル(C3、C6、C10、C11、C12)は、サイクルのより早期部分では対処されなかった残りの伸張を緩和させるさらなる機会を提供する。また、一時的な延長は、時間t後に発生するいかなる組織伸張にも対処する。そのような伸張は、例えば、占有者の慣性によって、方向の変化が止まった、または止めるように命令された期間後も占有者がマットレスに沿って長手方向に移動し続ける場合に発生しうる。少なくとも部分的に方向変化の時間間隔が重なり合うサイクル(C11とC12を除くすべてのサイクル)には、占有者が組織伸張を最も受けやすい時間間隔中の少なくとも一部において交互圧力サイクルが発生するという利点がある。しかしながら、既に指摘したように、一時的な剪断および組織伸張は持続された剪断および組織伸張よりも損傷度が低いため、利点は些少でありうる。同じ理由により、サイクルC11およびC12は満足度が高いと考えられている。
【0028】
ある特定の大きさの方向変化が著しい組織伸張を与えるか否かは、方向変化Δβ、初期方向βinitialまたはその両方の関数でありうることが認識されるべきである。従って、占有者支持体の方向調節可能な部分が少なくとも所定の量分方向を変更するように命令される場合にのみ、および/または初期方向βinitialが単一の占有者支持体の方向変化イベントにおいて所定の基準を満たす場合にのみ、交互圧力サイクルを提供することが満足のいくものでありうる。単一の方向変化イベントは、定義された時間間隔以上の継続時間を有していないゼロまたはそれ以上の発行/解除サブイベントによって中断される方向変化コマンドの発行およびその後の解除(例えば、キーパッド54の適切なキーを押してから離すことで)として定義される。これは、例えば10°から40°に方向変化を命令しようと意図したものの、方向変化イベント中に定義した時間間隔に満たない間にコマンドで一時的に圧力を放出してしまうユーザーの可能性を説明するものである。制御装置100は、一時的な放出を二回の別々のイベント間の休止としては認識せず、その代わりに単一のイベントとして認識する。
【0029】
交互圧力サイクルと方向変化との間の可能な一時的関係についての上述の説明は、命令された方向変化に基づくものだが、関係は代わりに実際の方向変化(例えば頭部デッキ部44の方向変化)に基づくこともできる。言い換えれば、占有者支持体の方向調節可能な部分の方向に関連した決定は、命令された方向変化ではなく実際の方向の決定に基づくことができ、占有者支持体の方向調節可能な部分の方向の変化に関連した決定は、命令された方向変化ではなく実際の方向変化の決定に基づくことができる。
【0030】
図17A図17Dは、さまざまな空気袋内の圧力サイクルの波形例と、異なるクラスAおよびBの空気袋間の位相関係を示すグラフである。占有者/支持体の接触圧は、類似の波形と位相関係を示すであろう。図17Aは、AおよびB袋圧力が半サイクル分互いに逆位相である実質的に方形波な波形を示す。すなわち、B空気袋の圧力が低い場合にA空気袋の圧力は高く、またその逆もある。これは、効果的な剪断および組織伸張の緩和にとって最適な波形および位相関係であると考えられている。図17Bは、図17Aに類似した波形を示すが、AとBの波形位相はサイクルの約1/3分移動している。図17Cは、半サイクル分の位相差がある非方形波の波形を示す。図17Dは、1/3サイクル分の位相差がある非方形波の波形を示す。正弦波や図17B図17Dの波形などの非方形波は、必要な気流速度がより低く、それゆえ達成しやすいという方形波よりも実用的な利点がある。
【0031】
図18は、命令された方向変化又は実際の方向変化に対応して交互圧力サイクルを実行する制御アルゴリズムを示す流れ図である。ブロック130は、例えば、ユーザーキーパッド54上の適切なキーに対する加圧など、頭部デッキ部の方向を変更する命令が発行されたかどうかを決定する。発行された場合は、アルゴリズムが存在する角度方向をブロック132でβinitialとして記録する。ブロック134で、アルゴリズムは方向調節イベントが終了したか、まだ進行しているかを監視する。アルゴリズムによって、一定期間以上、方向変更の命令が存在していないと決定される場合、アルゴリズムはユーザーが意図的に制御キーへの圧力を解除したものと結論を下し、ブロック136に進む。しかしながら、命令が一時的に中断された(つまり不在となり、その後一定期間が経過する前に再び現れた)場合には、アルゴリズムは中断が意図的ではなかったと結論を下し、命令の意図的削除がないかを引き続き監視する。
【0032】
ブロック136において、アルゴリズムはデッキ部の存在する角度方向をβfinalとして記録する。ブロック138において、アルゴリズムは角度方向Δβの変化を計算する。ブロック140において、アルゴリズムは角度変化の程度(絶対値)|Δβ|を閾値の角度変化ΔβTHRESHOLDと比較する。該程度が閾値未満の場合、アルゴリズムは交互圧力サイクルの命令を控える。該程度が閾値と同等またはそれを上回る場合には、アルゴリズムは、例えば、供給弁および排出弁を適切に開閉し、圧縮機およびポンプを操作したり操作を控えたりすることで、一つ以上の交互圧力サイクル(ブロック142)を提供するよう命令を発行する。サイクルが完了すると(ブロック144)、アルゴリズムは圧力サイクルを終了する(ブロック146)。
【0033】
上述の説明を考慮して、主題に関して何らかの他の特徴や変形が、ここではより認識されるであろう。例えば、ベッドの頭部の方向を変更させるという状況において方法および装置が説明されてきたが、ここで教示される原則はその他の部分にも適用され、必要に応じて、ベッドフレームの傾斜αの変化と併せても適用することができる。
【0034】
図示された実施態様は、空気袋から空気を急速に抜くためにポンプ86を使用する。しかしながら、原則的にはポンプの代わりにパッシブ換気を用いてもよい。そのような配置においては、空気袋の急速な減圧を促すためにその他の構成要素を含めることが賢明である。図19は、空気袋が膨張された時に空気袋周辺に伸びる弾性帯118という形での弾性要素を用いた一つの可能な配置を示す。パッシブ換気が開くと、弾性帯は空気袋内の空気の排気を加速させるのに役立つ。
【0035】
空気袋の膨張圧を控えるだけで、空気袋の急速な減圧、および付随してOSIPを満足のいくレベルまで低下させることを達成できるには、少なくとも1.5という空気袋のアスペクト比が望ましいと考えられる。控えめな空気袋の圧力は圧縮機の需要を低下させ、空気袋の破裂の可能性も低下させる。より高いアスペクト比では、比較的低圧の空気袋から占有者の体重を十分に取り除くように空気袋内の圧力変化をより小さくすることを必要とし、剪断および組織伸張を緩和できるくらいOSIPを低下させる。
【0036】
本出願の一部は、占有者/マットレスの接触面および占有者の皮膚とマットレス表面との間の摩擦係数に言及している。実際には、占有者は通常寝間着を着用しており、より正確には接触面は占有者/寝間着/マットレスを組み合わせた接触面として考えられる。さらに、皮膚とマットレス表面との間の摩擦係数全体を想定することはできるものの、占有者の寝間着が存在することで接触面はより複雑なものとなる。しかしながら、占有者/マットレス接触面のより単純な概念および占有者の皮膚とマットレス表面との間の摩擦係数を使用することは、教示の適用範囲および請求される主題から逸脱することなくここで記載及び請求される主題の根本的な原則を顕在化させる有益な理想化である。
【0037】
この開示では具体的な実施態様に言及しているが、添付の各請求項に明記される主題から逸脱することなく、形態や詳細に対してさまざまな変更を行うことができることを当業者は理解するであろう。
図1
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