(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
凹部に設けた、円盤状のロック部材に係合部を設け、トノカバーの端末側ボスを受け入れ位置から、前記トノカバーの巻き込み付勢力により反転しない位置まで前記ロック部材の前記係合部を回転させ、
前記受け入れ位置へは第1の規制部とバネで位置決めされ、
前記反転しない位置へは第2の規制部により位置決めされ、
前記トノカバーの前記端末側ボスを保持することを特徴とした、トノカバーロック機構。
【背景技術】
【0002】
従来、トノカバーの端末側に、回転可能なローラを設け、当該ローラをラゲッジルームの上縁に形成したレールに沿って移動可能に構成した車両用トノカバー装置が知られている(特許文献1の段落番号「0014」、並びに
図1〜3参照)。
上記した従来のレールの途中には、ローラを一時的に停止可能な窪みを設けていた(特許文献1の段落番号「0015」、並びに
図3及び
図4参照)。
【0003】
上記した従来の窪みには、ローラの停止機構を設けていた(特許文献1の段落番号「0016」、並びに
図4及び
図5参照)。停止機構は、軸に枢支された略L字状の停止部材と、当該停止部材の回動を停止させるフック部材と、当該フック部材によって停止した位置から復帰させるばね部材とから構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来の車両用トノカバー装置では、略L字状の停止部材の回動を停止させるフック部材を必要とし、その構造が複雑であり、又、トノカバーの移動禁止を解除する際に、フック部材を停止部材の爪から外す必要があり(特許文献1の段落番号「0019」、及び
図5(B)参照)、フック部材の解除操作が面倒であるという問題点があった。
【0006】
そこで、各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次の点にある。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を目的とする。
すなわち、請求項1に記載の発明は、トノカバーの巻き込み付勢力により反転しない位置においては第2の規制部により位置決めしているので、当該反転しない位置からトノカバーの端末側ボスの受け入れ位置に、トノカバーを介して円盤状のロック部材の係合部を回転させることにより、トノカバーのロック状態を簡便に且つ迅速に解除することができるようにしたものである。
【0007】
これに加え、請求項1に記載の発明は、トノカバーの端末側ボスの受け入れ位置においては第1の規制部とバネで位置決めしているので、車両の振動等により、受け入れ位置がずれるのを未然に防止することができるようにしたものである。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0008】
すなわち、請求項2に記載の発明は、凹部の内周側に係合部の開口を設けているので、
トノカバーの巻き込み付勢力により反転しない位置において、端末側ボスを強固に保持することができるようにしたものである。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0009】
すなわち、請求項3に記載の発明は、車体内装パネルに凹部を設けることで、部品点数を減少することができるようにしたものである。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0010】
すなわち、請求項4に記載の発明は、ロック部材を制動するダンパーを設けることで、トノカバーの巻き込み付勢力により反転しない位置からトノカバーの端末側ボスの受け入れ位置に、トノカバーを介して円盤状のロック部材の係合部を回転させる際に特に、ダンパーによる制動力を働かせることができ、その際の質感を向上することができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した各目的を達成するためになされたものであり、各発明の特徴点を図面に示した発明の実施の形態を用いて、以下に説明する。
なお、カッコ内の符号は、発明の実施の形態において用いた符号を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
また、図面番号も、発明の実施の形態において用いた図番を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を特徴とする。
【0012】
第1に、トノカバーロック機構(10)は、例えば
図1、
図4及び
図5に示すように、凹部(31)に設けた、円盤状のロック部材(50)に係合部(52)を設け、トノカバー(20)の端末側ボス(21)を受け入れ位置(例えば
図1及び
図4)から、トノカバー(20)の巻き込み付勢力により反転しない位置(例えば
図9及び
図10)までロック部材(50)の係合部(52)を回転させるものである。
【0013】
第2に、受け入れ位置(例えば
図1及び
図4)へは第1の規制部(44)とバネ(60)で位置決めされる。
第3に、反転しない位置(例えば
図9及び
図10)へは第2の規制部(45)により位置決めされ、トノカバー(20)の端末側ボス(21)を保持する。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0014】
すなわち、係合部(52)は、例えば
図1及び
図4に示すように、凹部(31)の内周側に開口を設けている。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0015】
すなわち、凹部(31)は、例えば
図1〜4に示すように、車体内装パネル(30)に設けられている。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0016】
すなわち、例えば
図1、
図5及び
図6に示すように、ロック部材(50)を制動するダンパー(70)を設けている。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。(請求項1)
請求項1に記載の発明によれば、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、トノカバーの巻き込み付勢力により反転しない位置においては第2の規制部により位置決めしているので、当該反転しない位置からトノカバーの端末側ボスの受け入れ位置に、トノカバーを介して円盤状のロック部材の係合部を回転させることにより、トノカバーのロック状態を簡便に且つ迅速に解除することができる。
【0018】
これに加え、請求項1に記載の発明によれば、トノカバーの端末側ボスの受け入れ位置においては第1の規制部とバネで位置決めしているので、車両の振動等により、受け入れ位置がずれるのを未然に防止することができる。
(請求項2)
請求項2に記載の発明によれば、上記した請求項1に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0019】
すなわち、請求項2に記載の発明によれば、凹部の内周側に係合部の開口を設けているので、トノカバーの巻き込み付勢力により反転しない位置において、端末側ボスを強固に保持することができる。
(請求項3)
請求項3に記載の発明によれば、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0020】
すなわち、請求項3に記載の発明によれば、車体内装パネルに凹部を設けることで、部品点数を減少することができる。
(請求項4)
請求項4に記載の発明によれば、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0021】
すなわち、請求項4に記載の発明によれば、ロック部材を制動するダンパーを設けることで、トノカバーの巻き込み付勢力により反転しない位置からトノカバーの端末側ボスの受け入れ位置に、トノカバーを介して円盤状のロック部材の係合部を回転させる際に特に、ダンパーによる制動力を働かせることができ、その際の質感を向上することができる。
より詳細には、請求項4に記載の発明によれば、リリース時に手を離してからトノカバーの端末側ボスが円盤状のロック部材から解放されるまでの時間差を設けること、又、反転の負勢がロック・ロック解除操作をアシストすることにより、質感を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図中、10は、トノカバーロック機構であり、
図2及び
図3に示すように、車両後部のラゲッジルームの上方を開閉可能に覆うトノカバー20を、当該上方を閉じた閉位置(
図2参照)にロックするためのものである。
トノカバー20は、図示しないが、その基端側が巻き取り機構により巻き取られ、常時、巻き込み付勢力により、
図3に示すように、短縮し、当該巻き込み付勢力に抗して、
図2に示すように、端末側ボス21を引き出すことで、ラゲッジルームの上方を覆い隠すようにして開じる。
【0024】
トノカバーロック機構10は、
図5及び
図6に示すように、大別すると、次のパーツを備える。
なお、次の(1)〜(5)については、後述する。
(1)凹部31
(2)ベース部材40
(3)ロック部材50
(4)バネ60
(5)ダンパー70
なお、トノカバーロック機構10のパーツは、上記した(1)〜(5)に限定されない。(凹部31)
凹部31は、
図1及び
図5に示すように、後述するロック部材50がはまり込むものであり、当該ロック部材50を回転可能に保持するためのものである。
【0025】
凹部31は、
図1〜4に示すように、車体内装パネル30に設けられている。
なお、凹部31を、車体内装パネル30に直接、設けたが、これに限定されず、車体内装パネル30と別体に設け、車体内装パネル30に固定するようにしても良い。
凹部31は、車体内装パネル30の表面から略円形に凹み、平面円形の底部と、当該底部の周囲を円筒形に囲み、底部と対向する面が円形に開放した周壁とを有する。
【0026】
凹部31の周壁の一部には、トノカバー20の端末側ボス21が通過可能なガイド溝32を設けている。ガイド溝32は、その底を凹部31の底部と略面一に形成し、当該平面円形の底部の中心に対して所定の角度、例えば約60度の角度で開口させている。また、ガイド溝32は、凹部31の外側に向かって平面略V字形に開いている。
(ベース部材40)
ベース部材40は、
図1、
図5及び
図6に示すように、凹部31内に収納され、後述するロック部材50が回転可能に支持するためのものである。ベース部材40は、適度な弾性と剛性とを有する熱可塑性合成樹脂により一体的に形成されている。
【0027】
ベース部材40は、
図5に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、ベース部材40の各部は、次の(1)〜(5)に限定されない。
(1)ベース本体41
ベース本体41は、
図5〜8に示すように、凹部31の底部に載置されるものであり、当該底部と同一の平面円形の円盤状に形成されている。ベース本体41は、凹部31の底部に回転不能に固定される。
【0028】
(2)軸部42
軸部42は、
図5、
図7及び
図8に示すように、ベース本体41の中心から円筒形に延び、後述するロック部材50を回転可能に支持するためのものである。
(3)ダンパー保持部43
ダンパー保持部43は、
図1及び
図5に示すように、ベース本体41から枠状に延び、後述するダンパー70を保持するためのものである。
【0029】
(4)第1規制部44
第1規制部44は、
図1及び
図5に示すように、後述するロック部材50と当接し、同じく後述する受け入れ位置(
図1及び
図4参照)を規制するものである。
第1規制部44は、ダンパー保持部43の一端部に位置し、当該一端部の軸部42に近い側から離隔する方向に向かって略V字形に開くように形成されている。
【0030】
(5)第2規制部45
第2規制部45は、
図5及び
図10に示すように、後述するロック部材50と当接し、同じく後述する反転しない位置(
図9及び
図10参照)を規制するものである。第2規制部45は、第1規制部44と反対側のダンパー保持部43の他端部に位置し、当該他端部の軸部42に近い側から離隔する方向に向かって略V字形に開くように形成されている。
(ロック部材50)
ロック部材50は、
図4〜6に示すように、円盤状に形成され、ベース部材40を介して、凹部31内に回転可能に支持される。ロック部材50は、適度な剛性を有する熱可塑性合成樹脂により一体的に形成されている。
【0031】
ロック部材50は、ベース部材40と対向する側が開放した略コップ形に形成され、円盤形の上壁と、当該上壁の周囲からベース部材40に向かって円筒形に延び、ベース部材40と対向する面が円形に開放した周壁とを有する。
ロック部材50は、
図5及び
図6に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)〜(5)については後述する。
【0032】
(1)軸受部51
(2)係合部52
(3)歯部53
(4)第1当接面54
(5)第2当接面55
なお、ロック部材50の各部は、次の(1)〜(5)に限定されない。
(軸受部51)
軸受部51は、
図1及び
図6〜8に示すように、ロック部材50の上壁の下面からベース部材40に向かって円筒形に延び、当該ベース部材40の軸部42の外周に回転可能にはまり込むものである。
(係合部52)
係合部52は、
図1、
図4及び
図5に示すように、ロック部材50の周囲から凹み、トノカバー20の端末側ボス21を受け入れ可能なものである。係合部52は、平面が略扇形ないしは略V字形に凹み、底面及び内側面が塞がれ、上壁側の上面及び外側面が開口する。
【0033】
係合部52は、
図1及び
図4に示すように、凹部31のガイド溝32と一致させた位置で、係合部52の開口側面とガイド溝32とが相互に連通し、ガイド溝32を通して差し込まれた端末側ボス21を受け入れ、当該位置を「受け入れ位置」という。
「受け入れ位置」から、ロック部材50を回転させると、係合部52の開口側面が、凹部31の周壁の内周面により塞がれる。このため、係合部52に端末側ボス21を受け入れた状態で、ロック部材50を回転させると、端末側ボス21がロック部材50から抜けなくなる。
【0034】
その後、
図9及び
図10に示すように、ロック部材50を所定の角度、例えば「受け入れ位置」から約180度回転した位置においては、トノカバー20の巻き込み付勢力により反転しなくなり、当該位置を「反転しない位置」という。
(歯部53)
歯部53は、
図1、
図6及び
図8に示すように、歯部53の外周に形成され、後述するダンパー70の歯車71とかみ合うものである。
(第1当接面54)
第1当接面54は、
図1及び
図6に示すように、ベース部材40の第1規制部44と当接し、「受け入れ位置」(
図1及び
図4参照)を規制するものである。
【0035】
第1当接面54は、係合部52の外側面、すなわち円筒形の周壁の内部に位置し、略V字形に開いた第1規制部44と平行に傾斜させている。
(第2当接面55)
第2当接面55は、
図6及び
図10に示すように、ベース部材40の第2規制部45と当接し、「反転しない位置」(
図9及び
図10参照)を規制するものである。
【0036】
第2当接面55は、係合部52の他方の外側面、すなわち第1当接面54と背向し、円筒形の周壁の内部に位置し、略V字形に開いた第2規制部45と平行に傾斜させている。
(バネ60)
バネ60は、
図5〜8に示すように、ベース部材40の第1規制部44に向かって、ロック部材50の第1当接面54を付勢するものである。
【0037】
バネ60は、ベース部材40の円筒形の軸部42内に位置し、その一方の巻き端を軸部42に掛け止め、他方の巻き端を軸部42の外周にはまり込むロック部材50の軸受部51に掛け止める。
バネ60が巻き解く力により、ロック部材50の第1当接面54をベース部材40の第1規制部44に向かって付勢している。バネ60は、バネ力が弱く設定され、車両の振動等により、ロック部材50が「受け入れ位置」が移動しないようにするためのものである。
(ダンパー70)
ダンパー70は、
図1、
図5及び
図6に示すように、ロック部材50を制動するものである。ダンパー70は、シリコンオイルの粘性抵抗を利用した回転式のオイルダンパーが使用されている。
【0038】
ダンパー70は、
図1及び
図8に示すように、ベース部材40のダンパー保持部43に装着されて固定され、その歯車41をロック部材50の歯部53とかみ合わせている。
(使用方法)
つぎに、上記したトノカバーロック機構の使用方法について説明する。
図3に示すように、巻き取られた状態のトノカバー20を、巻き込み付勢力に抗して、
図2に示すように、引き出し、
図4に示すように、その端末側ボス21を凹部31のガイド溝32に合わせてはめ込む。
【0039】
端末側ボス21は、ガイド溝32の終端部から、
図4に示すように、「受け入れ位置」(
図1及び
図4参照)のロック部材50の凹状の係合部52の開口から内部にはめ込む。
その後、端末側ボス21を持って、ロック部材50を「反転しない位置」(
図9及び
図10参照)に向かって回転させる。
ロック部材50を約180度回転させると、その第2当接面55がベース部材40の第2規制部45に当接し、トノカバー20の巻き込み付勢力により反転しなくなり、当該「反転しない位置」に停止する。
【0040】
トノカバー20は、その巻き込み付勢力に向して、引き出された状態にロックされ、車両後部のラゲッジルームの上方が覆われた閉じた状態なる。
一方、ロック状態を解除するには、端末側ボス21を持って、ロック部材50を「受け入れ位置」(
図1及び
図4参照)に向かって回転させれば良い。
このとき、トノカバー20の巻き込み付勢力が作用し、ロック部材50を「受け入れ位置」に向かって回転しようとする回転力が働く。
【0041】
その際に、ロック部材50の歯部53と、ダンパー70の歯車41とのかみ合いにより、歯車41が回転し、ダンパー70の制動力が働く。
このため、ロック部材50は、「受け入れ位置」(
図1及び
図4参照)に向かってゆっくりと且つ静粛に回転する。
ロック部材50が「受け入れ位置」まで回転すると、その第1当接面54がベース部材40の第1規制部44と当接し、ロック部材50の回転が停止する。
【0042】
「受け入れ位置」において、ロック部材50の係合部52の開口が、凹部31のガイド溝32と一致し、開放される。
このため、端末側ボス21を、係合部52からガイド溝32を通して抜き取ることで、ロック状態が解除され、トノカバー20を開放させることができる。