特許第5694836号(P5694836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694836
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】熱変色性筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 7/12 20060101AFI20150312BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20150312BHJP
   B43K 24/02 20060101ALI20150312BHJP
   B43K 25/02 20060101ALI20150312BHJP
   B43K 29/02 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   B43K7/12
   B43K8/02 F
   B43K24/02
   B43K25/00 H
   B43K29/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-89103(P2011-89103)
(22)【出願日】2011年4月13日
(65)【公開番号】特開2012-218389(P2012-218389A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年2月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】岩田 久嗣
【審査官】 荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平3−81792(JP,U)
【文献】 国際公開第2008/105227(WO,A1)
【文献】 登録実用新案第3139755(JP,U)
【文献】 実開平4−54890(JP,U)
【文献】 実開平6−3691(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00− 8/24
B43K 24/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記体の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先を設け、前記筆記体を軸筒内に前後方向に移動可能に収容し、前記筆記体を軸筒内に設けた弾発体により後方に付勢し、前記筆記体のペン先を軸筒の前端孔から出没可能に構成した熱変色性筆記具であって、
前記軸筒の側壁に前後方向に移動可能にクリップ体を設け、前記クリップ体に前記筆記体の後端を前後方向に当接させ、前記クリップ体前部の径方向内面に玉部を突出させ、ペン先没入状態から前記クリップ体を前記弾発体の後方付勢に抗して前方にスライド操作することによって、前記クリップ体の玉部を前記軸筒側壁の係止部に係止させることによってペン先突出状態にし、前記ペン先突出状態から前記クリップ体の玉部と前記軸筒側壁の係止部との係止を解除することによってペン先没入状態にする出没機構を備え、前記クリップ体の後端に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な低摩耗性の弾性材料よりなる摩擦部を設けるとともに、前記クリップ体が、前側の径方向内面に玉部が突設されたクリップ本体と、前記玉部より後方のクリップ本体の径方向内面に連設される基部と、該基部よりも後方且つ前記クリップ本体の後端に一体に形成される前記クリップ本体より厚い肉厚の操作部と、該基部に一端が連設されるU字状の屈曲部と、該屈曲部の他端に摩擦部が取り付け可能な取付部と、該屈曲部より径方向外方に一体に連設のガイド部からなり、前記取付部に前記摩擦部を設けてあり、前記基部が、前記ペン先の出没動作に連動して前記軸筒の側壁に設けたスライド孔内に挿入され前後方向に摺動可能とし、前記ガイド部が、前記軸筒の側壁に設けた長孔内に係合され前後方向に摺動可能としたことを特徴とする熱変色性筆記具。
【請求項2】
ペン先突出状態及びペン先没入状態において、前記摩擦部を前記軸筒の後端より後方に突出させた請求項1記載の熱変色性筆記具。
【請求項3】
前記クリップ体が、前側の径方向内面に玉部が突設されたクリップ本体と、前記玉部より後方のクリップ本体の径方向内面に連設される基部と、該基部よりも後方に突出するクリップ本体の後端部に形成される操作部と、該基部に一端が連設されるU字状の屈曲部と、該屈曲部の他端に摩擦部が取り付け可能な取付部とからなる合成樹脂の一体成形体からなり、前記屈曲部の前面に前記筆記体の後端が前後方向に当接され、前記基部と前記取付部との非接触状態が維持され、前記操作部を径方向内方に押圧することによって前記クリップ体の玉部と軸筒側壁の係止部との係止が解除されることを特徴とする請求項1または2記載の熱変色性筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱変色性筆記具に関する。詳細には、筆記体の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先を設け、前記筆記体を軸筒内に前後方向に移動可能に収容し、前記筆記体のペン先を軸筒の前端孔から出没可能に構成した熱変色性筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軸筒内に筆記体を前後方向に移動可能に収容し、軸筒の外面に操作部を設け、前記操作部を操作することにより前記筆記体のペン先を軸筒の前端孔から出没可能に構成し、前記筆記体の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先を設け、前記軸筒の外面に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な摩擦部を設けた熱変色性筆記具が開示されている。
【0003】
前記特許文献1は、ペン先突出操作及びペン先没入操作のいずれもが操作部を前方に押圧操作するタイプの出没機構(いわゆるダブルノック式)を採用した場合、部品点数が増加し、安価に提供できないおそれがある。
【0004】
また、特許文献1の図15には、操作部を軸筒側壁より径方向外方に突出させ、前記操作部を後方付勢に抗して前方に押圧操作することにより、ペン先没入状態からペン先突出状態にする構成(いわゆる多芯タイプのサイドスライド式)の出没機構を備え、且つ、軸筒の後端外面に摩擦部を設けた構成が開示されている。しかし、この構成の熱変色性筆記具は、ペン先突出状態からペン先没入状態にする際(ペン先突出状態を解除する際)、他の筆記体に取り付けられた操作体を操作しなければならない。そのため、複数の操作体(即ち複数の突出部分)を設ける必要があり、外観デザイン上の自由度が減少する。さらには、ポケット等に挟持可能なクリップを軸筒に設ける場合、より一層、突出部分が増え、外観デザイン上の自由度が減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/105227号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記従来の問題点を解決するものであって、部品点数を少なくすることができ、しかも、外観デザイン上の自由度が増加する熱変色性筆記具を提供しようとするものである。尚、本発明で、「前」とは、ペン先側を指し、「後」とは、その反対側を指す。尚、本発明で、「ペン先没入状態」とは、ペン先が軸筒内に没入した状態をいい、「ペン先突出状態」とは、ペン先が軸筒の前端より外部に突出した状態をいう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1>本願の第1の発明は、筆記体8の内部に熱変色性インキを収容し、前記筆記体8の前端に前記熱変色性インキが吐出可能なペン先81を設け、前記筆記体8を軸筒2内に前後方向に移動可能に収容し、前記筆記体8を軸筒2内に設けた弾発体6により後方に付勢し、前記筆記体8のペン先81を軸筒2の前端孔31から出没可能に構成した熱変色性筆記具であって、前記軸筒2の側壁に前後方向に移動可能にクリップ体5を設け、前記クリップ体5に前記筆記体8の後端を前後方向に当接させ、前記クリップ体5前部の径方向内面に玉部52を突出させ、ペン先没入状態から前記クリップ体5を前記弾発体6の後方付勢に抗して前方にスライド操作することによって、前記クリップ体5の玉部52を前記軸筒2側壁の係止部22に係止させることによってペン先突出状態にし、前記ペン先突出状態から前記クリップ体5の玉部52と前記軸筒2側壁の係止部22との係止を解除することによってペン先没入状態にする出没機構を備え、前記クリップ体5の後端に、前記熱変色性インキの筆跡を摩擦しその際に生じる摩擦熱で該筆跡を熱変色可能な
低摩耗性の弾性材料よりなる摩擦部9を設けるとともに、前記クリップ体5が、前側の径方向内面に玉部52が突設されたクリップ本体51と、前記玉部52より後方のクリップ本体51の径方向内面に連設される基部54と、該基部54よりも後方且つ前記クリップ本体51の後端に一体に形成される前記クリップ本体51より厚い肉厚の操作部53と、該基部54に一端が連設されるU字状の屈曲部55と、該屈曲部55の他端に摩擦部9が取り付け可能な取付部56と、該屈曲部55より径方向外方に一体に連設のガイド部57からなり、前記取付部56に前記摩擦部9を設けてあり、前記基部54が、前記ペン先81の出没動作に連動して前記軸筒2の側壁に設けたスライド孔21内に挿入され前後方向に摺動可能とし、前記ガイド部57が、前記軸筒2の側壁に設けた長孔23内に係合され前後方向に摺動可能としたことを要件とする。
【0008】
前記第1の発明の熱変色性筆記具1は、従来のダブルノック式の出没機構に比べて部品点数を少なくすることができる。また、前記第1の発明の熱変色性筆記具1は、軸筒2の側壁にクリップを設けたにもかかわらず、従来の多芯タイプのサイドスライド式の熱変色性筆記具に比べ、突出部分が少なく、外観デザイン上の自由度が増加し、スマートな外観を得ることができる。
【0009】
尚、本発明において、前記クリップ体5の玉部52とは、軸筒2側壁との間においてポケット等に挟持可能なものである。
【0010】
<2>本願の第2の発明は、前記第1の発明の熱変色性筆記具1において、ペン先突出状態及びペン先没入状態において、前記摩擦部9を前記軸筒2の後端より後方に突出させたことを要件とする。
【0011】
前記第2の発明の熱変色性筆記具1は、ペン先突出状態及びペン先没入状態において(即ち常時)、前記摩擦部9を前記軸筒2の後端より後方に突出させたことにより、摩擦体を使用する際、摩擦体の突出状態を確認することが不要となり、迅速に摩擦作業を開始できる。
【0012】
<3>本願の第3の発明は、前記第1の発明または第2の発明の熱変色性筆記具1において、前記クリップ体5が、前側の径方向内面に玉部52が突設されたクリップ本体51と、前記玉部52より後方のクリップ本体51の径方向内面に連設される基部54と、該基部54よりも後方に突出するクリップ本体51の後端部に形成される操作部53と、該基部54に一端が連設されるU字状の屈曲部55と、該屈曲部55の他端に摩擦部9が取り付け可能な取付部56とからなる合成樹脂の一体成形体からなり、前記屈曲部55の前面に前記筆記体8の後端が前後方向に当接され、前記基部54と前記取付部56との非接触状態が維持され、前記操作部53を径方向内方に押圧することによって前記クリップ体5の玉部52と軸筒2側壁の係止部22との係止が解除されることを要件とする。
【0013】
前記第3の発明の熱変色性筆記具1は、クリップ体5が、クリップ本体51と、基部54と、操作部53と、屈曲部55と、取付部56とからなる合成樹脂の一体成形体からなるため、従来のダブルノック式の出没機構に比べて部品点数を少なくすることができる。前記第3の発明の熱変色性筆記具1は、前記基部54と前記取付部56との非接触状態が維持されることにより、クリップ体5の操作部53を径方向内方に押圧操作した際、取付部56での摩擦部9の取付状態に影響を与えず、摩擦部9が取付部56から脱落するおそれがない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱変色性筆記具は、部品点数を少なくすることができ、しかも、外観デザイン上の自由度が増加する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態のペン先没入状態を示す縦断面図である。
図2図1のペン先突出状態を示す縦断面図である。
図3】熱変色性インキの変色挙動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び図2に本発明の実施の形態を示す。
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、軸筒2と、該軸筒2の側壁外面に前後方向に移動可能に設けた単一のクリップ体5と、該軸筒2内に収容される筆記体8と、前記軸筒2内に収容され且つ前記筆記体8を後方に付勢する弾発体6と、前記筆記体8のペン先81を軸筒2の前端孔31より出没自在にさせる出没機構とを備える。
【0017】
・筆記体
前記筆記体8は、ペン先81と、該ペン先81が前端開口部に圧入固着されたインキ収容管82と、該インキ収容管82内に充填される熱変色性インキと、該熱変色性インキの後端に充填され且つ該熱変色性インキの消費に伴い前進する追従体(例えば高粘度流体)とからなる。
【0018】
前記ペン先81は、例えば、前端に回転可能にボールを抱持した金属製のボールペンチップのみからなる構成、または前記ボールペンチップと該ボールペンチップの後部外面を保持した合成樹脂製のペン先ホルダーとからなる構成のいずれであってもよい。また、前記インキ収容管82の後端開口部に、インキ収容管82と外部とが通気可能な通気孔を備えた尾栓83が取り付けられる。
【0019】
・軸筒
前記軸筒2は、先細円筒状の前軸3と、該前軸3の後端部に連結される円筒状の後軸4とからなる。
【0020】
前記前軸3は、合成樹脂の成形体からなる先細円筒状の本体32と、該本体32外面に設けられる弾性材料からなる把持部33とからなる。前記把持部33は、2色成形または装着により設けられる。前記前軸3の後端部は縮径され、その外面にはオネジ部が形成される。前記前軸3の前端には、前端孔31が前後方向に貫設される。
【0021】
前記後軸4は、円筒状の合成樹脂の成形体からなる。前記後軸4の前端部内面には、メネジ部が形成される。前記メネジ部に前記前軸3のオネジ部が螺合可能である。前記後軸4の側壁には、前後方向に延びるスライド孔21と、前後方向に延びる長孔23が形成される。前記長孔23は、前記スライド孔21の径方向の反対側(軸線に対して対称位置)に形成される。前記スライド孔21は、前端が閉鎖し且つ後方に開口されている。前記長孔23は、前端及び後端が閉鎖されている。前記スライド孔21の僅かに前方の後軸4の側壁には、孔からなる係止部22が形成される。前記係止部22は、孔の他にも、凹部、凸部であってもよい。
【0022】
前記クリップ体5は、前後方向に延びるクリップ本体51と、該クリップ本体51の前部の径方向内面に突設される玉部52と、部該クリップ本体51の後部に一体に連設される基部54と、該基部54より後方に突出され且つクリップ本体51の後端に一体に連設される操作部53と、該基部54に一体に連設されるU字状の屈曲部55と、該屈曲部55の後端部に一体に連設される筒状の取付部56と、該屈曲部55より径方向外方に一体に連設のL字状のガイド部57とからなる。前記クリップ体5は、合成樹脂の成形体により得られる。
【0023】
前記屈曲部55の内面には、クリップ弾発体7(例えば圧縮コイルスプリング)が収容され、前記屈曲部55に径方向の弾発力が付与される。これ以外にも、前記クリップ弾発体7を備えず、屈曲部55のみの構成でも、屈曲部55に径方向の弾発力を付与することができる。
【0024】
前記ガイド部57は、径方向に弾性変形(たわみ変形)可能である。クリップ体5は軸筒2内に軸筒2後端より挿入される。前記クリップ体5を軸筒2内に軸筒2後端より挿入する際、前記ガイド部57が前記長孔23に乗り越え係合され、前記ガイド部57が前記長孔23内を前後方向に摺動可能となる。前記ガイド部57が長孔23に係合することにより、ペン先没入時にクリップ体5が軸筒2から脱落すること防止できる。それと同時に、前記基部54が前記スライド孔21内に挿入され、前記基部54が前記スライド孔21内を前後方向に摺動可能となる。前記基部54と前記取付部56とは、非接触状態が維持される。
【0025】
前記取付部56内に弾性材料よりなる摩擦部が嵌合により取り付けられる。前記摩擦部9は、クリップ体の前後方向の移動に伴い、前後方向に移動可能であるが、ペン先突出状態及びペン先没入状態において(即ち常時)、前記摩擦部9が前記軸筒2の後端より後方に突出される。
【0026】
前記摩擦部9を構成する弾性材料は、弾性を有する合成樹脂(ゴム、エラストマー)が好ましく、例えば、シリコーン樹脂、SBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体)、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等が挙げられる。前記摩擦部9を構成する弾性を有する合成樹脂は、高摩耗性の弾性材料(例えば、消しゴム等)からなるものよりも、摩擦時に摩耗カス(消しカス)が殆ど生じない低摩耗性の弾性材料からなることが好ましい。
【0027】
・出没機構
前記出没機構は、クリップ体5を前後に移動させることにより、ペン先を出没させるものである。
【0028】
・ペン先の出没
ペン先没入状態からクリップ体5を前方に、弾発体6による後方付勢に抗してスライド操作すると、クリップ体5の玉部52が、軸筒2の側壁の係止部22に係止され、ペン先突出状態が維持される。
【0029】
ペン先突出状態からクリップ体5の操作部53を径方向内方に押圧操作すると、基部54を支点にしてクリップ体5の前端部が径方向外方に変位し、玉部52と係止部22との係止状態が解除される。それと同時に、弾発体6による後方付勢により、筆記体8が後方に移動し、長孔23の後端にガイド部57が当接され、ペン先没入状態が維持される。
【0030】
・熱変色性インキ
本実施の形態において、前記熱変色性インキは、可逆熱変色性インキが好ましい。前記可逆熱変色性インキは、発色状態から加熱により消色する加熱消色型、発色状態または消色状態を互変的に特定温度域で記憶保持する色彩記憶保持型、または、消色状態から加熱により発色し、発色状態からの冷却により消色状態に復する加熱発色型等、種々のタイプを単独または併用して構成することができる。
【0031】
また、前記可逆熱変色性インキに含有される色材は、従来より公知の(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、及び(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体、の必須三成分を少なくとも含む可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた可逆熱変色性顔料が好適に用いられる。
【0032】
本実施の形態では、図3に示すように、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t)以下の低温域での発色状態、または完全消色温度(t)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t〜tの間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で記憶保持できる色彩記憶保持型熱変色性インキが適用されることが好ましい。図3において、ΔHは、ヒステリシスの程度を示す温度幅(即ちヒステリシス幅)を示す。ΔHの値が小さいと、変色前後の両状態のうち一方の状態しか存在しえない。ΔHの値が大きいと、変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0033】
本実施の形態では、前記熱変色性インキの摩擦部9の摩擦熱による変色温度は、25℃〜95℃(好ましくは36℃〜95℃)に設定される。即ち、本実施の形態では、前記高温側変色点〔完全消色温度(t)〕を、25℃〜95℃(好ましくは、36℃〜90℃)の範囲に設定し、前記低温側変色点〔完全発色温度(t)〕を、−30℃〜+20℃(好ましくは、−30℃〜+10℃)の範囲に設定することが有効である。それにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持を有効に機能させることができるとともに、可逆熱変色性インキによる筆跡を摩擦部9による摩擦熱で容易に変色することができる。
【0034】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、従来のダブルノック式の出没機構に比べて部品点数を少なくすることができる。また、本実施の形態の熱変色性筆記具1は、軸筒2の側壁にクリップを設けたにもかかわらず、従来の多芯タイプのサイドスライド式の熱変色性筆記具に比べ、突出部分が少なく、外観デザイン上の自由度が増加し、スマートな外観を得ることができる。
【0035】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、ペン先突出状態及びペン先没入状態において(即ち常時)、前記摩擦部9を前記軸筒2の後端より後方に突出させたことにより、摩擦体を使用する際、摩擦体の突出状態を確認することが不要となり、迅速に摩擦作業を開始できる。
【0036】
本実施の形態の熱変色性筆記具1は、クリップ体5が、クリップ本体51と、基部54と、操作部53と、屈曲部55と、取付部56とからなる合成樹脂の一体成形体からなるため、従来のダブルノック式の出没機構に比べて部品点数を少なくすることができる。本実施の形態の熱変色性筆記具1は、前記基部54と前記取付部56との非接触状態が維持されることにより、クリップ体5の操作部53を径方向内方に押圧操作した際、取付部56での摩擦部9の取付状態に影響を与えず、摩擦部9が取付部56から脱落するおそれがない。
【符号の説明】
【0037】
1 熱変色性筆記具
2 軸筒
21 スライド孔
22 係止部
23 長孔
3 前軸
31 前端孔
32 本体
33 把持部
4 後軸
5 クリップ体
51 クリップ本体
52 玉部
53 操作部
54 基部
55 屈曲部
56 取付部
57 ガイド部
6 弾発体
7 クリップ弾発体
8 筆記体
81 ペン先
82 インキ収容管
83 尾栓
9 摩擦部
図1
図2
図3