特許第5694839号(P5694839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694839
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】保育器における可動壁部取り付け機構
(51)【国際特許分類】
   A61G 11/00 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
   A61G11/00
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-92786(P2011-92786)
(22)【出願日】2011年4月19日
(65)【公開番号】特開2012-223320(P2012-223320A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2014年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390022541
【氏名又は名称】アトムメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065950
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 勝
(72)【発明者】
【氏名】松原 一雄
(72)【発明者】
【氏名】松原 照巳
(72)【発明者】
【氏名】吉楽 知一
(72)【発明者】
【氏名】大友 敏夫
【審査官】 山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−299841(JP,A)
【文献】 特開2002−028199(JP,A)
【文献】 特開2004−316418(JP,A)
【文献】 特開2006−029564(JP,A)
【文献】 特開平10−052464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
児収容空間の外周囲を形成するために保育器基台に取り付けられた複数枚の壁部のうちの少なくとも一枚の壁部が、可動壁部として、上記保育器基台に取り付けられ、
上記可動壁部が、上記可動壁部の下端部付近を支点として、ほぼ直立した状態から上記児収容空間の外側に向かって往回動し得るように構成された、保育器における可動壁部取り付け機構において、
上記可動壁部が復動途中の位置から最終の復動位置まで復動するときに、上記可動壁部の急激な復動がダンパによって抑制されながら、上記可動壁部が自重によって最終の復動位置まで復動するように構成され、
上記可動壁部が支軸部によって上記保育器基台側に往復回動可能に取り付けられ、
上記支軸部の軸心が上記保育器基台に対してほぼ上下方向に往復動可能であり、
上記保育器基台側に設けられたカム面と、このカム面に設けられかつ弾性体から成る衝撃緩和部と、上記可動壁部側に設けられたカム面当接部とをさらに備え、
上記支軸部が下降した位置にある上記可動壁部を往回動位置から復回動させたときに、上記カム面当接部が上記衝撃緩和部において上記保育器基台側に最初に当接するように構成されたことを特徴とする可動壁部取り付け機構。
【請求項2】
上記可動壁部側に設けられた可動側の凹凸係合手段と、上記保育器基台側に設けられた固定側の凹凸係合手段とを備え、
上記可動側凹凸係合手段および上記固定側凹凸係合手段のうちのいずれか一方が係合用凸部であるとともに、上記可動側凹凸係合手段および上記固定側凹凸係合手段のうちの他方が係合用凹部であり、
上記復動途中の位置が、上記可動側凹凸係合手段が上記固定側凹凸係合手段のほぼ上方にある位置であり、
上記最終の復動位置が、上記可動側凹凸係合手段が上記復動途中の位置からほぼ下方に復動して上記固定側凹凸係合手段に凹凸係合する位置であることを特徴とする請求項1に記載の可動壁部取り付け機構。
【請求項3】
上記可動側凹凸係合手段が係合用ピンであり、
上記固定側凹凸係合手段が上記係合用凹部であることを特徴とする請求項2に記載の可動壁部取り付け機構。
【請求項4】
上記カム面当接部が係合用ピンであり、
上記保育器基台側に設けられた係合用凹部をさらに備え、
上記係合用ピンが上記最終の復動位置において上記係合用凹部に係合するように構成されたことを特徴とする請求項に記載の可動壁部取り付け機構。
【請求項5】
児収容空間の外周囲を形成するために保育器基台に取り付けられた複数枚の壁部のうちの少なくとも一枚の壁部が、可動壁部として、上記保育器基台に取り付けられ、
上記可動壁部が、上記可動壁部の下端部付近を支点として、ほぼ直立した状態から上記児収容空間の外側に向かって往回動し得るように構成された、保育器における可動壁部取り付け機構において、
上記可動壁部が復動途中の位置から最終の復動位置まで復動するときに、上記可動壁部の急激な復動がダンパによって抑制されながら、上記可動壁部が自重によって最終の復動位置まで復動するように構成され、
上記ダンパがシリンダ・ピストン式のリニアーダンパであり、
弾性体から成る衝撃緩和部が上記リニアーダンパのピストン部分の少なくとも先端部に設けられ、
上記可動壁部が上記復動途中の位置から上記最終の復動位置まで復動するときに、上記可動壁部側の当接部が上記衝撃緩和部に当接するように構成されたことを特徴とする可動壁部取り付け機構。
【請求項6】
上記最終の復動位置が、上記可動壁部がほぼ垂直に起立した最終の復回動位置であり、
上記復動途中の位置が、上記可動壁部が上記最終の復回動位置まで復回動する少し手前の位置であることを特徴とする請求項に記載の可動壁部取り付け機構。
【請求項7】
上記可動壁部が支軸部によって上記保育器基台側に往復回動可能に取り付けられ、
上記支軸部の軸心が上記保育器基台に対してほぼ一定の位置になるように構成されたことを特徴とする請求項5または6に記載の可動壁部取り付け機構。
【請求項8】
上記可動壁部が往回動するときに、上記可動壁部の急激な往回動が第2のダンパによって抑制されるように構成され、
上記可動壁部が復回動するときには、上記可動壁部の急激な復回動が上記第2のダンパによって実質的に抑制されないように構成されたことを特徴とする請求項1〜のうちのいずれか1つに記載の可動壁部取り付け機構。
【請求項9】
上記第2のダンパがロータリーダンパであることを特徴とする請求項に記載の可動壁部取り付け機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、児収容空間の外周囲を形成するために保育器基台に取り付けられた複数枚の壁部のうちの少なくとも一枚の壁部が、可動壁部として、上記保育器基台に取り付けられ、上記可動壁部が、上記可動壁部の下端付近を支点として、ほぼ直立した状態から上記児収容空間の外側に向かって往回動し得るように構成された、保育器における可動壁部取り付け機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述のように構成された保育器における可動壁部取り付け機構は、特許文献1に開示されているように、従来から知られている。そして、この特許文献1に開示されている、保育器における可動壁部取り付け機構(以下、「特許文献1の可動壁部取り付け機構」という。)においては、医師や看護師などは、保育器の児収容空間に配設された臥床架上に寝かされている新生児などの児に対し、つぎのようにして各種の処置を施すことができる。すなわち、医師や看護師などの操作者は、まず、ほぼ直立した状態(換言すれば、閉鎖状態)になっている少なくとも一枚の可動壁部を、その下端部付近を回動支点として、外側に向かって往回動させて、ほぼ垂れ下がった状態にする。このために、児収容空間が少なくとも1つの側面において開放されるので、医師や看護師などは、この開放された側面から児に近づいてから、児に対して必要な処置を容易にかつ迅速に施すことができる。また、処置を施した後には、ほぼ垂れ下がった状態になっている可動壁部を上記往回動とは逆の方向に復回動させることによって、児収容空間を閉鎖状態にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−52464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の可動壁部取り付け機構においては、操作者が可動壁部を荒っぽく閉鎖したときに、可動壁部が保育器基台側などに衝撃的に接触するために、大きな音や大きな振動が発生したり、保育器基台の一部や児収容空間を構成している可動壁部などの壁部の一部が損傷したりするおそれがあった。
【0005】
本発明は、特許文献1の可動壁部取り付け機構における上述のような欠点を、比較的簡単な構成でもって、確実に解決し得るようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、児収容空間の外周囲を形成するために保育器基台に取り付けられた複数枚の壁部のうちの少なくとも一枚の壁部が、可動壁部として、上記保育器基台に取り付けられ、上記可動壁部が、上記可動壁部の下端部付近を支点として、ほぼ直立した状態から上記児収容空間の外側に向かって往回動し得るように構成された、保育器における可動壁部取り付け機構において、上記可動壁部が復動途中の位置から最終の復動位置まで復動するときに、上記可動壁部の急激な復動がダンパ手段によって抑制されながら、上記可動壁部が自重によって最終の復動位置まで復動するように構成された可動壁部取り付け機構に係るものである。
【0007】
なお、本発明は、その第1の観点によれば、上記可動壁部側に設けられた可動側の凹凸係合手段と、上記保育器基台側に設けられた固定側の凹凸係合手段とを備え、上記復動途中の位置が、上記可動側凹凸係合手段が上記固定側凹凸係合手段のほぼ上方にある位置であり、上記最終の復動位置が、上記可動側凹凸係合手段が上記復動途中の位置からほぼ下方に復動して上記固定側凹凸係合手段に凹凸係合する位置である。そして、この第1の観点の第1の態様によれば、上記可動側凹凸係合手段が係合用ピンであり、上記固定側係合凹凸手段が係合用凹部である。また、本発明は、その第2の観点によれば、上記可動壁部が支軸部によって上記保育器基台側に往復回動可能に取り付けられ、上記支軸部の軸心が上記保育器基台に対してほぼ上下方向に往復動可能である。そして、この第2の観点の第1の態様によれば、上記保育器基台側に設けられたカム面と、このカム面に設けられかつ弾性体から成る衝撃緩和部と、上記可動壁部側に設けられたカム面当接部とをさらに備え、上記支軸部が下降した位置にある上記可動壁部を往回動位置から復回動させたときに、上記カム面当接部が上記衝撃緩和部において上記保育器基台側に最初に当接するように構成されている。さらに、上記第2の観点の第1の態様の場合、上記カム面当接部が係合用ピンであり、上記保育器基台側に設けられた係合用凹部をさらに備え、上記係合用ピンが上記最終の復動位置において上記係合用凹部に係合するように構成されているのが好ましい。
【0008】
また、本発明は、その第3の観点によれば、上記最終の復動位置が、上記可動壁部がほぼ垂直に起立した最終の復回動位置であり、上記復動途中の位置が、上記可動壁部が上記最終の復回動位置まで復回動する少し手前の位置である。そして、本発明は、その第4の観点と上記第3の観点の第1の態様とによれば、上記可動壁部が支軸部によって上記保育器基台側に往復回動可能に取り付けられ、上記支軸部の軸心が上記保育器基台に対してほぼ一定の位置になるように構成されている。
【0009】
また、本発明は、その第5の観点によれば、上記ダンパ手段がシリンダ・ピストン式のリニアーダンパである。そして、この第5の観点の第1の態様によれば、弾性体から成る衝撃緩和部が上記リニアーダンパのピストン部分の少なくとも先端部に設けられ、上記可動壁部が上記復動途中の位置から上記最終の復動位置まで復動するときに、上記可動壁部側の当接部が上記衝撃緩和部に当接するように構成されている。また、本発明は、その第6の観点によれば、上記可動壁部が往回動するときに、上記可動壁部の急激な往回動が第2のダンパ手段によって抑制されるように構成され、上記可動壁部が復回動するときには、上記可動壁部の急激な復回動が上記第2のダンパ手段によって実質的に抑制されないように構成されている。そして、この第6の観点の第1の態様によれば、上記第2のダンパ手段がロータリーダンパである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操作者が可動壁部を荒っぽく閉鎖しようとしても、可動壁部が保育器基台側や児収容空間を構成している他の壁部側に衝撃的に接触するおそれがない。このために、上記閉鎖を行うときに大きな音や大きな振動が発生しないから、児収容空間に寝ている新生児などの児に精神的な悪影響を与えることがない。また、保育器基台側の一部や児収容空間を構成している可動壁部などの壁部側の一部が損傷するおそれがない。それでいて、可動壁部が自重によって最終の復動位置まで復動するから、可動壁部を最終の復動位置まで復動させるための操作者による操作が比較的簡単である。
【0011】
また、請求項2に係る発明によれば、可動壁部の最終の復動位置においては、可動壁部を凹凸係合によって確実に位置保持させることができる。そして、請求項3に係る発明によれば、上記位置保持を簡単な構成でもって確実に行うことができる。さらに、請求項4に係る発明によれば、可動壁部の往復回動と上下動とを簡単な構成でもって確実に行うことができる。また、請求項5に係る発明によれば、可動壁部が復回動するときに、可動壁部側が保育器基台に衝撃的に接触するのを、比較的簡単な構成でもって、回避することができる。また、可動壁部を最終の復動位置に復動させる際に、可動壁部を単に復回動させるだけでよくて、可動壁部を上方に持ち上げる必要が特にない。さらに、請求項6に係る発明によれば、上述のように衝撃的な接触を回避し得ることと可動壁部を特に持ち上げる必要がないこととを、簡単な構成でもって、達成することができる。
【0012】
また、請求項7に係る発明によれば、可動壁部の取り付け機構を比較的簡単な構成にすることができるとともに、可動壁部の開閉操作を比較的簡単にすることができる。そして、請求項8に係る発明によれば、上記取り付け機構の構成をさらに簡単にすることができる。
【0013】
さらに、請求項9に係る発明によれば、可動壁部が保育器基台側や児収容空間を構成している他の壁部側に衝撃的に接触するのを、比較的簡単な構成でもって、確実に回避することができる。そして、請求項10に係る発明によれば、上述のように衝撃的に接触するのを、簡単な構成でもって、さらに確実に回避することができる。また、請求項11に係る発明によれば、可動壁部が最終の往回動位置まで往回動したときに、この可動壁部が保育器基台側などに衝撃的に接触することなどによって、保育器基台側などが損傷したりするおそれがない。それでいて、可動壁部が復回動するときには、この可動壁部の復回動が第2のダンパ手段によって実質的に抑制されることがないので、この復回動を比較的軽快に行うことができる。さらに、請求項12に係る発明によれば、上述のように、可動壁部の往回動時における保育器基台などへの可動壁部の衝撃的な接触を回避することと、可動壁部の往回動を比較的軽快に行うことができることとを、簡単な構成でもって、確実に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施例による開放型保育器の通常使用状態での斜視図である。(実施例1)
図2図1に示す保育器の三方の可動壁部を開放した状態での臥床架周辺の斜視図である。(実施例1)
図3図2に示す脚側可動壁部を90°開放した状態で示す一部分の斜視図である。(実施例1)
図4図1に示す脚側可動壁部のヒンジ部分周辺の縦断面図である。(実施例1)
図5図4に示すヒンジ部分周辺の、脚側可動壁部を上昇させた状態での縦断面図である。(実施例1)
図6図5に示すヒンジ部分周辺の、脚側可動壁部を多少往回動させた状態での縦断面図である。(実施例1)
図7図6に示すヒンジ部分周辺の、脚側可動壁部をほぼ水平になるまで往回動させた状態での縦断面図である。(実施例1)
図8図7に示すヒンジ部分周辺の、脚側可動壁部をほぼ垂直に垂れ下がるまで往回動させた状態での縦断面図である。(実施例1)
図9図8に示すヒンジ部分周辺の、脚側可動壁部を図6に示す状態まで閉鎖した状態での縦断面図である。(実施例1)
図10図9に示すヒンジ部分周辺の、脚側可動壁部をさらに閉鎖した状態での縦断面図である。(実施例1)
図11図10に示すヒンジ部分周辺の、脚側可動壁部を図4に示す状態までさらに閉鎖した状態での縦断面図である。(実施例1)
図12】本発明の第2の実施例による閉鎖型保育器の通常使用状態での正面図である。(実施例2)
図13図12に示す保育器本体の斜視図である。(実施例2)
図14図13に示す保育器本体の、図12のA−A線での一部分の断面図である。(実施例2)
図15図14に示す保育器本体の、処置窓開閉用前扉をほぼ垂直に垂れ下がるまで開放した状態での縦断面図である。(実施例2)
図16】処置窓開閉用前扉を途中まで閉めた状態での図15と同様の縦断面図である。(実施例2)
図17図16の一部分の拡大縦断面図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明を開放型保育器(いわゆる、インファントウオーマ)に適用した第1の実施例と、本発明を閉鎖型保育器に適用した第2の実施例とを、「1、第1の実施例」および「2、第2の実施例」に項分けして、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
1、第1の実施例
まず、本発明の第1の実施例を、「(1)保育器全体の概略的な構成」、「(2)可動壁部の取り付け機構の構成」および「(3)可動壁部の取り付け機構の動作」に項分けして、図1図11を参照しつつ説明する。
【0017】
(1)保育器全体の概略的な構成
【0018】
図1に示すように、開放型保育器11は、車輪12と主柱13とがそれぞれ取り付けられている台車14を備えている。具体的には、車輪12は、台車14の四隅の下方に取り付けられ、主柱13は、台車14上に取り付けられている。また、主柱13には、トレー15を支持することができるトレー支持部16が配設されている。
【0019】
図1および図2に示すように、主柱13上には、保育器基台21が配設されている。そして、この基台21上には、扁平な容器形状の臥床架(換言すれば、臥床台)22が配設されている。また、この臥床架22上には、新生児などの児をその上に寝かせることができるマットレス(図示せず)を配置することができる。そして、保育器基台21には、この基台21に立設されている支柱33に隣接していて児の頭側の壁部を構成している固定壁部23と、児の脚側の壁部を構成している脚側の可動壁部24と、児の左側の壁部を構成している左側の可動壁部25と、児の右側の壁部を構成している右側の可動壁部26とが、平面的に見て全体としてほぼ長方形状になるように、それぞれ配設されている。また、上記臥床架22と、それぞれほぼ長方形状であってよい固定壁部23および可動壁部24〜26とによって、上面が開口したほぼ直方体形状の児収容空間27が構成されている。したがって、左側可動壁部25と右側可動壁部26とは、互いにほぼ同一の寸法であってよい。そして、可動壁部25、26に較べて長さが多少それぞれ小さい固定壁部23と脚側可動壁部24とは、固定壁部23の上辺部に切り欠き28がもうけられていることを除いて、互いにほぼ同一の寸法であってよい。なお、固定壁部23は、そのほぼ全体をほぼ透明なプラスチック板から構成されていてよい。また、可動壁部24〜26のそれぞれは、図1に示すほぼ上方に直立した状態における下辺側の部分付近を回動中心として、図1に示すほぼ上方に直立した状態と図2に示すほぼ下方に垂れ下がった状態との間を往復回動可能であるが、この構成については、次項の「(2)可動壁部の取り付け機構の構成」において詳細に説明する。
【0020】
図1に示すように、固定壁部23には、ケーブル保持用の切れ目を有する適当な個数のグロメット部材32を取り付けることができる。そして、切れ目31には、酸素供給用チューブなどの長手状部材(図示せず)がグロメット部材32を貫通した状態で保持されることができる。また、支柱33の上端部には、赤外線加熱器34が配設されている。さらに、支柱33には、赤外線加熱器34と児収容空間27との間に位置するように、体温用、SpO用などの各種の計測器35が配設されている。具体的には、体温用計測器35は、児の体温を計測する体温プローブからの信号を入力して上記体温を表示したり、赤外線加熱器34の加熱温度などを制御したりすることができる。
【0021】
(2)可動壁部の取り付け機構の構成
【0022】
図2に示すように、脚側可動壁部24は、互いに左右対称的に構成されていることを除いて実質的に互いに同一の構造である左右一対の可動壁部取り付け機構36a、36bによって、基台21に取り付けられている。また、左側可動壁部25および右側可動壁部26のそれぞれは、互いに前後対称的に構成されていることを除いて実質的に互いに同一の構造である前後一対の可動壁部取り付け機構37a、37bによって、基台21に取り付けられている。そして、可動壁部取り付け機構37a、37bのそれぞれは、互いに前後対称的に構成されていることを除いて、左側および右側可動壁部25、26のそれぞれにおいて実質的に互いに同一の構成であってよい。したがって、以下において、脚側可動壁部24のための一方の取り付け機構36bについて図3図11を参照しつつ詳細に説明し、残りの取り付け機構36a、37a、37bについての詳細な説明を適宜省略する。
【0023】
図3に示すように、可動壁部24は、ほぼ透明なプラスチック板から構成されていてよい上辺側の部分(換言すれば、透明板部)38と、この上辺側部分38がその下端部分を取り付けられている下辺側の部分(換言すれば、可動壁基部)39とを備えている。そして、可動壁基部39には、後記(a)項に記載の連結部材41を収容するための欠如部(換言すれば、下端が開放されている凹部)40が設けられている。したがって、透明板部38の下端部分にも、上記欠如部40に対応した欠如部48が設けられている。
【0024】
図2図11に示すように、可動壁部取り付け機構36bは、
(a)保育器基台21に取り付け固定されている連結部材41、
(b)連結部材41にその可動壁基部39が回動可能に支持されている可動壁部24の回動中心を構成している支軸部としての連結用ピン42、
(c)連結部材41に設けられていてこの連結部材41をほぼ水平方向に貫通している案内用孔43、
(d)案内用孔43に配設されていて連結用ピン42を軸支している軸受け部材44、
(e)可動壁基部39(換言すれば、可動壁部24)と軸受け部材44とを連結しているロータリーダンパ45、
(f)連結部材41にほぼ水平方向に延在するように配設されている固定側の凹凸係合手段としての係合用の凹部46に係合し得るように、可動壁基部39(換言すれば、可動壁部24)に配設されている可動側の凹凸係合手段としての係合用のピン47、
(g)連結部材41にほぼ垂直方向に延在するように配設されている収容用孔53に収容されていて係合用ピン47が係合用凹部46に係合しようとするときに当接し得るシリンダ・ピストン式のリニアーダンパ51、
(h)ほぼ垂れ下がった状態(換言すれば、開放状態)の可動壁部24(換言すれば、可動壁基部39)がほぼ直立した状態(換言すれば、閉鎖状態)に移行するときに係合用ピン47と当接し得るように、連結部材41に配設されている衝撃緩和部としての衝撃緩和部材52、
をそれぞれ備えている。
【0025】
図3に示すように、連結部材41には、取り付け部54が基台21に向かって突設されている。そして、この取り付け部54には、取り付け孔55が設けられている。また、連結部材41は、取り付け孔55に挿通されたボルトおよびナットによってまたはねじ(いずれも図示せず)によって、保育器基台21に取り付け固定されている。
【0026】
図3および図4に示すように、連結用ピン42は、可動壁基部39の欠如部40の左右両側の壁部62に取り付けられている。そして、案内用孔43は、その縦断面がほぼ縦長のほぼ長方形状に構成されている。また、軸受け部材44は、案内用孔43をほぼ上下方向に摺動可能なように、その縦断面がほぼ縦長またはほぼ横長のほぼ長方形状、ほぼ正方形状などのほぼ長方形状に構成されている。さらに、案内用孔43の縦断面および軸受け部材44の縦断面のそれぞれは、図示の実施例においては、それらの角部にそれぞれアールをつけられている。
【0027】
図4に示すように、ロータリーダンパ45は、可動壁基部39に取り付け固定されているダンパ本体61と、このダンパ本体61に相対的に往復回動可能に取り付けられている回動軸(図示せず)とを備えている。また、上記回動軸は、係合用ピン42とほぼ同軸状に配設されるとともに、回転方向においては軸受け部材44に一体的に連結されている。そして、ダンパ本体61は、その回動中心(換言すれば、上記回動軸)の周りを図4における反時計方向に回動するときには、ロータリーダンパ45から大きな回動負荷(換言すれば、回動を遅延させようとする力)を加えられる。また、ダンパ本体61は、その回動中心(換言すれば、上記回動軸)の周りを図4における時計方向に回動するときには、ロータリーダンパ45から加えられる回動負荷が著しく小さくなって実質的に零になる。
【0028】
図3および図4に示すように、係合用ピン47は、回動壁基部39の欠如部40の左右両側の壁部62に取り付けられている。そして、リニアーダンパ51のシリンダ部分63は、収容用孔53に取り付け固定されて収容されている。また、リニアーダンパ51のピストン部分64は、シリンダ部分63からほぼ上方に向かって突出している。そして、リニアーダンパ51のピストン部分64は、ほぼ下方に向かって往動するときには、リニアーダンパ51から大きな移動負荷(換言すれば、移動を遅延させようとする力)を加えられる。
【0029】
図4および図5に示すように、ピストン部分64の先端部には、ゴムなどの弾性体から成る衝撃緩和部としての衝撃緩和部材65が取り付けられている。そして、連結部材41の外側面の肩部68には、ゴムなどの弾性体から成る衝撃緩和部としての衝撃緩和部材52が配設されている。なお、この肩部68は、係合用ピン47の案内面としても機能することができる。また、可動壁基部39の内側面には、可動壁部24の閉鎖状態においてほぼ水平方向に延在している補強用リブ66が一体成形されている。さらに、連結部材41の外側面には、補強用リブ66の逃げとしての凹部67が設けられている。
【0030】
(3)可動壁部の取り付け機構の動作
【0031】
図1および図4に示す脚側可動壁部24の閉鎖状態においては、連結部材41は、可動壁基部39によって外側から覆われている。また、上記閉鎖状態においては、軸受け部材44は、案内用孔43の下端付近まで下降しているので、連結用ピン42も、案内用孔43の下方に位置している。さらに、その回動軸が連結用ピン42とほぼ同軸状に配設されているロータリーダンパ45も、下降状態になっている。そして、その閉鎖状態における脚側可動壁部24のストッパとして機能する係合用ピン47は、係合用凹部46にほぼ完全に係合している。したがって、係合用ピン47は、リニアーダンパ51の衝撃緩和部材65に当接してピストン部分64を押し下げている。
【0032】
図1および図4に示す閉鎖状態になっている脚側可動壁部24を図8に示す開放状態にするためには、まず、脚側可動壁部24を手で掴んで図5に示すように上方に持ち上げる。なお、この持ち上げによって、係合用ピン47は、図5に示すように、連結部材41の係合用凹部46からほぼ上方に移動する。このために、リニアーダンパ51のピストン部分64は、ほぼ上方に向かって復動する。そして、軸受け部材44は、案内用孔43を下方から上方に向かって往動し、この案内用孔43の上面に当接することによって、この往動を停止させる。したがって、案内用穴43の上記上面は、軸受け部材44(ひいては、脚側可動壁部24)のストッパとして機能している。さらに、ロータリーダンパ45も、軸受け部材44と同様に、脚側可動壁部24の可動壁基部39に伴われてほぼ上方に向かって往動する。
【0033】
つぎに、図5に示す持ち上げ状態になっている脚側可動壁部24を開放状態にするために手で掴んだままで連結用ピン42を支点として外側に向かって往回動させると、図6図7(換言すれば、図3)および図8に順次示すように、脚側可動壁部24は次第に往回動して開放状態に持ち来される。この場合、図5に示すように持ち上げ状態になっている脚側可動壁部24を図6に示す位置まで往回動させると、可動壁基部39の被ストッパ部71が、連結部材41のストッパ部72に当接する。このために、可動壁部24は、図6に示す状態までしか往回動することができない。なお、可動壁部24を図6に示す状態からさらに往回動させるためには、可動壁部24を自重や手での押し下げなどによってほぼ下方に向かって移動させればよい。そして、この下方への移動によって、軸受け部材44が案内用孔43の下方に移動するので、被ストッパ部71もストッパ部72(換言すれば、連結部材41)の下方に移動し、このために、ストッパ部72に対する被ストッパ部71の上記当接は解除される。したがって、脚側可動壁部24を自重によってまたは手で操作することによってさらに往回動させると、脚側可動壁部24は、図3および図7に示すほぼ水平な状態を経て、図2および図8に示す開放状態に持ち来される。なお、図4に示す閉鎖状態になっている脚側可動壁部24を図8に示す開放状態に持ち来すときには、大きな回動負荷がロータリーダンパ45によって可動壁基部39(ひいては、脚側可動壁部24)に加えられる。このために、図7などに示すように開放途中にある脚側可動壁部24が、自重などによって開放方向に急激に往回動することによって、図8に示す開放状態に急激に持ち来されることはない。したがって、脚側可動壁部24が急激に往回動することによって保育器基台21などに衝撃を与えるのを効果的に防止することができる。
【0034】
図2および図8に示す開放状態になっている脚側可動壁部24を図1および図4に示す閉鎖状態にするためには、脚側可動壁部24を手でほぼ斜め上方に向かって持ち上げればよい。そして、この持ち上げによって、脚側可動壁部24は、図8に示す状態から図9に示す状態まで連結用ピン42を支点として復回動する。この場合、脚側可動壁部24には、ロータリーダンパ45による回動負荷が実質的には加えられないので、脚側可動壁部24の上記持ち上げを比較的軽快に行うことができる。
【0035】
脚側可動壁部24の上述の復回動の途中である図9に示す状態においては、脚側可動壁部24側の係合用ピン47が連結部材41側の衝撃緩和部材52に当接している。このために、脚側可動壁部24を手で多少持ち上げ気味にしつつさらに復回動させると、係合用ピン47が図10に示すように衝撃緩和部材52および肩部68を順次乗り越える。したがって、脚側可動壁部24はほぼ上方に多少浮き上がるので、連結用ピン42、軸受け部材44およびロータリーダンパ45は、案内用孔43に対して上昇する。この場合、衝撃緩和部材52と肩部68とによって、保育器基台21側のカム面が形成されている。そして、脚側可動壁部24の係合用ピン47は、連結用ピン42が下降位置にある脚側可動壁部24の復回動時に上記カム面(換言すれば、衝撃緩和部材)に最初に当接するカム面当接部を構成している。
【0036】
図10に示す脚側可動壁部24を連結用ピン42を支点としてさらに復回動させると、この脚側可動壁部24は、図11に示すように、ほぼ直立した状態(換言すれば、閉鎖状態)になる。そして、この図11に示す状態においては、脚側可動壁部24の自重などによって係合用ピン47が衝撃緩和部材65をほぼ下方に押圧する。この場合、衝撃緩和部材65が弾性体から成っているので、係合用ピン47による衝撃緩和部材65への押圧は、比較的ソフトに行われる。そして、係合用凹部46への係合用ピン47の係合は、脚側可動壁部24の自重などとリニアーダンパ51による移動負荷とによってゆっくりと行われ、遂には、図4に示す係合状態が得られる。したがって、脚側可動壁部24側が最終の復動位置まで急激に復動するおそれがないから、急激に復動する場合のように大きな音が発生したり保育器基台21側の一部や脚側可動壁部24の一部が損傷したりするおそれがない。
【0037】
2、第2の実施例
つぎに、本発明の第2の実施例を、「(1)保育器全体の概略的な構成」、「(2)可動壁部の取り付け機構の構成」および「(3)可動壁部の取り付け機構の動作」に項分けして、図12図17を参照しつつ説明する。なお、既述の第1の実施例が本発明を開放型保育器に適用したものであるのに対し、この第2の実施例は本発明を閉鎖型保育器に適用したものである。また、この第2の実施例による保育器の構成および動作が既述の第1の実施例による保育器の構成および動作と相違する点は、基本的には、以下において説明するとおりである。そして、上記第1の実施例について記述した事項は、特に矛盾を生じない限り、この第2の実施例についても同様に当てはまる。さらに、この第2の実施例においても、既述の第1の実施例と対応する部分については、この第1の実施例において用いた符号を用いている。
【0038】
(1)保育器全体の概略的な構成
【0039】
図12に示すように、閉鎖型保育器81は、第1の実施例による開放型保育器11の場合と同様に、車輪12、主柱13、台車14、保育器基台21、支柱23および赤外線加熱器34を備えている。そして、保育器基台21の下方には、引き出し82が配設されている。なお、符号83は、赤外線加熱器34が病室などの壁面に衝突するのを防止するための衝突防止用バンパーである。そして、符号84は、保育器81の高さなどを調節するための操作用ペダルである。また、符号86は、図14に示す臥床架22の傾斜を調節するための操作用ダイヤルである。
【0040】
図12および図13に示すように、閉鎖型保育器81は、保育器基台21の上部を覆っているほぼ透明なフード85を備えている。そして、フード85の前面(換言すれば、児の右側の面)には、児に対して処置を施したり児を出し入れしたりするためなどに用いられる処置窓を開閉する前側の壁部としての前扉91が設けられている。また、この前扉91には、ほぼ円形などの左右一対の手入れ窓92、93が設けられている。さらに、フード85の後面(換言すれば、児の左側の面)にも、前扉91と同様であってよい後扉(換言すれば、後側の壁部)90が設けられている。そして、フード85のうちの児の脚側の壁部94は、固定壁部として構成されている。また、この固定壁部94には、手入れ窓95および複数個のグロメット部材96が設けられている。さらに、フード85のうちの児の頭側の壁部97も、固定壁部として構成されている。そして、頭側壁部97は、手入れ窓95を備えていないことを除いて、脚側壁部94と実質的に同一の構成であってよい。
【0041】
図12および図13に示すように、前扉91、脚側の固定壁部94、後扉90および頭側の固定壁部97によって、上方が開口している児収容空間27が形成されている。そして、フード85は、上記児収容空間27の上面開口を覆うための天蓋部98をさらに備えているので、フード85は、閉鎖された空間である児収容空間27を備えることができる。また、前扉91および後扉90のそれぞれは、図12図14に示すほぼ直立した状態(換言すれば、閉鎖状態)における下端部付近を支点として外側に向かって往回動することによって、下方に垂れ下がった状態(換言すれば、開放状態)になることができるが、この構成については、次項の「(2)可動壁部の取り付け機構の構成」において詳細に説明する。さらに、フード85には、前扉91および後扉90のそれぞれを閉鎖状態に保持するための左右一対のロック機構101が設けられている。なお、符号102は、ロック機構101の操作レバーである。
【0042】
(2)可動壁部の取り付け機構の構成
【0043】
図12および図13に示すように、前扉91は、互いに左右対称的に構成されていることを除いて実質的に互いに同一の構造であってよい左右一対の可動壁部取り付け機構103によって、保育器基台21に取り付けられている。そして、図13において破線で示す後扉90は、前扉91と実質的に互いに同一の構造であってよい左右一対の可動壁部取り付け機構(図示せず)によって、基台21に取り付けられている。したがって、以下において、前扉91のための可動壁部取り付け機構103について詳細に説明し、後扉90のための可動壁部取り付け機構についての説明は、適宜省略する。さらに、図14に示すように、前扉91は、ほぼ透明なプラスチック板から構成されていてよい外側壁部104と、この外側壁部104よりも面積が小さいほぼ透明なプラスチック板から構成されていてこの外側壁部104の内側面に取り付けられている内側壁部105と、外側壁部104の外側下方の部分に取り付けられていてほぼL字状の取り付け部108および連結用ピン112とともに蝶番を構成しているほぼL字状の被取り付け部(換言すれば、可動扉基部)106とを備えている。
【0044】
図14図17に示すように、可動壁部取り付け機構103は、
(a)ほぼL字状の被取り付け部106を収容し得るほぼL字状の凹部107を有するように基台21に配設されているほぼL字状の取り付け部108、
(b)ほぼL字状の被取り付け部106に配設されているロータリーダンパ111、
(c)ほぼL字状の取り付け部108に回動可能に支持されているほぼL字状の被取り付け部106の回動中心を構成している支軸部としての連結用ピン112、
(d)前扉91が閉鎖状態になる少し前の時点でほぼL字状の被取り付け部106に当接して前扉91の閉鎖方向への回動速度を抑制するために、ほぼL字状の凹部107に収容されているシリンダ・ピストン式のリニアーダンパ113、
をそれぞれ備えている。
【0045】
図13図15に示すように、保育器基台21に配設されているほぼL字状の取り付け部108のそれぞれは、具体的には、ほぼL字状の凹部107を左右両側から挟むように、左右一対ずつの取り付け片部109を備えている。そして、左右一対の取り付け片部109の間(換言すれば、ほぼL字状の凹部107)には、図13および図14に示すように、前扉91側に配設されているほぼL字状の被取り付け部106が着脱可能にはめ込まれている。また、図17に示すように、取り付け部108と被取り付け部106とは、連結用ピン112によって、互いに連結されている。したがって、前扉91は、連結用ピン112を支点として図14に示す閉鎖状態と図15に示す開放状態との間を往復回動できるように、保育器基台21に取り付けられている。なお、上記3種類の「ほぼL字状」とは、具体的には、図14図17においては、紙面の裏側から見た状態を意味している。
【0046】
図17に示すように、ロータリーダンパ111は、被取り付け部106に取り付け固定されているダンパ本体114と、このダンパ本体114に相対的に往復回動可能に取り付けられている回動軸(図示せず)とを備えている。そして、上記回動軸は、連結用ピン112とほぼ同軸状に配設されるとともに、ほぼL字状の取り付け部108側に固定されている。したがって、ダンパ本体114は、前扉91と一体となって回動するように構成されている。そして、ダンパ本体114は、前扉91に伴われてその回動中心(換言すれば、上記回動軸)を支点として図17における反時計方向に往回動するときには、ロータリーダンパ111から大きな回動負荷(換言すれば、回動を遅延させようとする力)を加えられる。また、ダンパ本体114は、前扉91に伴われてその回動中心(換言すれば、上記回動軸)を支点として図17における時計方向に復回動するときには、ロータリーダンパ111から加えられる回動負荷が著しく小さくなって実質的に零になる。
【0047】
図17に示すように、保育器基台21の内部には、リニアーダンパ113のダンパ本体117が取り付け固定されている。そして、このリニアーダンパ113のピストン部分115は、ほぼ上方に向かって突出するように、凹部107に配設されている。また、ピストン部分115の先端部には、ゴムなどの弾性体から成る衝撃緩和部材116が取り付けられている。なお、図17に示す前扉91の位置は、被取り付け部106の当接部118が衝撃緩和部材116に当接し始める位置であってよく、また、前扉91を支持している手をこの前扉91から離したときに前扉91が自重によって閉鎖方向に回動し始める位置であってよい。
【0048】
(3)可動壁部の取り付け機構の動作
【0049】
図12図14に示す前扉91の閉鎖状態においては、ほぼL字状の被取り付け部106は、ほぼL字状の凹部107に収納されている。そして、前扉91の回動支点となる連結用ピン112は、前扉91の閉鎖状態では、前扉91の外側壁部104の外側下方(換言すれば、外側壁部104が開放される側の下方)に配置している。したがって、前扉91の閉鎖状態では、前扉91の自重が前扉91を閉じる方向に作用する。しかし、フード85内に収容されている児が前扉91を内側から蹴るなどした場合には、前扉91が不測に開放されるおそれがある。このために、前扉91は、この前扉91を閉鎖状態に保持するためのロック機構101によって、ロック状態に保持されることができる。
【0050】
図12図14に示す閉鎖状態になっている前扉91を開放状態にするためには、まず、ロック機構101の操作レバー102を手で掴んで往回動させることによって、操作レバー102による前扉91のロック状態を解除する。つぎに、連結用ピン112を支点として前扉91を手で外側に向かって往回動させることによって、前扉91が図15に示すようにほぼ垂直に垂れ下がる状態になるまでこの前扉91を往回動させる。なお、前扉91は、ロータリーダンパ111によって、開放方向への往回動を遅延(換言すれば、抑制)されるように構成されている。このために、前扉91の開放動作の途中で前扉91から手を離しても、前扉91は、ほぼ垂直に垂れ下がる位置までゆっくりと往回動する。
【0051】
図15に示す前扉91を閉鎖状態になるように復回動させるには、前扉91を手でもって閉鎖方向へ復回動させればよい。なお、前扉91の閉鎖方向への復回動時には、ロータリーダンパ111からは前扉91の復回動動作に対する回動負荷が与えられないので、前扉91は、閉鎖方向に向かって素早く復回動することができる。しかし、前扉91がこのように素早く復回動して閉鎖状態になってしまうと、前扉91が保育器基台21やフード85に衝撃的に接触するために、大きな音が発生したり、保育器基台21の一部やフード85の一部や前扉91の一部が損傷したりするおそれがある。このために、前扉91のほぼL字状の被取り付け部106の当接部118は、図16および図17に示すように、前扉91が完全に閉じる少し前の位置においてリニアーダンパ113のピストン部分115に接触(換言すれば、当接)するので、前扉91の復回動が遅延される。したがって、図12図17に示す保育器81の場合にも、上述のような欠点が生じるおそれがない。なお、ピストン部分115には、衝撃緩和部材116が取り付けられているので、前扉91のほぼL字状の被取り付け部106がピストン部分115に接触する時の衝撃がさらに緩和される。
【0052】
図16および図17に示すように、前扉91とリニアーダンパ113との相互の接触位置は、前扉91の重心位置と、前扉91の回動支点となる連結用ピン112の位置とに関連付けられていてもよい。すなわち、前扉91がリニアーダンパ113に接触し始める図16および図17に示す状態において、前扉91の重心位置を回動支点(換言すれば、左右一対の連結用ピン112の軸心を結ぶ線分)の真上よりも前扉91の閉鎖方向になるように設定することができる。この場合、前扉91とリニアーダンパ113とが相互に接触しているときに、前扉91から手を離しても、前扉91は自重によって閉鎖位置まで復回動することができる。このように構成すれば、前扉91の操作者は、前扉91の復回動操作時に前扉91を重いと感じる。このために、この操作者は、前扉91がもうすぐ閉鎖状態になることを直感的に理解することができ、また、前扉91が閉鎖状態になる直前に前扉91から手を離しても、前扉91が開放方向に向かって往回動するおそれがない。
【0053】
以上において、本発明の第1および第2の実施例について詳細に説明したが、本発明は、これら第1および第2の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に基づいて各種の変更および修正を施されることが可能である。
【0054】
例えば、上述の第1の実施例においては、本発明を開放型保育器に適用した。また、上述の第2の実施例においては、本発明を閉鎖型保育器に適用した。しかし、本発明は、上述の第2の実施例におけるフード85のようなフードが上昇および下降することができるように構成された開放型保育器兼用の閉鎖型保育器にも適用することができる。
【0055】
また、上述の第1の実施例においては、総ての可動壁部24〜26のためにリニアーダンパ51およびロータリーダンパ45がそれぞれ配設されている。また、上述の第2の実施例においては、総ての可動壁部90、91のためにリニアーダンパ113およびロータリーダンパ111がそれぞれ配設されている。しかし、本発明においては、リニアーダンパおよび/またはロータリーダンパが複数枚の可動壁部のうちの少なくとも1枚の可動壁部のために配設されていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
11 開放型保育器
21 保育器基台
23 固定壁部
24 脚側可動壁部
25 左側可動壁部
26 右側可動壁部
27 児収容空間
36a 可動壁部取り付け機構
36b 可動壁部取り付け機構
37a 可動壁部取り付け機構
37b 可動壁部取り付け機構
42 連結用ピン(支軸部)
45 ロータリーダンパ(第2のダンパ手段)
46 係合用凹部(固定側凹凸係合手段)
47 係合用ピン(可動側凹凸係合手段、カム面当接部、当接部)
51 シリンダ・ピストン式のリニアーダンパ(ダンパ手段)
52 衝撃緩和部材(衝撃緩和部、カム面)
64 ピストン部分
65 衝撃緩和部材(衝撃緩和部)
68 肩部(カム面)
81 閉鎖型保育器
90 処置窓開閉用後扉(後側可動壁部)
91 処置窓開閉用前扉(前側可動壁部)
94 脚側壁部(固定壁部)
97 頭側壁部(固定壁部)
103 可動壁部取り付け機構
111 ロータリーダンパ(第2のダンパ手段)
112 連結用ピン(支軸部)
113 シリンダ・ピストン式のリニアーダンパ(ダンパ手段)
115 ピストン部分
116 衝撃緩和部材(衝撃緩和部)
118 当接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17