特許第5694923号(P5694923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 協和発酵キリン株式会社の特許一覧

特許5694923血液腫瘍治療を目的とした抗IL−3Rα抗体
<>
  • 特許5694923-血液腫瘍治療を目的とした抗IL−3Rα抗体 図000006
  • 特許5694923-血液腫瘍治療を目的とした抗IL−3Rα抗体 図000007
  • 特許5694923-血液腫瘍治療を目的とした抗IL−3Rα抗体 図000008
  • 特許5694923-血液腫瘍治療を目的とした抗IL−3Rα抗体 図000009
  • 特許5694923-血液腫瘍治療を目的とした抗IL−3Rα抗体 図000010
  • 特許5694923-血液腫瘍治療を目的とした抗IL−3Rα抗体 図000011
  • 特許5694923-血液腫瘍治療を目的とした抗IL−3Rα抗体 図000012
  • 特許5694923-血液腫瘍治療を目的とした抗IL−3Rα抗体 図000013
  • 特許5694923-血液腫瘍治療を目的とした抗IL−3Rα抗体 図000014
  • 特許5694923-血液腫瘍治療を目的とした抗IL−3Rα抗体 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694923
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】血液腫瘍治療を目的とした抗IL−3Rα抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20150312BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20150312BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20150312BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20150312BHJP
   G01N 33/574 20060101ALN20150312BHJP
   G01N 33/53 20060101ALN20150312BHJP
   G01N 33/577 20060101ALN20150312BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20150312BHJP
   C12N 15/02 20060101ALN20150312BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20150312BHJP
   C12R 1/91 20060101ALN20150312BHJP
【FI】
   C07K16/28ZNA
   C07K16/46
   A61K39/395 T
   A61P35/02
   !G01N33/574 D
   !G01N33/53 K
   !G01N33/577 B
   !C12N15/00 A
   !C12N15/00 C
   !C12P21/08
   C12P21/08
   C12R1:91
【請求項の数】9
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2011-511422(P2011-511422)
(86)(22)【出願日】2010年4月27日
(86)【国際出願番号】JP2010057510
(87)【国際公開番号】WO2010126066
(87)【国際公開日】20101104
【審査請求日】2013年4月3日
(31)【優先権主張番号】61/172,923
(32)【優先日】2009年4月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000001029
【氏名又は名称】協和発酵キリン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100129160
【弁理士】
【氏名又は名称】古館 久丹子
(72)【発明者】
【氏名】俵 知紀
(72)【発明者】
【氏名】高柳 晋一郎
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 好昌
【審査官】 小暮 道明
(56)【参考文献】
【文献】 BARRY., S.C., et al.,Roles of the N and C terminal domains of the interleukin-3 receptor alpha chain in receptor function,Blood,1997年 2月 1日,vol.89, no.3,p.842-852
【文献】 CHEN, J., et al.,A new isoform of interleukin-3 receptor alpha with novel differentiation activity and high affinity,J. Biol. Chem.,2009年 2月27日,vol.284, no.9,p.5763-5773
【文献】 JORDAN C.T., et al.,The interleukin-3 receptor alpha chain is a unique marker for human acute myelogenous leukemia stem,Leukemia,2000年10月,vol.14, no.10,p.1777-1784
【文献】 MUNOZ, L., et al.,Interleukin-3 receptor alpha chain (CD123) is widely expressed in hematologic malignancies.,Haematologica,2001年12月,vol.86, no.12,p.1261-1269
【文献】 SUN, Q., et al.,Monoclonal antibody 7G3 recognizes the N-terminal domain of the human interleukin-3 (IL-3) receptor,Blood,1996年 1月,vol.87, no.1,p.83-92
【文献】 DU, X., et al.,New immunotoxins targeting CD123, a stem cell antigen on acute myeloid leukemia cells.,J. Immunother.,2007年 9月,vol.30, no.6,p.607-p.613
【文献】 設楽研也,次世代抗体医薬としてのポテリジェント抗体,YAKUGAKU ZASSHI,2009年 1月,vol.129, no.1,p.3-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/
C07K
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL−3シグナルを阻害せず、かつヒトIL−3Rα鎖のBドメインに結合し、Cドメインには結合しない、ヒトIL−3Rα鎖に対する抗体。
【請求項2】
抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有する、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)が、IL−2で培養したPBMCを用いたColon−26/hCD123ADCC測定法において、抗体濃度が0.01μg/mL以下で特異的溶解率10%となる、請求項1または2記載の抗体。
【請求項4】
以下の(a)〜(e)からなる群から選択された重鎖のCDRと軽鎖のCDRのアミノ酸配列を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体。
(a) 重鎖のCDR1〜3が配列番号113〜115で示されるアミノ酸配列および軽鎖のCDR1〜3が配列番号131〜133で示されるアミノ酸配列
(b) 重鎖のCDR1〜3が配列番号116〜118で示されるアミノ酸配列かつ軽鎖のCDR1〜3が配列番号134〜136で示されるアミノ酸配列
(c) 重鎖のCDR1〜3が配列番号119〜121で示されるアミノ酸配列かつ軽鎖のCDR1〜3が配列番号137〜139で示されるアミノ酸配列
(d) 重鎖のCDR1〜3が配列番号122〜124で示されるアミノ酸配列かつ軽鎖のCDR1〜3が配列番号140〜142で示されるアミノ酸配列
(e) 重鎖のCDR1〜3が配列番号125〜127で示されるアミノ酸配列かつ軽鎖のCDR1〜3が配列番号143〜145で示されるアミノ酸配列
【請求項5】
以下の(a)〜(f)からなる群から選択された重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体。
(a) 配列番号53で示されるアミノ酸配列の20番目のグルタミン(Q)から139番目のセリン(S)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号55で示されるアミノ酸配列の23番目のバリン(V)から129番目のリジン(K)までのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
(b)配列番号57で示されるアミノ酸配列の20番目のグルタミン(Q)から139番目のセリン(S)までのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号59で示されるアミノ酸配列の23番目のバリン(V)から129番目のリジン(K)までのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
(c) 配列番号61で示されるアミノ酸配列の20番目のグルタミン(Q)から139番目のセリン(S)までのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号63で示されるアミノ酸配列の23番目のアスパラギン酸(D)から129番目のリジン(K)までのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
(d) 配列番号65で示されるアミノ酸配列の20番目のグルタミン(Q)から139番目のセリン(S)までのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号67で示されるアミノ酸配列の23番目のアスパラギン酸(D)から129番目のリジン(K)までのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
(e) 配列番号69で示されるアミノ酸配列の20番目のグルタミン(Q)から138番目のセリン(S)までのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号71で示されるアミノ酸配列の23番目のアスパラギン酸(D)から129番目のリジン(K)までのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
(f) (a)から(e)で示される重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域に1から3個のアミノ酸残基が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び/または軽鎖可変領域。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体を有効成分として含むことを特徴とする、被検体において、骨髄または末梢血にIL−3Rαが発現している細胞が認められる血液腫瘍を予防又は治療するための組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体を有効成分とする、骨髄または末梢血にIL−3Rαが発現している細胞が認められる血液腫瘍の治療薬。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体を含むことを特徴とする、被験体からの生物学的検体において、骨髄または末梢血にIL−3Rα発現している細胞が認められる血液腫瘍を検出するための組成物。
【請求項9】
前記血液腫瘍が、急性骨髄性白血病(AML)である、請求項6または8に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトIL-3Rα蛋白(別名:ヒトCD123)に対する抗体に関する。
本発明はまた、ヒトIL-3Rα抗体を有効成分とする、骨髄性悪性腫瘍、特に急性骨髄性白血病(AML)に対する治療薬および診断薬の発明に関する。
【背景技術】
【0002】
悪性腫瘍について
悪性腫瘍(癌)は、わが国における死亡原因の第一位を占め、さらに患者数は年々増加してきており、有効性及び安全性の高い薬剤や治療法の開発が強く望まれている。悪性腫瘍を形成する原因として、放射線、紫外線や各種発癌性物質によるDNAの変異がある。悪性腫瘍に関する研究は、これら遺伝的な変化を分子生物学的に同定することに注力されてきた。その結果、多数の変異の蓄積などにより腫瘍化が引き起こされると考えられている。いくつかの決定的な変異については細胞株のモデルなどにより腫瘍化に直結することが示されてきている。本発明の対象疾患の一つである白血病においては、染色体異常が多く認められ、分類されている。その多くが染色体転座であり、おもな染色体転座についてはすでに転座関連遺伝子が同定されている。転座関連遺伝子の機能解析により、その遺伝子が白血病の発症に関与する例が知られている。
癌幹細胞について
一方、細胞生物学的な見地から、正常組織同様に幹細胞が悪性腫瘍の起源であるとする、いわゆる癌幹細胞仮説が古くから提唱されてきている。幹細胞は、自己複製能と多分化能を有する細胞であると定義され、一般に全能性幹細胞と組織幹細胞に大別される。組織幹細胞は、血液系、肝臓、神経系など特定の組織・臓器の起源であり、極めて低い頻度で存在する。中でも造血幹細胞はもっとも研究が進んでいる。致死量の放射線照射により造血系を破壊したマウスに対し、1個の造血幹細胞を移植することで長期にわたって造血系を再建できることが報告されている(非特許文献1)。癌幹細胞は、正常幹細胞と異なり、長い間その実体を捉えられず、研究が遅れていた。しかし、1997年にDickらにより、急性骨髄性白血病においてはじめて癌幹細胞が同定された。以後、様々な悪性腫瘍において癌幹細胞の存在が報告されている。総合すると、腫瘍全体の数%以下の頻度で存在し、正常幹細胞同様に希少な細胞である。腫瘍を形成する残りの細胞は増幅能力の制限された腫瘍前駆細胞または腫瘍細胞であると考えられる。
【0003】
これらの報告により、腫瘍においても正常組織同様にヒエラルキーが存在し、その頂点(起源)にある癌幹細胞が強い腫瘍形成能を有することが示された。
癌幹細胞の特性と治療上の問題
多くの報告を総合すると、癌幹細胞は正常幹細胞の持つ様々な特性を保持していると考えられる。たとえば、希少な細胞であること、微小環境(niche)に存在すること、多剤耐性遺伝子を発現すること、細胞周期が止まっていること、などに関する類似性が挙げられる。
【0004】
なかでも、正常幹細胞同様に多剤耐性遺伝子群を発現することと、細胞周期の休止期に存在するという特性は治療上の大きな問題点となりうる。多剤耐性遺伝子BCRPは様々な抗癌剤を細胞外に排出することで薬効を減弱させるポンプであり、その活性を利用した幹細胞の採取法が報告されている(非特許文献2)。また、細胞周期の休止期に存在し「冬眠」状態にあること(非特許文献3)は、癌の早い細胞増殖に着目した多くの抗癌剤や放射線に対する感受性の低下を招いている(非特許文献4及び5)。
【0005】
以上のこれらの特性により、治療に抵抗性を示す癌幹細胞が腫瘍再発の原因と考えられている。
分子標的薬について
悪性腫瘍の治療は、抗癌剤療法、放射線療法、外科的切除の3つが主な方針となる。血液腫瘍においては、抗癌剤療法と放射線療法に限られ、癌幹細胞がこれらの治療に対する抵抗性を持ちうることは前述したとおりである。もう一つの問題は、この二つの治療は影響が全身に及ぶため、副作用が大きいことである。この問題に対する解決手段と期待されるのが分子標的医薬である。標的分子が発現している細胞でのみ薬効を発揮することにより、副作用が軽減できる可能性を有する。
【0006】
分子標的医薬の血液疾患領域における代表的な薬剤として、イマチニブとリツキシマブが挙げられる。イマチニブは、CML患者の95%に観察される染色体異常(フィラデルフィア染色体)により産生される、Bcr-Ablという白血病化因子を標的とするものである。Bcr-Ablの機能を阻害することにより、白血病細胞の自殺を誘導する低分子医薬品である。リツキシマブは、B細胞上の表面分子であるCD20を認識する抗体医薬品で、B細胞の悪性腫瘍(非ホジキンリンパ腫など)に対して、抗腫瘍効果を有する。一方、AMLに対する分子標的薬は少なく、AML細胞表面抗原として知られるCD33に対するモノクローナル抗体に抗生物質カリケアマイシンを結合させた薬剤ゲムツズマブ・オゾガマイシン (Mylotarg)のみである。しかしながらMylotargは、カリケアマイシンに由来すると考えられる毒性が強く、治療範囲が狭いことと相まって利用が制限されているのが現状である。以上のことから、新たな標的遺伝子の発見とそれに対する治療薬の開発は、治療の可能性と選択肢の拡大に直結する重要な発明であるといえる。
【0007】
分子標的薬の形態として、抗体医薬品、低分子医薬品をはじめとし、ペプチド医薬品、サイトカインなど生体内蛋白製剤、siRNA、アプタマーなど、様々なものが研究・開発されている。治療薬としての抗体の使用は、その特異性から、疾患細胞が特異的抗原を発現する病態の治療に有用である。抗体は、細胞表面に発現する蛋白質を抗原として結合し、結合した細胞に有効に作用する。抗体は、血中半減期が長く、抗原への特異性が高いという特徴を持ち、抗腫瘍剤としても非常に有用である。例えば、腫瘍特異的な抗原を標的とした抗体であれば、投与した抗体は腫瘍に集積し、補体依存性細胞傷害活性(CDC)や抗体依存的細胞性細胞傷害活性(ADCC)を介した腫瘍細胞への攻撃が期待できる。また、抗体に放射性物質や細胞毒性物質などを結合させることで、薬剤を効率よく腫瘍部位に送達し作用させることが可能となる。同時に、非特異的な他組織への薬剤到達量を減少でき、副作用の軽減も期待できる。腫瘍特異的抗原が細胞死を誘導するような活性を有する場合は、アゴニスティックな活性を持つ抗体を投与することで、また、腫瘍特異的抗原が細胞の増殖及び生存に関与する場合は中和活性を持つ抗体を投与することで、腫瘍の増殖停止又は退縮が期待できる。抗体は、上記のその特徴から抗腫瘍剤として利用するのに適していると考えられる。
抗体医薬品について
当初の抗体作製は、免疫対象動物としてマウスが使用された。しかしながら、多数の理由によりマウス抗体の医薬品としての使用は制限される。ヒト体内において外来物と認識されうるマウス抗体は、いわゆる「ヒト抗マウス抗体」すなわち「HAMA」応答を惹起させうる(非特許文献6)。さらに、マウス抗体のFc部分は、ヒト補体またはヒト免疫細胞を介した疾患細胞の攻撃に有効ではない。
【0008】
このような問題を回避するためのアプローチのひとつとしてキメラ抗体が開発された(特許文献1及び2)。キメラ抗体は、2つまたはそれ以上の種由来の抗体の一部(マウス抗体の可変領域及びヒト抗体の定常領域など)を含む。このようなキメラ抗体の利点はマウス抗体の特徴は保持するが、ヒトFcを持つためヒト補体またはヒト免疫細胞活性化することができる。しかし、このようなキメラ抗体も依然として「ヒト抗キメラ抗体」すなわち「HACA」応答を惹起することが知られている(非特許文献7)。
【0009】
さらに、置換された抗体の一部のみが相補性決定領域(「CDR」)である組換え抗体が開発された(特許文献3及び4)。CDR移植技術を使用し、マウスCDR、ヒト可変部フレームワーク及びヒト定常領域からなる抗体、所謂「ヒト化抗体」が作製可能となっている(非特許文献8)。さらに、ヒト抗体産生マウスの使用、或いはヒト抗体ライブラリーを用いたスクリーニングにより、完全ヒト抗体の作製に関しても、汎用性のある技術が提供されている(非特許文献9及び10)。
IL-3Rαについて
IL3Rαは、IL-3受容体のα鎖で、サイトカイン受容体ファミリーに属し、リガンドであるIL-3と弱い結合性を示す。β鎖(CD131、以後、IL-3Rβとも表現する)とヘテロ受容体を形成することで強い結合を有するIL-3受容体となり、β鎖の細胞内部位を通じて増殖・分化等のシグナルを細胞内に伝達する。β鎖は、IL-5受容体α鎖、GM-CSF受容体α鎖と共有している。
【0010】
IL-3Rαは1回膜貫通のI型膜タンパクで、膜外領域には、IL-3結合部位、フィブロネクチンタイプIII部位が存在することが配列上から知られている。膜内領域にはシグナルを伝達し得る構造はないことが知られている。IL-3Rαの立体構造は解読されていないが、サイトカイン受容体はファミリー間で、構造上重要なS-S結合を形成するCysteine残基の位置は多くは保存されており、構造は類似していると推定できる。同じサイトカイン受容体の中では、IL-13受容体α鎖、IL-4受容体α鎖、GM-CSF受容体α鎖の結晶構造が解析されている。これらのサイトカイン受容体ファミリーの情報より、IL-3Rαの膜外領域は大きく3ドメイン(A-B-Cドメイン)に分かれていることが推定できる。ヒトIL-3RαのAドメインを認識する抗体7G3はIL-3シグナルをブロックすることが知られている(非特許文献11)。さらに、Aドメインを欠損したIL-3Rα分子が発現していることが報告されており(非特許文献12)、当然ながらAドメインを認識する抗体はAドメイン欠損型IL-3Rαを認識することはできない。また、Cドメインは、IL-3Rα分子の根元であり、IL-3RβとIL-3Rαの会合を立体的に阻害する可能性が高いと考えられる。
【0011】
IL-3Rαのリガンドとして唯一知られているのは、IL-3である。IL-3は、以下のコロニー形成を促進することが知られている造血因子である:赤血球、巨核球、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、単球系細胞。IL-3は、多分化能を有する前駆細胞を刺激することも知られているが、どちらかというと、自己複製能を有する未熟な幹細胞ではなく、分化方向の定められた(Commitingな)前駆細胞の分化を促進すると言われている。
【0012】
IL-3Rαは、β鎖とヘテロダイマーを形成してIL-3シグナルをSerine/Threonineリン酸化経路を介して細胞内に伝達し、骨髄系の細胞の増殖・分化に関わっていることが知られている。IL-3Rαの発現は、造血前駆細胞の中でもGranulocyte-MacrophageProgenitor(GMP)或いはCommon MyeloidProgenitor(CMP)に発現していることが知られており、IL-3シグナルを介して好中球、マクロファージ系への増殖・分化を誘導する。一方、CMPの下流にあるMegakaryocyte Erythroid Progenitor(MEP)は、同じくCMPの下流にあるGMPとは異なり、IL-3Rαの発現がないことが報告されている。
【0013】
AML幹細胞に関しては、BonnetとDickはAML幹細胞がCD34陽性CD38陰性の画分に存在することを報告し(非特許文献13)。さらに、Jordanらは、正常幹細胞の同じ画分(CD34陽性CD38陰性)と比較することで、IL-3RαがAML幹細胞に高発現していることを見出した(非特許文献14)。以後の複数の論文でも、AML幹細胞のみならず、白血病幹細胞のマーカーとしてのIL-3Rαの高いポテンシャルは報告されている(非特許文献15及び16)。白血病を含む癌治療においては、正常細胞をできるだけ傷害せずに、がん細胞のみを除去することが重要であり、このIL-3Rαの正常幹細胞と白血病幹細胞の発現の差は、白血病幹細胞をターゲティングする治療に有用であると考える。
【0014】
IL-3Rαとヘテロダイマーを形成するIL-3Rβに関しては、白血病幹細胞において高発現している報告は存在せず、実際に白血病幹細胞と正常幹細胞のmRNA発現を比較したマイクロアレイにおいても、白血病幹細胞において発現が亢進している分子として同定されていない(非特許文献17)
【0015】
IL-3に依存する白血病細胞の存在は古くから知られているが、古い研究では白血病細胞の殆どを占める芽球に着目した研究である。今日の白血病幹細胞の研究においては、白血病幹細胞は増殖を極力控えることで抗癌剤耐性を獲得するといわれている。また、IL-3反応性の芽球は増殖性が高いと考えられ、それらの細胞は通常の抗癌剤治療が有効であると推測される。
【0016】
IL-3R受容体をターゲットとした薬剤の候補としては、古くはIL-3そのものが造血不全の患者に投与されたが、結果的に医薬品になっていない。IL-3にジフテリア毒素を付加した融合タンパクが、白血病を対象疾患として臨床試験実施中である。IL-3及びジフテリア毒素付加IL-3に関しては、IL-3の性質から、IL-3Rα単独のタンパクに対してではなく、IL-3Rαとβのヘテロタンパクに強く結合するため、IL-3Rαが特異的に発現上昇している細胞をターゲットとしている薬剤としては適していない。一方、IL-3Rαをターゲットとする薬剤候補としては、IL-3Rαのヒトマウスキメラ抗体7G3が第1相の結果が報告されている(非特許文献1)。7G3キメラ抗体は、IL-3シグナルをブロックすることをAML治療のメカニズムとしており、IL-3Rα陽性細胞の除去を目的とした薬剤ではない。また、その他にもIL-3Rα抗体はいくつか知られている(9F5(Becton Dickinson社)、6H6 (SANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY社)、AC145(Miltenyi-Biotec社))ものの、IL-3Rα高発現細胞の除去能を有していはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許出願公開第120694号
【特許文献2】欧州特許出願公開第125023号
【特許文献3】英国特許出願公開第GB2188638A号
【特許文献4】米国特許第5585089号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Osawa Mら, Science. 273:242-5 (1996)
【非特許文献2】Goodell MAら, J Exp Med. 183:1797-806 (1996)
【非特許文献3】Yamazaki Sら, EMBO J. 25:3515-23(2006)
【非特許文献4】Ishikawa Fら,Nat Biotechnol. 25:1315-21.(2007)
【非特許文献5】Bao Sら, Nature. 444:756-60 (2006)
【非特許文献6】Schiffら, Canc. Res., 45, 879-885 (1985)
【非特許文献7】Bruggemannら, J. Exp. Med., 170:2153-2157 (1989)
【非特許文献8】Riechmannら, Nature, 332:323-327 (1988)
【非特許文献9】Ishida Iら,Cloning Stem Cells. 4:91-102 (2002)
【非特許文献10】Wuら,JMol Biol. 19:151-62 (1999)
【非特許文献11】Sunら, Blood, 87:83 (1996)
【非特許文献12】Chenら,JBiol Chem、 284:5763(2009)
【非特許文献13】Bonnet ら,NatMed, 1997; 3: 730
【非特許文献14】Jordanら,Leukemia, 2000; 14: 1777
【非特許文献15】Haematologica,2001;86:1261
【非特許文献16】、LeukLymphoma,2006;47:207
【非特許文献17】Majetiら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2009; 106:3396
【非特許文献18】Blood,2008112(11):Abstract2956
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、白血病幹細胞のみを除去することが可能で、かつ正常細胞に悪影響を及ぼしにくい(副作用の少ない)治療薬を提供することである。具体的にはIL-3シグナルを阻害せず、かつヒトIL-3Rα鎖のBドメインに結合し、Cドメインには結合しない、ヒトIL-3Rα鎖に対する抗体、該抗体を含む組成物、該抗体を用いた治療方法、または、検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は以下の(1)〜(9)に関する。
(1)IL-3シグナルを阻害せず、かつヒトIL-3Rα鎖のBドメインに結合し、Cドメインには結合しない、ヒトIL-3Rα鎖に対する抗体。
(2)さらに高い抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有する、上記(1)記載の抗体。
(3)高い抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)が、IL-2で培養したPBMCを用いたColon-26/hCD123ADCC測定法において、抗体濃度が0.01μg/mL以下で特異的溶解率10%となる、上記(1)または(2)記載の抗体。
(4)以下の(a)〜(e)からなる群から選択された重鎖のCDRと軽鎖のCDRのアミノ酸配列を有する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の抗体。
(a) 重鎖のCDR1〜3が配列番号113〜115で示されるアミノ酸配列および軽鎖のCDR1〜3が配列番号131〜133で示されるアミノ酸配列
(b) 重鎖のCDR1〜3が配列番号116〜118で示されるアミノ酸配列かつ軽鎖のCDR1〜3が配列番号134〜136で示されるアミノ酸配列
(c) 重鎖のCDR1〜3が配列番号119〜121で示されるアミノ酸配列かつ軽鎖のCDR1〜3が配列番号137〜139で示されるアミノ酸配列
(d) 重鎖のCDR1〜3が配列番号122〜124で示されるアミノ酸配列かつ軽鎖のCDR1〜3が配列番号140〜142で示されるアミノ酸配列
(e) 重鎖のCDR1〜3が配列番号125〜127で示されるアミノ酸配列かつ軽鎖のCDR1〜3が配列番号143〜145で示されるアミノ酸配列
(5)以下の(a)〜(f)からなる群から選択された重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有する、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の抗体。
(a) 配列番号53で示されるアミノ酸配列の20番目のグルタミン(Q)から139番目のセリン(S)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号55で示されるアミノ酸配列の23番目のバリン(V)から129番目のリジン(K)までのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
(b)配列番号57で示されるアミノ酸配列の20番目のグルタミン(Q)から139番目のセリン(S)までのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号59で示されるアミノ酸配列の23番目のバリン(V)から129番目のリジン(K)までのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
(c) 配列番号61で示されるアミノ酸配列の20番目のグルタミン(Q)から139番目のセリン(S)までのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号63で示されるアミノ酸配列の23番目のアスパラギン酸(D)から129番目のリジン(K)までのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
(d) 配列番号65で示されるアミノ酸配列の20番目のグルタミン(Q)から139番目のセリン(S)までのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号67で示されるアミノ酸配列の23番目のアスパラギン酸(D)から129番目のリジン(K)までのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
(e) 配列番号69で示されるアミノ酸配列の20番目のグルタミン(Q)から138番目のセリン(S)までのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号71で示されるアミノ酸配列の23番目のアスパラギン酸(D)から129番目のリジン(K)までのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。
(f) (a)から(e)で示される重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域に1から3個のアミノ酸残基が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び/または軽鎖可変領域。
(6)(1)から(5)のいずれかに記載のIL-3Rα抗体を有効成分として含むことを特徴とする、被検体において、骨髄または末梢血にIL-3Rαが発現している細胞が認められる血液腫瘍を予防又は治療するための組成物。
(7)(1)から(5)のいずれかに記載のIL-3Rα抗体を有効成分とする組成物を被検体に対して投与することを含む骨髄または末梢血にIL-3Rαが発現している細胞が認められる血液腫瘍の治療方法。
(8)(1)から(5)のいずれかに記載のIL-3Rα抗体を含むことを特徴とする、被験体からの生物学的検体において、骨髄または末梢血にIL-3Rα発現している細胞が認められる血液腫瘍を検出するための組成物。
(9)上記血液腫瘍が、急性骨髄性白血病(AML)である、(1)から(5)のいずれかに記載の組成物又は方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、IL-3シグナルを阻害せず、かつヒトIL-3Rα鎖のBドメインに結合し、Cドメインには結合しない、ヒトIL-3Rα鎖に対する抗体、該抗体を含む組成物、該抗体を用いた治療方法、検出方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、ラベル化抗IL-3Rα抗体を用いたIL-3Rα/GM-CSFRαキメラタンパク発現細胞のフローサイトメトリー解析の結果である。
図2図2は、ラベル化抗IL-3Rα抗体を用いたIL-3Rα/GM-CSFRαキメラタンパク発現細胞のフローサイトメトリー解析の結果である。
図3図3は、ラベル化抗IL-3Rα抗体を用いたIL-3Rα/GM-CSFRαキメラタンパク発現細胞のフローサイトメトリー解析の結果である。
【0023】
図4図4は、ヒトIL-3Rα分子のA及びBドメインの核酸及びアミノ酸配列のうち、分子の外側に配置された領域1〜7をGM-CSFRα配列に置換した領域部分を点線で示した図である。
図5図5は、IL-3シグナルのブロッキング能を検討した細胞株増殖試験の結果である。縦軸に細胞増殖阻害率(%)、横軸に各種IL-3Rα抗体名を示す。
図6図6は、IL-3シグナルのブロッキング能を検討したコロニーアッセイ試験の結果である。GMはGranulocyte/Macrophage系、EはErythroid系コロニー、GEMMは混合コロニーによる結果を示す。
【0024】
図7図7は、担ガンモデルにおける各種ヒト抗体の抗腫瘍効果を検討した結果である。縦軸は、MOLM13細胞数、横軸に各種抗IL-3Rα抗体名をそれぞれ示している。
図8図8は、抗IL-3Rα抗体によるIL-3Rα発現細胞株に対するADCC試験の結果である。図8はIL-2でcultureしていないPBMCを、図9はIL-2でcultureしたPBMCを使用した。
図9図9は、抗IL-3Rα抗体によるIL-3Rα発現細胞株に対するADCC試験の結果である
図10図10は、抗IL-3Rα抗体をPE標識抗ヒトIgG二次抗体で検出したカニクイザルIL-3Rα強制発現細胞のフローサイトメトリー解析の結果である。上段はカニクイザルIL-3Rα発現細胞を、下段はヒトIL-3Rαの発現細胞をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(特定の好ましい実施形態の詳細な説明)
本明細書に用いられるセクションの見出しは、組織化の目的のためのみであり、記載される主題に限定されると解釈されるべきではない。本出願に引用される全ての引用文献は、任意の目的のために本明細書について参照として明白に援用される。
(概要)
本発明は、IL-3シグナルを阻害せず、かつヒトIL-3受容体α鎖(以下、IL-3Rαと略記する)のBドメインに結合し、Cドメインには結合しない、ヒトIL-3Rα鎖に対する抗体に関する。
【0026】
白血病幹細胞の細胞表面にはIL-3受容体(以下、IL-3Rと略記する)、とりわけIL-3Rαが発現している。通常、IL-3シグナルを細胞内に伝え増殖・分化を誘導するのはIL-3受容体β鎖(以下、IL-3Rβと略記する)である。
したがって、IL-3シグナルを阻害することは、正常幹細胞による正常な造血を阻害し得る等の副作用の懸念がある。そこで、白血病幹細胞をターゲットとする新たな治療法としては、IL-3Rαをターゲットとし、さらにIL-3シグナルを阻害しないことが望ましい。
(IL-3Rα)
IL-3Rα遺伝子がコードするタンパク質はサイトカイン受容体ファミリーに属するI型膜貫通蛋白質である。IL-3Rα分子は、正常細胞においては、造血前駆細胞の一部、好塩基球、樹状細胞の一部などに発現している。腫瘍においては、造血系の腫瘍・白血病における発現が主に知られている。IL-3Rαを発現している腫瘍の例としては、AMLや急性転化したCMLの芽球、白血病幹細胞とされる分化マーカー陰性CD34陽性CD38陰性の画分においては、AML、CML、MDS、ALL、SMにおいて発現していることが知られている。IL-3Rαの既知のリガンドであるIL-3は、血液中では活性化T細胞、natural killer細胞、肥満細胞、巨核球系の一部の細胞が発現している。また、IL-3Rαは、CD123とも呼ばれる。IL-3Rαには、哺乳類(例えば、霊長類、ヒト)型IL-3Rαが含まれる。ヒトIL-3RαなどのIL-3Rα配列には、多型変異体が含まれる。全長ヒトIL-3Rαの具体例としては、以下のアミノ酸配列があげられる。
MVLLWLTLLLIALPCLLQTKEDPNPPITNLRMKAKAQQLTWDLNRNVTDIECVKDADYSMPAVNNSYCQFGAISLCEVTNYTVRVANPPFSTWILFPENSGKPWAGAENLTCWIHDVDFLSCSWAVGPGAPADVQYDLYLNVANRRQQYECLHYKTDAQGTRIGCRFDDISRLSSGSQSSHILVRGRSAAFGIPCTDKFVVFSQIEILTPPNMTAKCNKTHSFMHWKMRSHFNRKFRYELQIQKRMQPVITEQVRDRTSFQLLNPGTYTVQIRARERVYEFLSAWSTPQRFECDQEEGANTRAWRTSLLIALGTLLALVCVFVICRRYLVMQRLFPRIPHMKDPIGDSFQNDKLVVWEAGKAGLEECLVTEVQVVQKT(配列番号1)
ヒトIL-3Rα細胞外ドメインの具体例としては、以下のアミノ酸配列があげられる。
MVLLWLTLLLIALPCLLQTKEDPNPPITNLRMKAKAQQLTWDLNRNVTDIECVKDADYSMPAVNNSYCQFGAISLCEVTNYTVRVANPPFSTWILFPENSGKPWAGAENLTCWIHDVDFLSCSWAVGPGAPADVQYDLYLNVANRRQQYECLHYKTDAQGTRIGCRFDDISRLSSGSQSSHILVRGRSAAFGIPCTDKFVVFSQIEILTPPNMTAKCNKTHSFMHWKMRSHFNRKFRYELQIQKRMQPVITEQVRDRTSFQLLNPGTYTVQIRARERVYEFLSAWSTPQRFECDQEEGANTRAWRTSL(配列番号2)
また、IL-3Rαの細胞外ドメインは、A〜Cの3つのドメインに分けられる。
【0027】
Aドメインとは、配列番号2のアミノ酸の18番目のグルタミン(Q)から100番目のセリン(S)まで、Bドメインとは、配列番号2のアミノ酸の101番目のグリシン(G)から203番目のセリン(S)まで、Cドメインとは、配列番号2のアミノ酸の204番目のグルタミン(Q)から308番目のロイシン(L)までの領域を意味する。
さらに、AおよびBドメインのうち、分子の外側に配置される領域とは、以下の7領域があげられる。
領域1とは、配列番号2のアミノ酸の55番目のアスパラギン酸(D)から61番目のプロリン(P)まで、領域2とは、配列番号2のアミノ酸の63番目のバリン(V)から70番目のフェニルアラニン(F)まで、領域3とは、配列番号2のアミノ酸の91番目のセリン(S)から98番目のグルタミン酸(E)まで、領域4とは、配列番号2のアミノ酸の97番目のプロリン(P)から104番目のトリプトファン(W)まで、領域5とは、配列番号2のアミノ酸の122番目のシステイン(C)から128番目のプロリン(P)まで、領域6とは、配列番号2のアミノ酸の182番目のイソロイシン(I)から188番目のセリン(S)まで、領域7とは、配列番号2のアミノ酸の192番目のグリシン(G)から198番目のリシン(K)があげられる。
【0028】
したがって、本発明の抗体としては、IL-3Rαの細胞外ドメインである、配列番号2記載のアミノ酸において、101〜203番目のアミノ酸配列に結合し、204〜308番目のアミノ酸配列には結合しない抗体、さらには配列番号2記載のアミノ酸配列における182〜188番目および192〜198番目のアミノ酸配列に結合する抗体があげられる。
本発明の抗体は、IL-3Rαの細胞外ドメインの上述した特定の領域に結合し、IL-3シグナルを阻害しない。
本発明において「IL-3シグナルを阻害せず」とは、IL-3によるIL-3Rを介した細胞内シグナルを阻害しないことをいい、IL-3とIL-3Rの会合を阻害しない場合及びIL-3Rα鎖とβ鎖の結合を阻害しないことが含まれる。具体的には、実施例8における解析において、図5で示される細胞増殖阻害率が抗体の濃度を10μg/mLとしたときにおいて、40%以上、好ましくは60%以上、さらに好ましくは80%以上であることをいう。本明細書において、「IL-3シグナルのブロッキング」と「IL-3シグナルの阻害」とは同意義に用いられ、区別されるものではなく、IL-3シグナルのブロッキング能とは、IL-3シグナルを阻害する能力をいう。
また、本発明の抗体は、上述の性質に加えて、高い抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を有する。
【0029】
ADCC活性を有するIL-3Rα抗体は、IL-3Rαを発現する細胞に結合し、NK細胞等の細胞傷害活性を有するエフェクター細胞を介してIL-3Rα発現細胞を殺傷しうる抗体をいう。
高いADCC活性とは、具体的には実施例11に記載された、IL-2培養したPBMCを用いたColon-26/hCD123ADCC測定法により測定したときに、抗体濃度が0.01μg/mL以下で特異的溶解率が10%以上のことをいう。
【0030】
特異的溶解率とは、抗体によるターゲット細胞の溶解度を測定した値であり、具体的には後述の実施例11により算出される。
IL-3Rαを発現する細胞としては、血液腫瘍細胞(acutemyeloidleukemia(AML)細胞、chronicmyeloidleukemia(CML)細胞、myelodysplasticsyndromes(MDS)細胞、acutelymphoidleukemia(ALL)細胞、chroniclymphoidleukemia(CLL)細胞、多発性骨髄腫(multiplemyeloma:MM)細胞、systemicmastocytoma(SM)細胞など)、制御性T細胞(たとえば、CD4陽性CD25陽性細胞)、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、単球・マクロファージおよびそれに類する細胞(肝臓星細胞、破骨細胞、ミクログリア細胞、表皮内大食細胞、塵埃細胞(肺胞大食細胞)など))、好塩基球などがあげられる。
【0031】
また、AML細胞、CML細胞、ALL細胞、CLL細胞、MDS細胞、SM細胞、MM細胞、各種リンパ腫細胞にはそれぞれの腫瘍幹細胞を含む。
腫瘍幹細胞とは、例えば急性骨髄性白血病(AML)においてLineage(-)CD34(+)CD38(-)骨髄細胞に代表される、腫瘍を構成する細胞群の一つである。
したがって、本発明の抗体は、高いADCC活性を有するため、IL-3Rαが発現している細胞の低減または除去を誘導する。
【0032】
また本発明のIL-3Rα抗体には、以下の(a)〜(e)からなる群から選択される重鎖のCDR及び軽鎖のCDRを有するIL-3Rα抗体が含まれる。
(a) 重鎖のCDR1〜3が配列番号113〜115で示されるアミノ酸配列かつ軽鎖のCDR1〜3が配列番号131〜133で示されるアミノ酸配列
(b) 重鎖のCDR1〜3が配列番号116〜118で示されるアミノ酸配列かつ軽鎖のCDR1〜3が配列番号134〜136で示されるアミノ酸配列
(c) 重鎖のCDR1〜3が配列番号119〜121で示されるアミノ酸配列かつ軽鎖のCDR1〜3が配列番号137〜139で示されるアミノ酸配列
(d) 重鎖のCDR1〜3が配列番号122〜124で示されるアミノ酸配列かつ軽鎖のCDR1〜3が配列番号140〜142で示されるアミノ酸配列
(e) 重鎖のCDR1〜3が配列番号125〜127で示されるアミノ酸配列かつ軽鎖のCDR1〜3が配列番号143〜145で示されるアミノ酸配列
さらに、本発明の抗体には、以下の(a)〜(f)からなる群から選択される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を有するIL-3Rα抗体(カッコ内に、各可変領域配列が由来する後述実施例の抗体の名称を示す。)。
【0033】
(a) 配列番号53で示されるアミノ酸配列の20番目のグルタミン(Q)から139番目のセリン(S)までのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号55で示されるアミノ酸配列の23番目のバリン(V)から129番目のリジン(K)までのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。(抗体の名称:Old4)
(b) 配列番号57で示されるアミノ酸配列の20番目のグルタミン(Q)から139番目のセリン(S)までのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号59で示されるアミノ酸配列の23番目のバリン(V)から129番目のリジン(K)までのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。(抗体の名称:Old5)
(c) 配列番号61で示されるアミノ酸配列の20番目のグルタミン(Q)から139番目のセリン(S)までのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号63で示されるアミノ酸配列の23番目のアスパラギン酸(D)から129番目のリジン(K)までのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。(抗体の名称:Old17)
(d) 配列番号65で示されるアミノ酸配列の20番目のグルタミン(Q)から139番目のセリン(S)までのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号67で示されるアミノ酸配列の23番目のアスパラギン酸(D)から129番目のリジン(K)までのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。(抗体の名称:Old19)
(e) 配列番号69で示されるアミノ酸配列の20番目のグルタミン(Q)から138番目のセリン(S)までのアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号71で示されるアミノ酸配列の23番目のアスパラギン酸(D)から129番目のリジン(K)までのアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。(抗体の名称:New102)
(f) (a) から (e) で示される重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域に1から3個のアミノ酸残基が欠失、置換、付加又は挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び/または軽鎖可変領域。
(抗体)
抗体とは、最も広義に使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多価抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及びそれらの所望の生物学的活性を示す限りにおいて抗体断片も含む。
【0034】
抗体は、成熟重鎖または軽鎖可変領域配列を含む。また、抗体は、成熟重鎖または軽鎖可変領域配列についての、抗体定常領域、相補性決定領域(CDR)またはフレームワーク(FR)領域内部または外部での置換物などの修飾形態および変異形態も含む。特定の態様では、置換には保存的アミノ酸置換が含まれる。
また、抗体は、成熟重鎖または軽鎖可変領域配列の部分配列も含む。特定の態様では、部分配列は、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、Fd、単鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(sdFv)およびVLまたはVHから選択される。
【0035】
また、抗体は異種ドメインも含む。特定の態様では、異種ドメインにはタグ、検出可能な標識または細胞傷害性薬剤が含まれる。
抗体には、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、それらのいずれものイソタイプまたはサブクラスが含まれる。特定の態様では、前記抗体はIgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)、IgA、IgM、IgE、またはIgDアイソタイプである。「モノクローナル」抗体とは、真核生物クローン、原核生物クローン、またはファージクローンを含む単一クローンに基づき、真核生物クローン、原核生物クローン、またはファージクローンを含む単一クローンから得られあるいは真核生物クローン、原核生物クローン、またはファージクローンを含む単一クローンから誘導される抗体を指す。ゆえに、「モノクローナル」抗体は、構造的に定義されるものであり、それが産生される方法ではない。
【0036】
IL-3Rα抗体、抗IL-3Rαおよび抗IL-3Rα抗体とは、IL-3Rαと特異的に結合する抗体を指す。特異的結合とは、IL-3Rα中に存在するエピトープに対して選択的であるということである。特異的結合は、当技術分野で公知のアッセイ(例えば、免疫沈降、ELISA、フローサイトメトリー、ウェスタンブロッティング)を用いて非特異的結合と区別することができる。
【0037】
IL-3Rα抗体が特異的に結合する抗原エピトープの全てまたは一部が異なるタンパク質に存在する場合に、この抗体は異なるタンパク質と結合する可能性がある。そのため、IL-3Rα抗体は、IL-3Rαエピトープの配列または構造的相同性の程度に応じて、そのIL-3Rαエピトープに対して高い配列または構造的相同性を有する別のタンパク質と特異的に結合可能性がある。よって、IL-3Rα抗体は、異なるタンパク質に、十分な配列または構造的相同性を有するエピトープが存在する場合に、異なるタンパク質と結合する可能性がある。
【0038】
IL-3Rα抗体には、単離および精製抗体が含まれる。単離または精製IL-3Rα抗体を含む本発明の抗体は、ヒトを含む。
組成物の修飾語として用いられる用語「単離(された)」とは、その組成物が人の手で作られるということ、あるいは天然に存在するin vivo環境にある1種以上の他の成分から、一般に、1以上の操作ステップまたはプロセスにより分離されるということを意味する。一般に、そのように分離された組成物は、そのような組成物が通常自然に結合する1種以上の材料、例えば、1種以上のタンパク質、核酸、脂質、炭水化物、細胞膜を実質的に含まない。そのため、単離組成物は、その組成物が自然に発生する生物の細胞中の他の生体成分から、あるいはその組成物が(例えば、合成によりまたは細胞培養により)産生される人工培地から分離されている。例えば、単離IL-3Rα抗体は、その抗体が産生される動物(例えば、非トランスジェニック哺乳類またはトランスジェニック哺乳類(齧歯類(マウス)または有蹄類(ウシ)動物などの))から得ることができ、他のポリペプチドおよび核酸から分離されている。よって、その動物から得られる抗体を含有する血清は単離されていると考えられる。用語「単離(された)」は、別の物理的形状を排除するものではなく、例えば、単離抗体には、抗体部分配列、キメラ、マルチマー、または誘導体化された形態が含まれ得る。
【0039】
組成物の修飾語として用いられる用語「精製(された)」とは、その組成物が一般に自然に結合する材料のほとんどまたは実質的に全てを含まない組成物を指す。精製抗体は、一般に、抗体環境に通常存在する成分から取り出されている。そのため、抗体産生ハイブリドーマ細胞培養物から分離された抗体上清は精製されていると考えられる。よって、精製(された)は、絶対純度を要求するものではなく、関係上の比(context specific)である。さらに、「精製(された)」組成物は、1種以上の他の分子と組み合わせることができる。そのため、用語「精製(された)」は、組成物の組合せを排除するものではない。純度は、例えば、UV分光法、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、気相)、ゲル電気泳動(例えば、銀またはクーマシー染色)および配列解析(ペプチドおよび核酸)などの任意の適切な方法により決定することができる。
【0040】
「精製(された)」タンパク質および核酸には、標準的な精製法よって得られるタンパク質および核酸が含まれる。また、この用語には、宿主細胞での組換え発現や化学合成によって得られるタンパク質および核酸も含まれる。また、「精製(された)」は、混入物質のレベルが、ヒトまたは非ヒト動物への投与に関する監督官庁、例えば、食品医薬品局(the Food and Drug Administration)(FDA)に承認されるレベルより低い組成物を指すこともある。
【0041】
IL-3Rα抗体には、IL-3Rαと結合し、in vivoでまたはin vitroで(例えば被験体において)IL-3Rα機能または活性をモジュレートする抗体が含まれる。本明細書において、IL-3Rαの活性または機能に関して用いられる場合の用語「モジュレートする」およびその文法上の変形は、IL-3Rαの活性または機能が検出可能なように影響、改変または変更を受けるが、IL-3シグナルを阻害することは含まれないことを意味する。よって、IL-3Rαの活性または機能をモジュレートするIL-3Rα抗体は、IL-3Rシグナルは阻害せずに1種以上のIL-3Rα活性または機能を検出可能なように影響、改変または変更を与える抗体であり、そのようなIL-3Rαの活性または機能には、例えば、IL-3Rαリガンド(例えばIL-3)とのIL-3Rαの結合、IL-3Rα媒介シグナル伝達またはIL-3Rα媒介細胞応答もしくはIL-3Rαによりモジュレーション可能な細胞応答、あるいは本明細書に記載されているか、そうでなければ公知であるかもしくは知り得る別のIL-3Rα活性または機能を含めることができる。
【0042】
モジュレートすることができる非限定的な様々なIL-3Rα活性および機能には、例えば、IL-3Rα媒介シグナル伝達またはIL-3Rα媒介細胞応答もしくはIL-3Rαによりモジュレーション可能な細胞応答、細胞増殖または増加(例えば、AML細胞、CML細胞、ALL細胞、CLL細胞、MDS細胞、MM細胞、SM細胞、各種リンパ腫細胞、単球、マクロファージ、肥満細胞、好塩基球、ヘルパーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラー細胞、骨髄球系前駆細胞、リンパ球系前駆細胞など)、細胞生存またはアポトーシス(例えば、AML細胞、CML細胞、ALL細胞、CLL細胞、MDS細胞、MM細胞、SM細胞、各種リンパ腫細胞、単球、マクロファージ、肥満細胞、好塩基球、ヘルパーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラー細胞、骨髄球系前駆細胞、リンパ球系前駆細胞など)、サイトカイン(例えば、Th1、Th2および非Th1/Th2サイトカイン)およびインターフェロンの発現または産生、抗アポトーシスタンパク質またはプロアポトーシスタンパク質の発現または産生、ならびにそれらの障害、疾患、生理学的状態、病状および症状の処置、抑制または改善が含まれる。モジュレートされる特定のサイトカインとしては、限定されるものではないが、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-14、IL-16、IL-17、IL-23、IL-26、TNF-α、インターフェロンγ(invivoまたはin vitro)が挙げられる。特定の抗アポトーシスタンパク質またはプロアポトーシスタンパク質発現としては、限定されるものではないが、Bcl-xL、Bcl-2、Bad、BimおよびMcl-1が挙げられる。
よって、本明細書に記載の例示的なIL-3Rα抗体には、1種以上のIL-3Rα媒介シグナル伝達またはIL-3Rα媒介細胞応答もしくはIL-3Rαにより誘導される細胞応答、細胞増殖(例えば、AML細胞、CML細胞、ALL細胞、CLL細胞、MDS細胞、MM細胞、SM細胞、各種リンパ腫細胞、単球、マクロファージ、肥満細胞、好塩基球、ヘルパーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラー細胞、骨髄球系前駆細胞、リンパ球系前駆細胞など)、細胞生存またはアポトーシス(例えば、AML細胞、CML細胞、ALL細胞、CLL細胞、MDS細胞、MM細胞、SM細胞、各種リンパ腫細胞、単球、マクロファージ、肥満細胞、好塩基球、ヘルパーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラー細胞、骨髄球系前駆細胞、リンパ球系前駆細胞など)、サイトカイン(例えば、Th1、Th2および他の非Th1/Th2サイトカイン、例えば、IL-17、IL-23およびIL-26)およびインターフェロンの発現または産生(Th1、Th2、非Th1/Th2、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-14、IL-16、IL-17、IL-23、IL-26、TNF-α、インターフェロンγ、およびGM-CSF(in vivoまたはin vitro)など)、抗アポトーシスタンパク質またはプロアポトーシスタンパク質の発現(例えば、Bcl-xL、Bcl-2、Bad、BimまたはMcl-1)、ならびにそれらの障害、疾患、病状および症状の処置、抑制または改善をモジュレートする抗体が含まれる。特定の態様では、本発明のIL-3Rα抗体は、AML細胞の増殖または生存をモジュレートし、他の血液腫瘍細胞(例えば、CML細胞、ALL細胞、CLL細胞、MDS細胞、MM細胞、SM細胞、または各種リンパ腫細胞)の数をモジュレートし、単球、マクロファージ、肥満細胞、好塩基球、ヘルパーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラー細胞、骨髄球系前駆細胞、リンパ球系前駆細胞など非血液腫瘍細胞の増殖または生存をモジュレートし、あるいはAML細胞、CML細胞、ALL細胞、CLL細胞、MDS細胞、MM細胞、SM細胞、または各種リンパ腫細胞を減少、消失または枯渇させる。
IL-3Rα抗体には、「変異体」とも呼ばれる置換物(例えば、アミノ酸置換物)、付加物および欠失物(例えば、部分配列またはフラグメント)などの改変形態が含まれる。そのような改変抗体形態および変異体は、本発明で示されるIL-3Rα抗体の少なくとも一部の機能または活性、例えばIL-3Rαと結合すること、あるいはIL-3Rαの活性または機能(例えば、IL-3Rαシグナル伝達)をモジュレートすることを保持する。よって、改変IL-3Rα抗体は、例えば、少なくとも一部のIL-3Rα結合あるいは1種以上のIL-3Rα機能または活性(例えば、シグナル伝達、細胞応答など)をモジュレートする能力を保持することができる。
【0043】
本明細書において、用語「改変する」(「修飾する」)およびその文法上の変形は、組成物が参照組成物から外れているということを意味する。改変されたタンパク質、核酸および他の組成物は、非改変の参照タンパク質、核酸または他の組成物よりも高いまたは低い活性を有し、あるいは非改変の参照タンパク質、核酸または他の組成物とは異なる機能を有し得る。
【0044】
アミノ酸置換を含むそのような抗体は、核酸によってコードされ得る。それゆえ、アミノ酸置換を含む抗体をコードする核酸配列も提供される。
用語「同一性」または「同一の」とは、2つ以上の参照される実体が同じであるということを意味する。よって、2つのタンパク質配列(例えば、IL-3Rα抗体)が同一である場合、それらは少なくとも参照される領域または部分内で同じアミノ酸配列を有する。「同一性領域」とは、2つ以上の参照される実体の同じである部分を指す。よって、2つのタンパク質配列が1つ以上の配列領域で同一である場合、それらはその領域内で同一性を共有する。「実質的同一性」とは、分子が、1種以上の参照分子機能または活性の少なくとも一部の機能または活性、あるいはその分子が同一性を共有する参照分子の関連/対応領域または部分を有するかあるいは有すると予測されるように、構造的にまたは機能的に保存されているということを意味する。よって、実質的同一性を有するポリペプチド(例えば、IL-3Rα抗体)は、参照ポリペプチド(例えば、IL-3Rα抗体)としての少なくとも一部の活性または機能を有するかあるいは有すると予測される。例えば、特定の一実施形態では、非改変IL-3Rα抗体の少なくとも一部の活性または機能を保持する1種以上の改変(例えば、1から3個のアミノ酸残基の欠失、置換、付加又は挿入)を有するIL-3Rα抗体は、参照IL-3Rα抗体に対して実質的同一性を有すると考えられる。
【0045】
構造的に関連したタンパク質と機能的に関連したタンパク質との違いから、機能または活性を保持するために必要な配列同一性の量は、タンパク質、領域およびその領域の機能または活性によって異なる。タンパク質ではわずか30%アミノ酸配列同一性が存在するだけで、ある活性または機能を保持することができるが、一般には、参照配列に対してより高い、例えば、50%、60%、75%、85%、90%、95%、96%、97%、または98%の同一性が存在する。2配列間の同一性の程度は、当技術分野で公知のコンピュータープログラムや数学アルゴリズムを用いて確かめることができる。配列同一性の割合(相同性)を計算するそのようなアルゴリズムでは、一般に、比較領域にわたる配列ギャップとミスマッチを計上する。例えば、BLAST(例えば、BLAST2.0)検索アルゴリズム(例えば、Altschulら, J. Mol. Biol. 215:403 (1990)参照, NCBIを通じて公的に入手可能)は、以下のような例示的検索パラメーターを有する:ミスマッチ-2;ギャップ開始5;ギャップ伸長2。ポリペプチド配列比較では、BLASTPアルゴリズムを、一般に、PAM100、PAM 250、BLOSUM 62またはBLOSUM50.FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)などのスコア行列と組み合わせて用い、SSEARCH配列比較プログラムも同一性の程度を定量するために用いられる(Pearsonら,Proc. Natl. Acad.SciUSA85:2444(1988); Pearson,MethodsMolBiol.132:185(2000);およびSmith ら,J.Mol.Biol.147:195(1981))。Delaunayに基づく位相マッピングを用いてタンパク質構造的類似性を定量するためのプログラムも開発された(Bostick ら,BiochemBiophysResCommun.304:320(2003))。
【0046】
「保存的置換」は、生物学的に、化学的にまたは構造的に類似した残基による1個のアミノ酸の置換である。生物学的的に類似したとは、置換によって生物活性、例えば、IL-3Rα結合活性が破壊されないということを意味する。構造的に類似したとは、アミノ酸が同じくらいの長さの側鎖を有する(例えば、アラニン、グリシンおよびセリン)ということ、または同じくらいのサイズということを意味する。化学的類似性とは、残基が同じ電荷を有するということあるいは親水性または疎水性であるということを意味する。特定の例としては、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンなどの一疎水性残基の別のものとの置換、あるいは一極性残基の別のものとの置換、例えば、アルギニンのリジンとの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸との置換、またはグルタミンのアスパラギンとの置換、セリンのトレオニンとの置換などが挙げられる。
【0047】
また、改変抗体には、L-アミノ酸(およびそれらの混合物)と置換された1種以上のD-アミノ酸、構造的および機能的類似体、例えば、合成もしくは非天然アミノ酸またはアミノ酸類似体を有するペプチドミメティクスおよび誘導体化された形態も含まれる。改変には、環状構造、例えばアミノ末端およびカルボキシ末端の分子間の末端間アミド結合または分子内または分子間ジスルフィド結合が含まれる。
【0048】
アミノ酸改変の非限定的なさらなる特定の例としては、IL-3Rαの部分配列(subsequence)およびフラグメントが挙げられる。例示的なIL-3Rαの部分配列およびフラグメントは、本発明の例示的IL-3Rα抗体が結合するIL-3Rα配列の一部を含む。また、例示的なIL-3Rαの部分配列およびフラグメントは、免疫原性部分、例えば、本発明の例示的IL-3Rα抗体が結合する配列を含むIL-3Rαの一部も含む。
【0049】
本発明によれば、IL-3Rα抗体および非改変または参照IL-3Rα抗体の機能または活性の少なくとも一部を保持するIL-3Rα抗体部分配列またはフラグメントをコードする核酸が提供される。本明細書において、用語「部分配列」または「フラグメント」とは、全長分子の一部分を意味する。IL-3Rα抗体の部分配列は、全長IL-3Rα抗体よりも少なくとも1個少ないアミノ酸(例えば、アミノまたはカルボキシ末端のいずれかからの1個以上の内部または末端アミノ酸の欠失)を有する。IL-3Rα抗体の部分配列は、全長IL-3Rα抗体よりも少なくとも1個少ないアミノ酸を有する。核酸部分配列は、全長比較核酸配列よりも少なくとも1個少ないヌクレオチドを有する。よって、部分配列は、全長天然IL-3Rαまでの任意の長さであり得る。
【0050】
IL-3Rα抗体部分配列およびフラグメントは、全長抗体としての結合親和性、全長抗体としての結合特異性、または全長抗体としての1種以上の活性または機能、例えば、IL-3Rαアンタゴニストまたはアゴニスト抗体の機能または活性を有し得る。抗体に関する場合の用語「機能的部分配列」および「機能的フラグメント」とは、全長参照抗体としての1種以上の機能または活性、例えば、IL-3Rα抗体の機能または活性の少なくとも一部を保持する抗体部分を意味する。例えば、IL-3RαまたはIL-3Rαの断片と結合する抗体部分配列またはフラグメントは機能的部分配列と考えられる。
【0051】
抗体部分配列およびフラグメントは組み合わせることができる。例えば、VLまたはVH部分配列は、リンカー配列によって連結することができ、それによってVL-VHキメラを形成することができる。単鎖Fv(scFv)部分配列の組合せは、リンカー配列によって連結することができ、それによってscFv-scFvキメラを形成することができる。IL-3Rα抗体部分配列およびフラグメントは、単鎖抗体または可変領域を単独であるいは他のIL-3Rα抗体部分配列の全てまたは一部と組み合わせて含む。
【0052】
抗体部分配列およびフラグメントは、抗体のタンパク質分解による加水分解、例えば、全抗体のペプシンまたはパパイン消化により調製することができる。ペプシンでの酵素的切断によってもたらされた抗体部分配列およびフラグメントは、F(ab')2として示される5Sフラグメントを与える。このフラグメントは、チオール還元剤を用いてさらに切断することができ、3.5SFab'一価フラグメントを作り出すことができる。あるいは、ペプシンを用いた酵素的切断では、2つの一価Fab'フラグメントとFcフラグメントとが直接もたらされる(例えば、米国特許第4,036,945号および同第4,331,647号; およびEdelmanら,MethodsEnymol.1:422(1967)参照)。他の抗体切断方法、例えば一価軽鎖-重鎖フラグメントを形成するための重鎖の分離、フラグメントのさらなる切断、または他の酵素的もしくは化学的な方法も使用してよい。
【0053】
タンパク質および抗体、ならびにそれらの部分配列およびフラグメントは、遺伝子工学的方法により作り出すことができる。技術は、タンパク質または抗体をコードする遺伝子の全てまたは一部を、Cos細胞または大腸菌(E.coli)などの宿主細胞中で発現させることを含む。組換え宿主細胞は、全長または部分配列、例えば、scFvを合成する(例えば、Whitlowら, In: Methods: A Companion to Methods inEnzymology 2:97 (1991)、Birdら, Science 242:423 (1988); および米国特許第4,946,778号参照)。単鎖Fvおよび抗体は、米国特許第4,946,778号および同第5,258,498号; Huston ら, Methods Enzymol 203:46(1991);Shuら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:7995 (1993);およびSkerra ら, Science 240:1038(1988)、に記載されるとおりの手順で作製することができる。
【0054】
修飾形態には、誘導体化された配列、例えば、遊離アミノ基がアミン塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボベンゾキシ基を形成しており;遊離カルボキシ基が塩、メチルおよびエチルエステルを形成しており; 遊離ヒドロキシル基(freehydroxl groups)がO-アシルまたはO-アルキル誘導体を形成しているアミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸誘導体、例えば、4-ヒドロキシプロリン(プロリンの誘導体)、5-ヒドロキシリジン(リジンの誘導体)、ホモセリン(セリンの誘導体)、オルニチン(リジンの誘導体)などが含まれる。修飾は、当技術分野で公知の方法(例えば、PCRに基づく部位特異的、欠失および挿入突然変異誘発、化学修飾および突然変異誘発、架橋など)を用いて行うことができる。
【0055】
タンパク質(例えば、抗体)、核酸、および他の組成物の修飾形態には、付加物および挿入物が含まれる。例えば、付加は、いずれもの種類の分子の、タンパク質(例えば、抗体)、核酸または他の組成物との共有または非共有結合であり得る。一般に、付加および挿入は異なる機能または活性を与える。
付加物および挿入物には、融合(キメラ)ポリペプチドまたは核酸配列が含まれ、それらは前記配列と共有結合した参照天然(野生型)配列中には通常存在しない1種以上の分子を有する配列である。特定の例は、多機能タンパク質(例えば、多重特異性抗体)を作り出すための別のタンパク質(例えば、抗体)のアミノ酸配列である。
【0056】
また、本発明の抗体には、異なるまたは補助機能または活性を与えるために、1つ以上の追加ドメインが共有結合しているキメラまたは融合物も含まれる。抗体には、2つ以上のアミノ酸配列が互いに結合されている、自然界では本来存在しないキメラまたは融合物が含まれる。
本発明によれば、異種ドメインを含むIL-3Rα抗体およびIL-3Rα抗体をコードする核酸が提供される。異種ドメインは、アミノ酸付加物または挿入物であり得るが、アミノ酸残基に限定されない。よって、異種ドメインは、種々の異なる種類の小型または大型機能的部分のいずれかからなり得る。そのような部分には、核酸、ペプチド、炭水化物、脂質または小有機化合物、例えば薬物、金属(金、銀)などが含まれる。
【0057】
異種ドメインの非限定的な特定例としては、例えば、タグ、検出可能な標識および細胞傷害性薬剤が挙げられる。タグおよび検出可能な標識の特定の例としては、T7-、His-、myc-、HA-およびFLAG-タグ;酵素(セイヨウワサビペルオキシダーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールトランスフェラーゼ);酵素基質;リガンド(例えば、ビオチン);受容体(アビジン);放射性核種(例えば、C14、S35、P32、P33、H3、I125およびI131);電子密度試薬;エネルギー伝達分子;常磁性標識;フルオロフォア(フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン);発色団;化学発光剤(イミダゾール、ルシフェラーゼ);および生物発光剤が挙げられる。細胞傷害性薬剤の特定の例としては、ジフテリア毒素(diptheria, toxin)、コレラ毒素およびリシンが挙げられる。
【0058】
タンパク質(例えば、抗体)、核酸、または他の組成物と付加物または挿入物(例えば、異種ドメイン)との間に、2つの実体が異なる機能または活性を少なくとも一部維持するように、リンカー配列を挿入してよい。リンカー配列は、どちらかのドメインを促進することができまたはどちらかのドメインと相互作用することができる1種以上の特性を有していてよく、そのような特性には、フレキシブル構造、秩序二次構造が形成不能であることまたは疎水性もしくは荷電性が含まれる。フレキシブルタンパク質領域において一般に見られるアミノ酸には、グリシン、アスパラギンおよびセリンが含まれる。他の中性に近いアミノ酸、例えばトレオニンおよびアラニンもまた、リンカー配列に用いてよい。リンカー配列の長さは変動し得る(例えば、米国特許第6,087,329号参照)。リンカーには、化学架橋剤および結合剤(conjugatingagents)、例えばスルホ−スクシンイミジル誘導体(スルホ−SMCC、スルホ−SMPB)、スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)、グルタル酸ジスクシンイミジル(DSG)および酒石酸ジスクシンイミジル(DST)がさらに含まれる。
【0059】
付加のさらなる例としては、グリコシル化、脂肪酸、脂質、アセチル化、リン酸化、アミド化、ホルミル化、ユビキチン化、および保護または遮断基による誘導体化ならびに数多くの化学修飾のうちのいずれかが挙げられる。他の置換および可能性については当業者ならば容易に分かり、本発明の範囲内であると考えられる。
そのような修飾配列は、細胞発現またはinvitro翻訳を介する組換えDNA技術を用いて作製することができる。ポリペプチドおよび核酸配列は、当技術分野で公知の方法、例えば、自動ペプチド合成装置(例えば、Applied Biosystems, Foster City, CA参照)を用いた化学合成によっても作り出すことができる。
【0060】
置換物、部分配列および付加物などの修飾および変異抗体は、IL-3Rα抗体の検出可能な活性を保持することができるものである。一実施形態では、修飾抗体は、IL-3Rα分子への結合活性を有し、エフェクター細胞を中心とした免疫システムによるIL-3Rα発現細胞の低減または除去を誘導する。IL-3Rα発現細胞の機能制御に関与し、細胞の生存、増殖、休止、細胞死などを誘導する。細胞死には、アポトーシス、ネクローシス、オートファジーなどを含む。
(IL-3Rαのスクリーニング方法)
本発明によれば、IL-3Rαをスクリーニングし、検出し、同定する無細胞方法(例えば、溶液中で、固相で)および細胞に基づいた方法(例えば、in vitroまたはinvivo)がさらに提供される。これらの方法は、溶液中で、invitroで生体材料またはサンプルを用いて、およびinvivoで、例えば、動物由来の細胞(例えば、リンパ球)のサンプルにおいて実施することができる。一実施形態では、方法は、生体材料またはサンプルを、IL-3Rαとの抗体の結合を可能にする条件下でIL-3Rαと結合する抗体と接触させることと;IL-3Rαとの抗体の結合についてアッセイすることとを含む。抗体をIL-3Rαと結合させることによりIL-3Rαの存在が検出される。一態様では、IL-3Rαは細胞または組織に存在する。別の態様では、前記生体材料またはサンプルは哺乳類被験体から得られる。
【0061】
組成物例えばタンパク質(例えば、IL-3Rα抗体)、材料、サンプル、または処置に関して用いられる場合の用語「接触させること」とは、その組成物(例えば、IL-3Rα抗体)と他の参照される実体との直接または間接相互作用を意味する。直接相互作用の特定の例は結合である。間接相互作用の特定の例は、組成物が中間分子に作用し、この中間分子が次に参照される実体に作用するという場合である。従って、例えば、細胞(例えば、リンパ球)をIL-3Rα抗体と接触させることには、その抗体を(例えば、IL-3Rαとの結合を通じて)その細胞と結合させること、またはその抗体を中間物に作用させ、この中間物が次にその細胞に作用することが含まれる。
【0062】
用語「アッセイすること」および「測定すること」ならびにその文法上の変形は、本明細書において同義的に用いられ、定性的測定または定量的測定のいずれか、あるいは定性的測定および定量的測定の両方を指す。これらの用語が結合に関して用いられる場合、本明細書に記載されており、当技術分野で公知の様々な方法を含む、相対量、結合の親和性または特異性を評価するいずれもの手段が意図される。例えば、IL-3RαとのIL-3Rα抗体の結合は、フローサイトメトリーアッセイによってアッセイまたは測定することができる。
(抗体の調製)
本発明は、IL-3Rα陽性細胞傷害活性を有するヒトIL-3Rα抗体を作製するための方法も提供する。一実施形態では、方法は、ヒトFc組換えタンパク質とコンジュゲートされたヒトIL-3Rα細胞外ドメインまたはIL-3Rα遺伝子導入細胞を、ヒト免疫グロブリンを発現可能な動物(例えば、トランスジェニックマウスまたはトランスジェニックウシ)に投与すること;該動物をヒトIL-3Rα抗体の発現についてスクリーニングすること;ヒトIL-3Rα抗体を産生する動物を選択すること;選択された動物から抗体を単離することを含む。
【0063】
抗体作製に適したIL-3Rαタンパク質は、種々の標準的なタンパク質精製または組換え発現技術のうちのいずれかによって作り出すことができる。例えば、IL-3Rα配列は、標準的なペプチド合成技術、例えば固相合成によって作り出すことができる。タンパク質の一部分には、発現または合成されたタンパク質の精製を容易にするために、FLAGタグ、T7タグまたはポリヒスチジン配列などのアミノ酸配列を含んでよい。そのタンパク質は細胞中で発現され、精製され得る。そのタンパク質は、組換え法によってより大きなタンパク質(例えば、融合物またはキメラ)の一部として発現され得る。免疫応答を起こすのに適したIL-3Rαの形態には、IL-3Rα部分配列、例えば免疫原性フラグメントが含まれる。さらなる形態のIL-3Rαとしては、IL-3Rα発現細胞、IL-3Rα含有調製物または細胞抽出物もしくは画分、部分精製IL-3Rαが挙げられる。
【0064】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を作製する方法は、当技術分野で公知である。例えば、IL-3Rαまたはその免疫原性フラグメントは、所望により、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)またはオボアルブミン(例えば、BSA)などの担体とコンジュゲートされ、あるいはフロイント完全または不完全アジュバントなどのアジュバントと混合され、動物を免疫するために使用される。ハイブリドーマ技術を用いて、IL-3Rαに応答する免疫動物由来の脾細胞を単離し、骨髄腫細胞と融合することができる。ハイブリドーマによって産生されたモノクローナル抗体は、IL-3Rαまたはその免疫原性フラグメントとの反応性についてスクリーニングすることができる。
【0065】
免疫し得る動物には、霊長類、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、またはモルモットが含まれる。初回および任意選択の追加免疫は、静脈内経路、腹腔内経路、筋肉内経路、または皮下経路によるものであってよい。さらに、免疫応答を高めるために、抗原を、オボアルブミンまたはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、チログロブリンおよび破傷風トキソイドなどの別のタンパク質と結合することができ、あるいはフロイント完全または不完全アジュバントなどのアジュバントと混合することができる。初回および任意選択の追加免疫は、腹腔内経路、筋肉内経路、眼球内経路、または皮下経路によるものであってよい。追加免疫は、同じ濃度または異なる濃度のIL-3Rα調製物であってよく、規則または不規則な間隔であってよい。
【0066】
動物には、ヒト遺伝子座を含むように遺伝子修飾されたものが含まれ、それを用いて、ヒト抗体を作り出すことができる。1種以上のヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニック動物については、例えば、米国特許第5,939,598号、WO02/43478、およびWO 02/092812に記載されている。従来のハイブリドーマ技術を用いて、抗原に対して高応答物である免疫マウス由来の脾細胞を単離し、骨髄腫細胞と融合することができる。IL-3Rαと結合するモノクローナル抗体を得ることができる。
【0067】
ヒトポリクローナル抗体およびヒトモノクローナル抗体を作製するためのさらなる方法は記載されている(例えば、Kuroiwaら,Nat. Biotechnol. 20:889 (2002); WO98/24893;WO92/01047; WO96/34096; WO96/33735;米国特許第5,413,923号; 同第5,625,126号; 同第5,633,425号; 同第5,569,825号; 同第5,661,016号; 同第5,545,806号; 同第5,814,318号; 同第5,885,793号; 同第5,916,771号; および同第5,939,598号参照)。
【0068】
抗体に関して用いられる場合の用語「ヒト」とは、抗体のアミノ酸配列が完全にヒトアミノ酸配列、すなわちヒト重鎖およびヒト軽鎖可変領域およびヒト定常領域であるということを意味する。よって、アミノ酸の全ては、ヒトアミノ酸でありまたはヒト抗体中に存在するものである。非ヒト抗体である抗体は、非ヒトアミノ酸残基をヒト抗体中に存在するアミノ酸残基と置き換えることによって完全ヒト抗体にし得る。ヒト抗体中に存在するアミノ酸残基、CDR領域マップおよびヒト抗体コンセンサス残基については、当技術分野で公知である(例えば、Kabat, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第4版 USDepartmentofHealthandHumanServices.PublicHealthService(1987);ChothiaおよびLesk(1987)参照。22の既知ヒトVHIII配列を対象にした調査に基づいたヒトVHサブグループIIIのコンセンサス配列、および30の既知ヒトκ I配列を対象にした調査に基づいたヒトVL κ鎖サブグループIのコンセンサス配列については、Padlan Mol. Immunol.31:169(1994); およびPadlanMol.Immunol.28:489(1991)に記載されている。 よって、ヒト抗体には、1個以上のアミノ酸残基が任意の他のヒト抗体中に存在する1個以上のアミノ酸と置換されている抗体が含まれる。
【0069】
IL-3Rα抗体には、例えば、CDRグラフティング(CDR-grafting)(EP 239,400; W091/09967; 米国特許第5,225,539号; 同第5,530,101号; および同第5,585,089号)、ベニヤリング(veneering)またはリサーフェイシング(resurfacing)(EP592,106;EP519,596;Padlan,MolecularImmunol.28:489(1991);Studnickaら,ProteinEngineering7:805(1994);Roguska.ら,Proc.Nat'lAcad.Sci.USA91:969(1994))、およびチェーンシャッフリング(chainshuffling)(米国特許第5,565,332号)などの当技術分野で公知の技術を用いて作り出すことができるヒト化抗体が含まれる。ヒト化抗体を作り出すには、これまでヒトコンセンサス配列(Padlan, Mol. Immunol. 31:169 (1994); およびPadlan,Mol.Immunol.28:489(1991))が用いられてきた(Carter ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:4285(1992);およびPresta ら,J.Immunol. 151:2623(1993))。
【0070】
抗体に関して用いられる場合の用語「ヒト化」とは、抗体のアミノ酸配列がアクセプターヒト免疫グロブリン分子中に所望の抗原と特異的に結合する1以上の相補性決定領域(CDR)の非ヒトアミノ酸残基(例えば、マウス、ラット、ヤギ、ウサギなど)と、Fvフレームワーク領域(FR)中に1以上のヒトアミノ酸残基(CDRにフランキングするアミノ酸残基である)とを有するということを意味する。「霊長類化」と呼ばれる抗体は、アクセプターヒト免疫グロブリン分子およびフレームワーク領域のアミノ酸残基が任意のヒト残基に加えて、任意の霊長類アミノ酸残基(例えば、サル、テナガザル、ゴリラ、チンパンジーオランウータン、マカクザル)であり得るということを除けば、「ヒト化」の意味の範囲内である。免疫グロブリンのヒトFR残基は、対応する非ヒト残基と置き換えることができる。よって、例えば、抗原親和性または特異性を改変する、一般には高めるために、CDRまたはヒトフレームワーク領域中の残基を、非ヒトCDRまたはフレームワーク領域ドナー抗体由来の対応する残基と置き換えることができる。ヒト化抗体は、ヒト抗体にもドナーCDRまたはフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。例えば、ヒト抗体またはドナー非ヒト抗体には見られない特定位置でのFR置換は、その位置において結合親和性または特異性ヒト抗体を改善すると予測され得る。分子モデリングに基づく抗体フレームワークおよびCDR置換は、当技術分野では周知であり、例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するためのCDRとフレームワーク残基の相互作用のモデリングや特定位置における異常フレームワーク残基を同定するための配列比較による(例えば、米国特許第5,585,089号;およびRiechmannら, Nature 332:323 (1988)参照)。
【0071】
IL-3Rα抗体にはキメラ抗体が含まれる。本明細書において、抗体に関して用いられる場合の用語「キメラ」およびその文法上の変形は、抗体のアミノ酸配列が、2つ以上の異なる種に由来する、2つ以上の異なる種から得られるまたは単離される、あるいは2つ以上の異なる種に基づく1以上の部分を含有するということを意味する。例えば、抗体の一部分はヒト(例えば、定常領域)であり得、抗体の別の部分は非ヒト(例えば、ネズミ重鎖またはネズミ軽鎖可変領域)であり得る。よって、キメラ抗体の例は、抗体の異なる部分が異なる種起源のものである抗体である。キメラ抗体は、ヒト化または霊長類化抗体とは異なり、抗体の任意の領域に異なる種の配列を有し得る。
【0072】
キメラ抗体を作製するための方法は当技術分野で公知である(例えば、Morrison,Science229:1202(1985);Oiら, BioTechniques 4:214(1986);Gillies ら,J.Immunol.Methods125:191(1989);ならびに米国特許第5,807,715号; 同第4,816,567号;および同第4,816,397号)。例えば、Munro,Nature312:597(1984);Neuberger ら,Nature312:604(1984);Sharonら, Nature 309:364(1984);Morrison ら,Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA81:6851(1984);Boulianneら,Nature312:643(1984);Caponら,Nature337:525(1989);およびTrauneckerら,Nature339:68(1989)では、ある種の抗体由来の可変領域が別の種の可変領域と置換されているキメラ抗体が記載されている。
【0073】
また、IL-3Rα抗体は、ハイブリドーマ技術、組換え技術、およびファージディスプレイ技術、またはそれらの組合せを利用しても作製することができる(米国特許第4,902,614号、同第4,543,439号、および同第4,411,993号参照;MonoclonalAntibodies.Hybridomas:ANewDimensioninBiologicalAnalyses,PlenumPress,Kennett,McKearn,およびBechtol(編),1980年、およびHarlowら,Antibodies:ALaboratoryManual,ColdSpringHarborLaboratoryPress,第2版1988年も参照のこと)。
【0074】
本発明のヒト抗ヒトIL-3Rα抗体は、様々な形態の可溶化型組換えヒトIL-3Rαタンパク質またはIL-3Rαを発現する細胞株で免疫した染色体導入マウス(KM mice(商標))を用いて生産された(WO02/43478、WO 02/092812、およびIshida, ら, IBC's 11th Antibody Engineering Meeting. Abstract (2000))。ヒト抗ヒトIL-3Rα抗体は、非形質転換親細胞系ではなく、ヒトIL-3Rα安定トランスフェクト細胞系、例えばJurkat-IL-3Rα細胞およびL929-IL-3Rα細胞を検出可能なように染色し、その抗体がヒトIL-3Rαと特異的に結合することを示した。
【0075】
本発明の抗体は、κ軽鎖配列またはλ軽鎖配列、天然に存在する抗体にあるような、どちらか一方の全長、それらの混合物(すなわちκ鎖配列とλ鎖配列との融合物)、およびそれらの部分配列/フラグメントを有し得る。天然に存在する抗体分子には、2つのκ軽鎖または2つのλ軽鎖が含まれている。
本発明によれば、IL-3Rαと特異的に結合する抗体を作製する方法がさらに提供される。一実施形態では、IL-3Rα抗体を作製するための方法は、所望により、ヒトFc組換えタンパク質とコンジュゲートされた、ヒトIL-3Rα、部分配列またはフラグメント(例えば、IL-3Rα細胞外ドメイン)を、ヒト免疫グロブリンを発現可能な動物(例えば、トランスジェニックマウスまたはトランスジェニックウシ)に投与すること、その動物をヒトIL-3Rα抗体の発現についてスクリーニングすること、ヒトIL-3Rα抗体を産生する動物を選択すること、及び選択された動物から抗体を単離することを含む。一態様では、この方法によりヒトIL-3Rα抗体がIL-3Rαアンタゴニストまたはアゴニスト活性を有するかどうかが判定される。
【0076】
エフェクター活性とは、抗体のFc領域を介して引き起こされる抗体依存性の活性をいい、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性)、補体依存性傷害活性(CDC活性)や、マクロファージや樹状細胞などの食細胞による抗体依存性ファゴサイトーシス(Antibodydependentphagocytosis,ADP活性)などが知られている。
本発明の抗IL-3Rαモノクローナル抗体のエフェクター活性を制御する方法としては、抗体のFc領域の297番目のアスパラギン(Asn)に結合するN結合複合型糖鎖の還元末端に存在するN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)にα-1,6結合するフコース(コアフコースともいう)の量を制御する方法(WO2005/035586、WO2002/31140、WO00/61739)や、抗体のFc領域のアミノ酸残基を改変することで制御する方法などが知られている。本発明の抗IL-3Rαモノクローナル抗体にはいずれの方法を用いても、エフェクター活性を制御することができる。
【0077】
抗体のFcのN結合複合型糖鎖のコアフコースの含量を制御することで、抗体のエフェクター活性を増加または低下させることができる。抗体のFcに結合しているN結合複合型糖鎖に結合するフコースの含量を低下させる方法としては、デフコース化(defucosylatedor non-fucosylated)が挙げられる。デフコース化とは、α1,6−フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞を用いて抗体を発現することであり、フコースが結合していない抗体を取得することができる。フコースが結合していない抗体は高いADCC活性を有する。一方、抗体のFcに結合しているN結合複合型糖鎖に結合するフコースの含量を増加させる方法としては、α1,6−フコース転移酵素遺伝子を導入した宿主細胞を用いて抗体を発現させることで、フコースが結合している抗体を取得できる。フコースが結合している抗体は、フコースが結合していない抗体よりも低いADCC活性を有する。
【0078】
また、抗体のFc領域のアミノ酸残基を改変することでADCC活性やCDC活性を増加または低下させることができる。例えば、US2007/0148165に記載のFc領域のアミノ酸配列を用いることで、抗体のCDC活性を増加させることができる。また、US6,737,056、US7,297,775、やUS7,317,091に記載のアミノ酸改変を行うことで、ADCC活性またはCDC活性を、増加させることも低下させることもできる。更に、上述の方法を組み合わせて、一つの抗体に使用することにより、抗体のエフェクター活性が制御された抗体を取得することができる。
本発明によれば、ベクターなどの本発明の核酸配列がさらに提供される。一実施形態では、ベクターには、IL-3Rα抗体、その部分配列またはフラグメントをコードする核酸配列が含まれる。
【0079】
核酸は、様々な長さのものであり得る。本発明IL-3Rα抗体またはその部分配列をコードする核酸の長さは、一般に、約100個ヌクレオチド〜600個ヌクレオチド、あるいはそのような長さの範囲以内での任意の数値または数値域、100〜150個、150〜200個、200〜250個、250〜300個、300〜350個、350〜400個、400〜450個、450〜500個、500〜550個、または約550〜600個ヌクレオチド長、あるいはそのような長さの範囲以内での任意の数値または数値域または値(anynumerical value or range or value)に及ぶ。本発明IL-3Rα抗体またはその部分配列をコードする核酸と特異的にハイブリダイズする核酸の長さは、一般に、約10〜20個、20〜30個、30〜50個、50〜100個、100〜150個、150〜200個、200〜250個、250〜300個、300〜400個、400〜500個、500〜600個ヌクレオチド、あるいはそのような長さの範囲以内での任意の数値または数値域に及ぶ。
【0080】
用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」とは、リン酸エステル結合または同等物によって結合された少なくとも2つ以上のリボ-またはデオキシ-リボ核酸塩基対(ヌクレオチド)を指す。核酸には、ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオシドが含まれる。核酸には、単一分子、二重分子または三重分子、環状分子または線状分子が含まれる。例示的な核酸としては、限定されるものではないが:RNA、DNA、cDNA、ゲノム核酸、天然に存在する核酸および非天然核酸、例えば、合成核酸が挙げられる。短い核酸およびポリヌクレオチド(例えば、10〜20個、20〜30個、30〜50個、50〜100個ヌクレオチド)は、一般に、「オリゴヌクレオチド」または一本鎖もしくは二本鎖DNAの「プローブ」と呼ばれる。
【0081】
核酸は、様々な標準的なクローニング技術および化学合成技術を用いて作り出すことができる。技術としては、限定されるものではないが、抗体コード配列とアニーリング可能なプライマー(例えば、縮重プライマー混合物)を用いたゲノムDNAまたはcDNA標的の核酸増幅、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が挙げられる。また、核酸は、化学合成(例えば、固相ホスホアミダイト合成)または遺伝子からの転写によっても作り出すことができる。作り出された配列は、その後、in vitroで翻訳し、またはプラスミドにクローニングし、増殖させた後、細胞(例えば、宿主細胞例えば酵母または細菌、真核生物(動物または哺乳類細胞あるいは植物など))で発現させることができる。
【0082】
ベクターは、核酸の挿入または取り込みにより操作することができる媒介物である。ベクターとしては、プラスミドベクター、ウイルスベクター、原核生物(細菌)ベクターおよび真核生物(植物、菌類、哺乳類)ベクターが挙げられる。ベクターは、in vitroでまたはinvivoでの核酸の発現のために用いることができる。そのようなベクターは、「発現ベクター」と呼ばれ、IL-3Rα抗体、その部分配列およびフラグメントをコードする核酸をはじめとする核酸の導入や、コードされるタンパク質のin vitroで(例えば、溶液中でまたは固相において)、細胞においてまたはinvivoで被験体においての発現に有用である。
【0083】
また、ベクターは、核酸の操作にも用いることができる。遺伝子操作では、「クローニングベクター」を使用して、invitroで(例えば、溶液中でまたは固相において)、細胞においてまたはin vivoで被験体において、挿入された核酸を転写または翻訳することができる。
ベクターは、一般に、invitroでまたはin vivoでの細胞における増殖のための複製起点を含む。ベクター内に存在する発現制御エレメントなどの制御エレメントは、必要に応じて、転写および翻訳を容易にするために含めることができる。
【0084】
ベクターは選択マーカーを含む場合がある。「選択マーカー」は、遺伝子を含有する細胞の選択を可能にする遺伝子である。「正の選択」とは、正の選択が起こって、選択マーカーを含有する細胞を選択するプロセスを指す。薬剤耐性が正の選択マーカーの一例であり、マーカーを含有する細胞は薬剤含有培養培地中で生存し、マーカーのない細胞は死滅する。選択マーカーとしては、G418耐性を与えるneo;ハイグロマイシン耐性を与えるhygr;およびピューロマイシン耐性を与えるpuroなどの薬剤耐性遺伝子が挙げられる。他の正の選択マーカー遺伝子には、マーカーを含有する細胞の同定またはスクリーニングを可能にする遺伝子が含まれる。これらの遺伝子としては、とりわけ、蛍光タンパク質(GFPおよびGFP様発色団、ルシフェラーゼ)遺伝子、lacZ遺伝子、アルカリ性ホスファターゼ遺伝子、およびCD8などの表面マーカーが挙げられる。「負の選択」とは、適切な負の選択薬剤に暴露して、負の選択マーカーを含有する細胞を死滅させるプロセスを指す。例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子を含有する細胞(Wiglerら、Cell 11 :223 (1977))は薬剤ガンシクロビル(GANC)に対して感受性である。同様に、gpt遺伝子は細胞を6-チオキサンチン感受性にする。
【0085】
ウイルスベクターには、レトロウイルス(retroviral)(分裂細胞だけでなく非分裂細胞にも感染させるためのレンチウイルス)、泡沫状ウイルス(米国特許第5,624,820号、同第5,693,508号、同第5,665,577号、同第6,013,516号および同第5,674,703号; WO92/05266およびWO92/14829)、アデノウイルス(米国特許第5,700,470号、同第5,731,172号および同第5,928,944号)、アデノ随伴ウイルス(AAV)(米国特許第5,604,090号)、単純ヘルペスウイルスベクター(米国特許第5,501,979号)、サイトメガロウイルス(CMV)系ベクター(米国特許第5,561,063号)、レオウイルス、ロータウイルスゲノム、シミアンウイルス40(SV40)または乳頭腫ウイルス(Cone ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA81:6349(1984);EukaryoticViralVectors,ColdSpringHarborLaboratory,Gluzman編, 1982年;Sarver ら,Mol.Cell.Biol.1:486 (1981); 米国特許第5,719,054号)に基づくものが含まれる。アデノウイルスはゆっくりと複製するかつ/または最終分化した細胞に効率よく感染し、このアデノウイルスを用いて、ゆっくりと複製する細胞かつ/または最終分化した細胞を標的にすることができる。発現に有用なさらなるウイルスベクターとしては、パルボウイルス、ノーウォークウイルス、コロナウイルス、パラミクソウイルスおよびラブドウイルス、トガウイルス(例えば、シンドビスウイルスおよびセムリキ森林ウイルス)ならびに水疱性口内炎ウイルス(VSV)が挙げられる。
【0086】
核酸を含むベクターは、その核酸が発現制御エレメントに機能しうる形で連結されている場合に、発現され得る。用語「機能しうる形で連結された」(operably linked)とは、それに関するエレメント間の物理的または機能的関係によりそれらのエレメントが意図されたように機能することが可能になるということを指す。よって、発現制御エレメントに「機能しうる形で連結された」核酸とは、制御エレメントが核酸転写、必要に応じて、その転写物の翻訳をモジュレートするということを意味する。
【0087】
「発現制御エレメント」または「発現制御配列」は、機能しうる形で連結された核酸の発現に影響を及ぼすポリヌクレオチドである。プロモーターおよびエンハンサーは、発現制御エレメントおよび配列の非限定的な特定例である。「プロモーター」は、下流(3'方向)核酸配列の転写を開始可能なシス作用DNA調節領域である。プロモーター配列には、転写開始を促進するヌクレオチドが含まれる。エンハンサーも核酸発現を調節するが、それが機能しうる形で連結されている核酸の転写開始部位から離れて作用する。エンハンサーは、核酸の5'または3'末端のいずれかに存在する場合、さらに核酸内(例えば、イントロンまたはコード配列)に存在する場合にも作用する。さらなる発現制御エレメントとしては、リーダー配列および融合パートナー配列、多重遺伝子の作出のための内在性リボソーム結合部位(IRES)エレメント、またはポリシストロン性メッセージ、イントロンのスプライシングシグナル、mRNAのインフレーム翻訳を可能にするための遺伝子の正確なリーディングフレームの維持、目的の転写物の適切なポリアデニル化をもたらすポリアデニル化シグナル、および停止コドンが挙げられる。
【0088】
発現制御エレメントには、機能しうる形で連結された核酸の転写がシグナルまたは刺激不在で起こる「構成的」エレメントが含まれる。シグナルまたは刺激に応答して発現を与え、機能しうる形で連結された核酸の発現を増減する発現制御エレメントは、「調節可能である」。シグナルまたは刺激に応答して機能しうる形で連結された核酸の発現を増加する調節可能なエレメントは、「誘導エレメント」と呼ばれている。シグナルまたは刺激に応答して機能しうる形で連結された核酸の発現を減少する調節可能なエレメントは、「抑制エレメント」(すなわち、シグナルは発現を減少し;そのシグナルが除去されまたは存在しない場合に、発現が増加する)と呼ばれている。
【0089】
細菌の発現では、構成的プロモーターには、T7、ならびにバクテリオファージλのpL、plac、ptrp、ptac(ptrp-lacハイブリッドプロモーター)などの誘導プロモーターが含まれる。昆虫細胞系では、構成的または誘導プロモーター(例えば、エクジソン)が用いられ得る。酵母では、構成的プロモーターには、例えば、ADHまたはLEU2およびGALなどの誘導プロモーターが含まれる(例えば、Ausubel ら,In:CurrentProtocolsinMolecularBiology,第2巻,第13章, GreenePublish. Assoc. &WileyInterscience編, 1988年;Grant ら,In:MethodsinEnzymology,153:516-544(1987),Wu&Grossman編,1987年,Acad.Press,N.Y.;Glover,DNACloning, 第II巻, 第3章,IRLPress,Wash.,D. C., 1986年;Bitter,In:MethodsinEnzymology,152:673-684(1987),Berger&Kimmel編,Acad.Press, N.Y.; および,Strathern ら,TheMolecular BiologyoftheYeastSaccharomyces ColdSpringHarborPress編, 第I巻および第II巻 (1982)参照)。
【0090】
哺乳類の発現では、ウイルスまたは他の起源の構成的プロモーターが用いられ得る。例えば、CMV、SV40、またはウイルスの長い末端反復配列(LTR)など、または哺乳類細胞のゲノム(例えば、メタロチオネインIIAプロモーター;熱ショックプロモーター、ステロイド/甲状腺ホルモン/レチノイン酸応答エレメント)もしくは哺乳類ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;マウス乳癌ウイルスLTR)由来の誘導プロモーターが用いられる。
【0091】
発現制御エレメントには、特定の組織または細胞種において活性なエレメントが含まれ、このようなエレメントは「組織特異的発現制御エレメント」と呼ばれている。組織特異的発現制御エレメントは、一般に、特定の細胞または組織種においてより活性が高いが、これはこの組織特異的発現制御エレメントが、他の細胞または組織種と比べて、その特定の細胞または組織種において活性な転写活性化タンパク質、または他の転写調節因子により認識されるためである。そのような発現制御エレメントの非限定的な特定例は、ヘキソキナーゼII、COX-2、α-フェトプロテイン、癌胎児性抗原、DE3/MUC1、前立腺特異的抗原、C-erB2/neu、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)、テロメラーゼ逆転写酵素および低酸素症-応答性プロモーターなどのプロモーターである。
【0092】
本発明によれば、本発明のIL-3Rα核酸またはベクターで形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞が提供される。宿主細胞としては、限定されるものではないが、原核細胞および真核細胞、例えば細菌、真菌(酵母)、植物、昆虫、および動物(例えば、霊長類およびヒトなどの哺乳類)の細胞が挙げられる。形質転換細胞の非限定的な例としては、組換えバクテリオファージ核酸、プラスミド核酸またはコスミド核酸発現ベクターで形質転換された細菌;組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)に感染させたまたは組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞;組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞;および組換えウイルス発現ベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)に感染させた動物細胞、または安定な発現のために操作された形質転換動物細胞が挙げられる。IL-3Rα抗体、その部分配列およびフラグメントを発現する哺乳類宿主細胞の非限定的な例にはCHO細胞がある。宿主細胞は、初代細胞分離株、単離された二次細胞または継代培養細胞、あるいは株化細胞または不死化細胞培養物由来の複数の細胞または細胞集団であってよい。
【0093】
細胞(例えば、宿主細胞)または生物に関して用いられる場合の用語「形質転換された」または「トランスフェクトされた」とは、外因性分子、例えば、タンパク質または核酸(例えば、トランスジーン)の細胞への取り込み後の細胞における遺伝子変化を意味する。よって、「トランスフェクトされた」または「形質転換された」細胞は、外因性分子が人の手で、例えば、組換えDNA技術により導入されている細胞、またはその後代である。
【0094】
核酸またはタンパク質は、細胞およびその後代において安定にまたは一時的にトランスフェクトまたは形質転換(発現)することができる。細胞を増殖させ、導入したタンパク質を発現させることができ、または核酸を転写することができる。複製中に起こる突然変異が存在する可能性があるため、トランスフェクトまたは形質転換細胞の後代は、親細胞と同一ではない場合がある。
【0095】
一般に、細胞トランスフェクションまたは形質転換ではベクターを使用する。ベクターは、ウイルス粒子または小胞内に含めることができ、所望により、標的細胞リガンドまたは受容体と結合するその粒子または小胞表面にタンパク質を含めることによって特定の細胞種に向けることができる。よって、ウイルス粒子または小胞自体、あるいはウイルス表面のタンパク質を作って、in vitroで、exvivoでまたはinvivoでのトランスフェクションまたは形質転換を目的として細胞を標的にすることができる。従って、invitroで、in vivoでおよびexvivoでの細胞、組織または器官へのウイルスおよび非ウイルスベクター送達手法が含まれる。
【0096】
また、標的細胞(例えば、宿主細胞)への核酸の導入は、浸透圧衝撃(例えば、リン酸カルシウム)、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合などのような当技術分野で公知の方法によっても行うことができる。in vitroで、exvivoでおよびinvivoでの核酸およびポリペプチドの導入は、他の技術を用いても行うことができる。例えば、ポリエステル、ポリアミン酸、ヒドロゲル、ポリビニルピロリドン、エチレン-酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、硫酸プロタミン、またはラクチド/グリコリドコポリマー、ポリラクチド/グリコリドコポリマー、またはエチレン酢酸ビニルコポリマーなどのポリマー物質。核酸は、コアセルベーション技術によりまたは界面重合により、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン-マイクロカプセル、またはポリ(メチルメタクロレート)(poly(methylmethacrolate))マイクロカプセルを用いて調製したマイクロカプセル中に、あるいはコロイド系中に封入することができる。コロイド分散系には、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、および脂質に基づく系(水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームなど)が含まれる。
【0097】
様々な組成物を細胞に導入するためのリポソームは、当技術分野で公知であり、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、リポフェクチンおよびDOTAPが含まれる(例えば、米国特許第4,844,904号、同第5,000,959号、同第4,863,740号、および同第4,975,282号; ならびにGIBCO-BRL,Gaithersburg,Md)。遺伝子療法に有用なピペラジンに基づくアムフィリック陽イオン性脂質(piperazinebasedamphilic cationic lipids)も知られている(例えば、米国特許第5,861,397号参照)。陽イオン性脂質系も知られている(例えば、米国特許第5,459,127号参照)。本明細書において、ポリマー物質、マイクロカプセルおよびコロイド分散系(リポソームなど)をまとめて「小胞」と呼ぶ。
【0098】
さらに抗体製造方法において使用し得る好適な技術には、IL-3Rαに基づくアフィニティー精製、非変性ゲル精製、HPLCまたはRP-HPLC、サイズ排除、プロテインAカラムでの精製、あるいはこれらの技術の任意の組合せが含まれる。IL-3Rα抗体イソタイプは、ELISAアッセイを用いて決定することができ、例えば、マウスIg吸収抗ヒトIgを用いてヒトIgを同定することができる。
【0099】
結合親和性は、結合(Ka)および解離(Kd)速度によって決定することができる。平衡親和性定数、KDはKa/Kd比である。結合(Ka)および解離(Kd)速度は、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて測定することができる(RichおよびMyszka,Curr.Opin.Biotechnol11:54(2000);Englebienne,Analyst.123:1599(1998))。結合速度のリアルタイム検出およびモニタリングについての計装および方法は公知であり、市販されている(BiaCore 2000, Biacore AB, Upsala, Sweden; およびMalmqvist, Biochem. Soc. Trans. 27:335(1999))。KD値は、IL-3Rαにおける結合部位の半分(50%)を飽和させるのに必要なIL-3Rα抗体濃度として定義することができる。
(霊長類における交差性)
現在、500に及ぶ抗体医薬が世界で開発されているが、ヒト抗体は免疫原性の問題を回避できる可能性が高いとされている。しかし、一方ではヒト抗体はげっ歯類では薬効がまったく認められない場合が多い。その場合、毒性試験には霊長類が用いらざるを得ない場合が多く、チンバンジーのみに反応性が認められるという場合も少なくない。チンパンジーにしか薬理反応が認められない場合には、毒性試験の制約はさらに大きくなる。そもそもチンバンジー試験を実施可能な施設が極めて限られ、個体がHIVに感染していることも多く、試験従事者の労働衛生の問題も存在する。また、チンパンジーに関しては、最終投薬後の解剖試験は行えず、生殖毒性試験の実施も不可能であるなど、大きな制約がある。したがって、サル(カニクイザル及び/またはアカゲザル)において薬効を確認できることは、医薬品開発のために必須である毒性試験等を進める観点からも有用である。
【0100】
サル交差性を確認する方法としては、免疫化学組織染色法、固相酵素免疫測定法(以下、「ELISA」)及びフローサイトメトリー(FCM)等、公知の方法で確認することができる。
(医薬組成物)
抗体は医薬組成物に含めることができる。一実施形態では、抗体は製薬上許容される担体、安定剤または賦形剤を含んでおり、水溶液の形態又は凍結乾燥製剤として調製される。典型的には、製薬的に許容可能な適当量の塩が製剤の等張化のために用いられる。許容できる担体、安定化剤又は賦形剤は、例えば、リン酸、クエン酸、及び他の有機酸等の緩衝液;低分子量(残基数10個未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリン等の単糖類、二糖類及び他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖類、ナトリウム等の塩形成対イオン;メチオニン及びアスコルビン酸を含む抗酸化剤;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン類、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤を含む。
(IL-3Rα発現細胞を標的とした抗腫瘍物質の治療的使用)
治療的使用が検討される疾患としては、IL-3Rαを発現する血液腫瘍細胞(AML細胞、CML細胞、MDS細胞、ALL細胞、CLL細胞、多発性骨髄腫細胞、など)、肥満細胞、好塩基球、ヘルパーT細胞(たとえば、Th1細胞、Th17細胞)、制御性T細胞(たとえば、CD4陽性CD25陽性細胞)抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、単球・マクロファージおよびそれに類する細胞(肝臓星細胞、破骨細胞、ミクログリア細胞、表皮内大食細胞、塵埃細胞(肺胞大食細胞)など))に結合または標的とすることにより治療が可能な疾患が考えられるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
治療的使用が検討される疾患としては、骨髄または末梢血中にIL-3Rαの発現が認められる血液疾患が挙げられる。具体的には急性骨髄性白血病(AML)が考えられる。急性骨髄性白血病は、造血幹細胞から種々の血球に分化していく途中の細胞において、それらのどの段階の細胞が腫瘍化したかによるFAB分類 (French-American-British criteria) に基づいてM0(微分化型骨髄性白血病)、M1(未分化型骨髄芽球性白血病)、M2(分化型骨髄芽球性白血病)、M3(前骨髄球性白血病)、M4(骨髄単球性白血病)、M5(単球性白血病)、M6(赤白血病)及びM7(巨核球性白血病)の病型、およびそれらの亜型に分類される。また、さらなる疾患としては、例えば、急性リンパ性白血病、非定型的白血病、慢性リンパ性白血病、成人T細胞性白血病、NK/T細胞リンパ腫、顆粒リンパ球増多症(LGL白血病)、真性赤血球増多症、本態性血小板血症、好酸球増多症候群、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、Burkittリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫およびCatsleman病が含まれる。
【0102】
IL-3Rα抗体あるいはIL-3Rα発現細胞を標的とした抗腫瘍物質の投与または送達を含む本発明の方法は、任意の許容される方法(anyacdceptable method)により実施することができる。特定の実施形態では、これらは被験体に局所的に、局部的に、または全身的に投与される。
また、上記の疾患を治療するためにIL-3Rα抗体あるいはIL-3Rα発現細胞を標的とした抗腫瘍物質は、同様の疾患に好適な他の治療剤(典型的には化学療法剤)と組み合わせや放射線療法との併用も考慮することができる。好適な他の治療剤としては、シタラビン(Ara-C)、アントラサイクリン系の抗腫瘍剤(典型的には、ダウノルビシン(DNR)、イダルビシン(IDA))等の化学療法剤、all-trans retinoic acid(ATRA)、亜ヒ酸やAm80(タミバロテン)等の分化誘導療法剤、ゲムツズマブ・オゾガマイシン(オゾガマイシンコンジュゲート抗CD33抗体)、トポテカン、フルダラビン、シクロスポリン、ミトキサントロン(MIT)、インターフェロン及び、イマチニブが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、臨床上有効とされる治療法との組合せも含まれる。
【0103】
本発明により治療可能な被験体には、哺乳類(例えば、ヒト)が含まれる。特定の実施形態では、血液腫瘍の疑いのある被験体であるかあるいは血液腫瘍の治療を受けた被験体;IL-3Rα媒介細胞応答の疑いのある被験体であるかあるいはIL-3Rα媒介細胞応答の治療を受けた被験体;骨髄性悪性腫瘍の疑いのある被験体であるかあるいは骨髄性悪性腫瘍の治療を受けた被検体;急性骨髄性白血病の疑いのある被験体であるかあるいは急性骨髄性白血病の治療を受けた被検体。
【0104】
本明細書において、用語「治療する」、「治療(すること)」、「処置」およびその文法上の変形は、患者において生理学的効果または転帰を得ることが望ましい各被験体または患者において行われるプロトコール、計画、過程または改善法を意味する。よって、本発明の方法には、とりわけ、特定の被験体の障害、疾患、生理学的状態、病状または症状において測定可能な改善または有益な効果をもたらす処置および治療法が含まれる。測定可能な改善または有益な効果は、障害、疾患、生理学的状態、病状または症状におけるいずれもの他覚的もしくは自覚的、過度的、一時的、または長期的改善、あるいはその障害、疾患、生理学的状態、病状または状態に関連または起因する有害な症状の発症、重症度、期間または頻度の軽減である。本発明方法では必ずしもすぐに効果が現れず、少し遅れて、時間の経過で最終的な改善または有益な効果が認められる可能性があり、特定の被験体において安定化または改善が起こる。
【0105】
特に断りのない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が関連する技術分野の業者には一般に明らかなものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験に、本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料を使用することができるが、本明細書に記載しているものが好適な方法および材料である。
【実施例】
【0106】
実施例1 ヒト・カニクイザル・アカゲザルIL-3Rα発現細胞の作製
(IL-3Rα cDNAの分子クローニング及び発現ベクターの作製)
ヒトIL-3Rα cDNAは血液細胞由来cDNA(CLONTECHHumanMTCPanel)よりExTaq(タカラバイオ株式会社)を用いたPCR法により増幅した。PCR装置はGeneAmpPCRSystem9700(アプライドバイオシステムズ、以下、本明細書においてPCR装置は同様である)を用いた。PCR反応は94℃5分間の変性段階につづいて、94℃30秒-55℃30秒-72℃2分の3ステップ反応を40サイクル行った後、99℃30秒の反応を行った。用いたPCRプライマーは以下のとおり;
IL-3Rα_Fw: 5’-CGGCAATTGCCACCATGGTCCTCCTTTGGCTCAC-3’(配列番号3)
IL-3Rα_Re: 5’-ATTGCGGCCGCTCAAGTTTTCTGCACGACCT-3’(配列番号4)
得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。1.2kb付近のバンドを切り出し、DNAをJetSorb(Genomed社)を用いて抽出した。抽出したDNAをMfeI及びNotIで切断し、EcoRI及びNotIで切断したpEGFP-N1vector(Clontech社)或いはpEF6/Myc-Hisvectorと混合し、TaKaRa LigationKitを用い連結した。形質転換は、ライゲーションサンプルとDH10Bコンピテント細胞と混合し、LBプレート(カナマイシン含有)へ撒いた。pEGFP-N1 vectorのインサートチェックは、LA Taq(Takara社)を用いたコロニーダイレクトPCRにより行った。PCR反応は94℃5分間の変性段階につづいて、94℃30秒-55℃30秒-72℃2分の3ステップ反応を40サイクル行った後、99℃30秒の反応を行った。用いたPCRプライマーはIL-3Rα_Fw及びIL-3Rα_Reを用いた。
【0107】
得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。1.2kb付近の増幅が得られたコロニーを対象に、ダイレクトシークエンシング法により塩基配列を決定した。シークエンスサンプルの反応はBigDye(R) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズ)とGeneAmp PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ)を用いた(本明細書における全てのDNA配列解析でこれらを使用)。プライマーはIL-3Rα_Fw、IL-3Rα_Re及び次のプライマーを用いた:
IL-3Rα_seqF1: 5’-GTCTTCACTACAAAACGGAT-3’(配列番号5)
シークエンス解析装置はABI3700XL DNA analyzer(アプライドバイオシステムズ)を用いた。GenBank accession number NP_002174.1のコーディングリージョンと同一の配列を有するクローンを選定し、ミニプレップ法によりプラスミドDNAを抽出した。ベクター名はそれぞれ、pEGFR-N1/hCD123、pEF6/Myc-His/hCD123とする。
【0108】
インサート(MfeIからNotIまで)の配列は以下のとおり:
CAATTGCCACCATGGTCCTCCTTTGGCTCACGCTGCTCCTGATCGCCCTGCCCTGTCTCCTGCAAACGAAGGAAGATCCAAACCCACCAATCACGAACCTAAGGATGAAAGCAAAGGCTCAGCAGTTGACCTGGGACCTTAACAGAAATGTGACCGATATCGAGTGTGTTAAAGACGCCGACTATTCTATGCCGGCAGTGAACAATAGCTATTGCCAGTTTGGAGCAATTTCCTTATGTGAAGTGACCAACTACACCGTCCGAGTGGCCAACCCACCATTCTCCACGTGGATCCTCTTCCCTGAGAACAGTGGGAAGCCTTGGGCAGGTGCGGAGAATCTGACCTGCTGGATTCATGACGTGGATTTCTTGAGCTGCAGCTGGGCGGTAGGCCCGGGGGCCCCCGCGGACGTCCAGTACGACCTGTACTTGAACGTTGCCAACAGGCGTCAACAGTACGAGTGTCTTCACTACAAAACGGATGCTCAGGGAACACGTATCGGGTGTCGTTTCGATGACATCTCTCGACTCTCCAGCGGTTCTCAAAGTTCCCACATCCTGGTGCGGGGCAGGAGCGCAGCCTTCGGTATCCCCTGCACAGATAAGTTTGTCGTCTTTTCACAGATTGAGATATTAACTCCACCCAACATGACTGCAAAGTGTAATAAGACACATTCCTTTATGCACTGGAAAATGAGAAGTCATTTCAATCGCAAATTTCGCTATGAGCTTCAGATACAAAAGAGAATGCAGCCTGTAATCACAGAACAGGTCAGAGACAGAACCTCCTTCCAGCTACTCAATCCTGGAACGTACACAGTACAAATAAGAGCCCGGGAAAGAGTGTATGAATTCTTGAGCGCCTGGAGCACCCCCCAGCGCTTCGAGTGCGACCAGGAGGAGGGCGCAAACACACGTGCCTGGCGGACGTCGCTGCTGATCGCGCTGGGGACGCTGCTGGCCCTGGTCTGTGTCTTCGTGATCTGCAGAAGGTATCTGGTGATGCAGAGACTCTTTCCCCGCATCCCTCACATGAAAGACCCCATCGGTGACAGCTTCCAAAACGACAAGCTGGTGGTCTGGGAGGCGGGCAAAGCCGGCCTGGAGGAGTGTCTGGTGACTGAAGTACAGGTCGTGCAGAAAACTTGAGCGGCCGC(配列番号6)
カニクイザル及びアカゲザルIL-3Rα cDNAは、カニクイザル骨髄由来cDNA或いはアカゲザル骨髄由来cDNAよりLATaq(タカラバイオ株式会社)を用いたPCR法により増幅した。PCR装置はGeneAmpPCRSystem9700(アプライドバイオシステムズ)を用いた。PCR反応は95℃1分間の変性段階につづいて、95℃15秒-56℃15秒-72℃70秒の3ステップ反応を40サイクル行った後、72℃2分の反応を行った。hIL-3RAcDNA 配列を基に、公共のアカゲザルゲノムデータベース(http://www.hgsc.bcm.tmc.edu/blast.hgsc)に対するBLAST検索により部分配列を取得し、プライマーを設計した。用いたプライマー配列は以下のとおりである:
Rhe123Fw1:CGGCAATTGCCACCATGACCCTCCTTTGGCTGACGCTG(配列番号7)
Rhe123Rv1:TATATTGCGGCCGCTCAAGTTTTCTCCACCACCTGCAC(配列番号8)
得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。1.2kb付近のバンドを切り出し、DNAをGelExtractionKit(QIAGEN社)を用いて抽出した。抽出したDNAをpGEM-T Easy vector(Promega社)と混合し、TaKaRa Ligation Kitを用い連結した。形質転換は、ライゲーションサンプルとDH10Bコンピテント細胞と混合し、LBプレート(アンピシリン含有)へ撒いた。pGEM-TEasyvectorのインサートチェックは、LATaq(Takara社)を用いたコロニーダイレクトPCRにより行った。PCR反応は95℃1分間の変性段階につづいて、95℃15秒-56℃15秒-72℃1分の3ステップ反応を35サイクル行った後、72℃2分の反応を行った。プライマーは以下を用いた:
T7:TAATACGACTCACTATAGGG(配列番号9)
SP6:GATTTAGGTGACACTATAG(配列番号10)
得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。1.2kb付近の増幅が得られたコロニーを対象に、ダイレクトシークエンシング法により塩基配列を決定した。PCRプライマーはT7及びSP6を用いた。PCRによる変異の認められないクローンを選定し、ミニプレップ法によりプラスミドDNAを抽出した。得られたDNAをMfeI及びNotIで切断し、EcoRI及びNotIで開裂したpEGFP-N1vector(Clontech社)と混合し、TaKaRaLigationKitを用い連結した。形質転換は、ライゲーションサンプルとDH10Bコンピテント細胞と混合し、LBプレート(カナマイシン含有)へ撒いた。
【0109】
pEGFP-N1vectorのインサートチェックは、LATaq(Takara社)を用いたコロニーダイレクトPCRにより行った。PCR反応は94℃5分間の変性段階につづいて、94℃30秒-55℃30秒-72℃2分の3ステップ反応を40サイクル行った後、99℃30秒の反応を行った。用いたPCRプライマーはRhe123Fw1及びRhe123Rv1を用いた。
得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。1.2kb付近の増幅が得られたコロニーを対象に、ダイレクトシークエンシング法により塩基配列を決定した。シークエンスサンプルの反応はBigDye(R) Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズ)とGeneAmp PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ)を用いた(本明細書における全てのDNA配列解析でこれらを使用)。プライマーはRhe123Fw1及びRhe123Rv1を用いた。ベクター名はそれぞれ、pEGFR-N1/cyCD123、pEGFR-N1/rhCD123、とする。
【0110】
カニクイザルIL-3Rαのインサート(MfeIからNotIまで)の配列は以下のとおりである:
CAATTGCCACCATGACCCTCCTTTGGCTGACGCTGCTCCTGGTCGCCACGCCCTGTCTCCTGCAAACGAAGGAGGATCCAAATGCACCAATCAGGAATCTAAGGATGAAAGAAAAGGCTCAGCAGTTGATGTGGGACCTGAACAGAAACGTGACCGACGTGGAGTGTATCAAAGGCACCGACTATTCTATGCCGGCAATGAACAACAGCTATTGCCAGTTCGGAGCCATTTCCTTATGTGAAGTGACCAACTACACCGTCCGAGTGGCCAGTCCCCCGTTCTCCACGTGGATCCTCTTCCCTGAGAACAGTGGGACGCCTCAGGCAGGCGCGGAGAATCTGACCTGCTGGGTTCATGACGTGGATTTCTTGAGCTGCAGCTGGGTGGCAGGCCCGGCGGCCCCCGCTGACGTCCAGTACGACCTGTACTTGAACAATCCCAACAGCCACGAACAGTACAGGTGCCTTCACTACAAAACGGATGCTCGGGGAACACAGATCGGGTGTCGGTTCGATGACATCGCTCGACTCTCCCGCGGTTCTCAAAGTTCCCACATCCTGGTGAGGGGCAGGAGCGCAGCCGTCAGTATCCCCTGCACAGATAAGTTTGTCTTCTTTTCACAGATTGAGAGATTAACTCCACCCAACATGACTGGAGAGTGTAATGAGACACATTCCTTCATGCACTGGAAAATGAAAAGTCATTTCAATCGCAAATTCCGCTATGAGCTTCGGATCCAAAAGAGAATGCAGCCTGTAAGGACAGAACAGGTCAGAGACACAACCTCCTTCCAGCTACCCAATCCTGGAACGTACACAGTGCAAATAAGAGCCCGGGAAACAGTGTATGAATTCTTGAGTGCCTGGAGCACCCCCCAGCGCTTCGAGTGCGACCAGGAGGAGGGCGCGAGCTCGCGTGCCTGGCGGACGTCGCTGCTGATCGCGCTGGGGACGCTGCTGGCCTTGCTCTGTGTGTTCCTCATCTGCAGAAGGTATCTGGTGATGCAGAGGCTGTTTCCCCGCATCCCACACATGAAAGACCCCATCGGTGACACCTTCCAACAGGACAAGCTGGTGGTCTGGGAGGCGGGCAAAGCCGGCCTGGAGGAGTGTCTGGTGTCTGAAGTGCAGGTGGTGGAGAAAACTTGAGCGGCCGC(配列番号11)
アカゲザルIL-3Rαのインサート(MfeIからNotIまで)の配列は以下のとおりである:
CAATTGCCACCATGACCCTCCTTTGGCTGACGCTGCTCCTGGTCGCCACGCCCTGTCTCCTGCAAACCAAGGAGGATCCAAATGCACCAATCAGGAATCTAAGGATGAAAGAAAAGGCTCAGCAGTTGATGTGGGACCTGAACAGAAACGTGACCGACGTGGAGTGTATCAAAGGCACCGACTATTCTATGCCGGCAATGAACGACAGCTATTGCCAGTTCGGAGCCATTTCCTTATGTGAAGTGACCAACTACACCGTCCGAGTGGCCAGTCCTCCGTTCTCCACGTGGATCCTCTTCCCTGAGAACAGTGGGACGCCTCGGGCAGGCGCGGAGAATTTGACCTGCTGGGTTCATGACGTGGATTTCTTGAGCTGCAGCTGGGTGGTAGGCCCGGCGGCCCCCGCTGACGTCCAGTACGACCTGTACTTGAACAATCCCAACAGCCACGAACAGTACAGGTGCCTTCGCTACAAAACGGATGCTCGGGGAACACAGATCGGGTGTCGGTTCGATGACATCGCTCGACTCTCCCGCGGTTCTCAAAGTTCCCACATCCTGGTGAGGGGCAGGAGCGCAGCCGTCAGTATCCCCTGCACAGATAAGTTTGTCTTCTTTTCACAGATTGAGAGATTAACTCCACCCAACATGACTGGAGAGTGTAATGAGACACATTCCTTCATGCACTGGAAAATGAAAAGTCATTTCAATCGCAAATTCCACTATGAGCTTCGGATCCAAAAGAGAATGCAGCCTGTAAGGACAGAACAGGTCAGAGACACAACCTCCTTCCAGCTACCCAATCCTGGAACGTACACAGTGCAAATAAGAGCCCGGGAAACAGTGTATGAATTCTTGAGTGCCTGGAGCACCCCCCAGCGCTTCGAGTGCGACCAGGAGGAGGGCGCGAGCTCGCGTGCCTGGCGGACGTCGCTGCTGATCGCGCTGGGGACGCTGCTGGCCTTGCTCTGTGTGTTCCTCATCTGCAGAAGGTATCTGGTGATGCAGAGGCTGTTTCCCCGCATCCCACACATGAAAGACCCCATCGGTGACACCTTCCAACAGGACAAGCTGGTGGTCTGGGAGGCGGGCAAAGCCGGCCTGGAGGAGTGTCTGGTGTCTGAAGTGCAGGTGGTGGAGAAAACTTGAGCGGCCGC(配列番号12)
(IL-3Rα強制発現細胞株の作製)
L929細胞(ATCC製)及びColon-26細胞(ATCC製)に、pEGFP-N1vector/hCD123またはpEF6/Myc-His vector/hCD123をエレクトロポレーション(BTX)を用いて感染させた。具体的には、10-20μgのDNAを10万細胞と混ぜ、300V、950μFで反応させた。細胞は、pEGFP-N1/hCD123ではネオマイシン(Calbiochem社)、pEF6/Myc-His/hCD123ではブラストサイジン(Invitrogen社)を用いて薬剤耐性細胞を選抜した。選抜した細胞は、さらにフローサイトメトリー(FACSVantage、FACSAriaなど、BD Biosciences社)によりGFP陽性細胞或いはIL-3Rα(CD123)の高発現の細胞をソーティングにより選抜し、L929/hCD123、及びColon-26/hCD123と命名した。
【0111】
カニクイザルIL-3Rα及びアカゲザルIL-3Rα強制発現細胞の作製に関しても、ヒトIL-3Rα強制発現細胞株と同様にL929及びColon-26を用いて作製し、L929/cyCD123、Colon-26/cyCD123、L929/rhCD123、Colon-26/rhCD123と命名した。
実施例2 可溶化型細胞外IL-3Rα蛋白質の作製
(可溶化型細胞膜外ヒトIL-3Rα蛋白質発現ベクターの調製)
ヒトIL-3Rαの細胞外領域をコードするcDNAをPCR法で増幅し、下流にFLAGタグを連結した。具体的には、ヒトIL-3Rαの細胞外領域をコードするcDNAはpEF6/Myc-His/hCD123プラスミドDNAを鋳型としPlatinum Pfu polymerase(Invitrogen社)を用いたPCR法により増幅した。PCR反応は96℃2分間の変性段階につづいて、96℃20秒-55℃30秒-68℃65秒の3ステップ反応を30サイクル行った。用いたPCRプライマーはIL-3Rα_Fw及び以下のプライマーを用いた:
hIL-3Rαsol-FLAG-NotI:5’-ATTGCGGCCGCTCACTTATCGTCGTCATCCTTGTAGTCCCGCCAGGCACGTGTGTTTG-3’(配列番号13)
得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。DNAをJetSorb(Genomed社)を用いて抽出した。精製されたDNAをMfeIとNotIで消化し、再度0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAE buffer)を行った。1.0kb付近のバンドを切り出し、DNAを、JetSorb(Genomed社)を用いて抽出した。精製されたDNAと同一酵素で解裂されていたpTracer-CMV/Bsdベクターを混合し、TaKaRa Ligation Kitを用い連結した。形質転換は、ライゲーションサンプルとDH10Bコンピテント細胞と混合し、LBプレート(アンピシリン含有)へ撒いた。インサートチェックは、LATaq(タカラバイオ株式会社)を用いたコロニーダイレクトPCRにより行った。PCR反応は95℃1分間の変性段階につづいて、95℃15秒-56℃15秒-72℃40秒の3ステップ反応を35サイクル行った後、72℃2分間の伸長反応を行った。用いたPCRプライマーはIL-3Rα_Fw及びIL-3Rαsol-FLAG-NotI。
【0112】
得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。1.0kb付近の増幅が得られたコロニーからミニプレップ法によりプラスミドDNAを抽出した。精製したplasmid DNAはDNA配列解析によりGenBank accessionnumberNP_002174.1の当該領域と同一の配列を有することを確認した。
【0113】
インサート(MfeIからNotIまで)の配列は以下のとおりである:
CAATTGCCACCATGGTCCTCCTTTGGCTCACGCTGCTCCTGATCGCCCTGCCCTGTCTCCTGCAAACGAAGGAAGATCCAAACCCACCAATCACGAACCTAAGGATGAAAGCAAAGGCTCAGCAGTTGACCTGGGACCTTAACAGAAATGTGACCGATATCGAGTGTGTTAAAGACGCCGACTATTCTATGCCGGCAGTGAACAATAGCTATTGCCAGTTTGGAGCAATTTCCTTATGTGAAGTGACCAACTACACCGTCCGAGTGGCCAACCCACCATTCTCCACGTGGATCCTCTTCCCTGAGAACAGTGGGAAGCCTTGGGCAGGTGCGGAGAATCTGACCTGCTGGATTCATGACGTGGATTTCTTGAGCTGCAGCTGGGCGGTAGGCCCGGGGGCCCCCGCGGACGTCCAGTACGACCTGTACTTGAACGTTGCCAACAGGCGTCAACAGTACGAGTGTCTTCACTACAAAACGGATGCTCAGGGAACACGTATCGGGTGTCGTTTCGATGACATCTCTCGACTCTCCAGCGGTTCTCAAAGTTCCCACATCCTGGTGCGGGGCAGGAGCGCAGCCTTCGGTATCCCCTGCACAGATAAGTTTGTCGTCTTTTCACAGATTGAGATATTAACTCCACCCAACATGACTGCAAAGTGTAATAAGACACATTCCTTTATGCACTGGAAAATGAGAAGTCATTTCAATCGCAAATTTCGCTATGAGCTTCAGATACAAAAGAGAATGCAGCCTGTAATCACAGAACAGGTCAGAGACAGAACCTCCTTCCAGCTACTCAATCCTGGAACGTACACAGTACAAATAAGAGCCCGGGAAAGAGTGTATGAATTCTTGAGCGCCTGGAGCACCCCCCAGCGCTTCGAGTGCGACCAGGAGGAGGGCGCAAACACACGTGCCTGGCGGGACTACAAGGATGACGACGATAAGTGAGCGGCCGC(配列番号14)
(可溶化型ヒトIL-3Rα蛋白質の調製)
可溶化IL-3Rα配列を含むpTracerCMV発現ベクターのプラスミドDNAをQIAGEN Plasmid Maxi Kitにより精製した。発現のための宿主細胞には、CHOras1細胞を用いた。CHOras1細胞はSFM II培地(インビトロジェン社)を用いて振とう培養した(37℃、5% CO2)。
遺伝子導入にはPEI法を用いた。Polyethylenimine,Linear,MW25,000(Polysciences社)を秤量し、HClでpH7.0付近に調整しながらPBS中に溶解させた(1g/L)。1時間攪拌後、孔径0.22μmのメンブランフィルターMILLEX-GV(ミリポア社)でろ過滅菌した。精製したプラスミドDNA 1mgとOpti-Pro SFM (Invitrogen社) 20 mLを混合し、溶液Aとした。PEI溶液(1 g/L)2.5mLとOpti-ProSFM(Invitrogen社) 20 mLを混合し、溶液Bとした。溶液Aと溶液Bを混合し、10分間静置した後、CHOras1細胞 (1 mLあたり細胞1000000個)に添加した。6日後、細胞上清を回収し、蛋白精製に用いた。
【0114】
培養上清からの可溶化型IL-3Rα蛋白質の精製は以下の方法で行った。可溶化型IL-3Rα蛋白質を含む培養上清を遺伝子導入から6日後に遠心分離により回収し、フィルターを通過させた。トリス緩衝生理食塩水(TBS)で5倍希釈し、Anti-FLAGM2AgaroseAffinityGel(シグマ社)を用いて作製しAnti-FLAGカラムにHiLoad Pump P-50(ファルマシアバイオテック社)を用いてアプライした。溶出はFLAGペプチド(シグマ社)を用い、マニュアルに従った。溶出液をフラクションに分画し、各フラクションを還元条件化でSDS-PAGE (マルチゲルIIミニ10/20%グラジエントゲル; コスモバイオ社)後、銀染色およびウェスタンブロッティングを行った。銀染色は銀染色試薬「第一」(第一化学社)を用いた。ウェスタンブロッティングには、抗FLAG M2抗体(シグマ社)とアルカリフォスファターゼ標識ウサギ抗マウスイムノグロブリン抗体を用いた。目的の蛋白質が認められたフラクションをアミコンウルトラ-4 10K (ミリポア社)を用いて濃縮し、Superdex200 gp (GEヘルスケア社)を用いてゲルろ過クロマトグラフィー を行った。分画し、各フラクションを還元条件化でSDS-PAGE(マルチゲルIIミニ 10 / 20% グラジエントゲル; コスモバイオ社)後、銀染色およびウェスタンブロッティングを行った。銀染色は銀染色試薬「第一」(第一化学社)を用いた。ウェスタンブロッティングには、抗FLAG M2抗体(シグマ社)とアルカリフォスファターゼ標識ウサギ抗マウスイムノグロブリン抗体を用いた。目的の蛋白質が認められたフラクションをアミコンウルトラ-4 10K (ミリポア社)を用いて濃縮し、PBSで洗浄した。孔径0.22μmのメンブランフィルターMILLEX-GV(ミリポア社)でろ過滅菌し、可溶化型ヒトIL-3Rα蛋白質を得た。リムルスES-IIキットワコー(和光純薬社)を用いたリムルステストの結果、エンドトキシンは検出されなかった。可溶化型IL-3Rα蛋白質の濃度は280nmの吸光度を測定し、1mg/mL を1.4 ODとして算出した。
実施例3 ヒト抗体産生マウスを用いた抗ヒトIL-3Rαヒト抗体の作製
(ヒト抗体産生マウス)
免疫に用いたマウスは、内因性Ig重鎖及びκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体の遺伝的背景を有しており、かつ、ヒトIg重鎖遺伝子座を含む14番染色体断片(SC20)及びヒトIgκ鎖トランスジーン(KCo5)を同時に保持する。このマウスはヒトIg重鎖遺伝子座を持つ系統Aのマウスと、ヒトIgκ鎖トランスジーンを持つ系統Bのマウスとの交配により作製された。系統Aは、内因性Ig重鎖及びκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体であり、子孫伝達可能な14番染色体断片 (SC20)を保持するマウス系統であり、例えば富塚らの報告[Tomizuka. et al., Proc Natl Acad Sci USA., 2000 Vol97:722]に記載されている。また、系統Bは内因性Ig重鎖及びκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体であり、ヒトIgκ鎖トランスジーン(KCo5)を保持するマウス系統(トランスジェニックマウス)であり、例えばFishwildらの報告[Nat Biotechnol, (1996),l14:845]に記載されている。
【0115】
系統Aの雄マウスと系統Bの雌マウス、あるいは系統Aの雌マウスと系統Bの雄マウスの交配により得られた、血清中にヒトIg重鎖及びκ軽鎖が同時に検出される個体[Ishida&Lonberg, IBC's 11th Antibody Engineering,Abstract 2000]を、以下の免疫実験に用いた。なお、前記ヒト抗体産生マウス(KMマウスと称する)は、契約を結ぶことによって、協和発酵キリン株式会社より入手可能である。
(ヒトIL-3Rαに対するヒトモノクローナル抗体の作製)
本実施例におけるモノクローナル抗体の作製は、単クローン抗体実験操作入門(安東民衛ら著作、講談社発行 1991)等に記載されるような一般的方法に従って調製した。免疫原としてのIL-3Rαは、IL-3Rα発現L929細胞(CCL-1、ATCC)、IL-3Rα発現Colon-26細胞(CellResourceCenterforBiomedicalResearchInstituteofDevelopment,AgingandCancerTohokuUniversity)あるいは可溶化型ヒトIL-3RαヒトFc融合蛋白質を用いた。被免疫動物として上記のKMマウスを用いた。
【0116】
ヒトIL-3Rαに対するヒトモノクローナル抗体の調製を目的として、KMマウスに、実施例1で作製したIL-3Rα発現L929細胞或いはIL-3Rα発現Colon-26細胞を腹腔内に1週間〜2週間おきに1×107細胞/匹の用量で、合計4回免疫した。以下に述べる脾臓の摘出3日前に、可溶化型ヒトIL-3Rα蛋白質20μg/マウス個体を尾静脈投与した。
免疫されたマウスから脾臓を外科的に取得し、PBS中に入れ、メッシュ(セルストレイナー:ファルコン社)上でシリンジのピストンを用いてつぶした。メッシュを通過した細胞懸濁液を遠心して細胞を沈澱させた後、Red Blood Cell Lysing Buffer (シグマ社)で再懸濁した。室温で5分間のインキュベーションの後、350mg/mL炭酸水素ナトリウム、50単位/mL ペニシリン、50μg/mLストレプトマイシンを含む無血清DMEM培地(インビトロジェン社)(以下「無血清DMEM培地」という)を加え、細胞を沈澱させた。再度、無血清DMEM培地に懸濁して細胞数を測定した。
【0117】
一方、ミエローマ細胞SP2/0(ATCCNo.CRL-1581)は10% FCS(インビトロジェン社)、50単位/mL ペニシリン、50μg/mL ストレプトマイシンを含むDMEM培地(インビトロジェン社)(以下、「血清入りDMEM培地」という)にて、37℃、5%炭酸ガス存在下で培養した。SP2/0細胞を同様に無血清DMEM培地で洗浄し、無血清DMEM培地に懸濁して細胞数を測定した。回収した脾臓由来細胞の懸濁液とマウスミエローマ懸濁液とを細胞数5:1で混合し、遠心後、上清を完全に除去した。このぺレットに、融合剤として50%(w/v)ポリエチレングリコール1500(ベーリンガーマンハイム社)を、ピペットの先でぺレットを撹拌しながらゆっくり添加した後、予め37℃に加温しておいた無血清DMEM培地をゆっくり添加した。さらに適量の無血清DMEM培地をゆっくり添加した。その後、37℃、5%炭酸ガス存在下で5分間静置した。遠心後、上清を除去して得られた融合細胞を、10% FCS(インビトロジェン社)、ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(シグマ社)、IL-6(5ng/mL)、2-メルカプトエタノール(インビトロジェン社)を含むDMEM培地(インビトロジェン社)(以下、「IL-6入りDMEM培地」という)に懸濁し、37℃、5%炭酸ガス存在下で培養した。翌日、細胞をピペッティングにより回収し、遠心により沈殿した細胞ペレットをIL-6入りDMEM培地に再懸濁した。懸濁した細胞は、96穴プレートに限界希釈し、7日〜14日間ほど培養した。その培養上清は下の実施例に示すハイブリドーマスクリーニングに用いた。
(ヒトIL-3Rαに結合するヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニング)
上の実施例で作製した細胞上清を用いてハイブリドーマのスクリーニングを行った。方法は、簡単には、ヒトIL-3Rα安定発現細胞株を利用したフローサイトメトリー法で行った。
【0118】
具体的には、ヒトIL-3Rα発現L929細胞及び親株L929細胞の組み合わせ、或いはヒトIL3Rα発現Colon-26細胞及び親株Colon-26細胞の組み合わせで、それぞれハイブリドーマの上清と混合し、4℃、30分間静置した。ステイニングメディウム(2%牛胎児血清、2mM EDTA、0.05%NaN3を含むDulbecco’sPBS)で2回洗浄後、二次抗体としてGoat F(ab')2Anti-Human IgG-PE (サザンバイオテック社)を加え、4℃、30分間静置した。ステイニングメディウムで2回洗浄後、FACSCalibur(BD Biosciences社)で解析した。ヒトIL-3Rα発現L929細胞のみと反応したハイブリドーマを採取した。
【0119】
選抜したハイブリドーマは、限界希釈を行い、その培養上清を用いてスクリーニングを実施した。具体的には、ヒトIL-3Rα発現L929細胞及び親株L929細胞を、それぞれハイブリドーマの上清と混合し、4℃、30分間静置した。ステイニングメディウムで2回洗浄後、二次抗体としてGoatF(ab')2Anti-HumanKappa-PE(Dako社)を加え、4℃、30分間静置した。ステイニングメディウムで2回洗浄後、FACSCalibur(BD Biosciences社)で解析した。ヒトIL-3Rα発現L929細胞のみと反応したハイブリドーマを採取した。
実施例4 組み換え抗ヒトIL-3Rαヒト抗体の作製
(ハイブリドーマからの抗ヒトIL-3Rα抗体遺伝子の取得及び発現ベクターの作製)
実施例3にて取得したハイブリドーマより、クローン名Old4、Old5、Old17、Old19、New102及びOld6を10ng/mLIL-6(R&DSystems社)、10%Fetal Bovine Serum(SIGMA社)含有eRDF培地(極東製薬社)で培養し、遠心分離により細胞を集めた後TRIZOL(GIBCO社)を添加し、取扱説明書にしたがってTotal RNAを抽出した。抗体cDNAの可変領域のクローニングは、SMART RACE cDNA amplification Kit(クローンテック社)を用い、添付の説明書にしたがって行った。
【0120】
またコントロールとして用いる抗ヒトIL-3Rαマウス抗体7G3を生産するハイブリドーマATCC、HB12009より、可変領域をクローニングし、得られたcDNAとヒトIgG1定常領域をコードするDNAとを連結させて、キメラ抗体発現ベクターを作製した。具体的には、凍結保存されたハイブリドーマを遠心分離により細胞を集めた後TRIZOL(GIBCO社)を添加し、取扱説明書にしたがってTotal RNAを抽出した。抗体cDNAの可変領域のクローニングは、SMART RACE cDNA amplification Kit(クローンテック社)に加え、マウスIgG抗体特異的なプライマーを用い、添付の説明書にしたがって行った。
【0121】
5μgのtotalRNAを鋳型として、1st strand cDNAを作製した。
1)1st strand cDNA の合成
TotalRNA 5μgm/3μL
5’CDS1μL
SMARToligo 1μL
上記組成の反応液を70℃で2分間インキュベートした後、
5×Buffer2μL
DTT1μL
DNTPmix 1μL
SuperscriptII 1μL
を加え42℃で1.5時間インキュベートした。
【0122】
さらに、100μLのTricineBufferを加えた後、72℃で7分間インキュベートし、1st strand cDNAを取得した。
2)PCRによる重鎖遺伝子、軽鎖遺伝子の増幅及び組換え抗体発現ベクターの構築
cDNAの増幅には、Takara社のZ-Taqを用いた。
cDNA 2μL
10xZ-Taq Buffer 5μL
dNTPmix 4μL
Z-Taq1μL
プライマー1
プライマー2
上記組成の反応液を再蒸留水にて最終容量50μLとし、PCRに供した。
【0123】
重鎖の増幅には、UPM(SMARTRACEcDNAamplificationKit;クローンテック社)とhh-6プライマー(5’-GGTCCGGGAGATCATGAGGGTGTCCTT-3’)(配列番号15)を用い、98℃1秒、68℃30秒のサイクルを30回繰り返した。さらに、この反応液1μLを鋳型とし、NUP(SMARTRACEcDNAamplificationKit;クローンテック社)とhh-3プライマー(5’-GTGCACGCCGCT GGT CAGGGCGCCTG-3’)(配列番号16)を用いて、98℃1秒、68℃30秒のサイクルを20回繰り返した。この後、増幅したPCR産物をPCR purification kit(キアゲン社)により精製し,hh-4(5’-GGT GCC AGG GGG AAG ACC GAT GG-3’)(配列番号17)をプライマーとして、塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、以下の特異的プライマーを合成し、このプライマーを用いて反対方向からも配列を決定した。
Old4重鎖特異的プライマーFw(5’-AGAGAGAGAGGTCGACCACCATGGACTGGACCTGGAGGTTCCTCTTTG T -3’)(配列番号18)
Old4重鎖特異的プライマーRv (5’-AGAGAGAGAGGCTAGCTGAAGAGACGGTGACCATTGTCCC -3’)(配列番号19)
Old5重鎖特異的プライマーFw (5’-AGAGAGAGAGGTCGACCACCATGGACTGGACCTGGAGGTTCCTCT TTG T -3’)(配列番号20)
Old5重鎖特異的プライマーRv (5’-AGAGAGAGAGGCTAGCTGAAGAGACGGTGACCATTGTCCC -3’)(配列番号21)
Old17重鎖特異的プライマーFw (5’-AGAGAGAGAGGTCGACCACCATGGACTGGACCTGGAGGTTCCTCT TTG T -3’)(配列番号22)
Old17重鎖特異的プライマーRv(5’-AGAGAGAGAGGCTAGCTGAGGAGACGGTGACAAGGGTTCCC-3’)(配列番号23)
Old19重鎖特異的プライマーFw(5’-AGAGAGAGAGGTCGACCACCATGGACTGGACCTGGAGGTTCCTCT TTG T -3’)(配列番号24)
Old19重鎖特異的プライマーRv (5’-AGAGAGAGAGGCTAGCTGAGGAGACGGTGACCAGGGTTC -3’)(配列番号25)
New102重鎖特異的プライマーFw(5’-AGAGAGAGAGGTCGACCACCATGGACTGGACCTGGAGGTTCCTCTTTG T -3’)(配列番号26)
New102重鎖特異的プライマーRv(5’-AGAGAGAGAGGCTAGCTGAGGAGACGGTGACCAGGGTT -3’)(配列番号27)
Old6重鎖特異的プライマーFw(5’-AGAGAGAGAGGTCGACCCACCATGGAACTGGGGCTCCGCTG-3’)(配列番号28)
Old6重鎖特異的プライマーRv(5’-AGAGAGAGAGGCTAGCTGAGGAGACGGTGACCAGGGTTC-3’)(配列番号29)
マウス抗体7G3の重鎖の増幅には、UPM(SMART RACE cDNA amplification Kit;クローンテック社)とmH_Rv1プライマー(5’-ATTTTG TCG ACC KYG GTS YTG CTG GCY GGGTG-3’)(配列番号30)を用い、98℃1秒、68℃30秒のサイクルを30回繰り返した。さらに、この反応液1μLを鋳型とし、NUP(SMARTRACEcDNAamplificationKit;クローンテック社)とmH_Rv2プライマー(5’-GCACACYRCTGGACAGGGATCCAGAGTTCC-3’)(配列番号31)を用いて、98℃1秒、68℃30秒のサイクルを20回繰り返した。この後、増幅したPCR産物をPCR purification kit(キアゲン社)により精製し、mH_Rv2プライマー(配列番号31)をプライマーとして、重鎖可変領域の塩基配列の決定を行った。配列情報を基に、以下の特異的プライマーを合成し、このプライマーを用いて反対方向からも配列を決定した。
7G3重鎖特異的プライマーFw(5’-AGAGAGAGAGGTCGACCACCATGGGATGGAGCTGGATCTTTCTC-3’)(配列番号32)
7G3重鎖特異的プライマーRv(5’-AGAGAGAGAGGCTAGCTGCAGAGACAGTGACCAGAGTCCC-3’)(配列番号33)
上記の特異的プライマーを用いてPCRを行い(98℃1秒、60℃30秒、72℃30秒)、重鎖増幅cDNA断片をSalI、NheIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val Larkベクター(IDECPharmaceuticals,N5KG1(USpatent 6001358)の改変ベクター)、に導入した。挿入された配列がdirect sequenceによって決定されたものと同一であることを、ベクターを鋳型として配列を決定することにより確認した。
【0124】
軽鎖は、UPM(SMARTRACEcDNAamplificationKit;クローンテック社)とhk-2(5’-GTT GAAGCT CTT TGT GAC GGG CGA GC-3’)(配列番号34)プライマーを使って、98℃1秒、68℃30秒のサイクルを30回繰り返して増幅した。さらに、この反応液1μLを鋳型とし、NUP(SMARTRACEcDNAamplificationKit;クローンテック社)とhk-6(5’-TGGCGGGAAGATG AAG ACA GAT GGT G-3’)(配列番号35)を用いて、98℃1秒、68℃30秒のサイクルを20回繰り返した。この後、増幅したPCR産物をPCR purification kit(キアゲン社)により精製し、hk-6プライマーを用いて塩基配列を決定した。配列情報を基に、以下の特異的プライマーを合成し、反対方向からも配列を決定した。
Old4軽鎖特異的プライマーFw(5’-AGAGAGAGAGATCTCTCACCATGGACATGAGGGTCC CCG CTC AGC -3’)(配列番号36)
Old4軽鎖特異的プライマーRv (5’-AGAGAGAGAGCGTACGTTTGATCTCCAGCTTGGTCC CCT G -3’)(配列番号37)
Old5軽鎖特異的プライマーFw(5’-AGA GAGAGAGATCTCTCACCATGGACATGAGGGTCCCCG CTC AGC -3’)(配列番号38)
Old5軽鎖特異的プライマーRv (5’-AGAGAGAGAGCGTACGTTTGATCTCCAGCTTGGTCC CCT G -3’)(配列番号39)
Old17軽鎖特異的プライマーFw(5’-AGAGAGAGAGATCTCTCACCATGGACATGAGGGTCC TCG CTC AG -3’)(配列番号40)
Old17軽鎖特異的プライマーRv (5’-AGAGAGAGAGCGTACGTTTGATCTCCAGCTTGGTCC CCT G -3’)(配列番号41)
Old19軽鎖特異的プライマーFw(5’-AGAGAGAGAGATCTCTCACCATGGACATGAGGGTCC TCG CTC AG -3’)(配列番号42)
Old19軽鎖特異的プライマーRv (5’-AGAGAGAGAGCGTACGTTTGATTTCCACCTTGGTCC CTT GGC -3’)(配列番号43)
New102軽鎖特異的プライマーFw (5’-AGAGAGAGAGATCTCTCACCATGGACATGAGGGTCC TCG CTC AG -3’)(配列番号44)
New102軽鎖特異的プライマーRv(5’-AGAGAGAGAGCGTACGTTTGATCTCCAGCTTGG TCC CCT G -3’)(配列番号45)
Old6軽鎖特異的プライマーFw(5’-AGAGAGAGAGATCTCTCACCATGGACATGAGGGTCCCCGCTCAGC-3’)(配列番号46)
Old6軽鎖特異的プライマーRv(5’-AGAGAGAGAGCGTACGTTTGATATCCACTTTGGTCCCAGGGC-3’)(配列番号47)
マウス抗体7G3の軽鎖は、UPM(SMART RACE cDNA amplification Kit;クローンテック社)とmK_Rv1(5’-TT GAA GCT CTT GAC AAT GGG TGA AGT TGAT-3’)(配列番号48)プライマーを使って、98℃1秒、68℃30秒のサイクルを30回繰り返して増幅した。さらに、この反応液1μLを鋳型とし、NUP(SMARTRACEcDNAamplificationKit;クローンテック社)とmK_Rv2(5’- GTAGGTGCTGTCTTTGCTGTCCTGATCAGT-3’)(配列番号49)を用いて、98℃1秒、68℃30秒のサイクルを20回繰り返した。この後、増幅したPCR産物をPCR purification kit(キアゲン社)により精製し、mK_Rv2プライマーを用いて塩基配列を決定した。配列情報を基に、以下の特異的プライマーを合成し、反対方向からも配列を決定した。
7G3軽鎖特異的プライマーFw(5’-AGAGAGAGAGAGATCTCACCATGGAATCACAGACTCAGGTCCTC-3’)(配列番号50)
7G3軽鎖特異的プライマーRv(5’-AGAGAGAGAGCGTACGTTTTATTTCCAGCTTGGTCCCCCC-3’)(配列番号51)
上記の特異的プライマーを用いてPCRを行い(98℃1秒、60℃30秒、72℃30秒)、軽鎖増幅cDNA断片をBglII、BsiWIで消化し、同一酵素で解裂されていたN5KG1-Val Larkベクターに導入した。挿入された配列がdirect sequenceによって決定されたものと同一であることを、ベクターを鋳型として配列を決定することにより確認した。
【0125】
Old4の重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域をコードするDNA並びに重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列をそれぞれ以下に示す。
<Old4 重鎖可変領域>
GACCCGTCGACCACCATGGACTGGACCTGGAGGTTCCTCTTTGTGGTGGCAGCAGCTACAGGTGTCCAGTCCCAGGTCCAGCTGCTACAGTCTGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGGTCCTCGGTGAAGGTCTCATGCAAGGCTTCTGGAGGCACCTTCAGCACCTATGCTATCAGCTGGGTGCGACAGGCCCCTGGACAAGGGCTTGAGTGGATGGGAGGGATCATCCCTATCTTTGGTATAGTAAACTACGCACAGAAGTTCCAGGGCAGAGTCACGATTACCGCGGACGAATCCACGAGTACAGCCTACATGGAACTGAGCAGCCTGAGATCTGAGGACACGGCCGTGTATTATTGTGCGAGAGGGGGGGGCTCGGGCCCAGATGTTCTTGATATCTGGGGCCAAGGGACAATGGTCACCGTCTCTTCAGCTAGCACCAA(配列番号52)
<Old4 重鎖可変領域>
MDWTWRFLFVVAAATGVQSQVQLLQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSTYAISWVRQAPGQGLEWMGGIIPIFGIVNYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGGSGPDVLDIWGQGTMVTVSSASTX(配列番号53)
重鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号52の5'末端から16番目のアデニン(A)からはじまるATGコドンであり、抗体可変領域と定常領域の境界は5'末端から432番目のアデニン(A)と433番目のグアニン(G)間に位置する。重鎖アミノ酸配列において、重鎖可変領域は配列番号53のN末端から139番目のセリン(S)残基までであり、140番目のアラニン(A)以降が定常領域である。遺伝子配列予測ソフトウェア(Signal P ver.2)により、重鎖のシグナル配列は配列番号53のN末端より19番目のセリン(S)までと予測された。成熟体のN末端は配列番号53の20番目のグルタミン(Q)であるものと考えられる。
<Old4 軽鎖可変領域>
CACAGATCTCTCACCATGGACATGAGGGTCCCCGCTCAGCTCCTGGGGCTCCTGCTGCTCTGGCTCCCAGGTGCCAGATGTGTCATCTGGATGACCCAGTCTCCATCCTTACTCTCTGCATCTACAGGAGACAGAGTCACCATCAGTTGTCGGATGAGTCAGGGCATTAGGAGTTATTTAGCCTGGTATCAGCAAAAACCAGGGAAAGCCCCTGAGCTCCTGATCTATGCTGCATCCACTTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTGCAGTCTGAAGATTTTGCAACTTATTACTGTCAACAGTATTATAGTTTCCCGTACACTTTTGGCCAGGGGACCAAGCTGGAGATCAAACGTACGGTGG(配列番号54)
<Old4 軽鎖可変領域>
MDMRVPAQLLGLLLLWLPGARCVIWMTQSPSLLSASTGDRVTISCRMSQGIRSYLAWYQQKPGKAPELLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQSEDFATYYCQQYYSFPYTFGQGTKLEIKRTVX(配列番号55)
軽鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号54の5'末端から16番目のアデニン(A)からはじまるATGコドンであり、抗体可変領域と定常領域の境界は5'末端から402番目のアデニン(A)と403番目のシトシン(C)間に位置する。軽鎖アミノ酸配列において、軽鎖可変領域は配列番号55のN末端から129番目のリジン(K)残基までであり、130番目のアルギニン(R)以降が定常領域である。遺伝子配列予測ソフトウェア(Signal P ver.2)により、軽鎖のシグナル配列は配列番号55のN末端より22番目のシステイン(C)までと予測された。成熟体のN末端は配列番号55の23番目のバリン(V)であるものと考えられる。
【0126】
Old5の重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域をコードするDNA並びに重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列をそれぞれ以下に示す。
<Old5 重鎖可変領域>
GTCGACCACCATGGACTGGACCTGGAGGTTCCTCTTTGTGGTGGCAGCAGCTACAGGTGTCCAGTCCCAGGTCCAGCTGGTGCAGTCTGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGGTCCTCGGTGAAGGTCTCATGCAAGGCTTCTGGAGGCACCTTCAGCACCTATGCTATCAGCTGGGTGCGACAGGCCCCTGGACAAGGGCTTGAGTGGATGGGAGGGCTCATCCCTATCTTTGATATAGAAAACTACGCACAGAAGTTCCAGGGCAGAGTCACGATTACCGCGGACGAATCCACGAGCACAGTCTATATGGAACTGAGCAGCCTGAGATCTGAGGACACGGCCATGTATTACTGTGCGAGAGGGGGGGGTTCGGGCCCTGATGTTCTTGATATCTGGGGCCAAGGGACAATGGTCACCGTCTCTTCAGCTAGC(配列番号56)
<Old5 重鎖可変領域>
MDWTWRFLFVVAAATGVQSQVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSTYAISWVRQAPGQGLEWMGGLIPIFDIENYAQKFQGRVTITADESTSTVYMELSSLRSEDTAMYYCARGGGSGPDVLDIWGQGTMVTVSSAS(配列番号57)
重鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号56の5'末端から11番目のアデニン(A)からはじまるATGコドンであり、抗体可変領域と定常領域の境界は5'末端から427番目のアデニン(A)と428番目のグアニン(G)間に位置する。重鎖アミノ酸配列において、重鎖可変領域は配列番号57のN末端から139番目のセリン(S)残基までであり、140番目のアラニン(A)以降が定常領域である。遺伝子配列予測ソフトウェア(Signal P ver.2)により、重鎖のシグナル配列は配列番号57のN末端より19番目のセリン(S)までと予測された。成熟体のN末端は配列番号57の20番目のグルタミン(Q)であるものと考えられる。
<Old5軽鎖可変領域>
CACAGATCTCTCACCATGGACATGAGGGTCCCCGCTCAGCTCCTGGGGCTCCTGCTGCTCTGGCTCCCAGGTGCCAGATGTGTCATCTGGATGACCCAGTCTCCATCCTTACTCTCTGCATCTACAGGAGACAGAGTCACCATCAGTTGTCGGATGAGTCAGGGCATTAGGAGTTATTTAGCCTGGTATCAGCAAAAACCAGGGAAAGCCCCTGAGCTCCTGATCTATGCTGCATCCACTTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTGCAGTCTGAAGATTTTGCAACTTATTACTGTCAACAGTATTATAGTTTCCCGTACACTTTTGGCCAGGGGACCAAGCTGGAGATCAAACGTACGGTGG(配列番号58)
<Old5 軽鎖可変領域>
MDMRVPAQLLGLLLLWLPGARCVIWMTQSPSLLSASTGDRVTISCRMSQGIRSYLAWYQQKPGKAPELLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQSEDFATYYCQQYYSFPYTFGQGTKLEIKRTVX(配列番号59)
軽鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号58の5'末端から16番目のアデニン(A)からはじまるATGコドンであり、抗体可変領域と定常領域の境界は5'末端から402番目のアデニン(A)と403番目のシトシン(C)間に位置する。軽鎖アミノ酸配列において、軽鎖可変領域は配列番号59のN末端から129番目のリジン(K)残基までであり、130番目のアルギニン(R)以降が定常領域である。遺伝子配列予測ソフトウェア(Signal P ver.2)により、軽鎖のシグナル配列は配列番号59のN末端より22番目のシステイン(C)までと予測された。成熟体のN末端は配列番号59の23番目のバリン(V)であるものと考えられる。
【0127】
Old17の重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域をコードするDNA並びに重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列をそれぞれ以下に示す。
<Old17 重鎖可変領域>
GACCCGTCGACCACCATGGACTGGACCTGGAGGTTCCTCTTTGTGGTGGCAGCAGCTACAGGTGTCCAGTCCCAGGTCCAGCTGGTGCAGTCTGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGGTCCTCGGTGAAGGTCTCCTGCAAGACTTCTGGAGGCACCTTCAGCAACTTTGCTATCAGCTGGGTGCGACAGGCCCCTGGACAAGGGCTTGAGTGGATGGGAGGGATCATCCCTATCTTTGGTTCAACAAACTACGCACAGAAGTTCCAGGGCAGAGTCACGATTAACGCGGACGAATCCACGAGCACAGCCTACATGGAGCTGAGCAGTCTGAGATCTGAGGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGGGTGGAGACAAATATGGTCCTTACTACTTTCACTACTGGGGCCAGGGAACCCTTGTCACCGTCTCCTCAGCTAGC(配列番号60)
<Old17 重鎖可変領域>
MDWTWRFLFVVAAATGVQSQVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKTSGGTFSNFAISWVRQAPGQGLEWMGGIIPIFGSTNYAQKFQGRVTINADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAGGDKYGPYYFHYWGQGTLVTVSSAS(配列番号61)
重鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号60の5'末端から16番目のアデニン(A)からはじまるATGコドンであり、抗体可変領域と定常領域の境界は5'末端から432番目のアデニン(A)と433番目のグアニン(G)間に位置する。重鎖アミノ酸配列において、重鎖可変領域は配列番号61のN末端から139番目のセリン(S)残基までであり、140番目のアラニン(A)以降が定常領域である。遺伝子配列予測ソフトウェア(Signal P ver.2)により、重鎖のシグナル配列は配列番号61のN末端より19番目のセリン(S)までと予測された。成熟体のN末端は配列番号61の20番目のグルタミン(Q)であるものと考えられる。
<Old17 軽鎖可変領域>
AGATCTCTCACCATGGACATGAGGGTCCTCGCTCAGCTCCTGGGGCTCCTGCTGCTCTGTTTCCCAGGTGCCAGATGTGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCACTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGTCGGGCGAGTCAGGGTATTAGCAGCTGGTTAGCCTGGTATCAGCAGAAACCAGAGAAAGCCCCTAAGTCCCTGATCTATGCTGCATCCAGTTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGCGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTGCAGCCTGAAGATTTTGCAACTTATTACTGCCAACAGTATAATAGTTACCCGTACACTTTTGGCCAGGGGACCAAGCTGGAGATCAAACGTACGGT(配列番号62)
<Old17 軽鎖可変領域>
MDMRVLAQLLGLLLLCFPGARCDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPEKAPKSLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYNSYPYTFGQGTKLEIKRTX(配列番号63)
軽鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号62の5'末端から19番目のアデニン(A)からはじまるATGコドンであり、抗体可変領域と定常領域の境界は5'末端から399番目のアデニン(A)と400番目のシトシン(C)間に位置する。軽鎖アミノ酸配列において、軽鎖可変領域は配列番号63のN末端から129番目のリジン(K)残基までであり、130番目のアルギニン(R)以降が定常領域である。遺伝子配列予測ソフトウェア(Signal P ver.2)により、軽鎖のシグナル配列は配列番号63のN末端より22番目のシステイン(C)までと予測された。成熟体のN末端は配列番号63の23番目のアスパラギン酸(D)であるものと考えられる。
【0128】
Old19の重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域をコードするDNA並びに重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列をそれぞれ以下に示す。
<Old19 重鎖可変領域>
TCGACCCCATGGACTGGACCTGGAGGTTCCTCTTTGTGGTGGCAGCAGCTACAGGTGTCCAGTCCCAGGTCCAGCTGGTGCAGTCTGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGGTCCTCGGTGAAGGTCTCCTGCAAGGCTTCTGGAGGCACCTTCAGCAGCTATGCTATCAGCTGGGTGCGACAGGCCCCTGGACAAGGGCTTGAGTGGGTGGGAGGGATCATCCCTATCTTTGGTACAGCAAACTACGCACAGAAGTTCCAGGGCAGAGTCACGATTACCGCGGACGAATCCACGAGCACAGCCTACATGGAGCTGAGCAGCCTGAGATCTGAGGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGAGAGGACACAAATATGGCCCCTACTACTTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGCTAGCACCAAG(配列番号64)
<Old19 重鎖可変領域>
MDWTWRFLFVVAAATGVQSQVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSSYAISWVRQAPGQGLEWVGGIIPIFGTANYAQKFQGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGHKYGPYYFDYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号65)
重鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号64の5'末端から9番目のアデニン(A)からはじまるATGコドンであり、抗体可変領域と定常領域の境界は5'末端から425番目のアデニン(A)と426番目のグアニン(G)間に位置する。重鎖アミノ酸配列において、重鎖可変領域は配列番号65のN末端から139番目のセリン(S)残基までであり、140番目のアラニン(A)以降が定常領域である。遺伝子配列予測ソフトウェア(Signal P ver.2)により、重鎖のシグナル配列は配列番号65のN末端より19番目のセリン(S)までと予測された。成熟体のN末端は配列番号65の20番目のグルタミン(Q)であるものと考えられる。
<Old19 軽鎖可変領域>
AGATCTCTCACCATGGACATGAGGGTCCTCGCTCAGCTCCTGGGGCTCCTGCTGCTCTGTTTCCCAGGTGCCAGATGTGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCACTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGTCGGGCGAGTCAGGGTATTAGCAGCTGGTTAGCCTGGTATCAGCAGAAACCAGAGAAAGCCCCTAAGTCCCTGATCTATGCTGCATCCAGTTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGCGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTGCAGCCTGAAGATTTTGCAACTTATTACTGCCAACAGTATAATAGTTACCCTCGGACGTTCGGCCAAGGGACCAAGGTGGAAATCAAACGTACGGTGGCT(配列番号66)
<Old19 軽鎖可変領域>
MDMRVLAQLLGLLLLCFPGARCDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPEKAPKSLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYNSYPRTFGQGTKVEIKRTVA(配列番号67)
軽鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号66の5'末端から13番目のアデニン(A)からはじまるATGコドンであり、抗体可変領域と定常領域の境界は5'末端から399番目のアデニン(A)と400番目のシトシン(C)間に位置する。軽鎖アミノ酸配列において、軽鎖可変領域は配列番号67のN末端から129番目のリジン(K)残基までであり、130番目のアルギニン(R)以降が定常領域である。遺伝子配列予測ソフトウェア(Signal P ver.2)により、軽鎖のシグナル配列は配列番号67のN末端より22番目のシステイン(C)までと予測された。成熟体のN末端は配列番号67の23番目のアスパラギン酸(D)であるものと考えられる。
【0129】
New102の重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域をコードするDNA並びに重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列をそれぞれ以下に示す。
<New102 重鎖可変領域>
TCGACCACCATGGACTGGACCTGGAGGTTCCTCTTTGTGGTGGCAGCAGCTACAGGTGTCCAGTCCCAGGTCCAGCTGGTGCAGTCTGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGATCCTCGGTGAAGGTCTCCTGCATGGCTTCAGGAGGCACCGTCAGCAGCTACGCTATCAGCTGGGTGCGACAGGCCCCTGGACAAGGGCTTGAGTGGATGGGAGAGATCATCCCTATCTTTGGTATAGTAAACTACGCACAGAAGTTCCAGGGCAGAGTCACGATTACCGCGGACGAATCCACGAACACAGCCTACATGGAGCTGAGCAGCCTGAGATCTGAGGACACGGCCATATATTACTGTGCGAGAGAGACAGCAGTGGCTGGTATTCTTGGTTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGCTAGCACCAAG(配列番号68)
<New102 重鎖可変領域>
MDWTWRFLFVVAAATGVQSQVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCMASGGTVSSYAISWVRQAPGQGLEWMGEIIPIFGIVNYAQKFQGRVTITADESTNTAYMELSSLRSEDTAIYYCARETAVAGILGYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号69)
重鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号68の5'末端から9番目のアデニン(A)からはじまるATGコドンであり、抗体可変領域と定常領域の境界は5'末端から423番目のアデニン(A)と424番目のグアニン(G)間に位置する。重鎖アミノ酸配列において、重鎖可変領域は配列番号69のN末端から138番目のセリン(S)残基までであり、139番目のアラニン(A)以降が定常領域である。遺伝子配列予測ソフトウェア(Signal P ver.2)により、重鎖のシグナル配列は配列番号69のN末端より19番目のセリン(S)までと予測された。成熟体のN末端は配列番号69の20番目のグルタミン(Q)であるものと考えられる。
<New102 軽鎖可変領域>
AGATCTCTCACCATGGACATGAGGGTCCTCGCTCAGCTCCTGGGGCTCCTGCTGCTCTGTTTCCCAGGTGCCAGATGTGACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCACTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGTCGGGCGAGTCAGGGTATTAGCAGCTGGTTAGCCTGGTATCAGCAGAAACCAGAGAAAGCCCCTAAGTCCCTGATCTATGCTGCATCCAGTTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGCGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTGCAGCCTGAAGATTTTGCAACTTATTACTGCCAACAGTATAATAGTTACCCGTACACTTTTGGCCAGGGGACCAAGCTGGAGATCAAACGTACGGTGGCTGCA(配列番号70)
<New102軽鎖可変領域>
MDMRVLAQLLGLLLLCFPGARCDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPEKAPKSLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYNSYPYTFGQGTKLEIKRTVAA(配列番号71)
軽鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号70の5'末端から13番目のアデニン(A)からはじまるATGコドンであり、抗体可変領域と定常領域の境界は5'末端から399番目のアデニン(A)と400番目のシトシン(C)間に位置する。軽鎖アミノ酸配列において、軽鎖可変領域は配列番号71のN末端から129番目のリジン(K)残基までであり、130番目のアルギニン(R)以降が定常領域である。遺伝子配列予測ソフトウェア(Signal P ver.2)により、軽鎖のシグナル配列は配列番号71のN末端より22番目のシステイン(C)までと予測された。成熟体のN末端は配列番号71の23番目のアスパラギン酸(D)であるものと考えられる。
【0130】
Old6の重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域をコードするDNA並びに重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列をそれぞれ以下に示す。
<Old6重鎖可変領域>
CGACCCACCATGGAACTGGGGCTCCGCTGGGTTTTCCTTGTTGCTATTTTAGAAGGTGTCCAGTGTGAGGTGCAGTTGGTGGAGTCTGGGGGAGGCCTGGTCAAGCCTGGGGGGTCCCTGAGACTCTCCTGTGCAGCCTCTGGATTCACCTTCAGTAGCCATAACATGAACTGGGTCCGCCAGGCTCCAGGGAAGGGGCTGGAGTGGGTCTCATCCATTAGTAGTAGTAGTAGTTACATATATTATGCAGACTCAGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCAGAGACAACGCCAAGAACTCACTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAGAGCCGAGGACACGGCTGTGTATTACTGTGCGAGAGAGGACTGGGGCTACTTTGACTACTGGGGCCAGGGAACCCTGGTCACCGTCTCCTCAGCTAGC(配列番号72)
<Old6重鎖可変領域>
MELGLRWVFLVAILEGVQCEVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGFTFSSHNMNWVRQAPGKGLEWVSSISSSSSYIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREDWGYFDYWGQGTLVTVSSASTK(配列番号73)
重鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号72の5'末端から10番目のアデニン(A)からはじまるATGコドンであり、抗体可変領域と定常領域の境界は5'末端から417番目のアデニン(A)と418番目のグアニン(G)間に位置する。重鎖アミノ酸配列において、重鎖可変領域は配列番号73のN末端から136番目のセリン(S)残基までであり、137番目のアラニン(A)以降が定常領域である。遺伝子配列予測ソフトウェア(Signal P ver.2)により、重鎖のシグナル配列は配列番号73のN末端より19番目のシステイン(C)までと予測された。成熟体のN末端は配列番号73の20番目のグルタミン酸(E)であるものと考えられる。
<Old6軽鎖可変領域>
AGATCTCTCACCATGGACATGAGGGTCCCCGCTCAGCTCCTGGGGCTTCTGCTGCTCTGGCTCCCAGGTGCCAGATGTGCCATCCAGTTGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCAGGGCATTAGCAGTGATTTAGCCTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCTCCTAAGCTCCTGATCTATGATGCCTCCAGTTTGGAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGCGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGCCTGCAGCCTGAAGATTTTGCAACTTATTACTGTCAACAGTTTAATAGTTACCCATTCACTTTCGGCCCTGGGACCAAAGTGGATATCAAACGTACGGT(配列番号74)
<Old6軽鎖可変領域>
MDMRVPAQLLGLLLLWLPGARCAIQLTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGISSDLAWYQQKPGKAPKLLIYDASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQFNSYPFTFGPGTKVDIKRTVAA(配列番号75)
軽鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号74の5'末端から13番目のアデニン(A)からはじまるATGコドンであり、抗体可変領域と定常領域の境界は5'末端から399番目のアデニン(A)と400番目のシトシン(C)間に位置する。軽鎖アミノ酸配列において、軽鎖可変領域は配列番号75のN末端から129番目のリジン(K)残基までであり、130番目のアルギニン(R)以降が定常領域である。遺伝子配列予測ソフトウェア(Signal P ver.2)により、軽鎖のシグナル配列は配列番号75のN末端より23番目のシステイン(C)までと予測された。成熟体のN末端は配列番号75の24番目のアラニン(A)であるものと考えられる。
【0131】
7G3の重鎖可変領域、及び軽鎖可変領域をコードするDNA並びに重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列をそれぞれ以下に示す。
<7G3重鎖可変領域>
GTCGACCACCATGGGATGGAGCTGGATCTTTCTCTTTCTCGTGTCAGGAACTGGAGGTGTCCTCTCTGAGGTCCAGCTGCAACAGTCTGGACCTGAGCTGGTGAAGCCTGGGGCTTCAGTAAAGATGTCCTGCAAGGCTTCTGGATACACCTTCACTGACTACTACATGAAGTGGGTGAAACAGAGCCATGGAAAGAGCCTTGAGTGGATTGGAGATATTATTCCTAGCAATGGTGCCACTTTCTACAACCAGAAGTTCAAGGGCAAGGCCACTTTGACTGTGGACAGATCCTCCAGCACAGCCTACATGCACCTCAACAGCCTGACATCTGAGGACTCTGCAGTCTATTACTGTACAAGATCGCATTTACTGCGGGCCTCCTGGTTTGCTTACTGGGGCCAAGGGACTCTGGTCACTGTCTCTGCAGCTAGC(配列番号76)
<7G3重鎖可変領域>
MGWSWIFLFLVSGTGGVLSEVQLQQSGPELVKPGASVKMSCKASGYTFTDYYMKWVKQSHGKSLEWIGDIIPSNGATFYNQKFKGKATLTVDRSSSTAYMHLNSLTSEDSAVYYCTRSHLLRASWFAYWGQGTLVTVSAAS(配列番号77)
重鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号76の5'末端から16番目のアデニン(A)からはじまるATGコドンであり、抗体可変領域と定常領域の境界は5'末端から427番目のアデニン(A)と428番目のグアニン(G)間に位置する。重鎖アミノ酸配列において、重鎖可変領域は配列番号77のN末端から139番目のアラニン(A)残基までであり、140番目のアラニン(A)以降が定常領域である。遺伝子配列予測ソフトウェア(Signal P ver.2)により、重鎖のシグナル配列は配列番号77のN末端より19番目のセリン(S)までと予測された。成熟体のN末端は配列番号77の20番目のグルタミン酸(E)であるものと考えられる。
<7G3軽鎖可変領域>
AGATCTCACCATGGAATCACAGACTCAGGTCCTCATGTCCCTGCTGTTCTGGGTATCTGGTACCTGTGGGGACTTTGTGATGACACAGTCTCCATCCTCCCTGACTGTGACAGCAGGAGAGAAGGTCACTATGAGCTGCAAGTCTAGTCAGAGTCTGTTAAACAGTGGAAATCAAAAGAACTACTTGACCTGGTATCTGCAGAAACCAGGGCAGCCTCCTAAATTGTTGATCTATTGGGCATCCACTAGGGAATCTGGGGTCCCTGATCGCTTCACAGGCAGTGGATCTGGAACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTGTGCAGGCTGAAGACCTGGCAGTTTATTACTGTCAGAATGATTATAGTTATCCGTACACGTTCGGAGGGGGGACCAAGCTGGAAATAAAACGT(配列番号78)
<7G3軽鎖可変領域>
MESQTQVLMSLLFWVSGTCGDFVMTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYLQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAVYYCQNDYSYPYTFGGGTKLEIKR(配列番号79)
軽鎖DNAの翻訳開始点は、配列番号78の5'末端から11番目のアデニン(A)からはじまるATGコドンであり、抗体可変領域と定常領域の境界は5'末端から409番目のアデニン(A)と410番目のシトシン(C)間に位置する。軽鎖アミノ酸配列において、軽鎖可変領域は配列番号79のN末端から133番目のリジン(K)残基までであり、134番目のアルギニン(R)以降が定常領域である。遺伝子配列予測ソフトウェア(Signal P ver.2)により、軽鎖のシグナル配列は配列番号79のN末端より22番目のグリシン(G)までと予測された。成熟体のN末端は配列番号79の22番目のアスパラギン酸(D)であるものと考えられる。
(組換え型抗体の作製)
構築した6種類の組換え型抗体発現ベクターを宿主細胞に導入し、組換え型抗体発現細胞を作製した。発現のための宿主細胞には、HEK293F(Invitrogen社)を用いた。
293フェクチン(Invitrogen社)を用いてHEK293Fに発現ベクターを導入した。HEK293Fは、シェーカーを用いてCO2 5%、37℃の環境下で培養し、約5日後に培養上清を回収した。回収した培養上清をrmpProtein A(アマシャムファルマシアバイオテク社)及び精製量に応じて0.8×40cmカラム(バイオラッド社)などを用い、吸着緩衝液としてPBS、溶出緩衝液として0.02M グリシン緩衝液(pH 3)を用いてアフィニティー精製した。溶出画分は1M Tris (pH 9.0)を添加してpH7.2付近に調整した。調製された抗体溶液は、透析膜(10000カット、SpectrumLaboratories社)を用いてPBSに置換し、孔径0.22μmのメンブランフィルターMILLEX-GV(ミリポア社)でろ過滅菌し、精製ヒト抗IL-3Rαモノクローナル抗体を得た。精製抗体の濃度は280nmの吸光度を測定し、1mg/mL を1.4 ODとして算出した。
各ヒト抗体のCDR(相補性決定部位;complementarity-determiningregion)のアミノ酸配列および配列番号の一覧を表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
実施例5 ハイブリドーマ培養上清から抗IL-3Rαヒト抗体の精製
ハイブリドーマは実施例3で用いられたIL-6入りDMEM培地より、E-RDF培地(極東製薬)に馴化させ培養した後、該培養上清より抗体を精製した。抗体精製は、実施例4に記載の方法に従って実施した。
まずヒト抗IL-3Rαモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを10ng/mlIL-6、10% Fetal Calf Serum(FCS:SIGMA社)含有eRDF培地(極東製薬社)に馴化した。次に、ウシインシュリン(5μg/mL、ギブコ・ビーアールエル社)、ヒトトランスフェリン(5μg/mL、ギブコ・ビーアールエル社)、エタノールアミン(0.01mM、シグマ社)、亜セレン酸ナトリウム(2.5x10-5mM、シグマ社)、1% Low IgG FCS(HyClone社)含有eRDF培地(極東製薬社)に馴化した。この馴化したハイブリドーマをフラスコにて培養し、培養上清を回収した。回収した上清は、10μmと0.2μmのフィルター(ゲルマンサイエンス社)に供し、ハイブリドーマ等の雑排物を除去した。回収した培養上清より、実施例4と同様の方法により、抗体を精製した。
実施例6 精製した抗IL-3Rαヒト抗体を用いた解離定数の算出
精製した抗IL-3Rα抗体の解離定数を、表面プラズモン共鳴の原理による解析装置(Biacore、GEHealthcare社、以下GE社)を用いて解析した。簡単には、抗ヒト抗体或いは抗マウス抗体をCM5センサーチップに固相化し、次に抗IL-3Rαヒト或いはマウス抗体を流して結合させ、次いで実施例2で作製した可溶化IL-3Rαタンパク質を流し、結合解離をBiacore2000を用いて観察した。全実験工程を通して、基本的にはGEHealthcare社の解離定数算出のための実験方法を参照した。
【0134】
具体的には、センサーチップはCM5(リサーチグレード)を用いた(何れもGE社)。まず、CM5チップを400mMEDC(N-ethyl-N’-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimidehydrochloride)と100mM NHS(N-hydroxysuccinimide)を等量混合したものをCM5チップに流して活性化させた。次に、HumanAntibody CaptureKit(GE社)付属のヒト抗体に対する抗体(以下、抗ヒト抗体抗体と称す)をキット付属の溶液に希釈して流し、CM5チップに抗ヒト抗体抗体を必要量固相化させた。対照となるマウス抗体に関しては、MouseAntibodyCaptureKit(GE社)付属のマウス抗体に対する抗体(以下、抗マウス抗体抗体と称す)をキット付属の溶液に希釈して流し、CM5チップに必要量固相化させた。次に、1Methanolamidehydrochlorideを流し、活性化したチップ表面をブロッキングし不活化させた。ここまでの工程で、解離定数Kを測定可能なCM5センサーチップの準備が完成した。
【0135】
次に、抗IL-3Rα抗体を1フローセルに1種類ずつHBS-EPバッファー(GE社)に5μg/mLに希釈して流し、固相化された抗ヒト抗体抗体或いは抗マウス抗体抗体に結合させた。次に、可溶化IL-3Rαタンパク質を流した。結合した抗IL-3Rα抗体及び可溶化IL-3Rαタンパク質を解離させるため、Human AntibodyCaptureKit付属の3M MgCl2、或いはMouseAntibodyCaptureKit付属のpH1.7Glycine-HClをキット付属の量を流した。ここまでの工程を1ステップとし、同様の工程を可溶化IL-3Rαタンパク質を複数の濃度で繰り返すことで、結合解離定数を算出するためのデータ(センサーグラム)を取得した。
【0136】
アナライトとして流した可溶化型ヒトIL-3Rα蛋白質の濃度は実施例2記述のように、280nmの吸光度を測定し、1mg/mLを1.4 ODとして算出した。可溶化型ヒトIL-3Rα蛋白質の分子量は以下のように算出した。ヒトIL-3Rα蛋白質の分子量は、アミノ酸360残基で、6箇所のN型糖鎖結合部位を有し、分子量は70KDaと報告されている(TheCytokine FactsBook第二版、AcademicPress)。よって、可溶化型ヒトIL-3Rα蛋白質の分子量は、文献情報の70kDaより、膜貫通部位及び膜内領域のアミノ酸の分子量を引き、Flag配列のアミノ酸を足し、約63kDaと算出した。
【0137】
解析は、Biaevaluationソフト(GE社)を用い、BiaevaluationSoftwareHandbookを参照した。具体的には、Kinetics解析の同時解析を実施し、基本的に1:1Langmuir Bindingの反応モデルを採用してフィッティングし、結合速度定数(Ka)及び解離速度定数(Kd)を算出し、Kd/Kaの計算により解離定数KD値を算出した。
結果を以下の表2に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
実施例7 抗ヒトIL-3Rαヒト抗体のエピトープ解析
(IL-3Rα/GM-CSFRαキメラタンパク発現細胞の作製)
IL-3Rα抗体のエピトープ解析を実施するため、IL-3Rαの膜外領域の一部をGM-CSFRαと置き換えたキメラタンパクを細胞に発現させ、その細胞に対する各抗IL-3Rα抗体の結合性を解析した。簡単には、第一に、IL-3Rα分子およびGM-CSFRα分子を3領域に区分けし(上述のN末端よりA、B、Cドメイン)、第二に、IL-3Rα分子のA、B、Cドメインの1つずつをGM-CSFRαの該当するドメインと置き換えた分子を発現させるベクターをそれぞれ構築し、第三にHEK293F細胞に強制発現させ、第四としてフローサイトメトリーにて蛍光色素でラベルした各抗IL-3Rα抗体が結合するか観察した。
(GM-CSFR / pEF6/Myc-HisCプラスミドDNAの作製)
ヒトGM-CSF受容体α鎖(GM-CSFRα、CD116)のcDNAは脾臓由来cDNA(CLONTECHHumanMTC Panel)よりKOD-Plus-Ver.2(東洋紡績株式会社)を用いたPCR法により増幅した。PCR装置はGeneAmp PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ)を用いた。PCR反応は94℃2分間の変性段階につづいて、98℃10秒-55℃30秒-68℃75秒の3ステップ反応を35サイクル行った。用いたPCRプライマーは以下のとおりである:
hCD116Fw-MfeI:5’-CGGCAATTGCCACCATGCTTCTCCTGGTGACAAGCCT-3’(配列番号80)
hCD116Rv-NotI:5’-ATTGCGGCCGCTCAGGTAATTTCCTTCACGG-3’(配列番号81)
得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(TAE buffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。1.2 kb付近のバンドを切り出し、DNAをJETsorbキット(Genomed、Bad Oeynhausen、Germany)を用いて抽出した後、NotIおよびMfeIで消化した。pEF6/Myc-HisCプラスミドDNA(インビトロジェン社)をEcoRIおよびNotIで消化した。それぞれのDNAを0.8%アガロースゲル電気泳動し、1.2 kb付近と6 kb付近のバンドを切り出し、DNAをJETsorbキット(Genomed、Bad Oeynhausen、Germany)を用いて抽出した。pEF6/Myc-HisCプラスミドDNA由来DNA溶液0.5uLとPCR産物由来DNA溶液4 uLを混合し、TaKaRaLigationKit(タカラバイオ株式会社)を用い連結した。形質転換は、ライゲーションサンプルとDH5alphaコンピテント細胞と混合し、LBプレートへ撒いた。インサートチェックは、LA Taq(タカラバイオ株式会社)を用いたコロニーダイレクトPCRにより行った。PCR反応は94℃5分間の変性段階につづいて、94℃30秒-55℃30秒-72℃2分の3ステップ反応を40サイクル行った後、99℃30分間の処理を行った。
【0140】
用いたPCRプライマーは以下のとおりである:
hCD116Fw-MfeI:5’-CGGCAATTGCCACCATGCTTCTCCTGGTGACAAGCCT-3’(配列番号82)
hCD116Rv-NotI:5’-ATTGCGGCCGCTCAGGTAATTTCCTTCACGG-3’(配列番号83)
得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。1.2kb付近の増幅が得られたコロニーを対象に、ダイレクトシークエンシング法により塩基配列を決定した。シークエンスサンプルの反応はBigDye(R) Terminator v3.1Cycle Sequencing Kit(アプライドバイオシステムズ)とGeneAmp PCR System 9700(アプライドバイオシステムズ)を用いた(本明細書における全てのDNA配列解析でこれらを使用)。用いたPCRプライマーは以下のとおりである:
hCD116Fw-MfeI:5’-CGGCAATTGCCACCATGCTTCTCCTGGTGACAAGCCT-3’(配列番号84)
hCD116Rv-NotI:5’-ATTGCGGCCGCTCAGGTAATTTCCTTCACGG-3’(配列番号85)
hCD116SeqFw1:5’-TGAACTGTACCTGGGCGAGG-3’ (配列番号86)
hCD116SeqFw2:5’-CTGGCACGGAAAACCTACTG-3’ (配列番号87)
hCD116SeqRv1:5’-CCTGAATTTGGATAAAGCAG-3’ (配列番号88)
シークエンス解析装置はABI 3700XL DNA analyzer(アプライドバイオシステムズ)を用いた(本明細書における全てのDNA配列解析でこれを使用)。PCRによるアミノ酸配列の変異がおこっていないクローンを選定し、ラージプレップ法(キアゲン社)によりプラスミドDNAを抽出した。
(IL-3RA-FLAG/pEGFP-N1の作製)
ヒトIL-3Rα(CD123)の全長cDNAをPCR法で増幅し、下流にFLAGタグを連結した(IL-3RA-FLAG/pEGFP-N1)。
【0141】
ヒトIL-3RAのcDNAはhCD123 / pEGFP-N1プラスミドDNAを鋳型としLATaq (タカラバイオ株式会社)を用いたPCR法により増幅した。PCR反応は95℃30秒の変性段階に続いて、95℃15秒-56℃15秒-72℃60秒の3ステップ反応を10サイクル行った後、2分間の伸長反応を行った。用いたPCRプライマーは以下のとおりである:
T7: 5’-TAATACGACTCACTATAGGG -3’ (配列番号89)
hCD123-C-FLAG-R1: 5’-TCGTCATCGTCCTTGTAGTCAGTTTTCTGCACGACCTGTA-3’ (配列番号90)
得られたPCR産物2 uLを鋳型に、LA Taq (タカラバイオ株式会社) を用いたPCR法により増幅した。PCR反応は95℃1分間の変性段階につづいて、95℃15秒-56℃15秒-72℃60秒の3ステップ反応を15サイクル行った後、72℃2分間の伸長反応を行った。用いたPCRプライマーは以下のとおりである:
IL-3Rα_Fw: 5’-CGGCAATTGCCACCATGGTCCTCCTTTGGCTCAC−3’(配列番号91)
C-FLAG-NotR2:5’-AAAAGCGGCCGCTCACTTGTCGTCATCGTCCTTGTAGTC-3’ (配列番号92)
得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。1kb付近のバンドを切り出し、DNAをWizardSV Gel and PCR Clean-Up Systemを用いて抽出した。抽出したDNA全量をMfeIおよびNotIで消化し、0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。1kb付近のバンドを切り出し、DNAをWizardSVGelandPCRClean-UpSystemを用いて抽出した。抽出したIL-3RA-FLAGcDNA5uLとEcoRIおよびNotIで開裂したpEGFP-N1プラスミドDNA DNA 1uLを混合し、TaKaRa Ligation Kit(タカラバイオ株式会社)を用い連結した。形質転換は、ライゲーションサンプルとDH10Bコンピテント細胞と混合し、LBプレート(カナマイシン含有)へ撒いた。インサートチェックは、LA Taq(タカラバイオ株式会社)を用いたコロニーダイレクトPCRにより行った。PCR反応は95℃1分間の変性段階につづいて、95℃15秒-56℃15秒-72℃60秒の3ステップ反応を35サイクル行った後、72℃2分間の伸長反応を行った。用いたPCRプライマーは以下のとおりである:
pEGFP-N1-Fw: 5’-CGTGTACGGTGGGAGGTCTA-3’ (配列番号93)
pEGFP-N1-Re: 5’-TTTATGTTTCAGGTTCAGG-3’ (配列番号94)
0.8kb付近の増幅が得られたコロニーから、ミニプレップ法によりプラスミドDNAを抽出した。
【0142】
精製したIL-3RA-FLAG/pEGFP-N1 plasmid DNAはDNA配列解析によりPCRによる変異が入っていないこととFLAGタグの存在を確認した。DNA配列解析に用いたプライマーは以下のとおりである:
pEGFP-N1-Fw: 5’-CGTGTACGGTGGGAGGTCTA-3’ (配列番号95)
pEGFP-N1-Re: 5’-TTTATGTTTCAGGTTCAGG-3’ (配列番号96)
(IL-3Rαのドメインマッピング)
BLASTP search(database:ProteinDataBankproteins(pdb))の結果、IL-13受容体alpha鎖(IL-13Rα)が最も高いスコアでヒットした(PDB: 3BPNC;ChainC,CrystalStructureOfTheIl4-Il4r-Il13raTernaryComplex)。ProteinDataBankからダウンロードしたPDBファイルとグラフィックソフトであるRasMolを用いてIL-13Rα蛋白質の立体構造を可視化し、細胞外領域を構成する3つのドメイン(上述のA、B及びCドメイン)を分割した。Multiple AlignmentソフトであるMUSCLEを用いてIL-3Rαアミノ酸配列とIL-13Rαアミノ酸配列を比較し、IL-3Rα細胞外領域も3つのドメインに区分した。さらに、GM-CSFRαとIL-3Rαを同様に比較し、GM-CSFRα細胞外領域も3つのドメインに区分した。
【0143】
抗ヒトIL-3Rαヒト抗体のエピトープを特定するため、上記のように区分したIL-3Rαの3ドメインを1つずつGM-CSFRαの該当ドメインに置換したタンパクを作製し、細胞膜上に発現させ、抗体の結合の有無を確認した。
IL-3RA-FLAG/pEGFP-N1プラスミドDNAを鋳型としPrimeSTAR(R) HS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社)を用いたPCR法により増幅した。PCR反応は98℃10秒-68℃6分の2ステップ反応を25サイクル行った。用いたPCRプライマーは以下のとおりである:
Aドメイン欠損;
CD123R11pEGFPN1:AAAGGTACCGAATTCGAAGCTTGAGCTC(配列番号97)
CD123F11:AAAGGTACCGGGAAGCCTTGGGCAGGT(配列番号98)
Bドメイン欠損;
CD123R12-2:AAAGGTACCACTGTTCTCAGGGAAGAGGAT(配列番号99)
CD123F12-2:AAAGGTACCCAGATTGAGATATTAACTCC(配列番号100)
Cドメイン欠損;
CD123R13: AAAGGTACCTGAAAAGACGACAAACTT(配列番号101)
CD123F13:AAAGGTACCTCGCTGCTGATCGCGCTG(配列番号102)
得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。増幅を確認後、WizardSVGelandPCRClean-UpSystemを用いて精製した。得られたDNAをKpnIとDpnIで消化後、WizardSVGelandPCRClean-Up Systemを用いて精製し、TaKaRaLigationKitを用いて連結した。形質転換は、ライゲーションサンプルとDH10Bコンピテント細胞と混合し、LBプレート(カナマイシン含有)へ撒いた。インサートチェックは、LA Taq(タカラバイオ株式会社)を用いたコロニーダイレクトPCRにより行った。PCR反応は95℃1分間の変性段階につづいて、95℃15秒-56℃15秒-72℃40秒の3ステップ反応を38サイクル行った後、72℃2分間の伸長反応を行った。用いたPCRプライマーは以下のとおりである:
pEGFP-N1-Fw:5’-CGTGTACGGTGGGAGGTCTA -3’ (配列番号103)
pEGFP-N1-Re:5’-TTTATGTTTCAGGTTCAGG -3’ (配列番号104)
得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。1kb付近の増幅が得られたコロニーからミニプレップ法によりプラスミドDNAを抽出した。
【0144】
GM-CSFR / pEF6/Myc-HisCプラスミドDNAを鋳型としPrimeSTAR(R) HS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社)を用いたPCR法により増幅した。PCR反応は98℃10秒-68℃30秒の2ステップ反応を25サイクル行った。用いたPCRプライマーは以下のとおりである:
Aドメイン挿入;
GM-CSFRF11:AAAGGTACCGCCACCATGCTTCTCCTGGTGACA(配列番号105)
GM-CSFRR11:AAAGGTACCTGAATTTGGATAAAGCAG(配列番号106)
Bドメイン挿入;
GM-CSFRF12:AAAGGTACCGGAAGGGAGGGTACCGCT(配列番号107)
GM-CSFRR12:AAAGGTACCCTTTGTGTCCAAAAGTGA(配列番号108)
Cドメイン挿入;
GM-CSFRF13:AAAGGTACCAAAATAGAACGATTCAAC(配列番号109)
GM-CSFRR13:AAAGGTACCAATGTACACAGAGCCGAG(配列番号110)
得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。増幅を確認後、WizardSVGelandPCRClean-UpSystemを用いて精製した。
【0145】
得られたDNAをKpnIで消化後、QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社)を用いて精製し、対応するドメインを欠損したIL-3RA-FLAG/pEGFP-N1プラスミドDNA(KpnIで開裂、精製済)と混合し、TaKaRa Ligation Kitを用いて連結した。形質転換は、ライゲーションサンプルとDH10Bコンピテント細胞と混合し、LBプレート(カナマイシン含有)へ撒いた。インサートチェックは、LA Taq(タカラバイオ株式会社)を用いたコロニーダイレクトPCRにより行った。PCR反応は95℃1分間の変性段階につづいて、95℃15秒-56℃15秒-72℃40秒の3ステップ反応を38サイクル行った後、72℃2分間の伸長反応を行った。用いたPCRプライマーは以下のとおりである:
pEGFP-N1-Fw:5’-CGTGTACGGTGGGAGGTCTA -3’ (配列番号111)
pEGFP-N1-Re:5’-TTTATGTTTCAGGTTCAGG -3’ (配列番号112)
得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。1kb付近の増幅が得られたコロニーからミニプレップ法によりプラスミドDNAを抽出した。
(抗IL-3Rα抗体の蛍光色素のラベル化)
抗ヒトIL-3Rαヒト抗体が結合するか確認するため、各ヒト抗体を蛍光色素AlexaFlour488(Molecular Probe, Invitrogen社)でラベルした。ラベル方法は、Invitrogen社頒布のマニュアルに従い、検出はフローサイトメトリー(FACSCalibur、BD Biosciences社)のFL1にて蛍光を検出した。
【0146】
具体的には、PBSに溶解している抗体溶液に、1/10量の1M Na2CO3を添加した。次に、tetrafluorophenyl(TFP)が付加されたAlexaFlour488の粉末が含まれる容器にマニュアル記載の所定量の抗体溶液を添加し、攪拌させながら1時間暗所室温にて反応させた。次に、ゲルろ過カラム(NAP-10など、GEヘルスケア社)をPBSで十分置換した後に、AlexaFlour488で反応させた抗体の溶液を添加し、黄緑色を呈した抗体画分を取得しつつ、抗体溶液のバッファーをPBSに置換した。以上のように取得したAlexaFlour488をラベルした抗ヒトIL-3Rα抗体は、吸光度計にて280nm及び494nmの波長の吸光度(それぞれA280、A494)を測定し、次の計算式にて、抗体濃度を算出した。
抗体濃度(mg/mL)=(A280 − A494 × 0.11)/1.4
(ラベル化抗IL-3Rα抗体を用いたIL-3Rα/GM-CSFRαキメラタンパク発現細胞のフローサイトメトリー解析)
IL-3Rα/GM-CSFRαキメラタンパク発現細胞の作製には、HEK293T細胞(ATCC CRL 1268)を用いた。293フェクチン(Invitrogen社)を用いて、HEK293Tに上記で取得したプラスミドDNAを発現ベクターとして導入した。発現ベクターを導入したHEK293Tは、シェーカーを用いてCO2 5%、37℃の環境下で培養し、導入2日後にフローサイトメトリー解析に用いた。
【0147】
キメラタンパク発現細胞を100,000〜1,000,000個に対して、1μg/mLの濃度のAlexaFlour488ラベルヒト抗体或いは市販のFITCラベルされた抗IL-3Rαマウス抗体(7G3、9F5:何れもBDBiosciences社、6H6:AcrisAntibodies社、AC145:MiltenyiBiotec社、107D2.08:Dendritics社)を、30分間氷上にて反応させた。抗体及び細胞の希釈には、ステイニングメディウム(2%牛胎児血清、2mM EDTA、0.05% NaN3を添加したDulbecco’s PBS)を用いた。次に、抗体と反応させた細胞をステイニングメディウムにて3回洗浄し、フローサイトメトリーにて細胞にラベルされた抗体が結合したかを確認した。
【0148】
その結果を図1及び2に示す。7G3、9F5、6H6、AC145抗体はAドメインをGM-CSFRαに置換させたタンパク発現細胞のみにおいて、反応が消失した。一方、Old4、Old5、Old19、New102、抗体は、BドメインをGM-CSFRαに置換させたタンパク発現細胞への反応が消失した。Old19に関しては、AドメインをGM-CSFRαに置換させたタンパク発現細胞への反応も消失した。Old6、107D2.08は、Bドメイン、Cドメインを置換させたタンパク発現細胞への反応が消失した。
【0149】
以上より、7G3、9F5、6H6、AC145はAドメイン、Old4、Old5、New102はBドメイン、Old19はAドメインとBドメイン、Old6、107D2.08はBドメインとCドメイン、をそれぞれ認識する可能性が示された。したがって、各種抗IL-3Rα抗体のIL-3RαのA〜Cドメインへの反応性は以下の表3の通りであった。
【表3】
実施例8 抗IL-3Rα抗体のIL-3シグナルのブロッキング能の解析
得られたIL-3Rα抗体がIL-3シグナルを阻害しないか検討するため、IL-3又はGM-CSF依存性に増殖する細胞株TF-1(DMSZ no.ACC344)を用いた。
具体的には、TF-1細胞を、IL-3を1ng/mL及び10%牛胎児血清を含んだRPMI1640培地(TF-1培地)に希釈し、96穴プレートに撒いた。さらに、各種IL-3Rα抗体および陰性コントロール抗体としてヒト血清由来IgGをTF-1培地に希釈し96穴プレートに移し、抗体の最終濃度が10及び100μg/mLの最終濃度になるように添加した。対照として、細胞なしの培地のみのウェル、TF-1細胞が添加されたウェルを設けた。3日間37℃5%CO2環境下で培養し、CelltiterGlo(Promega社)を培地と同量添加した。30分静置した後、プレートリーダ(ARBO、PerkinElmer社)を用いて発光量を定量した。
増殖の阻害率は、以下の計算を行った:
(サンプルの発光量−細胞なしのウェル)/(TF-1細胞のみ添加したウェル−細胞なしのウェル)x100(%)
市販抗体9F5、6H6、107D2.08に関しては、バッファーをPBSに置換するため、NAP-5カラムを利用した。具体的には、PBSにて十分に置換したNAP-5カラムに0.5mLの抗体溶液を添加した。次に1.0mLのPBSを添加し、カラムより出てきた溶液を回収した。溶液は、孔径0.22μmのメンブランフィルターMILLEX-GV(ミリポア社)でろ過滅菌し、PBSを溶媒とした抗体を得た。抗体の濃度は280nmの吸光度を測定し、1mg/mLを1.4 ODとして算出した。
結果を図5に示す。Old4抗体、Old5抗体、Old17抗体、Old19抗体、New102抗体、9F5抗体、6H6抗体はIL-3シグナルを阻害しないことが判明し、一方7G3抗体、Old6抗体、107D2.08抗体はIL-3シグナルを阻害することが判明した。
実施例9 抗IL-3Rαヒト抗体を用いたコロニー形成能への影響の検討
各種IL-3Rα抗体が造血前駆細胞によるコロニー形成能に影響しないか、コロニーアッセイを行った。
【0150】
簡単には、エリスロポエチン、IL-3、G-CSF、Stem Cell Factor、を添加したMethocult培地(StemCellTechnologie社)に、臍帯血由来CD34陽性細胞(AllCells社)を400 cells/mLで添加し、14日から16日後にコロニー数を測定した。コロニーは、Granulocyte/Macrophage系コロニー(CFU-GM)、Erythroid系コロニー(BFU-E)、混合コロニー(CFU-Mix又はCFU-GEMM)に分類して計測した。コロニーの種類の分類方法に関しては、StemCellTechnologie社のマニュアル或いは各種血液学教科書を参照した。
【0151】
抗体は、実施例8においてIL-3シグナルのブロッキング能が認められた抗体としてキメラ7G3抗体、ブロッキング能が認められない抗体としてNew102抗体をそれぞれ用いた。
結果を図6に示す。エリスロポエチン、IL-3、G-CSF、StemCell Factorを添加したコロニーアッセイにおいて、IL-3シグナルのブロッキング能を有する7G3抗体の添加により、コロニー数の減少およびコロニーサイズの減少が認められた。一方New102抗体添加によるコロニー数の変化は認められなかった。この結果より、IL-3シグナルを阻害またはブロッキングしないほうが、正常の造血機能に与える影響は小さく、副作用が少ないことが推測される。
実施例10 抗IL-3Rαヒト抗体を用いたマウス担ガンモデルにおける抗腫瘍効果
得られた抗IL-3Rα抗体をマウス担ガンモデルに投与し、その抗腫瘍効果を検討した。簡単には、マウスに白血病細胞を尾静脈より移入し、翌日に抗体を投与し、約3週間後にマウスの骨より採取した骨髄細胞中の白血病細胞の数を計測した。
【0152】
具体的には、scidマウス(日本クレア)に抗アシアロGM1抗血清(和光純薬)を0.01mL相当を生理食塩水に希釈して投与した(Day-1)。翌日に、急性骨髄性白血病の細胞株であるMOLM13(ATCC)を50万個尾静脈より移植した(Day0)。さらにその翌日(Day1)に、抗IL-3Rα抗体10μgを腹腔内投与した。Day21にマウスを屠殺し、大腿骨・脛骨より骨髄を採取し、骨髄細胞をFITC標識ヒトCD45抗体及びPE標識抗IL-3Rα抗体(何れもBDBiosciences)で染色した。具体的には100万個程度の骨髄細胞に、最終濃度が各1μg/mLになるように抗体を添加し、30分氷上にて遮光で静置した。その後、ステイニングメディウム(PBS(GIBCO)に2%牛胎児血清、0.05%アジ化ナトリウム、2mM EDTAを添加した溶液)を用いて、抗体で染色した細胞を3回洗浄し、フローサイトメトリー(FACSCalibur、BD Biosciences)にて、ヒトCD45陽性且つヒトIL-3Rα陽性の細胞を検出した。また、マウス骨髄を採取時に、骨髄細胞数をチュルク液を用いて計測した。さらに、定量された蛍光ビーズ(Flow-Count、Beckman Coulter)を上記の抗体染色時に同時に添加することで、大腿骨1本あたりに含まれるMOLM13細胞の絶対数を計測した。
【0153】
結果を図7に示す。抗体を投与した群は、何れも抗体を投与していないVehicle群に比して大腿骨骨髄内のMOLM13細胞数が著しく減少していることが確認された。この結果は、抗IL-3Rα抗体は、白血病に対する治療薬としての可能性を示唆している。
実施例11 抗IL-3Rα抗体によるIL-3Rα発現細胞株傷害性試験
抗体を介した細胞傷害活性[抗体依存性細胞性細胞傷害活性(Antibody-DependentCellularCytotoxicity)以下、ADCCと略記する]を測定するために、抗体の存在下でエフェクターとしてヒト末梢血由来単核球(PeripheralBlood Mononuclear Cells以下、PBMC)を用い実施した。
【0154】
健康なボランティアより末梢血を採取し、抗凝固財を添加した。血液をFicoll-PlaquePlus(GEHealthcare社)の上に静置し、界面を乱さないように大型遠心機(CF9RX、日立など)を用いて2000rpm20分遠心分離した。細胞が含まれる中間層を集めPBSを用いて洗浄し、900rpm20分の遠心により血小板を除き、末梢血由来単核細胞(PBMC)をADCCを発揮するエフェクターとして用いた。
【0155】
さらに、ヒトIL-2(Peprotech社)を最終濃度4ng/mL(40IU/mL以上)で添加した10%ウシ胎児血清入りRPMI1640培地を用いて、37℃、5%CO2環境下で1晩培養したPBMCについてもADCCアッセイのエフェクターとして用いた。
方法は簡単には、ターゲット細胞を抗体及びPBMC存在下で培養し、抗体による特異的なターゲット細胞の溶解率を計測するものである。
【0156】
溶解率の測定には、以下の「Colon-26/hCD123ADCC測定法」を用いた。具体的にはターゲット細胞としてIL-3Rα強制発現Colon-26細胞を放射性同位元素51Crでラベルされたクロム酸ナトリウム(Na251CrO4、PerkinElmer社、NEZ030S)と37℃、5% CO2存在下で1時間培養することでターゲット細胞を51Crでラベルした。ラベルしたターゲット細胞は、3回洗浄し余分な51Crを除いた後に培地に懸濁し、あらかじめ各種濃度で抗体が添加された96穴プレートに移した。PBMCを培地に懸濁し、ターゲット細胞および抗体が添加されたプレートに移した(エフェクター/ターゲット率=100)。抗体としては、実施例4で精製した抗IL-3Rα抗体、陰性コントロールとしてヒト血清由来IgG (シグマ社)を用いた。各種対照として、培地とターゲット細胞のみのウェル、PBMCとターゲットのみのウェル、Triton-Xが添加されたウェルを準備した。混合液が入った96穴プレートは、37℃、5%CO2存在下で4時間培養した。
【0157】
プレートを遠心した後、上清をシンチレータ入り96穴プレート(Lumaplate-TM、PerkinElmer社)に50 uL移し、56℃、2時間で乾燥させた。プレートをシールし(TopSeal-A、Packard社)、マイクロプレートリーダー(TopCount、PerkinElmer社)で測定した。
ターゲット細胞の溶解度は、細胞が溶解し培地中に放出されたクロム酸ナトリウム中の51Cr量を測定した。すなわち、各ウェルの値から抗体が添加されていないウェルの値を差し引いた値を、Triton-X100を加えたウェル(特異的溶解率100%とする)の値から抗体が添加されていないウェルの値を差し引いた値で割ることにより、「特異的溶解率」を算出した。
【0158】
その結果を図8および9に示す。各種IL-3Rα抗体は、濃度依存的にターゲット細胞に対するADCC活性が認められた。また、対照となるキメラ7G3抗体に比して、高いADCC能を発揮した。このことは、IL-3Rα抗体はIL-3Rα発現細胞に対して高いADCC能を発揮し、IL-3Rα陽性細胞除去を薬効とした治療の可能性を示すものである。
実施例12 抗IL-3Rα抗体のサルIL-3Rα蛋白質への結合性試験
取得した抗ヒトIL-3Rα抗体のサルIL-3Rαへの結合の有無は、実施例1で作製したカニクイザルIL-3Rα強制発現細胞に、実施例7で作製した抗ヒトIL-3Rα抗体が結合するかをフローサイトメトリーを用いて解析した。
【0159】
具体的には、2x105個のサルIL-3Rα強制発現L929細胞を抗ヒトIL-3Rα抗体の最終濃度が10μg/mLになるように100μLで4℃、30分で反応させた。抗体は、陰性コントロールとして抗ジニトロフェノール(DNP)ヒトIgG1抗体(自社製)、Old4、Old5、Old17、Old19、New102、キメラキメラ7G3抗体を用いた。その後、ステイニングメディウム(2%牛胎児血清、2mM EDTA、0.05%NaN3を添加したDulbecco’s PBS)で3回洗浄した。次に、PE標識抗ヒト抗体γ鎖特異的抗体(サザンバイオ社)を最終濃度1μg/mLでステイニングメディウム中で反応させ、同様に3回ステイニングメディウムで洗浄した。最後に、ステイニングメディウムで細胞を混合し、フローサイトメトリーにてPEの陽性の有無を解析した。
【0160】
その結果を図10に示す。抗ヒトIL-3Rαヒト抗体であるOld4、Old5、Old17、Old19、New102、及びキメラ7G3抗体はカニクイザルIL-3Rαに反応することが確認された。
実施例13 抗ヒトIL-3Rαヒト抗体の詳細なエピトープ解析
(IL-3Rα/GM-CSFRαキメラタンパク発現細胞の作製)
IL-3Rα抗体のより詳細なエピトープ解析を実施するため、IL-3Rαの膜外領域のドメインより小さい領域をGM-CSFRαと置き換えたキメラタンパクを細胞に発現させ、その細胞に対する各抗IL-3Rα抗体の結合性を解析した。簡単には、第一に、IL-3Rα分子の立体的な構造予測から外側に位置していると考えられる領域を決定し、第二に、その小さい領域をGM-CSFRαに置き換えたIL-3Rα分子を発現させるベクターをそれぞれ構築し、第三に、HEK293F細胞に強制発現させ、第四としてフローサイトメトリーにて蛍光色素でラベルした各抗IL-3Rα抗体が結合するか観察した。
(IL-3Rαのドメインマッピング)
実施例7より区分した3ドメインのうち、取得した抗体Old19及びNew102が認識するA、Bドメインに絞り、詳細に解析した。IL-4受容体alpha鎖(IL-4Rα、CD124)(PDB: 3BPNC;ChainC,CrystalStructureOfTheIl4-Il4r-Il13raTernaryComplex)の立体構造を元に、SWISS-MODEL (http://swissmodel.expasy.org//SWISS-MODEL.html)を用いてIL-3Rα蛋白質の立体構造をホモロジーモデリングした。予測されたIL-3Rα蛋白質構造をグラフィックソフトRasMol(http://rasmol.org/)を用いて可視化し、IL-3Rα分子の外側に位置すると考えられるアミノ酸領域7箇所を決定した(図4)。
【0161】
抗ヒトIL-3Rαヒト抗体のエピトープを特定するため、上記のように区分したIL-3Rαのアミノ酸領域の1及び3から7の6箇所をそれぞれGM-CSFRαの該当領域に置換したタンパクを作製し、細胞膜上に発現させ、抗体の結合の有無を確認した。
IL-3RA-FLAG/pEGFP-N1プラスミドDNAを鋳型としPrimeSTAR(R) HS DNAPolymerase (タカラバイオ株式会社)を用いたPCR法により増幅した。PCR反応は98℃10秒-68℃5分の2ステップ反応を25サイクル行った。用いたPCRプライマーは以下のとおりである:
領域1欠損;
CD123-Fw21:CGTGGAACCCGCAGTGAACAATAGCTATT(配列番号149)
CD123-Re21:ACTCTGTTCTTTTTAACACACTCGATATCG(配列番号150)
領域3欠損;
CD123-Fw22:CTTTATCCAAATAACAGTGGGAAGCCTTG(配列番号151)
CD123-Re22:CAGTTTCTGTTGGAATGGTGGGTTGGCCACT(配列番号152)
領域4欠損;
CD123-Fw23:AGGGAGGGTACCGGTGCGGAGAATCTGACCTGCT(配列番号153)
CD123-Re23:TCCTGAATTTGGATAGAAGAGGATCCACGTGG(配列番号154)
領域5欠損;
CD123-Fw24:GGTCCGACGGCCCCCGCGGACGTCCAGTA(配列番号155)
CD123-Re24 :CCTCGCCCAGGTACAGCTCAAGAAATCCACGT(配列番号156)
領域6欠損;
CD123-Fw25:ACGGAACCAGCGCAGCCTTCGGTATCCCCT(配列番号157)
CD123-Re25:TAACCAGAAAGTGGGAACTTTGAGAACC(配列番号158)
領域7欠損;
CD123-Fw26:TCTTTGATTCATTTGTCGTCTTTTCACA(配列番号159)
CD123-Re26:ATTGGATGCCGAAGGCTGCGCTCCTGCCC(配列番号160)
得られたPCR産物は0.8%アガロースゲル電気泳動(135V、15分、TAEbuffer)を行った。DNAはエチジウムブロマイド染色により可視化した。増幅を確認後、WizardSVGelandPCRClean-UpSystemを用いて精製した。得られたDNAをPolynucleotidekinase(New EnglandBiolabs)でリン酸化し、エタノール沈殿の後、一部をTaKaRa LigationKitを用いて反応させた。形質転換は、ライゲーションサンプルとDH10Bコンピテント細胞と混合し、LBプレート(カナマイシン含有)へ撒いた。得られたコロニーからMiniprep法によりプラスミドDNAを抽出し、XhoIおよびNotIで消化し、インサートを確認した。
(ラベル化抗IL-3Rα抗体を用いたIL-3Rα/GM-CSFRαキメラタンパク発現細胞のフローサイトメトリー解析)
IL-3Rα/GM-CSFRαキメラタンパク発現細胞の作製の作製には、HEK293T細胞を用いた。リポフェクション法を用いて、HEK293Tに上記で取得したプラスミドDNAを発現ベクターとして導入した。発現ベクターを導入したHEK293Tは、CO2 5%、37℃の環境下で培養し、導入2日後にフローサイトメトリー解析に用いた。
【0162】
キメラタンパク発現細胞を100,000〜1,000,000個に対して、1μg/mLの濃度のAlexaFlour488ラベルヒト抗体或いは市販のFITCラベルされた抗IL-3Rαマウス抗体(7G3、9F5:何れもBDBiosciences社、6H6:AcrisAntibodies社)を、30分氷上にて反応させた。抗体及び細胞の希釈には、ステイニングメディウム(2%牛胎児血清、2mMEDTA、0.05% NaN3を添加したDulbecco’s PBS)を用いた。次に、抗体と反応させた細胞をステイニングメディウムにて3回洗浄し、フローサイトメトリーにて細胞にラベルされた抗体が結合したかを確認した。
【0163】
その結果を図3に示す。c7G3抗体は、領域1をGM-CSFRαに置換させたタンパク発現細胞のみにおいて、反応が消失した。Old19は、Aドメイン内の領域2及び領域3、Bドメイン内の領域5及び領域6をGM-CSFRαに置換させたタンパク発現細胞への反応が消失した。New102は、Bドメインの領域5及び領域6をGM-CSFRαに置換させたタンパク発現細胞への反応が消失した。
【0164】
以上より、Old19抗体はA及びBドメインの領域2〜3及び領域5〜6を、New102抗体はBドメインの領域5〜6を、それぞれ認識する可能性が示された。
以上の結果を表4としてまとめた。
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明によれば、ヒトIL-3Rα蛋白(別名:ヒトCD123)に対する抗体、ならびに、ヒトIL-3Rα抗体を有効成分とする、骨髄性悪性腫瘍、特に急性骨髄性白血病(AML)に対する治療薬および診断薬を提供する
【配列表フリーテキスト】
【0166】
配列番号3:IL-3Rα_Fw プライマー
配列番号4:IL-3Rα_Reプライマー
配列番号5:IL-3Rα_seqF1プライマー
配列番号6:インサート(MfeIからNotIまで)
配列番号7:Rhe123Fw1プライマー
配列番号8:Rhe123Rv1プライマー
配列番号9:T7プライマー
配列番号10:SP6プライマー
配列番号11:カニクイザルIL-3Rαのインサート(MfeIからNotIまで)
配列番号12:アカゲザルIL-3Rαのインサート(MfeIからNotIまで)
配列番号13: hIL-3Rαsol-FLAG-NotIプライマー
配列番号14:インサート(MfeIからNotIまで)
配列番号15:hh-6プライマー
配列番号16:hh-3 プライマー
配列番号17:hh-4プライマー
配列番号18:Old4重鎖特異的プライマーFw
配列番号19:Old4重鎖特異的プライマーRv
配列番号20:Old5重鎖特異的プライマーFw
配列番号21:Old5重鎖特異的プライマーRv
配列番号22:Old17重鎖特異的プライマーFw
配列番号23:Old17重鎖特異的プライマーRv
配列番号24:Old19重鎖特異的プライマーFw
配列番号25:Old19重鎖特異的プライマーRv
配列番号26:New102重鎖特異的プライマーFw
配列番号27:New102重鎖特異的プライマーRv
配列番号28:Old6重鎖特異的プライマーFw
配列番号29:Old6重鎖特異的プライマーRv
配列番号30:mH_Rv1プライマー
配列番号31:mH_Rv2プライマー
配列番号32:7G3重鎖特異的プライマーFw
配列番号33:7G3重鎖特異的プライマーRv
配列番号34:hk-2プライマー
配列番号35:hk-6プライマー
配列番号36:Old4軽鎖特異的プライマーFw
配列番号37:Old4軽鎖特異的プライマーRv
配列番号38:Old5軽鎖特異的プライマーFw
配列番号39:Old5軽鎖特異的プライマーRv
配列番号40:Old17軽鎖特異的プライマーFw
配列番号41:Old17軽鎖特異的プライマーRv
配列番号42:Old19軽鎖特異的プライマーFw
配列番号43:Old19軽鎖特異的プライマーRv
配列番号44:New102軽鎖特異的プライマーFw
配列番号45:New102軽鎖特異的プライマーRv
配列番号46:Old6軽鎖特異的プライマーFw
配列番号47:Old6軽鎖特異的プライマーRv
配列番号48:mK_Rv1プライマー
配列番号49:mK_Rv2プライマー
配列番号50:7G3軽鎖特異的プライマーFw
配列番号51:7G3軽鎖特異的プライマーRv
配列番号80:hCD116Fw-MfeIプライマー
配列番号81:hCD116Rv-NotIプライマー
配列番号82:hCD116Fw-MfeIプライマー
配列番号83:hCD116Rv-NotIプライマー
配列番号84:hCD116Fw-MfeIプライマー
配列番号85:hCD116Rv-NotIプライマー
配列番号86:hCD116SeqFw1プライマー
配列番号87:hCD116SeqFw2プライマー
配列番号88:hCD116SeqRv1プライマー
配列番号89:T7プライマー
配列番号90:hCD123-C-FLAG-R1プライマー
配列番号91:IL-3Rα_Fwプライマー
配列番号92:C-FLAG-NotR2プライマー
配列番号93:pEGFP-N1-Fwプライマー
配列番号94:pEGFP-N1-Reプライマー
配列番号95:pEGFP-N1-Fwプライマー
配列番号96:pEGFP-N1-Reプライマー
配列番号97:CD123R11pEGFPN1プライマー
配列番号98:CD123F11プライマー
配列番号99:CD123R12-2プライマー
配列番号100:CD123F12-2プライマー
配列番号101:CD123R13プライマー
配列番号102:CD123F13プライマー
配列番号103:pEGFP-N1-Fwプライマー
配列番号104:pEGFP-N1-Reプライマー
配列番号105:GM-CSFRF11プライマー
配列番号106:GM-CSFRR11プライマー
配列番号107:GM-CSFRF12プライマー
配列番号108:GM-CSFRR12プライマー
配列番号109:GM-CSFRF13プライマー
配列番号110:GM-CSFRR13プライマー
配列番号111:pEGFP-N1-Fwプライマー
配列番号112:pEGFP-N1-Reプライマー
配列番号149:CD123-Fw21プライマー
配列番号150:CD123-Re21プライマー
配列番号151:CD123-Fw22プライマー
配列番号152:CD123-Re22プライマー
配列番号153:CD123-Fw23プライマー
配列番号154:CD123-Re23プライマー
配列番号155:CD123-Fw24プライマー
配列番号156:CD123-Re24プライマー
配列番号157:CD123-Fw25プライマー
配列番号158:CD123-Re25プライマー
配列番号159:CD123-Fw26プライマー
配列番号160:CD123-Re26プライマー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]