(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5694974
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】ワイヤレスローカルエリアネットワークにおける近傍スキャン
(51)【国際特許分類】
H04W 48/16 20090101AFI20150312BHJP
H04W 48/14 20090101ALI20150312BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20150312BHJP
【FI】
H04W48/16
H04W48/14
H04W84/12
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-34216(P2012-34216)
(22)【出願日】2012年2月20日
(62)【分割の表示】特願2009-25281(P2009-25281)の分割
【原出願日】2005年6月29日
(65)【公開番号】特開2012-100357(P2012-100357A)
(43)【公開日】2012年5月24日
【審査請求日】2012年3月21日
【審判番号】不服2014-1354(P2014-1354/J1)
【審判請求日】2014年1月24日
(31)【優先権主張番号】60/587,159
(32)【優先日】2004年7月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596008622
【氏名又は名称】インターデイジタル テクノロジー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(74)【復代理人】
【識別番号】100115624
【弁理士】
【氏名又は名称】濱中 淳宏
(74)【復代理人】
【識別番号】100145388
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 弘和
(72)【発明者】
【氏名】ポール マリニア
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント ロイ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ケーブ
(72)【発明者】
【氏名】フランク ラ シタ
(72)【発明者】
【氏名】アンジェロ カッファーロ
(72)【発明者】
【氏名】アスメーン トーグ
(72)【発明者】
【氏名】マリアン ルドルフ
【合議体】
【審判長】
佐藤 聡史
【審判官】
▲広▼島 明芳
【審判官】
加藤 恵一
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第04/54283号(WO,A2)
【文献】
特表2006−510271号公報(JP,A)
【文献】
特開2004−88592号公報(JP,A)
【文献】
特許第4981077号公報(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 48/14, H04W 48/16, H04W 84/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステーションと、前記ステーションがアソシエートされている第1のアクセスポイント(AP)と、第2のAPとを有するワイヤレスローカルエリアネットワークにおいて近傍スキャンする方法であって、
前記方法は、
前記第1のAPにて前記ステーションからタイミング情報要求を受信するステップであって、前記タイミング情報要求は、前記第2のAPによって送信されるビーコン信号のタイミング情報についての要求を含む、ステップと、
前記第2のAPによって送信されるビーコン信号に関するタイミング情報を前記第1のAPにて前記第2のAPから受信するステップであって、前記タイミング情報は、前記第1のAPからのビーコン信号の送信についての既知の基準時間に対する時間差を含み、前記時間差は、タイミングユニットのオフセットである、ステップと、
前記ステーションが前記タイミング情報に基づいて前記第2のAPによって送信される前記ビーコン信号をリッスンできるようにするために、前記第1のAPから前記ステーションに前記タイミング情報をレポートするステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記タイミング情報を受信するステップは、ネットワークサイド・シグナリングによって前記第2のAPから前記タイミング情報を受信することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レポートするステップは、ビーコンフレーム、プローブ応答フレーム、アソシエーション応答フレーム、再アソシエーション応答フレームまたは媒体アクセス制御(MAC)フレームの情報エレメントのどれか一つにおける前記タイミング情報を送信することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記MACフレームは、管理サブタイプであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記要求は、プローブ要求、アソシエーション要求または再アソシエーション要求のどれか一つの一部であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のAPにアソシエートされているステーションにビーコン測定を要求するステップであって、前記ビーコン測定はタイミング情報を含む、ステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アクセスポイント(AP)であって、
信号を送信するように構成される送信機と、
信号を受信するように構成される受信機と、
前記APにアソシエートされているステーションからタイミング情報要求を受信し、前記タイミング情報要求は、前記第2のAPによって送信されるビーコン信号のタイミング情報についての要求を含み、
第2のAPによって送信されるビーコン信号に関するタイミング情報を前記第2のAPから受信し、前記タイミング情報は、前記APからのビーコン信号の送信についての既知の基準時間に対する時間差を含み、前記時間差は、タイミングユニットのオフセットであり、
前記ステーションに前記タイミング情報をレポートする
ように構成されるタイミング情報デバイスと
を備えることを特徴とするAP。
【請求項8】
前記タイミング情報は、ビーコンフレーム、プローブ応答フレーム、アソシエーション応答フレーム、再アソシエーション応答フレームまたは媒体アクセス制御(MAC)フレームの情報エレメントのどれか一つにおいて前記ステーションにレポートされることを特徴とする請求項7に記載のAP。
【請求項9】
前記MACフレームは、管理サブタイプであることを特徴とする請求項8に記載のAP。
【請求項10】
前記タイミング情報デバイスは、前記第2のAPにタイミング情報を要求するようにさらに構成されることを特徴とする請求項7に記載のAP。
【請求項11】
前記タイミング情報要求は、プローブ要求、アソシエーション要求または再アソシエーション要求のどれか一つの一部であることを特徴とする請求項7に記載のAP。
【請求項12】
前記タイミング情報は、ネットワークサイド・シグナリングによって前記第2のAPから受信されることを特徴とする請求項7に記載のAP。
【請求項13】
前記タイミング情報デバイスは、前記APにアソシエートされている他のステーションにビーコン測定を要求するようにさらに構成され、前記ビーコン測定はタイミング情報を含むことを特徴とする請求項7に記載のAP。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN:Wireless Local Area Network)に関し、より詳細には、近傍アクセスポイント(AP:Access Point)をスキャンするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WLANは、その利便性および柔軟性を理由として、普及してきている。このようなネットワークに合わせた新たなアプリケーションが開発されているので、WLANの普及は、ますます進むものと予測される。有望分野の1つには、VoIP(Voice over Internet Protocol)の使用が挙げられ、ユーザが移動している際の、連続するWLANの展開エリアにおける、シームレスなサービスの継続性(すなわち、ハンドオーバ)のサポートに対する要求が高まっている。
【0003】
IEEE 802.11規格では、ステーション(STA:station)は、APを識別するために、2つの異なるモード、すなわち、アクティブスキャンモード、および、パッシブスキャンモードを使用することができる。STAがアクティブスキャンモードとパッシブスキャンモードとのうちのどちらを使用するかは、通常、構成可能な設定により、決定される。実際、両方のモードが使用される。アクティブスキャンモードでは、STAは、1つの周波数チャネルを選択して、プローブ要求フレームを送信し、次いで、プローブ応答フレームの形態をとる応答を受信するのに、所定の時間の間待つ。ベーシックサービスセット(BSS:Basic Service Set)が、インフラストラクチャモードにおいて動作している場合、プローブ応答フレームは通常、APにより送信される。STAが、所定の時間の間に、プローブ応答フレームを受信しなかった場合、STAは、新たな周波数にチューニングし、このプロセスを繰り返す。
【0004】
パッシブスキャンモードでは、STAは、APによる一定の時間間隔でのビーコンフレームのブロードキャストを捕捉する(capture)ために、特定の周波数にチューニングして、所定の時間の間リスンすることにより、その周波数チャネル上でBSSの存在を発見しようと試みる。STAが、所定の時間の間にビーコンフレームを受信しなかった場合、STAは、新たな周波数にチューニングし、このプロセスを繰り返す。
【0005】
パッシブスキャンモードを使用する場合、STAは、どの周波数チャネル上で、候補となるAPを見つけ出す可能性が高いかを知ることができるが、ビーコンフレームを近傍APがいつ送信するかについては、正確には分からない。通常、ビーコンフレームは、予め定められた固定の時間間隔で、例えば、100msごとに送信される。最悪の場合、STAは、対象となる周波数にチューニングしてから、ビーコンフレームが発生するまで、少なくとも100ms待たなければならない。STAが1つの受信機しか有さない場合、STAが対象となる周波数に対してパッシブスキャンを実行している間に、前の周波数を介して進行しているサービスが中断される。
【0006】
WLANにおいて効率的なハンドオーバを実行することには、いくつかの要件が含まれる。これらの要件として、例えば、ハンドオーバの候補となる適切なAPの識別および測定と、対象となるAPにおけるSTAの認証およびセキュリティコンテキストの確立と、対象となるAPとの再アソシエーションと、対象となるAPへのデータリンクの転送とが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
完全かつシームレスな移動性のサポートの提供を考慮することを目的としたWLANは、これまでのところ開発されていない。現行のWLANシステムに関する問題の1つは、STAによる候補となる適切なAPの識別および測定が、時間を要するプロセスであるということである。このプロセスは、数百ミリ秒の間続くこともある。さらに、STAの挙動はうまく特定されず、測定プロセスに要する時間は、製造メーカによって選択された様々な実装によって、大幅に異なる可能性がある。
【0008】
ユーザによるサービスの顕著な中断を回避するために、例えば、VoIPのコール中、ハンドオーバプロセスは、迅速に実行される必要がある(サービス中断時間は通常、数十ミリ秒から数百ミリ秒を超えてはならない)。さらに、STAによる候補となる近傍APの測定および識別プロセスは、進行しているサービスのパフォーマンスに対して、著しい影響を与えてはならない。
【0009】
したがって、パッシブスキャンモードを使用している間でも、特にVoIPに対して、サービスの継続性と、シームレスなハンドオーバとを確実にすることが可能となるように、パッシブスキャンモードの効率性を改善する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明には、候補となる近傍APの送信間隔とスケジューリングとに関する方法、シグナリング機構、および、タイミング情報が含まれる。APは、候補となる近傍APに関するタイミング情報をSTAに送信する。次いで、STAは、そのタイミング情報を使用して、対象となる周波数へのチューニングをスケジューリングし、最小限の時間で、対象となるAPの識別および測定を行う。
【0011】
候補となる近傍APに関するタイミング情報は、(例えば、ビーコンフレームに含まれる)ブロードキャスト/マルチキャストタイプのフレーム、または、ユニキャストタイプの媒体アクセス制御(MAC:Medium Access Control)フレームを用いて、STAに送信することができる。さらに、タイミング情報を含む情報エレメント(IE:Information Element)は、MAC管理フレーム内に含めて送信することもできるし、または、MAC制御フレームもしくはMACデータフレームにピギーバックすることもできる。
【0012】
STAと、STAにアソシエートされている第1のAPと、第2のAPとを有するWLANにおいて近傍スキャンする方法は、第2のAPから送信されるビーコン信号に関するタイミング情報を生成することにより開始する。STAは、タイミング情報に基づいて、第2のAPから送信されるビーコン信号をリスンする時間をスケジューリングする。
【0013】
WLANにおいて近傍スキャンするシステムは、STAと、STAにアソシエートされている第1のAPと、第2のAPとを備える。STAは、第1のタイミング情報デバイスと、第1のタイミング情報デバイスからタイミング情報を受信するように構成されたスケジューリングデバイスと、通信信号を受信し、スケジューリングデバイスにより制御することができる受信機とを含む。第1のAPは、第2のタイミング情報デバイスを含む。第2のタイミング情報デバイスは、STA内の第1のタイミング情報デバイスに、タイミング情報を送信する。第2のAPは、ビーコン信号を送信するビーコン送信デバイスを含む。タイミング情報は、ビーコン信号に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】STAと、STAとアソシエートされているAPと、候補となるAPとの間でタイミング情報を通信する方法を示すフロー図である。
【
図2】候補となる1つのAPをスキャンするタイミングを示す図である。
【
図3】N個のチャネルをスキャンするタイミングを示す図である。
【
図4】STAと、STAとアソシエートされているAPと、候補となるAPとの間でタイミング情報を通信するシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面とあわせて理解すべき例示する以下の好ましい実施形態の記載から、本発明をより詳細に理解することができよう。
【0016】
以下において、用語「ステーション(STA)」には、ワイヤレス送受信ユニット(Wireless Transmit/Receive Unit)、ユーザ端末、移動ステーション、固定式もしくは移動式加入者ユニット、ページャ、または、ワイヤレス環境において動作することができるその他の任意の種類のデバイスが含まれるが、これらに限定されるものではない。また、以下において、「アクセスポイント(AP)」と呼ぶときは、この用語には、ベースステーション、ノードB、サイトコントローラ、または、ワイヤレス環境におけるその他の任意の種類のインタフェーシングデバイスが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明には、候補となる近傍APの送信間隔に関するタイミング情報をSTAに送信して、パッシブスキャンモードの効率性を改善する方法が含まれる。このタイミング情報は、通常はビーコンフレームの送信時間である。
【0018】
APは、候補となる近傍APに関するタイミング情報をSTAに送信する。次いで、STAは、そのタイミング情報を使用して、対象となる周波数へのチューニングをスケジューリングし、最小限の時間で、対象となるAPの識別および測定を行うことができる。
【0019】
図1は、STA102と、STA102とアソシエートされているAP(AP1)104と、候補となるAP(AP2)106との間でタイミング情報を通信する方法100のフロー図である。任意的である第1ステップとして、STA102は、AP1 104に、候補となるAP2 106に関するタイミング情報を要求し(ステップ110)、次いで、AP1 104は、AP2 106にタイミング情報を要求する(ステップ112)。AP2 106は、自身のタイミング情報をAP1にレポートする(ステップ114)。このステップは、AP1が事前にAP2のタイミング情報を得ていない場合にのみ必要となる。(以下で説明するように、)AP1がタイミング情報を得るための手段は他にもある。AP1は、AP2に関するタイミング情報をSTA102にレポートする(ステップ116)。次いで、STA102は、AP2のビーコンを受信する(hear)ために、AP2の周波数にチューニングする時間をスケジューリングする(ステップ118)。
【0020】
候補となる近傍APのタイミング情報には、例えば、次のものが含まれ得る。すなわち、ビーコン間隔(ビーコンフレームが発生する周期)、対象となるビーコンフレームの送信時間、コンテンションフリー(contention-free)の期間およびコンテンションベース(contention-based)の期間である。候補となる近傍APに関するタイミング情報は、絶対的な時間基準(例えば、「近傍ビーコンフレームは、時間xyzに発生する」などのタイムスタンプ)、または、既知の基準に対する相対的な時間差(タイミング情報がAP1からSTAに送信されたフレーム、あるいは、以前または現在のAP1のビーコンフレームとの時間ユニット数の差を示すものなど)の形態で、STAに通信することができる。
【0021】
デバイスが、ビーコンを送信する前に進行中の送信/受信の全てが終了するまで待機する必要があるために、次のビーコンフレームの送信のタイミングは、数ミリ秒以上の精度でしか分からないので、APは、予測される受信に対する時間の間隔(または、同等のものとして、目標時間に不確定の幅(margin)を加えた時間)をSTAにシグナリングする。
【0022】
STAに提供されるタイミング情報は常に、不確定期間(uncertainty period)により、または、STAがタイミング情報と不確定期間とのうちの少なくとも一方を導出できるようにする特定のルールにより、補完することができる。一般に、現在のAPは、候補となるAPのビーコンフレームが、現在のAPのビーコンフレームよりもN回の時間ユニット分だけ早く発生することを通知するのみならず、候補となるAPのビーコンフレームが、不確定要素(uncertainties)に起因して、指示された時間または時間間隔からL回の時間ユニット分の後であり、かつ、M回の時間ユニット分よりも前に発生することも通知する。不確定期間は、APがタイミング情報を提供するたびに特定される代わりに、(例えば、ビーコンにより)別個にシグナリングされてもよいし、または、特定の固定値であってもよい。これらの手法の両方ともが、シグナリング帯域幅を節約する。
【0023】
候補となる近傍APに関するタイミング情報は、(例えば、ビーコンフレームに含まれる)応答型(solicited)および/または非応答型(unsolicited)ブロードキャスト/マルチキャストタイプのフレームか、または、(例えば、アソシエーション応答フレーム、再アソシエーション応答フレーム、または、プローブ応答フレーム内の)応答型および/または非応答型ユニキャストタイプのMACフレームを用いて、STAに送信することができる。タイミング情報を含む情報エレメント(IE)は、MAC管理フレーム内に含めて(すなわち、MAC管理フレームの一部として)送信することもできるし、MAC制御フレームまたはMACデータフレームにピギーバックすることもできる。STAにタイミング情報を通信することには、(MAC⇔物理レイヤ(PHY)⇔STA管理エンティティ(SME)などの)レイヤ間サービスプリミティブ(inter-layer service primitive)を用いて、アクションを開始し、確認し(confirm)、レポートすることが含まれる。そのアクションには、MACシグナリングフレームの送信や測定アクションなどがある。
【0024】
候補となる近傍APのタイミング情報は、特定のAPにおいて、いくつかの方法により生成することができる。それらの方法には、その特定のAPが、ネットワークサイド・シグナリング(network side signaling)を使用して、近傍APのタイミング情報を得ること;その特定のAPが、自身で近傍APを測定すること;その特定のAPが、STAによる測定値のレポートを使用すること;または、その特定のAPが、ネットワーク上の汎用タイミングデバイスを使用することがある。
【0025】
ネットワークサイド・シグナリングでは、AP群は、AP群を相互に接続する分散システムを介して、それらのビーコンの送信時間に関する情報を交換する。ネットワークサイド・シグナリングについては、いくつかの実装が可能である。それらの実装には、例えば、1つのAPが、分散システムにおける全てのAPに、自身のビーコン送信のタイミングに関する情報をブロードキャストすることや、1つのAPが、分散システムを介して応答する別のAPに、ビーコンタイミング情報を要求することがある。代替として、APは、ネットワーク・タイミング・データベースをクエリすることもできる。例えば、このネットワーク・タイミング・データベースは、近傍APに関する現在のタイミング情報を得るための集中リモートネットワーク管理エンティティまたは集中ローカルネットワーク管理エンティティの一部として、効果的に実現される。
【0026】
APが、自身で近傍APを測定するとき、その測定AP(measuring AP)は、他のAPのビーコンをリスンし、ビーコンの送信時間を測定する。ビーコン送信間隔に基づいて、測定APは、その後のおよその送信時間を推定することができる。近傍APが、測定APと同一の周波数チャネルを使用する場合に、この方法は有用である。そうでない場合、この方法では、測定APは、ビーコンをリスンできるよう、適宜、他の周波数チャネルにチューニングする必要があり、これは、それほど有用な解決策ではない。
【0027】
APがSTAによる測定値のレポートを使用する場合では、STAは、ビーコン送信間隔、近傍APのID、および近傍APのタイムスタンプとともに、STAが近傍APからビーコンを受信した時間を、調整AP(coordinating AP)にレポートする。調整APは、絶対的な時間基準および相対的な時間基準のこの組合せを使用して、タイミング情報を導出することができる。調整APは、この情報をメモリに記憶し、近傍APに関する、その後のおよその送信時間を推定する。
【0028】
STAがBSSに参入するとき、STAは、アソシエーション要求フレーム内、再アソシエーション要求フレーム内、またはプローブ要求フレーム内にフラグを設定することができる。STAが、対応するアソシエーション応答フレーム内、再アソシエーション応答フレーム内、またはプローブ応答フレーム内の近傍レポートエレメント(neighbor report element)を受信することを望んでいることを指示するために、このフラグが使用される。このフラグは、様々な方法により実装することができる。例えば、このフラグは、単純なビットフラグとして実装することもできるし、STAがAPから得ることを所望する情報のタイプを示す複数の値を含むIEとして実装することもできる。近傍レポートエレメントには、タイミング同期機能(TSF:Timing Synchronization function)情報フィールドを含めることができる。TSF情報フィールドには、TSFオフセット値と、近傍APに関するビーコン間隔値とが含まれる。TSFオフセット値は、タイミングユニット(TU:Timing Unit)を用いて表される。TUは、例えば、一般性を喪失することなく、1マイクロ秒の長さである。TSFオフセット値は、調整APに対する、調整APと近傍APとの間の、TUを用いて表されるタイミングオフセットである。有効な一実施形態において、ビーコン間隔値は、一般性を喪失することなく、目標ビーコン送信時間(TBTT:Target Beacon Transmission Time)として表すことができる。TBTTは通常、100msであるデフォルト値を有する。
【0029】
候補となる近傍APに関するタイミング情報は、APの管理情報ベース(MIB:Management Information Base)において、記憶することもできるし、アクセスすることもできるし、構成することもできる。MIBは、MACレイヤMIBまたはPHYレイヤMIBのいずれかとすることができる。
【0030】
図2および
図3は、2つのシナリオを示している。
図2において、STAが候補となる近傍APに関するビーコンフレームのおよその到達時間を識別したときに、STAが、特定のAPを認識するための所与の周波数上に存在している必要があるスキャン時間は、タイミング情報が知られている場合、通常数ミリ秒程度であり、タイミング情報が知られていない場合、1回の完全なビーコン間隔(通常100ms)よりも少々少ない時間である。
【0031】
図3には、様々な周波数上で複数のAPをスキャンする際の、提案した方法の利点が示されている。通常、タイミング情報を使用する場合、STAは、ビーコンフレームの発生に基づいてスケジュールを確立し、1回または2〜3(a few)回のビーコン間隔内で、全てのビーコンフレームを測定することができる。しかしながら、タイミング情報が使用されない場合、STAは、7〜8(several)回のビーコン間隔を必要とする。
図3に示した「不確定間隔(uncertainty interval)」は、他の送信を優先させる必要性に起因する、ビーコンの送信の正確な時間に関する不確定さを示している。
【0032】
上述した方法は、IEEE 802.11に準拠するWLANに適用可能であり、特に、802.11r(高速BSS送信(Fast BSS Transmission))、802.11s(拡張サービスセット(ESS)メッシュ)、802.11k無線リソース測定、および、802.11n(高スループットWLAN)に準拠するWLANに適用可能である。
【0033】
図4は、STA402と、STA402とアソシエートされているAP(AP1)404と、候補となるAP(AP2)406との間でタイミング情報を通信するシステム400を示す図である。タイミング情報が、分散ネットワークを介して、AP2からAP1に送信される場合に、システム400を使用することができる。STA402は、タイミング情報デバイス410、スケジューリングデバイス412、受信機414、およびアンテナ416を含む。AP1 404は、タイミング情報デバイス420を含む。AP2は、タイミング情報デバイス430、ビーコン送信デバイス432、およびアンテナ434を含む。
【0034】
システム400は次のように動作する。任意的なステップとして、STA402は、タイミング情報デバイス410から、AP1 404におけるタイミング情報デバイス420に要求を送信することによって、AP2 406に関するタイミング情報を要求する。AP1 404は、タイミング情報デバイス420およびタイミング情報デバイス430をそれぞれ介して、AP2 406に関するタイミング情報を受信する。
図1と関連させて上述したように、AP1 404は、様々な方法により、AP2 406に関するタイミング情報を得ることができる。
【0035】
AP2 406では、ビーコン送信デバイス432が、アンテナ434を介してビーコンを送信し、タイミング情報デバイス430に、そのビーコンを送信するためのタイミング情報を通信する。タイミング情報は、タイミング情報デバイス430から、AP1 404内のタイミング情報デバイス420に送信される。AP1 404は、タイミング情報デバイス420から、STA402内のタイミング情報デバイス410に、AP2 406に関するタイミング情報を送信する。
【0036】
STA402がAP2 406に関するタイミング情報を受信すると、タイミング情報は、タイミング情報デバイス410からスケジューリングデバイス412に送信される。スケジューリングデバイス412は、STA402が受信機414を調整して、AP2 406からのビーコン送信をスキャンして受信する時間を決定する。
【0037】
本発明の特徴および要素を、好ましい実施形態における特定の組合せをもって、説明したが、各特徴または各要素は、(好ましい実施形態のその他の特徴および要素なしで、)単独で使用することもできるし、本発明のその他の特徴および要素の有無に関係なく、様々な組合せをもって、使用することもできる。