(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0049】
定義
「酵素活性」は、脱メチル化、ヒドロキシル化、エポキシ化、N-酸化、スルホ酸化、N-、S-およびO-脱アルキル化、脱硫酸化、脱アミノ化ならびにアゾ、ニトロ、N-オキシドおよび他のそのような酵素反応性化学基の還元を包含する(これらに限定されるものではない)と意図される。変化した酵素活性(酵素活性の変化)は、対照酵素(例えば、野生型タバコ植物タバコニコチンデメチラーゼ)の活性に対して少なくとも10〜20%、好ましくは少なくとも25〜50%、より好ましくは少なくとも55〜95%またはそれ以上の(例えば、タバコニコチンデメチラーゼの)酵素活性の低下を意味する。酵素(例えば、ニコチンデメチラーゼ)の活性は、当技術分野における標準的な方法を用いて、例えば本明細書に記載の酵母ミクロソームアッセイを用いてアッセイされうる。
【0050】
「核酸」なる語は、一本鎖もしくは二本鎖形態またはセンスもしくはアンチセンスのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド重合体を意味し、特に限定されない限り、天然に存在するヌクレオチドに類似した様態で核酸にハイブリダイズする天然ヌクレオチドの公知類似体を含む。特に示さない限り、特定の核酸配列はその相補的配列を含む。「機能しうる形で連結された」、「機能的組合せ」および「機能的順序」なる語は、核酸発現制御配列(例えば、プロモーター、シグナル配列または一連の転写因子結合部位)と第2の核酸配列との間の機能的連結を意味し、この場合、該発現制御配列は、該第2配列に対応する核酸の転写および/または翻訳に影響を及ぼす。望ましくは、機能しうる形で連結された核酸配列は、完全長遺伝子を形成するよう同一遺伝子の他の配列に連結された遺伝子の断片を意味する。
【0051】
細胞に関して用いられている場合の「組換え」なる語は、細胞が異種核酸を複製し、該核酸を発現し、または異種核酸によりコードされるペプチド、異種ペプチドもしくはタンパク質を発現することを示す。組換え細胞は、遺伝子または遺伝子断片を、センスもしくはアンチセンス形態で、または該細胞の天然(非組換え)形態においては見出されないRNA干渉(RNAi)を誘導するRNA分子として発現しうる。組換え細胞は、該細胞の天然形態で見出されるが人工的手段により修飾され該細胞内に再導入された遺伝子をも発現しうる。
【0052】
「構造遺伝子」は、タンパク質、ポリペプチドまたはその一部をコードするDNAセグメントを含む遺伝子の部分であり、これは、例えば、転写の開始を駆動する5'配列または3'UTRを含まない。あるいは、構造遺伝子は非翻訳可能産物をコードしうる。構造遺伝子は、該細胞内に通常見出されるもの、または該細胞もしくは細胞位置には通常見いだされないもの(それが導入される場合には、それは「異種遺伝子」と称される)でありうる。異種遺伝子は、全体的または部分的に、当技術分野で公知の任意の起源(細菌ゲノムもしくはエピソーム、真核、核もしくはプラスミドDNA、cDNA、ウイルスDNAまたは化学合成DNAを含む)に由来しうる。構造遺伝子は、生物活性もしくはその特性、発現産物の生物活性もしくは化学構造、発現の速度または発現制御の様態に影響を及ぼしうる1以上の修飾を含有しうる。そのような修飾には、1以上のヌクレオチドの変異、挿入、欠失および置換が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
構造遺伝子は非分断コード配列を構成することが可能であり、あるいはそれは、適当なスプライス部位に隣接した1以上のイントロンを含みうる。構造遺伝子は翻訳可能または非翻訳可能であることが可能であり、アンチセンス、またはRNA干渉(RNAi)を誘導しうるRNA分子を含みうる。構造遺伝子は、複数の起源および複数の遺伝子配列(天然物または合成物であり、ここで、合成物は、化学合成されたDNAを意味する)に由来するセグメントの複合物でありうる。
【0054】
核酸配列に関して本明細書中で用いる「エキソン」は遺伝子の核酸配列の一部を意味し、ここで、エキソンの核酸配列は遺伝子産物のアミノ酸の少なくとも1つをコードしている。エキソンは、典型的には、イントロンのような非コードDNAセグメントに隣接している。望ましくは、エキソンは配列番号2のタバコニコチンデメチラーゼアミノ酸配列の一部、例えば配列番号2の配列のアミノ酸1-313および/または314-517をコードする。
【0055】
核酸配列に関して本明細書中で用いる「イントロン」は、コード領域に隣接する遺伝子の非コード領域を意味する。イントロンは、典型的には、RNA分子には転写されるが次いでメッセンジャーRNAまたは他の機能的構造RNAの産生中にRNAスプライシングにより切除される遺伝子の非コード領域である。望ましくは、イントロンは配列番号5の配列またはその断片を含む。
【0056】
核酸配列に関して本明細書中で用いる「3'UTR」は、エキソンの終止コドンに近い非コード核酸配列を意味する。望ましくは、3’UTRは配列番号7またはその断片を含む。
【0057】
「由来する」は、起源体(化学的および/または生物学的)から採取、入手、受領、追跡、複製または伝達されることを意味する。誘導体は、起源体の化学的または生物学的操作(置換、付加、挿入、欠失、抽出、単離、変異および複製を含むが、これらに限定されるものではない)により製造されうる。
【0058】
DNAの配列に関する「化学合成」は、成分ヌクレオチドの一部がin vitroで構築されたことを意味する。DNAの手動化学合成は、十分に確立された方法(Caruthers,
Methodology of DNA and RNA Sequencing, (1983), Weissman (編), Praeger Publishers, New York, Chapter 1)を用いて達成されうる。自動化学合成は、多数の商業的に入手可能な装置の1つを使用して行われうる。
【0059】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、SmithおよびWaterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アライメントアルゴリズム、PearsonおよびLipman Proc. Natl. Acad. Sci. (U.S.A.) 85: 2444 (1988)の類似性検索法、これらのアルゴリズム(GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.におけるもの))のコンピューター化実行、または精査により行われうる。
【0060】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool (BLAST) (Altschulら, 1990)は、配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxに関する使用のために、National Center for Biological Information (NCBI, Bethesda, Md.)を含むいくつかの入手源から、あるいはインターネット上で入手可能である。それはhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTでアクセスされうる。このプログラムを使用する配列同一性の決定方法はhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast help.htmlにおいて入手可能である。
【0061】
本明細書中でアミノ酸配列に関して用いる「実質的なアミノ酸同一性」または「実質的なアミノ酸配列同一性」なる語は、配列番号2および/または配列番号4のタンパク配列に比較して、少なくとも70%の配列同一性、好ましくは80%のアミノ酸配列同一性、より好ましくは90%のアミノ酸配列同一性、最も好ましくは少なくとも99〜100%の配列同一性を有する配列をペプチドが含むという、ポリペプチドの特性を示す。望ましくは、ニコチンデメチラーゼの場合には、配列比較は、翻訳されたペプチドのシトクロムp450モチーフGXRXCX(G/A)(配列番号29)の後から終止コドン領域までに関して行われる。
【0062】
本明細書中でアミノ酸配列に関して用いる「実質的な核酸同一性」または「実質的な核酸配列同一性」なる語は、配列番号1、3、5、6、および/または7と比較して少なくとも50%、好ましくは60、65、70または75%の配列同一性、より好ましくは81または91%の核酸配列同一性、最も好ましくは少なくとも95、99または更には100%の配列同一性を有する配列をポリヌクレオチドが含むという、該ポリヌクレオチド配列の特性を示す。望ましくは、ニコチンデメチラーゼ核酸配列に関しては、比較は翻訳されたペプチドのシトクロムp450モチーフGXRXCX(G/A);配列番号29)から終止コドンまでの領域をコードする配列と比較される。
【0063】
ヌクレオチド配列が実質的に同一であるというもう1つの指標は、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズするかどうかである。ストリンジェントな条件は配列によって様々であり、状況によって異なるであろう。一般には、ストリンジェントな条件は、一定のイオン強度およびpHにおいて、特定の配列の熱融解点(Tm)より約5℃〜約22℃、通常は約10℃〜約15℃低い温度となるよう選ばれる。Tmは、標的配列の50%がマッチプローブにハイブリダイズする(一定のイオン強度およびpHにおける)温度である。典型的には、ストリンジェントな条件は、塩濃度がpH7で約0.02モル濃度であり温度が少なくとも約60℃であるものである。例えば標準的なサザンハイブリダイゼーション法においては、ストリンジェントな条件は、6×SSC中、42℃での初期洗浄、およびそれに続く0.2×SSC中、少なくとも約55℃、典型的には約60℃、しばしば約65℃の温度での1回以上の追加的洗浄を含むであろう。
【0064】
また、本発明の目的においては、ヌクレオチド配列が、実質的に同一のポリペプチドおよび/タンパク質をコードしている場合には、それらのヌクレオチド配列は実質的に同一である。したがって、1つの核酸配列が、第2の核酸配列と実質的に同じポリペプチドをコードしている場合には、それらの核酸配列は、遺伝暗号により許容される縮重(コドンの縮重および遺伝暗号の説明は、Darnellら (1990) Molecular Cell Biology, Second Edition Scientific American Books W. H. Freeman and Company New Yorkを参照されたい)が原因でストリンジェントな条件下でハイブリダイズしない場合であっても、実質的に同一である。タンパク質の純度または均一性は、当技術分野でよく知られた多数の手段、例えばタンパク質サンプルのポリアクリルアミドゲル電気泳動およびそれに続く染色後の可視化により示されうる。ある目的には、高い分離能が要求されることがあり、HPLCまたは同様の精製手段が用いられうる。
【0065】
タバコニコチンデメチラーゼのような特定のポリペプチドに「特異的に結合」または該ポリペプチドを「特異的に認識」する抗体は、等量の任意の他のタンパク質に対してよりも該ポリペプチドに対して高いアフィニティを有する抗体を意味する。例えば、配列番号2のアミノ酸配列を含有するタバコニコチンデメチラーゼに特異的に結合する抗体は、望ましくは、関連抗原を含む等量の任意の他の抗原より少なくとも2倍、5倍、10倍、30倍または100倍大きい、その抗原に対するアフィニティを有する。抗原(例えば、タバコニコチンデメチラーゼ)に対する抗体の結合は、多数の標準的な方法、例えばウエスタン分析、ELISAまたは共沈法により測定されうる。ポリペプチド(例えば、ニコチンデメチラーゼ)に特異的に結合する抗体も、該ポリペプチドの精製に有用である。
【0066】
本明細書中で用いる「ベクター」なる語は、DNAセグメントを細胞内に移入する核酸分子に関して用いられる。ベクターは、DNAを複製するよう作用することが可能であり、宿主細胞内で独立して再生しうる。「ビヒクル」なる語は「ベクター」と互換的に用いられることがある。本明細書中で用いる「発現ベクター」なる語は、特定の宿主生物における機能しうる形で連結されたコード配列の発現に必要な適当な核酸配列および所望のコード配列を含有する組換えDNA分子を意味する。原核生物における発現に必要な核酸配列は、通常、プロモーター、オペレーター(随意的)およびリボソーム結合部位を、しばしば他の配列と共に含む。望ましくは、該プロモーターは、配列番号6の配列または転写を駆動するその断片を含む。配列番号6の配列に対して少なくとも50%、60%、75%、80%、90%、95%または更には99%の配列同一性を有し転写を駆動するプロモーター配列も望ましい。真核細胞はプロモーター、エンハンサーならびに終結およびポリアデニル化シグナル、例えば配列番号7の3'UTR配列を利用することが知られている。いくつかの場合には、植物発現ベクターは、安定な発現のためには、植物由来のイントロン(例えば、配列番号5の配列を有するイントロン)の存在を要することが認められている。したがって、本明細書中で更に詳しく説明するとおり、配列番号5の配列または適当なRNAスプライス部位を有する任意の他のイントロンが使用されうる。
【0067】
根を有する完全な遺伝子操作植物を再生させるためには、例えばin vitro接種のような任意の技術により、あるいは完全な植物に再生されうる形質転換植物細胞を得るための任意の公知のin vitro組織培養技術により、核酸を植物細胞内に挿入することが可能である。したがって、例えば、植物細胞内への挿入は、病原性または非病原性A tumefaciensによるin vitro接種によるものでありうる。他のそのような組織培養技術も用いられうる。
【0068】
「植物組織」、「植物成分」または「植物細胞」には、植物の分化および未分化組織が含まれ、限定的なものではないが根、苗条、葉、花粉、種子、腫瘍組織および培養内の種々の形態の細胞、例えば単細胞、プロトプラスト、胚およびカルス組織が含まれる。植物組織はイン・プランタ(in planta)または器官、組織または細胞培養内のものでありうる。
【0069】
本明細書中で用いる「植物細胞」は、イン・プランタ(in planta)の植物細胞、ならびに培養内の植物細胞およびプロトプラストを含む。「cDNA」または「相補的DNA」は、一般には、イントロンを含有するプロセシングされていないRNA分子に相補的な又はイントロンを欠くプロセシングされたmRNAに相補的なヌクレオチド配列を有する一本鎖DNA分子を意味する。cDNAはRNA鋳型に対する逆転写酵素の作用により形成される。
【0070】
本明細書中で用いる「タバコ」は、火力乾燥(フルーキュアリング)、バージニア、バーレー、いぶし(dark)タバコ、オリエンタル、およびNicotiana属の植物の他のタイプの植物を含む。Nicotiana属の種子はNicotiana tabacumの形態で商業的に容易に入手可能である。
【0071】
「製造品」または「タバコ製品」は、湿性もしくは乾燥かぎタバコ、噛みタバコ、巻きタバコ製品、葉巻製品、シガリーロ、パイプタバコ、ビーディ(bidi)および同様のタバコ由来製品のような製品を含む。
【0072】
「遺伝子サイレンシング」は、対照植物(例えば、野生型タバコ植物)におけるレベルに対して少なくとも30〜50%、好ましくは少なくとも50〜80%、より好ましくは少なくとも80〜95%またはそれ以上の遺伝子発現(例えば、タバコニコチンデメチラーゼをコードする遺伝子の発現)のレベルの低下を意味する。そのような発現レベルの低下は、当技術分野で公知の標準的な方法、例えばRNA干渉、三本鎖干渉、リボザイム、相同組換え、ウイルス誘導性遺伝子サイレンシング、アンチセンスおよび共抑制技術、ドミナントネガティブ遺伝子産物の発現、標準的な変異誘発技術を用いる変異遺伝子の生成(例えば、本明細書に記載されているもの)を用いることにより達成されうる。タバコニコチンデメチラーゼポリペプチドまたは転写産物またはそれらの両方のレベルは、限定的なものではないがノーザンブロット法、RNアーゼプロテクションまたは免疫ブロット法を含む任意の標準的な技術によりモニターされる。
【0073】
本明細書中で用いる「タバコニコチンデメチラーゼ」または「ニコチンデメチラーゼ」は、配列番号2の配列に実質的と同一であるポリペプチドを意味する。望ましくは、タバコニコチンデメチラーゼは、ニコチン(C
10H
14N
2、3-(1-メチル-2-ピロリジニル)ピリジンとも称される)をノルニコチン(C
9H
12N
2)へ変換しうる。タバコニコチンデメチラーゼの活性は、当技術分野において標準的な方法を用いて、例えば、本明細書に記載されているとおり、酵母発現ミクロソームによる放射性ニコチンの脱メチル化を測定することによりアッセイされうる。
【0074】
アミノ酸配列の「断片」または「一部(部分)」は、配列番号2のアミノ酸配列の少なくとも例えば20、15、30、50、75、100、250、300、400または500個の連続したアミノ酸を意味する。典型的な望ましい断片は配列番号2の配列のアミノ酸1-313および配列番号2の配列のアミノ酸314-517ならびに配列番号2および63の配列である。また、核酸配列の断片または一部に関しては、望ましい断片は、配列番号1の核酸配列の少なくとも100、250、500、750、1000または1500個の連続的アミノ酸を含む。典型的な望ましい断片は配列番号1の配列の核酸1-2009、2010-2949、2950-3946、3947-4562、4563-6347および4731-6347である。他の望ましい断片は、配列番号5の核酸1-100, 101-250, 251-500, 501-750, および751-998、配列番号6の核酸1-398, 1-1400, 1401-2009, 1840-2009, 1940-2009, 399-1240, および1241-2009、および配列番号7の核酸1-100, 101-250, 251-500, 501-750, 751-1000, 1001-1250, 1251-1500, および1501-1786 である。
【0075】
「実質的に純粋なポリペプチド」は、天然でそれに付随するほとんどの成分から分離されたポリペプチドを意味する。しかし、少なくとも8.3pKa/mgタンパク質の酵素活性を有する調製物に伴うミクロソーム画分において見出される他のタンパク質も、実質的に純粋なポリペプチドであるとみなされる。典型的には、該ポリペプチドは、それに天然で付随するタンパク質および天然に存在する有機分子からそれが少なくとも60重量%フリーである場合に実質的に純粋である。好ましくは、該調製物は少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%の所望のポリペプチドを含有する。実質的に純粋なポリペプチドは、例えば、天然源(例えば、タバコ植物細胞)からの抽出、該ポリペプチドをコードする組換え核酸の発現、または該タンパク質の化学合成により得られうる。純度は、任意の適当な方法、例えばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはHPLC分析により測定されうる。
【0076】
「単離された核酸分子」は、生物のゲノム内の核酸分子の配列に天然で隣接している核酸配列を含有しない核酸配列を意味する。
【0077】
「形質転換細胞」は、組換えDNA技術によりDNA分子[例えば、タバコニコチンデメチラーゼをコードするDNA分子が導入された細胞(またはその祖先)を意味する。
【0078】
本明細書中で用いる「シトクロムp450」および「p450」は互換的に用いられる。
【0079】
図面の簡単な説明
図1は、タバコニコチンデメチラーゼ遺伝子のゲノム構造の概要図である。
図2は、ゲノムタバコニコチンデメチラーゼ核酸配列 (配列番号1)およびその翻訳産物 (配列番号2)である。
図3は、タバコニコチンデメチラーゼ遺伝子のコード領域の核酸配列 (配列番号3)(D121-AA8とも称する)およびその翻訳産物 (配列番号4)である。
図4は、タバコニコチンデメチラーゼゲノム配列内に存在するイントロンの核酸配列 (配列番号5)である。
図5は、タバコデメチラーゼ遺伝子プロモーターの核酸配列 (配列番号6)である。
図6は、タバコニコチンデメチラーゼ遺伝子の3’UTRの核酸配列 (配列番号7)である。
【0080】
詳細な説明
タバコの構成的に発現される又はエチレンもしくは老化により誘導される配列の特定
本発明においては、変換体(converter)および非変換体Nicotiana系統のNicotiana組織からRNAを抽出した。ついで、抽出されたRNAをcDNAの作製に使用した。ついで本発明の核酸配列を、2つの方法を用いて作製した。
【0081】
第1の方法においては、ポリA富化RNAを植物組織から抽出し、cDNAを逆転写PCRにより作製した。ついで該一本鎖cDNAを使用して、縮重プライマーおよびオリゴd(T)プライマーを用いてp450特異的PCR集団を得た。該プライマー設計は、他の植物のp450遺伝子配列の高度に保存されたモチーフに基づくものであった。特異的縮重プライマーの具体例は特許出願公開US 2004/0111759 A1、US 2004/0117869 A1およびUS 2004/0103449 A1の
図1に記載されている(該特許出願公開を参照により本明細書に組み入れることとする)。適当なサイズのインサートを含有するプラスミドからの断片の配列を更に分析した。これらのインサートのサイズは、典型的には、使用するプライマーに応じて約300〜約800ヌクレオチドの範囲である。
【0082】
第2の方法においては、まず、cDNAライブラリーを構築した。該プラスミド内のcDNAを使用して、縮重プライマーおよびT7プライマーを用いてp450特異的PCR集団を得た。第1の方法の場合と同様に、適当なサイズのインサートを含有するプラスミドからの断片の配列を更に分析した。
【0083】
高レベルのノルニコチンを産生することが知られているNicotiana植物系統(変換体(converter))および低レベルのノルニコチンを有する植物系統を出発材料として使用することが可能である。ついで葉を植物から摘出し、エチレンで処理して、本明細書で定義されているp450酵素活性を活性化することが可能である。当技術分野で公知の技術を用いて、全RNAを抽出する。ついで、本明細書中の実施例に更に詳しく記載されているとおり、cDNAライブラリーを構築することが可能である。
【0084】
p450型酵素の保存領域を縮重プライマーの鋳型として使用した。縮重プライマーを使用して、p450特異的バンドをPCRにより増幅した。p450様酵素を示すバンドをDNA配列決定により特定した。BLAST検索、アライメントまたは適当な候補を特定するための他の手段を用いて、PCR断片を特徴づけした。
【0085】
特定された断片からの配列情報を用いて、PCRプライマーを作製した。cDNAライブラリ−内のプラスミドプライマーと組合されたこれらのプライマーを使用して、完全長p450遺伝子をクローニングした。得られたすべての断片クローンおよびいくつかの場合には完全長クローンに関する示差的発現を調べるために、ラージスケールサザン逆分析を行った。本発明のこの態様においては、すべてのクローン化インサートをスクリーニングするために、クローン化DNA断片にハイブリダイズするプローブとして、種々の組織からの標識された全cDNAを使用して、これらのラージスケールリバースサザンアッセイを行うことが可能である。クローン化p450断片および完全長クローンを特徴づけるために、非放射性および放射性(P
32)ノーザンブロットアッセイも用いた。
【0086】
ペプチドのアミノ酸配列を誘導し、他のクローンとの対比において特有であり抗原性であるペプチド領域を選択することにより、ペプチド特異的抗体を製造した。担体タンパク質に結合した合成ペプチドに対して、ウサギ抗体を産生させた。これらの抗体を使用して、植物組織に関してウエスタンブロット分析または他の免疫学的方法を行った。また、ペプチドのアミノ酸配列を誘導し、他のクローンとの対比において特有であり潜在的に抗原性であるペプチド領域を選択することにより、いくつかの完全長クローンに関して、ペプチド特異的抗体を製造した。担体タンパク質に結合した合成ペプチドに対して、ウサギ抗体を産生させた。これらの抗体を使用して、ウエスタンブロット分析を行った。
【0087】
遺伝子発現のダウンレギュレーションおよび酵素活性の改変
ポリペプチドの発現の低下を伴う植物を、標準的な遺伝子サイレンシング法(総説としては、Arndt and Rank, Genome 40:785-797, 1997; TurnerおよびSchuch, Journal of Chemical Technology and Biotechnology 75:869-882, 2000; ならびにKlinkおよびWolniak, Journal of Plant Growth Regulation 19(4):371-384, 2000を参照されたい)により作製した。特に、タバコニコチンデメチラーゼ核酸配列(例えば、配列番号6)、構造遺伝子(配列番号3)、イントロン(配列番号5)、または3’UTR(配列番号7)あるいは全ゲノムクローン(配列番号1)を使用して、任意のNicotiana種におけるタバコ表現型またはタバコ代謝産物、例えばノルニコチンを改変することが可能である。タバコニコチンデメチラーゼ遺伝子の発現の低下は、例えばRNA干渉(RNAi)(Smithら, Nature 407:319-320, 2000; Fireら, Nature 391:306-311, 1998; Waterhouseら, PNAS 95:13959-13964, 1998; Stalbergら, Plant Molecular Biology 23:671-683, 1993; Brignettiら, EMBO J. 17:6739-6746, 1998; Allenら, Nature Biotechnology 22: 1559-1566, 2004);ウイルス誘導性遺伝子サイレンシング(「VIGS」)(Baulcombe, Current Opinions in Plant Biology, 2:109-113, 1999; Cogoni and Macino, Genes Dev 10: 638-643, 2000; Ngelbrechtら, PNAS 91:10502-10506, 1994);センス配向で植物内因性遺伝子を導入することによる標的遺伝子のサイレンシング(Jorgensenら, Plant Mol Biol 31: 957-973, 1996);アンチセンス遺伝子の発現;相同組換え(Ohlら, Homologous Recombination and Gene Silencing in Plants. Kluwer, Dordrecht, The Netherlands, 1994);Cre /lox(Qinら, PNAS 91: 1706-1710, 1994; Koshinskyら, The Plant Journal 23: 715-722, 2000; Chouら, Plant and Animal Genome VII Conference Abstracts. San Diego, CA, 17-21 January, 1999);遺伝子トラップおよびT-DNAタギング(Burnsら, Genes Dev. 8: 1087-1105, 1994; Spradlingら, PNAS 92:10824-10830, 1995; Skarnesら, Bio/Technology 8, 827-831, 1990; Sundaresanら, Genes Dev. 9: 1797-1810, 1995);ならびにタバコポリペプチドの発現のダウンレギュレーションまたはその酵素活性の低下を引き起こす、科学分野において利用可能なその他の可能な遺伝子サイレンシング系のいずれかを用いて達成されうる。本明細書中で更に詳しく説明するとおり、本明細書中に記載の核酸配列のいずれかは、本明細書に記載の技術および当技術分野において見出される他の技術を用いてダウンレギュレーションまたはアップレギュレーションされうる。典型的な方法を以下に更に詳しく説明する。
【0088】
RNA干渉
RNA干渉(「RNAi」)は、植物などの多数の生物における強力かつ特異的な翻訳後遺伝子サイレンシングを誘導するために一般に適用可能な方法である(例えば、Bosherら, Nat. Cell Biol. 2:E31-36, 2000; およびTavernarakisら, Nat. Genetics 24:180-183, 2000を参照されたい)。RNAiは、細胞内または細胞外環境内への、部分的または完全な二本鎖特性を伴うRNAの導入を含む。抑制性RNAを産生するよう標的遺伝子(例えば、タバコニコチンデメチラーゼ)の部分からのヌクレオチド配列が選択される点で、抑制は特異的である。選択された部分は一般には標的遺伝子のエキソンを含むが、選択された部分は非翻訳領域(UTR)およびイントロン(例えば、配列番号5または7の配列)をも含みうる。
【0089】
例えば、二本鎖形成能を有するRNAを産生する形質転換ベクターを構築するためには、2つの核酸配列(一方はセンス配向、もう一方はアンチセンス配向)を、機能しうる形で連結し、強力なウイルスプロモーター、例えばCaMV 35Sまたはキャッサバ・ブラウン・ストリーク・ウイルス(cassava brown streak virus)(CBSV)から単離されたプロモーターの制御下に配置することが可能である。しかし、内因性プロモーター、例えば配列番号6の配列を有するニコチンデメチラーゼプロモーター、または転写を駆動するその断片の使用も望ましいであろう。そのような構築物中に含まれるタバコニコチンデメチラーゼ核酸配列の長さは、望ましくは、少なくとも25ヌクレオチドであるが、完全長までのタバコニコチンデメチラーゼを含む配列を含みうる。
【0090】
二本鎖形成能を有するRNAを産生する構築物は、アグロバクテリウムに媒介される形質転換(Chuangら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:4985-4990, 2000)により、植物(例えば、タバコ植物)のゲノム内に導入されて、タバコニコチンデメチラーゼにおける特異的かつ遺伝可能な遺伝的干渉を引き起こしうる。該二本鎖RNAは細胞の中へ(すなわち、細胞内に)直接的に導入されることも可能であり、あるいは細胞外において、例えば、該二本鎖RNAを含有する溶液に種子、実生または植物を浸けることにより導入されうる。
【0091】
運搬された二本鎖RNA物質の量に応じて、RNAiは、標的遺伝子に関する機能の部分的または完全な喪失をもたらしうる。標的細胞の少なくとも99%における遺伝子発現の低下または喪失が得られうる。一般には、より低い量の注入物質、およびdsRNAの投与後の、より長い時間が、細胞の、より小さな割合における抑制を引き起こす。
【0092】
RNAiにおいて使用するRNAは重合リボヌクレオチドの1以上の鎖を含むことが可能であり、それは、リン酸-糖バックボーンまたはヌクレオシドに対する修飾を含みうる。該二本鎖構造は、単一の自己相補的RNA鎖により又は2つの相補的RNA鎖により形成されることが可能であり、RNA二本鎖形成は細胞の内部または外部で開始されうる。該RNAは、少なくとも1コピー/細胞の運搬を可能にする量で導入されうる。しかし、より多い量(例えば、少なくとも5、10、100、500または1000コピー/細胞)の二本鎖物質は、より効率的な抑制をもたらしうる。該RNAの二本鎖領域に対応するヌクレオチド配列が遺伝的抑制のために標的化される点で、抑制は配列特異的である。抑制のためには、標的遺伝子の部分と同一のヌクレオチド配列を含有するRNAが好ましい。標的配列と比較した場合に挿入、欠失および単点変異を有するRNA配列も抑制に有効でありうる。例えば、配列同一性は、当技術分野で公知のアライメントアルゴリズムおよび該ヌクレオチド配列間の差(%)の算出により最適化されうる。あるいは、該RNAの二本鎖領域は、標的遺伝子転写産物の一部にハイブリダイズしうるヌクレオチド配列として機能的に定められうる。
【0093】
また、RNAiに使用されるRNAはin vivoまたはin vitroで合成されうる。例えば、該細胞内の内因性RNAポリメラーゼはin vivoでの転写をもたらすことが可能であり、あるいはクローン化RNAポリメラーゼはin vivoまたはin vitroでの転写に使用されうる。in vivoでのトランスジーンまたは発現構築物からの転写のためには、RNA鎖を転写させるために調節領域が使用されうる。
【0094】
三本鎖干渉
タバコ遺伝子の調節領域(例えば、プロモーターまたはエンハンサー領域)に相補的なデオキシリボヌクレオチド配列を標的化して、標的細胞内での該タバコ遺伝子の転写を妨げる三重らせん構造を形成させることによっても、内因性タバコニコチンデメチラーゼ遺伝子発現、または所望の植物遺伝子からの核酸断片(全般的には、Helene, Anticancer Drug Des. 6:569-584, 1991; Heleneら, Ann. N.Y. Acad. Sci. 660:27-36, 1992; およびMaher, Bioassays 14:807-815, 1992参照)。
【0095】
転写の抑制のための三重らせんの形成において使用される核酸分子は、好ましくは、一本鎖であり、デオキシリボヌクレオチドから構成される。これらのオリゴヌクレオチドの塩基組成は、一般には相当な大きさのプリンまたはピリミジン伸長が二重らせんの一方の鎖上に存在することを要するフーグスティーン型塩基対形成則による三重らせん形成の促進をもたらすはずである。ヌクレオチド配列はピリミジンに基づくものでありうる。これは、生じる三重らせんの3本の会合鎖を横切るTATおよびCGCトリプレットを与えるであろう。ピリミジンに富む(ピリミジンリッチ)分子は、二重らせんの一本鎖のプリンリッチ領域に対する塩基相補性を、その鎖に対して平行配向で与える。また、プリンリッチ(例えば、G残基の伸長を含有する)核酸分子が選択されうる。これらの分子は、GC対に富むDNA二重らせんと共に三重らせんを形成し、この場合、該プリン残基の大多数は標的二重らせんの一本鎖上に位置して、三重らせん内の三本鎖を横切るCGCトリプレットを与える。
【0096】
あるいは、三重らせん形成のために標的化されうる潜在的配列を、「スイッチバック(switchback)」核酸分子を生成させることにより増加させることが可能である。スイッチバック分子は、交互の5'-3'、3'-5'様態で合成される。これにより、それらは、二重らせんの最初の1つの鎖と塩基対形成し、ついで他方と塩基対形成して、二重らせんの一方の鎖上の相当な大きさのプリンまたはピリミジン伸長の存在の必要性を排除する。
【0097】
リボザイム
リボザイムは、酵素として作用するRNA分子であり、他のRNA分子を切断するよう設計されうる。リボザイムは、実質的に任意の標的RNAと特異的に対形成しホスホジエステルバックボーンを特定の位置で切断して標的RNAを機能的に不活性化するよう設計されうる。この過程においてはリボザイム自体は消費されず、複数のコピーのmRNA標的分子を切断するよう触媒的に作用しうる。したがって、リボザイムは、タバコニコチンデメチラーゼの発現をダウンレギュレーションするための手段としても使用されうる。標的RNA特異的リボザイムの設計および使用はHaseloffら(Nature 334:585-591, 1988)に記載されている。好ましくは、リボザイムは、該リボザイムの活性部位の両側に、標的配列(例えば、タバコニコチンデメチラーゼ)に相補的な少なくとも20個の連続的ヌクレオチドを含む。
【0098】
また、RNA切断活性をアンチセンスRNAに付与して該アンチセンス構築物の有効性を増強するために、リボザイム配列をアンチセンスRNA内に含有させることも可能である。
【0099】
相同組換え
遺伝子置換技術は、与えられた遺伝子の発現をダウンレギュレーションするためのもう1つの望ましい方法である。遺伝子置換技術は相同組換えに基づくものである(Schnableら, Curr. Opinions Plant Biol. 1:123-129, 1998)。タバコニコチンデメチラーゼのような目的の酵素の核酸配列を、酵素機能を低下させるために変異誘発(例えば、挿入、欠失、重複または置換)により操作することが可能である。ついで、改変された配列をゲノム内に導入して、相同組換えにより既存遺伝子(例えば、野生型遺伝子)を該配列で置換することが可能である(Puchtaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:5055-5060, 1996; およびKempinら, Nature 389: 802-803, 1997)。
【0100】
共抑制
遺伝子発現のサイレンシングのためのもう1つの望ましい方法は共抑制(co-suppression)(センス抑制とも称される)である。この技術は、センス配向で配置された核酸の導入を含むものであり、標的遺伝子の転写を有効に阻止することが示されている(例えば、Napoliら, Plant Cell, 2:279-289, 1990およびJorgensenら, 米国特許第5,034,323号を参照されたい)。
【0101】
一般には、センス抑制は、導入された配列の転写を含む。しかし、導入された配列がコード配列自体を含有しないが、イントロン(例えば、配列番号5の配列)もしくは配列番号7の配列のような非翻訳配列または他のそのような配列が、抑制すべき内因性遺伝子の一次転写産物中に存在する配列と実質的に同一である場合にも、共抑制が生じうる。導入される配列は、一般には、抑制のために標的化される内因性遺伝子と実質的に同一である。そのような同一性は典型的には約50%より大きいが、より高い同一性(例えば、80%または更には95%)が好ましい。なぜなら、それらはより有効な抑制を引き起こすからである。共抑制の効果は、相同性または実質的な相同性を示す類似遺伝子ファミリー内の他のタンパク質に対して適用されうる。1つの植物からの遺伝子からのセグメントは、例えば異なる植物種における相同遺伝子の発現を抑制するために直接的に使用されうる。
【0102】
センス抑制においては、導入配列は、絶対的というほどの同一性は要求されず、一次転写産物または完全にプロセシングされたmRNAとの対比において完全長である必要はない。完全長より短い配列における、より高い配列同一性は、より低い同一性の、より長い配列を補償する。さらに、導入される配列は、同じイントロンまたはエキソンパターンを有する必要はなく、非コードセグメントの同一性は同様に有効でありうる。少なくとも50塩基対の配列が好ましく、より長い導入配列が好ましい(例えば、Jorgensenら, 米国特許第5,034,323号に記載されている方法を参照されたい)。
【0103】
アンチセンス抑制
アンチセンス技術においては、所望の植物遺伝子からの核酸セグメント(例えば、配列番号1、3、5、6、または7に示される)をクローニングし、発現制御領域に機能しうる形で連結して、RNAのアンチセンス鎖が合成されるようにする。ついで該構築物を植物内に形質転換し、RNAのアンチセンス鎖を産生させる。植物細胞においては、アンチセンスRNAは遺伝子発現を抑制することが示されている。
【0104】
アンチセンス抑制において導入すべき核酸セグメントは、一般には、抑制すべき内因性遺伝子の少なくとも一部と実質的に同一であるが、同一である必要はない。本明細書に開示されているタバコニコチンデメチラーゼの核酸配列は、標的遺伝子に対して相同性または実質的な相同性を示す遺伝子ファミリー内の他のタンパク質に対して該抑制効果が適用されるように設計されたベクター内に含まれうる。1つの植物からの遺伝子からのセグメントは、例えば異なるタバコ品種における相同遺伝子の発現を抑制するために直接的に使用されうる。
【0105】
導入される配列は、一次転写産物または完全にプロセシングされたmRNAとの対比において完全長である必要はない。一般には、より短い配列の使用を補償するために、より高い相同性が用いられうる。さらに、導入される配列は、同じイントロンまたはエキソンパターンを有する必要はなく、非コードセグメントの相同性は同様に有効であろう。一般には、そのようなアンチセンス配列は、通常、少なくとも15塩基対、好ましくは約15〜200塩基対、より好ましくは200〜2,000塩基対またはそれ以上の長さであろう。該アンチセンス配列は、抑制すべき遺伝子(例えば、タバコニコチンデメチラーゼプロモーター(配列番号6)、エキソン、イントロン(配列番号5)、またはUTR(配列番号7))の全部または一部に対して相補的でありうる。当業者に理解されるとおり、アンチセンス配列が結合する個々の部位およびアンチセンス配列の長さは、所望の抑制の度合およびアンチセンス配列の特有性によって異なるであろう。植物の負調節性アンチセンスヌクレオチド配列を発現する転写構築物は、転写の方向に、プロモーター、センス鎖上でアンチセンスRNAをコードする配列、および転写終結領域を含む。アンチセンス配列は、例えばvan der Krolら (Gene 72: 45-50, 1988); Rodermelら (Cell 55: 673-681, 1988); Molら (FEBS Lett. 268: 427-430, 1990); WeigelおよびNilsson (Nature 377: 495-500, 1995); Cheungら, (Cell 82: 383-393, 1995); ならびにShewmakerら (米国特許第5,107,065号)に記載されているとおりに構築し発現させることが可能である。
【0106】
ドミナントネガティブ体
タバコ遺伝子産物のドミナントネガティブ遺伝子産物をコードするトランスジーンを発現するトランスジェニック植物は、該トランスジーンが該トランスジェニック植物におけるタバコ遺伝子産物をダウンレギュレーションすることを示すために、人工的環境において又は圃場においてアッセイされうる。ドミナントネガティブトランスジーンは当技術分野で公知の方法に従い構築される。典型的には、ドミナントネガティブ遺伝子は、過剰発現されると野生型酵素の活性を損なうタバコ遺伝子産物の変異負調節性ポリペプチドをコードする。
【0107】
変異体
タバコ遺伝子産物の発現または酵素活性の低下を伴う植物は、標準的な変異法を用いることによっても作製されうる。そのような変異誘発法には、限定的なものではないが、エチルメチルスルファートでの種子の処理(HilderingおよびVerkerk, In, The use of induced mutations in plant breeding. Pergamon press, pp 317-320, 1965)またはUV照射、X線および高速中性子照射(例えば、Verkerk, Neth. J. Agric. Sci. 19:197-203, 1971; およびPoehlman, Breeding Field Crops, Van Nostrand Reinhold, New York (3.sup.rd ed), 1987を参照されたい)、トランスポゾンの使用(Fedoroffら, 1984; 米国特許第4,732,856および米国特許第5,013,658号)ならびにT-DNA挿入法(Hoekemaら, 1983; 米国特許第5,149,645号)が含まれる。タバコ遺伝子内に存在しうる変異のタイプには、例えば点変異、欠失、挿入、重複および逆位が含まれる。そのような変異は、望ましくは、タバコ遺伝子のコード領域内に存在するが、タバコ遺伝子のプロモーター領域およびイントロンまたは非翻訳領域内の変異も望ましいであろう。
【0108】
例えば、T-DNA挿入変異誘発は、遺伝子の発現をダウンレギュレーションする、タバコ遺伝子内の挿入変異を作製するために用いられうる。理論的には、任意の与えられた遺伝子における挿入を95%の確率で得るためには、約100,000個の独立したT-DNA挿入が必要である(McKinnet, Plant J. 8: 613-622, 1995; およびForsthoefelら, Aust. J. Plant Physiol. 19:353-366, 1992)。植物のT-DNAタグ付き系統は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析を用いてスクリーニングされうる。例えば、1つのプライマーをT-DNAの一方の末端に対して設計し、もう1つのプライマーを、目的の遺伝子に対して設計することが可能であり、両方のプライマーを該PCR分析に使用することが可能である。PCR産物が全く得られない場合には、関心のある遺伝子内に挿入は存在しない。これに対して、PCR産物が得らた場合には、関心のある遺伝子内に挿入が存在する。
【0109】
変異タバコ遺伝子産物の発現は、標準的な方法(例えば、本明細書に記載されている方法)により評価することが可能であり、所望により、該非変異酵素の発現と比較することが可能である。非変異植物と比較した場合、タバコ遺伝子産物をコードする遺伝子の発現の低下を伴う変異植物は、本発明の望ましい実施形態である。本明細書に記載の任意の核酸配列内に変異を有する植物は、本明細書に記載の育種計画において使用されうる。
【0110】
植物プロモーター
本発明にかかる有用な植物プロモーターの例としては、配列番号6の配列を有するニコチンデメチラーゼプロモーター、または転写を推進するその断片。他の望ましいプロモーターとしては、カリモウイルウスプロモーター、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)プロモーター、またはキャッサバ葉脈モザイクウイルス (CsVMV)プロモーターが挙げられる。これらのプロモーターは多くの植物組織において高レベルの発現を可能とし、これらのプロモーター活性はウイルスによってコードされるタンパクに依存しない。CaMVは35Sおよび19Sプロモーターの供給原である。 これらのプロモーターを用いる植物発現コンストラクトの例は当該分野において公知である。大部分のトランスジェニック植物の組織において、CaMV 35Sプロモーターは強いプロモーターである。 CaMVプロモーターは単子葉植物においても高活性である。さらに、このプロモーターの活性はCaMV 35Sプロモーターの反復によってさらに増加されうる(すなわち、2-10倍)。
【0111】
他の有用な植物プロモーターには、限定的なものではないが、ノパリンシンターゼ(NOS)プロモーター、オクトピンシンターゼプロモーター、ゴマノハグサモザイクウイルス(FMV)プロモーター、コメアクチンプロモーターおよびユビキチンプロモーター系が含まれる。
【0112】
典型的な単子葉植物プロモーターには、限定的なものではないが、イネリナイエローモットルウイルス、サトウキビバドナウイルスプロモーター、イネツングロバシリフォルム(tungro bacilliform)ウイルスプロモーター、トウモロコシストリーク(streak)ウイルス要素、およびコムギ萎縮病ウイルスプロモーターが含まれる。
【0113】
ある用途には、タバコ遺伝子産物、例えばドミナントネガティブ変異遺伝子産物を、適当な組織において、適当な量で、または適当な生育時点で産生させることが望ましいかもしれない。この目的には、環境、ホルモンおよび/または発育刺激のような誘導性シグナルに応答して調節されることが示されている遺伝子プロモーター群(それぞれはその調節配列において具現化されるそれ自身の異なる特性を有する)が存在する。これらには、限定的なものではないが、熱調節性遺伝子発現、光調節性遺伝子発現(例えば、エンドウrbcS-3A;トウモロコシrbcSプロモーター;エンドウにおいて見出されるクロロフィルa/b結合性タンパク質遺伝子;またはArabssuプロモーター)、ホルモン調節性遺伝子発現(例えば、コムギのEm遺伝子からのアブシジン酸(ABA)応答配列;オオムギおよびArabidopsisのABA誘導性HVA1およびHVA22ならびにrd29Aプロモーター)ならびに創傷誘導性遺伝子発現(例えば、wunlのもの)、器官特異的遺伝子発現(例えば、塊茎特異的貯蔵タンパク質遺伝子;記載されているトウモロコシからの23kDaゼイン遺伝子;またはインゲンマメβ-ファセオリン遺伝子)をもたらす遺伝子プロモーター、または病原体誘導性プロモーター(例えば、PR-1、prp-1またはβ-1,3グルカナーゼプロモーター、コムギの真菌誘導性wirlaプロモーターおよび線虫誘導性プロモーター、タバコおよびパセリのそれぞれTobRB7-5AおよびHmg-1)が含まれる。
【0114】
植物発現ベクター
典型的には、植物発現ベクターは、(1)5'および3'調節配列(例えば、タバコニコチンデメチラーゼプロモーター(配列番号6)、3’UTR領域(配列番号7))の転写制御下のクローン化植物遺伝子ならびに(2)優性選択マーカーを含む。そのような植物発現ベクターは、所望により、プロモーター調節領域(例えば、誘導性もしくは構成的、病原体もしくは創傷誘導性、環境もしくは発生調節性、または細胞もしくは組織特異的発現を付与するもの)、転写開始出発部位、リボソーム結合部位、RNAプロセシングシグナル、転写終結部位および/またはポリアデニル化シグナルをも含有しうる。
【0115】
植物発現ベクターは、所望により、RNAプロセシングシグナル、例えばイントロン(これは、効率的なRNA合成および蓄積に重要であることが示されている)をも含有しうる。RNAスプライス配列の位置は植物におけるトランスジーン発現のレベルに劇的な影響を及ぼしうる。この事実を考慮すると、遺伝子発現のレベルを改変するためには、トランスジーン内のタバコニコチンデメチラーゼコード配列の上流または下流にイントロンを配置することが可能である。
【0116】
発現ベクターは、前記の5'調節制御配列に加えて、一般には植物遺伝子の3'領域内に存在する調節制御領域をも含みうる。例えば、mRNAの安定性を増加させるために、3'ターミネーター領域(例えば、配列番号7の配列)を発現ベクター内に含有させることが可能である。1つのそのようなターミネーター領域は、ジャガイモのPI-IIターミネーター領域に由来するものでありうる。また、他の一般に使用されるターミネーターはオクトピンまたはノパリンシンターゼシグナルに由来する。
【0117】
植物発現ベクターは、典型的には、形質転換された細胞を特定するための優性選択マーカー遺伝子をも含有する。植物系のための有用な選択遺伝子には、トランスポゾンTn5のアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子(AphII)、抗生物質耐性遺伝子をコードする遺伝子、例えばハイグロマイシン、カナマイシン、ブレオマイシン、ネオマイシン、G418、ストレプトマイシンまたはスペクチノマイシンに対する耐性をコードする遺伝子が含まれる。光合成に必要な遺伝子も光合成欠損株における選択マーカーとして使用されうる。最後に、除草剤耐性をコードする遺伝子が選択マーカーとして使用されうる。有用な除草剤耐性遺伝子には、酵素ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼをコードし広域スペクトル除草剤Basta(登録商標)(Bayer Cropscience Deutschland GmbH, Langenfeld, Germany)に対する耐性を付与するbar遺伝子が含まれる。他の選択マーカーには、他のそのような除草剤、例えばグリホセートなど、およびイミダゾリノン、スルホニル尿素、トリアゾロピリミジン除草剤、クロロスルフロン、ブロモキシニル、ダラポンなどに対する耐性を付与する遺伝子が含まれる。さらに、メトトレキセートのような分子と共に、ジヒドロ葉酸レダクターゼをコードする遺伝子が使用されうる。
【0118】
選択マーカーの効率的な使用は、個々の選択因子に対する植物細胞の感受性の決定、および形質転換細胞の全てではなくともほとんどを有効に殺すこの因子の濃度の測定により促進される。タバコの形質転換に対する抗生物質の有用な濃度のいくつかには、例えば20〜100μg/ml(カナマイシン)、20〜50μg/ml(ハイグロマイシン)または5〜10μg/ml(ブレオマイシン)が含まれる。除草剤耐性に関する形質転換体の選択のための有用な方法は、例えばVasil (Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants, Vol I, II, III Laboratory Procedures and Their Applications, Academic Press, New York, 1984)により記載されている。
【0119】
選択マーカーに加えて、レポーター遺伝子を使用することが望ましいであろう。いくつかの場合には、レポーター遺伝子は選択マーカーの非存在下で使用される。レポーター遺伝子は、典型的には受容生物または組織内に存在せず発現もされない遺伝子である。レポーター遺伝子は、典型的には、いくつかの表現型変化または酵素特性をもたらすタンパク質をコードする。そのような遺伝子の具体例は、参照により本明細書に組み入れるWeisingら (Ann. Rev. Genetics 22:421, 1988)に記載されている。好ましいレポーター遺伝子には、限定的なものではないがグルクロニダーゼ(GUS)遺伝子およびGFP遺伝子が含まれる。
【0120】
植物発現ベクターの構築後、植物宿主内に該ベクターを導入してトランスジェニック植物を作製するためにいくつかの標準的な方法が利用可能である。これらの方法には、(1)Agrobacterium媒介形質転換(A. tumefaciensまたはA. rhizogenes)(例えば、LichtensteinおよびFuller In: Genetic Engineering, vol 6, PWJ Rigby編, London, Academic Press, 1987; ならびにLichtenstein, C.P.およびDraper, J., In: DNA Cloning, Vol II, D.M. Glover編, Oxford, IRI Press, 1985; 米国特許第4,693,976, 4,762,785, 4,940,838, 5,004,863, 5,104,310, 5,149,645, 5,159,135, 5,177,010, 5,231,019, 5,463,174, 5,469,976および5,464,763号; ならびに欧州特許第0131624, 0159418, 0120516, 0176112, 0116718, 0290799, 0292435, 0320500および0627752号、ならびに欧州特許出願番号0267159および0604622を参照されたい)、(2)粒子運搬系(例えば、米国特許第4,945,050および5,141,131号を参照されたい)、(3)マイクロインジェクション法、(4)ポリエチレングリコール(PEG)法、(5)リポソーム媒介DNA取り込み、(6)エレクトロポレーション法(例えば、WO 87/06614ならびに米国特許第5,384,253, 5,472,869, 5,641,664, 5,679,558, 5,712,135, 6,002,070および6,074,877号を参照されたい)、(7)ボルテックス法、または(8)いわゆるウイスカーズ(whiskers)法(例えば、Coffeeら, 米国特許第5,302,523および5,464,765号を参照されたい)が含まれる。発現ベクターで形質転換されうる植物組織のタイプには、胚組織、カルス組織IおよびII型、胚軸、分裂組織などが含まれる。
【0121】
植物組織内への導入後、当技術分野で公知の任意の手段により構造遺伝子の発現をアッセイすることが可能であり、転写されたmRNAとして、または合成されたタンパク質として、またはタバコにおける二次アルカロイドの化学分析による代謝産物モニターにより測定される生じた遺伝子サイレンシングの量として、発現を測定することが可能である(本明細書中に記載のとおり;参照により本明細書に組み入れる米国特許第5,583,021号も参照されたい)。植物組織のin vitro培養のための、そして多くの場合には全植物への再生のための技術が公知である(例えば、米国特許第5,595,733および5,766,900号を参照されたい)。導入された発現複合体を商業的に有用な栽培品種へ移すための方法は当業者に公知である。
【0122】
所望のレベルの望ましい遺伝子産物を発現する植物細胞が得られたら、当技術分野でよく知られた方法および技術を用いて、植物組織および全植物をそれから再生させることが可能である。ついで、再生された植物を通常の手段により生殖させ、導入された遺伝子を通常の植物育種技術により他の株および栽培品種へ移すことが可能である。
【0123】
トランスジェニックタバコ植物はゲノム遺伝子の任意の部分の核酸をダウンレギュレーションまたは過剰発現のための異なる配向(例えば、それぞれアンチセンス配向またはセンス配向)で含みうる。Nicotiana系統内の遺伝子産物の発現を増強するためには、完全長タバコ遺伝子のアミノ酸配列の全体または機能的部分をコードする核酸配列の過剰発現が望ましい。
【0124】
タバコニコチンデメチラーゼの転写または翻訳レベルの測定
タバコニコチンデメチラーゼの発現は、例えば、タバコ遺伝子または遺伝子断片をハイブリダイゼーションプローブとして使用する標準的なノーザンブロット分析(Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, NY, (2001),およびSambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y., (1989))により測定されうる。RNA発現レベルの測定は、定量的rtPCR(Kawasakiら, in PCR Technology: Principles and Applications of DNA Amplification (H. A. Erlich編) Stockton Press (1989); Wangら in PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (M. A. Innisら編) Academic Press (1990); ならびにFreemanら, Biotechniques 26:112-122および124-125, 1999)を含む逆転写PCR(rtPCR)によっても補助されうる。タバコ遺伝子の発現を測定するための更なるよく知られた技術には、in situハイブリダイゼーションおよび蛍光in situハイブリダイゼーション(例えば、Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, NY, (2001)を参照されたい)が含まれる。前記の標準的な技術は、植物間、例えば、タバコ遺伝子内に変異を有する植物と対照植物との間で発現レベルを比較するためにも有用でありうる。
【0125】
所望により、同じ一般的アプローチおよび標準的なタンパク質分析技術、例えばブラッドフォードアッセイ、分光光度アッセイ、および免疫学的検出技術、例えば所望のポリペプチドに特異的な抗体でのウエスタンブロット法または免疫沈降を用いて、タバコニコチンデメチラーゼ遺伝子の発現をタンパク質産生のレベルで測定することが可能である(Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, NY, (2001), およびSambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y., (1989))。
【0126】
タバコ遺伝子産物のモジュレーターの特定
また、cDNAの単離は、遺伝子産物の発現を上昇または低下させる分子の特定を促進する。1つのアプローチにおいては、タバコmRNAを発現する細胞(例えば、原核細胞、例えば大腸菌(E. coli)または真核細胞、例えば酵母、哺乳類細胞、昆虫細胞もしくは植物細胞)の培地に候補分子を種々の濃度で加える。ついで、例えば本明細書に記載されているような標準的な方法を用いて、遺伝子産物の発現を候補分子の存在下および非存在下で測定する。
【0127】
候補モジュレーターは、精製(または実質的に精製)された分子であることが可能であり、あるいは化合物混合物の1つの成分でありうる。混合化合物アッセイにおいては、単一の化合物または最小化合物混合物がタバコニコチンデメチラーゼ遺伝子発現を改変することが示されるまで、候補化合物プール(例えば、標準的な精製技術、例えばHPLCにより得られたもの)の次第に小さくなる亜群に対して遺伝子産物の発現を試験する。本発明の1つの実施形態においては、遺伝子産物の発現の低下を促進する分子が特に望ましいと考えられる。遺伝子産物の発現または活性のレベルで有効であることが見出されたモジュレーターは、イン・プランタ(in planta)において有用であると証明されうる。
【0128】
農業用には、本明細書に開示されている方法を用いて特定された分子、化合物または物質は、植物の茎葉上への噴霧剤または粉剤として施用される化学物質として使用されうる。該分子、化合物または物質は、植物に何らかの利益をもたらす別の分子と共に植物に施用されうる。
【0129】
ニコチンデメチラーゼ遺伝子プロモーターおよび非翻訳領域の用途
本明細書に記載されるニコチンデメチラーゼ遺伝子のプロモーター領域はエチレン誘導性であるか、または植物老化に関連する。すなわち、このプロモーターは作物の質を改良し、特定の特徴を増強するために望ましい任意の遺伝子産物の発現を推進するために用いられうる。タバコニコチンデメチラーゼプロモーター(たとえば、配列番号6)が誘導可能で、植物のライフサイクルの所定期間中発現されるように、このプロモーターを含むコンストラクトは該植物に導入され、二次代謝産物から生じる風味や芳香産物の生合成に関連した特定の遺伝子を発現させる。そのような化合物の例としては、テルペノイド経路の化合物、他のアルカロイド、植物ホルモン、フラボノイド、または糖含有部分が挙げられる。タバコニコチンデメチラーゼプロモーターは、構造炭化水素またはエンドユース特性に影響を及ぼすタンパクの発現を増加または改変するためにも使用されうる。さらに、タバコニコチンデメチラーゼプロモーターは栄養産物、薬剤、または工業原料の生合性に関連する遺伝子を含む異種遺伝子にも連結されうる。該プロモーターはタバコに、ニコチンデメチラーゼ、または他のアルカロイド生合性や他の経路に関連する遺伝子を含む、内因性遺伝子のダウンレギュレーションを引き起こすために用いられても良い。
【0130】
さらに、本明細書に記載するように、タバコニコチンデメチラーゼ遺伝子のプロモーター領域(例えば、配列番号6)や3’UTR (例えば、配列番号7)は、標的遺伝子の発現パターンを改変するために、T-DNAタギング、遺伝子トラップ、および相同組換えのような、任意の部位特異的遺伝子サイレンシング方法において用いられうる。配列番号6のようなプロモーターモチーフは、当該分野の標準的方法を用いてプロモーター配列において容易に同定されうるが、それはタバコニコチンデメチラーゼの発現に関与あるいはこれを制御する因子を同定するためにも用いられうる。望ましくは、タバコニコチンデメチラーゼプロモーター領域または他の転写制御領域は、植物中のニコチン含有量やニトロソアミンレベルといった化学的特性を改変するために用いられる。
【0131】
さらに、タバコニコチンデメチラーゼ遺伝子の任意の部位は、関連遺伝子、プロモーター、制御領域を単離するための遺伝的マーカーとして、あるいは他のタバコまたはNicotiana種におけるデメチラーゼ遺伝子のスクリーニングのために使用されうる。
【0132】
製品
ニトロソアミン含量の低下を伴うタバコ製品は、当技術分野で公知の標準的な方法により、本明細書に記載の任意のタバコ植物材料を使用して製造される。1つの実施形態においては、タバコ製品は、乾燥タバコ植物から得られたタバコ植物材料を使用して製造される。乾燥タバコ植物は、低下したニコチンデメチラーゼ活性を含有しうる。あるいは乾燥タバコ植物は、低下したニコチンデメチラーゼ活性を含有するよう育種されたものでありうる。例えば、乾燥タバコ植物は、ニコチンデメチラーゼの変異発現を伴うものとして特定されたタバコ植物を含む交配から得られたタバコ植物でありうる。望ましくは、タバコ製品は、約5 mg/g未満、約4.5 mg/g未満、約4.0 mg/g未満、約3.5 mg/g未満、約3.0 mg/g未満、約2.5 mg/g未満、約2.0 mg/g未満、約1.5 mg/g未満、約1.0 mg/g未満、約750 μg/g未満、約500 μg/g未満、約250 μg/g未満、約100 μg/g未満、約75 μg/g未満、約50 μg/g未満、約25 μg/g未満、約10 μg/g未満、約7.0 μg/g未満、約5.0 μg/g未満、約4.0 μg/g未満、約2.0 μg/g未満、約1.0 μg/g未満、約0.5 μg/g未満、約0.4 μg/g未満、約0.2 μg/g未満、約0.1 μg/g未満、約0.05 μg/g未満または約0.01 μg/g未満の、低下した量のノルニコチンまたはNNNを含有し、あるいは、ここで、それに含有される全アルカロイド含量に対する二次アルカロイドの比率(%)は90%未満、70%未満、50%未満、30%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.75%未満、0.5%未満、0.25%未満または0.1%未満である。「低下した量(量の低下)」なる表現は、ノルニコチンまたはNNNの低下のためにトランスジェニックにされていない同様に加工された同品種由来の野生型タバコ植物または植物成分またはタバコ製品において見出されるものより低い、タバコ植物または植物成分またはタバコ製品におけるノルニコチンまたはNNNまたはそれらの両方の量を意味する。1つの具体例においては、ノルニコチンまたはNNNまたはそれらの両方の減少が本明細書に記載の方法により得られたのかどうかを判定するための対照として、同様に加工された同品種の野生型タバコ植物を使用する。もう1つの具体例においては、標準的な方法を用いて、例えば、遺伝子または遺伝子産物(例えば、ニコチンデメチラーゼ)または特定の遺伝子内変異の存在または非存在をモニターすることにより、ニトロソアミン含量の低下を伴う植物を評価する。更にもう1つの具体例においては、育種計画から得られた植物のニトロソアミン含量を、ニトロソアミン量の低下を伴う植物を育種するために使用した受容系統または供与系統またはそれらの両方のニトロソアミン含量と比較する。必要に応じて、当技術分野で公知の他の適当な対照も使用される。ノルニコチンおよびNNNまたはそれらの両方のレベルは、タバコ分野においてよく知られた方法に従い測定される。
【実施例】
【0133】
以下の実施例は、本発明を実施するための方法を例示するものであり、添付の特許請求の範囲において定義される本発明の例示に過ぎないと理解されるべきであり、そのような本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0134】
植物組織の開発およびエチレン処理
植物の成長
植物をポット内に播種し、温室内で4週間成長させた。該4週齢実生を個々のポットに移植し、該温室内で2ヶ月間成長させた。成長中に、150ppmのNPK肥料を含有する水で該植物に1日2回灌水した。大きくなった緑葉を植物から切断して、後記のとおりにエチレン処理を行った。
【0135】
細胞系78379
タバコ系統78379は、University of Kentuckyにより公開されたバーレータバコ系統であり、それを植物材料源として使用した。100個の植物を、タバコの成長の分野における標準体として培養し、移植し、異なる番号(1〜100)で識別した。推奨されているとおりに施肥および圃場管理を行った。
【0136】
それらの100個の植物の4分の3がニコチンの20〜100%をノルニコチンへと変換した。それらの100個の植物の4分の1はニコチンの5%未満をノルニコチンへと変換した。植物番号87は最低の変換率(2%)を示し、一方、植物番号21は100%の変換を示した。3%未満の変換率の植物は非変換体として分類された。遺伝的および表現型相違を調べるために、植物番号87および植物番号21の自己受粉種子ならびに交配(21×87および87×21)種子を得た。自殖した21からの植物は変換体であり、87からの自殖の99%は非変換体であった。87からの植物の残りの1%は低い変換率(5〜15%)を示した。正逆交雑からの植物はすべて変換体であった。
【0137】
細胞系4407
Nicotiana系統4407は、バーレー系統であり、それを植物材料源として使用した。均一かつ代表的な植物(100個)を選抜し、番号で識別した。それらの100個の植物のうちの97個は非変換体であり、3個は変換体であった。植物番号56は最低の変換率(1.2%)を示し、一方、植物番号58は最高レベルの変換率(96%)を示した。これらの2つの植物を使用して自己受粉種子ならびに交配種子を得た。
【0138】
自殖した58からの植物は変換体:非変換体の比3:1で分離した。植物58-33および58-25は、それぞれホモ接合変換体およびホモ接合非変換変換体として特定された。58-33の安定な変換がその後代の分析により確認された。
【0139】
細胞系PBLB01
PBLB01は、ProfiGen, Inc.により開発されたバーレー系統であり、それを植物材料源として使用した。PBLB01の原種から変換体植物を選抜した。
【0140】
エチレン処理方法
緑葉を2〜3ヶ月の温室栽培植物から切断し、それに0.3% エチレン溶液(Prep brand Ethephon (Rhone-Poulenc))を噴霧した。各噴霧葉を、加湿器を備えた乾燥棚内に吊るし、プラスチックで覆った。該処理中に、該サンプル葉にエチレン溶液を定期的に噴霧した。エチレン処理の約24〜48時間後、RNA抽出のために葉を集めた。葉代謝産物およびより詳細な対象成分(例えば、種々のアルカロイド)の濃度を測定するための代謝成分分析のために、別の小サンプルを採取した。
【0141】
一例として、アルカロイド分析を以下のとおりに行うことが可能であった。0.5mlの2N NaOH、ならびに内部標準としてのキノリンおよびt-ブチルエーテルを含有する5mlの抽出溶液と共に、サンプル(0.1g)を150rpmで振とうした。サンプルを、FID検出器を備えたHP 6890 GC上で分析した。該検出器および注入器には250℃の温度を用いた。5% フェノールおよび95% メチルシリコンで架橋された溶融シリカよりなるHPカラム(30m-0.32nm-1mm)を、10℃/分(min)で110〜185℃の温度勾配で使用した。該カラムは、キャリヤーガスとしてヘリウムを使用して、100℃、1.7cm
3min
-1 の流速、40:1のスプリット比、2:1の注入容量で、該カラムを運転した。
【実施例2】
【0142】
RNAの単離
RNA抽出のために、2月齢の温室栽培植物からの中葉を、前記のとおりにエチレンで処理した。その0および24〜48時間のサンプルをRNA抽出に使用した。いくつかの場合には、花の頭部の除去の10日後の植物から、老化過程中の葉サンプルを採取した。これらのサンプルも抽出に使用した。Rneasy Plant Mini Kit(登録商標)(Qiagen, Inc., Valencia, California)を該製造業者のプロトコールに従い使用して、全RNAを単離した。
【0143】
DEPCで処理された乳鉢および乳棒を使用して、組織サンプルを液体窒素下で粉砕して微粉末を得た。約100マイクログラムの粉砕組織を1.5mlの無菌エッペンドルフチューブに移した。すべてのサンプルが集まるまで、このサンプルチューブを液体窒素中に配置した。ついで、該キットとして提供されている450μlのバッファーRLTを(メルカプトエタノールの添加と共に)各チューブに加えた。該サンプルを激しくボルテックスし、56℃で3分間インキュベートした。ついでライセートを、2ml収集チューブ内に配置されたQIAshredder(登録商標)遠心カラムに適用し、最大速度で2分間遠心分離した。流出物を集め、0.5容量のエタノールを該清澄化ライセートに加えた。該サンプルを十分に混合し、2ml収集チューブ内に配置されたRneasy(登録商標)小型遠心カラムに移した。該サンプルを10,000rpmで1分間遠心分離した。つぎに700μlのバッファーRW1をRneasy(登録商標)カラム上にピペッティングし、10,000rpmで1分間遠心分離した。バッファーRPEを新しい収集チューブ内のRneasy(登録商標)カラム上にピペッティングし、10,000rpmで1分間遠心分離した。バッファーRPEを再びRneasy(登録商標)カラムに加え、最大速度で2分間遠心分離して、該膜を乾燥させた。エタノールキャリーオーバーを除去するために、該膜を別の収集チューブ内に配置し、最大速度で更に1分間遠心分離した。該Rneasy(登録商標)カラムを新たな1.5ml収集チューブ内に移し、40μlのRNアーゼ非含有水を該Rneasy(登録商標)膜上に直接的にピペッティングした。この最終溶出チューブを10,000rpmで1分間遠心分離した。変性ホルムアルデヒドゲルおよび分光光度計により全RNAの定性および定量分析を行った。
【0144】
Origotex(登録商標)ポリA+RNA精製キット(Qiagen Inc.)を該製造業者のプロトコールに従い使用して、ポリ(A)RNAを単離した。250μlの最大容量中の約200μgの全RNAを使用した。その250μlの全RNAに容量250μlのバッファーOBBおよび15μlのOligotex(登録商標)懸濁液を加えた。内容物をピペッティングにより十分に混合し、加熱ブロック上で70℃で3分間インキュベートした。ついで該サンプルを室温で20分間放置した。最大速度で2分間の遠心分離により、Oligotex(登録商標):mRNA複合体をペレット化した。50mlを除くすべての該懸濁液を該ミクロ遠心チューブから除去した。該サンプルをOBBバッファーで更に処理した。該Oligotex(登録商標):mRNAペレットを、ボルテックスすることにより400μlのバッファーOW2に再懸濁させた。この混合物を、新たなチューブ内に配置された小さな遠心カラム上に移し、最大速度で1分間遠心分離した。該遠心カラムを新たなチューブに移し、更に400μlのバッファーOW2を該カラムに加えた。ついで該チューブを最大速度で1分間遠心分離した。該遠心カラムを最終的な1.5mlのミクロ遠心チューブに移した。該サンプルを60μlの加温(70℃)バッファーOEBで溶出した。ポリA産物を変性ホルムアルデヒドゲルおよび分光光度計により分析した。
【実施例3】
【0145】
逆転写PCR
SuperScript逆転写酵素を製造業者のプロトコール(Invitrogen, Carlsbad, California)に従い使用して、第1鎖cDNAを得た。ポリA+富化RNA/オリゴdTプライマー混合物は5μg未満の全RNA、1μlの10mM dNTP混合物、1μlのオリゴd(T)
12-18 (0.5μg/μl)および10μlまでのDEPC処理水よりなるものであった。各サンプルを65℃で5分間インキュベートし、ついで氷上で少なくとも1分間配置した。以下の成分のそれぞれを順番に加えることにより、反応混合物を調製した:2μl 10×RTバッファー, 4μlの25 mM MgCl
2, 2μlの0.1 M DTTおよび1μlのRNアーゼOUT Recombinant RNase Inhibitor。9μlの反応混合物の添加物を各RNA/プライマー混合物にピペッティングし、穏やかに混合した。それを42℃で2分間インキュベートし、1μlのSuper Script II RTを各チューブに加えた。該チューブを42℃で50分間インキュベートした。該反応を70℃で15分間で終結させ、氷上で冷却した。該サンプルを遠心分離により集め、1μlのRNアーゼHを各チューブに加え、37℃で20分間インキュベートした。200pmolのフォワードプライマーおよび100pmolのリバースプライマー(18ntのオリゴd(T)およびそれに続く1個のランダムな塩基)を使用して、第2のPCRを行った。
【0146】
反応条件は94℃で2分間、ついで94℃で1分間、45℃〜60℃で2分間、72℃で3分間の40サイクルのPCR、および72℃で更に10分間の伸長であった。1%アガロースゲルを使用する電気泳動により、10μlの該増幅サンプルを分析した。正しいサイズの断片をアガロースゲルから精製した。
【実施例4】
【0147】
PCR断片集団の作製
実施例3からのPCR断片をpGEM-T Easy Vector (Promega, Madison, Wisconsin)内に該製造業者の指示に従い連結した。連結産物をJM109コンピテント細胞内に形質転換し、青/白選択のためにLB培地プレート上でプレーティングした。コロニーを選択し、1.2mlのLB培地を含有する96ウェルプレート内で37℃で一晩成長させた。選択したすべてのコロニーの凍結ストックを作製した。Wizard SV Miniprepキット(Promega)と共にBeckman's Biomeck 2000ミニプレップ・ロボティックスを用いて、プレートからプラスミドDNAを精製した。プラスミドDNAを100μlの水で溶出し、96ウェルプレート内で保存した。プラスミドをEcoR1で消化し、1%アガロースゲルを使用して分析して、DNAの量およびインサートのサイズを確認した。CEQ 2000シークエンサー(Beckman, Fullerton, California)を使用して、400〜600bpのインサートを含有するプラスミドを配列決定した。BLAST検索により該配列をGenBankデータベースと整列させた。p450関連断片を特定し、更に分析した。あるいは、p450断片をサブトラクションライブラリーから単離した。これらの断片も、前記のとおりに分析した。
【実施例5】
【0148】
cDNAライブラリーの構築
以下のとおり、エチレンで処理された葉から全RNAを調製することにより、cDNAライブラリーを構築した。まず、修飾された酸フェノールおよびクロロホルム抽出プロトコールを用いて、タバコ系統58-33のエチレン処理葉から全RNAを抽出した。1グラムの組織を使用し、それを粉砕し、ついで、5mlのフェノール (pH 5.5) および5mlのクロロホルムが加えられた5mlの抽出バッファー(100 mM Tris-HCl, pH 8.5; 200 mM NaCl; 10mM EDTA; 0.5% SDS)中でボルテックスするよう、該プロトコールを修飾した。抽出されたサンプルを遠心分離し、上清を取っておいた。上清が透明になるまで、この抽出工程を2〜3回反復した。微量のフェノールを除去するために、約5mlのクロロホルムを加えた。3倍容量のエタノールおよび1/10容量の3M NaOAc (pH 5.2)を加え、-20℃で1時間保存することにより、合わせた上清画分からRNAを沈殿させた。Corexガラス容器に移した後、該RNA画分を9,000rpm、4℃で45分間遠心分離した。該ペレットを70%エタノールで洗浄し、9,000RPM、4℃で5分間遠心した。該ペレットの乾燥後、該ペレット化RNAを0.5mlのRNアーゼ非含有水に溶解した。変性ホルムアルデヒドゲルおよび分光光度計により全RNAをそれぞれ定性および定量分析した。
【0149】
得られた全RNAを使用し、以下のプロトコールによりオリゴ(dT)セルロースプロトコール (Invitrogen)およびミクロ遠心カラム (Invitrogen)を使用してポリA+RNAを単離した。約20mgの全RNAを2回精製に付して、高品質のポリA+RNAを得た。mRNAの高品質性を保証するために、既知完全長遺伝子の変性ホルムアルデヒドゲルおよびそれに続くRT-PCRを行うことにより、ポリA+RNA産物を分析した。
【0150】
つぎに、ポリA+RNAを鋳型として使用し、cDNA合成キット、ZAP-cDNA合成キットおよびZAP-cDNA Gigapack IIIゴールドクローニングキット (Stratagene, La Jolla, California)を使用してcDNAライブラリーを得た。該方法は、示されているとおりの該製造業者のプロトコールに従い行った。約8μgのポリA+RNAを使用してcDNAライブラリーを構築した。該一次ライブラリーの分析は約2.5×10
6〜1×10
7 pfuを示した。IPTGおよびX-galを使用する相補性アッセイにより該ライブラリーの品質バックグラウンド試験を完了した。この場合、組換えプラークはバックグラウンド反応の100倍以上で発現された。
【0151】
ランダムPCRによる該ライブラリーの、より定量的な分析は、インサートcDNAの平均サイズが約1.2kbであることを示した。該方法は2工程のPCR法を用いるものであった。第1工程では、p450断片から得た予備配列情報に基づいてリバースプライマーを設計した。設計されたリバースプライマーおよびT3(フォワード)プライマーを使用して、cDNAライブラリーから対応遺伝子を増幅した。PCR反応をアガロース電気泳動に付し、高分子量の対応バンドを切り出し、精製し、クローニングし、配列決定した。第2工程においては、リバースプライマー(p450の3'UTRから設計したもの)と共に、フォワードプライマーとしてp450の5'UTRおよび開始コード領域から設計した新たなプライマーを、後続のPCRにおいて使用して、完全長p450クローンを得た。
【0152】
該p450断片は、リバースプライマー以外は、実施例3に記載の構築されたcDNAライブラリーからのPCR増幅により得た。cDNAインサートの下流の該プラスミド上に位置するT7プライマーをリバースプライマーとして使用した。実施例4に記載のとおりに、PCR断片を単離し、クローニングし、配列決定した。
【0153】
構築されたcDNAライブラリーから、このPCR法により完全長p450遺伝子を単離した。遺伝子特異的リバースプライマー(p450断片の下流配列から設計されたもの)およびフォワードプライマー(ライブラリープラスミド上のT3)を使用して完全長遺伝子を得た。PCR断片を単離し、クローニングし、配列決定した。必要に応じて、第2のPCR工程を行った。この第2の工程においては、p450クローンの3'UTRから設計したリバースプライマーと共に、クローン化p450の5'UTRから設計した新たなフォワードプライマーを、後続PCR反応において使用して、完全長p450クローンを得た。ついで該クローンを配列決定した。
【実施例6】
【0154】
クローン化断片の特徴づけ - リバースサザンブロット分析
示差的発現を検出するために、前記実施例において特定されたすべてのp450クローン上で、非放射性ラージスケールリバースサザンブロットアッセイを行った。異なるp450クラスター間の発現のレベルは非常に異なることが観察された。更に、高い発現を示すクローン上でリアルタイム検出を行った。
【0155】
非放射性サザンブロット法は以下のとおりに行った。
1)実施例2に記載のとおりに、Qiagen Rnaeasyキットを使用して、エチレンで処理された及び処理されていない変換体(58-33)および非変換体(58-25)葉から全RNAを抽出した。
【0156】
2)前記工程で得たポリA+富化RNAに由来する一本鎖cDNAをビオチン尾部標識することにより、プローブを作製した。この標識一本鎖cDNAは、プライマー (Promega)としてビオチン化オリゴdTを使用すること以外は実施例3に記載のとおりの変換体および非変換体全RNA(Invitrogen)のRT-PCRにより作製した。これらを、クローン化DNAにハイブリダイズさせるためのプローブとして使用した。
【0157】
3)プラスミドDNAを制限酵素EcoR1で消化し、アガロースゲル上で泳動させた。ゲルを同時に乾燥させ、2つのナイロンメンブレン(Biodyne B)にトランスファーした。1つのメンブレンを変換体プローブでハイブリダイズさせ、もう1つを非変換体プローブでハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーション前にメンブレンをUV架橋(自動架橋セッティング, 254nm, Stratagene, Stratalinker)に付した。
【0158】
あるいは、p-GEMプラスミド、T3およびSP6の両アーム上に位置する配列をプライマーとして使用して、該インサートを各プラスミドからPCR増幅した。96ウェルReady-to-run アガロースゲル上で泳動させることにより、PCR産物を分析した。確認されたインサートを2つのナイロンメンブレン上にドット化(dot)した。1つのメンブレンを変換体プローブでハイブリダイズさせ、もう1つを非変換体プローブでハイブリダイズさせた。
【0159】
4)該膜をハイブリダイズさせ、洗浄ストリンジェンシーを変更すること以外は製造業者(Enzo MaxSence kit, Enzo Diagnostics, Inc, Farmingdale, NY)の指示に従い洗浄した。該膜をハイブリダイゼーションバッファー(界面活性剤およびハイブリダイゼーション増強剤を含有する2×SSC緩衝化ホルムアミド)で42℃で30分間、プレハイブリダイズさせ、10μlの変性プローブで42℃で一晩ハイブリダイズさせた。ついで該膜を1×ハイブリダイゼーション洗浄バッファー中、室温で10分間(1回)および68℃で15分間(4回)洗浄した。該検出法のための該膜の準備は整った。
【0160】
5)それらの洗浄された膜を、製造業者の検出指示書(Enzo Diagnostics, Inc.)に記載されているとおりにアルカリホスファターゼ標識およびそれに続くNBT/BCIP比色検出により検出した。該膜を1×ブロッキング溶液で室温で1時間ブロッキングし、1×検出試薬で10分間(3回)洗浄し、1×前現像(predevelopment)反応バッファーで5分間(2回)洗浄し、ついで該ドットが出現するまで、現像溶液中、30〜45分間、該ブロットを現像した。すべての試薬は製造業者(Enzo Diagnostics, Inc)から入手した。また、KPLサザンハイブリダイゼーションおよび検出キットを製造業者の指示(KPL, Gaithersburg, Maryland)に従い使用して、ラージスケールリバースサザンアッセイを行った。
【実施例7】
【0161】
クローンのキャラクタライゼーション - ノーザンブロット分析
サザンブロット分析の代わりに、ノーザンブロットアッセイの実施例において記載されているとおりに、いくつかの膜をハイブリダイズさせ検出した。以下のとおりに、Nicotianaにおいて示差的に発現されたmRNAを検出するために、ノーザンハイブリダイゼーションを用いた。
【0162】
クローン化p450(Megaprime DNA Labelling Systems, Amersham Biosciences)からプローブを調製するために、ランダムプライミング法を用いた。以下の成分を混合した:25ngの変性DNA鋳型;4ulの各未標識dTTP、dGTPおよびdCTP;5μlの反応バッファー;P
32標識dATPおよび2ulのクレノウI;ならびにH
2O(該反応液を50μlに調整する)。該混合物を37℃で1〜4時間インキュベートし、2μlの0.5M EDTAで停止させた。使用前に95℃で5分間のインキュベーションにより、該プローブを変性させた。
【0163】
いくつかのペアのタバコ系統の、エチレンで処理された及び処理されていない新鮮な葉から、RNAサンプルを調製した。いくつかの場合には、ポリA+富化RNAを使用した。約15μgの全RNAまたは1.8μgのmRNA(実施例5に記載のとおりのRNAおよびmRNA抽出の方法)をDEPC H
2O (5〜10μl)で等容量にした。同じ容量のローディングバッファー(1×MOPS; 18.5% ホルムアルデヒド; 50% ホルムアミド; 4 % Ficoll400; ブロモフェノールブルー)および0.5μlのEtBr (0.5 μg/μl)を加えた。ついで電気泳動による該RNAの分離のための準備において、該サンプルを変性させた。
【0164】
サンプルを、1×MOPバッファー(0.4 M モルホリノプロパン硫酸; 0.1M 酢酸Na-3×H2O; 10mM EDTA; NaOHでpH 7.2に調節)を含有するホルムアルデヒドゲル(1% アガロース,
1×MOPS, 0.6M ホルムアルデヒド)上の電気泳動に付した。10×SSCバッファー(1.5M NaCl; 0.15M クエン酸Na)中、毛管法により、RNAを24時間にわたってHybond-N+メンブレン(Nylon, Amersham Pharmacia Biotech)トランスファーした。ハイブリダイゼーションの前に、RNAサンプルを含有するメンブレンをUV架橋させた(自動架橋セッティング, 254nm, Stratagene, Stratalinker)に付した。
【0165】
該メンブレンを5〜10mlのプレハイブリダイゼーションバッファー(5×SSC; 50% ホルムアルミド; 5×デンハルト液; 1% SDS; 100μg/ml 熱変性せん断非相同DNA)で42℃で1〜4時間プレハイブリダイズさせた。古いプレハイブリダイゼーションバッファーを捨て、新たなプレハイブリダイゼーションバッファーおよびプローブを加えた。該ハイブリダイゼーションは42℃で一晩行った。該膜を2×SSCで室温で15分間洗浄し、ついで2×SSCで洗浄した。
【0166】
エチレン処理により誘導された変換体および非変換体バーレー系統から得たタバコ組織上で完全長クローンを使用して、ノーザン分析を行った。この分析を用いて、エチレン誘導性非変換体バーレー系統との対比においてエチレン誘導性変換体系統における発現の上昇を示す完全長クローンを特定した。そのように行うことにより、変換体系統と非変換体系統との間の葉成分における生化学的相違を比較することにより、完全長クローンの機能関連性が決定されうる。
【実施例8】
【0167】
クローン化遺伝子によりコードされるポリペプチドの免疫検出
3個のp450クローンからの20〜22アミノ酸長に対応するペプチド領域を、(1)他のクローンに対して、より低い相同性を有する又は相同性を有さないこと、および(2)良好な親水性および抗原性を有することに関して選択した。それぞれのp450クローンから選択したペプチド領域のアミノ酸配列を以下に列挙する。該合成ペプチドをKHL(キーホールリンペットヘモシアニン)と共役させ、ついでウサギに注射した。4回目の注射(Alpha Diagnostic Intl. Inc. San Antonio, TX)の2週間後および4週間後に抗血清を集めた。
【0168】
D234-AD1 DIDGSKSKLVKAHRKIDEILG (配列番号8)
D90a-BB3 RDAFREKETFDENDVEELNY (配列番号9)
D89-AB1 FKNNGDEDRHFSQKLGDLADKY (配列番号10)
ウエスタンブロット分析により、タバコ植物組織からの標的タンパク質に対する交差活性に関して抗血清を検査した。変換体および非変換体系統のエチレン処理(0〜40時間)中葉から粗タンパク質抽出物を得た。RC DC Protein Assay Kit (BIO-RAD)を該製造業者のプロトコールに従い使用して、該抽出物のタンパク質濃度を測定した。
【0169】
2μgのタンパク質を各レーン上にローディングし、Laemmli SDS-PAGE系を使用して該タンパク質を10%〜20%勾配ゲル上で分離した。Trans-Blot Semi-Dry セル(BIO-RAD)を使用して該タンパク質をゲルからPROTRAN Nitrocellulose Transfer Membranes (Schleicher & Schuell)にトランスファーした。ECL Advance Western Blotting Detection Kit (Amersham Biosciences)を使用して、標的p450タンパク質を検出し可視化した。該合成KLHコンジュゲートに対する一次抗体をウサギにおいて調製した。ペルオキシダーゼに共役した、ウサギIgGに対する二次抗体を、Sigmaから購入した。一次抗体および二次抗体は共に1:1000の希釈度で使用した。抗体は、該ウエスタンブロット上の単一のバンドに対して強力な反応性を示した。このことは、該抗血清が、関心のある標的ペプチドに対して単一特異性であったことを示している。また、抗血清はKLH共役合成ペプチドに対して交差反応性であった。
【実施例9】
【0170】
核酸の同一性、単離された核酸断片の構造関連性およびGeneChip(登録商標)ハイブリダイゼーション
100個を超えるクローン化p450断片を、それらの構造関連性を決定するためのノーザンブロット分析と共に配列決定した。該アプローチは、p450遺伝子のカルボキシル末端付近に位置する2つの共通のp450モチーフのいずれかに基づくフォワードプライマーを使用するものであった。該フォワードプライマーはシトクロムp450モチーフFXPERF (配列番号11)またはGRRXCP(A/G) (配列番号12)に対応するものであった。リバースプライマーとしては、ポリA尾部またはpGEMプラスミドの両アーム上に位置するプラスミドSP6またはT7からの標準的なプライマーを使用した。用いたプロトコールを以下に説明する。
【0171】
製造業者のプロトコール(Beckman Coulter)に従い出発二本鎖DNAの濃度を推定するために、分光光度法を用いた。該鋳型を適当な濃度まで水で希釈し、95℃で2分間の加熱により変性させ、ついで氷上に配置した。該配列決定反応は、0.5〜10μlの変性DNA鋳型、2μlの1.6pmolのフォワードプライマー、8μlのDTCS Quick Start Master Mixを使用して氷上で調製し、全容量を水で20μlにした。熱サイクルプログラムは以下のサイクルの30サイクルよりなるものであった:96℃で20秒間、50℃で20秒間および60℃で4分間ならびにそれに続く4℃での維持。
【0172】
5μlの停止バッファー(等容量の3M NaOAcおよび100mM EDTAおよび1μlの20mg/ml グリコーゲン)を加えることにより、該配列決定反応を停止させた。該サンプルを60μlの冷95%エタノールで沈殿させ、6000×gで6分間遠心分離した。エタノールを捨てた。該ペレットを200μlの冷70%エタノールで2回洗浄した。該ペレットが乾燥した後、40μlのSLS溶液を加え、該ペレットを再懸濁させた。鉱油層を重層し、更なる分析のために該サンプルをCEQ 8000 Automated Sequencer上に配置した。
【0173】
核酸配列を確認するために、p450遺伝子のFXPERF (配列番号11) またはGRRXCP(A/G)(配列番号12)領域に対するフォワードプライマー、あるいはプラスミドまたはポリA尾部に対するリバースプライマーを使用して、該核酸配列を両方向に再び配列決定した。すべての配列決定は両方向に少なくとも2回行った。
【0174】
シトクロムp450断片の核酸配列を、GRRXCP(A/G) (配列番号12)モチーフをコードする領域の後の第1核酸から終止コドンまでに対応するコード領域に関してお互いに比較した。p450タンパク質間の遺伝的多様性の指標として、この領域を選択した。他の植物種の場合と同様に、70遺伝子を超える多数の遺伝的に異なるp450遺伝子が観察された。核酸配列の比較に際して、該遺伝子は、配列同一性に基づいて、異なる配列群内に配置されうることが判明した。p450メンバーの最良の特有の群分けは、75%またはそれ以上の核酸同一性配列を有する配列であることが見出された(例えば、参照により本明細書に組み入れるUS 2004/0162420特許出願公開のTable 1を参照されたい)。同一性(%)の減少は有意に大きな群を与えた。好ましい群分けは、81%またはそれ以上の核酸同一性を有する配列で、より好ましい群分けは、91%またはそれ以上の核酸同一性を有する配列で、最も好ましい群分けは、99%またはそれ以上の核酸同一性を有する配列で認められた。それらの群のほとんどは少なくとも2個のメンバーを、そしてしばしば3個以上のメンバーを含有していた。他のものは反復的には見出されなかった。このことは、採用したアプローチが、使用した組織において低発現mRNAおよび高発現mRNAの両方を単離し得たことを示唆している。
【0175】
GeneChip技術を用いて変換タバコ植物系統 対非変換タバコ植物系統で異なって発現される遺伝子を同定し、D121-AA8はエチレン処理変換系統において再生可能な誘導有することが確認された。これらの結果に基づき、D121-AA8遺伝子(そのcDNA配列は配列暗号3の配列である;
図3)が、目的のタバコニコチンデメチラーゼ遺伝子として特定された。p450の命名法を考慮すると、D121-AA8はCYP82Eファミリー内のp450に最も類似していることが確認された(The Arabidopsis Genome Initiative (AGI) and The Arabidopsis Information Resource (TAIR); Frank, Plant Physiol. 110:1035-1046, 1996; Whitbredら, Plant Physiol. 124:47-58, 2000); SchopferおよびEbel, Mol. Gen. Genet. 258:315-322, 1998; ならびにTakemotoら, Plant Cell Physiol. 40:1232-1242, 1999)。
【実施例10】
【0176】
酵素活性の生化学的分析
生化学的分析(例えば、参照により本明細書に組み入れる既に出願されている出願に記載されているもの)は、配列番号3の配列がタバコニコチンデメチラーゼ(配列番号4;
図3)をコードしていることを確認している。
【0177】
特に、以下のとおり、酵母細胞内で異種発現されるp450の酵素活性をアッセイすることにより、候補クローンD121-AA8の機能をニコチンデメチラーゼのコード遺伝子として確認した。
【0178】
1.酵母発現ベクターの構築
タバコニコチンデメチラーゼをコードするcDNA(D121-AA8)の推定タンパク質コード配列D120-AH4、D121-AA8、208-AC-8およびD208-AD9を酵母発現ベクターpYeDP60内にクローニングした。適当なBamHIおよびMfeI部位(以下の下線部)を、翻訳開始コドン(ATG)の上流または停止コドン(TAA)の下流にこれらの配列を含有するPCRプライマーにより導入した。増幅されたPCR産物上の該ベクター上のMfeIはEcoRI部位に適合性である。D121-AA8 cDNAを増幅するために使用したプライマーは5’-TAGCTACGC
GGATCCATGCTTTCTCCCATAGAAGCC-3’ (配列番号27)および5’-CTGGATCA
CAATTGTTAGTGATGGTGATGGTGATGCGATCCTCTATAAAGCTCAGGTGCCAGGC-3’ (配列番号28)であった。6個のヒスチジンを含む該タンパク質のC末端の更に9個のアミノ酸をコードする配列のセグメントを、誘導された際の6-Hisタグ付きp450の発現を促進するためにリバースプライマー内に組込んだ。酵素消化の後、GAL10-CYC1プロモーターに対してセンス配向で、PCR産物をpYeDP60ベクター内に連結した。該酵母発現ベクターの適切な構築を制限酵素分析およびDNA配列決定により確認した。また、p450タンパク質の発現を酵母ミクロソームの界面活性剤相に関してSDS-PAGEゲル電気泳動上で可視化した。遺伝子配列に基づけば、p450タンパク質の予想サイズは59kDであり、結果をゲル分析により確認した。
【0179】
2.酵母形質転換
Arabidopsis NADPH-シトクロムp450レダクターゼATR1を発現するよう修飾されたWAT11酵母系をpYeDP60-p450 cDNAプラスミドで形質転換した。50μlのWAT11酵母細胞浮遊液を、0.2cmの電極間隙を有するキュベット内で〜1μgのプラスミドDNAと混合した。Eppendorfエレクトロポレーター (Model 2510)により2.0kVの1パルスを加えた。細胞をSGIプレート(5g/L バクトカザミノ酸, アミノ酸を含有しない6.7 g/L 酵母窒素塩基, 20 g/L グルコース, 40 mg/L DL-トリプトファン, 20 g/L 寒天)上に広げた。ランダムに選択したコロニー上で直接的に行ったPCR分析により形質転換体を確認した。
【0180】
3.形質転換酵母細胞内でのp450発現
単一酵母コロニーを使用して、それを30ml SGI培地(5g/L バクトカザミノ酸, アミノ酸を含有しない6.7 g/L 酵母窒素塩基, 20 g/L グルコース, 40 mg/L DL-トリプトファン)に接種し、30℃で約24時間成長させた。この培養のアリコートを1000mLのYPGE培地(10 g/L 酵母エキス, 20 g/L バクトペプトン, 5 g/L グルコース, 30 ml/L エタノール)内に1:50希釈し、Diastix尿分析試薬片(Bayer, Elkhart, IN)の比色変化による表示でグルコースが完全に消費されるまで成長させた。DL-ガラクトースを2%の最終濃度まで加えることによりクローン化P450の誘導を開始した。in vivo活性アッセイまたはミクロソーム調製に使用する前に、該培養を更に20時間成長させた。
【0181】
pYeDP60-CYP71D20(Nicotiana tabacumにおける5-エピ-アリストロケンおよび1-デオキシカプシジオールのヒドロキシル化を触媒するp450)を発現するWAT11酵母細胞を、p450発現および酵素活性アッセイのための対照として使用した。
【0182】
p450の酵母発現の有効性を詳細に評価するために、還元CO差分光法(reduced CO difference spectroscopy)を行った。還元COスペクトルは、全4種のp450形質転換酵母系統から、450nmタンパク質においてピークを示した。対照の未形質転換酵母細胞またはブランクのベクター対照酵母細胞に由来する対照ミクロソームにおいては、類似したピークは観察されなかった。これらの結果は、pYeDP60-CYP 450を含有する酵母系においてp450タンパク質が有効に発現されたことを示した。酵母ミクロソームにおける発現p450タンパク質の濃度は45〜68 nmole/mg全タンパク質であった。
【0183】
4.in vitro酵素アッセイ
酵母培養にDL-ニコチン(ピロリジン-2-
14C)を供給することにより、形質転換された酵母細胞におけるニコチンデメチラーゼ活性をアッセイした。
14C標識ニコチン(54 mCi/mmol)を55μMの最終濃度で75μlのガラクトース誘導培養に加えた。該アッセイ培養を、14mlのポリプロピレンチューブ中、振とうしながら6時間インキュベートし、900μlのメタノールで抽出した。遠心後、20μlの該メタノール抽出物をrp-HPLCで分離し、ノルニコチン画分をLSCにより定量した。
【0184】
WAT11(pYeDP60-CYP71D20)の対照培養はニコチンをノルニコチンへ変換しなかった。このことは、WAT11酵母株が、ニコチンからノルニコチンへの生物変換の過程を触媒する内因性酵素活性を含有していないことを示している。これとは対照的に、タバコニコチンデメチラーゼ遺伝子を発現する酵母は、検出可能な量のノルニコチンを産生した。これは配列番号3の翻訳産物のニコチンデメチラーゼ活性を示している。
【0185】
5.酵母ミクロソームの調製
ガラクトースによる20分間の誘導の後、酵母細胞を遠心分離により集め、TES-Mバッファー(50 mM Tris-HCl, pH 7.5, 1 mM EDTA, 0.6 M ソルビトール, 10 mM 2-メルカプトエタノール)で2回洗浄した。該ペレットを抽出バッファー(50 mM Tris-HCl, pH 7.5, 1 mM EDTA, 0.6 M ソルビトール, 2 mM 2-メルカプトエタノール, 1% ウシ血清アルブミン, プロテアーゼインヒビターカクテル (Roche) (錠剤1個/50 ml))に再懸濁させた。ついで細胞をガラスビーズ(直径0.5mm, Sigma)で破壊し、細胞抽出物を20,000×gで20分間遠心分離して細胞残渣を除去した。上清を100,000×gで60分間の超遠心分離に付した。得られたペレットはミクロソーム画分を含有していた。該ミクロソーム画分をTEG-Mバッファー (50 mM Tris-HCl, pH 7.5, 1 mM EDTA, 20% グリセロールおよび1.5 mM 2-メルカプトエタノール)に1mg/mLのタンパク質濃度で懸濁させた。ミクロソーム調製物を、使用するまで液体窒素冷凍機内で保存した。
【0186】
6.酵母ミクロソーム調製物における酵素活性アッセイ
酵母ミクロソーム調製物でのニコチンデメチラーゼ活性アッセイを行った。特に、DL-ニコチン(ピロリジン-2-
14C)をMoravek Biochemicalsから得、それは54 mCi/mmolの比活性を有していた。クロルプロマジン(CPZ)および酸化型シトクロムc(cyt.C)(共にP450インヒビターである)をSigmaから購入した。還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)は、NADPH:シトクロムP450レダクターゼを介した、シトクロムP450に対する典型的な電子供与体である。対照インキュベーションにはNADPHを除いた。通常の酵素アッセイはミクロソームタンパク質(約1mg/ml)、6 mM NADPHおよび55 μM
14C標識ニコチンを含むものであった。CPZおよびCyt.Cの濃度は、それらを使用した場合には、それぞれ1mMおよび100μMであった。反応を25℃で1時間行い、それぞれ25μlの反応混合物への300μlのメタノールの添加により停止させた。遠心分離後、20μlの該メタノール抽出物を、VarianからのInertsil ODS-3 3 μ (150×4.6 mm)クロマトグラフィーカラムを使用する逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)系(Agilent)で分離した。イソクラティック移動相はメタノールと50mMリン酸カリウムバッファー(pH6.25)との60:40(v/v)の比の混合物であり、流速は1ml/分であった。真正非標識ノルニコチンとの比較により決定されたノルニコチンのピークを集め、定量のために2900トリカーボ(tri-carb)Liquid Scintillation Counter (LSC) (Perkin Elmer)に付した。ニコチンデメチラーゼの活性は、1時間のインキュベーションにわたる
14C標識ノルニコチンの産生に基づいて計算される。
【0187】
CYP71D20を発現する酵母細胞からのミクロソーム調製物は検出可能なミクロソームニコチンデメチラーゼ活性を有しなかった。対照的に、タバコニコチンデメチラーゼ遺伝子を発現する酵母細胞から得られたミクロソームサンプルはかなりのレベルのニコチンデメチラーゼ活性を示した。ニコチンデメチラーゼ活性はNADPHを要し、p450特異的インヒビターにより抑制されることが示され、これは、タバコニコチンデメチラーゼがp450であることに符合する。タバコニコチンデメチラーゼ(D121-AA8)に関する酵素活性は、放射能強度およびタンパク質濃度による計算では約10.8pKat/mgタンパク質であった。該酵母細胞に関して得られた一連の典型的な酵素アッセイの結果を以下の表(表1)に示す。
【表1】
【0188】
これらの実験により、クローン化された全長タバコニコチンデメチラーゼ(配列番号3; D121-AA8)は、酵母で発現されると、ニコチンのノルニコチンへの変換を触媒するシトクロムp450タンパクをコードすることが実証された。
【実施例11】
【0189】
単離された核酸断片の関連アミノ酸配列同一性
実施例8からシトクロムp450断片に関して得られた核酸配列のアミノ酸配列を演繹した。該演繹領域はGXRXCP(A/G) (配列番号13)配列モチーフの直後のアミノ酸からカルボキシル末端または終止コドンまでに対応するものであった。該断片の配列同一性を比較したところ、70%またはそれ以上のアミノ酸同一性を有する配列に関して、特有の群分けが見られた。好ましい群分けは、80%またはそれ以上のアミノ酸同一性を有する配列で、より好ましい群分けは、90%またはそれ以上のアミノ酸同一性を有する配列で、最も好ましい群分けは、99%またはそれ以上のアミノ酸同一性を有する配列で認められた。それらの特有の核酸配列のいくつかは他の断片に対して完全なアミノ酸同一性を有することが見出されたため、同一アミノ酸を有する唯一のメンバーを報告した。
【0190】
植物を使用する遺伝子クローニングおよび機能研究のために、各アミノ酸同一性群の少なくとも1つのメンバーを選択した。また、ノーザンおよびサザン分析により評価した場合にエチレン処理または他の生物学的相違により異なって影響される群メンバーを、遺伝子クローニングおよび機能研究のために選択した。遺伝子クローニング、発現研究および全植物評価を補助するために、配列同一性および特異な配列に基づき、ペプチド特異的抗体を調製することが可能である。
【実施例12】
【0191】
完全長クローンの関連アミノ酸配列同一性
実施例5においてクローニングされた完全長Nicotiana遺伝子の核酸配列をそれらの全アミノ酸配列に関して演繹した。カルボキシル末端におけるUXXRXXZ (配列番号14)、PXRFXF (配列番号15)またはGXRXC (配列番号16)(ここで、UはEまたはKであり、Xは任意のアミノ酸であり、ZはP、T、SまたはMである)に対応する3つの保存されたp450ドメインモチーフの存在により、シトクロムp450遺伝子を特定した。お互いに対して及び公知タバコ遺伝子に対して完全長配列を比較するBLASTプログラムを使用して、アミノ酸同一性に関してすべてのp450遺伝子を特徴づけした。該プログラムはNCBIスペシャル(special)BLASTツール(tool)(Align two sequences (b12seq), http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/b12seq/b12.html)を使用するものであった。2つの配列を、核酸配列に関してはフィルター無しでBLASTNで、アミノ酸配列に関してはBLASTPで整列させた。それらのアミノ酸同一性(%)に基づき、各配列を同一性群に群分けした。この場合、該群分けは、別のメンバーに対して少なくとも85%の同一性を共有するメンバーを含有するものであった。好ましい群分けは、90%またはそれ以上のアミノ酸同一性を有する配列で、より好ましい群分けは、95%またはそれ以上のアミノ酸同一性を有する配列で、最も好ましい群分けは、99%またはそれ以上のアミノ酸同一性を有する配列で認められた。これらの基準を用いて、25個の特有の群を特定した。それらを表6に示す。完全長ニコチンデメチラーゼ遺伝子のアミノ酸配列は、配列番号4(
図3)に記載の配列を有するように演繹された。
【実施例13】
【0192】
タバコP450特異的ドメインの1以上を欠くNicotianaシトクロムP450クローン
4個のクローンは90%〜99%の範囲の高い核酸相同性を有していた。しかし、ヌクレオチドフレームシフトにより、これらの遺伝子は3個のC末端シトクロームp450ドメインの1以上を含有しておらず、表6または表7に示す同一性群から除外された。
【実施例14】
【0193】
タバコの品質の調節の改変におけるNicotianaシトクロムP450断片およびクローンの使用
タバコp450核酸断片または全遺伝子の使用は、タバコ表現型またはタバコ成分の改変、そしてより重要なものとして代謝産物の改変を伴う植物の特定および選択において有用である。ダウンレギュレーション(例えば、アンチセンス配向)または過剰発現(例えば、センス配向)などのための配向で、本明細書に記載のものから選ばれる核酸断片または完全長遺伝子を組込む種々の形質転換系により、トランスジェニックタバコ植物を作製することが可能である。完全長遺伝子に対する過剰発現のためには、本発明に記載の完全長遺伝子の全体または機能的部分またはアミノ酸配列をコードする任意の核酸配列が望ましい。そのような核酸配列は、望ましくは、ある酵素の発現を増強してNicotianaにおける表現型効果をもたらすのに有効である。ホモ接合であるNicotiana系統は、一連の戻し交配により得られ、当業者に一般に利用可能な技術を用いて内因性p450 RNA、転写産物、p450発現ペプチドおよび植物代謝産物の濃度を分析することとなど(これらに限定されるものではない)により、表現型変化に関して評価される。タバコ植物において示される変化は、選択された関心のある遺伝子の機能的役割に関する情報を提供し、あるいは好ましいNicotiana植物種として有用である。
【実施例15】
【0194】
変換体バーレータバコからのゲノムタバコニコチンデメチラーゼのクローニング
Qiagen Plant Easyキットを前記実施例に記載のとおりに(該製造業者の説明も参照されたい)使用して、変換体バーレータバコ植物系統4407-33(Nicotiana tabacum品種4407系統)からゲノムDNAを抽出した。
【0195】
前記実施例においてクローニングした5'プロモーターおよび3'UTR領域に基づいて、プライマーを設計した。フォワードプライマーは5’-GGC TCT AGA TAA ATC TCT TAA GTT ACT AGG TTC TAA-3’ (配列番号17) および5’- TCT CTA AAG TCC CCT TCC -3’ (配列番号25)であり、リバースプライマーは5’-GGC TCT AGA AGT CAA TTA TCT TCT ACA AAC CTT TAT ATA TTA GC-3’ (配列番号18)および5’- CCA GCA TTC CTC AAT TTC -3’ (配列番号26)であった。100μlの反応混合物を使用して4407-33ゲノムDNAにPCRを適用した。Pfx高忠実度酵素をPCR増幅に使用した。電気泳動後に1%アガロースゲル上でPCR産物を可視化した。約3.5kbの分子量を有する単一のバンドが観察され、それを該ゲルから切り出した。ゲル精製キット(Qiagen; based on manufacturer’s procedure)を使用して、生じたバンドを精製した。精製されたDNAを酵素XbaI(NEB; 製造業者の指示に従い使用する)で消化した。同じ方法を用いてpBluescriptプラスミドをXbaIで消化した。該断片をゲル精製し、pBluescriptプラスミド内に連結した。該連結混合物をコンピテント細胞GMlO9内に形質転換し、青/白選択を伴う100mg/lのアンピシリンを含有するLBプレート上にプレーティングした。白色コロニーを拾い、アンピシリンを含有する10mlのLB液体培地内で成長させた。DNAをミニプレップにより抽出した。CEQ2000シークエンサー(Beckman, Fullerton, California)を製造業者の説明に従い使用して、該インサートを含有するプラスミドDNAを配列決定した。T3およびT7プライマーならびに8個の他の内部プライマーを配列決定に使用した。該配列を集合させ、分析して、ゲノム配列(配列番号1;
図2-1〜2-3)を得た。該ゲノム配列に基づき、変換体および非変換体の両方のタバコ系統におけるニコチンデメチラーゼ遺伝子は転移因子を含有しないことが確認された。
【0196】
配列番号1の配列と配列番号3との比較は該遺伝子のコード部分コードの単一のイントロン(配列番号5の配列として特定される;
図4)の決定を可能にした。
図1に示すとおり、タバコニコチンデメチラーゼのゲノム構造は、単一のイントロンに隣接する2つのエキソンを含む。第1エキソンは配列番号1のヌクレオチド2010-2949に伸長し、これは配列番号2のアミノ酸1-313をコードし、第2エキソンは配列番号1のヌクレオチド3947-4562に伸長し、これは配列番号2のアミノ酸314-517をコードしている。したがって、イントロンは配列番号1のヌクレオチド2950-3946に伸長している。該イントロン配列を
図4に示す。それは配列番号5の配列である。ゲノムDNA配列の翻訳産物を配列番号2の配列として
図2-1に示す。タバコニコチンデメチラーゼアミノ酸配列は、小胞体膜アンカーモチーフを含有する。
【実施例16】
【0197】
変換体タバコからの5'隣接配列(配列番号6)および3'UTR(配列番号7)のクローニング
A.変換体タバコ葉組織からの全DNAの単離
変換体タバコ4407-33の葉からゲノムDNAを単離した。Qiagen, Inc. (Valencia, Ca)社のDNeasy Plant Mini Kitを該製造業者のプロトコールに従い使用してDNAの単離を行った。その製造業者のマニュアルDneasy’ Plant Mini and DNeasy Plant Maxi Handbook, Qiagen January 2004を参照により本明細書に組み入れることとする。DNA調製の方法は以下の工程を含むものであった。タバコ葉組織(約20mgの乾燥重量)を、液体窒素下で1分間、微粉末に粉砕した。該組織粉末を1.5mlのチューブ内に移した。バッファーAP1(400μl)および4μlのRNアーゼストック溶液(100mg/ml)を最大100mgの粉砕葉組織に加え、激しくボルテックスした。該混合物を65℃で10分間インキュベートし、チューブを反転させることによりインキュベート中に2〜3回混合した。ついでバッファーAP2(130μl)をライセートに加えた。該混合物を混合し、氷上で5分間インキュベートした。該ライセートをQIAshredder Mini Spin Columnにアプライし、2分間(14,000rpm)遠心分離した。該細胞残渣ペレットを乱すことなく、流出画分を新たなチューブに移した。ついでバッファーAP3/E(1.5容量)を清澄化ライセートに加え、ピペッティングにより混合した。存在しうる沈殿物を含む前工程からの混合物(650μl)をDNeasy Mini Spin Columnにアプライした。該混合物を>6000×g(>8000rpm)で1分間遠心分離し、流出物を捨てた。残りのサンプルについて、これを繰返し、流出物および収集チューブを捨てた。DNeasy Mini Spin Columnを新たな2mlの収集チューブ内に配置した。ついでバッファーAW(500μl)をDNeasyカラムに加え、1分間(>8000rpm)遠心分離した。流出物を捨てた。収集チューブを次の工程で再利用した。ついでバッファーAW(500μl)をDNeasyカラムに加え、2分間(>14,000rpm)遠心分離して該メンブレン(膜)を乾燥させた。該DNeasyカラムを1.5mlのチューブに移した。ついでバッファーAE(100μl)をDNeasyメンブレン上にピペッティングした。該混合物を室温(15〜25℃)で5分間インキュベートし、ついで1分間(>8000rpm)遠心分離して溶出させた。
アガロースゲル上でサンプルを泳動させることにより、該DNAの質および量を評価した。
【0198】
B.構造遺伝子の5'隣接配列のクローニング
配列番号1からの構造遺伝子の5'隣接配列の750ヌクレオチドをクローニングするために、修飾された逆PCR法を用いた。まず、既知配列断片内の制限部位および5'隣接配列の下流の制限部位距離に基づき、適当な制限酵素を選択した。この既知断片に基づき、2つのプライマーを設計した。フォワードプライマーはリバースプライマーの下流に配置した。リバースプライマーは該既知断片の3'部分に配置した。
【0199】
クローニング操作は以下の工程を含むものであった。
精製されたゲノムDNA(5μg)を、50μlの制限混合物中、20〜40単位の適当な制限酵素(EcoRIおよびSpeI)で消化した。該DNAが完全に消化されたかどうかを確認するために、該反応混合物の1/10容量でのアガロースゲル電気泳動を行った。完全な消化の後に、4℃で一晩の連結により直接的な連結を行った。10μlの消化DNAおよび0.2μlのT4 DNAリガーゼ(NEB)を含有する200μlの反応混合物を4℃で一晩連結させた。人工的な小さな環状ゲノムが得られた後、該連結反応物に対してPCRを行った。50μlの反応混合物中、2つの異なる方向の既知断片からの2個のプライマーおよび10μlの連結反応物を使用して、PCRを行った。45〜56℃のアニーリング温度を用いるグラジエントPCRプログラムを適用した。
【0200】
PCR反応を調べるために、アガロースゲル電気泳動を行った。所望のバンドを該ゲルから切り出し、QIAGENのQIAquickゲル精製キットを使用して該バンドを精製した。pGEM-T Easy Vector (Promega, Madison, WI)内に、該製造業者の説明に従い、精製されたPCR断片を連結した。SV Miniprepキット (Promega, Madison, WI)を該製造業者の説明に従い使用して、該形質転換DNAプラスミドをミニプレップにより抽出した。CEQ 2000シークエンサー (Beckman, Fullerton, CA)を使用して、該インサートを含有するプラスミドDNAを配列決定した。5'隣接配列の約758nt(配列番号1のヌクレオチド1241-2009)を前記方法によりクローニングした。
【0201】
C.構造遺伝子の、より長い5'隣接配列(配列番号6;
図5)のクローニング
構造遺伝子D121-AA8の更なる5'隣接配列をクローニングするために、BD GenomeWalker Universal Kit (Clontech laboratories, Inc., PaloAlto, CA)を該製造業者のユーザーマニュアルに従い使用した。その製造業者のマニュアルBD GenomeWalker August, 2004を参照により本明細書に組み入れることとする。サンプルを0.5%アガロースゲル上で泳動させることにより、タバコゲノムDNAのサイズおよび純度を試験した。タバコ33ライブラリーゲノムウォーキング構築のために、合計4つの平滑末端反応(DRA I, STU I, ECOR V, PVU II)を準備した。消化されたDNAの精製の後、消化されたゲノムDNAをゲノムウォーカーアダプターに連結した。D121-AA8からの遺伝子特異的プライマー(CTCTATTGATACTAGCTGGTTTTGGAC; 配列番号19)およびアダプタープライマーAP1を使用することにより、それらの4つの消化DNAに一次PCR反応を適用した。該一次PCR産物をネスティッドPCR用の鋳型として直接使用した。該キットにより供給されたアダプターネスティッドプライマーおよび公知クローンD121-AA8(配列番号3)からのネスティッドプライマー(GGAGGGAGAGTATAACTTACGGATTC; 配列番号20)を該PCR反応において使用した。ゲル電気泳動を行うことにより、PCR産物を調べた。所望のバンドを該ゲルから切り出し、QIAGENのQIAquickゲル精製キットを使用して該バンドを精製した。pGEM-T Easy Vector (Promega, Madison, WI)内に、該製造業者の説明に従い、精製されたPCR断片を連結した。SV Miniprepキット (Promega, Madison, WI)を該製造業者の説明に従い使用して、該形質転換DNAプラスミドをミニプレップにより抽出した。CEQ 2000シークエンサー (Beckman, Fullerton, CA)を使用して、該インサートを含有するプラスミドDNAを配列決定した。配列番号1のヌクレオチド399-1240を含む5'隣接配列の更に約853ntを前記方法によりクローニングした。
【0202】
以下のプライマーGWR1A (5’- AGTAACCGATTGCTCACGTTATCCTC -3’) (配列番号21)およびGWR2A (5’- CTCTATTCAACCCCACACGTAACTG -3’) (配列番号22)を使用する以外は同じ方法で、第2ラウンドのゲノムウォーキングを行った。配列番号1のヌクレオチド1-398を含む隣接配列の更に約398ntをこの方法によりクローニングした。
【0203】
調節要素に関する検索は、「TATA」ボックス、「CAAT」ボックスおよび「GAGA」ボックスに加えて、いくつかのMYB様認識部位および器官特異性要素がタバコニコチンデメチラーゼプロモーター領域内に存在することを示した。標準的な方法を用いて特定された推定エリシター応答要素および窒素調節要素も該プロモーター領域内に存在する。
【0204】
D.構造遺伝子の3'隣接配列のクローニング
構造遺伝子D121-AA8の更なる3'隣接配列をクローニングするために、BD GenomeWalker Universal Kit (Clontech laboratories, Inc., PaloAlto, CA)を該製造業者のユーザーマニュアルに従い使用した。該クローニング手順は、遺伝子特異的プライマー以外は、この実施例の前記C節に記載されているのと同じである。第1プライマーはD121-AA8構造遺伝子の末端の近傍から設計した(5’- CTA AAC TCT GGT CTG ATC CTG ATA CTT -3’) (配列番号23)。ネスティッドプライマーは、D121-AA8の構造遺伝子のプライマー1の更に下流から設計した(CTA TAC GTA AGG TAA ATC CTG TGG AAC) (配列番号24)。ゲル電気泳動により、最終的なPCR産物を調べた。所望のバンドを該ゲルから切り出した。QIAGENのQIAquickゲル精製キットを使用して該PCR断片を精製した。pGEM-T Easy Vector (Promega, Madison, WI)内に、該製造業者の説明に従い、精製されたPCR断片を連結した。SV Miniprepキット (Promega, Madison, WI)を該製造業者の説明に従い使用して、該形質転換DNAプラスミドをミニプレップにより抽出した。CEQ 2000シークエンサー (Beckman, Fullerton, CA)を使用して、該インサートを含有するプラスミドDNAを配列決定した。更に3'隣接配列の約1617ヌクレオチド(配列番号1のヌクレオチド4731-6347)を前記方法によりクローニングした。3'UTR領域の核酸配列を
図6に示す。
【0205】
WO 03/078577、WO 2004/035745、PCT/US/2004/034218およびPCT/US/2004/034065ならびに本明細書中で言及されている全ての他の参考文献、特許、特許出願公開および特許出願を、これらの参考文献、特許、特許出願公開および特許出願のそれぞれが参照により本明細書中に個別に組み入れられている場合と同等に、参照により本明細書に組み入れることとする。
【0206】
本発明の前記の詳細な説明を考慮すれば、本発明の実施における多数の修飾および変更が当業者に見出されると予想される。したがって、そのような修飾および変更も特許請求の範囲の範囲内に含まれると意図される。