(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、発明者の検討の結果、VAD法と外付け法とを組み合わせてフッ素の添加を行い、光ファイバ母材を製造する場合、単純に石英多孔質体のかさ密度を低くしても(例えば非特許文献1にある1.0g/cm
3以下)、フッ素の添加を均一に行うことは難しいことがわかった。以下理由を解説する。
【0010】
VAD法の場合、鉛直方向にトラバース(相対移動)するターゲットに対してガラス微粒子を堆積させる。その際、バーナの火炎のゆらぎによって、特にコア部にはGeO
2の添加濃度むらが生じ、屈折率変動(一般に脈理と言われる)が発生しやすい。
【0011】
コア部を形成するためのバーナは、ターゲットに対し斜め下方からガラス微粒子を吹き付けて、ターゲットにガラス微粒子を堆積させる。そのため、
図6Bに示すように、VAD法で作製したコア部63には円弧状の脈理61が残存しやすい。
【0012】
一方、外付け法は回転する光ファイバ用コアロッドの周囲に、複数のバーナを用いて多層にガラス微粒子(スート微粒子)を堆積させて、石英多孔質体を製作する方法である。各バーナは、その製作時の寸法誤差や劣化の程度が違うなどのために、ガラス微粒子が堆積する面の最高温度、温度分布にばらつきが生じる。そのため、各バーナで堆積させたガラス微粒子の層(スート層)のかさ密度に差が生じることは避けられない。
【0013】
また、バーナ1本で堆積させた1層のスート層内でも、酸水素火炎での焼締まり方にばらつきが生じる。このため、スート1層内での内側(コア材側)と外側(表面側)ではかさ密度に差が生じることがある。その結果、外付けしたクラッド領域64ではかさ密度差に応じて、
図6Bに示すように、円周方向に層状の脈理62が発生する。このようにVAD法と外付け法とを組み合わせてフッ素添加を行う場合、異なる方向の脈理61,62が発生する。
【0014】
石英多孔質体に対しフッ素添加を行う場合、そのフッ素添加量は石英多孔質体の表面積、つまりかさ密度に依存する。そのため外付け法を用いてフッ素添加を行う場合、スートの各層間、各層内でかさ密度差が存在するため、外付け層にフッ素濃度のむらが発生してしまう。その結果、トレンチ部の大きさが母材の径方向や長手方向、ロット間で変動し、作製された光ファイバの曲げ損失が安定しなくなってしまう。
【0015】
さらに、フッ素の添加を行わない母材64に存在する脈理とフッ素の添加を行った母材65に存在する脈理とを比較すると、このフッ素濃度のむらの影響により、フッ素の添加を行った母材64での脈理62はフッ素の添加を行わなかった母材64のそれよりも顕著に現れやすい傾向がある(
図6A参照)。プリフォームアナライザなどを用いて脈理がある母材の屈折率分布を測定しようとした場合、レーザの回折光を精度良く検出しにくいため、正しい屈折率分布の測定が難しい。
【0016】
脈理の方向が一定であれば、回折光にフィルタをかけるなどで正確な屈折率分布を測定することは可能である。しかし、相互に異なる方向の脈理が複数存在する場合、回折光の処理が困難である。脈理が著しく発生している場合、つまり著しいフッ素濃度のむらが存在する母材では、回折光の処理がより困難となる。母材についての不正確な屈折率分布の測定結果に基づき光ファイバの特性推定を行うことは、製作された光ファイバのカットオフ波長や曲げ損失の特性などの光学特性(以下、光ファイバ特性ということがある)の変動につながり、歩留まり低下の要因となる。
【0017】
以上のように、VAD法と外付け法とを組み合わせてフッ素の添加を行う場合、石英多孔質体のかさ密度を低くするだけでは均一なフッ素の添加を行う上で不十分であった。
【0018】
このような問題に対応するため過去にいくつかの方法が検討されているが、それらは石英多孔質体にフッ素を均一に添加する方法としては十分とはいえない。
【0019】
特許文献2では、石英多孔質体に添加物(ここではGe)を加える場合、添加物の濃度分布が生じやすいとしている。結果として脈理が現れるため、脈理の存在により屈折率分布が正確に測定できず、光ファイバ特性を制御するのが難しいとしている。
【0020】
対策としては、焼結後の厚みに換算して1回のトラバースあたりのスートの厚みを20μm以下とすることを提案している。特許文献2ではスートのかさ密度が開示されていないが、例えばφ20mmの母材でかさ密度を0.5g/cm
3とした場合、焼結後の状態でのスートの20μmという厚みは、スート1層に換算すると約80μmと非常に薄い。このような薄いスートの作製においては、スート1層内にて、そのかさ密度差に起因する添加物の濃度差が生じても、脈理などが発生しにくい。
【0021】
しかし、1回のトラバースあたりのガラス微粒子の堆積量が少ない場合、ガラス微粒子の堆積効率、堆積速度が低下する。結果として、石英多孔質体の作製時間が長くなり、製造効率の悪化につながる。また、スート1層の厚みが薄すぎると、その上に重なるスート層を作製する際のバーナの火炎の熱によってその下のスート層が焼締められやすくなるため、複数層のスート層を堆積する間にそのかさ密度が上昇しやすい問題がある。
【0022】
そのため、均一なフッ素添加を行う目的で平均かさ密度を低くするためには、石英多孔質体の内側ほどかさ密度を低く抑えておく必要がある。しかし、このためには焼締めによるかさ密度の変化を予想して事前にガス流量を設定する必要がある。さらに、かさ密度を低くするほどスート割れが起こりやすくなる。
【0023】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、スート層の内部に均一且つ効率的にフッ素添加を行うことが可能な
光ファイバ母材の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
(1)本発明の一態様に係る光ファイバ母材の製造方法は、
光ファイバ用コアロッドをVAD法により作製する工程と、前記光ファイバ用コアロッドの周囲に複数のバーナを配置する工程と、前記複数のバーナによって前記光ファイバ用コアロッドの外周面上に複数のスート層を堆積させる堆積工程とを備える石英多孔質体の製造方法により
、前記光ファイバ用コアロッドの周囲に、光ファイバのトレンチ部となる石英多孔質体を製造する工程と、前記石英多孔質体を脱水及び焼結する工程と、を有する光ファイバ母材の製造方法であって、前記堆積工程では、前記複数のスート層それぞれを、前記複数のバーナの1によって形成して且つ、前記各スート層を、平均かさ密度をx(g/cm
3)、堆積厚さをy(mm)としたときに、0.2≦x≦0.5及び0.1≦y≦4.0x
2−3.8x+1.3を満たし、前記複数のスート層のかさ密度の最大値が0.6g/cm
3以下となるように堆積し、前記石英多孔質体を脱水及び焼結する工程では、前記石英多孔質体をフッ素系ガス中で脱水及び焼結し、
前記トレンチ部の比屈折率差が−0.18%以下となるように前記石英多孔質体にフッ素を添加することを特徴とする
。
【0025】
(2)上記光ファイバ母材の製造方法において、前記各スート層を、0.2≦x≦0.5及び0.1≦y≦0.4を満たすように堆積してもよい。
【0026】
(
3)上記光ファイバ母材の製造方法において、前記各スート層のかさ密度は、前記光ファイバ用コアロッドへの堆積の初期において高くし、外周部に向かってより低くなるように作製してもよい。
【発明の効果】
【0029】
上記の
光ファイバ母材の製造方法によれば、スート層の内部に均一且つ効率的にフッ素添加を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[光ファイバ]
図1は、光ファイバ17の断面図と、その屈折率分布の一実施形態を示す図である。
図1の光ファイバ17は、後述する光ファイバ母材の製造方法によって製造された光ファイバ母材を加熱して125μm程度の太さにまで細く引き延ばす(線引きする)ことによって作製される。光ファイバ母材は光ファイバ17と比率に関してほぼ同じ屈折率分布構造を持っている。光ファイバ母材を加熱して引き延ばすことで、光ファイバ母材の屈折率分布構造をほぼそのまま引き継いだ光ファイバ17が作製される。
【0032】
図1の光ファイバ17の中心には、半径a
1、最大屈折率n
1のコア1が設けられている。コア1の外周上には、外縁の半径a
2、最大屈折率n
2の第1クラッド層2が設けられている。この第1クラッド層2の外周上には、外縁の半径a
3、最大屈折率n
3の第2クラッド層3が設けられている。そして、この第2クラッド層3の外周上には、光ファイバ17の最外層をなす、外縁の半径a
4、最大屈折率n
4の第3クラッド層4が設けられている。
【0033】
本明細書において、最大屈折率とは、ある層の外縁の半径をa
n、その層の一つ内側の層の外縁の半径をa
n−1としたとき、a
n−1,a
n間での最も大きな屈折率(1つの層内で最も大きな屈折率)をさす。ここで、nは1以上の整数であり、a
0=0(μm)である。
図1に示したようなステップ状の屈折率分布では、a
n−1からa
nまでの間で屈折率が一定(1つの層内で屈折率が一定)であり、その屈折率が最大屈折率となる。しかしながら、層内で屈折率分布が存在する場合は、上記の方法で定義される最大屈折率を用いる。
【0034】
光ファイバ17にあっては、コア1の最大屈折率n
1は、第1クラッド層2の最大屈折率n
2、第2クラッド層3の最大屈折率n
3、及び第3クラッド層4の最大屈折率n
4のいずれよりも大きく設計される。一方、前記第2クラッド層3の最大屈折率n
3は、第1クラッド層2の最大屈折率n
2及び第3クラッド層4の最大屈折率n
4のいずれよりも小さく設計される。
【0035】
光ファイバの屈折率分布は、ゲルマニウムやフッ素等のドーパントを添加することにより形成される。光ファイバの製造に用いられているVAD法やCVD法あるいは外付け法といったプロセスにおいては、ドーパントの拡散などの影響により、屈折率分布において各層の境界が曖昧になることもある。
【0036】
図1に示す光ファイバ17においては、第1クラッド層2における屈折率が径方向にほぼ一定であり、光ファイバ17全体の屈折率分布はほぼ完全なステップ形状になっている。本発明に係る光ファイバの屈折率分布は、必ずしも完全なステップ状になっている必要はない。屈折率分布がステップ状になっていない場合は、以下の方法により各層の径が定義される。
【0037】
まず、コア1の半径a
1は、比屈折率差が、コア1内における比屈折率差の最大値Δ
1の1/10まで減少する位置からファイバ中心までの距離と定義する。また、第1クラッド層2の外縁の半径a
2、及び第2クラッド層3の外縁の半径a
3は、それぞれ比屈折率差の径分布Δ(r)の微分値であるdΔ(r)/dr(rは半径を表す)が極値を取る位置からファイバ中心までの距離と定義する。
【0038】
光ファイバ17の各層の比屈折率差Δ
i(単位:%)は第3クラッド層4の最大屈折率n
4を基準としており、下記数式(1)で表される。
【0040】
(式中、iは1〜3の整数であり、n
iは前記各層の最大屈折率である。)
【0041】
[光ファイバ母材の製造方法]
次に、
図2〜
図5Bを用いて、
図1の光ファイバ17を製造するための光ファイバ母材の製造方法を説明する。
図2は、光ファイバのコアとなるコア部を含む光ファイバ用コアロッドの周囲に、クラッド材料となるガラス微粒子を外付けする外付け装置の概略図である。また、
図3は、複数のバーナ10,11,12,13によってガラス微粒子の層(スート層)が1層ずつ層状に外付けされる工程を示す模式図である。
【0042】
図2において、光ファイバ用コアロッド6は、光ファイバ17のコア1となるコア部と、光ファイバ17の第1クラッド層2となる第1クラッド部とから構成されている。光ファイバ用コアロッド6はVAD法によって作製されている。VAD法では、光ファイバの原料となるガスを酸素及び水素とともにバーナに送り込み、回転している石英棒の下方から、酸水素火炎とともに原料ガスを石英棒に吹き付けてガラス微粒子を堆積させ、これを加熱して透明ガラス化することで、ロッド状のコア母材が作製される。
【0043】
光ファイバ用コアロッド6の長手方向の両端部は、支持部材7によって回転可能に支持される。光ファイバ用コアロッド6の周囲には複数のバーナ8が配置され、光ファイバ用コアロッド6と複数のバーナ8とが光ファイバ用コアロッド6の長手方向(回転軸と平行な方向)においてトラバース(相対移動)可能である。バーナ8には、ガラス原料となるガスが酸素及び水素とともに送り込まれ、バーナ火炎中で生成されたガラス微粒子が、光ファイバ用コアロッド6の外周面上に吹き付けられ、石英多孔質体5が作製される。なお、
図2では、光ファイバ用コアロッド6の両端部が支持部材7によって直接支持されているが、光ファイバ用コアロッド6の両端部には、必要に応じてダミーロッド(図示略)が火炎溶接され、このダミーロッドが支持部材7に回転可能に支持されるようにしても良い。
【0044】
光ファイバ用コアロッド6の外周面上には、1トラバースの間にバーナ1本毎に1層のガラス微粒子の層(スート層)が外付けされ、層状に堆積したガラス微粒子の層(スート層)が形成される。光ファイバ用コアロッド6に堆積されたガラス微粒子の厚み(石英多孔質体5の外径)は、レーザ光源9を用いた変位測定器によって測定される。この変位測定器では、レーザ光源9と石英多孔質体5との距離を図示略の変位センサーによって測定する。
図2の外付け装置では、バーナ1本あたりに外付けされるスート層の厚み及びかさ密度が全スート層において均一となるように、原料ガスの流量及び酸水素火炎の流量などの外付け条件を制御している。1回の外付け工程中に変位測定器で測定された1トラバースあたりの外付け量に関する情報は、その外付け工程において用いたバーナの外付け条件とともに、図示略の記憶装置に記憶される。この記憶装置に記憶されたバーナの外付け条件と外付け量に関する情報は、次回の外付け工程におけるバーナの外付け条件に反映される。
【0045】
光ファイバ用コアロッド6上に堆積されたガラス微粒子は、焼結炉中で脱水及び焼結される。そして、上述したガラス微粒子の堆積処理とガラス微粒子の焼結処理とを繰り返すことにより、光ファイバ用コアロッド6の外周面上に、光ファイバ17の第2クラッド層3となる第2クラッド部と、光ファイバ17の第3クラッド層4となる第3クラッド部とが順次形成される。このとき、第2クラッド部となる複数のスート層を焼結処理する場合には、第2クラッド部の屈折率が第1クラッド部及び第3クラッド部の屈折率よりも小さくなるように、焼結炉中にCF
4,SiF
4,SF
6などのフッ素系ガスを導入して、第2クラッド部にフッ素の添加を行う。以上により、
図1に示した光ファイバ17の屈折率分布構造と比率に関して同じ屈折率分布構造を有する光ファイバ母材が作製される。
【0046】
図3に示すように、本実施形態の外付け装置では、複数のバーナ10,11,12,13が光ファイバ用コアロッド6の長手方向に沿って概ね等間隔で配置されている。
図3では、4つのバーナ10,11,12,13が示されているが、バーナの数はこれに限定されない。バーナ10,11,12,13と光ファイバ用コアロッド6は、一方が固定されて他方が左若しくは右(光ファイバ用コアロッド6の長手方向に沿った一方向)に移動することにより、両者の相対位置が変化する。
【0047】
複数のバーナ10,11,12,13に送り込まれる原料ガスとしては、SiCl
4(四塩化珪素)が用いられる。酸素及び水素とともにバーナ10,11,12,13に送り込まれたSiCl
4は、バーナ10,11,12,13の火炎中でガラス微粒子となる。このガラス微粒子は、回転している光ファイバ用コアロッド6の外周面上に堆積する。そして、光ファイバ用コアロッド6を回転させながら複数のバーナ10,11,12,13を光ファイバ用コアロッド6の長手方向(回転軸方向)にトラバースさせることにより、光ファイバ用コアロッド6の外周面上に複数のガラス微粒子の層(スート層)14,15,16が堆積される。
【0048】
光ファイバ用コアロッド6の外周面上には、1トラバース毎に各バーナによって外付けされるガラス微粒子の層(スート層)14,15,16が1層ずつ積層される。スート層1層は1本のバーナを光ファイバ用コアロッド6の長手方向に沿って一方向にトラバースすることにより作製される。1本のバーナを光ファイバ用コアロッド6の長手方向に沿ってn回トラバースさせるとn層のスート層が作製される。したがって、
図3において、複数のバーナ10,11,12,13を複数回トラバースさせることにより、光ファイバ用コアロッドの外周面上に多数のスート層を有する石英多孔質体を作製することができる。
【0049】
外付け法により作製した石英多孔質体5にフッ素を均一かつ効率的に添加するためには、スート(ガラス微粒子)のかさ密度及び、外付け工程でのバーナ1本により堆積するスート層の厚さdを一定範囲に制御することが重要である。
【0050】
第一のポイントであるスートのかさ密度について述べる。外付け法で作製した領域のかさ密度は、光ファイバ用コアロッド6への堆積の初期において高くし、外周部に向かってより低くなるように作製することにより、ガラス化時の収縮に伴う歪み低減の効果が得られる。各種条件を検討した結果、かさ密度については、各スート層のかさ密度及び各スート層の平均かさ密度を所定の範囲にする必要があることがわかった。
【0051】
ここで、各スート層のかさ密度とは、1トラバースの間に各バーナで堆積させた1スート層のかさ密度と定義する。例えば、
図3のようにバーナ4本(石英多孔質体5の内層側から、バーナ10→バーナ11→バーナ12→バーナ13→バーナ10…、の順にガラス微粒子を堆積させる)で石英多孔質体5を作製する場合、バーナ10とバーナ11の外径、及びガラス微粒子の堆積重量を用いてバーナ11で作製した1層のスート層の厚みを算出する。あるいは簡便のためにバーナ2本毎にスート層の厚み及び堆積重量を算出し、それを2で除した厚さをスート層1層の厚さ及び重量としてもよい。
【0052】
例えば、上記と同様に4本のバーナでガラス微粒子を堆積させた場合、バーナ10,11によって2層のスート層を堆積した後の石英多孔質体の外径と、バーナ10,11,12,13によって4層のスート層を堆積した後の石英多孔質体の外径をそれぞれ測定する。そのデータから、バーナ12とバーナ13で堆積させた2層のスート層の厚みを求める。その2層のスート層の厚みを2で除した値を、バーナ12とバーナ13で作製したスート層のそれぞれの厚みとしてもよい。
【0053】
平均かさ密度とは、最終的な石英多孔質体の外径と出発コア材(光ファイバ用コアロッド。光ファイバ用コアロッドの外周面上に石英多孔質体を形成して焼結処理を行って母材を形成した場合には、直近の焼結処理によって形成された母材)の外径から、堆積させた全スート層の厚さを求める。求められたスート層の厚さ、堆積重量、及び母材長から求めた密度をかさ密度と定義する。
【0054】
本実施形態では、レーザ光源と石英多孔質体との距離を変位センサー(例えばキーエンス製 LK−2000)で測定し、石英多孔質体の外径を連続的に求めることにより、1スート層毎のかさ密度及び、全スート層の平均かさ密度を算出している。石英多孔質体(スート層)のかさ密度の調整は、原料ガスの流量、酸水素火炎の流量の調整、出発コア材の径の太径化で行うことができる。本実施形態では、水素ガスの流量を下げ、ガラス微粒子が堆積する際の表面温度を下げることでかさ密度の低減を行っている。
【0055】
均一なフッ素添加を行い、かつガラス化時に発生する剥離不良を低減する条件として、石英多孔質体の各スート層のかさ密度の最大値(一般的には外付けされた全スート層のうちの最も内層側のスート層になる)を0.6g/cm
3以下とし、平均かさ密度をスート層の厚さに応じて0.2g/cm
3以上、0.5g/cm
3以下の範囲から適宜設定することがよい。
【0056】
最大かさ密度が0.6g/cm
3より大きい場合、その層より内側のスート層に所望の量のフッ素添加を行うことができなくなり、脱水効果が低減しやすい。そのため、このような光ファイバ母材から作製した光ファイバにおいては、波長1383nmにおける損失(OH損失)が増大する問題がある。一方、各スート層のかさ密度の下限については、0.2g/cm
3より小さくなると、焼結ガラス化時の収縮歪が大きくなるためガラス層が剥離するなどの不良が発生しやすい。そのため、実際の運用としては、スート層のかさ密度を0.2〜0.6g/cm
3とするのが好ましい。
【0057】
平均かさ密度x(g/cm
3)については、0.5g/cm
3より大きくなるとフッ素の拡散が遅く、ヒータを通過させる石英多孔質体のトラバース速度が遅くなるなど生産効率が低下する。平均かさ密度の下限については特に制約はないが、0.2g/cm
3より小さくなると、石英多孔質体5が搬送時などに割れやすい、或いは、石英多孔質体5の外径が太くなり大型の焼結炉が必要になるなどの問題があるため、実際の運用としては、0.2〜0.5g/cm
3(0.2≦x≦0.5)とするのが好ましい。
【0058】
第二のポイントであるバーナ1本で作製するスート層1層の厚さy(mm)は、平均かさ密度x(g/cm
3)が0.2≦x≦0.5の範囲において、0.1≦y≦4.0x
2−3.8x+1.3の範囲であるのが望ましい。特に、平均かさ密度x(g/cm
3)が0.2≦x≦0.5の範囲において、スート層1層の厚さy(mm)が0.1≦y≦0.4の範囲である場合、効率よくスート層の堆積を行うことができる。
スート層1層の厚さが4.0x
2−3.8x+1.3(mm)より厚い場合、スート層1層内でのかさ密度の差が大きくなりやすく、フッ素の添加量にむらが発生してしまう。結果として屈折率分布測定器(プリフォームアナライザ)で脈理が観測され、正確な屈折率分布の測定ができずにファイバ特性を安定化することが難しくなる。
【0059】
一方、スート層1層の厚さを0.1mmより薄くするとガラス微粒子の堆積効率が悪く、コストアップにつながりやすい。
また、スート層1層の厚みが0.1mm以上であれば、その上に重なるスート層を作製する際のバーナ火炎の熱での焼締めが緩和されるため、複数のスート層を堆積する間にかさ密度が上昇することを避けることができる。
【0060】
ここで、脈理の程度を定量的に表すために、光ファイバ母材の屈折率分布における凹凸度を下記数式(2)で定義する。
【0062】
なお、移動平均に用いる範囲は、測定ステップ、データ数、屈折率分布の形状によって適宜選択すればよい。本実施形態では、ある測定位置をXとしたときに、母材径でX±0.1mmの範囲で、比屈折率差Δの移動平均をとっている。ここで、上記数式(2)中の「XでのΔ」とは、位置Xにおけるコア部に対する比屈折率差Δを指している。また、屈折率分布の測定時の測定間隔は、本実施形態において20μmとしている。
【0063】
図4Aに凹凸度の算出に用いる範囲を示す。また
図5A,5Bに実際の光ファイバにおける屈折率分布の一例を示す。
【0064】
図4A,4Bは本実施形態に係る光ファイバ母材25と、その屈折率分布を示す図である。
図4A,4Bの光ファイバ母材25は、
図1に示した光ファイバ17の屈折率分布と比率に関してほぼ同じ屈折率分布構造を有する。すなわち、光ファイバ母材25の中心には、光ファイバ17のコア1となる、半径a
21、最大屈折率n
21のコア部21が設けられている。コア部21の外周上には、光ファイバ17の第1クラッド層2となる、外縁の半径a
22、最大屈折率n
22の第1クラッド部22が設けられている。また、第1クラッド部22の外周上には、光ファイバ17の第2クラッド層3となる、外縁の半径a
23、最大屈折率n
23の第2クラッド部23が設けられている。そして、第2クラッド部23の外周上には、光ファイバ17の第3クラッド層4となる、光ファイバ母材25の最外層をなす、外縁の半径a
24、最大屈折率n
24の第3クラッド部24が設けられている。
【0065】
光ファイバ母材25のコア部21の最大屈折率n
21の大きさは、光ファイバ17のコア1の最大屈折率n
1の大きさとほぼ同じである。光ファイバ母材25の第1クラッド部22の最大屈折率n
22の大きさは、光ファイバ17の第1クラッド層2の最大屈折率n
2の大きさとほぼ同じである。光ファイバ母材25の第2クラッド部23の最大屈折率n
23の大きさは、光ファイバ17の第2クラッド層3の最大屈折率n
3の大きさとほぼ同じである。光ファイバ母材25の第3クラッド部24の最大屈折率n
24の大きさは、光ファイバ17の第3クラッド層4の最大屈折率n
4の大きさとほぼ同じである。また、コア部21と各クラッド部22,23,24の大きさの比率(a
21:a
22:a
23:a
24)は、光ファイバ17のコア1と各クラッド層2,3,4の大きさの比率(a
1:a
2:a
3:a
4)と同じである。なお、光ファイバ母材25の構成要素(コア部21、第1クラッド部22、第2クラッド部23、第3クラッド部24)と光ファイバ17の構成要素(コア1、第1クラッド層2、第2クラッド層3、第3クラッド層4)の最大屈折率が「ほぼ同じ」とは、光ファイバ母材25を紡糸する際の紡糸張力などの影響を無視した場合に、両者が同じであることを意味する。
【0066】
コア部21の最大屈折率n
21は、第1クラッド部22の最大屈折率n
22、第2クラッド部23の最大屈折率n
23、及び第3クラッド部24の最大屈折率n
24のいずれよりも大きい。一方、第2クラッド部23の最大屈折率n
23は、第1クラッド部22の最大屈折率n
22及び第3クラッド部24の最大屈折率n
24のいずれよりも小さい。
【0067】
コア部21、第1クラッド部22、第2クラッド部23、第3クラッド部24の各径の定義の方法は、光ファイバ17のコア1、第1クラッド層2、第2クラッド層3、第3クラッド層4の各径の定義の方法と同じである。すなわち、コア部21の半径a
21は、比屈折率差が、コア部21内における比屈折率差の最大値Δ
21の1/10まで減少する位置から母材中心(ファイバ中心)までの距離と定義する。また、第1クラッド部22の外縁の半径a
22、及び第2クラッド部23の外縁の半径a
23は、それぞれ比屈折率差の径分布Δ(r)の微分値であるdΔ(r)/dr(rは半径を表す。)が極値を取る位置から母材中心(ファイバ中心)までの距離として定義する。また、コア部21、第1クラッド部22、第2クラッド部23、第3クラッド部24の各比屈折率差n
21,n
22,n
23,n
24は、基準となる屈折率が第3クラッド部24の最大屈折率n
24となる点を除いて、式(1)を用いて説明した光ファイバ17のコア1、第1クラッド層2、第2クラッド層3、及び第3クラッド層4の比屈折率差の算出方法と同じである。
【0068】
図5Bに示すように、光ファイバ母材のフッ素添加領域である第2クラッド部(トレンチ部)に大きな脈理が生じている場合(従来の製造方法で作製された光ファイバの場合)、屈折率分布のグラフではキザギザの線が現れる。その場合の凹凸度の変動は±2%以上である。一方、
図5Aのように第2クラッド部の脈理が小さい場合(本発明の製造方法で作製された光ファイバの場合)、屈折率分布のグラフではスムーズな曲線が現れ、凹凸度の変動も±0.5%と小さい。
【0069】
本実施形態に関し、第2クラッド部23(第1クラッド部22及び第3クラッド部24の近傍は、屈折率差が大きく変化するため除く)における凹凸度の変動が±1%以下となる脈理であれば、プリフォームアナライザで正確な屈折率分布が測定できることがわかった。その結果、光ファイバ母材の段階での光ファイバの特性推定が良好にでき、安定した光ファイバを製造することが容易となる。
【0070】
ここで、プリフォームアナライザにより正確な屈折率分布が測定されているか否かの判断は、別途行ったラマン分光測定によるフッ素濃度の分析との比較により行った。具体的には、ラマン分光測定によりフッ素濃度を算出し、それを比屈折率差に変換してフッ素濃度による屈折率分布を求めた。この結果とプリフォームアナライザに得られた屈折率分布とを比較することで、脈理による測定不良が起こっているかどうかの判断を行った。
【0071】
スート1層の厚さを薄くするためには、バーナのトラバース速度や光ファイバ用コアロッド6の主軸回転数でも調整可能である。本発明者の検討した限りでは、バーナトラバース速度を速くすることがより効果的であることを確認している。
【0072】
以上のように、平均かさ密度x(g/cm
3)が0.2≦x≦0.5の範囲において、バーナ1本で作製するスート1層の厚さy(mm)を、0.1≦y≦4.0x
2−3.8x+1.3の範囲とすることにより、脈理の発生を抑制できる。特に、平均かさ密度x(g/cm
3)が0.2≦x≦0.5の範囲において、スート層1層の厚さy(mm)が0.1≦y≦0.4の範囲である場合、効率よくスート層の堆積を行うことができる。また、上記の条件を満たす場合には、スート層を重ねて堆積した場合でもかさ密度の収縮を考慮しなくてよい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明の実施形態を詳しく説明する。
【0074】
まず実施例1として、VAD法で作製したφ42×1200mmの光ファイバ用コアロッド(平均コア比屈折率差Δ
1:0.35%)に対し、マルチノズル型の石英バーナを8本用いてガラス微粒子の外付けを実施した。ガス流量はSiCl
4流量:2〜5SLM、酸素流量:18〜35SLM、水素流量:25〜45SLM、シール用のArガス:1SLMとした。ターゲットとなる光ファイバ用コアロッドの主軸回転速度は25rpmとし、各バーナのトラバース速度は220mm/minとした。
【0075】
外付け中の石英多孔質体の表面温度をサーモトレーサ(NEC三栄製 TH3104MR)を用いて測定したところ、最内層の堆積時で1050℃、最外層の外付け時で880℃であった。
外付け中はかさ密度の測定を以下の方法で連続的に行った。レーザを用いて、レーザ光源と石英多孔質体の表面との距離を測定し、そこから堆積したスート層の厚みを算出した。本実施例ではバーナ2本分での堆積層(2層分に相当)作製毎に石英多孔質体の厚みを求め、求められた厚みを2で除した値を、バーナ1本で作製された各スート層の厚みとした。スート層の厚み、堆積重量、及び堆積距離から1層毎のかさ密度を算出した。
【0076】
外付け終了後の石英多孔質体の外径はφ90mm、平均かさ密度は0.43g/cm
3、各スート層のうちの最大のかさ密度は0.55g/cm
3であった。また、算出したスート1層の厚さ(平均堆積厚さ)は0.2mmであった。
【0077】
この石英多孔質母材を石英マッフル中にセットし、HeとSiF
4の混合ガス中で焼結させφ50mmの光ファイバ母材とした。この際、石英マッフル内のSiF
4濃度は1.5%とし、焼結が終了するまでSiF
4ガスを使用した。
【0078】
焼結後の光ファイバ母材をφ35mmに延伸後、プリフォームアナライザを用いて屈折率分布を測定したところ、光ファイバ母材の径方向、長手方向ともに比屈折率差Δ
3は−0.24〜−0.26%の範囲で安定していた。また屈折率データを用いて第2クラッド部(トレンチ部分)の凹凸度を算出したところ、±0.5%の変動となり良好であった。その後、第3クラッド部を外付け法により作製し、最終的な光ファイバ母材とした。
【0079】
次に、実施例1と同様の方法により、実施例2〜18及び比較例1〜9に係る光ファイバ母材を作製した。各実施例及び比較例の製造条件を表1〜表4にまとめる。実施例2〜18及び比較例1〜9に係る光ファイバ母材の作製条件は、表1〜表4に示したもの以外は実施例1と同じである。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
実施例1,2及び比較例1より、ほぼ同等の平均かさ密度(0.42g/cm
3)であっても、スート層1層の厚みが0.45mmと厚い場合には(比較例1)、第2クラッド部の屈折率分布の凹凸度が±2.5%と大きくなった。比較例1では脈理の強い影響により光ファイバ母材の屈折率分布測定が正確に行えなかった。
図5Bに示すように、母材の比屈折率は光ファイバ母材の外径方向で−0.23〜−0.32%と大きく変動する測定結果となった。その結果、光ファイバ母材での特性推定が困難になった。
【0086】
比較例2と実施例3とではスート層1層の厚さが0.21〜0.22mmと薄いため、脈理の影響は見られず、いずれも屈折率測定が可能であった。実施例3では第2クラッド部の平均かさ密度が0.49g/cm
3であり、光ファイバ母材の径方向、長手方向ともに第2クラッド部の比屈折率差の変動は小さく、良好な特性安定性を示した。
【0087】
一方、比較例2では、第2クラッド部の外付け時の平均かさ密度が0.55g/cm
3と大きいため、光ファイバ母材の中心付近までフッ素を拡散させることができなかった。そのため、第2クラッド部の比屈折率差は第2クラッド部の内周側で−0.18%、外周側で−0.25%となり、径方向でのフッ素添加むらが発生した。
【0088】
比較例3では、主軸回転速度を上げることで、比較例1と比較して、平均かさ密度はほぼ同程度であったが、スート1層の厚さを0.43mmと薄くすることができた。しかし第2クラッド部の凹凸度が±1.5%であり、屈折率分布の測定が正確に行えなかった。これより、±1.5%の凹凸度では、特性安定化には不十分であることがわかった。
【0089】
比較例1と比較例4との結果より、スート層1層の厚みを変更せず、平均かさ密度を低下しただけでは、第2クラッド部の凹凸度はほとんど改善しないことがわかった。すなわち、単純に平均かさ密度を下げるだけでは、脈理は改善せず、光ファイバ母材の特性安定化には寄与できないことがわかった。
【0090】
実施例4の結果より、スート層1層の厚みが0.39mmであれば第2クラッド部の脈理の影響は小さく(凹凸度±1.2%)、正確な屈折率分布を測定することができた。また平均かさ密度が0.5g/cm
3と低いため、光ファイバ母材の径方向、長手方向ともに第2クラッド部の比屈折率差の変動は小さく、良好な特性安定性を示した。
【0091】
実施例5の結果より、平均かさ密度を0.2g/cm
3と低くしても、スート割れなく作製可能なことを確認した。またスート層1層の厚さを0.1mmまで薄くすることで、脈理がほぼ認められないレベル(凹凸度で±0.2%)となった。その結果、第2クラッド部の比屈折率差は第2クラッド部の内周側で−0.24%、外周側で−0.25%となり、フッ素添加も均一にすることができた。
【0092】
また、比較例5の結果より、スート層1層あたりの厚さが0.12mmと薄い場合、脈理はほとんど見られなかった。しかし平均かさ密度が0.56g/cm
3と大きいため、フッ素が石英多孔質体の中心側まで拡散せず、第2クラッド部の比屈折率差の変動が大きい結果となった。このため、第2クラッド部のサイズが設計通りにならずに、曲げ損失の特性が悪化する結果となった。
【0093】
実施例6〜実施例10では、コア部の比屈折率差Δ
1、外付け法で作製した第2クラッド部の比屈折率差Δ
3を変えているが、実施例1と同様の凹凸度、比屈折率差Δ
3の変動を示し、いずれも良好な結果であった。このことからコア部の比屈折率差Δ
1と第2クラッド部の比屈折率差Δ
3とによらず、スート層1層の厚さと、平均かさ密度を制御することで、フッ素が均一に添加された光ファイバ母材を歩留まりよく作製できることがわかった。
【0094】
比較例6は、外付け開始時の石英多孔質体の表面温度が高く、最大かさ密度が大きくなった以外は実施例1と同様の条件である。しかし、屈折率分布の測定の結果、第2クラッド部の内側の領域においてフッ素が添加されていないことがわかった。かさ密度が大きくなることで、フッ素系ガスが石英多孔質体の内部に拡散しにくくなり、反応が進まなかったことが原因と考えられる。その結果、第2クラッド部の比屈折率差Δ
3の変動量が大きくなり、特性変動が発生した。
【0095】
実施例11では、実施例2とバーナトラバース速度が165mm/minと同じであるが、外付け時の石英多孔質体の表面温度が低いため、平均かさ密度が低下した。平均かさ密度が低いことで第2クラッド部の比屈折率差Δ
3の変動は小さくなった。また、第2クラッド部の屈折率の凹凸度も±0.3%と低く、屈折率測定も問題なくでき、良好であった。
【0096】
実施例12では、実施例6〜10よりもバーナトラバース速度が300mm/minと速く、スート層1層の厚さが薄くなった。そのため、第2クラッド部の屈折率の凹凸度も±0.4%と低くなり、良好な結果となった。
【0097】
実施例13では、実施例6〜10とバーナトラバース速度が同じであるが、外付け時の石英多孔質体の表面温度が低い。そのため、平均かさ密度が低下した。この結果、第2クラッド部の比屈折率差Δ
3の変動が小さくなり、また第2クラッド部の屈折率の凹凸度も低く、良好であった。
【0098】
実施例14では、実施例6〜10よりもバーナトラバース速度が180mm/minと遅く、スート層1層の厚さが厚くなった。しかし、平均かさ密度が0.35g/cm
3と低かった。そのため、第2クラッド部の比屈折率差Δ
3の変動、及び第2クラッド部の屈折率の凹凸度は同程度となり、良好であった。
【0099】
実施例15では、比較例1,3と同じバーナトラバース速度であるが、スート層1層の厚さが0.4mm以上となった。しかし、外付け時の温度を低くしたため、平均かさ密度が0.38g/cm
3と小さくなった。その結果、第2クラッド部の屈折率の凹凸度も±1.0%に抑えられた。そのため屈折率測定も問題なくでき、良好であった。このことから、スート層1層の厚さが0.4mm以上であっても、平均かさ密度が0.4g/cm
3以下であればよいことがわかった。
【0100】
実施例16〜18では、バーナトラバース速度を遅くすることで、スートの厚さを0.49〜0.70mmと厚めとした。また、外付け時の温度を低く調整することで、平均かさ密度も0.20〜0.30g/cm
3に低くできた。その結果、第2クラッド部の比屈折率差Δ
3の変動も小さく、第2クラッド部の屈折率の凹凸度も小さく抑えることができ、良好な結果が得られた。
【0101】
実施例1〜10及び比較例1〜6の結果を表6にまとめる。また、全ての実施例及び比較例の結果をまとめると
図7のようになる。表6及び
図7によれば、かさ密度の平均値(石英多孔質体に含まれる全てのスート層のかさ密度の平均である平均かさ密度)x(g/cm
3)を、0.2≦x≦0.5の範囲として且つ、複数のスート層の平均堆積厚さy(mm)を0.1≦y≦4.0x
2−3.8x+1.3の範囲(
図7において破線で囲まれた範囲)とすることが良好な結果を得る上で有効であることがわかる。特に、平均かさ密度x(g/cm
3)が0.2≦x≦0.5の範囲において、スート層1層の厚さy(mm)を0.1≦y≦0.4の範囲とすることにより、効率よくスート層の堆積を行うことができる。また、この範囲であっても、各スート層におけるかさ密度の最大値が0.6g/cm
3よりも大きい場合には第2クラッド部の比屈折率差の変動が大きくなるため(比較例6)、かさ密度の最大値は0.6g/cm
3以下であることが必要である。
【0102】
【表6】
【0103】
以上のように、本実施形態の石英多孔質体、光ファイバ母材、石英多孔質体の製造方法、及び、光ファイバ母材の製造方法によれば、スート層の内部に均一且つ効率的にフッ素添加を行うことができる。そのため、このような光ファイバ母材を線引きして光ファイバを作製すれば、曲げによる損失が少なく、一般的な伝送用光ファイバとの接続性に優れた
図1に示したような光ファイバを低コストで提供することが可能となる。