(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記天然ゴム100質量部に対して5質量部以上100質量部以下となる割合のシリカ粒子が無機フィラーとして前記架橋ゴムに含有されており、該架橋ゴムには、前記天然ゴム100質量部に対して3質量部以上15質量部以下となる割合でフェニレンビスマレイミドがさらに含有されている請求項1記載の伝動ベルト。
シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、モンモリロナイト粒子、炭酸マグネシウム粒子、及び、タルク粒子の内の1種以上が前記無機フィラーとして前記架橋ゴムに含有されている請求項6記載の伝動ベルト。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について、
図1に示すVベルトを例に説明する。
本実施形態のVベルトは、駆動側と従動側とに設けられた円板状のプーリーに掛け渡されて動力伝達(伝動)を行わせ得るように無端状に形成されており、
図1は、本実施形態のVベルトをその長さ方向(周方向)に直交する平面で切断した際の断面の様子を示す概略図である。
本実施形態のVベルトは、前記プーリーの回転中心に向けて狭幅となるようにプーリーの外周に沿って設けられた断面V字状の溝(V溝)に嵌め込まれた状態で用いられ、該V溝の内壁面との間の摩擦力を利用して摩擦伝動を行わせ得るように形成されている。
従って、
図1に示す通り内周側ほど狭幅となる形状を有し、その断面形状が逆等脚台形となるように形成されている。
このVベルトは、前記プーリー間に掛け渡して当該Vベルトに加わる張力によってV溝の奥に向かって進入させた際に、該V溝の内壁面によって圧縮される圧縮ゴム層1をその内周側に有しており、該圧縮ゴム層1に外周側で接する接着ゴム層2をさらに有している。
【0012】
また、本実施形態のVベルトは、前記接着ゴム層2に心線3が埋設されており、該心線3によって前記張力に抗する強度が付与されている。
より具体的には、
図1に示すようにベルト断面において、複数本の心線3が、ベルト幅方向に略等間隔に並んだ状態となるように埋設されている。
なお、前記心線3は断面において複数本埋設されているように見えるだけで、実際は、一本の心線がVベルトをスパイラル状に周回するよう埋設されている。
【0013】
さらに、本実施形態のVベルトは、その表面がゴム引き帆布4によって形成されており、背面部(外周側)、両側面部、前面部(内周側)の全てが前記ゴム引き帆布4によって包囲された構造を有している。
すなわち、前記ゴム引き帆布4は、前記圧縮ゴム層1と前記接着ゴム層2とを内側に巻き込むようにしてVベルトの外表面を形成している。
従って、本実施形態に係るVベルトは、前記V溝に進入させた際に、前記圧縮ゴム層1を主としてベルト幅方向に圧縮させ、その反発力を該圧縮ゴム層1の側面に接着されているゴム引き帆布4の外表面とV溝の壁面との摩擦力に転換させて摩擦伝動を行い得るように形成されている。
【0014】
なお、該ゴム引き帆布4は、帆布の表裏両面側から未架橋のゴム組成物が刷り込まれてコーティングされ、前記圧縮ゴム層1と前記接着ゴム層2とを覆う状態とされた後に前記ゴム組成物が架橋されて前記圧縮ゴム層1と前記接着ゴム層2とに接着されている。
【0015】
このVベルトは、その全質量に占める石油外資源の材料割合が80%以上であることが、環境に優しい伝動ベルトとする上で重要である。
【0016】
以下に、このVベルトの形成材料について説明する。
(ゴム組成物)
前記圧縮ゴム層1、接着ゴム層2を形成している架橋ゴム、及び、ゴム引き帆布4において帆布に担持されている架橋ゴムは、ベースゴム、無機フィラー、オイル、及び、各種ゴム薬品を含んだゴム組成物で形成されている。
ただし、前記ベースゴムには天然ゴムを用いることが重要である。
すなわち、従来の伝動ベルトにおいては、その形成材料におけるゴム成分としてエチレン・α−オレフィンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴムなどの合成ゴムが用いられているが、通常、これらの合成ゴムは原油のナフサ分解によって得た物質を出発物質としているためにこれらの合成ゴムをベースゴムとして利用するとVベルトの全質量に占める石油外資源の材料割合を80%以上とすることが困難になることから天然ゴムを前記ベースゴムとすることが重要である。
ただし、少量(例えば、前記天然ゴム100質量部に対して、合成ゴムの総使用量15質量部以下)であれば、これら合成ゴムを前記天然ゴムに加えて用いることも可能である。
【0017】
前記無機フィラーとしては、シリカ、炭酸カルシウム、モンモリロナイト、炭酸マグネシウムなどの粒子が採用されうる。
また、前記無機フィラーとしては、タルク、クレー、カオリナイト、アルミナ、セリサイト、マイカ等の雲母鉱物の粒子が採用されうる。
さらに、前記無機フィラーとしては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタンなどの粒子が採用されうる。
これらは、ゴムの補強成分として利用されるが、その補強効果に優れている点において、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、モンモリロナイト粒子、炭酸マグネシウム粒子、及び、タルク粒子の内のいずれかが採用されることが好ましく、特にシリカ粒子が採用されることが好ましい。
また、ホタテ貝殻や蟹の甲羅を粉砕して得られる粒子を無機フィラーとして採用することも可能である。
なお、通常、これらの無機フィラーは、石油外資源によって得られるものである。
圧縮ゴム層1、接着ゴム層2、及び、ゴム引き帆布4の架橋ゴムを構成するゴム組成物における当該無機フィラーの配合量は、特に限定されるわけではないが、配合量が少なすぎる場合には、補強効果が十分に発揮されないおそれを有し、過剰に配合されると架橋ゴムに割れや欠けを発生させやすくなる。
このような点において、前記ゴム組成物における無機フィラーの配合量は、通常、前記天然ゴム100質量部に対して、30質量部以上200質量部以下とされる。
なお、この無機フィラーとしては、通常、平均粒子径100μm以下程度の大きさの粒子が好適に用いられ得る。
【0018】
なお、ゴムの補強成分としては、一般的にはカーボンブラックが使用されるが、例えば、ファーネスブラックなどと呼ばれるカーボンブラックは、石油を不完全燃焼させた煤によって得られるものであり、このカーボンブラックを利用するとVベルトの全質量に占める石油外資源の材料割合を80%以上とすることが困難になる。
ただし、少量であれば、カーボンブラックを前記ゴム組成物に含有させてもよい。
しかし、その場合でも、カーボンブラックの含有量は、前記天然ゴム100質量部に対して10質量部以下程度とすることが好ましく、5質量部以下程度とすることが特に好ましい。
なお、大豆、米ぬかなどの植物を炭化させたカーボンブラックは、石油外資源のものとして利用が可能なものである。
【0019】
また、ゴムの補強には、短繊維なども使用されるが、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維などの合成繊維は、石油資源に由来する材料であるために、短繊維を配合するのであれば、例えば、木綿、木粉などの繊維やレーヨン、アセテートといった再生繊維などの石油外資源からなる繊維を利用することが好ましい。
【0020】
さらには、ハイスチレン樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などの有機補強剤を前記ゴム組成物に含有させてもよい。
ただし、これらも石油資源に由来するものであるから、配合量は少量に留めておくことが好ましい。
【0021】
前記オイルとしては、通常、ゴムに使用されるプロセスオイルを使用することができ、アロマオイル、ナフテンオイル、パラフィンオイルなどが用いられ得る。
ただし、これらは、石油資源由来のものであるため、用いるにしてもVベルトの全質量に占める石油外資源の材料割合を80%以上に維持させうる範囲で使用することが重要である。
このような石油資源由来のオイルに代えて石油外資源からなるオイルを使用することもでき、例えば、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、サフラワー油、桐油などの植物油脂が使用可能である。
【0022】
前記ゴム薬品としては、一般に有機化合物については、その多くが石油資源由来の材料であり、そのような材料としては、各種老化防止剤などが挙げられる。
また、有機過酸化物架橋を実施させるような場合であれば、通常、当該有機過酸化物も石油資源由来の材料に含まれる。
なお、ステアリン酸や酸化亜鉛などについては、通常、石油外資源由来の材料として扱われている。
【0023】
なお、本実施形態に係るゴム組成物は、硫黄架橋(加硫)によって架橋ゴムを形成させることが好ましく、その場合には、加硫促進剤を併用することができる。
これらは、通常、石油資源由来の材料であり、例えば、硫黄、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、メタクリル酸亜鉛、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、ポリ−p−ジニトロソベンゼン、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、フェニルメタンマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド,1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサンp−キノンジオキシム、4,4’−ジチオジモルホリンなどの加硫剤や、アルデヒド−アンモニア系、アルデヒド−アミン系、チオウレア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系 、ジチオカルバミン酸塩系、キサントゲン酸塩系などの加硫促進剤を使用することができる。
特に架橋ゴムに対して耐熱性を付与してその耐久性向上を図りうる点において、チウラム系の加硫促進剤を採用することが好ましく、中でもテトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドを採用することが好ましい。
【0024】
また、ゴム引き帆布4の外表面を構成する架橋ゴムは、耐粘着摩耗性を付与しうる点において、前記天然ゴム100質量部に対し、30質量部以上200質量部以下となる割合で石油外資源からなる無機フィラーを含有させることが好ましく、この無機フィラーとしては、前記天然ゴム100質量部に対して5質量部以上、好ましくは20質量部以上の割合でシリカ粒子を含有させることが好ましい。
なお、前記シリカ粒子の配合量は、天然ゴム100質量部に対し、100質量部以下とすることが好ましい。
また、前記ゴム引き帆布4の外表面を構成する架橋ゴムには、前記シリカ粒子に加えて、炭酸カルシウム粒子、及び、モンモリロナイト粒子の内の少なくとも一方を前記無機フィラーとして含有させることが好ましい。
【0025】
また、ゴム引き帆布4、圧縮ゴム層1、接着ゴム層2を形成する架橋ゴムに耐熱性を付与して耐久性向上を図りうる点において、当該架橋ゴムには、老化防止剤(石油資源由来の材料)を含有させることが好ましく、なかでもアミン系老化防止剤を含有させることが好ましい。
アミン系老化防止剤としては、例えば、N−フェニル−2−ナフチルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミン等のN−ナフチルアミン系、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエン・スルフォニルアミド)−ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のp−フェニレンジアミン系、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン等のメチルキノリン系のものが挙げられる。
中でも架橋ゴムに優れた耐熱老化性を付与しうる点において、p−フェニレンジアミン系老化防止剤とメチルキノリン系老化防止剤とを併用することが特に好ましい。
【0026】
なお、前記シリカ粒子などからなる無機フィラーの分散性を向上してベルト強度を向上させ得る点においては、25℃のトルエン中に72時間浸漬させた後の体積変化率(ΔV
1)に対する25℃のクロロホルム中に72時間浸漬させた後の体積変化率(ΔV
2)の割合(ΔV
2/ΔV
1)が1.24以上となるようにゴム組成物の配合を調整することが好ましい。
すなわち、無機フィラーの凝集塊を架橋ゴム中に存在させると、該凝集塊を起点としたクラックを発生させるおそれを有することから、前記割合で表されるゴムの極性をある程度以上に向上させることが好ましいものである。
なお、通常、前記割合(ΔV
2/ΔV
1)の上限値は、1.5程度である。
【0027】
この割合(ΔV
2/ΔV
1)を調整する具体的な方法としては、例えば、加硫剤の配合量を調整する方法などが挙げられる。
なお、この体積変化率(ΔV
1、ΔV
2)については、後述する方法によって測定することができる。
【0028】
また、このような極性のゴム組成物によって架橋ゴムを形成させる場合においては、前記天然ゴム100質量部に対して5質量部以上100質量部以下となる割合のシリカ粒子を前記無機フィラーとして含有させ、しかも、フェニレンビスマレイミド、又は、フェニレンビスマレイミドと硫黄とによる架橋系でゴムの架橋を実施させることが好ましい。
なお、前記フェニレンビスマレイミドの含有量は、通常、前記天然ゴム100質量部に対して3質量部以上15質量部以下となる割合とすることが好ましい。
さらに、このような場合においては、前記シリカ粒子に加えて、炭酸カルシウム粒子、モンモリロナイト粒子の少なくとも一方を前記無機フィラーとして架橋ゴムに含有させることが好ましい。
【0029】
また、特に前記圧縮ゴム層1は、プーリーでの圧縮や屈曲などといった弾性変形にともなう発熱を生じやすく、該発熱は、摩擦熱とともに動力の伝達率を低下させる要因となることから、所定のバウンドラバー量となるゴム組成物を架橋させた架橋ゴムで構成されることが好ましい。
具体的には、バウンドラバー量が25質量%以上65質量%以下(好ましくは55質量%以下)のゴム組成物からなる架橋ゴムで、しかも、100℃における貯蔵弾性率が14MPa以上30MPa以下の架橋ゴムで圧縮ゴム層1を形成させることが好ましい。
なお、このバウンドラバー量は、後述する方法によって測定することができる。
また、この圧縮ゴム層1を形成させる架橋ゴムには、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、モンモリロナイト粒子、炭酸マグネシウム粒子、及び、タルク粒子の1種以上の無機粒子からなる無機フィラーを含有させることが好ましい。
【0030】
上記のようなバウンドラバー量となるゴム組成物で上記のような貯蔵弾性率を有する架橋ゴムを形成させるには、例えば、用いる無機フィラーの種類、量、粒径等を調整する方法や、当該無機フィラーに対して表面処理を行う方法や、前記ゴム組成物にシランカップリング剤などを配合する方法などが挙げられる。
【0031】
なお、前記接着ゴム層2については、特に限定されるものではなく、上記のようなゴム引き帆布4や圧縮ゴム層1と同様に天然ゴムをベースゴムとして採用した石油外資源を主成分とするゴム組成物で形成させることができる。
ただし、接着ゴム層2については、埋設させる心線3との接着性に優れたゴム組成物で形成させることが好ましい。
【0032】
(心線)
前記心線3としては、一般的なVベルトに利用される心線を用いることができる。
ただし、ポリアミド樹脂繊維やポリイミド樹脂繊維といった合成樹脂繊維からなる撚糸を用いると、その分だけ石油外資源比率を低下させることになるため、天然繊維からなる撚糸を用いることが好ましい。
この心線を構成させる繊維としては、植物に由来する繊維(植物繊維)が好ましく用いられ得る。
この植物繊維としては、綿、麻、ジュートなどの植物から直接採取される繊維、レーヨン、アセテートなどの植物由来のセルロースを化学的に処理して得られる繊維(セルロース繊維)、植物でん粉に由来するポリ乳酸繊維などが挙げられるが、特に、セルロース繊維製の心線は抗張力も高く好適である。
【0033】
(帆布)
なお、前記ゴム引き帆布4を構成する帆布についても、前記心線と同様に合成樹脂繊維製のものよりは天然繊維製のものの方が好適であり、木綿製のものなどのような植物繊維製のものが好適である。
【0034】
なお、本実施形態においては、Vベルトを例示しているが、Vリブドベルト、平ベルト、丸ベルト、歯付ベルトなどの他の伝動ベルトにおいてもベースゴムを天然ゴムとすることでダイオキシンなどの環境負荷物質が排出されてしまうことを抑制させることができる点、ならびに、全質量の80%以上を石油外資源に由来する材料で構成させることによって、二酸化炭素排出量削減に寄与させ得る点においては上記例示のVベルトと同じであり、これらの伝動ベルトも本発明の意図する範囲のものである。
【実施例】
【0035】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(評価実験1)
下記表1、2に示す内容の配合物をバンバリーミキサーで混練し、混練物が150℃の温度に達した後、1分間混練を続けて得られたものをシート出しして未架橋シートを作製し、これを用いて、表3に示すような構成の周長約1mのVベルトを作製した。
なお、表3中に「ノッチ」なる項目が設けられているが、「ノッチあり」とは、ベルトの内周側から心線の手前にまで及ぶベルト側面視における形状が円弧状となる切り込みを複数設けて内周側が波型となるように成形したことを意味するものである。
また、表中の「ΔV
2/ΔV
1」とは、JIS K 6258に基づくゴムの膨潤試験を実施した際の、25℃のトルエン中に72時間浸漬させた後の体積変化率(ΔV
1)に対する25℃のクロロホルム中に72時間浸漬させた後の体積変化率(ΔV
2)の割合を示すものである。
なお、体積変化率は、クロロホルム、あるいは、トルエンに72時間浸漬させた架橋ゴムの質量から浸漬前の架橋ゴムの質量を減じ、それを、クロロホルム、あるいは、トルエンの比重で除してそれぞれの体積増加量を算出するとともに、架橋ゴムの質量と密度とによって浸漬前の架橋ゴムの体積を求め、前記体積増加量をこの浸漬前の架橋ゴムの体積で除して算出した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
この上記のようにベルト3〜13は、その構成材料の内、質量で80%以上が石油外資源由来のもので占められており、ベルト1、2に比べて環境に優しい製品であるといえる。
これらのベルトを
図2(装置概略図)に示すような形で評価した。
この
図2において符号21は、モーター、22、23はトルク検出器、24、25はプーリー、26はVベルト、27は負荷機を表している。
この装置としては、負荷機27の質量が150kgで、プーリー24,25の外径が80mmのものを採用した。
(耐久時間)
そして負荷機荷重を12psに設定し、環境温度90℃、回転数4800rpmの条件で走行試験を実施し、一定時間ごとに装置を止めてベルト表面における割れの有無を目視にて確認して、割れの確認された時間を耐久時間として記録した。
また、ベルトが横転または分解した場合には、その時間を耐久時間として記録した。
(粘着摩耗性)
ベルト走行試験後にプーリーにゴムが全く付着していない場合を「◎」、殆ど付着していない場合を「○」、僅かに付着している場合を「△」、多量に付着している場合を「×」として粘着摩耗性を評価した。
(ゴム落ち)
さらに、走行試験後の装置周辺に見られるゴム粉の飛散状況を確認し、ゴム粉が全く見られない場合を「◎」、少量のゴム粉の飛散か見られる場合を「○」、ゴム粉の飛散が狭い範囲で飛散している場合を「△」、広範囲に及んで飛散している場合を「×」としてゴム落ちを評価した。
結果を、表3に併せて示す。
【0040】
この表からもわかるように、25℃のトルエン中に72時間浸漬させた後の体積変化率(ΔV
1)に対する25℃のクロロホルム中に72時間浸漬させた後の体積変化率(ΔV
2)の割合(ΔV
2/ΔV
1)が1.24以上となる架橋ゴムで圧縮ゴム層や接着ゴム層を形成させたベルト5〜13は、耐久時間が長く、ゴム落ちの評価などにおいて良好なる結果が得られていることがわかる。
【0041】
(評価実験2)
下記表4、5に示す配合でゴム組成物の混練を行い、表6に示す組み合わせで前記評価実験1と同様にVベルトを作製し、耐久時間の測定を実施した。
ただし、ここでは負荷機の質量が100kgであり、100mmの外径を有するプーリーを用いた点については、評価実験1と異なる。
また、ここでは、耐久時間測定後においてベルトの表面温度を測定した。
結果を、表6に示す。
【0042】
また、表4、5中の「E’」は、貯蔵弾性率を意味し、該貯蔵弾性率は、100℃の温度条件で測定されたものであり、具体的には、粘弾性測定装置を用いて、周波数10Hz、歪み1.0%の引張りモードによって測定したものである。
また、バウンドラバー量は、次のようにして求めた。
まず、架橋前のゴム組成物を約1mm角にカットしたカット試料を約0.2g精秤するとともに、このカット試料を収容させるための100メッシュの金網籠を精秤した。
次いで、前記金網籠にカット試料を収容し200mlのトルエンが収容されたガラス瓶に入れて、前記トルエン中に金網籠を浸漬させた。
これを、25℃の温度環境下、72時間静置した後で前記金網籠を取り出して乾燥機で24時間乾燥させ、質量を測定した。
得られた質量から予め精秤しておいた金網籠の質量を減じ、試験後の溶け残った試料質量を求めた。
この試験後の試料質量をA、初期カット試料の質量をB、トルエンに不溶な成分の合計部数をC、全配合部数をD、ゴムの配合部数をEとしたときに、バウンドラバー量(BR)を下記式に基づき算出した。
BR(質量%)=〔A−(B×C/D)〕/(B×E/D)×100(%)
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
上記のようにベルト17〜24は、その構成材料の内、質量で80%以上が石油外資源由来のもので占められており、ベルト14〜16に比べて環境に優しい製品であるといえる。
また、上記の表6にも示されているように、圧縮ゴム層を、そのバウンドラバー量が25質量%以上65質量%以下のゴム組成物からなる架橋ゴムで形成させ、該架橋ゴムの100℃における貯蔵弾性率が14MPa以上30MPa以下となる場合(配合C−4〜C−9)には、耐久時間を測定した後のベルト表面温度が、試験環境温度である90℃に近い温度であり、発熱が殆ど生じておらず動力の伝達ロスが抑制されていることがわかる。
【0047】
(評価実験3)
下記表7、8に示す配合でゴム組成物の混練を行い、表9に示す組み合わせで前記評価実験1と同様にVベルトを作製し、耐久時間、粘着摩耗、ゴム落ちの評価を実施した。
ただし、ここでは負荷機27の質量が100kgである点、100mmの外径を有するプーリーを用いた点については、評価実験1と異なる。
結果を、表9に示す。
【0048】
【表7】
【0049】
【表8】
【0050】
【表9】
【0051】
上記のようにベルト27〜35は、その構成材料の内、質量で80%以上が石油外資源由来のもので占められており、ベルト25、26に比べて環境に優しい製品であるといえる。
また、上記の表9に示されているように、プーリーと接する表面を構成する帆布用ゴムを、天然ゴム100質量部に対して20質量部以上となる割合でシリカ粒子を含有させた配合F−3〜F−8で形成している場合には、シリカ粒子を含んでいない配合F−2を採用した場合に比べて「ゴム落ち」が改善されていることがわかる。
さらに、老化防止剤をパラフェニレンジアミン系老化防止剤のみとした場合(配合E−3)と、老化防止剤をパラフェニレンジアミン系老化防止剤とメチルキノリン系老化防止剤との併用とした場合(配合E−4)とを比較すると後者の方が耐久時間に優れていることがわかる。
【0052】
以上のことからも、本発明によれば、環境に優しい伝動ベルトを得ることができ、しかも、適度な配合調整をすることで、強度、耐摩耗性、動力伝達効率に優れた伝動ベルトが得られることも上記の結果から理解することができる。