特許第5695078号(P5695078)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5695078
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】微生物数測定装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
   C12M1/34 D
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-544096(P2012-544096)
(86)(22)【出願日】2011年11月9日
(86)【国際出願番号】JP2011006250
(87)【国際公開番号】WO2012066747
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2013年12月9日
(31)【優先権主張番号】特願2010-256561(P2010-256561)
(32)【優先日】2010年11月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】パナソニックヘルスケアホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】武下 敏章
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−66748(JP,A)
【文献】 特開2010−223657(JP,A)
【文献】 特開2010−220507(JP,A)
【文献】 特開2010−187626(JP,A)
【文献】 特開2009−207431(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/037804(WO,A1)
【文献】 特開2002−330752(JP,A)
【文献】 米国特許第6002789(US,A)
【文献】 米国特許第3971703(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口部を有する容器を、前記開口部を上方にして保持する容器保持部と、
前記容器保持部で保持された前記容器内に収納される液体を、上下方向の回転軸の周りに回転させる回転駆動部と、
前記容器保持部で保持された前記容器の上方から、前記開口部を介して、前記容器内の中心軸よりも容器内面に近接する部分で、前記容器内面とは所定間隔離れた位置に測定チップを挿入する電極挿入部と、
前記電極挿入部によって前記容器内に挿入された前記測定チップの測定電極により、微生物の測定を行う測定部とを備え、
前記電極挿入部は、前記測定チップを、前記測定電極を前記容器内面に対向させた状態で保持する微生物数測定装置。
【請求項2】
前記回転駆動部は、前記容器保持部で保持された前記容器を、前記上下方向の回転軸の周りに回転させる請求項1に記載の微生物数測定装置。
【請求項3】
前記測定チップは、長方形状の板状であり、その下端に前記測定電極が設けられ、水平断面において、前記測定チップの左右端とそれぞれに対向する前記容器内面との距離を、前記測定チップの左右端間の中心部分と、前記中心部分に対向する前記容器内面との距離よりも小さくした請求項1に記載の微生物数測定装置。
【請求項4】
上面に開口部を有する容器を、前記開口部を上方にして保持する容器保持部と、前記容器保持部で保持された前記容器内に収納される液体を、上下方向の回転軸の周りに回転させる回転駆動部と、
前記容器保持部で保持された前記容器の上方から、前記開口部を介して、前記容器内の中心軸よりも容器内面に近接する部分で、前記容器内面とは所定間隔離れた位置に測定チップを挿入する電極挿入部と、
前記電極挿入部によって前記容器内に挿入された前記測定チップの測定電極により、微生物の測定を行う測定部とを備え、
前記電極挿入部は、前記測定チップを、前記測定電極を前記容器内面に対向させた状態で保持し、
前記回転駆動部は、前記容器保持部で保持された前記容器を、前記上下方向の回転軸の周りに回転させ、
前記測定チップは、長方形状の板状であり、その下端に前記測定電極が設けられ、水平断面において、前記測定チップの左右端とそれぞれに対向する前記容器内面との距離を、前記測定チップの左右端間の中心部分と、前記中心部分に対向する前記容器内面との距離よりも小さくした微生物数測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物数測定装置に関し、特に、口腔内等の微生物数を測定する微生物数測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の微生物数測定装置を用いた微生物数の測定方法について説明する。
【0003】
まず、使用者は、綿棒等の微生物採取具によって、口腔内から微生物を採取する。次に、使用者は、微生物採取具を、容器の上面開口部から容器内の液中に浸漬する。その後、微生物数測定装置は、容器内の液体を攪拌体で攪拌し、その状態で容器内に設けた測定電極により微生物数を測定する(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
このような従来の微生物数測定装置においては、容器内で微生物の溶出および測定ができるので、装置自体の大きさを極めて小さなものとすることができる。
【0005】
しかしながら、測定を行うために用いる容器は、その内壁面と測定電極とを一体化する必要がある。また、測定電極から容器外への引き出し線については、液漏れしないよう水密対策を講じる必要があり、生産コストが高価なものとなる。
【0006】
したがって、従来の微生物数測定装置を用いて微生物数の測定を行った場合には、測定コストが高いものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−220507号公報
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、測定コストの低減化を図るとともに、測定精度を高めることのできる微生物数測定装置を提供するものである。
【0009】
本発明は、微生物数測定装置であって、上面に開口部を有する容器を、開口部を上方にして保持する容器保持部と、容器保持部で保持された容器内に収納される液体を、上下方向の回転軸の周りに回転させる回転駆動部とを備えている。また、容器保持部で保持された容器の上方から、開口部を介して、容器内の中心軸よりも容器内面に近接する部分で、容器内面とは所定間隔離れた位置に測定チップを挿入する電極挿入部と、電極挿入部によって容器内に挿入された測定チップの測定電極により、微生物の測定を行う測定部とを備えている。また、電極挿入部は、測定チップを、測定電極を容器内面に対向させた状態で保持する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置の斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置の動作時の斜視図である。
図3図3は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置の動作時の斜視図である。
図4図4は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置の動作時の断面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置の容器保持部付近の平面図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置における容器の斜視図である。
図7A図7Aは、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置において使用する微生物採取具の構成を示す側面図である。
図7B図7Bは、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置において使用する微生物採取具の構成を示す断面図である。
図7C図7Cは、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置において使用する微生物採取具の構成を示す断面図である。
図8A図8Aは、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置における容器の断面図である。
図8B図8Bは、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置における容器の平面図である。
図9図9は、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置における容器の上方から見た斜視図である。
図10図10は、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置における容器の下方から見た斜視図である。
図11図11は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置の前面カバーが閉じられた状態を示す容器保持部周辺の部分斜視図である。
図12図12は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置の前面カバーが開いた状態での、容器保持部周辺の部分斜視図である。
図13図13は、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置において、容器を装着した状態を示す斜視図である。
図14図14は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置において、微生物採取具を容器内からつまみだした状態を示す断面図である。
図15図15は、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置において用いる測定チップの正面図である。
図16図16は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置の動作時における、前面カバーを閉じる状態の断面図である。
図17図17は、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置の動作時における、前面カバーを閉じた状態の断面図である。
図18A図18Aは、本発明の実施の形態における微生物数測定装置の前面カバーが閉じた状態での要部断面図である。
図18B図18Bは、本発明の実施の形態における微生物数測定装置の測定チップと操作体とが係合する部分の正面図である。
図18C図18Cは、本発明の実施の形態における微生物数測定装置の測定チップと操作体とが係合する部分の側面図である。
図19A図19Aは、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置において、微生物数の測定後に、前面カバーが、スプリングバネの復帰力によって上昇しはじめた直後の状態を示す要部断面図である。
図19B図19Bは、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置において、微生物数の測定後に、前面カバーが、スプリングバネの復帰力によって上昇しはじめた直後の状態の、測定チップと操作体とが係合する部分の正面図である。
図20A図20Aは、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置において、図19Aおよび図19Bに示した状態から、さらに前面カバーが上昇した状態を示した要部斜視図である。
図20B図20Bは、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置において、図19Aおよび図19Bに示した状態から、さらに前面カバーが上昇した状態を示した要部断面図である。
図21図21は、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置において、図20Aおよび図20Bに示した状態から、さらに前面カバーが上昇した状態を示した要部断面図である。
図22A図22Aは、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置において、測定チップのつまみ出し作業時に、誤って測定チップを落下させてしまった状態を示す要部断面図である。
図22B図22Bは、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置において、測定チップのつまみ出し作業時に、誤って測定チップを落下させてしまった状態を示す要部平面図である。
図23図23は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置の制御ブロック図である。
図24図24は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置の作用について説明するための要部上面図である。
図25図25は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置の作用について説明するための要部上面図である。
図26図26は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置の作用について説明するための要部断面図である。
図27図27は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置の作用について説明するための要部断面図である。
図28図28は、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置において、容器内の旋回流により、純水内の微生物がその遠心力を受けて、容器の内面に付勢された状態を模式的に示した要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置100の斜視図である。図2は、同微生物数測定装置100の動作時の斜視図である。図3は、同微生物数測定装置100の動作時の斜視図である。図4は、同微生物数測定装置100の動作時の断面図である。図5は、同微生物数測定装置100の容器保持部3付近の平面図である。
【0013】
微生物数測定装置100は、箱状の本体ケース1を備えている。本体ケース1には、図1図3に示すように、前面カバー2が開閉自在に設けられている。前面カバー2の開閉構造については後で詳しく説明する。
【0014】
前面カバー2が開放されるときには、まず、図1から図2に示したように、前面カバー2が上方に持ち上がり、次に、図2に示した状態から図3に示したように、前面カバー2が上方へ回動する。
【0015】
図3に示すように、本体ケース1内の、前面カバー2が開放することによって表出する部分には、容器保持部3が設けられている。容器保持部3は、図3および図4に示したように、上面が開口した有底筒状となっている。容器保持部3の底面上方には、図5に示すように、180度の間隔で対向し、容器に対向する方向に突出する駆動突起4が設けられている。なお、容器保持部3は、図4に示すように、上面に開口部を有する有底筒状の容器5の外周面、およびその底部を保持する。
【0016】
図6は、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置100における容器5の斜視図である。図7A図7Cは、それぞれ同微生物数測定装置100において使用する微生物採取具13の構成を示す図である。なお、図7Aは側面図であり、図7Bおよび図7Cは断面図である。図8Aは、同微生物数測定装置100における容器5の断面図である。図8Bは、同微生物数測定装置100における容器5の平面図である。図9は、同微生物数測定装置100における容器5の上方から見た斜視図である。図10は、同微生物数測定装置100における容器5の下方から見た斜視図である。
【0017】
図6図8A図8Bに示したように、容器5内部の底面上には、筒状の保持体6が形成され、保持体6の内部側面には、上下方向に形成された溶出突起7が120度の間隔で3本形成されている。また、保持体6間には、内部から外部に貫通した溶出溝8が120度の間隔で3本形成され、保持体6間の底部には、溶出突起9が120度の間隔で3個形成されている。
【0018】
なお、容器5内には、微生物を溶出させるための液体として、純水10が収納されており、また、その上面開口部には、搬送時に純水10がこぼれないように、蓋11が装着されている(図9参照)。
【0019】
さらに、図8Aおよび図10に示したように、容器5の底面下部には、容器保持部3の駆動突起4と係合する突起12が180度の間隔で対向配置されている。
【0020】
容器5の保持体6は、図7A〜図7Cに示した、棒状の微生物採取具13の下端に設けた採取部14を上方より挿入するためのものであって、この状態で純水10への微生物の溶出が行われる。つまり、使用者は、微生物採取具13の採取部14を口腔内に挿入して、採取部14で採取した微生物を純水10に溶出させる。
【0021】
以下、微生物の純水10への溶出について説明を行う。
【0022】
まず、使用者は、図1に示した、本体ケース1の前面下部に設けた操作ボタン15を押す。これにより、図2に示すように、前面カバー2のロックが外れ、前面カバー2が若干上方に持ち上がる。
【0023】
図11は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置100の前面カバー2が閉じられた状態を示す容器保持部3周辺の部分斜視図である。図12は、同微生物数測定装置100の前面カバー2が開いた状態での、容器保持部3周辺の部分斜視図である。
【0024】
前面カバー2を上方に持ち上げるために、前面カバー2の内部両側方には、図11に示すような、スプリングバネ16aが装着されている。上述したように、前面カバー2のロックが外れれば、伸びきったスプリングバネ16aが、図11に示した状態から図12に示したような元の状態に復帰する。このときの復帰力により、前面カバー2が上方に持ち上げられる。なお、図11および図12は、前面カバー2の持ち上げ動作等が理解され易いように、前面カバー2等を省略して記載している。
【0025】
このように、前面カバー2が上方に持ち上がった状態(図2の状態)で、次に、使用者は、前面カバー2の前面下端に設けられた把手17を持って、図3に示すように、前面カバー2を持ち上げて開放して、本体ケース1から容器保持部3を表出させる。
【0026】
図13は、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置100において、容器5を装着した状態を示す斜視図である。
【0027】
図9に示したように、容器5の上面開口部には、蓋11が装着されている。よって、使用者は、蓋11を容器5の上面開口部から取り外した状態で、図4および図13に示したように、容器保持部3の上面開口部から容器5の下部を挿入する。これにより、容器5の下部、および外周部が容器保持部3によって保持される。
【0028】
容器保持部3によって保持された容器5内には、図8Aに示すように、純水10が収納されている。使用者は、次に、純水10に、図7A〜図7Cで示した微生物採取具13の採取部14を挿入することになる。使用者は、その前に、図7Aおよび図7Bに示した状態(未使用状態)の微生物採取具13の採取部14を口腔内に挿入して、採取部14で口腔内の微生物を採取しておく。
【0029】
使用者は、この微生物採取具13の採取部14を、図4に示すように、保持体6の上方から挿入する。このとき、図4および図13に示すように、前面カバー2は、容器5の上面開口部の上方空間よりも後方に回動移動させられている。これにより、微生物採取具13の採取部14を保持体6に挿入する作業は、極めて簡単に行うことができる。
【0030】
容器5の底面下部には、図8Aおよび図10で示すように、突起12が設けられている。また、容器5を保持する容器保持部3の底面上には、図5に示すように駆動突起4が設けられている。
【0031】
したがって、駆動突起4と突起12が係合した状態で、モータ16(図4)で容器保持部3を回転させれば、容器5も回転する。
【0032】
なお、モータ16を回転させる時には、図3に示したスイッチ18aを押す。使用者が、スイッチ18aを押す時は、図4図13に示した微生物採取具13の上方を、例えば右手でつまみながら、左手でスイッチ18aを押す。
【0033】
この例では、微生物採取具13は、右手でつままれているので、回転せずに一定状態を保持することになる。一方、容器5は、上述したように、容器保持部3を介して、モータ16で、あらかじめ設定したタイマー時間(例えば10秒)の間、回転する。
【0034】
図8Aおよび図8Bに示すように、容器5の保持体6は全周が3分割され、しかもその分割部には溶出溝8が存在し、また、保持体6の内周面には溶出突起7が設けられている。これにより、微生物採取具13の採取部14は、主に溶出突起7によって扱かれた状態(細長いものを溶出突起7で押さえつけながら、その溶出突起7を動かす、すなわち、回転しながら外方から圧力が加えられた状態)となる。これにより、極めて効果的に、採取部14で採取した微生物が保持体6内の純水10へと溶出し、きわめて迅速に、溶出溝8を介して容器5内の純水10へと微生物の溶出が広く進むことになる。
【0035】
なお、この微生物の溶出時には、図3に示した表示ランプ18bが点滅する。また、前述したタイマー時間が終了すると、表示ランプ18bの点滅、および、モータ16の回転が終了する。
【0036】
この溶出動作が終了したときには、微生物採取具13の採取部14は、図7Cに示したように、下部および外周部が内方へと圧縮された状態となる。この状態では、保持体6による保持力はほとんど働かず、よって、使用者は、微生物採取具13を上方へと簡単につまみ出すことができる。
【0037】
図14は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置100において、微生物採取具13を容器5内からつまみだした状態を示す断面図である。また、図15は、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置100において用いる測定チップ20の正面図である。
【0038】
使用者は、図14に示したように、前面カバー2の内面に設けられた測定チップ保持部19に、図15に示した測定チップ20を装着する。
【0039】
図15に示すように、測定チップ20は、下端部分に円弧形状を有する長方形状の板状である。測定チップ20は、その上端に、測定チップ保持部19と接続する接続電極21が設けられ、また、下端には、測定電極22が設けられている。
【0040】
使用者は、測定チップ20の中ほどをつまんで、図14に示すように、接続電極21を測定チップ保持部19に装着する。これにより、測定チップ20と測定チップ保持部19との、電気的および機械的な接続が行われる。
【0041】
本実施の形態の微生物数測定装置100においては、前面カバー2および測定チップ保持部19によって電極挿入部が構成されている。この電極挿入部により、測定チップ20は、後述するごとく、容器5内へと挿入されることになる。
【0042】
図14に示したように、前面カバー2を持ち上げて開放した状態では、電極挿入部は容器5の上方に存在し、測定チップ保持部19の測定チップ挿入口が、水平方向よりも上方を向いた状態となっている。
【0043】
これにより、使用者は、測定チップ保持部19の測定チップ挿入口を目視して確認しながら、測定チップ20の接続電極21を、測定チップ保持部19に簡単に装着することができる。
【0044】
図16は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置100の動作時における、前面カバーを閉じる状態の断面図である。また、図17は、同微生物数測定装置100の動作時における、前面カバー2を閉じた状態の断面図である。
【0045】
使用者は、図14の状態に引き続いて、把手17を持って、前面カバー2を、図16に示したように、前方かつ下方に回動させ、本体ケース1の前面を覆うような状態にする。こうすると、測定チップ20は、容器5の上面開口部内に挿入された状態となる。この状態で、把手17をさらに下げれば、図17に示したように、前面カバー2は、図1の状態まで下げられた状態でロックがかかる。このとき、測定チップ20の測定電極22は、容器5の純水10内に浸漬された状態となる。
【0046】
使用者は、前面カバー2および測定チップ保持部19を含む電極挿入部によって、測定チップ20の測定電極22が容器5内の純水10に浸漬された状態で、測定開始スイッチ36(図1)を押す。そうすると、測定電極22に、例えば3MHzの電圧が印加されて、容器5内に溶出した微生物が測定電極22部分に集められる。また、これと同時に、測定電極22に、例えば800kHzの電圧を印加することにより、微生物数の測定が行われる。
【0047】
微生物を集めること、および、微生物数の測定については、すでに先行文献等でも知られていることであり、これ以上の説明は省略する。本実施の形態においては、微生物数の測定時には、モータ16により容器保持部3および容器5を回転させることにより、容器5内に広く拡散した微生物が測定電極22に接近する機会を多くしている。
【0048】
図17は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置100の、微生物数を測定している状態を示す断面図である。
【0049】
図17に示したように、測定チップ20によって微生物数の測定を行っている状態においては、測定チップ20の中程に設けた貫通孔23(図15)内に、測定チップ離脱体を構成する棒状の操作体24を挿入する。
【0050】
図16に示したように、操作体24は、測定チップ20が容器5内に完全に下降するまでの間は、後方に後退した状態となっている。しかしながら、図17に示したように、操作体24は、測定チップ20が容器5内に完全に下降する手前の状態から、前面カバー2の前面方向に突出移動する。
【0051】
図18Aは、本発明の実施の形態における微生物数測定装置100の前面カバー2が閉じた状態での要部断面図であり、図18Bは、その測定チップ20と操作体24とが係合する部分の正面図であり、図18Cは、その部分の側面図である。
【0052】
測定チップ20に設けられた貫通孔23は、図15および図18Bに示すように、上下方向に長い孔である。このため、測定チップ20が完全に下降する手前からでも、操作体24を突出移動させて、貫通孔23内に通すことができる。
【0053】
また、図18Cに示したように、操作体24の先端下面には鈎状の係合部25が設けられており、後述する測定チップ20の離脱時には、係合部25に測定チップ20の貫通孔23の下端側を係合させることができる。
【0054】
本実施の形態においては、図17に示した状態で、容器5内の微生物数の測定を行う。測定後に、図14に示したように、使用者が、測定チップ20を取り出すために前面カバー2を大きく開けると、測定チップ20が前面カバー2とともに容器5外に大きく持ち上げられてしまう。このとき、すでに測定チップ20は容器5内で測定を行った後の状態である。
【0055】
このように、測定した後の測定チップ20が前面カバー2とともに大きく上方に持ち上げられると、測定時に付着した微生物付きの純水10が、前面カバー2前方や下方に不用意に飛び散ったり、垂れ落ちたりする可能性がある。そこで、本実施の形態においては、上述のように、測定チップ離脱体を構成する操作体24を設けたものである。
【0056】
この点をさらに具体的に説明する。測定チップ20を用いて、微生物数の測定を行うとき、つまり、測定チップ20の測定電極22が、図17に示すように純水10中に浸漬している状態である。このとき、測定チップ20の貫通孔23内には、操作体24が突出移動した状態となっている。
【0057】
このように、操作体24を、図16の状態から図17の状態へ突出移動させるとともに、図17の状態から図16の状態へ後退移動させるのが、図11および図12に示した機構である。
【0058】
操作体24は、筒状のガイド管26内に摺動自在に設けられており、ガイド管26は本体ケース1に固定されている。そして、図12図16に示したように、前面カバー2が開いた状態では、ガイド管26内において、操作体24はスプリング27(図16)によって、前面カバー2とは反対側(図16の右側)に常時付勢された状態となっている。
【0059】
図16の状態から図17の状態へと、前面カバー2がさらに下方に押し下げられ、測定チップ20の測定電極22が純水10中に浸漬させられるときについて説明する。このとき、前面カバー2の下降動作に連動して、カム板28が、図12の状態から図11の状態へと下降する。これにより、操作体24を測定チップ20側へと突出移動させることができる。
【0060】
つまり、カム板28は、下方よりも上方が前面カバー2側(測定チップ20側)に突出した構成となっているので、このカム板28の下降にともなって、その上部で、操作体24の操作ピン29を前面カバー2側(測定チップ20側)に押すこととなる。この結果、操作体24は、図18A図18Cに示したように、測定チップ20の貫通孔23内に突入移動することになる。
【0061】
このように操作体24が前面カバー2側(測定チップ20側)に突出移動した際には、スプリング27は、図17および図18Aに示したように、圧縮された状態となっている。
【0062】
図19Aは、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置100において、微生物数の測定後に、前面カバー2が、スプリングバネ16aの復帰力によって上昇しはじめた直後の状態を示す要部断面図であり、図19Bは、その測定チップ20と操作体24とが係合する部分の正面図である。
【0063】
このとき、カム板28の上端部分には、突出した平面28a(図19B)が存在するので、前面カバー2が上昇しはじめた直後の状態では、操作体24は後退せずに、定位置を維持した状態である(図19A)。
【0064】
しかしながら、測定チップ20は、上端部の接続電極21を測定チップ保持部19に保持された状態となっている。測定チップ20は、前面カバー2のわずかの上昇にともなって、図19Aに示したように、わずかながらに上昇する。この結果、操作体24の鈎状の係合部25が、図19Bに示すように、測定チップ20の貫通孔23の下端部に係合することとなる。
【0065】
図20Aは、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置100において、図19Aおよび図19Bに示した状態から、さらに前面カバー2が上昇した状態を示した要部斜視図であり、図20Bは、その要部断面図である。
【0066】
図20Aおよび図20Bに示したように、前面カバー2がさらに上昇することで、操作体24の操作ピン29は、カム板28の平面28aを離れて、カム板28の傾斜部へと移動する。
【0067】
この結果、操作体24は、スプリング27の復帰力によって後方へと後退することとなる。これにより、可撓性を有する測定チップ20の貫通孔23より下方は、後方側へと移動させられ、やがて、図20Bに示すように、容器5の内壁面へと押しつけられた状態となる。
【0068】
なお、操作体24の先端には、上述したように、鈎状の係合部25が設けられている。よって、図20Bに示すように、測定チップ20の貫通孔23よりも下方を、後方へ安定して引っ張ることができる。
【0069】
一方、測定チップ20の貫通孔23よりも上方は、測定チップ保持部19に保持されているので、下方よりも前方に傾斜した状態となる。
【0070】
図21は、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置100において、図20Aおよび図20Bに示した状態から、さらに前面カバー2が上昇した状態を示した要部断面図である。
【0071】
図21に示した状態まで前面カバー2が上昇すると、測定チップ20の接続電極21は、測定チップ保持部19から離脱する。この状態において、使用者は、前面カバー2を、把手17によって、図14に示した位置まで上方に開放し、その後、容器5から測定チップ20をつまみ出す。
【0072】
このように、本実施の形態においては、前面カバー2を開放しても、その開放動作に連動して測定チップ20が容器5外に持ち上げられないように構成している。
【0073】
このため、前面カバー2の開放動作によって、測定時に付着した微生物付きの純水10が、前面カバー2前方または下方に不用意に飛び散ったり、垂れ落ちたりすることがなく、衛生面において好ましい。
【0074】
本実施の形態において、図21のように、操作体24によって保持された状態の測定チップ20をつまみ出すためには、測定チップ20の上端部の接続電極21部分をつまんで、わずかながらに下方の容器5内方向に押す。これにより、操作体24の係合部25と貫通孔23との係合が外れるので、使用者は、測定チップ20を簡単に容器5外へ摘み出すことができる。
【0075】
さらに、測定チップ20の摘み出しを行うための上端の接続電極21部分は、容器5内の純水10に浸漬されていない部分であるので、ここをつまんでも、衛生面における課題は発生しない。
【0076】
図22Aは、本発明の実施の形態に係る微生物数測定装置100において、測定チップ20のつまみ出し作業時に、誤って測定チップ20を落下させてしまった状態を示す要部断面図であり、図22Bは、その要部平面図である。
【0077】
図22Aおよび図22Bに示したように、落下した測定チップ20は容器5内で保持される。これにより、測定チップ20を不用意に床等に落下させることがなく、この点でも衛生面に対する課題が発生しない。
【0078】
さらに、本実施の形態においては、測定チップ20の長さを、容器5の深さよりも長くしている。これにより、図22Aおよび図22Bに示したように、測定チップ20を容器5内に落下させてしまっても、測定チップ20の上端部をつまめば、使用者は、容器5内の純水10に触れることがない。これにより、測定チップ20を簡単につまみ出して、廃棄することができる。
【0079】
図23は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置100の制御ブロック図である。
【0080】
微生物数測定装置100は、測定電極22、モータ16、電源部30、測定部32、演算部33、制御部31、表示部34および操作部35を備えている。
【0081】
電源部30は、電極用電源部30bおよびモータ用電源部30aを有している。制御部31は、電極用電源制御部31bおよびモータ用電源制御部31aを有している。
【0082】
測定電極22は、電極用電源部30bおよび測定部32と接続されている。
【0083】
モータ16は電源部30のモータ用電源部30a、測定部32およびモータ用電源制御部31aと接続されている。
【0084】
電極用電源部30bは、測定部32および電極用電源制御部31bと接続されている。
【0085】
モータ用電源部30aは、制御部31のモータ用電源制御部31aと接続されている。
【0086】
電源部30は測定部32と接続されている。
【0087】
測定部32は演算部33およびモータ用電源制御部31aと接続されている。
【0088】
演算部33は制御部31と接続されている。
【0089】
制御部31は、表示部34と接続されている。
【0090】
電極用電源部30bからは、測定電極22に対して、上述した3MHzおよび800kHzの電圧が印加される。これと同時に、測定電極22に接続された測定部32および演算部33により微生物数の測定が行われる。測定値は、前面カバー2の後方に設けた表示部34に表示される。
【0091】
なお、図23において、制御部31と接続されている操作部35は、電源操作用の操作部である。また、図3に示した、スイッチ18a、表示ランプ18bおよび測定開始スイッチ36等は、図23には示していないが、いずれも制御部31に接続される。
【0092】
図24および図25は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置100の作用について説明するための要部上面図である。なお、図25は、後述する図28の破線部分を拡大した図である。
【0093】
本実施の形態の測定チップ20は、図15に示したように、長方形状の板状であり、上端には測定チップ保持部19と接続される接続電極21が設けられ、また、下部には、測定電極22が設けられている。
【0094】
したがって、測定チップ20の中ほどをつまんで、図14に示すように、接続電極21を測定チップ保持部19に装着することにより、電気的および機械的な接続が行われることとなる。
【0095】
測定チップ保持部19に保持された測定チップ20は、図17に示したように、容器5の純水10内に浸漬された状態となる。
【0096】
このとき、図24に示したように、測定チップ20は、容器5内の中心軸よりも容器5の内面側部分で、容器5内面とは所定間隔離れた位置に配置される。また、この状態において、測定チップ20の測定電極22は、容器5内面に対向配置された状態となる。
【0097】
この結果、長方形状の板状で、その下端には測定電極22が設けられた測定チップ20は、その水平断面において、図25に示すように、測定チップ20の左右端とそれに対向する容器5の内面側との距離(L1)が、測定チップ20の左右端間の中心部分と、それに対応する容器5の内面側との距離(L2)よりも小さくなっている。
【0098】
この状態で、微生物数の測定時には、容器5が容器保持部3を介してモータ16(回転駆動部の一例)によって回転させられる。
【0099】
図26および図27は、本発明の実施の形態における微生物数測定装置100の作用について説明するための要部断面図である。
【0100】
図26に示したように、純水10は、上下方向の中心軸の周りに旋回し、これにより渦巻き状態が発生する。この点に対する理解をしやすくするために、図26においては、測定チップ20および保持体6が存在しない場合を図示している。容器5の非回転時には、純水10の液面はCの位置にあるものとする。容器5が回転すると、純水10の回転軸部分は大きく窪み、逆にその外周部分(容器5の内面部分)は、Aの位置まで立ち上がる。つまり、容器5内において、渦巻き状の旋回流が形成される。
【0101】
これに対して、図27においては、容器5内に、上述した測定チップ20が配置されている例を示している(説明の煩雑化を避けるために、保持体6は存在しないものとしている)。
【0102】
図27に示したように、測定チップ20を設けたことで、上述した渦巻き状の旋回流は抵抗を受け、その結果として、外周部分は、前述のAの位置よりも低い、Bの位置までしか立ち上がらない。
【0103】
しかしながら、本実施の形態においては、図27に示したように、測定チップ20を容器5の内面に接近した状態で配置している。これにより、表面張力により測定チップ20と容器5の内面とで囲まれる部分には、純水10の盛り上がり部分が形成される。その結果として、図27にも明確に現れているが、測定電極22が、純水10内に確実に水没した状態となる。
【0104】
図28は、本発明の実施の形態における、微生物数測定装置100において、容器5内の旋回流により、純水10内の微生物がその遠心力を受けて、容器5の内面に付勢された状態を模式的に示した要部平面図である。
【0105】
図28に示したように、旋回流によって、微生物は容器5の内面に付勢された状態で旋回することになる。
【0106】
このとき、本実施の形態においては、上述したように、測定チップ20は長方形状の板状であり、その水平断面において、測定チップ20の左右端とそれに対向する容器5の内面側との距離(図25のL1)を、測定チップ20の左右端間の中心部分と、それに対応する容器5の内面側との距離(図25のL2)よりも小さくしている。
【0107】
このため、図25に示したように、旋回流はL1部分を通過し、つぎに、それよりも距離の長いL2を通過する部分で乱流現象を引き起こす。この結果、図25に示したように、容器5の内面に付勢されて、沿って流れていた微生物は、測定電極22側へも導かれ、測定電極22により集菌されることとなる。
【0108】
つまり、旋回流によって容器5内面側に付勢され、沿って流れていた微生物を前述した乱流によって、測定電極22へと積極的に導くようにすることができるものである。
【0109】
この結果として、本実施の形態の微生物数測定装置100を用いれば、効果的な集菌を行うことができるので、測定制度を高くすることができる。
【0110】
また、本実施の形態の微生物数測定装置100においては、容器保持部3で保持された容器5の上方から、開口部を介して、容器5内に測定チップ20を挿入する電極挿入部を設けている。よって、容器5としては、上面に開口部を有する単なる有底筒状の形状のものを用いることができ、その結果、容器5の生産コストを下げて、測定コストの低減化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上述べたように、本発明によれば、測定コストの低減化を図るとともに、測定精度を高めることのできる微生物数測定装置を提供することができる。よって、本発明は、口腔内の微生物数や食品に存在する微生物数等を測定する微生物数測定装置として、有用である。
【符号の説明】
【0112】
1 本体ケース
2 前面カバー
3 容器保持部
4 駆動突起
5 容器
6 保持体
7 溶出突起
8 溶出溝
9 溶出突起
10 純水
11 蓋
12 突起
13 微生物採取具
14 採取部
15 操作ボタン
16a スプリングバネ
16 モータ
17 把手
18a スイッチ
18b 表示ランプ
19 測定チップ保持部
20 測定チップ
21 接続電極
22 測定電極
23 貫通孔
24 操作体
25 係合部
26 ガイド管
27 スプリング
28 カム板
28a 平面
29 操作ピン
30 電源部
30a モータ用電源部
30b 電極用電源部
31 制御部
31a モータ用電源制御部
31b 電極用電源制御部
32 測定部
33 演算部
34 表示部
35 操作部
36 測定開始スイッチ
100 微生物数測定装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図20A
図20B
図21
図22A
図22B
図23
図24
図25
図26
図27
図28