【実施例】
【0038】
次の実施例を用いて本発明をさらに下に記載する。
【0039】
参考例1:Ceを用いたドーピング
漂白処理したm−チタン酸(硫酸塩法を用いて製造し、アナターゼ白色顔料を得るための焼成のために予めアニール用の塩と混合したもの)を乾燥させ、次いでIKA社製衝撃式粉砕機中で異なる量のCe(NO
3)
3x6H
2O水溶液を含浸させた。m−チタン酸中のTi当たりのCe添加量(単位mol%)を表1に示す。液体量は常に、m−チタン酸粉末上に水分が認められないように選択した。粉末を再び乾燥させ、次いでマッフル炉で異なる温度で90分間アニールし、その結果としてアニール生成物を得、CBU17〜18のもの(CBU 下記を参照)とさらにそれを下回る値およびそれを上回る値のものであった。
【0040】
参考例2:Nbを用いたドーピング
Ce(NO
3)
3x6H
2Oの代わりにNb含量19.7%のNb−NH
4オキサレートの市販調製品(白色粉末、水溶性)を用いた以外は製造
参考例1と同様に実施した。ドーピング量を表1に明記する。
【0041】
実施例
1:Ceおよび
Nbを共に用いたドーピング
製造
参考例1および2と同様に実施し、2つのドーピング操作を連続的に適用して水分が認められないようにした。ドーピング量を表1に明記する。
【0042】
実施例
2:本発明によるさらなる補償ドーピング
Al+Nb:硝酸セリウムIII溶液の代わりにAl
2(SO
4)
3水溶液を用いた以外は製造実施例
1と同様に実施した。
Ce+Sb:漂白処理したm−チタン酸(硫酸塩法を用いて製造した、
参考例1、2、実施例1のアニール操作での出発材料とアナターゼ白色顔料焼成用の同じ塩を含有するもの)の水性懸濁液を異なる量の硝酸セリウムIII溶液および水性60%Sb
2O
3ペースト(Aquaspersions Ltd, Halifax, West Yorkshire, Enland)と混合し、乾燥させ、上記のとおりアニールした。
Al+Sb:Ce+Sbについての上記のとおり実施し、硝酸セリウムIII溶液の代わりにAl
2(SO
4)
3溶液を用いた。3つ全ての系についてのドーピング量を表
2−3に明記する。
【0043】
実施例
3:最初に焼成処理したm−チタン酸へのCe+Nbを用いたドーピング製造
参考例1と同様に、漂白処理したm−チタン酸を825℃に上昇する温度で7時間アニールし、次いで製造実施例
1と同様に、CeおよびNbを共に含浸させ、マッフル炉でアニールして同じCBU値とした。ドーピング量を表4に明記する。
【0044】
実施例
4:Ga、Ga+Nb、Ga+(および)Li、In、In+Nbを用いたドーピング製造
参考例1と同様に、漂白処理したm−チタン酸を乾燥させ、製造実施例1と同様に、それぞれGaOOHおよびIn
2O
3の希釈水性塩−酸溶液、
参考例2のNb−NH
4オキサレート調製品の水溶液またはLiClの水溶液を連続的に含浸させ、(再び)乾燥させ、最終的にマッフル炉でアニールした。ドーピング量を表5に明記する。
【0045】
比較例(当技術分野の水準):Sb
2O
3を用いたドーピング
市販顔料を用いて以下のとおり調査を行った:
・Hombitan LW−S(被覆処理もドープ処理も施していないTiO
2アナターゼ)
・Hombitan LW−S−U(Sbのドープ処理を施した(0.28〜0.30%Sb、Sb
2O
3として計算、0.16mol%のSb/Tiに相当)非被覆TiO
2アナターゼ)
・Hombitan R 320(0.20%Al
2O
3をドープした(0.31mol%のAl/Tiに相当)未処理の微粉ルチル顔料)
・Hombitan LO−CR−S−M(0.28〜0.30%Sb(Sb
2O
3として計算)をドープしさらにとりわけ無機的に表面修飾したアナターゼ)。
これらのドーピング量および結果もまた表1に明記する。
【0046】
実施例の生成物の調査および結果:
製造実施例の生成物にボール粉砕を30分間行い、その後比較生成物とともに調査した。次の調査を行った。
・生成物中のアナターゼとルチルの割合に関するX線回折測定(生産管理および最終生成物処分についてはTiO
2白色顔料製造業者の慣行に従った)
・DIN 53770に準拠したドーピング元素のHCl溶解度の決定:
ドーピング元素について高い値であると判明したならば、それは、添加した化合物がまだ反応していないか(ここでの例外:Sb
2O
3はHCl可溶性ではない)またはTiO
2結晶の表面領域に存在する(例:低アニール温度でのCe、唯一のドーピング元素としてのAl)ことを示す。低い値は、ドーピング元素が所望のとおりTiO
2結晶中に組み込まれた(例:高アニール温度でのCe、好適なCBUを有するTiO
2白色顔料の全てのアニール温度でのNb)かまたはドーピング化合物がアニール処理によって溶解度の低いものへと転換された(一般的にドーピング量が少ないことはまれである)ことを示す。
・比BET表面積の決定:
TiO
2白色顔料の場合、手間をかけさえすればTiO
2微結晶サイズを直接測定することができる。しかしTiO
2微結晶サイズは比表面積からかなり正確に評価することができる(U Gesenhues, J Nanoparticle Res 1 (1999) 223)ため、本発明による生成物とナノ材料とを区別することができる。
・DIN 53165、ISO 787−24に準拠した灰色ペーストでのCBUおよび相対散乱性能の決定
CBU(カーボンブラックアンダートーン)とは、カーボンブラックペーストとともにこすり合わせて灰色ペーストを得たときに白色顔料によって生み出される青味(高値>13)または黄味(さらに低い値)であり、測定方法およびコンピューティング方法は米国特許第2488439号明細書に記載されている。CBUは、TiO
2白色顔料によって他の顔料との混合物における使用系で生み出される色相の特徴を表す。
・色度値および光触媒活性の決定:
乳鉢で水溶液から0.35%トリメチロールプロパンと混合し、次いでポリアミド6(市販製品Ultramid B2715)中0.5%で組み込み、3mm厚の射出成形プレートを作製し、Weather−o−meter C165(Atlas Electric Devices Co, USA)において簡易屋外曝露を行った。簡易屋外曝露の前とその後24時間ごとに、ISO 7724に準拠してポリアミドプレートから色度値L
*、a
*およびb
*を記録し、ISO 2813に準拠して20度および60度光沢度を記録した。b
*値は、使用系においてTiO
2白色顔料によって他の顔料の不在下で生み出される色相の特徴を表す(負の値:青味、正の値:黄味)。光沢度は、全てのサンプルにおいて時間に関して同じ経過を示した:最初に初期値92〜95%での長さの異なるプラトー、その後数%へのs字形の低下、全てのサンプルは平行した曲線を示した。U Gesenhues, Polym. Degrad. Stab. 68 (2000), page 185で説明されているとおり、光沢のある表面の平均有効寿命は、異なる顔料を含むプレートの60度光沢度の低下から決定することができる。ワイブルの累積破壊率モデルによれば、平均寿命は、光沢度が1/e=初期値の37%に低下するまでの屋外曝露期間に相当し、その寿命の逆数値はポリマー中のTiO
2顔料の光触媒活性に比例する。ドープ処理した顔料の場合、ドープ処理していない顔料に対する有効寿命の比率は、ドーピングによって有効寿命(耐光性または光安定性または耐候性)が延長される倍率に相当する。
【0047】
上記調査方法に関する生成物についての結果を表1〜5に示すが、それに関連しての説明を以下にも述べておく。
表1の全てのサンプルの比表面積は6〜17m
2/gの間であり、表2のサンプルの比表面積は7〜10m
2/gの間であり、表3ではサンプルの比表面積は9〜12m
2/gの間であり、また表5ではサンプルの比表面積は10〜19m
2/gの間であった。
【0048】
・顔料中のドーピング元素総含量の決定およびさらなる調査
さらに、ドーピング元素の総含量も、とりわけ、硫酸アンモニウム−硫酸分解処理およびICP、ならびに粒子サイズ分布により測定した。ドーピング元素の添加量は常に化学分析でも得た。
・顔料の結晶成分の決定
TiO
2とは別の結晶成分、特に、個々のドーピング金属の酸化物またはそれらのTiO
2との混合化合物またはそれら相互の混合化合物の存在について分析するためにX線回折測定も用いた。しかし全ての例において、強く鋭いTiO
2反射のほかには全く反射が観察されないかまたは極めて弱く広い同定不可能な反射しか観察されなかった。
・TEMおよびXPSを用いての、いずれの場合も1mol%のCeおよびNbをドープし、850℃および890℃でアニールしたアナターゼ中のCeおよびNbの分布および酸化数の決定
粒子におけるCeおよびNbの分布を、TEMでのEDX−ナノビーム、およびCe、NbおよびTiについてのラインスキャンにより調査した。Tiを含まない粒子は認められず、すなわち、粒子はCeまたはNbをいずれの場合も単独で含むかまたはCeおよびNbを一緒に含み、測定精度に関連しては、CeおよびNbの分布は粒子全体に均等であり局所集中していなかった(表面でさえもそうではなかった)。XPSを用いて、5〜10nmの結晶の外層を調査した。850℃でのアニール生成物では、外層の測定組成は5.0mol%のCe/Tiおよび2.3mol%のNb/Tiであり、890℃での生成物の場合、外層の測定組成は1.2mol%のCe/Tiおよび5.8mol%のNb/Tiであった。つまりドーピング元素は表面領域にやや多く存在するが、測定精度の範囲内であるため、粒子全体にほぼ均等に分布していることを意味している。Ceのうち半分は酸化数+3であり残りの半分は+4である。Nbの場合、半分は+5であり、残りの半分は+4である。つまり添加したドーピング量の半分は補償ドーピングによってTiO
2中に組み込まれることを意味しており、それによって本発明によるドーピングの測定光安定化効果を説明することができる。
・顔料の触媒活性の測定
次の製造実施例
1の顔料について、CBU>14を有する相対的に大きい量を製造し、蒸気ジェット粉砕後に触媒活性について以下のとおり試験した。
1.ドープ処理していないアナターゼ;
2.以下をドープしたアナターゼ:
a.0.25mol%のCe+0.50mol%のNb、
b.0.5mol%のCe+0.5mol%のNb、
c.0.5mol%のCe+1.0mol%のNb、および
d.1.0mol%のCe+1.0mol%のNb
上記目的のために、当技術分野の現状において通常使用される触媒と試験用TiO
2顔料の存在下でp−テレフタル酸をエチレングリコールスラリー中で重縮合した。得られたPETチップに関して色度値L*、a*およびb*を決定した。黄味度が高くなるのに対応して顔料の活性は高くなる。4種のドープ処理した顔料は全て、ドープ処理していない顔料と比べてPETチップの黄味は少なくなった。
・顔料の摩耗特性の測定
同じ5種の顔料(上の製造実施例
1による1、2a〜2d)の摩耗性もまた、Cu棒摩耗法(B Vielhaber - Kirsch and E W Lubbe, Farbe + Lack 1995, Issue 8, page 679およびKronos - Information 6.30によって記載されている)を用いて測定し、Hombitan
(商標) LW−SおよびHombitan
(商標) R320の摩耗性と比較した。Hombitan
(商標) LW−Sでは16mgであることが分かり、Hombitan
(商標) R320では27mgであることが分かった。一方、製造実施例
1による5種の顔料(1、2a〜2d)の値は8〜14mgの間であった。
【0049】
本発明者らが結果に基づいて立証したとおり、本発明による生成物は白色顔料サイズのTiO
2結晶を含みナノ粒子を含まない。さらに、高アニール温度ではまずCeだけが結晶に組み込まれ、そこでその第1の粒子サイズによってアナターゼの青味はすでに低下し始め、その場合耐候性は高まるが、黄味はやや増すのみである。それに対し、より低い温度ではNbだけが早くも完全に組み込まれ、耐候性はやや向上するが、黄味は増さない。
【0050】
CeおよびNbを用いた共ドーピングでは、より低い温度でCeが早くも組み込まれただけであり、特にNbは過剰に存在する。しかし共ドーピングでは明度は低下し、黄味は増すが、等モルのドーピングの場合にはそれが増大されることを述べておく。しかしそれによってルチルのレベルには達しない。とにかく、共ドーピングでは、耐候性は元素を単独でまたはそれらの混合物を用いて達成される値を超えて高まるが、総ドーピング量が同じことによる相乗効果はない。共ドーピングの場合には、相乗効果はなく、耐光性係数は、2つの個々のドーピングの値の積に相当するだろう。
【0051】
このように、本発明者らは、CeおよびNbを用いた等モルの、すなわち、真に補償的な、ドーピングによって、ドープ処理していないルチル顔料基材よりも耐光性が高く、かつ耐候性が高く、さらにAlをわずかにドープしたルチル顔料基材と同程度に耐性のある形でアナターゼ白色顔料基材を製造することができるということを見出した。そのような改善は経済的に少ないドーピング量ですでに達成されている。
【0052】
本発明によるドープアナターゼ顔料は、摩耗がより少ないという利点を有する。その耐光性および耐候性は、当技術分野の水準による無機表面修飾によってさらに高めることができる。酸に安定な表面修飾を採用するならば、Hombitan LO−CR−S−Mを別にすれば、得られる改善はとりわけMn塩を用いた、特別な無機修飾によるような因子によるものではないことは明らかである(上記を参照)が、より高い安定性の白色顔料基材とは、結果としてLO−CR−S−Mと少なくとも同程度に耐光性および耐候性を有し、その耐性が酸に安定であるという利点を有する生成物を得るということである。
【0053】
最初の焼成を行った上で初めて、CeおよびNbを用いた共ドーピングによりm−チタン酸にドープするならば、結果としてこれまでのドープm−チタン酸ほど高くはないが、当技術分野の水準よりさらに改善されている耐光性および耐候性を備えたアナターゼ顔料が得られる。
【0054】
AlおよびNbを用いた別の共ドーピングでは、結果としてAlが固定化されたアナターゼ顔料が得られることは明らかであるが、その顔料は明度および黄味に変化はなく、耐候性の向上はわずかである。CeおよびSbを用いた共ドーピングでは明度は低下し、黄味はやや大きく強まる。またその共ドーピングでは耐光性および耐候性はさらに向上するが、Sb単独の場合またはCeとの相乗作用がない場合と比べてごくわずかなものにすぎない。
【0055】
AlおよびSbを用いた共ドーピングでは、明度はやや低下し、黄味に変化はなく、耐光性および耐候性はSb単独の場合ほど大きく高まらない。しかしAlおよびSbを用いたドーピングと、CeおよびSbならびにAlおよびNbそれぞれを用いた2つの前述のドーピングでは、それをもって顔料基材の焼成における顔料特性の変化を抑制しやすいという利点を有する。
【0056】
Gaだけを用いたドーピングでは、Sbを用いた場合よりも耐光性および耐候性はやや大きく向上する。その効果は、Nbを用いた共ドーピングによってさらに大きくなることが分かっているが、その場合には明度は低下し黄味はやや増すことを述べておく。Liを用いた共ドーピングを行うと、行わなかった場合よりも多くのGaがTiO
2中に拘束され得ることは明らかであるが、その共ドーピングの実施の結果として、行わなかった場合ほどの大きな耐光性および耐候性の高まりは必ずしも起こらず、またさらにLiはTiO
2のルチルへの転換を促進する。全体的には、Sbの代わりとしてGa、場合によってはNbまたはLiを用いたドーピングは適切である。
【0057】
Inを単独でまたはNbとともに用いたドーピングでは、耐光性および耐候性はSbと同程度に大きく向上し得ることは明らかであるが、PA6に添加した場合の明度および青味はわずかな低下を示す。
【0058】
従って、本発明によるアナターゼ顔料は少なくとも13のCBUを有する。ポリアミド6に添加した場合のb
*値は−2.5〜+3.5の間であることが好ましい。
【0059】
耐光性および耐候性における特性の改善により、本発明によるアナターゼ顔料は、合成繊維、フィルム、箔、成形加工品およびポリマー含有複合材料を含むポリマーおよびプラスチックへ、ならびに塗料およびUV硬化ラッカーを含むラッカーへの添加剤として使用することができる。そのような使用には、ポリビニルクロリド、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリラクチド、ポリアミド、セルロースアセテート、ビスコース、エポキシ樹脂およびメラミン樹脂、ならびに紙、厚紙、プラスチックおよび金属の印刷用インクにおける使用が含まれる。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】